ヤムチャ・レクイエム 
       〜最後の聖戦〜
 


【第23話】 見よ!これが真・八手拳だ



走る!走る!血相を変えてどこまでも。
荒野は既に薄暗い。途中何度も石につまずきながらチャパ王はボロボロになって逃げていた。つかまったら食われてしまうのだ。
「はぁはぁ……ここまでくれまでば…安心……」
と振り向くと……。ドドドド……と地響きが後から近づいてくる。

「ま……まさか………追いかけてきてるーーーっ!!」
振り向くと、数十人の天津飯が奇声を張り上げて猛突進してくるではないか。
チャパ王は泣きそうな顔をしたが、さすが武人である。死を覚悟し…そして決断した。

「ふふっ……戦いの中で死ねる…!武道家にとってこれほど名誉ある死はない!!せめて布団の中で死にたかったわい!!
極めに極めたこの技を最後に食らわせてやるーーーッ!はーーーッ!
超・真八手拳・リミテッドエディションスーパーデラックスハイパーッバージョン3!!!!」

改良に改良を重ねて長い名前になった最強奥義・八手拳を繰り出すチャパ王。
チャパ王の腕があまりの突きの速さに八本に見える。
この技の真意についてチャパ王はこう語る。

『ちょっと速度をあげてしまうと腕が見えなくなってしまう。いかに、速度を落とさずに八本の残像に保てるかが、この技の難しいところだ。
えっ…?そんなの意味がない?馬鹿言っちゃいけない!
この技は八手拳なのだ。四でも十六でもない、まして速すぎてパンチが見えないなんてのは言語道断なのだ!
八手拳の八にこそ意味があるのだ!!
そのために改良を改良を重ね、本当に八本腕があるように見せかけるように頑張ってきたのだ!バカちんがぁ!!』

…だそうです。意味があるのかわからないけど。

『意味だと?だからキサマはバカちんなのだ!いいか。八という数字には本来……』

しつこっ…。回想は終わったの!!
 
 ↓ 何事もなかったように本編再開 ↓



ザンッ!!ザンッ!!ザンッ!!!

鋭い音を立てて、天津飯の首が次々にふっとんだ。
宙に舞う無数の生首。

「き……きまったのか……!?おぐっ……?」

チャパ王は息苦しさと顔の血の気が引いていくのを感じた。

ボトン……。

頭を軽くなぐられたような衝撃のあと、チャパ王が見たのは、首のない自分の胴体だった。

(し……しまった……勢いあまって自分の首まで飛ばせてしまったのか……。つめを誤ったわい(笑)。
間違えた!そこ笑うところじゃないぞ。まぁどうでもいいが。
だが……ここまでの威力になっていたとは……嬉しいぞ。八手拳よ……
共に逝こうぞ……我が奥義……八手拳)


そのとき、チャパ王の頭上には白髪頭のクリリンと18号がいた。

「よっし!成功!久々の気円斬だぜ!」

「うわぁ……気持ちわるぅ……」

「なぁさっき、天津飯以外にも誰かいたような気がするんだけど?」

「薄暗くてよくわかんないよ。さ、全員死んだだろ。もう帰ろう」

ピッコロに頼まれ近場にいたクリリンたちはいち早く、天津飯の群れを見つけ、気円斬で攻撃したのだ。

「いやまだだよ。こんなの50〜60人くらいじゃないか。ずっとむこうにまだまだたくさんの気を感じる」

「えーっ、かったるいなぁ……」
ぶつぶつ言う18号を無視して、クリリンは荒野に降り立つ。

「なんてことだ、天津飯。……まさかあんたと…こんなかたちで再会しちまうなんてな…」
クリリンが寂しそうに天津飯たちの痛々しい骸をみながらつぶやいた。

「おい。クリリン……早く行こうぜ」
18号がクリリンをせかす。天津飯たちにくるっと背をむけたそのとき、むくっと人影が起き上がった。

「ぅわーーっ!」

「わーーーっ!!」

「……あー……ビックリした……死んだかと思ったわい。……ん?おぬし誰だ?」

「……あんたこそ誰だよ?」

「ワシはチャパ王」

「チャパ王……?チャパ王ってあの…むかし天下一武道会で……」

「ほう。おぬし、ワシを知っておるのか?もしやファンか」

「いや…そんなわけじゃ……で、あんたこんなところで何してんだ?」

「うむ。この天津飯と言う者に襲われてな。たった今、真の力を発揮し、粉砕したところだ。技が暴走して危うく死にかけた気がしたのだが、どうやら無事だったようだ。」

「え…それはオレたちが……」
見知らぬ男とだらだら喋っているクリリンに苛立って18号までも降りてきた。

「おい!クリリン!いつまで喋ってんだよ!!…ん?こいつミスターサタンじゃないか!」

「違うわい!!どいつもこいつもわしをミスターサタン扱いしおって!むこうのほうがパクリなんだ!あいつはな、昔わしの道場で……」

「じゃ……じゃあ、オレたちこれで」
年寄りの長い話につきあわされないようにとクリリンはチャパ王に別れを告げる。

「……そうか。うむ。残念だな。こんなところでファンに出会ったのに。住所を教えてくれれば野菜とかわしのサインとか送ってやるぞ?あ…おい。待ちなさい」
クリリンたちは聞こえぬふりをしてその場を去った。



天津飯;現在16331人







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