ヤムチャ・レクイエム
〜最後の聖戦〜
【第2話】 ヘタレ神の始動
「これはこれは何のご用件で?」
天界……。いきなりの訪問客に一同に緊張が走った。
その訪問客とは全宇宙の神…界王神その人であったからだ。
「そうかしこまらないで下さい。」
にこっと笑う界王神。キビトとポタラで融合し、かなり恰幅のよくなった界王神がそんな表情をするとけっこう気持ち悪いが本人は気づいていない。
(……何しにきやがったんだ?また何か面倒ごとをオレたちに押し付けるつもりかっ?)
界王神はブウ戦でのあまりの役立たなさに皆にはあまり好かれていなかった。
ピッコロの心を読んで、少し顔の引きつる界王神。
「今日は嬉しいことをご報告にきただけですから。」
「どっ、どんなことですかっ?」
無邪気にはしゃぐデンデ。
「ふふっ。大したことではないのですが、今日、私の20億歳の誕生日なのです!!」
「………」
「え……」
(そっ、それだけかよーーーーーっ)
五秒くらい天界を静寂が支配する。
「そ…それはおめでとうございます。」
デンデが口を開いた。ほっとしている顔のピッコロ。
「も…もちろん、それだけではありませんよ!」
あまりのリアクションの低さに界王神は慌てた。
(そ…そうだよな…。界王神様だもん…)
「それを記念して……そーですね……恩赦として地獄にいる誰かを生き返らせてあげましょうっ!」
「………」
(誰ものぞんでねぇぇぇよっ!!)
デンデ、ピッコロ、ポポが心の中でつっこむ。
「……誰か候補はいませんか?」
「………」
「……いないようですね。それでは仕方ないですね」
(……帰ってくれるのかな……?)
ドキドキしているピッコロ。
「では……他の誰かに聞いてきましょう。まずは悟空さんのところへ行ってみましょう。それでは…」
引っ込みがつかなくなった界王神は、とりあえず場の重い空気にたえられなくなったので天界から逃げるように去った。
「どうしましょう……勢いだけで適当なことを言ってしまいました……」
界王神は悟空の家へ向かう途中、そんなことをぼやいていた。
「瞬間移動で行けばいいのに……わからない……界王神様って……」
ピッコロがあきれ果てつぶやいた。
「さて……つきました。悟空さんなら祝ってくれるでしょう」
界王神の顔を見てちょっといやそうな表情をした悟空だが、家に招きいれた。
「驚かないでくださいよ。実は今日、私の20億歳の誕生日なのです!」
「ふぅぅん……。」
素直に驚き具合を表現する悟空。
「それはおめでとうございます」
やさしい悟飯は界王神を祝ってあげる。もちろん、おだてれば何かもらえると思ってのことだが。
(……なかなか狡猾ですね。悟飯さん。まあ、あなたはそういう人だと思っていましたが)
「へぇ〜〜。界王神様、20億歳って…ようわからんけど、むっちゃくっちゃジジイなんだなぁ〜〜。でもよ、全然、ジジイにみえねぇぞ。」
「それはどうも……」
(そういえば地球の神が見ているかもしれませんね。先ほどの約束を果たさなければ……)
「それで私の誕生日を記念して、恩赦として地獄にいる極悪人を一人生き返らせてあげようと思うのです!生き返らせたい人はいますか?悟空さん、悟飯さん。
その一人を選ぶ権限をあげましょう!」
「え……?」
「は……?」
絶句する二人。居間にいる悟天とチチもポカンとしている。
「な……なんてことだ。あのヤロウ、マジにやるらしいぞ!!そんなことをして誰が得をするんだ!?」
天界で様子を見ていたピッコロは絶叫した。
「いや…オラ別にそんなヤツいねぇけど……」
「もちろんボクもいませんけど……」
「……むっ……。
(これは私に対する嫌がらせですね……まったく……)
…わかりました…。そういうことならば仕方ありません。
私にその人物を選ばせていただくことにしましょう!
それでいいですね!?」
「いや……オラもともとたのんじゃいねぇし……」
界王神はぶつくさ文句を言いながら、あの世へと瞬間移動した。
「お……お父さん……界王神のやつ、何しにきたんでしょう……」
「わ…わからねぇ……」
「悟空さ、今の気味の悪い男は誰だべ……」
「まったく……下界の人間ときたら私の偉大さがまるでわかってない。見てなさい!」
閻魔の館へと移動した界王神。魂の列を強引にかきわけながら、閻魔の部屋へと入ってくる。
「はい。失礼しますよ。すみませんね。そこをあけてもらえますか。
ちょっとそこ、通しなさい。は?何を言ってるんですか!
どきなさいって言っているんです!!」
「おい!そこ!何、割り込んでいるんだ!!――って…あなたは界王神様!?な…なぜこんなところへ!?」
突然の来客に慌てふためく閻魔大王。
「久しぶりですね。閻魔大王。仕事はちゃんとしていますか?
ところで今日は私の20億歳の誕生日なのです。それを記念して一人、生き返らせることにしました。」
「へっ……。そ、そんなことは……」
「私は全宇宙の頂点に立つ界王神ですよ。さぁ、閻魔帳を見せなさい。」
「んもう……」
困った顔の閻魔。仕方なく裁判の手を休め、界王神に閻魔帳を手渡す。
「ふむふむ。この男にしましょう。」
「ちょっ……界王神様っ!こいつ、地獄生きだったヤツですよっ!(こいつ…適当に選んだろ……)」
大声を張り上げる閻魔大王。その怒声で閻魔の宮殿がぐらぐら揺れた。
「そうですよ?それでいいのです。ほら。極悪人ですら許す界王神って寛大…ってことになるでしょう!」
(なるかっ!!)
「せっかくです!もう一人くらい生き返らせてあげますか!」
「えぇぇぇ〜〜〜!?」
「えーと。ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪
か・い・お・う・し・ん・さ・ま・の・い・う・と・お・り・っと♪
この者に決まりました。さぁすべての責任は私がとります。その者を生き返らせてあげなさい」
「……知りませんよっ!どうなっても!!」
半ばやけくそになって閻魔大王は界王神の指名した人物を現世行きに書き直した……。
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