ヤムチャ・レクイエム
〜最後の聖戦〜
【第1話】天津飯と餃子
ヤムチャが荒野を荒々しい気を発しながら飛んでいる。まっすぐ。ある人物を目指して。
「……いた!」
ヤムチャの目がその者の姿をとらえた。
精神統一しているのか…その男は巨大な岩山の上で静かに座り込んでいるようだった。
その者の背後にヤムチャは音もなく降り立つ。
「ほう。……まさかお前が」
その男は、ヤムチャに背を向けたままつぶやいた。
「久しぶりだな………天津飯」
天津飯と呼ばれた男は、ゆっくりと立ち上がるとヤムチャの方へと振り向いた。
「……今更、オレに何のようだ?」
無愛想な台詞だが、顔には明らかに笑みが浮かんでいた。
「腕は訛っていないようだな?」
「オレがか?笑わせるぜ」
「その力……試してみたくはないのか?お前がずっと目標にしていたあの男に通じるかどうか…」
「バカを言え。種族が違うんだ。超えられない壁ってものがある」
「それで満足なのか?」
「……オレはオレの限界が知りたいだけだ」
「嘘だな…」
「なにっ!?」
「お前は嘘をついている!試したいはずだ!己の力を!今すぐにでも!!」
「お前…しつこいぞ…。久しぶりにあったというのに…」
的を射ないヤムチャの問いにさすがの天津飯もうんざりしてきた。
「試さないか?お前の力…。ヤツらに見せ付けてやるんだ!なぁっ!オレと一緒に!」
「……つまり……悟空やベジータにバカにされたから、オレの力を借りたいって言うんだな?」
「うぐっ…お前…いつからそんなに鋭くなった…」
「図星か…。変わってないな……。
まぁいい。もうすぐ日が暮れる。…餃子も買い物から帰ってくる。…そのことも含めて積もる話でもしようじゃないか…」
あきれ果てる天津飯。ヤムチャに今日は泊まっていけと勧めた。
「いいけど……襲うなよ!」
「オレは餃子以外の男児を抱かぬ!!」
「ほっ…そうか……え……?」
「ヒック…ヒック…ぅわぁぁぁん。天津飯よぉ。餃子よぉ。聞いてくれよぉぉ」
「はっはっはっは!!心配するな。ちゃんと聞いてるわ!」
「うるせぇ!!同じ話何度もすんじゃねぇっ!ヒック、ヒック」
ここは、かつてのヤムチャのアジトのように岩山をくりぬいて作った質素な天津飯と餃子のアジト……世界中を旅する二人には世界各地にこのような拠点が幾つかあったのである。
泣き上戸のヤムチャ、笑い上戸の天津飯、暴れ上戸の餃子の三人は夜遅くまで長々と語り合っていた。
「ヤツらてめぇらの悪口も言ってるんだぜ…。何度もおめぇらに助けられることもあったってぇのによォォ。ぅうう……」
「はっはっは。マジかよ〜〜。笑えるな!そりゃ!!」
「笑えるかよぉぉ……ぅわぁぁぁん……」
「ぁンだとぉ!?ぶっ殺してやっぞ!!」
「はっはっは。お前には無理だ。餃子。はっはっはっは」
とりとめのない話は朝方まで続いた。
ヤムチャが目を覚ますと既に太陽は真上まで昇っており、天津飯と餃子の姿は近くにはなかった。
「あー頭いてぇ……。あ…あいつらもう起きているのか……」
ヤムチャは重い頭を起こすとノソノソとアジトからはいでた。強烈な日射で荒野がまぶしく照らされ、目が痛い。
「やっとお目覚めか?」
「いい身分だな。けけけ」
アジトの前で組み手をしていた天津飯と餃子がヤムチャに声をかける。
「ふぁぁぁ〜〜おはよ……。何でそんなに元気なんだよ……」
汗だくの二人に呆れるヤムチャ。
天津飯は呼吸を整えると静かにヤムチャに言った。
「ヤムチャよ……。昨日の話だが…オレはやるぞ…。
ヤツらに……一矢を報いてやる………」
「ホ…ホントか!?」
「ボクも手伝ってやる」
「……どこまでできるかはわからんが…悔いだけは残したくないからな。
武闘家としての悔いだけはな……。」
天津飯は青く、高く澄んだ空をみあげながら語りだした。
「……いつからだろう……悟空のヤツを追いかけなくなったのは……。
界王様の修行をはじめたときはピッコロは勿論、悟空をも越える気でいた。
超えられるとも思っていた。
フッ…。
しかしオレの修行をあざ笑うかのように次々と現る強敵………
努力もバカバカしくなるうような超サイヤ人の変身につぐ変身がオレを戦いの場から遠ざけた……。
そして……いつしか……」
「天さん。ご高説のところ申し訳ないけどこいつ寝てる。たったまま」
ぐぅ……。ヤムチャの寝息が聞こえる。
ピクピクと天津飯のこめかみが動く。
「かぁっ!!」
「ひぃっ!!」
天津飯の気合でビリビリと荒野全体が震えた。このときヤムチャがチビったのは内緒だ。
「ヤムチャ!もちろんお前にも特訓してもらおう!ここで一ヶ月間、鍛えなおしだ!!」
「げーーーっ!ヤブヘビだったYO!!」
こうして……ヤムチャ、天津飯、餃子はかつての仲間たちに無謀にも決戦を挑むことになったのだが…はたして…いかなる結果になることやら?
はてさてふむー。
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