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Saiyan killer2



【71話】

「そうなんですかぁ……。ヤムチャ様、おめでとうございます!やっと結婚できましたね!」
「あ、ああ…はは、ありがとな。式は挙げてねーけど…」
「さっそく結婚式あげましょうよー!ボクが手続きとかは全部やりますから!」
プーアルはまるで自分のことのように張り切っていた。
「そうだな…天下一武道会が終わったら式でも挙げてみるか」
ヤムチャは呟くように言った。
「え、ヤムチャ様…天下一武道会に出られるんですか?」
「ああ、今回は出るつもりだ」
「それじゃあ、いっそう修行に身を入れるしかないですね!」
マーリンとシルフは、ヤムチャとプーアルの話の内容自体はあまり気にしていなかったが、いきなり現れたこの青い猫がヤムチャとやたら親しげで、なんともいえない複雑な心境だった。
あの猫はどう見ても戦士ではないが、一体ヤムチャのなんなのだろう?
そんな疑問がマーリンには募る。

「で、プーアル。カプセルコーポレーションに修理を頼んだアレはどうだ?直ったのか?」
「あ…!そうでした、今日はこれを届けに来たんですよ」
そう言いながらプーアルはカプセルを取り出すと、ボタンを押下して地面に放り投げた。
すると、砂煙が舞い、何もなかった荒野に、カプセルの何千倍はあろうかというかなり大きな宇宙船のようなものが姿を現す。
「……す、すごい…!」
昨日ヤムチャからカプセルを見せてもらったマーリンはさほど驚かなかったが、シルフは口をあけながらその宇宙船を見つめていた。
「随分と綺麗になったな。大きさも前より大きくなって中も広そうだ。最大重力は何倍って聞いている?」
「えっと、重力はヤムチャ様の希望で一応1000Gまで設定できるみたいですが…とても心配していましたよ、ブリーフ博士」
「お、ようやく1000Gか。確かに今の俺では立って居られるかすら微妙なところだけどな…」
ヤムチャは顔を顰めるが、どこか嬉しそうにも見える。




【72話】

二人の会話を黙って聞いていたマーリンだが、ヤムチャのそばまで歩み寄ってきた。
「ヤムチャ、これはなんだ?一見宇宙船のように見えるが…」
マーリンは宇宙船を手で軽くコンコンと叩きながらヤムチャに尋ねる。
「これは重力発生装置だ。まあ、元々宇宙船だったんだけど、今は宇宙船としての機能はついていない。純粋に重力を発生させるだけだ…最大1000倍のな」
「なるほど。…1000倍……ヤムチャとわたしが修行したあの不思議な部屋で、確か10倍だったような…」
「でも、あの時はそれとは別に錘(おもり)もつけていたし、体感重力は100倍ぐらいだろうな」
昔、ヤムチャとマーリンは精神と時の部屋で修行をしたことがある。
その時は、10倍だけの負荷じゃ足りないと思い、手足に錘もつけて修行を行っていたのだ。
「それでは、ボクはこれで……」
プーアルは用が済んだからか、その場を去ろうとした。
「ちょっと待て。どこに行くんだ?」
逃げるようにこの場から離れていこうとするプーアルを、ヤムチャが引き止める。
「…西の都にでも、戻ろうかなーって…思いまして……」
「どうしてだよ、プーアル。ここにいろよ」
「そうしたいのは山々なのですが、なんというかその……いいんですか?」
申し訳なさそうな表情を浮かべるプーアルに、ヤムチャは笑いながら言った。
「はは、いいんですかって…何言ってるんだお前。まさか俺がマーリンたちと一緒にいるからって、気を遣っているのか?」
「……ええ、その方がいいのかなと思いまして…」
「水臭いぞ、プーアル。むしろ俺はマーリンたちにお前のことを知ってもらいたいし、お前にもマーリンたちのことを知ってもらいたい。ちょうどいい機会だし、お互い自己紹介しようか、ほら」
ヤムチャはプーアルを捕まえると、マーリンたちの前に座らせた。




【73話】

「…えっと、初めまして、マーリンさん、シルフさん。ボクはプーアルと言います。特技は変身です」
「ぼくはシルフって言うんだ。よろしく、ぷーあるさん」
「…マーリンだ。ヤムチャが世話になっている」
さっそくシルフはプーアルの頭を撫でたりしてかわいがっていた。
マーリンは腕を組みながらプーアルを見つめる。
その様子を見て、うんうんと一人で頷くヤムチャ。
「ちなみに、プーアルは俺の古くからの親友だ。悟空たちと会う前から一緒に居たからな」
「あはは!シルフさんくすぐったいですよー!」
プーアルはシルフに擽られて笑い転げていた。
その様子を見てヤムチャは腹を抱えて笑っている。
息子はすっかりプーアルとなじんだみたいだが、マーリンは、未だに複雑な気分だった…。

シュビッ!

「……!」
ヤムチャたちは、再び後ろに大きな気を感じた。
だが、この気は悟空とは違う。
振り向くと、そこには明らかに異世界の人間と思われる人物が立っていて、こちらを見ていた。
悪い気ではないので、悪人ではないと思うが…一応警戒を始める二人。
はしゃいでいたプーアルとシルフも途端に静かになる。
変わった服装のその男は、二人に向かってしゃべり始めた。




【74話】

「…そんなに驚かないでください。怪しい者ではないですから。はじめまして、ヤムチャさん、マーリンさん。あなたたちの今日の行動、ずっと見させてもらいましたよ」
「やれやれ、今日はやたら背後に人が現れる日だな」
ヤムチャはそう声を漏らすと、やけに丁寧に話す男に、半信半疑ながら近寄っていく。
「俺たちの名前を知っていてくれて光栄だ。だが、まずあんたは誰だ?俺の知り合いには見覚えないぜ」
「…今の技は瞬間移動か…?いきなり背後に気配を感じたが…只者ではなさそうだな」
ヤムチャとマーリンは同時に質問すると、男は申し訳なさそうに答える。
「申し遅れました。わたしは東の界王神です。そしてマーリンさん、あなたの言うとおり今の技は瞬間移動ですよ。悟空さんのものとは少し違いますがね」
男が全て言い終わる前に、ヤムチャは腰を抜かしてそっくり返った。
そう、ヤムチャと界王神は面識がなかったのだ。
「あ…あ、あ、あなたが、か…界王神…様!!??」
「ヤムチャ…なんなのだ、カイオウシンとは…。ソンゴクウの知り合いのようだが」
「…今使ってる界王拳を教えてくれたのが、界王様。その上にもっと偉い人がいて、それが大界王様だ。で…更にその上に界王神様という宇宙で一番偉い人がいるんだ。それがこの人ってわけ」
「なるほど…よく分からないが宇宙の偉人なのだな」
マーリンは界王神を見ながら答えた。
ヤムチャは起き上がると、マーリンより前に出て界王神の耳元で囁く。
「か、界王神様…今日の行動を全部見てたって…もしかしてキスシーンも…?」
「え、あ…すみません、そんなことをするとは思わなくて、つい見ちゃいました……」
それを聞いて顔を真っ赤にするヤムチャだが、マーリンからはただコソコソと内緒話をしているようにしか見えなかった。




【75話】

「それで…界王神様。一体俺たちになんの用が…?」
ヤムチャはようやく真剣な顔付きになり、話を始める。
界王神も真面目な顔付きになった。
「はい、実は…界王神界におられる、大界王神様がお二人を見ていて『ここにつれてこい』と言っておりまして…早い話なのですが、わたしについて来ていただけませんか?悪いようにはしませんよ」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせる。
「大界王神様…悟空から聞いたことがある…。なんとかソードに封印されていたっていう例の…?」
「はい、そうです。直接話したほうが早いと思うので、とりあえず私の肩へ手を…」
「は、はい!」
ヤムチャは界王神の肩に手をあてたが、マーリンはそうしなかった。
「マーリン…?」
「マーリンさん、どうしました?」
「あいにくだが、わたしはソンゴクウを倒すための修行がある。私用ならソンゴクウとの戦いが終わったあとにしてもらいたい」
マーリンはきっぱりと答えた。
「マーリン…!界王神様に向かってなんてこというんだ…あはははっ…あーもうすいません界王神様、こいつちょっと寝ぼけているみたいで…」
ヤムチャは慌ててマーリンの口を押さえるが、タイミングが遅すぎる。
そんな二人のやり取りを見ていて、界王神はニヤリと笑った。
「マーリンさん、大丈夫です。今あなたたちが何をしようとしているか、全て知っていますから。それを知った上で、ついてきて欲しいと言っているのです」
妙に自信ありげな界王神の回答に、最初はついていく気はなかったのだが、マーリンは少し迷いはじめた。
「え…そうなんですか?じゃあ、俺たちが悟空を倒そうとしていると言うことも…」
「もちろん知っていますよ。今日の行動を見ていたと言ったじゃないですか。それより…今は一刻一秒も惜しいのではないですか?強くなるためにも…」
“強くなるため…”この一言が、マーリンにとって決定打だった。




【76話】

「…ヤムチャ、気が変わった。この人についていこう。きっと、何か考えがあってのことなのだろう」
「あ、ああ…」
二人は界王神の肩にしっかりとつかまった。
それを見て、プーアルは慌てて重力発生装置を元のカプセルに戻す。
そしてヤムチャの肩にプーアル、マーリンの腰にシルフもしっかりと捕まった。
界王神は再び軽く微笑む。
「それではいきますよ………カイカイ!」
界王神が奇妙な呪文を言い放ったと思うと、4人と1匹は地球上から姿を消した。

―ここは界王神界。
「さ、つきました」
さっきまで見ていた辺り一面の荒野が嘘のように、緑の草原が広がる。
その景色はとても自然が美しく、まさに界王神界という名に相応しい世界だった。
「ここが聖地・界王神界か…」
ヤムチャは声を漏らす。
「ヤムチャ、あそこに人がいるぞ」
隣にいたマーリンが数十メートル先を見ながらヤムチャに話しかける。
ヤムチャはその視線の方向に首を向けた。
すると、そこには一人の老人が立っていた。
その老人は界王神と同じような服装をしている。
ということは、この人が…?
「あなたが…大界王神様ですか?」
ヤムチャは老人に恐る恐る質問する。
「うむ、いかにも。こやつの15代前の界王神じゃ。よくきたのう、ヤムチャとやら…と、そこのギャルよ」
大界王神はほんの数秒だけヤムチャを見ていたが、その視線はすぐにマーリンだけに集中していた。
(この人…武天老子様と同じタイプだ…)
その様子を見て、ヤムチャは一瞬で悟った。




【77話】

軽い足取りで大界王神はヤムチャたちのほうへ近づいてくる。
「…ぎゃる?それは、わたしのことを言っているのか?」
目の前までやってきた大界王神にマーリンが質問する。
「お前以外にギャルはおらんじゃろう…ぬふふ」
そう言ってやらしい目つきになる大界王神。
マーリンはそれを無視するかのように、キリッとした目で大界王神を見つめる。
その鋭い視線に大界王神もすぐに気付いた。
「マーリンとやら…実に良い目をしておる。その何かを信じて疑わない目…目標のためには妥協を許さない目…そして、絶対に諦めない目じゃ」
目を見ただけで、大界王神はマーリンの性格を全て当てて見せる。
さすがに大界王神だけあって、ただのエロ爺ではないな、とヤムチャは思った。
「…大界王神様、さっそく彼らにご説明を…。地球の大会まで、残り2週間しかないみたいなので、あまり時間がありません」
ヤムチャたちを地球からここまで連れてきた方の界王神が割って入る。
「まあまあ、そう急かすでない…。とりあえず、お主はお茶でも入れて来るんじゃ」
「は、はあ…かしこまりました」
大界王神に命令され、界王神はお茶を入れに行った。
界王神ともあろうものが、地味にお茶入れをしているという光景にヤムチャは笑いそうになったが、どうにか堪える。
「さて…お茶はまだじゃが本題に入ろうかの」
大界王神は二人の前に立つと、背を向けて話始めた。
「…わしが今日、偶然地球を見ておったら、平和なのにも関わらず、大きな力と力が衝突しておった」
「俺たちのことですか?」
ヤムチャが間髪いれずに聞き返す。




【78話】

「うむ。何でお主らを呼び出したかと言うと、お主らが戦っている様子が目に入ったからなんじゃ」
「この星から…わたしたちを見たのか?」
マーリンが質問する。
この世界がどこだかは知らないが、地球とは明らかに別世界なのは確かだ。
とすると、ずっとここにいては自分たちが戦っていた様子も見れるわけないはず。
ならば、当然どうやって戦っている様子を見たのだろうかという話になる。
「わしの目は神眼で、全宇宙どこでも見渡せる。それに、この水晶球で見ることも可能じゃ」
大界王神は地面に転がっていた水晶球を指差した。
「例えば……ほれ、悟空たちじゃ。今は必死に修行しておる」
マーリンとヤムチャ、それにシルフとプーアルは小走りでその水晶球に駆け寄り、それを見つめた。
そこには確かに悟空や悟飯がパオズ山で修行している姿が映し出されていた。
「へー…テレビみたいだな、これ。ていうかピッコロも一緒なのか」
ヤムチャは感心したように言う。
その水晶球を見て、何故このような映像が映し出されるのか原理は分からないが、一応マーリンも納得する。
「なるほど…不思議な現象だが、世界中どこでも見渡せると言うのは事実のようだな」
「でも、大界王神様…偶然目に入ったってだけで、俺たちをここに?」
ヤムチャは続けて質問を重ねる。
「……もちろん、最初はその気はなかったんじゃが……悟空とのやり取りを見て、賭けてみとうなったのじゃよ、お主らに」
大界王神は神妙な顔付きになる。
「俺たちに…賭けてみたくなった?」
「あれだけの差を前にも、飽くなき向上心を持ち、何より“強さ”に欲があるお主らに、賭けてみとうなったんじゃ。時代が変わる瞬間を見たいと思わんかね?」
大界王神はヤムチャたちに何かを期待しているのか、気持ちを昂揚とさせながら喋る。




【79話】

「…話が見えません。どういうことでしょう?」
ヤムチャは焦っているかのように、核心に迫ろうとする。
大界王神は一息おき、ヤムチャたちに言った。
「…オホン。では、まずお主達に聞こう…今より強くなりたいかね?」
「はい、もちろんです」
「ああ、聞くまでもない」
ヤムチャとマーリンは大界王神の問いに即答する。
「……悟空たちを、倒したいかね?」
さっきより重い口調で大界王神は言う。
「……はい」
「…そのつもりでわたしは修行している」
二人はそれに対してかみ締めるように答えた。
大界王神はヤムチャとマーリンの顔を交互に数回見ると、ニコッと笑い再び口を開く。
「よろしい。お主たちを強くしてやろう」
「「…!?」」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせた。
強くしてやろうと言われても、痩せ細ったこの老人が、自分たちに一体何が出来るのだろう?
二人とも大体こんなことを考えていた。
「つ…つまり、大界王神様が直々に稽古をつけてくださるんですか…?」
ヤムチャは不安そうに大界王神に聞いた。
「稽古?そんなもんこの老体には無理に決まっておろう。それに、時間も足りない」
大界王神は首をゆっくりと振りながら断言した。
「じゃ、じゃあ一体……?」
「潜在パワーを引き出すのじゃよ。それで、お主達は今の何倍も強くなる」
大界王神は微笑みながらヤムチャとマーリンに向かって話す。
「潜在…パワー……?」




【80話】

「そうじゃ。要するに、眠っている力というやつじゃな。わしはそれを引き出すことが出来る」
ヤムチャはてっきり稽古をつけてくれるとばかり思い込んでいたので、予想外の大界王神の言葉に驚いていた。
それに、果たして自分には潜在能力…つまり、使わずに眠った力なんてあるのだろうかと疑問も抱く。
今備わっている顕在能力でさえ、限界を超えるぐらいの強さを身に付けたつもりなのに、今の何倍も強くなると豪語されては信じるほうが難しい。
仮に潜在能力があったとして、それを引き出したところでも、悟空たちと対等以上の実力になれるとも考えにくいのではないだろうか。
「…そんなことが可能なのか?」
マーリンも信じられない様子で界王神様に言った。
「ほっほ、わしにかかれば余裕じゃよ。見たところ、お主ら二人ともかなりの潜在能力が眠っておるのう…実にもったいないわい」
大界王神は笑いながら答える。
「大界王神様、お茶が入りました。ヤムチャさんたちもどうぞ」
「ああ、ご苦労じゃった」
大界王神は例を言うと、湯飲みを受け取りお茶を啜り出す。
どうやらプーアルとシルフは界王神の手伝いをしていたみたいで、プーアルからヤムチャ、シルフからマーリンに同じようにお茶が渡された。
しばらくお茶を飲んでいた大界王神だったが、半分ぐらい飲み干すと再びヤムチャたちに向き直る。
「で、どっちからやるんじゃ?わしはいつでもいいぞい」
大界王神は飲みかけのお茶を地面に置きながら、ヤムチャたちに質す。
「…どうする?マーリン」
ヤムチャは小声でマーリンに言った。
「そのパワーアップはどれぐらい時間がかかるのだ?」
その質問に大界王神が答える。
「うーむ、そうじゃな…個々の潜在能力の度合いにもよるが、儀式に5時間、パワーアップに20時間ってところじゃ。その間パワーアップを受けている者には、わしの目の前で座ってもらうことになる」
「な…ながっ!」
ヤムチャは思わずいつものノリで突っ込んでしまった。


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