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Saiyan killer2


【61話】

占いババは水晶球から地面に降りると、それに向かって手の平で何かを念じ始めた。
それを黙って見つめるピッコロ。
「ほほほーいほほーいほいホーイ…」
占いババが奇妙な呪文のようなものを唱えると、水晶球に変化が現れる。
透き通っていた水晶球が、白く濁り、何も見えなくなったのだ。
「これ…は………」
占いババは小さく声をあげる。
その頬に、わずかな冷や汗を浮かべて。
やがて、水晶球の濁りは消え、元の透き通ったただの球に戻った。
その水晶球をしばらく見つめていた占いババだが、元からシワだらけだった顔が更に歪む。
「終わったみたいだな。…どうなんだ?」
その表情を見て、ピッコロはただごとではないと思い、占いババに結果を問う。
「……こりゃ…とんでもない事が起きるかもしれん」
「かもしれん、では困る。具体的に何が起きるのか話せ」
ピッコロが強い口調で占いババに結果を話すよう催促すると、占いババの顔は深刻そうなものになり、しばらく間を置いて口を開く。
「…“具体的”には分からん。何も映らんのじゃ」
その呆気に取られるような結論に、ピッコロは占いババに突っかかる。
「なんだと…?ふざけているのか?」
だが、占いババは微動だにもしない。
ピッコロも気付いていた。
こいつはただ単に、ふざけているわけではないということを。
「…ピッコロとやら、よく聞け。今わしは地球の未来をこの水晶球を使って占った。…じゃが、この水晶球に、地球の未来が映らんかった。…この意味が分かるかね?」
「分からん。どういう意味だ」
占いババは青ざめながら、ゆっくりと言った。
「どういう経緯かは分からんが、このままいけば………地球がなくなる…ということじゃ」




【62話】

しばらくの沈黙が流れる。
ピッコロは目を大きくさせながら、占いババを見つめていた。
占いババはそれ以上何も言わずに黙り込んでいる。
「貴様、何を言っている……?」
重い空気の中、ピッコロが沈黙を破る。
「……こんな事が本当に起きるだなんて、わしじゃって信じたくないわい」
この様子だと、占いババが嘘を言っているとは思えない。
そして、ピッコロの中の予想は、確信へと変わって言った。
「…やはり、あの娘……マーリンとやらは、何かしでかしやがるのか……」
占いババに聞こえないように呟くと、ピッコロは続ける。
「おい、貴様。貴様の占いと言うものは確実に当たるんだろうな?これは今から何日後の話だ?」
「今から3週間後ぐらいじゃと思う…。未来予知に関しては、“一番確率の高い未来”を映し出すようになっておる。じゃから、100%とは言いきれないが…地球がやばいことに変わりはないじゃろうな」
「…そうか、分かった。助かったぞ、占いババとやら。悟空たちには俺から伝えておく」
「ああ…そうしてくれ。わしは近いうちに、地球以外の場所に避難するとするかのう…」
「…好きにしろ」
ピッコロはそう言うと、宙に飛び上がり、高速で悟空たちの家へと向かっていった。。
「…チッ。だがどうすればいい……悟空に言ったところで、何が起きるか具体的には分からんのでは、手の打ちようが…」
ピッコロは高速で移動しながら、独り言を呟く。
その目には、明らかな焦りの色が浮かんでいた。




【63話】

そして、ここはパオズ山。
孫家は天下一武道会に備え、ちょうど今日から本格的に修行を始めようとしているところだった。
「今日は日曜日だから、一日中修行が出来ますね。父さん」
悟飯が家の中で私服から胴着に着替えながら、悟空に話しかける。
「そうだな、悟飯。とりあえず、着替え終わったら準備運動すっか。にしても…昨日悟飯がデートなんてしなけりゃ昨日から修行できたのによー」
悟空は屈伸しながらニヤニヤして悟飯に言う。
「す、すみません…ビーデルさんが忙しくて昨日ぐらいしか時間とれなかったもので…」
その率直過ぎる言葉に、顔を赤らめる悟飯。
「ぼくも一緒に修行するー!少年の部はなくなったから、一般の方で出るんだ!」
悟天は腕立て伏せをしながら、気合十分といった感じだ。

スタッ!

そこへ静かにピッコロが降り立つ。
「え?ピ…ピッコロさん!?どうしてここに?」
降り立ったピッコロの元に、悟飯が一番に駆けつける。
「オッス、ピッコロじゃねぇか。天下一武道会に備えて、オラたちと修行する気になったのか?」
悟空も遅れてのそのそと歩み寄る。
「…武道会なんぞに興味はないが、話があってここまで来た」
「なんだ?改まって」
「実はだな……―――」
ピッコロは占いババから仕入れた情報を、全て悟空、悟飯に話す。




【64話】

「――という訳だ。マーリンという娘が鍵を握っているだろう。俺の嫌な予感が始まったのが、ヤツが地球に来ると知った辺りからだからな」
「地球が…なくなるって…本当なんですか?ピッコロさん…」
悟飯はいきなり突きつけられた最悪な未来にうろたえる。
悟空はそれを聞いてもあまり驚いた表情は見せず、ただ下を向いて何かを考え出した。
「占いババとやらがそう言っているんだ。ただ、もっとも確率の高い未来というだけであって、100%地球がなくなるというわけでもないらしいが…」
「なくなるにしろ、なくならないにしろ、ばっちゃんがそう言ってんならどっちにしろ地球がやべぇことに変わりはねぇ。けどよ、それだと抽象的過ぎて解決法がねぇんじゃねーか?」
「その通りだ。俺が今のところ思いつくのは、非道かもしれないが…取り返しがつかなくなる前に、マーリンとかいう小娘を始末するという方法ぐらいだな…」
ピッコロは提案を出すが、その提案に、悟空や悟飯が賛成するはずもなかった。
尤も、ピッコロも本気でそんなことをするつまりなんて更々ない訳だが。
「ピ、ピッコロ…さすがにそりゃねぇよ…。第一、今は別にワリィことしてねぇのに手ぇ出すってのはオラにはできねぇ…」
「そうですよ!それはあんまり過ぎます。ぼくたちと一緒にもっと他の方法を考えましょう、ピッコロさん!」
「…チッ…相変わらず甘いな、貴様ら親子は」
ピッコロは一回舌打ちし、続ける。
「それでは孫、お前はどうすればいいと考える」
ピッコロは意見を悟空に求めた。




【65話】

「難しいことはよくわかんねぇけどよ…もしマーリンが原因なら、マーリン以上にオラたちが強けりゃ問題ねぇんじゃねぇか?」
ピッコロの問いに悟空はすぐさま答えた。
「ぼくもそう思います…。それに、果たして本当にマーリンさんに原因があるのでしょうか?」
悟飯も悟空の意見を肯定する。
そして、その言葉にピッコロはハッとした。
「…確かに、俺の勘違いだということもあり得るな。だが…もし原因がヤツではないとしたら一体他に何が……」
「さっきチラッとあいつを見てきたけど、オラや悟飯の方が、だいぶパワーは上だったぞ。あいつが元凶とは思えねぇな」
「…忘れたわけじゃあるまい。10年ほど前、ヤツが1ヶ月という短期間で前のお前並みの強さに伸し上ったことを。今の強さは参考にならん」
「……まあな」
悟空、悟飯、ピッコロの3人は同時に深く考え込む。
悟天も最初は耳を澄ませて聞いていたが、会話についていけず、暇そうに腕立て伏せを再開していた。

「で…ピッコロ、地球がなくなる時期ってのは今からどんぐれぇ先の話なんだ?」
悟空がピッコロに質問する。
「役3週間後…だと聞いた。そう遠い話ではないぞ」
「そうか、じゃあ天下一武道会の後ってことだな…」
悟空はそう答えると、再び屈伸を始めだした。
「おい、孫…」
能天気にも見受けられる悟空の行動に、ピッコロは何かを言いかける。
だが、悟空はピッコロの言葉を気にせず準備運動を続けていた。




【66話】

「考えたってはじまらねぇさ。オラはとりあえず、うんと修行する。そして誰にも負けねぇぐれぇの強さになる!それじゃだめか?」
悪く言えば楽観的過ぎ、良く言えばとてもポジティブな悟空ならではの結論に、ピッコロの口元が緩む。
「……ケッ、貴様らしい結論だな。やはり、そうするしか手はないか」
「ピッコロさんも一緒に修行しましょうよ、せっかくですし!」
悟飯は一大事だと言うのに、ワクワクしているように見える。
やはり、このへんは悟空の血を引いているのだなとピッコロは思った。
「…フン、いいだろう。だが勘違いするな、俺は別にお前らと修行がしたいわけでは―」
「ピッコロー、そうツンツンすんなってー!それよりとっとと始めようぜ!」
こうして、孫家とピッコロの修行が始まった。
ピッコロが感じ取った“悪い予感”とは一体何なのか?
地球危機の原因は本当にマーリンなのか?
元凶は分からないまま、彼らはひたすら修行に打ち込みはじめた。




【67話】

「くっ……ぎっ…」
それから更に1時間経っていた。
動いてもいないのに、マラソンをした後のようにマーリンの体から大量に水滴が滴り落ちてゆく。
「だめだだめだ!ただ単に気を上げてどうする!それじゃあ疲れるだけだぞ」
ヤムチャの厳しい指摘が入る。
「いいか?気を上げることはさほど重要じゃない。それより何かにブチ切れるんだ。その怒りがお前をスーパーサイヤ人にする」
ヤムチャはさっきから何度も同じことを言っていた。
スーパーサイヤ人に関する知識が、それくらいしかないからだ。
だが、大よそ間違っているわけでもない。
「分かっている…!分かっているのだが……っ…」
マーリンは全神経を集中して怒ろうとしているが、特に憎く思っている相手もいないため、非常に難しいものだった。
「………よし!とりあえず休憩だ。髪の毛がゾワって一瞬逆立つときがあったから、多分もうちょいだな」
ヤムチャから休憩の合図が出ると、マーリンはバタリと倒れた。
「お、おい…大丈夫か?」
「…問題ない。それより一秒でも早くスーパーサイヤ人になれなければ…まだ続けるぞ、ヤムチャ!」
「無茶だ。とりあえず今は休め、体の傷は治るが、心が壊れちまったら取り返しつかないぞ」
ヤムチャはそう言いながらマーリンの背中をぽんぽんと叩いた。




【68話】

さっきまで寝ていたシルフは既に起きていて、両親が行っている不可解な修行をジッと見つめていた。
ただ目をつぶりながら何かを考えている母と、その隣で腕を組みながらそれを見守っている父。
余りにも不可解なため、何をしているか質問したのだが、『ソンゴクウを倒すための修行』としか教えてくれなかった。
悟空よりマーリンやヤムチャの方が絶対に強いと信じてやまないシルフにとっては、当然納得のいくものではない。
「ねー、お父さん。修行しなくてもあいつに勝てるのになんでこんなことしてるの?」
シルフが健気にヤムチャに質問する。
「…そ、それはなあ…」
父としては、子にここまで信じられたら、自分は悟空より弱いだなんて中々言い出しづらい。
それを聞いたマーリンは、乱れていた髪をかきあげるとシルフに近づいていった。
「シルフ、ソンゴクウはお前の想像している以上に強い男だ。今のままでは、わたしもヤムチャも勝てない。だからこうしている」
「え……お母さんたちが…あの男に勝てない?…どうして?」
「……ソンゴクウは、お前が生まれる前に、わたしが辛うじて倒したという話をしただろう?」
マーリンはシルフの前にしゃがみこみ、目線を合わせて言った。
「うん、でもお母さんはその時よりぜんぜん強くなったって…」
「確かに、わたしはその時より遥かに強くなったが、ソンゴクウはそれ以上だった。ヤツは前あった時より30倍ほど強さが増している…この意味が分かるな?」
シルフはそれを聞くと、驚いた顔になる。
「だって…だって…いろんな星を回ったけど、お母さんより強いヤツなんて一人も今まで……」
「シルフ…宇宙は広い。今までわたしが倒してきた者など、ただの雑魚に過ぎなかったということだ。少なくとも、この星の視点からだとな…」
残念にするシルフを見て、心が締め付けられるような思いがしたヤムチャ。
「そっか……でも、最後の勝つのはきっとお母さんかお父さんだよね?」
「それは、約束しよう。そのためにも、わたしたちは一秒たりとも無駄に出来ないんだ…」




【69話】

マーリンはそう約束をすると、拳を強く握り締め、打倒ソンゴクウを誓うように空を見上げた。
「…うん!がんばってね…お母さんも、お父さんも!応援するから!」
やはり、シルフは自分たちを信じきっている。
この純粋な期待を裏切るわけにはいかない…絶対に。
黙って会話を聞いていたヤムチャだったが、そう心の誓った。

それに…ヤムチャを心から応援してくれる者は、シルフだけではない。

「――様ー!ヤムチャ様ぁー!」
少し遠くから声が聞こえる。
3人はまっすぐと飛んでこちらに向かってくる者に一斉に視線を向けた。
当然ながら、ヤムチャはすぐにその声の主の正体に気付く。
「プーアル…!」
ヤムチャは思わずその正体の名を叫んだ
「プーアル……?知り合いか?ヤムチャ」
マーリンがヤムチャの言葉に反応し、ヤムチャに尋ねた。
「知り合いも何も、俺と長年ずっと一緒に過ごしてきたパートナーだ、あいつは」
自慢げにプーアルのことを語るヤムチャだったが、マーリンの表情はあまり穏やかではなかった。
「パートナー…恋人?」
マーリンは少し声のトーンを落としながらヤムチャに言った。
「ば、ばか!どう見たって恋人じゃないだろ…そもそも地球人じゃなくて猫だし」
「そういう意味だと、わたしも地球人ではないが…」
マーリンは不信そうな表情を浮かべ、ヤムチャを睨むようにして立っていた。




【70話】

「……あのなあ」
「ヤムチャ様ぁーー!今戻りました!」
プーアルは飛んできた勢いで、小さな体ながらそのままヤムチャの顔面にに抱きつく。
「ご、ご苦労だった、プーアル…」
抱きついてきたプーアルの頭をよしよしと撫でるヤムチャ。
しばらくしてからプーアルがヤムチャの顔から離れる。
「あれ…ヤムチャ様、そちらの女性とお子さんは…一体?」
プーアルは今気付いたのか、ようやくその話題に触れた。
「ああ…紹介しようプーアル。こっちは俺の嫁さんでマーリン。で、これが俺たちの子供、シルフだ」
「……!?……え…?ヤムチャ様、結婚されてたんですか!?」
ヤムチャの言葉を聞いて、思わず目が点になるプーアル。
それもそのはず、長い間ヤムチャと共に過ごしてきたのに、ヤムチャに奥さんがいることに全く気付かなかったからだ。
だが、プーアルが気付かなかったのも無理はない。
「ほら、前に話したろ、人造人間との戦いに備えて俺が一人身で修行していた時に出会った女の子の事。それがこのマーリンってわけだ。で、昨日ドラゴンボールを使って地球まで呼び寄せた」
「あ…!そんな話ありましたね。ボクはその場にいなかったからいまいち記憶が曖昧で…でもお子さんは…いつ…?」
「んーと…なかなかプライベートな質問だな。まあ、その時に精神と時の部屋で…ちょっとな」
自分が知らなかったヤムチャを取り巻く事実を告げられ、プーアルは素直に驚くしかなかった。
だが、その驚きの表情もやがて喜びに変わる。
なんせ、結婚とは長年主人であるヤムチャが追い求めていた夢だったのだから。


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