【41話】
「ヤムチャ…お前は自分が思っている以上に強い力をもっている。その気になれば孫悟空にも勝てるぐらいのな…わたしはそう思う。本気で、だ」
「ありがとな。でも無理だ…あいつらは次元が違うんだよ、もはや」
パシン!!
ヤムチャはそれまでマーリンの顔を見ていたのだが、何故か視界から突然それが消えた。
マーリンにビンタされたのだ。
「い…いってーな!…なにすんだよ!」
ヤムチャは赤くはれ上がった頬を押さえながらマーリンに向かって叫んだ。
「諦めないって言ったのは嘘だったのか?わたしと同じように、諦めず戦うんじゃなかったのか?」
マーリンの目付きは厳しいものになっていた。
自分が尊敬するヤムチャを…こういう形で説教するとは少し残念なものだが、ここはびしっと言うしかないと判断したのだ。
ヤムチャもようやく目が覚めたのか、先ほどとは打って変わって真面目な顔つきになる。
「…たしかに前のレベルなら追い付こうと言う気になれた。だから俺も修行したさ…死に物狂いでな。けどあいつらも強くなっていく。俺の何倍ものペースで。
気が付いたら、この歴然たる差。お前は見てないから分からないだろうけど、もはや俺なんてお荷物状態だ。
だからもう、あいつらを目指すのはやめた。俺は自分の限界を越えて越えて、越えられなくなる日がくるまで修行を重ねることにしたんだよ…。これが俺なりの結論だ」
ヤムチャは立ち上がると、マーリンの目をしっかりと見ながら喋った。
「その修行の先には何があるというのだ…」
「さあな…たまに考えちまうんだよ。なんで俺修行してるのかなって…こんな頑張ってなんの意味があるんだろうってな。でも、そんな弱音にぶち当たったと
きに、そこで浮かぶのはいつもお前の顔だった…マーリン…」
「……ヤムチャ…」
「まっ、しょせん目標のない修行だ。狼の一人旅で終わっちまうかもな…」
120 名前:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 [sage] 投稿日:08/12/09(火) 01:36 ID:.50R71JU
【42話】
自らの限界…いや、言い換えるのなら地球人の限界。
地球人の中では抜群の格闘センスを誇るヤムチャ。
そして一般人では想像を絶するような、血の滲むようなと努力と、神様や界王様の元での修行。
ヤムチャはマーリンの言うとおり、既に宇宙から見ても指折りの達人と言われても良いレベルの強さを持っていた。
だがその強さにも限界がある。
元々ぬくぬく平和な星の元産まれた地球人と、常に死と隣り合わせで毎日が戦いの日々…更に死にかけから全快すると強さがいくらでも増す戦闘民族サイヤ人
では、
体質や潜在能力…その他に“スーパーサイヤ人”などという界王拳を遥かに凌ぐパワーアップの技なども考慮すると、はじめから条件が違いすぎた。
だが、ヤムチャはそれでも諦めずに修行を続けていた。
しかし、待っていたのは悲惨な結果。
異常なまでに強くなっていく敵の出現と、それを相手に、手も足も出ないままやられるだけの自分。
そしてその敵を更に凌ぐような力をつけていく悟空をはじめとするサイヤ人たち。
現実の壁はヤムチャにとって、余りにも高すぎた。
ヤムチャは自分が敵に通用しないという現実より、その強い敵より更に強くなっていく仲間たちに対してのショックの方が大きかった。
なぜならそれは間接的に、ヤムチャと悟空たちの圧倒的な力の差をヤムチャに突きつけていたからだ。
恐らく、今悟空とヤムチャが戦ったら小指一本でもやられるだろう。
のし掛かる無言の重圧と、無意識のうちに確立された孤立感。
今じゃ一緒に稽古しようとすら言われなくなった。
そんな嫉妬心や蟠りを、ヤムチャはずっと胸に秘めながらも、一人で修行をしていたのだ。
いつか…いつか、この差が縮まって、悟空を倒せなくとも、せめて一泡吹かせることができるぐらいの強さを求めて。
悟空は全く意識してなかったが、ヤムチャの中の悟空へのライバル心は消えないままだった。
【43話】
いつしか、ヤムチャの目には涙すら浮かんでいた。
「誰よりも強くありたい…俺は…俺はそんなことを願うことすら許されないのか……?」
誰かに問いかけたわけでもなく、ヤムチャは空を見ながら自問自答する。
「そんなことは…ない。一人旅では終わらせない」
そのヤムチャの様子を見て、ようやくマーリンはヤムチャに優しい声をかける。
「お前は…ヤムチャは…わたしの師匠だぞ?ソンゴクウを一度とはいえ破ったこのわたしの…な。
だから…それだけの悔しい気持ちがあるなら…諦めないでほしい…その気持ちがあれば、絶対に結果として現れるはずなんだ…」
マーリンはヤムチャに視線を合わせずに言った。
「……」
ヤムチャは何も言わない。
マーリンは続ける。
「そもそも…わたしたちがやろうとしてることは間違いだらけだ。違うか?」
「…!その台詞は…」
心に覚えのある発言にヤムチャは顔を見上げる。
「ああ、お前の言葉だ。地球人が最強のサイヤ人に挑もうとするのはたしかに間違っているかもしれない。でも、それがなんだ?
間違っていようといまいと、そんなことはどうだっていい…しかし、これだけは言える」
マーリンは少し考えてから言った。
「サイヤ人だろうと地球人だろうと、最終的に諦めなかったものが勝つんだ。わたしのように、そしてヤムチャ、お前のようにな…」
「…マーリン………」
その言葉は、体より心が苦しい修行を続けていたヤムチャにとって、物凄い支えとなり、心に響いた。
実際は、悟空に勝つのなんて不可能かもしれない。
しかし、ここにこうやって自分をきっちりと見つめ、真剣に考えてくれる人がいる。
例え勝てなくても、この言葉を励みにいくらでも修行に打ち込める気さえヤムチャは沸いてきた。
こうやって、人に認められたのは久々なのだろう。
ヤムチャの心はいつの間にか満たされていた。
【44話】
ヤムチャは黙ってマーリンをその場で抱き締める。
大きなヤムチャの肩幅が、一回り小さいマーリンの肩をすっぽりと覆う。
突然の抱擁にも、マーリンは抵抗すらしなかった。
そしてヤムチャは彼女の耳元でそっと囁く。
「…愛してる。やっぱり最高だ、マーリンは」
「…わ、わたしも……、その…同じ気持ちだ」
マーリンも恥ずかしそうに、ヤムチャに聞こえないぐらいの声で言葉を返す。
既にヤムチャの目から涙は消えていた。
黙っていても、二人が次にすることは客観的に見て想像が付く。
二人は目を瞑り、顔を近づけ、濃厚なキスを……
「お母さあああああん!お父さあああああああん!!今のどっちが勝ったの!?」
出来なかった。
シルフが大声で叫びながらこちらへ走ってきたのだ。
焦って体を離し、ヤムチャとマーリンはお互いに背を向ける。
「遠くてよく見えなかったけど、二人とも動いてなかったし組み手は終わったんだよね?どっちが勝ったの?」
シルフはそんなことを知るよしもなく、目をキラキラさせながら子供特有の残酷なまでに空気を読めない発言をする。
「え……あ、ああ…?ど…どっちが勝ったっけ、マーリン」
ヤムチャは赤面しているのがばれないように、顔をシルフの後ろに向けて、話をマーリンに振った。
「わ、わたしが答えるのか…?そ、そうだな…うーん…双方痛み分けってところだろうか…」
マーリンの頬も心なしか赤く見える。
「ソウホウイタミワケ?新しい技の名前?強いの?」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせて、やれやれという顔をする。
【45話】
「技の名前じゃない。引き分け、ってことさ…母さん曰く、な」
ヤムチャはシルフの頭を大きな手で撫でながら答えた。
「へへ…やっぱりお父さんもお母さんも、めちゃくちゃ強いんだね!」
「…いや、まだだ。俺はまだまだ強くなるぜ、シルフ」
ヤムチャはガッツポーズを取りながら、我が子に対し強気な発言をする。
絶望の淵から這い上がり、今ではその顔に希望の色が見えていた。
マーリンはそのヤムチャの様子を見て、とりあえず一安心といったところなのか、安堵のため息をつく。
先ほどの落ち込みようが嘘のように、今のヤムチャはやる気に満ち溢れていた。
その時!
大きな気を近くに感じ、マーリンの目付きが鋭くなる。
「この気…!」
そして、大きな気の主は、マーリンの真後ろに立っていた。
即座にマーリンは後ろを振り向く。
ヤムチャもほぼ同時に同じ方向を振り向いた。
そこには…ヤムチャにとってもマーリンにとっても、見覚えのある男が立っていた。
「オッス!久しぶりだなあ、ヤムチャ」
背後からのほほんとした声が聞こえた。
どこか気が抜けているが暖かい声が。
「ヤムチャの気がずっと乱れてたから瞬間移動で見に来たけど…やっぱりただの修行じゃなかったみてぇだな」
「ご、悟空…!はは…やっぱりこれだけ激しく戦ったらばれちまうか」
ヤムチャは恥ずかしそうに笑い飛ばした。
「お前は…ソンゴクウ…!」
マーリンは睨むようにして悟空を見ながら言った。
悟空がヤムチャと全く同じ胴着を着ていることが気に食わないようだ。
「あれ…おめぇオラのこと知ってんのか?そういや…どっかで見たことあるような顔だな…」
悟空はあごに手をあてながら考え込む。
「んー……あ!…あーーー!!おめぇは…あの時の…!?」
悟空はびっくりした様にマーリンを指差した。
【46話】
その声に一番びっくりしたのは何故かヤムチャだったわけだが。
ずっと記憶の片隅にあった、かつての敗戦の様子が悟空の脳裏に再現される。
悟空の中でちょっとしたトラウマでもあるこの女を目の前にし、思わず声を荒げてしまった。
マーリンは悟空のあまりの驚きようにも動じず、冷静な口調で言葉を返す。
「…。久しぶりだな、ソンゴクウ。気のせいかもしれないが、余り見た目が変わってないな…」
「ああ、オラは純粋なサイヤ人だから、わけぇ時間が長いんだ。…ってベジータが前に言ってたっけな…確か」
悟空はどうでもよさそうに笑いながら答えると、空かさず続ける。
「いやー、にしてもすんげぇ懐かしいな!そういえばオラまだおめぇの名前しらねぇや!なんつーんだ?」
「…マーリンだ」
「へぇ…マーリン、か」
悟空が自分から名前を聞くとは珍しい…と、ヤムチャは思った。
かつて勝負に負けたこともあり、マーリンにはただならぬ思い入れがあるのだろう。
それにしても、マーリンの悟空に対する接し方はずいぶんと冷たいように見える。
「で、なんでおめぇがここにいるんだ?ずいぶんめぇ(前)に宇宙に帰ったって聞いたけど」
悟空は不思議そうにマーリンに尋ねる。
「そこは俺から説明しよう、悟空」
マーリンと悟空の間にヤムチャが待ってましたとばかりに割ってはいった。
10年ほど前、悟空との勝負のあと、別れ際にヤムチャとマーリンは再び会おうという約束をしていたということ。
そして昨日、ドラゴンボールを使い、宇宙から地球に呼び寄せたということ。
事実をありのまま悟空に伝えるヤムチャ。
「なるほどなー…ドラゴンボールかぁ。それなら納得だ。ま、オラもおめぇに会いたかったしちょうどいいや」
悟空は本当に嬉しそうにしていた。
かつて自分を破ったほどの強敵と、再び会えたという事実が彼をワクワクさせているのだろう。
それはマーリンも同じで、あのギリギリの勝負を、もう一度味わいたいと思っていた。
だが、それよりマーリンは悟空に聞きたいことがあった。
「ところで、ソンゴクウ。…お前はヤムチャを、どう思っている?」
【47話】
マーリンは唐突に悟空に訪ねた。
予想だにしなかったマーリンの発言に、思わずヤムチャがまた首を突っ込む。
「お、おい。マーリン何言ってるんだ…そんなこと聞いてどうするんだよ」
質問を投げかけるヤムチャをほんの一瞬横目で見ると、再びマーリンは悟空へと視線を戻した。
「ヤ、ヤムチャをどう思っているか…って?言ってる意味がよくわかんねぇよ。…まあ、普通にイイ奴じゃねぇかな」
悟空はマーリンの突拍子もない質問に、たじたじと答える。
言ってる意味がわからないってことはないだろう…と、心なしか悲しい発言にヤムチャは苦笑いする。
「そうじゃない。わたしが聞いているのは、戦士としてのヤムチャだ」
「戦士と…しての?」
「そう。お前たちと共に戦ってきたヤムチャを、お前はどう思っているのかと聞いている」
マーリンは悟空を見つめる。
その目に迷いはない。
マーリンの目をしばらく見つめたあと、悟空は真剣に考えはじめた。
「改まって言われんとうまく言葉が出てこねぇけど…おめぇが聞きたいのは、オラがヤムチャを強いと思ってんのか、それとも弱いと思ってんのかってことか?」
「まあ、簡単に言うとそうだな。もう少し、捻った回答が欲しいものだが」
「そうか。じゃあ正直に話すぞ、普通にヤムチャはめちゃくちゃつえぇと思う。ただ、オラの仲間たちが強すぎてあまり目立てねぇけどな…」
悟空は自分なりの素直な答えを出した。
ヤムチャは弱いと言われなくてよかったとホッとするが、マーリンは納得していない。
数秒黙っていたが、再びマーリンの口が動く。
「最後の一言は余計だな。その言い方だと、ヤムチャがお前を含めお前の仲間たちと比べたら、弱い方に入ると言う風に聞こえるが、ソンゴクウはそう思っているのか?」
マーリンは少しだけ、声を震わせながら言った。
ヤムチャが弱いという扱いを間接的に下した悟空に対して、自分では気付かないほど自然に怒りがこみ上げてきている。
【48話】
「いや…まあ、順序付けしちまえばそうなるかもしんねぇけど…どうでもいいじゃねぇか、そんなこと」
「順序付けをすればそうなるだと…?」
マーリンはそれまで少し距離を置いていた悟空にジリジリと詰め寄る。
今にも悟空と一戦おっぱじめようかという空気になりかけたところを、ヤムチャがマーリンの肩をグイとつかんで止めた。
「…そろそろやめとけよ、マーリン。はは…悪いな悟空…こいつは結構無駄に熱くなるところがあって……。…な?マーリン」
言われてみれば、確かに地球にきてからというもの、ちょっとしたことですぐ怒りの感情が滲み出ていた自分に気付く。
ヤムチャのこととなると、いてもたってもいられない自分が少し大人気ないように思えてきて、ちょっと恥ずかしくなるマーリン。
ヤムチャは笑いながらいつもの明るさを纏い、マーリンの背中をぽんぽんと叩いて、怒りを宥めた。
だが、マーリンは知っていた。
このヤムチャの笑いが作り笑いであり、実際は先ほど打ち明けたような悔しい気持ちで胸がいっぱいなんだと。
その事実を再度確認すると、いくら悟空が強いからと言えど、悟空のさきほどの発言が余計頭にくる。
もちろんながら悟空には悪気など全くなく、ヤムチャを見下していたりはしていないわけだが。
「っっりゃああああ!ロウガフウフウケンッッ!」
その突然の掛け声と同時に、悟空は背後に殺気染みた気配を感じとる。
何かが後ろにいて、自分に向かって攻撃しようとしているという状況を振り向かずに理解すると、その気を瞬時に探り、相手の位置を正確に把握した。
そしてヒョイと数十センチ横に体を避けると、後ろから突っ込んできた犯人が前のめりにバタンと倒れこむ。
見たところ、まだ小さな子供みたいだ。
トランクスや悟天と同じぐらいだろう。
なんでこんなところに子供が…?
そう思った悟空だったが、その子供の顔を確認すると、誰かに似ている。
だが中々誰だか思い出せない。
うーん、と悟空は長考をはじめた。
【49話】
「今の攻撃をかわすとは…運だけは強いようだな!オマエは!」
その子供は攻撃を避けられると予想すらしてなかったのか、驚いた様子で呆気に取られていたが、やがて起き上がり再び自分に向かって構えを取っていた。
「中々の不意打ちと言いてぇところだけど、その程度の攻撃じゃオラのかすりもしないと思うぞ」
「さ…さっきから聞いていれば偉そうな事を言いやがって…オマエ何も知らないみたいだな!ここにいるぼくのお父さんとお母さんは宇宙最強の戦士なんだぞ?」
子供は宇宙だとか最強だとかスケールの大きいことを自慢気に語るが、悟空の耳にはある一言しか耳に入らなかった。
「お父さんとお母さん……?おめぇ…何言ってんだ?ここにはオラとヤムチャとそこにいるマーリンって娘しか………って……えええ?まさか、ヤムチャ……?」
悟空は苦笑いしながらも、現実を必死に確認しようとする。
「いやあ…ははは……ばれちゃ仕方ないか。そいつは俺の子だ。母親はそこにいるマ――」
「ぎょえええええええええええええええええ!!ほんとかぁぁあ!?」
ヤムチャの言葉を全て聞き終わる前に、悟空は後ろにすっころんでいた。
まるで、未来から来たトランクスがベジータとブルマの子ですと告白した時に近い驚きようだ。
「お、おめぇら…結婚してたのかぁ…ヤムチャ全然教えてくれねぇんだもんなぁ…」
悟空は倒れながらヤムチャとマーリンの顔を見渡す。
そうとう驚いたのだろう。
悟空は腰を抜かしたかのように身動きをとれずにいた。
「結婚と言うか…子供はいた…みたいだ。まあこれには色々とあってだな……って悟空、大丈夫か?…立てる?」
「あ、ああ…よっこらせ…っと」
悟空は転んだことによって服についてしまった砂をパンパンと払い落とすと、ヤムチャの後ろに隠れているいまだに警戒心を解かない子供が視界に入った。
「そう力むなって、オラは別に喧嘩しにきたわけじゃねぇんだ」
「フン…じゃあお父さんやお母さんより弱いのに偉そうな態度を取るのはやめてもらおうか!」
「はは、わかったわかった」
悟空は参ったような顔をすると、らちが明かないと思ったのか、ヤムチャの方を再び見直す。
そして何かを思い出したかのように話を始めた。
「あ、ところでヤムチャ、マーリン。おめぇら天下一武道会に出てみねぇか?」
【50話】
「テンカイチブドウカイ?」
黙っていたマーリンが理解できない単語に反応する。
「ああ、2週間後に地球の武道会があるんだ。組み手形式で相手を倒していって、最後まで勝ち進んだヤツが優勝する大会だ」
悟空は人差し指を立てながらマーリンに説明を始める。
「…ほう。それは面白そうだな」
マーリンは興味の沸いた大会にニヤリと笑うと、ヤムチャの様子を伺う。
すると、ヤムチャは何故か険しい表情になっていた。
「…誰が出るんだ?」
ヤムチャは恐る恐る悟空にたずねる。
「んーと…多分、オラ、悟飯、ベジータ、トランクス、悟天、ピッコロ…はわかんねぇな。あとクリリンも出るって言ってたと思う。18号とかも出そうだな…」
ずらずらと仲間の名前をあげていく悟空に対し、ヤムチャは名前を一人挙げられるたびに表情が暗くなる。
「ほ、ほとんど出るわけか、俺らの仲間は…」
マーリンは悟空の仲間の名前を挙げられても、ほとんど分からなかったが、ヤムチャの反応からして今挙げられた者たちの方がヤムチャより強いのだろうと把握する。
…今のところは。
「ああ、みんなで久しぶりに出ようぜって事になったんだ。ヤムチャも出ようぜ」
「悟空…それって俺が出ても……」
「ヤムチャ」
弱音が出そうになったヤムチャを、マーリンが制する。
そしてマーリンは悟空に歩み寄り、顔を悟空に近づけると、不適な笑いを見せながら言った。
「ソンゴクウ、わたしとヤムチャはその大会に出る。そして、お前たちを倒す」
「ちょ…お前何勝手なことを…」
ヤムチャはマーリンの勝手な発言に肝を抜かす。
それもそのはず、ヤムチャはあの大会では全くいい思いをしたことがない。
初参戦はジャッキー・チュンとかいう老人にさわやかな風をプレゼントされ、場外負け。
2回目は天津飯と激しい攻防をするものの、最後は失神し、足を折られてKO負け。
3回目は神様が相手で、繰気弾をヒットさせるも直後に手刀をもろにくらい場外負け。
いわばヤムチャのトラウマだ。
だが、そんなヤムチャも関係なしに、悟空とマーリンの間にピーンとした空気が張りつめる。