">remove
powerd by nog twitter


Saiyan killer2


【151話】

時速数百キロで宙に放り出されたクリリンの体が、室内会場の壁にぶち当たりそうになった…が、直前で武空術で留まりなんとかその場をしのぐ。
それを見てヤムチャはチッと舌打ちをした。
だが、クリリンはそれでも怯まずそのまま武空術を使い、高速でヤムチャに向かって頭から突進していく。
「っと!危ない!」
口ではこう言ったものの、ヤムチャは危なげなくそれをかわす。
そして、クリリンは再び舞台に着地すると、腰にぐっと力を込め、そのバネを利用してヤムチャに向かって突っ込み、無数のパンチを繰り出した。
ヤムチャはそれを数発受け止めると、隙が出来たところでクリリンの顔面にジャブ気味の素早いパンチをシュっと2発打ち込み、クリリンは顔を押さえながら後方に数歩後退する。
「どうした、クリリン。まだ俺は一発もダメージを受けてないぞ」
「…く、…くそッ!くらえっ…はっ!」
ヤムチャの挑発にクリリンはその場でエネルギー弾を打つ。
「いまさらこんなものが通用するかっ!」
ヤムチャはそう言うと、クリリンのエネルギー波をグローブでボールをキャッチするかのように手の平で包み込むと、それを思い切り握りつぶし、エネルギー弾はパンと音をたてて弾けた。
「な…なんだってえ!」
エネルギー弾を無効化されたことに、思わずたまげるクリリン。
ブランクがあるとはいえ、ヤムチャ相手にここまで自分の力が通用しないなんて、予想だにしていなかった。
少なくとも、昔はヤムチャより絶対に強かったのだ。
クリリンにだってプライドはある、この試合は同門生として、地球人としてヤムチャには負けられない。
「…まだまだァ!」

ドガガガガガ………ガギッ!!!ガガッ!

クリリンは諦めずにヤムチャに猛攻を叩き込むが、ヤムチャの体をその拳でとらえることはできないでいた。
上下左右、あらゆる方向から攻め込んでいて、決して単調な攻めではない。
だが…ここ最近ひたすらマーリンと組み手をしていたヤムチャにとって、クリリンの動きなどまるでスローモーションを見せられているかのように遅く感じていたのだ。




【152話】

どんなに変則的な攻めでも、動きが遅ければ、単純にそれを避けるのはなんら難しいことではない。
もはや、クリリンが何をしても通用しないレベルにまでヤムチャは達していた。
「はいッッ!」
ひたすら攻撃を繰り出すクリリンだが、逆にヤムチャのストレートを頬にもろに食らってしまい、再び後方にぶっ飛ばされてしまう。

ズザザザザザァァァ……

体が地面に擦れながら、クリリンの体はギリギリ場外に落ちないところくらいまで慣性で移動した。
その摩擦で、【亀】の文字が刺繍されている胴着が数箇所破れ、穴があく。
「はぁ…はぁ…」
クリリンは息を切らしながらヤムチャを睨みつける。
ヤムチャも試合開始から相も変わらず、同じく真剣な目つきでクリリンを睨む。
「悔しいけど…勝てない…!このままじゃヤムチャさんに負けちまう…。こうなったら…………」
クリリンはヤムチャに聞こえないように、ブツブツと自分に何かを言い聞かせながらゆっくりと起き上がった。
「ん…なんだ…?何かする気だな、あいつ」
ヤムチャはただならぬクリリンの様子に、体全身に気を込めて警戒心を強めた。
「ヤムチャさん…悪いけど、この試合…最後には俺が勝たせてもらいますよ!」
クリリンは不敵にも、ヤムチャに向かって勝利宣言をかます。
「…何かしてくるんだろ?こいよ、クリリン」
ヤムチャは構えを取りながらクリリンを誘導する。
クリリンはゆっくりと歩きながら、ヤムチャに近づいていく。
そんなクリリンをじっと見ながら、ヤムチャはなおも警戒を緩めない。

ゴゴゴ…

強い気のせいで、空間が歪み地面がわずかに揺れる。
次の瞬間、クリリンがニヤっと笑ったと思うと、クリリンの気が今までで最大の大きさに膨れ上がった!
次の攻防で勝負をかける気だ。
そして、クリリンはバッと両手の手の平を広げ、自分の額にかざす。




【153話】

「…太陽拳っ!」

カッッ!

クリリンがそう叫ぶと、辺りは一面白銀の世界に包まれる。
この状況では、ヤムチャにクリリンの姿は全くと言っていいほど見えない。
クリリンはまさに、この瞬間のために気を全開まで上げたのだ。
「もらったァッッッ!!!」
クリリンの強烈な蹴りが、目を瞑っているヤムチャの顔面を目掛けて放たれる。
一撃KOとはいかないだろうけれど、完全に不意をついたので、ヒットすればヤムチャといえ場外まで吹っ飛ぶはずだ。
クリリンは勝利を確信していた。
が…勝利を確信していたのは、クリリンだけではなかった。
クリリンの視界に、目を瞑りながら口元が緩んでいるヤムチャの顔が映る。

ブンッッッ!!

蹴りは、むなしく空を切った。
「…そう、お前には太陽拳しかないはずだ。あの状況ではな…」
「な……にぃ…っ!?」
クリリンが渾身の力で放った蹴りを、ヤムチャは立ったままその場でブリッジをするかのように、体を反り返らせて華麗に避けてみせたのだ。
ブリッジをした状態のヤムチャに、その真上に浮かんだ状態にあるクリリン。
そして、空中に残されたクリリンを、そのままサッカーのオーバーヘッドを決めるかのような体勢で、ヤムチャが蹴りをクリリンの背中に叩き込む。
「げぶ…し……ッ!」
無防備だったクリリンの体は、それこそサッカーボールのように無抵抗にぶっ飛び、場外の壁を貫通して、その外で更に50メートルほど進んだ辺りでようやく止まった。
失神しているのか、それ以降ぴくりともクリリンの体は動かなかった。
気を探ると、とくに死に掛けているような弱弱しい状態でもなかったため、命に別状はないだろう。
「肉弾戦でもダメ、気功波の類も効かないとあっちゃ、お前は太陽拳に頼るしかないよな…。全部読めていた」
ヤムチャの声はクリリンに聞こえていないが、なおもヤムチャは続ける。




【154話】

「太陽拳は目くらまし…つまり、相手が目を開けていないと通用しない。だったら、最初から目を瞑ってしまえばいい。そうすれば、目がくらんでパニックになることもないからな。
太陽拳を回避したあと、落ち着いて気を探れば、ただの無防備に飛び上がっているお前の姿が俺にはくっきりと見えていたったわけさ。心の目で、な」
そう言うと、ヤムチャは舞台からゆっくりコツコツと降りていった。
「もっとも……あの蹴りが俺にヒットしたとして、それで俺を倒せたとは思えないが…」
ヤムチャは舞台の階段をちょうど降り終わるぐらいに、付け足すようにそう呟く。
「おい」
審判とすれ違い際にヤムチャは声を掛ける。
「あ…は、は、はい…!」
びびりながらヤムチャの声に審判、兼ねアナウンサーが反応する。
余りにも凄すぎる戦いに、場内は既に静まり返っていた。
アナウンサーも、実況なんて当然できたものではない。
「結果」
ヤムチャはそれだけ言うと、マーリンたちの方へ小さくガッツポーズをしながら歩み寄っていった。
「ヤ………………ヤムチャ選手の、勝利ィィィ!!!」
そのアナウンサーの声を合図に、ドッと歓声があがった。
「とりあえず、一安心といったところなのかな?ヤムチャ」
マーリンがそんなヤムチャを、軽いハイタッチで迎え入れる。
「ああ。どうにか、勝てたみたいだ」
ヤムチャが勝利をかみ締めるかのように答える。
どうやら結構嬉しいらしい。
「…あのクリリンという者も、地球人にしてはかなりの達人なのだな…見た目以上に機敏な動きだった。まあ、ヤムチャが相手では仕方ないだろう」
「お父さんかっこいい!もう最高!」
シルフは父の戦いっぷりを見て、興奮気味に叫ぶ。
悟空はというと、マーリンの隣で半ば唖然としながら突っ立っていた。
その様子にマーリンが気づく。
「ソンゴクウ。何か、言うことはないのか?」
「…へへ……さすがに、オラもちょっと言葉に詰まっちまったな…」
以前なら、少なくともクリリンとヤムチャはあそこまで差はなかったはずだ。
だが、今日見た光景は悟空の予想を遥かに超えた次元だった。
自分より強いか弱いかではなく、悟空は前と比べて格段にレベルアップしていたヤムチャの強さに驚いていた。




【155話】

驚いている悟空に、マーリンは追い討ちを掛ける。
「言ったはずだ。わたし“たち”は、ソンゴクウ…お前を倒す、とな…この意味が分かるか?」
そのマーリンの言葉は、はったりや強がりではなく、確かな自信とそれを裏付けるだけの実力があるからこそ言えるものだった。
それに勘付いているのか、はたまたまだ余裕だと思っているのか、悟空はそれ以上何も言わずにただ少し笑うと、ヤムチャの前を通り、自分のブロックの舞台の方へと戻っていく。
ヤムチャと悟空は言葉を交わさないまま、すれ違うように通り過ぎた。
「…さてと、あと予選の見ものはお前と18号の対決ぐらいか。他のはどうでもいいや…どうせ悟空やベジータたちが進んでくるだろうし」
ヤムチャはそう言って、近くにあった椅子に腰をかけた。
「地球の大会なのに、勝ち残ってくるのがほとんど異星人とは皮肉なものだな…」
「はは…それを言うなよ。でも確かに俺ぐらいか、予選を勝ち残れそうな地球人って」
ヤムチャの目に遠くで自分が吹っ飛ばしたクリリンが、担架で運ばれているのが目に入る。
悪い気はしながらも、ヤムチャはクリリンのプライドを考え、敢えて謝ろうという気はなかった。
倒された相手に謝られるというのは、ヤムチャの中ではトップ3に入るぐらいの屈辱だったからだ。
「そういえば…俺対クリリン、お前対18号……これって夫婦対決じゃん!マーリン、お前気付いてた?」
「いや…」
ヤムチャは今更そんなどうでもいいことに気付いて、何故か嬉しそうにする。
「で、何度も言うけど、18号からは気を読み取れない。つまり、肉眼で追ったり、空気の流れを感じ取ったりして動きを読まなきゃいけないわけ。そこが勝負のポイントになるだろうな」
「気を捉えることができないというのは、確かに厄介だな…」
マーリンはその場で少し不安そうな表情を見せながら、考え込む。
「ポイントは3つ。周りの空気の変化を感じ取ること…これは今言ったな。相手の動きをなるべく止めること…相手に自由に動かれると、試合が長引いて不利だ。
最後に、油断しないこと…見た目はか弱い女だが、パワーはフリーザ以上だからな。強敵だと思って挑め!このくらいか…」
ヤムチャは自分なりに18号対策を練り、マーリンにアドバイスを与えた。




【156話】

マーリンは目を瞑り、相槌を打ちながらそれを聞き、頭の中でイメージを浮かべる。
「ヤムチャが対戦したら、3つめのポイントである“油断”をして負けそうだな…ふふ」
「……ほっとけ!」
ヤムチャは以前、自分が最後に出場した天下一武道会で、試合の詰めで油断して神様に敗れたのを思い出した。
「俺だってなあ…あの時、繰気弾がヒットした後になあ…追い討ちをかけていればなあ……勝てたんだぞ!」
「…一体、なんの話をしているんだ…?」
…虚しい無言の間が二人の時間を奪う。
それから、第二試合、準決勝、決勝へと試合は進んでいった。
当然ながら、大きな波乱もなく、ヤムチャとマーリンは順調に決勝まで勝ち進んでいく。
『…場外…ッ!ヤムチャ選手、Eブロック優勝です!』
一般人ではさすがに相手にならないのか、ヤムチャはクリリン戦以外は問題なく勝ち、本戦への切符を手にした。
当たり前と言えば当たり前なのだが、とりあえず無事予選を通ったことに胸を撫で下ろすヤムチャ。
「さて…そろそろマーリンの決勝だな」
ヤムチャはHブロックの舞台上に目をやると、既に18号とマーリンは舞台の上に上がっていた。
「…」
「…」
両者とも口を開かず、腕を組みながら睨みあっている。
「うほ、女同士の決勝だってよ!どうなってんだあのブロックは」
「お前どっちがいい?あの濃い金髪の女と、白に近い金髪の女」
「俺はどっちかっていうと左のねーちゃんがいいな!」
「そうか?変わった胴着着ているプラチナブロンドの方が美人じゃね?気は強そうだけど」
「胸は胴着着ている女の方がデカイから俺はあっちだな」
「優勝候補のイズールは勝手に転落して負けちまったし…どうなってるんだ!?」
明らかに不純な目付きで舞台の周りには男たちが集まっていた。
言うまでもなく、マーリンと18号はそんなものは目にも耳にも入っていない。
(この女…一体なんなんだ。データにはないが、以前孫悟空に勝ったというだけのことはあって、動きを見る限り普通じゃなかった…油断できないね)
(もっとも注意すべき点は、気を感じ取れないこと…ヤムチャに言われたことだけ注意すれば大丈夫のはずだ)
お互いに警戒し、何かを探り合っているかのように目と目を合わせるマーリンと18号。




【157話】

『本大会、予選の決勝まで残った女性選手はこの二人のみとなります!それでは、決勝戦!!18号選手、マーリン選手!試合を始めてくださいっ!』
アナウンスがコールされる。
「…いくよ」
18号はそう言って構えを取ると、マーリンも無言で構える。
構えはゆっくりだったが、攻めは突然だった。
「そーらッ!」
18号が掛け声と同時に、猛スピードでマーリンの胸部に右手で殴りかかる。
それをマーリンは5メートルほど大きく跳躍して避けると、18号はすぐさま上方にいるマーリンに向かって連続で無数のエネルギー波を放った。
マーリンがその無数のエネルギー波を、超高速移動でわずかに体を30センチから1メートルほどだけ動かし無駄なくかわすと、18号の放ったエネルギー波は室内闘技場の天井を貫通し、建物がその衝撃で揺れる。
マーリンはすぐさま下を見るが、既に18号の姿はそこにはない。
ヤムチャに言われたとおり、冷静に自分の周りの空気に神経を張り巡らせる。
と、自分の左方の空気がほんの僅かに乱れていたのを感じた。
「そこだッ!!」
武空術で宙に浮いたまま、自分の左側…何もない空間にマーリンがパンチを放つと、ドスッと鈍い音をたてながら、何もない空間に攻撃を仕掛けようとしていた18号の姿が現れた。
「…………ッ!」
18号は攻撃を出しかけていたため、半ばカウンターのような形になったマーリンのパンチがもろに腹部にヒットし、苦痛で表情が歪んだ。
破れかぶれに18号はマーリンにハイキックを繰り出すが、いとも簡単にマーリンに受け止められてしまう。
すぐに次の攻撃を繰り出そうとする18号だったが、それが…この試合の全てだった。
マーリンは一度受け止めた18号の足を、がっちりと強く掴んで離さない。
「…これでもう、身動きは取れない」
「…!な、なんだって!」
マーリンは冷たく小声で囁くと、足を押さえつけた状態で、再び18号の腹部目掛けて拳を下ろした。

ドス…!ゴッ…バキッッ!ドスッ!

「ぐっ……か…はッ……」
身動きが取れない18号はその拳をくらうしか術はなく、マーリンは何度も執拗に18号の体を殴打する。




【158話】

必死に暴れて足をマーリンの手から外そうとするが、パワーはマーリンの方が遥かに上のため、どうやっても外れなかった。
胸部、背部、腹部、顔面、人造人間とは言え、ベースは人間なので18号に徐々にダメージが蓄積していく。
体力が減らないとは言え、痛みの感覚はあるのだろう、時折胃液を吐きながら苦しそうに18号は遠ざかっていきそうな意識を保とうとしていた。
やがて18号の動きが鈍くなってきたところで、ようやくマーリンは18号の足を離し、更にフラフラの18号に躊躇なく狼牙風風拳のラッシュをかける。
一度崩れた体勢を立て直すのは難しい。

ズガガガガガガッガガッ!

18号は防御する術もなく、空中でサンドバッグのようにマーリンに打ちのめされた。
もうほとんど18号が動けなくなったのを確認すると、マーリンは狼牙風風拳をやめ、高速で18号の後ろに回りこみ、背後から首に手刀を一撃くらわせると、18号の意識は完全に途切れてしまう。
意識がくなったことで武空術が解け、重力で落下しそうになる18号の服をマーリンは片手で掴むと、そのままゆっくりと地面に降りていった。
そして、丁寧に18号を床に寝かせると、黙っている審判に目で訴える。
『……し、失礼しました。18号選手…戦闘不能!マーリン選手の勝利となります……!』
今度ばかりは、観客や選手から歓声は起こらなかった。
余りにも凄すぎる戦闘と、マーリンの冷徹非情な戦いっぷりにに、黙って息を呑むしかなかったのだ。
第一、速過ぎて何が起こっているかよく分からないというのが一般人の本音だろう。
表情を変えずに、無言のまま舞台の階段から降りるマーリン。
その周りには、目には見えないが触れることを許さないような近寄りがたいオーラが出ていた。




【159話】

「……マーリン」
ヤムチャはマーリンの肩を掴むと、何も言わずに目で語りかける。
「やっぱり…やりすぎたか?」
「普通の人間なら、ありゃ死んでるぞ…」
ヤムチャは大きくため息をつきながら言った。
「お前の仲間は、全員普通の人間ではない」
「いや……まあ、そう言われたら否定はできねーけどさ」
「それに…これはヤムチャから言われた3つのポイントとやらを、全て忠実に守った結果だぞ?」
「俺が言ったポイント…?俺なんて言ったっけ?」
ヤムチャは首を傾げる。
今度は逆にマーリンがはぁ、とため息をついた。
「空気の変化を感じ取れ、相手の動きを止めろ、油断せずにボコボコにぶちのめせ…そうだろう?」
言われてみれば、マーリンの動作は全てヤムチャの言葉に忠実に従ったものであった。
姿を捉えられなくなったら、空気の変化を感じ取って動きを見切り、高速で動かれると厄介なため足を掴んで動きを止め、女だからと言って最後まで油断せずに攻撃をし続けた。
「…まあ、そうかな……うん」
「で、わたしのとった行動は、問題あったの?ないの?」
「……ないです」
「ふふ。分かればいいのだよ、ヤムチャ」
勝ち誇ったかのようにマーリンはかわいく笑う。
先ほどまで非情に徹し、無表情で相手を甚振り続けたのが嘘のような笑顔だ。
だが、ヤムチャはどこか腑に落ちない様子だった。
「っていうかさ…。…ボコボコにぶちのめせ、なんて言ったっけ、俺…」
それは、言ってなかった。
「にしても、余計なアドバイスだったな…全然余裕じゃないか。案外18号も大したことないのか…?」
針小棒大にアドバイスをしたつもりではないし、少なくとも一昔前、悟空たちより強かったのは事実だ。
しかし、先ほどの戦いを見る限り、今のヤムチャには18号が前ほど大した相手ではないように思えてきた。





【160話】

「ひゃー…あいつほんとにつええな。見てる限りだと、あれでもてんで本気なんて出しちゃいなそうだし…」
マーリンと18号の戦いを遠くで見ていた悟空が感心したように言った。
「何を言っている、カカロット。あれは相手が弱すぎるだけだ」
ベジータはその発言が気に食わなかったかのように、悟空に反論する。
「そんなことねーよ、ベジータ。18号だって一時期オラたちより強かったじゃねぇか」
「そんな何年も昔のことはどうでもいい。どちらにしろ、あの女を倒すのはお前じゃない。この俺だ」
ベジータは己のプライドの高さのせいか、マーリンを倒すことにかなり固執していた。
1年前…界王神界で魔人ブウと戦っているのさなか、ようやく悟空を越えられないことは認めたベジータだったが、そのプライドの高さは変わっていなかった。
いくらマーリンと戦った当時、ベジータがスーパーサイヤ人になれなかったとはいえ、それは相手も同じこと。
一度負けたとは言え、いつまでもあんな小娘になめられたままでは流石にたまったものではない。
いつの間にか、殺気染みた気を放っているベジータ。
初めて地球に来た時よりは、かなり性格が落ち着いてきたベジータだったが、カッとなると何をしでかすか分かったもんじゃない。
悟空はそんなベジータを宥めるように口を開く。
「まあまあ…ベジータ…熱くなるのはいいけど、勢い余って殺したりすんなよ?別に今はワリィ奴じゃねえんだしさ」
「……ふん、俺の知ったことか。なんせ、こっちは下らん予選会なんてやらされてイライラしているんだ」
それはただの八つ当たりじゃん…と、悟空はベジータに突っ込もうとしたが、これ以上機嫌が悪くなったら面倒なのでやめておいた。
こうして、全ての予選が終了し、本戦に進める8人が決定した。
それから10分後、クジによる抽選で決定された本戦のトーナメント表が大きく貼り出される。

第一試合 ヤムチャ VS 孫悟飯
第二試合 孫悟空 VS マジュニア
第三試合 ベジータ VS マーリン
第四試合 Mrサタン VS Mrブウ


「…何………………これ………?」
そう声を漏らしたのは、もちろん…ヤムチャだった。


つぎの話へ

Indexへ戻る
トップへ戻る