【131話】
「ちょっとちょっとちょっと、あたしを無視しないでよ?!大体アンタとヤムチャはどういう関係なのよ?っていうかアンタ宇宙に帰ったんじゃないワケ?あ…、別に、ぜーんぜん興味なんてないんだけどね、ヤムチャとかアンタなんかに!」
ブルマはしつこくマーリンの耳元でガミガミと喚く。
こんなうるさい女のどこにヤムチャは惚れたんだろうか…と、マーリンは迷惑そうな顔を浮かべながら思った。
と、そこに、ヤムチャがやたらマーリンの近くに立つ。
「それはな…こういうことだよ、ブルマ」
ヤムチャはブルマにそう言うと、その太い右腕でマーリンの体をギュッと数秒抱きしめる。
「…ヤ、ヤムチャ…?何を…」
突然のことにマーリンは戸惑いの声をあげるが、ブルマたちはそれ以上に驚いた顔をしていた。
さすがのマーリンも、人前で抱かれることは恥ずかしいのだろう、普段はクールな表情が少し崩れていた。
そして、ヤムチャはそばに居たシルフを手で招くと、シルフを肩車し始める。
「よっと…俺たち、家族なんだ。こいつは妻でマーリン、こいつは息子でシルフ。これからたまに世話になると思うけど、よろしくな、みんな!」
「え……ええええええええええええええーーーーーーーー!??!?」
ブルマ以外の者たちも、このヤムチャの爆弾発言には驚いていた。
「ヤ、ヤムチャさん…結婚していただか?全然知らなかっただ…。悟空さは知ってたか?」
「あー、オラもついこの前知ったんだ」
「と、父さん…!あの人が地球に来ていることは聞いてましたが、ヤムチャさんの奥さんになっていたなんて聞いてませんよ…」
「わりいわりい、言わねえ方が驚くかなって…。でも、それって悟飯がそんな気にするようなことか?」
「あ、いや…そういうわけじゃないんですけど…」
どことなく顔が赤くなっている悟飯と、それを冷ややかな目で見つめるビーデル。
「悟飯くん、年上が好みなのねえ…」
「いや、ほんとにそういうあれじゃ……ねえ、ビーデルさん!違いますよ!?」
すぐにそれを誤解だ誤解だと言う悟飯だが、ビーデルはそっぽを向いてしまった。
そんなビーデルと悟飯を見て、なかなか絵になるカップルだな…とヤムチャは思う。
【132話】
「恋愛というやつか…分からない」
ピッコロは一人そう呟くが、誰も聞いていない。
「ヤ、ヤムチャさん!どうして結婚していたことを教えてくれなかったんですか!子供がそれだけ大きいってことは…オレの子供より前ですよね…?」
クリリンがあたふたしながらヤムチャに質問する。
「いやー、はは…。そろそろ話してもいいかな。実はさ…これはもう何年も前の話になるんだけど…――――」
ヤムチャはそこで、初めて仲間たちにマーリンとのことを説明した。
マーリンがサイヤ人に恨みを持っていて、地球にいると言われていたスーパーサイヤ人を倒しにここへやってきたということ。
そして、元はといえば勘違いから始まったヤムチャとの戦い、そしてヤムチャとの修行の日々。
大激戦とも言える、ベジータ、悟空との戦い…その結果と、その後地球を去ったという話。
最後に、ヤムチャが約2週間ほど前に、ドラゴンボールを使って地球へ呼び寄せたということを話す。
大雑把に説明したため、説明自体は5分ほどの軽いもので終わったが、関わった人物以外は全く知らなかった裏のストーリーを知り、一同は信じられない表情を浮かべ、唖然としている。
「ヤムチャ…やーっぱりアンタ、その子とあの時点で“出来てた”んじゃない!!!!!この変態!ロリコン!!」
ブルマは大の大人だというのに、ヤムチャの悪口をバンバンと言う。
ロリコンという単語の意味は分からなかったが、それを気分悪そうに聞くマーリン。
力もなさそうなこの女が何故あんなに威張っていて、そして何故誰もあの女に言い返さないのか不思議でしょうがなかった。
「お…おいおい、何を言ってるんだブルマ。先に気持ちが俺よりベジータに傾き始めたのはお前の方だろ?気付かないと思ってたのかよ…。だから俺はカプセルコーポから荒野に移って一人修行を始めたっていうのに…とんだご都合主義だな…。そして、俺はロリコンじゃないっ!」
ヤムチャはすかさず反論する。
ロリコンじゃないというところを若干強調して。
【133話】
「そうですよー、ブルマさん。せっかくヤムチャさんに奥さんと子供が出来たって言うのに、その言い方は…」
「なによなによ!私が悪いって言うの!?大体クリリン…アンタもアンタよ!それになんなのよ、その髪型は!」
「えええ?そこでオレにきますか?しかも…髪型は関係ないじゃないですか…これ結構イケてると思ってるんですけど…」
クリリンが仲裁に入るが、ブルマのとばっちりを受けて落ち込んでしまった。
ヤムチャとブルマの間に嫌な空気が立ち込める。
睨み合う二人だが、周りの者は、やれやれまた始まったよ…と言わんばかりの呆れ顔だった。
「大根だかラジコンだかしらねえけど、人が集まらねえ内にとっとと受付しちまおうぜ。そのために早くきたんだしよー」
悟空が受付をするために並んでいる人だかりの最後尾に立ちながら、こちらに向かって言葉を投げかける。
「フン…。大体ヤムチャやアンタが出たって孫くんやベジータに勝てるわけないんだからね!」
ブルマは毒づくが、ヤムチャは全く気にも留めずに言い返す。
「確かにそうかもなあ。でも、出場しなければいつまでたっても勝てる可能性はゼロだ。けど、出場すれば…勝てる可能性は、少しはある…だろ?それが例え万一の可能性にしても、な。違うか?ブルマ」
ヤムチャがそういうと、ブルマは悔しそうに黙り込んでしまう。
「ふふ…大人になったな、ヤムチャ」
マーリンがその隣で声をかける。
「あ、ああ。……って、お、お前がそれを言うか!?」
そのヤムチャの突っ込みで、マーリンとヤムチャは大笑いをする。
ブルマはその様子を複雑な表情で見つめていた。
「もう、勝手にすればいいじゃなーい!精々恥じかかな………あれ?トランクスは?」
【134話】
一方、ここは会場の裏…いわば普段は誰もいない場所だ。
こちらでも小さな小競り合いが起きていた。
「…で、何?いきなりこんなトコに呼び出してさ」
「なんでもねーよ。ただ、オマエに一つ、いい事を教えてやろうと思ってさ」
黒髪の少年と薄い紫の髪の少年が対峙していた。
どうやら薄い紫の髪の少年が黒髪の少年を呼び出したようだ。
黒髪の少年の方が少し上背があるように見える。
薄い紫の髪の少年は続けた。
「オマエのママ、オレのパパに喧嘩売ってるのか知らないけど、ああいうのマジでやめたほうがいいぜ?殺されるから」
「…お母さんが?っていうか、キミのパパ…お父さんって誰だよ」
「鈍感だなあ。ベジータって呼ばれていた人に決まってんじゃん」
「…ベジ…?ああ、あの変わった髪型の人か…」
「…!あ、あれはなあ…生まれつきあーいう髪型なんだよ!」
「ふうん…で、何が言いたいの?」
黒髪の少年はだるそうに受け答えする。
「いやだからさ…」
その淡々とした態度に半ば諦め気味の薄い紫の髪の少年は、ため息をついて続ける。
「…はー、もういいや!おい、オマエ名前なんていうんだ?俺はトランクスだ」
薄い紫の髪をした少年、トランクスが言う。
「さっきお父さんが言っただろ?…シルフ。宇宙最強のお母さんがつけてくれた名前だ」
黒髪の少年、シルフは目を輝かせながら誇らしく自分の名前をトランクスに告げる。
どうやらこの小競り合い(?)は、マーリンのベジータへの接し方が酷かったため、トランクスがシルフを経由してマーリンに警告をしていたようだ。
「宇宙最強?オマエのママが…?…おいおい、とんだ勘違いだぞ、それ」
「な…なんだと!」
今まで冷静だったシルフの態度が変わり、気迫のこもった声を上げる。
【135話】
トランクスは一瞬びっくりしたが、すぐに話を続けた。
「オマエがどこの星からきたか知らないけどさ、地球にはまず悟飯さんがいるし、悟空さんもいる。そしてパパやピッコロさん…それに俺や、悟飯さんの弟の悟天っていうのも居るんだけど、そいつも普通の人間よりカナリ強いんだぜ?」
「…へー、ズラズラ名前あげられてもよく分からないけど、ゴクウっていう人はお母さんが前に倒したって言ってたよ」
「…え?マジで?」
トランクスの頬を一筋の汗が伝った。
超3化した悟空の強さは父、ベジータを遥かに凌ぐことは知っているし、その悟空をあのどこにでもいそうな女性が倒せただなんて信じられなかった。
それはつまり、マーリンはベジータ以上に強いということを意味する。
「へへ。ほんとだよ?」
だが、このシルフという少年の言葉も嘘だとは思えないし、トランクスの頭が混乱してきた。
「そんな馬鹿な…。お、おい、それっていつごろの話だ?最近?」
トランクスがうろたえながらシルフに尋ねる。
するとシルフは少し考えこみながら答えた。
「んー、ぼくが生まれる前だから、けっこー前だね。この星で言うと10年ぐらい前かな、多分」
それを聞くと、トランクスはホッとため息をつき、汗を拭った。
「なんだよ、そんな前の話か。そんなこといったら、クリリンさんの奥さんだってお父さんたちより強かった時期もあったし、全然参考にならないな」
「確かに前の話だけど、今もお母さんやお父さんが一番強いよ!すごい修行してたし!」
「お父さん…?ヤムチャさんのこと、か…まあ、何言っても無駄そうだしそう思っておけばいいじゃん。じゃ、俺も受付してくるから。またな」
トランクスはそう言いながらシルフに背を向ける。
「…すぐに分かるさ」
シルフはボソッとつぶやく。
当然トランクスにもそれは聞こえていたが、聞こえていない振りをして小走りで去っていった
「ちぇ…なんだよ、あの自信。ヤムチャさんやあの女の人がパパや悟空さんより強いわけないじゃん…。気もてんで大したことないし…」
トランクスはそう小声でつぶやきながら、受付場へと向かうのであった。
【136話】
そして、戦士たち全員が受付を済ませ、予選のトーナメント表が貼り出された。
今回の予選は前回のような“パンチ測定式”ではなく、“組み手式”での予選だ。
理由はいたってシンプルで、前大会のような得体の知れない連中にパンチ測定器を壊されてしまっては、予選に時間がかかりすぎてしまうからである。
つまり、言ってしまえばベジータのせいだ。
人ごみの中、そのトーナメント表を眺めるヤムチャたち。
今大会はAからHまでの8ブロックで予選トーナメントを開き、各ブロックで最後まで勝ち残った者が本戦トーナメントへ進める。
当然ながら、一般人なんて目もくれない悟空たちだが、身内と予選の段階であたってるのではないかとヒヤヒヤしながらそのトーナメント表を見つめていた。
「悟空やベジータと当たってませんように……!」
クリリンが祈るように声を漏らしながら総勢128名の名前の中から自分の名前を探す。
その隣でヤムチャもドキドキしながら自らの名前を探していた。
「…んー…なかなか見つか…ら…あ、いた!76番だ。Eブロックだな!」
ヤムチャが自分の名前を見つけ、子供のように大きい声をあげる。」
そして、すぐさま同ブロックに身内がいるかどうかだけ確認する。
「む…当たっちまったか」
どうやら2戦目で今必死に名前を探しているクリリンとあたるようだ。
昔なら手ごわいと思った相手だったが、不思議とヤムチャに恐怖心はなかった。
「わたしは122番だ。予選でわたしとヤムチャは当たらないようだな」
マーリンが髪の毛をかきあげながらヤムチャに言った。
しかし、ヤムチャがマーリンのブロック…Hブロックを見てみると、そこには恐るべき名前があった…。
「115番…じゅ……18号!?マーリン、お前18号と決勝で当たるぞ!」
「………あの…すまない、誰?」
マーリンが人差し指で頭をかきながらボケると、ヤムチャは思わずその場でずっこけた。
【137話】
「喫茶店で話したじゃねーか!ほら、俺がお前と初めて会った時に修行していたのは、18号とかを倒すためだったって」
「そんなこと言われても…わたしは顔や声もイメージできなかったし…その場で名前を全部覚えるというのは難しい…」
ヤムチャは仕方なさそうにふう、とため息をつくと、再び説明を始める。
「…18号はドクターゲロが作った人造人間で、だいぶ昔だけど、超サイヤ人になって悟空と互角以上の強さだったベジータが敵わなかったぐらいの相手だ。そして今はクリリンの奥さんでもある」
ヤムチャが指を立てながら説明すると、マーリンはふむふむと頷いた。
「なるほど…つまり、あの時点で戦闘力約500万だったソンゴクウより、遥かに強い人物…という認識でいいのだな?」
そう言ってマーリンは指の骨をバキバキと鳴らし、激しい戦闘を待望してなのか、口元が緩む。
「ああ、そうだな。“あの時点”の悟空よりは、ね…」
見慣れているヤムチャでさえそんなマーリンが怖く感じるぐらいで、思わず苦笑いをしながら答える。
さすがにマーリンはサイヤ人の血を引いているだけのことはあるなと感じざるを得ないヤムチャであった。
「で、そのジュウハチゴウは今どこにいる?」
顔と名前が一致しないので分かるはずがないのだが、マーリンはキョロキョロと辺り見渡す。
「んーと…あ、あそこだ」
ヤムチャは20メートルほど先で、一人人ごみから外れ壁に寄りかかっている、如何にも冷徹そうな目をした一人の女性を指差す。
「あいつ、か。不思議だな…何も力を感じない」
「そりゃそうだ、あいつは人造人間だから俺たちの言う“気”はないんだ。でも、エネルギー波とかは撃てるみたいだけどな…俺も詳しいことは良く分からん」
「気を持たないだと…?どういうことだ、それは生物学的におかしいのではないか?」
「だから、俺に言われてもわかんねえよ。あいつを作ったヤツは殺されちゃったし、今となっては謎のままだ」
マーリンは再び18号を凝視する。
誰に対しても冷たそうなその青い瞳は、どことなく自分と似ている感じがした。
【138話】
そこへ、漫画のようにどたばたと足音を立てながらヤムチャのそばへクリリンがが駆け寄ってきた。
おそらく自分の名前を見つけたのだろう。
「ヤムチャさん!俺とヤムチャさん予選で当たっちゃうみたいですよ…最悪ですよねー、本戦前に身内と当たるのって…」
どこか面白おかしそうにヤムチャに話しかけるクリリンに対し、ヤムチャも笑い返す。
「ははは、そうみたいだな…。まあ仕方ないだろ、こればかりは」
「ですよね…ったく、チャオズとか居れば超能力でなんとかなったかもしれないのに…」
ヤムチャと共に苦笑いをするクリリン。
ふと、マーリンからの視線に気付き、会釈をしながらクリリンは続ける。
「あ、マーリンさん、でしたっけ?初めまして、俺はクリリンって言います」
「…クリリン、か。覚えておこう。ヤムチャがいつも世話になっている」
そう言うマーリンに対し、クリリンはそんなことないとでも言わんばかりに顔の前で手を横に振る。
「いやー、それにしても、ヤムチャさんはこんなカワイイ子を放っておいて、この数年間何してたんですかねえ。もっと早くドラゴンボールで呼び寄せてあげればよかったのに」
何を想像しているのか分からないが、クリリンはやらしい目付きでヤムチャを見る。
お前と違ってひたすら修行してたっつーの、とヤムチャは心の中で幸せボケしてるクリリンに向かって突っ込みを入れておいた。
その時、何者かがいきなりクリリンの耳を掴むと、グイグイと引っ張っていく。
クリリンの耳を無造作に引っ張れる人物といったら一人しか居ない…先ほどまで壁に寄りかかってた女性、18号だった。
「てててててっ!!な、なんだよ〜、18号!」
「いつまでも油売ってんじゃないよ、クリリンのくせに」
マーリンは初めてこの女性の声を聞いた。
地球にずっといるヤムチャでさえ久しぶりに聞いた気がする。
「何の用だよ、18号」
「勘違いするな。別にお前に用なんてない」
「じゃあなんで…ってててて…!」
そのまま18号は表情を変えずに無言でクリリンの耳を引っ張っていき、見えないところへと消えていった。
【139話】
マーリンは18号の行動に不思議そうに見入っていた。
「…オホン、よく聞けよマーリン。あれはな、“ツンデレ”と呼ばれるものだ」
すかさずヤムチャの余計な解説が入る。
「ツンデレ……?聞いたことがない」
「そりゃ、最近出来た言葉だからな。ちなみにマーリン、お前もツンデレっぽいところあるぜ。いや、むしろツンツンデレツンかな?」
ヤムチャは笑いを堪えながらマーリンに言う。
バカにされているような気がして、なんとなくヤムチャが腹立たしいマーリン。
「訳の分からんことを…そういうヤムチャは、よく分からないがロリコンというやつではないのか?」
ヤムチャは今日二度目のずっこけを見せた。
マーリンはそんなヤムチャが面白くて、つい笑ってしまう。
そして、これからはヤムチャと何かあるたびロリコンと言ってやろうと密かに決心していた。
自分ではそんなつもりないヤムチャであったが、確かにマーリンとはかなり年齢差がある。
いや、実際はそんなことはなく、マーリンの方が年上なのだが…。
実年齢だけ言ってしまえば、ヤムチャは42歳、マーリンは約48歳。
つまり、マーリンの方がヤムチャより年上なのだが、彼女は若い頃、星と星を行き来している間に長期的なコールドスリープ…いわゆる“冬眠”状態が頻繁にあったため、身体的な年齢はヤムチャよりずっと若く、26歳前後の年齢だということになるのだ。
ヤムチャも40歳を過ぎたとはいえ、見た目的には20代半ばから30代前半にも見えるぐらいの若さなので、そういった意味では外見的に中々釣り合っているカップルではあると言っていいだろう。
もちろん、ヤムチャにとっては肌が弛んでる40過ぎたオバサンよりは、ピチピチの若いお姉さんの方が嬉しいわけで、マーリンの冬眠状態が長かったのが好都合だったのは言うまでもない。
【140話】
(見た目はあれだけど、実際はマーリンの方が年上なんだぞ…気にするな気にするな!俺は断じてロリコンじゃない…!それにマーリンは初めて会った時みたいにもう見た目も別に幼くないし、
…いや、俺は何を言っているんだ?そしたら当時はロリコンだったって認めることになっちまうじゃないか!ええい、実際はあいつの方が年上だから、見た目とかは関係なくて……って、
あー!もう訳が分からなくなってきた!!)
ヤムチャは心の中で必死に自分に言い訳をしながら、支離滅裂な自分の考えに収拾がつかなくなってきた。
目の前でいきなり唸りだしたヤムチャをマーリンは不気味そうに見つめる。
その冷ややかな視線に気付き、ヤムチャは我に返った。
「……あ、あのさマーリン!実はな、お前用の胴着を用意してあるんだ」
ヤムチャは場の空気を変えるために咄嗟に話題を変える。
「何…?いつの間に…わたしが地球にきてから、ずっと一緒にいたのに…」
ヤムチャの言葉により、マーリンの目の色が変わった。
「お前が寝てる間に、何度か街の服屋にいって新調してもらったんだ。もちろん、デザインは全て俺が考えたものだけどな。ほら、このカプセルの中に入ってる」
そう言ってヤムチャはマーリンにカプセルを放り投げる。
それをパシっと素早くキャッチするマーリン。
「もうあけて見てもいい…?」
マーリンは早く中の服を見たいようで、うずうずしながらヤムチャに問いかける。
「待った待った。どうせ今カプセルをあけてもここじゃ着替えられないし、女用の控え室であけることだな」
ヤムチャはそう言って女性の控え室がある方向を指差す。
するとマーリンは不服そうな顔をしながら言った。
「女用ということはヤムチャとは別の場所なのか?面倒だな、同じ場所でいい」
「バ、バカか!俺以外にもたくさん男がいるんだぜ?そいつらに着替えてるところを見られることになるぞ」
「別にわた――」
「俺がイヤだっつーの!お前の裸が他のやつらに見られるってのは!」
ヤムチャは顔を赤くして断固拒否した。
むすっとしたマーリンだったが、仕方なさそうに女性用の控え室に向かう。
「ったく、あいつはもうちょっと恥ずかしがるべきだろ…」
ヤムチャは胸を撫で下ろし、ぶつぶつと呟きながら反対側の男性用控え室の方へと向かっていった。