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Saiyan killer2


【111話】

「安心しろ、スーパーサイヤ人にはならん。そもそも、スーパーサイヤ人なんて邪道じゃわい!
1000年に一度の戦士だかなんだか知らんが、元々邪悪な心が基に生成された変身に過ぎん」
やたらとスーパーサイヤ人を批判する大界王神。
過去に何かあったのだろうか。
「とりあえず…やってみるぞ」
マーリンが大きく息を吸い込んだ。
その息遣いが聞こえそうなぐらい場に静寂が走る。
そして、一気に気を高めだすマーリン。
地面が僅かに揺れたと思うと、その揺れは徐々に激しさを増し、最終的には立っているのすら厳しいほどの揺れに変わる。
「はあああああ…ッ!!!」

ボフゥゥゥウゥゥンンッッッ!!!

ヤムチャの時と同様に爆音が轟き、かなり離れていたヤムチャまで足に力を入れて踏ん張らなければ吹っ飛ばされそうになるぐらいの突風が吹く。
一瞬でマーリンの範囲数十メートルにクレーターができ、凄まじい地面の揺れにプーアルとシルフも慌てて目を覚ました。
「あれが…お母さん…!?」
「す、凄いな…!見た目はほとんど変化ないのに…桁違いの強さになってやがる」
ヤムチャが小さく独り言を漏らす。
かなりのパワーアップを果たしたヤムチャだが、マーリンのパワーアップはそれ以上だった。
元の戦闘力が高い分、パワーアップの割合もその分大きいのだろうか。
スーパーサイヤ人の状態でもないのに、マーリンの体に途轍もない力が駆け巡る。
「信じがたいことだ…。スーパーサイヤ人の状態より、遥かに力が漲っている。わたしにここまで力があったのか…」
ヤムチャの体から冷汗が流れる。
いつの間にか、少しだけ身体も震えていた。




【112話】

「……手の爪の先端まで力が漲ってくるようだ」
マーリンは大喜びしていいはずなのだが、余りに凄まじいパワーアップに、つい喜ぶことすら忘れてしまっていた。
「それにしても、このマーリンの気…どこかで感じたことがあるようなないような…」
遠くから見つめているヤムチャはふとその事で考え込むが、答えは出てこない。
すると、大界王神が呼ぶ声がする。
ヤムチャはすぐに駆け寄った。
「オホン。これにてわしらの役目は終わりじゃ。後は下界で大会まで修行を重ねることじゃな」
「はい!」
「無論、そのつもりだ」
ヤムチャもマーリンも大満足といった様子で、勢いよく答える。
大界王神は続けた。
「それからヤムチャよ。お主は以前、地球人は不利、サイヤ人は有利…そんな風に考えておったな?」
「え、ええ…まあ…そうだったかな…」
ヤムチャは不意を撃たれたのか、あやふやに答える。
大界王神の読心術によって、ヤムチャの頭の中は全て見透かされていたのだ。
「確かにサイヤ人のような圧倒的な力強さはないが、地球人は決して弱くはない。それに、サイヤ人にも負けん武器もある」
「と言いますと…?」
「まあ、それはいずれ分かるじゃろ…近いうちにな」
大界王神はホッホッホと意味深に笑う。
サイヤ人にも負けない武器…一体なんのことを言っているのだろう?
「地球まではわたしが送ります。地球の大会、是非見物させてもらいますよ」
ヤムチャ、マーリン、シルフ、プーアルの4人とも界王神の肩につかまる。




【113話】

「本当に…本当に、お世話になりました!」
ヤムチャは一度肩から手を離し、最後に深く一礼する。
マーリンもそれを見て、口を開いた。
「わたしからも礼を言う。大会が終わったら、何らかの形であなたたちに礼をさせてくれ…」
マーリンの発言に対し、一瞬やらしいことを閃いた大界王神だが、最後は界王神らしく決めようと思い格好をつける。
「礼は地球の大会を見れるだけで十分じゃ。見せてくれよ…お主たちの暴れっぷりをな」
にこやかな表情でヤムチャたちに手を振る大界王神。
「それでは、地球へ移動しますよ!準備はいいですね?…カイカイ!」
4人と1匹がその場から消える。
つい数秒まで賑わっていた界王神界に、かつての静寂が戻った。
「頑張るんじゃぞ、ヤムチャ、マーリン…」
大界王神は届かない心の声をそっと口に出す。
「しかし、ヤムチャもマーリンも想像以上に力が上がったのう…。特に、あのマーリンというムスメ…以前ここにきた孫悟飯の息子のようなパワーじゃ。悟空たちが驚く顔が目に浮かぶわい」
そう言いながら、既に入れてあるお茶を寂しそうに飲み干した。




【114話】

同時に、地球に4人と1匹の影が現れる。
「さ、地球に着きましたよ」
ヤムチャたちが辺りを見渡すと、そこは界王神界に行く前までいた荒野だった。
実質二日ぶりぐらいなのだろうけど、やけに懐かしい気分になる。
「わざわざ送っていただいてすみません、界王神様」
「いえいえ。情けない話ですが、この星々間の移動ぐらいしか私に手伝えることはありませんので…」
恥ずかしそうに笑いながらそう言うと、界王神は続ける。
「また、機会があれば会いましょう、皆さん!それでは……カイカイ!」
界王神はそう言うと、跡形もなく姿を消した。
しばらく間を置いてから、マーリンが口を開く。
「実に不思議な連中だった。瞬間移動は出来るし、パワーアップまでしてくれるとは…全く、ヤムチャに会うと相変わらず驚くことばかり起こる」
すると、ヤムチャは困ったような顔で答えた。
「でも、さすがに今回の事は俺にも予想外だった。まさか界王神様が直々にコンタクトをとってくれるなんてな…。モチロン、嬉しい誤算ではあるけどさ」
途轍もないパワーアップを果たした二人だったが、まだ戦いでその力を試していないため、いまいち実感が沸かないというのが正直なところである。
出来れば今すぐにでも己の力を戦闘で試したい。
しかし、二人とも彼是50時間以上睡眠をとっていないことに気付いた。
不思議なもので、今まで平気だったのに、そう考えた途端、極度の睡魔が二人を襲う。
話し合いの末、ヤムチャの提案により、二人は一旦修行は休憩して睡眠をとることにした。
ヤムチャの住処である洞窟に入り横になると、2人は1分もしないうちに深い深い昏睡へと堕ちていった…。




【115話】

――
「ケッ…抵抗しても無駄なのは分かっている。早く殺せよ。それでお前の気が済むならな」
闇の中に男と女が立っている。
男は傷だらけだったが、女はほとんど無傷だった。
どうやらこの女がとことん痛めつけたらしい。

ズァッ!!

そして、止めを刺すためか女性の手からエネルギー波が放たれた。
言うまでもなく、男の体は粉微塵にバラバラになる。
唯一…体の一部である尻尾だけが、原形をとどめて無残にも地面に転がっていた。
「勘違いしているようだな。お前の死を持っても、わたしの怒りは消えないのだよ」
女性は捨て台詞でそう言い放つと、砂煙の中一歩、また一歩とその残骸に向かって近づいていった。
エネルギー波によって、地面のあちらこちらに火の粉が飛び散ったため、夜なのに昼間のような明るさになる。
その炎の明るさが、女性の顔がはっきりと照らし、映し出す。
それは…紛れもない若き頃の自分の顔だった。

ビュンッ!

その時、自分の顔の僅か数十センチ隣を弱弱しいエネルギー波が通過した。
当たってはいないのだが、エネルギー波が通過した際、一瞬真空状態になったためか、彼女の頬に軽い切り傷が出来た。
「お前は…サイヤ人を見くびりすぎだ」
と、バラバラになったはずの男の声が聞こえる。
辺りを見渡すと、エネルギー波を受ける際にわずかに体をずらしたのか、その体は上半身だけだった。
「…ククク…サイヤ人を倒しまくっているらしいが、お前自身がサイヤ人にやられる日もそう遠くは」
「死ね」
全て言い終わる前に、先ほどの倍はあろうかという威力のエネルギー波を男に向かって放つ。
再び爆発が起きると辺りは業火に包まれ、今度こそ男の体は跡形もなくバラバラになった。
その死に様を見て、女性は狂気に満ちたように、どこか不気味な薄ら笑いを浮かべている…。
そして、その世界は闇へと戻っていった。




【116話】

誰かが呼ぶ声がする。
僅かに暖かい感触を首筋に感じる。
どうやら体を揺すられているようだ。
「おい、大丈夫か…?」
目の前に男がいる。
いや…自分はこの男の名前を知っている。
「……ヤムチャ?」
「お前…だいぶ魘(うな)されていたぞ。心配していくら呼んでも起きないしな…ったく、相変わらず寝起きの悪さは天下一品かよ!」
笑い飛ばすようにヤムチャは言うと、小さい皿を差し出す。
上には何かの肉が乗っていて、食欲をそそる甘辛い匂いがする。
「食え。朝飯だ。俺たち丸一日ぐらい眠っていたらしいぜ」
「…ここは…」
キョロキョロと辺りを見渡すと、美味しそうに鍋を食べるシルフとプーアルがいた。
ようやくマーリンの記憶が現実と一致する。
「そうか…わたしはカイオウシンという者に会って、修行して…疲労で寝てしまったのだったな」
「はは、いつまで寝ぼけてんだよ」
ヤムチャは何が面白いのか、爆笑しながら言った。
「すまない…数年前の出来事がそのまま夢に出てきて…」
そこで、一旦マーリンの口がとまる。
「ん…?出てきて、なんだ?」
「いや…なんでもない。もういいんだ…もう、終わったはずなんだ」
ヤムチャが突っ込むが、マーリンはそれ以上語ろうとしなかった。
ヤムチャもあえて、それ以上追求することをしなかった。
「さて…飯が食い終わったら修行を始めるか。ていっても、この短期間で何が出来るのやら…」
ヤムチャはスプーンを口にくわえながら、あと10日で何が出来るか考え込む。
かなりのパワーアップを果たしたとは言え、ヤムチャは自惚れることなく、まだ自分は悟空に勝てるレベルでないと踏んでいたのだ。




【117話】

スプーンを口から出し、それを空っぽの皿に投げるようにおくと、ヤムチャはマーリンに言った。
「マーリン。今から新技の開発をするにも、大会までに間に合うかどうか微妙なところだ。だから、俺は基礎トレーニング以外はお前と組み手して、実戦での感覚を鋭くした方がいい

と思うんだが、お前はどう思う?」
それを聞いて、むむ…っと腕を組みながら考え込んだマーリンだったが、やがてヤムチャと同じ結論に至る。
「そうするしかないか。やれやれ…果たしてヤムチャに今のわたしの相手が務まるかな?」
マーリンは冗談っぽく笑いながらヤムチャに言う。
もちろん、これはマーリンに自信があるからこそ言えることでもあるが。
「へっ…!そんな事言いながら、俺の強さにビビって小便漏らすなよ」
「ふふ…わたしが漏らすのは、ため息の方じゃないかな?」
一方、強がりを言うヤムチャだったが、確かに今のヤムチャより、マーリンの方が力は上だった。
しかし…これはヤムチャにとって、これ以上にない恵まれた修行になる。
自分より弱い者、もしくは同等レベルの者との組み手と、自分より格上相手との組み手では訳が違う。
当然、それに気付いていないヤムチャではなかったからこそ、力の差が分かりつつも組み手をしようと結論になったのだ。
一方、口ではこんなことを言っているマーリンだが、内心は自分も早く力を試したくて、うずうずしていた。
食事を済ませると、後片付けはシルフとプーアルに任せ、ヤムチャたちはさっそく修行に取り込むことにした。
「んじゃ、基礎トレーニングから始めるぞ」
ヤムチャとマーリンは重力発生装置に二人で入る。
「とりあえず、重力500倍ぐらいから慣れていこうか。気はある程度使っていいが、体に負荷が掛かる程度にな。使いすぎたら楽過ぎてトレーニングにならないし」
「分かった。しかし、500倍程度では物足りないだろうな」
「当然、日に日に重力は上げていく。一日100G上げていくつもりだ。つまり、明日は600倍、明後日は700倍…大会5日前には1000倍の重力にするつもりだ」
マーリンはふーん、となんとなしに相槌を打つ。




【118話】

「じゃ、腕立て、腹筋、背筋をそれぞれ100回ずつで午前は3セットな。休憩は1セット終わってから5分間だけ取ること。で、3セット終わったら昼飯食って、午後からはひたすら組み手だ。
で、日が沈む頃に組み手は中断して、さっきの基礎トレーニングをもう3セットやる。どうだ?」
ざっくりと聞いた感じ、かなりきつそうなスケジュールだ。
トレーニングをこなしている自分を頭の中で想像すると、マーリンは昔ヤムチャにこっ酷く扱(しご)かれた修行の日々を思い出した。
かつての苦い思い出により、一瞬顔が引きつったマーリンだったが、ブンブンと首を振って、それを無理矢理振り払う。
少なくとも、今の自分はあの頃の自分とは比較にならないほど強くなっている…はず。
そう自分に言い聞かせるが、何故か嫌な予感が消えない。
「ヤムチャも同じことをやるなら、わたしだって出来るはず…」
「甘いな、マーリン。その思い上がりが今に痛い目を見るんだぜ」
その言葉で、マーリンのこめかみがピクリと動く。
「…言ってくれるな、ヤムチャ。こうなったら意地でもやってやる…!」
ヤムチャの一言で、マーリンの闘争心に火がついた。
腕を数回グルグルと回すと、いつでもやれるぞと言わんばかりにマーリンは腕立て伏せの構えを取る。
「ヤムチャ、早く重力を上げろ!」
先ほどまでの不安はどこにいったのか、マーリンは重力を上げるように急かす。
「やれやれ…まあ、その方がお前らしいっちゃらしいけどな」
ヤムチャはそう言うと、中心部の機械で重力を500倍に設定すると、自らもマーリンの隣で腕立て伏せの構えを取る。
二人はその構えを取ったまま、数秒目があったが、やがて地面を見つめだす。
ジワジワと重力が上がっていく…100倍…150倍…300倍……500倍!
ずっしりとした重みが二人にのしかかった。




【119話】

二人は勢い良く腕立て伏せを開始した。
気はある程度の負荷が体に掛かるくらいまで引き上げるだけで、それ以上は気を高めずに行うトレーニング。
マーリンとヤムチャは平等になるように、気を同じくらいの大きさに合わせた。
最初は同じくらいのスピードで進めていた二人だが、徐々にマーリンがペースを上げる。
「ふふふ…早くも…42…ペースが…43…遅くなってきたな…44、45…ヤムチャ」
すると、ヤムチャは気にしていないかのように、マイペースに動作しながら答える。
「32…動作が速けりゃ…33…いいってもんじゃないんだぜ?…34…遅い方が体に負荷がかかって修行になるんだ…35…お前は腕立て伏せの世界チャンピオンになりたいのか?
……それとも、己の体を強くしたいのか、どっちなんだ?…36…37…」
「〜〜!!」
ヤムチャに一本取られて悔しかったのか、マーリンは腕立て伏せを体地面スレスレの一番きつい所で十数秒止めて見せる。
そして、その状態から体をゆっくりと数センチずつ上げていった。
「………ッ53!!ふふっ…どうだ、ヤムチャにはここまでする根性は…54…」
無理をしたことによって息が上がってきたマーリン。
あごから汗が滴り落ちる。
ヤムチャはその様子を見て、面白そうに笑った。
「はは…どうでもいいけど…38…最初からカッコつけてバテるなよ?100回だからな、100回!…39」
「………」
自分を褒めてくれなかったヤムチャに、少しだけ冷たさを感じたマーリン。
しかし、言われてみれば、無理をしたせいで腕に負担がかかったのか、最初より体が重く感じられる。
気を入れれば、楽に体が持ち上がるのだろうけれど、それは自分のプライドが許さない。
ヤムチャも自分と大体同じ大きさの気でトレーニングをしているため、苦しさは同じはずなのだ。
それなら、なおさら負けるわけにはいかない!
「まだまだっ…!」
マーリンとヤムチャは張り合うように、500倍の重力の中基礎トレーニングに励んでいった。




【120話】

太陽が一番高い位置に上がる頃、ようやくヤムチャたちが重力発生装置から出てくる。
「ふーう…体中いてえな…。でも、重力が1Gになった時に感じるこの体の軽さは最高だぜ!」
ヤムチャは汗をダラダラ流しながらも、気持ち良さそうに外の空気を吸う。
一方、マーリンには結構ギリギリだったようで、手はぶらんと垂れ下がり立っているのも辛そうだった。
それもそのはず、気の強さが同じなら後は筋肉の強さと持久力で疲労度が変わる。
当然、男で筋肉の量が多いヤムチャの方がマーリンより楽は楽なのだ。
もっとも、マーリンはこのことには気付いていないが。
「さて、だいぶ参っちまってるみたいだけど、午後からは組み手だからな。まあ飯でも食ってゆっくり休んどくことだ」
「…ああ、分かっている」
力なく言葉を返すマーリン。
どうやら疲弊しきっているみたいだ。
そこへプーアルがフワフワと飛びながら近づいてきた。
「ヤムチャ様、マーリンさん、お疲れ様です!シルフさんと一緒にカレーを作りましたので、どうぞ温かい内に召し上がってください!」
それを聞いて、マーリンの目の色が変わる。
「おう、ご苦労だった、プーアル。さっそく飯にしようぜマーリ……ってあれ?」
ヤムチャが名前を呼びかけた時には、さっきまで隣に居たマーリンがいつの間にか消えていた。
と思いきや、彼女は50メートルほど離れた場所にある鍋の前に既に座り込み、皿に溢れんばかりのカレーを盛りつけている。
あまりの速さにあっけに取られながらマーリンを見つめるヤムチャ。
その視線にマーリンも気付き、キョトンとした顔をする。
「…?どうした?早く食べないと冷めてしまうぞ」
「…そんなすぐには冷めねーよ、っていうか移動するのはえーよ!」
突っ込みをいれるヤムチャだったが、お構いなしにマーリンはカレーを口にする。
言うまでもなく、その日カレーを一番食べたのはマーリンであった。


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