ヤムチャの覚醒。ピッコロと温泉饅頭。
ヤムチャの大誤算。ピッコロと芋羊羹後のあらすじ〜
地球がサイヤ人に滅ぼされた後怒りで超サイヤ人に悟空が覚醒する。
手近な星におびき寄せてナッパを一瞬で肉塊へ変える。ベジータは
その巨大な戦闘力にビビって惑星フリーザへ逃げ帰る。その時キュイ
に『下級戦士にビビって逃げ帰るとはサイヤ人の王子もただの腰抜け
だったか』と言われ怒りで超サイヤ人化。キュイ殺害。
キュイ最後の言葉『あ、フリーザさま!』
悟空は界王様にピッコロと神はまだかろうじて生きて近くの星にいる
事をきかされる。気功砲ごときで死ぬはずがないと悟空もあっさり
納得。天津飯三日落ち込む。ヤムチャ二日間大爆笑。
ピッコロ達は一年ほどで見つかりちゃっかり集めていたドラゴンボール
を使って地球を再生。サービスで人間も大体復活。
ヤムチャ、悟飯、ブルマ、チチ、ヤジロベーその他多数が生き返る。
一度死んだクリリンと餃子は生き返れないが、偶然ナメック星で
ドラゴンボールがあると地球に降ってきた宇宙人から聞きだした。
サイヤ人の宇宙船を改造して一ヶ月ほどで100Gまで重力操作可能
の宇宙船を作ってもらう。ナメック星まで一ヶ月で着くらしい。
ヤムチャ、天津飯、悟飯、ピッコロ、悟空、そしてミスターポポが
宇宙船に乗り込んだ・・・
「よし!まずは300Gから始めるぞ!」
悟空が平然ととんでもない事を言い出した。あわててヤムチャと天津飯が
重力制御装置のスイッチを押そうとしてる悟空の腕を掴む。
「ちょっとまて悟空!天津飯や俺やポポがそれに耐えられると思ってるのか?!」
「オラはみんなを信じてる!」
「そんな信頼いるか!ヤムチャの言う通りやめるのがいいとおもうぞ!」
「ていうかもう押しちまったぞ?」
言われて悟空の指先を見ると黄色いスイッチを完全に押しこんでいるのが
見えた。
ぐぉ・・・
一瞬の異音とともに300倍の重力がヤムチャ達の体にのしかかる。
『ぐおおおおおおおおぉぉぉぉぉ?!』
天津飯とヤムチャは悲鳴を上げて床にへばりつく。悟飯とピッコロでさえ異常な重力
に耐えられず片膝をついている。両足で立っていられているのは悟空とミスターポポ
だけだった。ヤジロベーは反重力エリアに閉じこもって鍵をかけているので無事だろうが。
「ポポ・・・なんでおめえ平気で立ってられるんだ?オラでも立ってるのがやっとなのに
・・・」
「年季が違う。ポポ、1000Gの星で傭兵部隊率いていた事もある。このくらい朝飯前」
ポポはちょっと気になる発言をして、腕立てと腹筋をすさまじい速度で始めた。
「こりゃオラの出番はねえかもしれねえな・・・」
悟空がポポの以上な強さに冷や汗をかく。
「界王拳五倍だぁぁぁぁぁぁぁ!」
「四倍だぁぁぁぁぁ!」
ヤムチャはかろうじて五倍で立ち上がるところまでたどり着いた。天津飯は四倍。
「ぐ、ごごご・・・くそぉぉ・・・こんなところで一ヶ月もいたら体がもたねえ・・・」
「ご、悟空・・・せめてあと50Gでいいから重力を減らしてくれないか・・・?」
早くもヤムチャと天津飯は弱音を吐いている。悟空は二人に微笑んで首を横に振った。
一ヵ月後
悟空は清清しい顔でナメック星の地面を踏む。続いて悟飯、ピッコロ、ポポ、
異様に疲れているヤムチャ、何かに憑かれているようにブツブツ言っている
天津飯の順番に降りてきた。
「修行嫌だ・・・修行怖い・・・生きているって素晴らしい・・・」
「悟空・・・天津飯が壊れちまったから一晩くらい休まないか?ていうか
何でお前らそんなにピンピンしてんだよ・・・」
こいつらはからだの構造が根本的に違うんじゃないか?悟飯は三日で500G
に耐えられるようになってたしピッコロなんて一週間したら俺の界王拳を真似
して十倍まで使えるようになってたし・・・今の俺と天津飯でさえ今十四倍が
限界なのにピッコロは三十倍まで可能なんてふざけた事をしてやがる・・・
ポポと悟空はもうなんだか分からん。『寝るときも重力を500Gに設定して
おこう』だと?そのせいで疲れも取れないで天津飯は壊れちまった。まぁ俺の
方が格上だから俺は無事だけどな。そんな事を考えていると悟空は
「そうだな。時間はたっぷりあるし今日はここで寝るか」
そういってそのその場で横になって、二秒後にはいびきをかいて寝始めた。
「ふぅ・・・このまま探しにいくなんて事になったら死ぬところだったぜ・・・」
ヤムチャが誰に言うともなく呟いた。
戦闘力表
悟空・・・五十万、界王拳二十倍で千万、超サイヤ化で三千万
ポポ・・・二千万以上(未知数)
ピッコロ・・・五十万、界王拳三十倍で千五百万
悟飯・・・三百万
ヤムチャ・・・二十万、十四倍で二百八十万
天津飯・・・二十万五、十四倍で二百八十万七十
「よし!十分休んだしそろそろドラゴンボール探しに行くか!」
そういって悟空が立ち上がろうとするが、ヤムチャがそれを止める。
「悟空・・・『じゅうぶん』と読ませてだますつもりだろうが、俺や読者はだ
まされないぜ・・・『じゅっぷん』休んだくらいで俺の体が回復するとは思っ
てないだろう・・・それに天津飯だってあの状態だ・・・」
ヤムチャはそういって宇宙船の近くに寝かせてある天津飯を見る。白目を剥い
て倒れているのでまるで敵にやられたようだ。
「だから、当初の予定通りちゃんと一晩休ませて貰う・・・」
ヤムチャはそういったところで、悟空が立ち上がろうとする体制のまま寝息を
立てている事に気づいた。
「・・・器用だなお前は・・・さて、俺も寝るか・・・」
ヤムチャがそう言って、寝ようとした。その時、背後から宇宙船の扉が開く音
が聞こえた。ヤムチャは驚いて振り向く。そこには・・・
「一年ぶりだな・・・」
宇宙船から降りてきた男がヤムチャに向かっていった。ヤムチャはその人物に見覚
えが無く、自分の考えがはずれるのを想定しながらもが恐る恐る聞いてみる。
「お前・・・まさか、ヤジロベー・・・なのか?」
「まぁ驚くのも無理は無いか・・・この体じゃぁな・・・」
「ていうか、口調まで変わってるぞお前・・・それにお前・・・その気は・・・」
「気にするな。たいした事じゃない」
ヤジロベーが首を回して背後の宇宙船を見る。
「あれは、地球から離れて・・・俺は反重力エリアでのんびりと暮らしていた・・
だが、一ヶ月くらいたった後、悲劇は起こった・・・」
ヤジロベーが目を細め顔を伏せる。 ヤムチャは息を呑んで聞き入る。
「食料が尽きたんだ・・・」
「それだけかよ!」
「もちろんそれだけじゃない。空腹を耐え忍んで俺はその後ずっと寝てたんだ。そ
したら急に寝苦しくなってきてな・・・そう、お前達の部屋の重力で反重力装置が
壊れ始めたんだ・・・それからは地獄さ・・・まぁその後紆余曲折があってこうな
ったってわけだ・・・」
ヤジロベーはヤムチャより長くなった足とヤムチャの二倍は太い腕をさすって言っ
た。ヤムチャはヤジロベーを軽く睨む。
「一番気になる部分をはしょりやがったな・・・」
ヤジロベーは全く気にせず爽やかな風に包まれて・・・たったまま寝始めていた。
ヤジロベーの戦闘力・・・800万
「いつの間にかナメック星に着いたことだし。ドラゴンボールを探しに行くか!」
天津飯が爽やかな笑みを浮かべていっている。正気を失っていた間の記憶は無い様
だった。さっきまで寝言で『死にたくない』『助けて餃子』『魔封波だー!』とか
叫んでたとは思えない。ヤジロベーを見ても何も言わないし。誰も。まるで自分が
おかしいのかという錯覚に陥りそうだ。
「よし!じゃあオラは北を探すから悟飯とピッコロは南、ポポとヤジロベーは東で
ヤムチャと天津飯は西を探してくれ!」
「え?みんなで探すんじゃないのか?」
ヤムチャが不安そうな顔で聞く。天津飯も平静を装っているが額から汗が出ている。
「何言ってんだ。分かれて探したほうが早く見つかるだろ?」
「で、でももしベジータとかに会っちまったらどうすりゃいいんだ?」
「はっはっは。あんな腰抜け今のおめえらなら狼牙風風拳でも簡単に倒せるさ」
「そうか・・・それを聞いて安心したぞ悟空・・・」
「物凄くムカつく気がするが・・・」
「よし!じゃあ解散!」
悟空はそういって真っ先に飛び立っていった。悟飯とピッコロとポポとヤジロベー
も各々の方向へ飛び立つ。
「あれ?ヤジロベーって飛べないんじゃなかったっけ?」
天津飯が怪訝顔で言った。ヤムチャは遠い目をして言う。
「宇宙船で紆余曲折があったんだろ・・・」
「そうか、納得だ。よし、俺達も行くぞ。ベジータ程度おそるるに足らずだ」
天津飯が何故かすっきりしたような表情で飛んでいった。ヤムチャはため息をつき
それを追って自分も飛んだ。
「ヤムチャ・・・これは一体どういう事だ?」
天津飯がすぐそばで自分と反対方向を見ているヤムチャに訊く。
「俺だってわかるわけないだろ・・・こんな状況・・・」
ヤムチャはあたりを見回してそういった。破壊し尽くされた町。横たわるピッコロそっくりの
人間達・・・皆死んでいる。
「これじゃあ話も聞けないな・・・」
「ヤムチャ、一旦悟空を探してこの事を話そう。万が一ベジータ以上の敵がここに居たら・・・」
「そのほうが良さそうだな・・・」
ヤムチャは即決した。あるていど強くなってもヘタレは治らないようだ。ヤムチャと天津飯は悟空
に現状をよく伝えるためにカメラで惨状を余すところなく撮り尽くして悟空の向かっていった北の
空へ飛んでいった。そして、二人が去った後物陰からすっと人が出てきた。
「カカロットまで来てるんじゃあんな雑魚相手にエネルギーを使うのはまずいな・・・ただでさえ
フリーザにも狙われてるんだ・・・今の俺でもカカロットには勝てるかわからんからな・・・」
ベジータが呟く。強気だった王子もナッパの惨殺を見せられてだいぶ慎重になったようだ。ベジー
タは自分の出てきた岩の影から巨大な星の描かれた玉を取り出した。ドラゴンボールだ。
「地球では見つからなかったが・・・ここで見つかるとはな・・・笑いが止まらないぜ・・・」
ベジータは周りに誰も居ない事を確認して静かに笑う。そして集めた2つのドラゴンボールを水中
に隠し、次の村を破壊するために飛んでいった。
ベジータ戦闘力・・・100万、超サイヤ人化約3000万
「と、いうわけだ・・・悟空、どうする?」
ヤムチャは事の経緯を悟空に全て話した。天津飯はそこらへんで見回りをしている。しばらく悟空
は悩んだような表情をして、ヤムチャに向かってい言った。
「襲われた村か・・・たぶんドラゴンボールを狙ってる奴がほかにも居るんだろうな・・・よし、
オラはそいつを見つけて村を襲うのを止めさせる。ここの人達を救うのもドラゴンボールを集める
のもそれが一番早く済むはずだ。ヤムチャと天津飯はそのままドラゴンボールを探してくれ!」
「ちょ、ちょっとまて悟空!」
飛び立とうとする悟空の足をヤムチャが必死になって掴む。悟空が怪訝顔でヤムチャを見る。
「俺が危ないとかはお前考えないのか?!そりゃお前は強いからいいだろうけど!俺はお前とは違
うんだぞ!もし村を襲った奴らとでくわしたら・・・」
「怖いんだったら、ピッコロやポポと合流すればいいだろ?」
文の前半一部分だけ強調して、悟空が言った。顔は満面の笑みを浮かべている。
「こ、怖いわけじゃないが・・・天津飯!そうまた天津飯が壊れたら大変だろ!俺は別にいいんだ
けどなぁ!ほら俺って仲間思いだろ!だよな!」
「大丈夫だ。ここの神龍に頼めば死んでも壊れても二人とも元に戻れるさ!」
「それ以前に死んだり壊したりさせるな!」
笑みを維持させたままの悟空にヤムチャは掴みかかろうとするが、気づいたときにはもう天津飯が
うろついてるあたりを飛んでいた。天津飯が驚いて頭から地面に落ち、鈍い音を立てて動かなくな
った。その時にはすでに悟空は見えない場所まで行っていた。
「天津飯!あぁもう手間がかかる奴だな!」
ヤムチャは文句を言いながら天津飯の落ちていった地点へと飛んだ
「ぐおぉ・・・頭が・・・頭がぁ・・・」
「何やってんだお前は・・・」
うずくまって頭を抑えてる天津飯を見下ろしてヤムチャは言った。
「悟空が飛んできたくらいで驚いて落ちるなんて・・・馬鹿か?」
「それは違う!」
ヤムチャが呆れながら言っていると天津飯がむきになって反論してくる。
「・・・何が?」
「悟空の奴がいきなり飛んできて・・・ちょっとだけびっくりした所にこれ投げつけてきやがったから
バランス崩して落ちてしまったんだ・・・」
天津飯はそういって自分が握っているものをヤムチャに渡した。ヤムチャは自分の手にあるそれを見る。
「あぁ、ドラゴンレーダーか・・・そういえばあったな・・・なんで俺忘れてたんだろう・・・」
「それより、何で悟空は俺にこれを渡したんだ?」
「あぁ、それならわかる。つまり・・・」
ヤムチャは天津飯に事の次第を話した。
「・・・て事で俺達は誰かに合流するかこのままボールを捜すか選んで行動するってわけだ・・・」
「よし、ポポ達を探そう」
「決断速ッ・・・てかなぜポポ?」
「だってピッコロに『怖くて逃げ帰ってきました』とか言ったら何されるかわからないじゃないか」
天津飯が物凄い情けない顔で情けないことを言う。ヤムチャは呆れながらも納得してしまった。天津飯
は急に真面目な顔になってヤムチャに言った。
「問題はどうやってポポ達を探すかだな・・・」
「え?それは気を探れば簡単に見つかるだろ?」
「はっはっは、そんな高等技術俺達にできるわけないだろう。ヤムチャ、冷静になって考えれば
そんな事わかるだろう。冷静になれ。明鏡止水の心だ」
天津飯は情けない事を言ったくせに妙に清清しい笑みを浮かべている。
「よくわからんが・・・俺はできるぞ?」
「・・・本当か?」
信じられない、といった顔で天津飯はヤムチャを見ている。ヤムチャは平然と答える。
「嘘言ってどうなるんだよ」
「お、俺だって本気を出せばそのくらいできる!くだらん自慢は聞き飽きたぞ!」
「な、何いきなり怒ってんだよ・・・しかも気の探知くらい簡単に・・・」
「黙れ!俺にだってできる!ポポとヤジロベーの気はこっちだ!」
天津飯はそういってあらぬ方向を指差して浮く。それをヤムチャが静止しようと天津飯の足を掴む。
「えぇい離せヤムチャ!俺は行くぞ!」
「落ち着け!それにそっちは・・・」
ヤムチャが止める前にヤムチャの手を振り払って天津飯は飛んでいってしまった。ヤムチャは取り残
されて、天津飯に言うはずだった言葉の続きを誰に言うとも無く虚空に呟いた。
「そっちは・・・悟飯とピッコロのいる方向なんだけど・・・」
「ヤムチャめ・・・!人を馬鹿にしおって!同じヘタレの分際で!」
天津飯は飛びながら、先程まですぐ近くにいた男の悪態をつく。
「きっとあいつだって本当はできないのに見栄を張っているんだ!
間違いない!俺より弱いあのヘタレがそんな高等技術を・・・」
天津飯はそこまで言った時、前方に大きな二つの気を感じた。厳密
に言えば、天津飯は気の探知ができないのではない。悟空がいれば
方角くらいはわかるのだ。しかし、気を感じることはできていても
具体的な所在地や、気の質の違いはわからない。漠然とした大きさ
を感じるくらいだろう。事実悟空とピッコロとポポの区別が全くと
言っていいほどついていない。さすがに悟飯と悟空の区別くらいは
つくのだが。
「見たかヤムチャ!俺にだって本気を出せばこのくらいはできる!
貴様はピッコロ達と一緒に地獄のような思いをするがいい!」
天津飯はそう言って速度を上げて、自分が先刻『地獄』と称した
場所へ向かって飛んでいった。嬉々とした表情で・・・
長いこと諸事情で休んでおりましたが無事復活しました。
PCの中身がブッ飛んで溜めておいたぶんがなくなったので
少ししか投下できませんがいつもよりは多めに投下。
天津飯のやつ・・・本当に気を探れないのか・・・」
ヤムチャは天津飯の飛び立っていった方向を見ながら呟く。物凄い勢いで
ピッコロと悟飯に向かって一直線に飛んでいっている。わざとやっている
のではないかというほど方向は正確だ。
「まぁピッコロも悟飯の見ているところで人を肉塊にはしないだろ・・・
悟飯が精神に傷を負うかもしれないしな・・・天津飯はいいとして・・・」
結構酷い事をいいながら天津飯の飛んでいった方向から目を逸らす。周り
に誰かいれば遠い目をしながらブツブツ『肉塊』とか『精神に傷』とか言
ってる危ない人だ。無論ヤムチャは気づいてないが。ヤムチャは手元にある
ドラゴンレーダーのスイッチを入れる。そして、表示されたドラゴンボール
の位置を見て気づいた。
「この二つ・・・俺たちのいた場所と方角も距離もほとんど一緒だ・・・」
「さて、どうするか・・・」
ヤムチャは考える。自分には二つの道が用意されている。
一つは『ドラゴンボールを見つけた!取るのを手伝ってくれ!』ルートだ。
しかしこれを選ぶと悟空やピッコロに何を言われるかわかったもんじゃない。
ヘタすれば『何故すぐ集めなかった!敵が先にとっていたらどうするんだこの
ヤムチャ!』といわれピッコロの手によって半殺し状態になる可能性もある。
「や、やっぱり駄目かな・・・仕方ない・・・」
二つ目の道、『俺が一人でドラゴンボールを二つも見つけたぞ!どうだ悟空俺
もその気になればこのくらいたやすいぜ!』ルート。この道は危険性が高いが
うまくいけばみんなからい崇め奉られる、まではないとしても今よりはましな
待遇になるだろう。どうせ一ルートは不可。ヤムチャに残された道は一つしか
なかった。
「ここらへんか・・・でかくはねぇけど嫌な気が集まっている・・・」
悟空は一旦とまり高度を少し下げてあたりを見回す。ほとんど間をおかずに銀色の円状
の物体が目に入った。おそらく宇宙船だろう。中から異星人が出たり入ったりしている
のが見える。何人いるかわからないほどの気の数だ。
「参ったな・・・あんまり面倒なことはしたくねぇんだけど・・・」
悟空は全く参っていない顔で言った。そして、気を抑えて宇宙船の周りをうろついてる
異星人と遜色のないレベルまで下げすばやく宇宙船に潜り込んだ。幸い誰も気づかなか
ったようだ。宇宙船の中は思ったより単純で分かれ道がほとんどない。悟空は特に何も
考えず真っ直ぐ歩く。なのに誰にも会わないのは悟空の運がいいとしか言いようがない。
そう時間のたたないうちに明らかにほかの扉より大きい扉を見つけた。悟空は躊躇わず
にその扉を開ける。扉は重厚な音を立てて開いた。
「さて・・・話つけてやるか・・・ここのボスに・・・」
悟空は話をつけるために抑えていた気をほんの少し・・・少しだけ開放した。
「キサマ・・・天津飯、キサマを呼んでいるんだ・・・」
「な、なな、なんでしょうピ、ピピ・・・ピッコロ様・・・!」
天津飯が背を向けているピッコロに頭を極限まで地面に近づけて言う。恐怖でプライドも
何も捨ててしまっているようだ。
「偉大なるピッコロ様が下賎で穢れてて屑な私になんの御用でござらっしゃいまするであ
るヤンスか?」
「何を言っているのかさっぱりわからんが・・・俺は用事があるんで悟飯の盾になってい
ろ。いいな?」
場が氷りつく。いや、天津飯とその周囲だけだが、完全に氷りついている。が、ピッコロ
はもちろん悟飯も完全に無視して『ピッコロさんこの人盾に使えるか心配です』とか言っ
てる。ピッコロと一緒にいたせいで不良になってしまったのだろうか。ひょっとしたら天
津飯がピッコロを殺した・・・というより殺しかけた事が原因かもしれないが。(芋羊羹)
「俺は故郷の星を見てみたいんでな・・・悟飯、最悪殺してもDBがあるから大丈夫だ。安
心して殺・・・使え」
ピッコロはそういうと颯爽と飛び立っていった。その後にはまだ氷っている天津飯と凶悪
な眼光の悟飯が残っていた。
「ところで俺たち、どうやってボールを捜すんだ?」
「ポポ知らない」
二人は見晴らしのいい丘に座り込んで遠くを見ていた。
「ここらへんか・・・やっぱりこの村だったな・・・」
先ほどまで天津飯とともに惨状をカメラでとっていた場所まで戻ってきていた。ヤムチャは
とりあえず地上へ降りてレーダーの示す方角を見てみる。ヤムチャの視線の先には青い青い
・・・いや、どことなく緑色っぽい湖だか池だか沼だかよくわからない水溜りがあった。
「こ、ここか・・・ははは・・・」
ヤムチャが引きつった笑みを浮かべる。やはり水の色がちょっと緑なのが気になるのだろう。
そのままの状態で数秒時が流れる。が、深〜いため息をついてドラゴンレーダーを適当な所
において入水準備をはじめた。入水準備といってもパンツ一丁になって軽い運動をするだけ
だが。ヤムチャは十数秒で体操を終え、足を水につけ・・・ようとしてやはり躊躇う。ヤム
チャはとりあえずズボンのポケットからなぜか入っていたコップを出して湖もどきの水をす
くってにおいをかいだ。特に妙なところは無い。それからある程度なぜかポケットに入って
いた道具を色々持ち出して水質検査をして、地球の海水とほぼ変わらない事が分かった。こ
の湖もどきはおそらく海だったのだろう。ヤムチャはズボンのポケットから何故か入ってい
たゴーグルを取り出して装着、そして緑色の海に音を立てて飛び込んだ。
(視界悪っ・・・海水浴には向かないなこの星は・・・)
ヤムチャはのんきな事を考えながらひたすら海の底を目指して泳ぐ。ほどなくヤムチャは見
つけた。巨大なオレンジ色の球体、中心に赤い星のマークがついた物を。
(でかっ・・・さすが本場のドラゴンボール・・・地球とは比べ物にならない大きさだ・・・)
ヤムチャは驚いて息をすべて吐き出しそうになるくらい驚いた。大きさが地球のドラゴンボ
ールとは全くの別物だったからだ。少なくても十倍はある。それが二つほぼ同じ位置にならん
で海底に落ちていた。ヤムチャはそれを両脇に抱えて海面に上がるために足に力を込めて、息
を吐く。当然だがここは水中だ。
「ごばぁっ?!」
息をすべて吐いてしまったヤムチャに想像を絶するほどの苦痛が襲い掛かる。ヤムチャは苦し
さから逃れるためにすぐに上方へ向かって跳んだ。そして足をばたつかせなんとかあがろうと
するが手が使えないために中々あがれない。冷静になれば一度ドラゴンボールをおいて呼吸を
しに行くなり気を放出して一気に上昇するなり考え付くのだが、ヤムチャにそんなことを考え
ているヒマは無い。苦痛から逃れたい、ただ一心でひたすら足をばたつかせる。酸素欠乏でヤ
ムチャの顔色が青くなってくる。同時に意識も途切れ途切れになる。ヤムチャの頭に不吉な考
えがよぎる。
(あ・・・俺もう駄目かも・・・)
「ぶばぁ!げはっが、がはっ!ごほっ!」
ヤムチャは両脇に抱えたドラゴンボールを適当な場所に放り投げ地面に大の字になって寝転がり、
酸素を思う存分吸った。やっと頭が通常並に働くようになってくる。ヤムチャは立ち上がってド
ラゴンボールを眺める。
「しっかしでかいなぁ・・・地球のとは大違いだ・・・っていってもたぶん大きさに比例して性
能が上がるわけじゃないだろうけどな・・・」
ヤムチャはとりあえず、ズボンのポケットから何故か入っていた替えのパンツに履き替え服を着
なおした。ちなみに濡れたパンツは気攻波で焼き払った。もともとガラが気に入ってなかったの
でこの機会に焼き尽くしてしまおうというよく分からない理論だ。焼いたパンツを海に投げ込み
ながらヤムチャはドラゴンレーダーをてきとーな場所においたことを思い出した。なくしたら暴
行を加えられるだけではすまないかもしれない。ヤムチャは急いでレーダーを置いた場所へと走
った。
「あれ〜・・・誰もいねぇや・・・」
悟空は部屋の中を見回して言う。部屋の中は広く、大きな椅子だと思われるものが悟空の数m先に
おいてある。悟空はそこで目に入ったものに迷わず飛びついた。
「ドラゴンボール!やっぱここのもあったのか!しかも二つも・・・これでクリリン達を生きかえ
らせる道に一歩近づいたぞ!」
「し、侵入者!総員フリーザさまのお部屋に集まれ〜!」
悟空がドラゴンボールにほお擦りしている間に背後に敵が回っていたようだ。悟空はめんどくさそ
うに背後を向く。その時にはすでに十数人の敵が悟空に銃を向けて騒いでいた。
「貴様どうやってここに入ってきた!」
「ここまで巨大な戦闘力を我々が逃すはずないだろう!」
「ところであいつの戦闘力ってどのくらいだ?」
「計ってる途中でスカウター故障して爆発したからわかんねー」
などと騒ぎ立てている。悟空はドラゴンボールを抱えて部屋の出口に向かって歩く。当然それを敵
は阻む。
「馬鹿めが!馬鹿めが!ここを通すと思ったか!俺のスカウターは最新式だ!これで貴様の戦闘力
を計ってやる!」
敵のうち一人が後方で叫びながらこそこそとスカウターを装着してスイッチを押す。そして、数秒。
見る見るうちに顔色が青く、青くなっていく。
「ははは!部下その一!こいつの戦闘力はどのくらいだ!」
先頭で悟空と向かい合っていたやたら毒々しい顔色の異星人がスカウターを装着した異星人に向か
って声を上げる。もはや顔色が青を通り越して群青色になっている部下その一とやらが答えた。
「せ、戦闘力・・・37000?!」
宇宙船が、集まっていた異星人全員の悲鳴で揺れた。
「え〜っとたしかここら辺に・・・」
ヤムチャはそこまで言って、両脇に抱えていたドラゴンボールを地面に落とした。ドラゴンレーダー
をおいた場所は見つかった。が、その場所には先ほどまでなかった瓦礫の山が積まれていた。すぐ横
の民家らしきものが崩れたらしい。ヤムチャは呆然として自分の末路を頭に浮かべる。
激怒、失望、そして、惨殺された一匹の狼・・・
「ま、まだだ!ひょっとしたら奇跡的にレーダーが無事かもしれん!」
ヤムチャはそう言うと物凄い勢いで瓦礫を掘り起こし始めた。地面に伏せて両腕を振り回し瓦礫を掘
り起こしている姿は荒野のハイエナや狼よりも『哀れな野良犬』の方が似合っている。ヤムチャは半泣き状態で瓦礫を掘り続ける。背後に迫る敵の影にも気づかずに・・・
「よぉベジータ・・・こんなところで何やってるんだ?」
こそこそ隠れながら飛んでいた所を声をかけられベジータは驚いて背後を向く。そこにはピンク色の
肌の気持ち悪いトゲが体中から生えた気持ち悪い生物・・・もといドドリアが数人の部下を連れて立
っていた。気持ち悪い顔で気持ち悪い笑みを浮かべている。全く持って気持ち悪いやつだ。と、いつ
もなら腹の底で考えているところだが今は勝手が違う。自分は裏切り者でドドリアはフリーザ軍随一
の実力者の一人だ。ベジータは全身から冷や汗が吹き出る。さらには体全身が震え、ビビッてるのが
どこから見てもわかるほどビビリまくっている。ドドリアはそれを見てさらに顔を気持ち悪く歪ませ
る。
「ド、ドドリアさまがこの私めに何の御用でございますか?」
いきなりすごく下手に出るベジータ。さらには揉み手をして靴を舐めましょうか?とか言い始める始
末。悟空の超化がベジータに誇りを完全に捨てさせるほどのショックだったようだ。いまのベジータ
なら生き残るために何でもするだろう。というか、返事を聞かずにもうドドリアの靴を舐め始めてい
る。ドドリアはベジータが舌を這わしている足を思い切り振り上げた。
「ぐぉっ?!」
当然ベジータは上に蹴り上げられる。地面に落ち、口を押さえてのた打ち回る。どうやら口の中を切
ったらしい。ドドリア他数名はそれを見て腹筋が割れるほど笑う。ベジータはドドリア達に向かっ
情けない声を上げる。
「ド、ドドリアさま・・・!私が何か無礼をしましたでしょうか?!それなら謝ります!どうかお許
しを・・・!」
ベジータは這いつくばり、涙を浮かべ口を押さえながらドドリアに言った。ドドリアは何も言わず、
気持ち悪い笑みを浮かべて大声で嘲笑った。ベジータはゴキブリの如く動き回り、逃げようとした。
が、すぐにドドリアの部下たちに包囲され、急いでまたもといた場所に戻る。
「いいザマだな、サイヤ人の王子、超エリートが・・・はっはっはっは!」
ドドリアがさらに表情を歪めて言う。その表情に部下達ですら戦慄した。要するにすげぇキモイって
事なのだが、その足元にいるベジータの表情にはも嫌悪も、恐怖の色も示していなかった。ただ一つ
、ベジータの心に有る物、それは果てしなく情けない自分と、目の前にいるもの、そして※ナッパを一
瞬で葬り、自分をこんな腰抜けに変えた下級戦士に対する怒りだった。ベジータは拳を硬く握り、ド
ドリアの笑いをかき消して叫んだ。
「黙れぇぇぇぇぇぇ!」
ベジータの叫びが大気を揺らす。ベジータを取り囲んでいた者達はその気迫に押され数歩後退りする。
「どうした?腰抜け王子様。誰に口聞いてるのかわかってるのか?」
ドドリアは、薄ら笑いを浮かべたまま言ったが、感情を抑えきれておらず、言葉から殺意をひしひし
と感じる。
「黙れ!」
「もう一度言う。誰に口を聞いているのかわかってるか?」
ドドリアが笑みを消して先ほどまでとは比べ物にならない殺気を含んだ言葉を吐きかける。が、ベジ
ータは怯まない。
「どうやら死にたいらしいなベジータ!人が遊んでやっていたというのに少し死期が早まったぞ!」
ドドリアはそう叫んでベジータに突っ込んだ。
ドドリアが醜悪な顔を歪ませて向かってくる。が、その動きはとてつもなく鈍重だ。少なくともベジ
ータから見れば遅すぎる。ドドリアが拳を振り上げ、ベジータの眼前に迫る。ベジータはその拳が頭
上に振り上げられている間に拳をきつく握り、体制を低く構える。その体制で体を限界まで捻る。そ
してドドリアの拳がベジータに向かって振り下ろされるのにあわせて渾身の一撃を繰り出す。ベジー
タの拳は、とてつもない速さでドドリアの腹部を抉り、貫き、緑色の血の雨を当たりに降らせた。
(馬鹿な・・・)
ドドリアには、驚く事しかできなかった。ベジータの腕が貫いている部分の痛みすら感じない。驚愕
と恐怖、その二つがドドリアを支配していた。ベジータへの打撃、その途中で眼前からベジータが消
えた。次の瞬間にはベジータは現れ、体に衝撃が走った。何をされたかわかったのはその数秒後だっ
た。
(馬鹿・・・な・・・)
信じられない。たかがサイヤ人如きに自分が殺られるなど・・・そう考えると同時に、自分の上司が
最も恐れていたものの事が頭に浮かんだ。
『宇宙最強、千年に一人現れる伝説の戦士・・・』
(まさか・・・こいつが・・・超・・・)
そして、眼前に見える黄金の髪と膨大なエネルギーを感じた時点でドドリアの思考は途絶えた。
ズオォォォ!
ベジータの放ったエネルギー波でドドリアは息絶えた。ドドリアの部下達はそれを見て一瞬狼狽
し、手際よくばらばらに飛んで逃げた。おそらく何度も訓練したのだろう。散り散りになる雑魚
を放ってベジータはドドリアの血で汚れた手袋を投げ捨てる。
「あれほどの戦闘力を誇っていたドドリアを一撃で・・・」
いまだに信じられずに自分の両手を見る。そしてベジータは笑った。
「ふふふ・・・はっはっは!今の俺ならカカロットにもフリーザにも負けん!俺が宇宙一だぁぁ
ぁぁ!たぶん!いや、きっと・・・おそらく・・・宇宙一という可能性は否定できない・・・気
がする・・・かも・・・」
台詞の後半は自分でもよく聞き取れないくらい小声になっていた。ベジータは肩を落として何処
かへ飛び去った。
「おい、俺の名を言ってみろ・・・」
「偉大なるご主人様孫悟飯様でございます!」
悟飯の下から天津飯が即座に答えた。悟飯はおもむろに拳を振り上げ、天津飯に頭に軽く叩きつ
ける。軽くといっても界王拳を使っていない天津飯には結構な威力なのだが。
「おほぅぁ!」
天津飯がうめき声をあげて頭を両手で押さえる。
「遅いわ・・・あと0.3185秒早くしろ・・・」
悟飯はそう言うと天津飯の頭に右足を乗せてぐりぐりと踏みにじる。天津飯は振り落として気功
砲を撃ってやろうかと思ったが、悟飯が怒って魔閃光を撃って来たら怖いっつーか死んじゃうの
で我慢する。
「ところで偉大なるご主人様悟飯様、なぜこの方向に向かっておられるので?」
「ふっ・・・屑が・・・」
悟飯は見下した目で天津飯を見る。天津飯は本気で前述をやろうかと思ったが、再び前述の理由
で我慢した。
「この微弱な気の乱れも感知できぬのか?キサマは?」
「は・・・わからないわけないだろう!」
わかりません、と素直に言おうとして、言葉を摩り替える。が、
「偉そうにするなゴミめが!」
言葉遣いが気に入らなかったらしく、悟飯のエルボーが天津飯の背骨を直撃する。天津飯は悶え
ながら数メートル落ちる。
「す、すみませんでした・・・悟飯様・・・」
涙目になりながら急いで謝る。悟飯はいつの間にか構えていた魔閃光のポーズを解いてとても子
供には見せられないような暴言(自粛)を吐きまくる。その度に天津飯は『すみません』と『許し
てください』を連発した。
「おそらく、この先でドラゴンボールをめぐって争いが起きているのだろう。我が師の故郷を荒
らすとは・・・こいつら、死ぬしかないな・・・ふふふ・・・」
悟飯が子供に似つかわしくないどす黒い笑みを浮かべる。天津飯は怖いので何も言わない。と、
水ばかりだった風景がひとつ山を越えると一変する。山のすぐふもとに村があった。天津飯はそ
れを悟飯に教えようと上を向いて、悟飯のパンチを顔面に喰らい叩き落された。天津飯はうめき
声を上げながら音を立てて地面と激突する。悟飯は颯爽と地面に降り立った。天津飯は殴られた
顔面と地面に叩きつけられた後頭部を手で押さえながら悟飯に訊く。
「な、何故・・・」
「様子見だ。そんなこともわからないのか愚物が」
悟飯は天津飯に顔も合わせずに遠くを見ている。天津飯は地面に『の』の字をかいていじけなが
ら本気で攻撃して逃げようかと画策し始めた。
「見っつけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヤムチャは少し土で汚れたドラゴンレーダーを掲げて叫ぶ。その目には涙が滝のように流れ出し
ている。
「うぅ・・・苦節三十分・・・ひたすら地面を掘り返しやっと見つけた・・・これで俺の命は保
障されたんだ・・・」
ヤムチャはそう言うと大声で泣き叫んだ。が、すぐに背後に邪悪で少し小さめの気を感じて泣く
のをやめて背後に目を向ける。
「天津飯か?!」
どうやらヤムチャの脳内では邪悪で小さい気=天津飯らしい。本人にばれたら友好関係が崩れる
ことは間違いない。が、ヤムチャを変な目で見ていたのは天津飯ではなかった。
ヤムチャの見たものは、赤い色の気持ち悪い筋肉質な化け物と、青くて小さいキモイ顔した化け
物だった。ヤムチャがピッコロ以上のキモさに呆然としている。が、赤いやつが両脇に抱えてる
ものを見て血相を変えて叫ぶ。
「あぁぁぁ!そこの赤いの!そのドラゴンボールは俺のだ!返せドロボー!」
ヤムチャはそういって赤いやつが両脇に抱えているドラゴンボールを腕を交差させ左右の薬指で
指した。薬指なので少しプルプルいって狙いが定まっていない。
「これか?これはそこらへんに落ちていたので我々が頂いたのさ・・・文句でもあるか?」
「ヘィ!アリマスェン!」
赤いやつが言ったのと同時に青いやつがキーキー声で言う。
「よし、なら帰るぞ!」
「ちょっと待て!俺はコント見にきたんじゃないぞ!」
「馬鹿が・・・コントなら出演料を貰っている所だぞ・・・ただで見せてやったのだ。礼くらい
いったらどうだ?」
「あ、それはどうも・・・」
「では、我々はもう行く」
「逝ケ!」
「待てぃ!俺は置いて行けって言ってるんだ!」
「強情な奴だ・・・なら戦って奪えばいいだろう?えーと、青いきしょいの。こいつの戦闘力をは
かれ」
「名前くらい覚えてやれよおい・・・仲間だろお前ら・・・」
ヤムチャが額から汗を流しながら赤いやつに言う。が、二人とも全く気にしていない。
「ケケケ!オレノスカウターハサイシンシキダ!テメーナンカコノスカウターデイチゲキダゼ!」
「スカウターで?!それって計測器だろ?!」
「ちゃんと突っ込むとは律儀なやつだ・・・賞賛に値する・・・」
「いや、別に値しなくていいから」
「ケケケ!モウスグダ!」
そして、三十分後・・・
「ふふふ・・・貴様の命もあと僅かよ・・・」
「もうそれ二十回は聞いたぞ」
ヤムチャがやたらと自信満々な赤いやつに言う。青いやつはまだ飽きずに宇宙から発信される電波
をキャッチしている。何もないところを見たり目の焦点があってなかったりする奴をみるのはちょ
っと怖い。
「今度こそ本当に僅かだ・・・そろそろ貴様の命が本当に後僅かなわけを教えてやろう・・・」
「いや、別にいい」
ヤムチャが適当に答えるが赤いやつは聞かずに説明し始める。
「何故なら我等の戦闘力は合計で二万もあるのだ!」
「な、何ぃぃぃぃ!」
「そして青いのは100以上の数を数えられない!だから貴様の戦闘力は必然的に100以下になる!」
「な、何ぃぃぃぃ!」
「そして私の戦闘力は13900!貴様には勝ち目はない!ちなみに青いのは戦闘力100だ!はっはっは
!」
「いや、それじゃ合計14000だし・・・」
赤いやつの高笑いが止まる。赤いやつは笑いながら・・・額から滝汗を流しているが・・・驚いて
た癖に平然とあくびをしてるヤムチャを見た。
「・・・マジ?」
「マジだ」
ヤムチャが事も無げに答える。赤いやつは膝をついてなんか打ちひしがれた表情をする。
「くそ・・・まさか私が九九を間違うなんて・・・」
「足し算だろおい」
と、ヤムチャが言ったところでけたたましい音が青いやつの方向から鳴り響いた。ヤムチ
ャはびっくりして青いやつを見る。青いやつは薄ら笑いを浮かべてこちらを見ている。
「結果がでたか!きしょいの!」
赤いのが青いのに向かって叫ぶ。青いのは『きしょい』とか言われても全く気にした様子
はない。
「ケケケ!キサマノセントウリョクハ・・・タッタノ13ダ!」
「な、何だと?!」
今度は本当に驚くヤムチャ。だいぶ強くなったはずだったが、いつの間にか二桁にまで下
がっていたらしい。武天老師様より低い。ヤムチャは戦闘力14900+100の敵を前にしてすげ
ぇビビる。思わず石に躓いて後頭部を打ってしまうくらい。
「はっはっは!雑魚めが!貴様など俺一人で十分だ!はぁーーー!」
赤いやつが『お前邪魔だから来るな』と遠まわしに青いやつに言ってヤムチャに飛び掛る。
ヤムチャはびびって目を瞑り自分の前で手をばたばた振る。
べしぃ
「あぎゃ?」
ヤムチャが手ごたえと変な声に驚いて目を開くと、頬を押さえて目を白黒させてる赤いやつ
がいた。
「・・・」
ヤムチャは黙って赤いやつに近づいてみる。赤いやつはヤムチャに右ストレートを放つ。が、
あっさりとヤムチャが避け、ヤムチャのかなり力を抑えた左ジャブが顔面に直撃する。再び
うめき声を上げながら数メートル吹っ飛んだ。
「ば、馬鹿な・・・たかが戦闘力13の奴が・・・!有り得ん!」
赤いやつはそういって自分のスカウターのスイッチを押した。何故か数秒で結果が出る。
「せ、戦闘力13万2854だと?!」
赤いやつは驚愕して青いやつを見る。青いやつはこともなげに
「オレスウジガオオスギテワカラナイカラサイショノフタツダケヨンダンダ!」
「この馬鹿ーーーーーー!!」
赤いやつがそう叫んで逃げ出すより先に、ヤムチャの二発目の左ジャブが赤いやつに到達
するほうが圧倒的に早かった。赤いやつはとてつもないスピードで飛んで行き、岩盤を数
枚貫いて目測で海を30メートルほど割って見えなくなった。
「これあの地獄の修行の成果か・・・これなら本当にベジータも敵じゃないな・・・」
ヤムチャはそう呟いて、背後のドラゴンボールを脇に抱えて飛んでいこうとしている青い
やつをボコボコにして赤いやつの隣に捨ててやった。
「くそ・・・フリーザ様に連絡して救助を・・・あいつら、必ずブッ殺してやる・・・」
赤いやつは朦朧とする意識の中で救助信号を送った・・・つもりだった。しかし、赤いや
つが押したのは本隊への救助スイッチではなく、現在近くで星の制圧をしているギニュー
特戦隊への救援スイッチだった。もちろん、救助が来るはずはなく二人は約一時間後に天
に召された。
「悟飯様・・・敵の観察が終わったらいったいどうなさるんで?」
天津飯が恐る恐る横で観察をしてる悟飯に聞く。悟飯はどす黒い笑みを浮かべて答える。
「わかりきったことを聞くな、屑が・・・」
天津飯はその言葉に震え上がる。『皆殺し』と『一方的な虐殺』がこの後待っているのは
確かに聞くまでもなく分かっていたことだ。天津飯はこれ以上悟飯を刺激しないように少
し離れて自分も観察を始める。緑色の人達がサイヤ人どもが着ていた服と同じ服を着た、
銃を装備しているやつらに掴まっているようだった。その戦闘服を着ているほうのやたら
偉そうな、変な乗り物に乗った奴が太めのナメック星人(二人の子持ち)に近づいた。
「こんにちは、貴方がこの村の長老ですね?名前くらい聞いたことあると思いますが私は
フリーザと申すものです」
その名前を聞いてナメック星人達と天津飯は驚く。
「フリーザ・・・そう言えば界王様が言っていたな・・・」
天津飯は一人で回想シーンに突入する。宇宙船の中、死に掛けている最中に突然話しかけ
て忠告してきた。
『いいか、フリーザには手をだすな。お前らと言えど負けて死んで煮て焼いて食われるか
もしれん・・・それに界王星はフリーザ達から闇ルートで買ったものだからフリーザにバ
レたら契約破棄になって襲ってくるかもしれないし・・・』
「今思えば、フリーザ達は重力が10倍の星なんて要らないから適当に売り払いたかったん
じゃないか・・・?」
天津飯が余計な事を考えていると、横から悟飯の右ジャブが入った。天津飯は少しよろけ
る。
「集中して見ていろ、本人が気にしていないのだ。問題なかろう」
天津飯はいちいち殴るなとか言いたかったがまた殴られるので止めた。再びフリーザ達に
目線を戻す。
「早速ですが、ドラゴンボールをいただきにきました・・・渡してくれるでしょう?」
長老は少し押し黙ってから口を開く。
「パタッツコルペラボルパ・・・」
「ナメック語以外で話せるのはわかっています。普通に喋りなさい」
あのわけわからないのがナメック語か・・・天津飯は岩場に隠れながらわかったようなふり
を悟飯に見せ付ける。全く意味はないのだが。
「ビビビバルゴンダッパザンタンバ・・・」
「ナミック語以外でも話せるのはわかっています」
「ナミック?!」
天津飯が小声で驚く。
「ハミルルルヘルカッパモンペルト・・・」
「ナメッコ語もダメです!その調子ならナマッコ語も使えるでしょうが、それも不可です!」
「てめーらにドラゴンボールなんてわたさねーよ厨房が、わかったら家帰って回線切って首つ
って市ね」
「2ch語も使ってはいけません!それにカタコトではないですか!使うならちゃんと習得し
てから使いなさい!」
「わけわかんねぇぇぇぇぇぇぇ!」
がごぉ
フリーザとナメック星人の目が一斉に天津飯の方向に向く。間一髪悟飯の踵落としが天津飯の
後頭部にヒットしたおかげで見つからずにすんだ。フリーザ達とナメック星人達はふたたび向
かい合った。
「馬鹿めが・・・見つかったらどうするつもりだ・・・」
「す、すびばぜん・・・」
天津飯はテメーの蹴る音が五月蝿かったからだろ、とは怖くて言えなかった。
「・・・ドラゴンボールをどうするつもりだ・・・」
ようやく長老がまともに口をきいた。フリーザは笑みを浮かべて答える。
「不老不死になってちょっと永遠に宇宙を支配しようかと思っただけですよ・・・他の長老
方は素直に渡してくれましたよ・・・」
「嘘をつくな!」
「長老達がそんな簡単に渡すはずない!」
長老の両脇にいた二人が思わず前にでる。フリーザは薄ら笑いを浮かべる。
「本当ですよ・・・こうしたらすぐに渡してくれました・・・」
フリーザはそういって指を鳴らした。と、同時にフリーザ側の戦士数名が長老の両脇の二人に
襲い掛かる。当然の如くナメック星人はズタズタにされた。が、それは片方だけだった。長老
の右側にいたナメック星人は三人の戦士を一瞬で葬り、涼しい顔で腕を組んでいた。
「ほう・・・なかなかやりますね・・・」
「当たり前だ。私はこの星随一の格闘観戦好き、見ているうちになんか試したくなってきたの
だ・・・」
格闘好きのナメック星人はそう言って笑う。
「じゃあザーボンさん、行って来なさい」
「はっ、フリーザ様・・・」
フリーザがそう言うと、フリーザの横にいた肌の青い男が前に出た。格闘好きのナメック星人
はすぐに飛び掛ってきた。が、ザーボンの放った拳に貫かれ、苦悶の表情を浮かべて倒れた。
「さぁ、早くドラゴンボールを渡してもらいましょうか・・・さもなくば、今度はそこにいる
人達を殺しますよ?」
フリーザはそう言うと長老の側にいる二人の子供を指差した。長老が目を見開いて狼狽する。
「き、貴様・・・子供まで殺す気か・・・」
「言うことを聞かないなら、仕方ないでしょう?」
フリーザはそう言うと、長老の右側にいる子供に指を向ける。
「う、うわぁ〜〜〜!!」
長老の左側にいた子供が声を上げ、走って逃げ出した。が、次の瞬間何かが一瞬光って逃げ出
した子供を焼き尽くした。
「カ、カルゴーーー!」
残った方の子供が残骸に向かって叫ぶ。フリーザは笑う。
「逃げ出そうとするからそうなるんです。さぁ、ドラゴンボールを渡してくれませんか?」
フリーザの言葉が終わった後にザーボンが長老達に歩み寄る。
(くっ・・・こいつらはあの目に付けている機械で我々の位置を探っているようだが・・・
あの機械を壊せば他の村は助かる・・・隙を見せれば・・・!)
「あいつら・・・子供まで・・・!」
天津飯が拳を近くの岩盤に叩きつけ、悟飯を見る。
「悟飯様!いつまで観察しているのですか!あいつらをさっさと・・・たお・・・」
天津飯は、邪悪な気を放つ悟飯を見てビビる。悟飯はゆっくりと立ち上がるとよく聞
き取れない程度の声で一言呟いてフリーザ達のいる方向へ飛んでいった。
「わ、わかった・・・ドラゴンボールを渡す・・・だからこの子だけでも助けてくれ
・・・」
フリーザはそう聞くと笑った。
「では、早くその場所に案内を・・・」
フリーザがそういった次の瞬間、前にいたザーボンに何かが当たって真横に吹っ飛ん
だ。フリーザは一瞬見えた光の角度を見てその元であろう場所を見上げる。そこには
腕を組んだ悟飯が仁王立ちをしていた。
「貴様ら・・・許さんぞ、外道が・・・!」
悟飯がフリーザに向かってそう吐き捨てる。フリーザは不愉快そうな顔をして吹っ飛
んだザーボンを見る。
「まだ子供ではないですか・・・ザーボンさん、何をしているんです?」
「くっ・・・あのガキ・・・」
ザーボンが頭を抑えながら立ち上がる。
「生意気なガキですね・・・ザーボンさん、殺ってしまいなさい」
一瞬、フリーザに隙が生まれる。長老はその隙を見逃さずに気功波をフリーザに・・・
フリーザのスカウターに当てた。
「・・・何のつもりですか?まさかこんな攻撃で私を倒せるとでも・・・」
長老はフリーザの言葉を聞かずに、地面に落ちているスカウターと、ザーボンの付けて
いるスカウターを破壊した。フリーザが目的に気付き、血相を変える。
「まさか!私達のスカウターを!」
「そこの子供を連れて逃げてくだされ!」
悟飯はとっさに子供を抱え、飛び立った。同時にフリーザもザーボンに命令する。
「あのガキどもを逃がすな!絶対にです!」
ザーボンは返事よりも先に飛び立っていた。フリーザは一人残った長老を睨みつける。
「キサマ・・・余計なマネを・・・!」
「これでお前らはドラゴンボールを揃えられん・・・どうせすべて揃えても貴様らには使
えんだろうがな・・・」
長老が言い終えた時、フリーザの腕が長老の腹部を貫いていた。長老はその一撃で崩れ落
ちる。と、同時に何かがすぐ近くに落ちてきた。丸いものだ。その扉が開いて中から何か
が出てくる。
「グルド!」
右端の球体から出てきた緑色の異星人が叫ぶ。次に、その逆側の球体から青い異星人が表
れ、叫んだ。
「バータ!」
さらに、中心を残した球体が開き、同時に二人が出てきた。
「リクーム!」
「ジース!」
そして、残った最後のひとつが姿を現し、四人と同じように叫んだ。
「ギニュー!」
そして、その五人が一箇所に集まる。
『五人そろって!ギニュー特戦隊!』
五人がそれぞれポーズを取って、止まった。
フリーザは口元を引きつらせて額から汗を流している。五人は誰も反応してくれないので
ポーズをやめてフリーザに近寄る。
「フリーザ様、どういったご用件で我々を呼んだのですか?」
「呼んだ?そんな覚えはありませんが・・・」
フリーザが怪訝顔をする。
「しかし、我々の宇宙船に救援信号が届きましたが・・・近くを飛んでいたので確認する
より直接来るほうが早いかと・・・」
「まぁ、いいでしょう。妙な奴らがこの星に集まっているようですし・・・」
フリーザがギニューの顔を覗き込む。正確には、ギニューの付けているスカウターを、だ
が。
「ギニューさん、スカウターの予備はどのくらいありますか?」
「私達が付けているのを除くと、各自一つずつ宇宙船に積んでありますが?」
「それで十分です。至急持ってきてください」
「はっ!ジース!グルド!」
ギニューが赤い色のナイスガイと緑色の肌の目が沢山ある奴に命令すると二人は迅速にスカ
ウターをとりに戻った。フリーザはその様子を見てから、足元に転がっている死に掛けの長
老を見下ろす。
「貴方のしたことは無駄な足掻きでしたね。あの子供もすぐにザーボンさんが跡形もなく消
しさるでしょう。素直に渡していればもう少し寿命が延びたものを・・・」
フリーザはそう言うと、長老を焼き尽くした。
「さーて、これからどうしようかな〜、もうドラゴンボールは二つ集めたわけだしこれ以上
はりきって怪我すんのも嫌だし・・・そろそろ他のみんなと合流するか。天津飯も心配だし
、一応」
ヤムチャはドラゴンレーダーをぼーっと見ながら言ってみたりする。今他のみんなと合流し
てもドラゴンボールを二つも集めたとなればある程度自分のランクは上がるだろう。少なく
ても天津飯よりは優遇されるはずだ。とりあえずそれで十分だと、ヤムチャは立ち上がり、
飛ぶ・・・が、すぐにレーダーの異変に気づいた。ドラゴンボールが二つ、とんでもない速
さで近づいてくる。敵か、ヤムチャは慌ててその方向を見た。そして、遠くに小さい人型の
影が現れた。ヤムチャはドラゴンボールを置いて、狼牙風々拳の構えを取った。
「よ、ヤムチャ!」
影は目の前に降り立つと片手を挙げて名前を呼んできた。ヤムチャの緊張が解け、ヤムチャ
もその影に声をかける。
「悟空・・・いきなり行っちまったと思ったらいきなり現れて・・・勝手な奴だなお前は・
・・」
「わりぃわりぃ。ん?天津飯はどうした?」
心の全くこもっていない謝罪の後に悟空が聞く。ヤムチャは遠い方向を見て、
「さぁな・・・生死すら定かじゃない・・・」
「じゃあそんなことはどうでもいいけどよ」
「いや、ちょっとは気にしてやれよ・・・」
ヤムチャが悟空に言うが、悟空は全く気にも留めずにヤムチャの脇にあるものを指差して訊
ねた。
「わかった・・・ヤムチャ、そこまで言うならオラは何もいわねぇ・・・」
「全っ然わかってないような言い方だが・・・まぁいいか・・・」
説明に使った時間の無駄さにヤムチャは頭を抱える。と、悟空がヤムチャの肩に手を乗せる。
ヤムチャは頭に添えていた手を下げて悟空の顔を見る。
「じゃあ、オラはまた他のドラゴンボールを探してくるからこの二つ、よろしくなヤムチャ!」
「待て!」
ヤムチャは今度こそしっかりと悟空の足を掴んだ。悟空が露骨に嫌そうな顔をする。
「何だ?一人が怖いのか?」
「勝手に行くなといいたいんだ!どうしてお前はそう重要な役目を俺に任せるんだ!もしかして
俺を困らせたいだけなんじゃないか?!」
悟空の体が一瞬、ぴくっと揺れた。
「あ、お前!やっぱそうなんだろ!そういえば宇宙船でも俺に壊れた奴の世話任せたし!お前そ
ういう奴だったのか!俺が昔腹減ってるときにボコボコにした恨みか!そうなんだろ!」
ヤムチャが一気にまくし立てる。悟空は手を振り解こうと足を振りまくる。ヤムチャは振り落と
されまいと必死で足に掴まる。
「ヤムチャ!オラの言うことがきけねぇのか!」
悟空が物凄い剣幕でヤムチャに向かって言い放つ。ヤムチャはひっ、と呻いて手を緩める。もち
ろん、その間も悟空は足を降り続けている。遠心力でヤムチャの手は滑ってすっぽ抜けた。ヤム
チャはそのまま近くの岩盤に叩きつけられる。
「じゃあな、ヤムチャ!ちなみにオラはただおめぇの十字傷が気に入らなかっただけだ!」
悟空はそれだけ言うと再び物凄いスピードで飛び去っていった。ヤムチャは悟空が本気ではなか
ったおかげでたいしたダメージは無かったが、悟空に対する信頼が少し減った。ヤムチャは陰口
叩きながらドラゴンボールを一箇所に集める。が、ヤムチャはすぐ背後に迫る影にまたしても気
づかないのであった・・・
「おい、キサマ・・・」
「ひょへぅ?!」
ヤムチャは背後から急に声を掛けられてびっくりして飛び上がり、足を滑らせて側頭部を岩にぶつ
け、頭を抑えてごろごろ回っていたら海に落ちてしまった。ヤムチャはすぐに陸上に上がる。すぐ
目の前にはベジータが腕を組んで立っていた。
「おうぇあぁぁぁぁ?!」
再び甲高い奇声を発しながら飛び上がるヤムチャ。とりあえず岩の陰に隠れて様子を見てみる。す
ぐにわかったが地球にいたころと何かが少し違う。地球にいたころは無駄に自信満々だったのに対
し今は表情が少し暗いし、生え際も前より後退している。他といえば気がかなり大幅に増大してい
る事だけだった。
「べ、ベジータ!俺に何のようだ?ナッパとかいうハゲを殺したのは悟空であって俺は全く何もし
ていないぞ!殺るなら悟空だ!頼む!見逃してくれ!俺にできることなら戦い以外何でもするから!」
ヤムチャは頭を地面すれすれまで下げて岩の陰からベジータに頼み込む。もっともベジータからは
岩が邪魔で何も見えないのだが。ヤムチャはほぼ100%ダメだと思っていたが、ベジータの口から発
せられた言葉は全く逆だった。
「いいだろう・・・」
「へ?」
ヤムチャがマヌケ面をして素っ頓狂な声を上げる。
「ただし、そのドラゴンボールは置いていってもらおう・・・星の模様からして二つはもともと俺の
物だしな・・・残りは利子といった所か・・・」
数時間足らずで二倍の利子なんて明らかに違法ですが、とヤムチャは言いかけたがそんな事いったら
殺されるし、そもそも地球の法律なんて宇宙人には関係ないので喉の途中で押しとどめた。
これでヤムチャは悟空の思惑通り再び苦境に立たされた。ドラゴンボールを渡せば天津飯に
罵られまくった挙句悟飯、ピッコロ、悟空によって存在が抹消されるだろう。ほぼ100%の
確立で。渡さなければ渡さないでベジータと戦う事になる。確証は無いがベジータがもし悟
空の戦ってきた一味の仲間だったらもし倒せたとしても悟空と仲良くお尋ね者になるかもし
れない。今感じるベジータの気はせいぜい自分の界王拳五倍と同等程度だが、もしかしたら
何か秘策があるかもしれないし、勝っても前述の通りになる可能性が非常ォ〜に高い。どち
らにせよ死ぬ確立は非常に高い。高すぎる。ベジータから逃げ切れるという選択肢もあるが、
ヤムチャは混乱しているので思いつかない。究極の二者択一。今高確率で死ぬか、後で100%
の可能性で死ぬか、ヤムチャは非常に悩んだ。が、所詮はヤムチャの脳、今死にたくないとい
う思考が打ち勝った。
「どうぞお持ちください・・・」
ヤムチャはドラゴンボール四つを器用に積み重ねてベジータに手渡した。
「ふっ・・・中々頭がいいようだな・・・」
ベジータは見下した顔でそう言うと準備よく持っていた風呂敷でドラゴンボールを包み、毛が
抜けないように生え際を両手で押さえて飛んでいった。ヤムチャは額の冷や汗を手の甲で拭い
息をついた。が、すぐに表情が暗くなる。
「どうしよう・・・悟空達に何されるか・・・」
ヤムチャは地面に手を付いて震えだした。
「もう少し遠くまで行ったら一旦止まるか・・・」
悟飯が敵の気を振り切ったのを確認して言った。
「あ、あの・・・」
「何だ?若造・・・」
悟飯が自分が右手で掴んでいる緑色の生物に男らしく言う。
「いや何か若造って言うのはちょっと・・・それよりもあのその人大丈夫なんですか?」
緑色の生物・・・もといデンデが悟飯が左手で首を掴んで地面に顔面を擦り付けながら悲鳴みたいな
変な音を立てている三つ目のハゲを指差して言う。何処からどうみても大丈夫ではないのはわかって
いるが聞かずにはいられなかったようだ。悟飯がすかさず答える。
「大丈夫なら盾に使える。ダメになれば重量が減る。その程度の存在だそんな奴は・・・」
「ひ、ひでぶ・・・」
天津飯が鼻血を撒き散らしながら呻いた
悟飯は当然の如くシカトしてさらに高度を少し下げた。もちろん天津飯の首を握っている手は緩めな
い。
「そういえば名を聞くのを忘れていたな・・・我が名は悟飯。そこの奴はゴミだ」
悟飯がさらっと酷い事を言う。
「ボクの名前はデンデです・・・あ、前危ないですよ悟飯さん」
デンデが前方ある岩を見て言う。悟飯は軽々とそれを避け・・・ようとして考え直し、左手を前に突
き出す。天津飯が一瞬恐怖の表情を浮かべたが、誰にもその表情を見られずに前方の岩にぶつかって
消された。悟飯がどことなく満足げな表情を浮かべている。
「大丈夫ですか?ゴミさん・・・」
デンデがまるで心配したように天津飯を見ながら言う。『本気でゴミっつー名前だと思ってんのか』
と言ってやりたかったが顔面が痛い上に悟飯が怖いのでやっぱりやめた。
「そのような人間公害に話しかけるとバカと三つ目が移るぞ」
「うわ、そんなことになったら人生お終いですね」
デンデは結構酷いことをさらっというと少し天津飯から距離を置いた。再び地面に擦られている天津
飯はちょっぴり泣いたりする。例によって誰にも見えないが。
「・・・あの、悟飯さんと人生の落伍者さんに案内したい場所があるんですが・・・」
デンデが何か、意を決したかのような表情で悟飯に言った。悟飯はすぐに頷いた。
「どの方角だ・・・」
デンデが現在地から見て左を指差した。悟飯はすぐ左折し、速度を上げた。天津飯が遠心力で岩盤に
叩きつけられたが気にするものは誰もいなかった。
「くっ・・・まさかあんな子供に振り切られるとは・・・」
ザーボンは悟飯の飛び去っていった方向を見て言う。
「くそ・・・このまま帰ればフリーザさまに何をされるかわからない・・・この前は鼻の穴
にネギ突っ込まれたし、その前は乳首にピアスを付けさせられた・・・残っている罰ゲーム
は・・・まさか、眼球にわさびコースか?!くっ・・・」
ザーボンは自分の両目を押さえて震える。と、自分の指の隙間から肩を落としてやたら大き
な風呂敷を担いで両手で頭・・・というより額を抑えながら飛んでいるベジータを発見した。
ザーボンの表情が一瞬で明るく変わる。
「ベジータ!そうだ、裏切り者のあいつを引き連れていけば眼球にわさびコースではなく、
普段着をマッパ+コートに変更くらいで許してもらえるかもしれない!」
ザーボンは悪化してるんだか好転してるんだかよくわからないことを言いながらベジータの
いる方向へ向かって飛んでいった。
「ベジーーーーィタァーーー!」
ザーボンはそう叫びながら両手をベジータの頭に向けて振り下ろす。ベジータは『え?』とか
言いながら上を向いて、顔面を殴られて地面に落ちた。ザーボンは嬉々として地面に降りる。
ベジータは顔を摩りながら目を開けて、ザーボンを見て結構驚いた。
「ザ、ザーボン・・・!俺に何の用でございます・・・じゃなくて何の用だこの青肌野郎!」
「お前をいたぶってフリーザさまの所に連れて行くのだキャッホォォォイ!」
「な、なんだコイツは・・・脳がやられたか?」
ベジータは『キャッホー!』とか叫びながら小躍りしているザーボンから少し離れる。
「へッ・・・俺はドドリアを一撃でぶっ殺したんだ・・・キサマなんかにいたぶられるほど弱く
はないはずだ!・・・と思うんだが・・・」
ベジータは弱気に叫びながらザーボンを睨む。が、当のザーボンは踊りに集中していて聞いていない
ようだった。ベジータは今のうちに逃げようと風呂敷を掴んで引き寄せた。が、その弾みでドラゴン
ボールのうち三つがザーボンの足元に、一つが海に落ちてしまった。足にドラゴンボールがぶつかっ
てようやくザーボンが我に返る。
「こ、これはドラゴンポール!」
「ボールだ!」
律儀にベジータが突っ込む。
「何故お前がこれを三つも・・・まさか!やたらと人が死んでる村が多いと思ったらお前がすでに襲
っていたのか?!」
考えればすぐ分かることだと思うが、ザーボンが過剰に驚く。
「まぁそんなことはどうでもいい・・・お前+ドラゴンポールをフリーザ様に差し出せばきっと普段着
をマッパ+コートにしてくれるだろう・・・」
「キ、キサマそんな趣味が・・・お、おいあんまり寄るな・・・」
まるでそうしてもらいたいかのような口調でザーボンが言ったのでベジータがあからさまに嫌そうな顔
でじりじりと寄ってくるザーボンと距離を置こうとする。
「オ、オレはドドリアを一撃で葬ったんだぞ!貴様だって一撃で・・・」
「嘘付け」
ザーボンが言い終わらぬうちに一蹴する。ベジータは少し怒って言い返す。
「本当だ!俺はとうとうなったのだ!超サイヤ人に!」
「下級戦士に怯えて失禁しながら帰ってきた奴がよく言うぜ!」
「そ、それは言わないでくれる約束だっただろう!三時のおやつ一週間分で手を打ったはずだ!」
くだらない言い争いを五分間続けて、ザーボンはベジータをからかうのに飽きた。ようやくまとも
な話に戻ってきた。
「ドドリアを倒したのは本当らしいな・・・そういえば戦闘力の反応が消えてたかもしれないし・
・・よかろう、なら私の真の姿を見せてやろう!」
「真の姿、だと?変身するのか?」
ベジータがあまり驚いていない様子で訊く。ザーボンはけだるそうな顔で答えた。
「実はこの姿は戦闘力は高いんだけどちょっと醜いっつーか子供には見せられないっつーか前に変
身したときフリーザ様に減給されたからあんまりなりたくねーんだよなー」
「しかしドドリアが倒されたのなら仕方がない・・・見せてやろう!あ、ちなみにフリーザさまも
変身型の宇宙人らしいっすよダンナ」
「そんな重要なことをまるでついでの様に・・・」
ベジータが言った直後に、ザーボンの『変身』が始まった。ザーボンが奇声を発しながら全身に力
を込めると、筋肉が肥大し、体形が一回り大きくなる。さらにせっかく筋肉が増えたのにその上か
ら脂肪のようなものが筋肉を覆う。皮膚の表面に無数のイボができ、ザーボンの言ったとおり醜い、
ドドリアを青くしたような姿に変わった。
「へッ少し大柄になって気持ち悪くなるのがキサマの変身か・・・その程度ならドドリアと大差は
ないな・・・」
ベジータが自信満々にザーボンに言い放つ。が、ザーボンもまた余裕しゃくしゃくで答える。
「ここまでは前座だ・・・本番は・・・これからだ!」
ザーボンが言い放つと突然ザーボンの腹部のあたりの戦闘服が破れ、無数の緑色の触手がうにょうに
ょと湧き出る。さらに足には前後で二つに割れ、四つになった足がさらに割れ八つまで増えた。頭も
縦に真っ二つになり、灰色とピンク色とオレンジ色の混じった奇妙な色の脳のような機関が露出され、
そこからも数本の触手が出てくる。その脳が回り、背中に回ると再びザーボンの顔がゆっくり上がっ
てきて口から変な色の泡を撒き散らしながらまた紫色の無数の触手が・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ベジータは悲鳴を上げて、失禁しながら気絶した。ザーボンの変身はその後十分間続いたが、R指定
になる上に文章では表せないような物なので表現を省略した。二十分後・・・
「ふぅ・・・あの姿をみただけで気絶とは・・・まぁいい、早くこいつをフリーザ様の所に連れて行
かねば・・・」
元の姿に戻ったザーボンはベジータを抱え、スカウターなしではフリーザの居場所が分からないので
宇宙船まで飛んだ。
「あの建物です。あそこに最長老様がいるはずです」
デンデが白い円形状の建物を指差して言う。悟飯は掴んでいる天津飯を地面に投げつけてから、穏便
に地面に降りる。天津飯が地面にめり込みながら変な声を出しているがやはり気にするものは全くい
ない。
「デンデか・・・」
建物の影からピッコロが出てきた。地面に埋まっていた天津飯がうめき声をあげながら這いつくばっ
て逃げ出す。その様子を不思議そうにピッコロは眺める。
「あ、ネイルさん」
「驚いた・・・師とそっくりだ・・・」
どうやらピッコロではないようだ。悟飯が感嘆の声を上げる。天津飯はまだ怯えてうずくまって『電
子ジャー・・・電子ジャーは何処だ・・・』
と漏らしていた。
「へ〜、この珍獣が『最長老様』か〜」
天津飯がそう言うと次の瞬間には悟飯の手によって家の壁に頭から突き刺さっていた。最長老様が
気を悪くした様子も無く・・・というか壁に刺さった天津飯の事を気にかけているのはネイルだけ
だが・・・口を開く。
「あなたがたが地球からの御客人か・・・」
名乗っても無いのに何故知っているかはあえて突っ込まないことにした。最長老はさらに続ける。
「めんどくさいので説明はしませんが、何もいわずにちょっとこっちに来てください」
悟飯はとりあえず適当に壁に刺さっているものを引っこ抜いて最長老に手渡す。最長老は天津飯の
頭を鷲掴みにする。
「・・・駄目です。これの思考は低レベルすぎて私には理解できません。すいませんがこちらに来
てくれませんかな?」
最長老は手に掴んでいたものを適当に放り投げて悟飯を手招きする。悟飯はわざわざ迂回して捨て
られた天津飯を踏みながら最長老の元まで歩く。最長老は悟飯の頭を鷲掴みに・・・はせずにそっ
と手を乗せた。対応がまったく違うことに対して気にしたのは天津飯だけだった。説明をはしょら
れたのでよくわからないが記憶を読んだりしたのだろう。最長老が沈痛な面持ちで独り言をぶつぶ
つ言っていた。
「と、いうわけでドラゴンボールは貴方達に預けます。ついでにあなた達の潜在能力を引き出して
あげましょう」
ネイルだけが『と、いうわけ』なのかわからないようだったが誰も突っ込まないので黙っていた。
天津飯が最長老にすごい勢いで飛びつく。
「俺の!俺の力を上げてくれるのか?!」
「えぇ・・・まぁ・・・」
『えぇ』と嫌そうに言って穢れた物を触るように天津飯の頭を鷲掴みにする。が、途端に最長老は
何故か楽しそうな面持ちになる。
「ふふふ・・・絞りカスだ・・・」
「え?」
「今の状態ですべての能力をほとんど使い切ってしまっている・・・これでは大して能力は上がり
ませんなぁ・・・プッ・・・」
最長老が含み笑いをする。悟飯とデンデもクスクスと笑っている。ネイルは哀れんだような表情で
天津飯を見て、天津飯は自分の力の限界を知って呆然としている。
「・・・まぁ少しでもあがるんならやってください珍じゅ・・・最長老様・・・」
天津飯が何かに打ちひしがれた様子で頼み込む。最長老がまだ含み笑いを続けながら天津飯の首を
掴む。
一瞬、天津飯の体が微妙〜に光って、光が消える。
「・・・か、変わってない・・・」
「さぁ、次が本番です。そちらの方、来てくだされ」
最長老は天津飯を蹴り飛ばして悟飯を手招きする。悟飯は蹴られた天津飯にエルボーを喰らわせて、
脳天に踵落としを食らわした。最長老とデンデは微笑を浮かべながら天津飯を見下している。それ
を楽しそうに見ながら悟飯は最長老の足元に立った。最長老は天津飯の時とは違い、普通に手を悟
飯の頭に乗せた。途端に悟飯の体から目を覆うほどの光が発せられる。膨大な光は辺りを包んで十
数秒辺りを照らした。
天津飯・・・20万5→20万3581 14倍→285万134
悟飯・・・300万→1250万
「さて、潜在能力を引き出すのも終わったことですしあなたはいいとしてそっちのハゲ野郎に居座
られるのは非常に不快なのでドラゴンボールを持ってさっさと出て行ってほしいのですが」
「はい、わかりました。確かにこんな低脳なハゲは目障りですし」
二人が酷い事を言い合いながら談笑する。天津飯は体育座りしながら地面に『の』の字を書くと言
う古典的な拗ねかたをしている。そして、最長老がおもむろに口からドラゴンボールを吐き出して
悟飯に渡そうとして手が滑ったかのように見せかけて天津飯に投げつけた。鈍い音を立てて天津飯
は横になって動かなくなった。気絶したのではなく動く気力が無いのだろう。僅かに啜り泣きが聞
こえてくる。悟飯は天津飯とドラゴンボールを持ったデンデを掴んで家から出て行った。
「はぁはぁ・・・何とかこれだけ手に入れたぜ・・・」
偶然見つけたナメック星人の村からくすねたドラゴンボールを眺めながらため息をつく。立派な窃
盗犯だが殺されるよりはまだマシだ。とりあえず自分の身はある程度安全にドラゴンボールを集め
る方法を考える。30分ほど考えるが、やはり所詮はヤムチャ脳、何も考え付かない。ヤムチャは途
方に暮れるがそこもヤムチャ脳、数分ですっかり立ち直り、とりあえずベジータの事を伏せて天津
飯+悟飯+気の小さい何かと合流することにした。何故か悟飯の気がだいぶ大きくなっているような
気がするがあまり気にしないことにした。ヤムチャはドラゴンボールを抱えて悟飯の気を追って飛
び去った。少しバランスがとれずにふらついているが。
「追われているな・・・」
「え?」
悟飯が背後を向きながら言ったのを聞いて天津飯は素っ頓狂な声を上げる。
「小さな気だが一応殺しておくか・・・」
悟飯が物騒なことを言いながら地面に降りる。天津飯の首を掴みながら。天津飯はしばらくして、自分
が『盾』なのを思い出した。慌てて逃げようとするが、気を抑えているとはいえすでに界王券14倍でも
四倍ちかい差ができてしまった天津飯では逃げることすらままならない。天津飯は十秒間もがいた後、
諦めてうなだれる。そうしているうちに、妙な格好をした五人組が目の前に下りてきた。紫、赤、青、
緑、ピンク・・・っつーか肌色・・・のむさ苦しい男どもだ。天津飯が敵の数を見てあたふたする。
「あわわ・・・五人もいるなんて聞いてないぞ・・・ひぃぃ・・・」
悟飯は天津飯をボディブローで黙らせて五人組に向き直る。五人組は悶え苦しむ天津飯を見ながら冷や
汗を流していたりする。
「何のようだ?この俺に・・・」
悟飯が挑発的な態度で五人組に言う。五人組は慌ててポーズを取る。
『バグルリジクーギスニュー!』
全員、最初に名前を言ったために混ざって何をいったか分からない。五人は再び冷や汗を流しながら数
秒置いて叫ぶ。
『五人そろってギニュー特戦隊!』
「そのギニュー特戦隊が俺に何のようだ?バグルリジクーギスニュー?」
悟飯が聞いたとおりに復唱する。五人は一人五秒くらいかけて丁寧に自己紹介を始める。
「えー、私が隊長のギニューでして・・・フリーザさまの次くらいに強いと・・・」
「次は?」
「わ、私はバータと申しまして宇宙一のスピードを・・・」
「次!」
「ジースです・・・自在に操れるクラッシャーボールを武器に敵を・・・」
「次!」
「オレはリクームだ。オレの華麗なリクームウルトラファイティング・・・」
「次!」
「グル・・・」
「飽きた!」
五秒で自己紹介というか、悟飯の気が短いだけのような気がするが、自己紹介は無事終わった。悟飯は
五人を改めて見回す。そして、一言。
「お前ら、きしょい」
その言葉にギニュー特戦隊の額に青筋が浮かび、天津飯の顔に恐怖が浮かぶ。
(あ、あわわわわ・・・このままでは殺されてしまう・・・そ、そうだ!ドラゴンボールをそこら辺に
投げ捨ててその隙に適当な場所に逃げれば・・・!)
天津飯は思い立ってすぐにデンデからドラゴンボールを奪い、遠くへ投げ捨てる。全員の目がそちらに
向いた瞬間に、飛び立とうとして悟飯に首をつかまれ地面に突き立てられた。鈍い音を立てて腰まで埋
まる。
天津飯はすぐに顔を上げる。目の前には物凄い怒ってる悟飯が仁王立ちしていた。そこから十秒間でお
よそ100発に及ぼうかという数の拳と蹴りの乱打を受け、天津飯は倒れた。悟飯が手を抜いたおかげで
意識は保っており、地獄の苦しみを味わっている。悟飯が特戦隊一同に視線を戻すとバータがドラゴン
ボールをもってニヤニヤと笑っている。
「オレは前述のとおり宇宙一のスピードを持っているんだ・・・あのくらい取るのは簡単だぜ・・・」
バータはそう言ってボールをギニューに手渡す。悟飯はもう一回天津飯を踏む。
「さて、誰があいつらを殺すかジャンケンで決めるぞ!」
ギニューが叫ぶ。他四人が声を上げて、ジャンケンを始める。
「ジャン!ケン!」
ぐしゃ
悟飯の背後から肉を踏み潰す異音が発された。
「あれ?何かぐにゃぐにゃしたものを踏んだか?」
声の主は・・・ヤムチャだった。ドラゴンボールを脇に抱えて足元を見て、見なかったフリをしている。
「ヤムチャか・・・」
悟飯はいささか落胆したような表情でヤムチャを見るが、すぐに視線を前に戻す。戻すと、いつの間にか
バータがドラゴンボールを持っていた。もちろん、ギニューの持っているボールもそのままだ。悟飯はす
ぐにヤムチャに目線を向ける。ヤムチャが呆けた顔でドラゴンボールを抱えて・・・無かった。悟飯はヤ
ムチャの面を張り倒す。ヤムチャは無言のまま吹っ飛んで、起き上がってくる。
「な、何すんだ悟飯!て、あれ?ドラゴンボールは?」
本気で取られたことに気づいていなかったらしい。悟飯は全員に聞こえるように大きなため息をついた
「じゃあ、私はこれをもってフリーザさまの所へ行く!後は任せた!」
ギニューは唐突にそう叫んでバータからドラゴンボールを奪い取り、もと来た方向を戻っていった。その
後姿を見ながら隊員達がギニューを罵倒する。
「ずるいぞ隊長!」
「手柄独り占めか!」
「自分だけ給料上げてもらうつもりか!」
「あとでチョコレートパフェおごってくださいよ!」
と口々に後半罵ってるんだかよくわからない事を言いまくる。ギニューの姿が見えなくなった頃には暴動
も収まり、再びジャンケンを始めていた。
「オレがあっちの顔に傷があるやつか・・・」
「オレはガキと乳首付近に傷があるハゲか・・・」
バータがヤムチャを見て、グルドが悟飯と天津飯を見て最近まで忘れていた特徴まで丁寧に挙げる。他の
隊員たちは口々に『後でチョコレートパフェおごれ』と叫んでいる。悟飯は、『こいつらチョコレートパ
フェ以外食うもの無いのか』とか考えたが、どうでもいいので無視した。そして、天津飯を掴んだ悟飯と
グルド、呆けているヤムチャとバータの死闘が始まった。
「ば、馬鹿な!」
バータは高速で飛び回りながら狼狽する。理由は明白だ。宇宙一のスピードを持つ自分の全力を汗ひとつ
かかずについて来ている男の存在のせいだ。つまりはヤムチャから成す術もなく逃げ回っているのだ。
「俺のスピードは宇宙一のはずだ!」
「なら宇宙二・・・いや、三、四、五・・・すくなくても宇宙七以下だ!」
順番に悟空、ポポ、ピッコロ、悟飯、ヤジロベーを思い浮かべながらヤムチャが叫ぶ。そして軽々とバータ
に追いつき、軽く足払いを放つ。前々から言いたかった決め台詞を叫びながら。
「足元が・・・」
「隙あり!」
お留守だぜ、といおうとした瞬間、あっさりと自分が足払いされた。無論、ダメージは無いが精神的な衝撃
がヤムチャを襲う。
「足元がお留守だったぜ!スピードだけのゴミ虫みてぇな野郎だったな!」
バータが『ゴミ虫、ゴミ虫』と連呼しながらヤムチャを蹴りまくる。ダメージが無いのを分かっていないの
はバータだけだ。他の特戦隊は険しい表情をしている。と、おとなしく蹴られていたヤムチャがゆっくりと
動いた。何かをぼそぼそと呟いている。
「ん?何か言いたいのか?ゴミ虫?」
バータが挑発的な態度でヤムチャの顔に耳を近づける。
「し・・・がお・・・ですよ・・・」
「ははは!こいつビビッて声も出ねぇみたいだぜ!」
違うのは、皆分かっている。バータが油断しまくっている間に、ゆっくりとヤムチャが顔を上げて、叫んだ。
「足元がお留守だってんだこの青男ォ!」
ヤムチャがそういって本気のローキックを放つ。ジョー・ヒガシ(SNKプレイモアごめんなさい)の史上最強
のローに匹敵する迫力だ。その一撃はバータの左足に直撃し、左足を吹っ飛ばして右足の骨を粉砕させた。衝
撃でバータは遠くまで吹っ飛んで倒れた。敵一同は唖然とその光景を見つめている。
「界王拳2倍だコラ!ぶっ殺してやる!」
かなりキレたヤムチャがバータの落下地点まで飛んでいった。そしてバータの折れた足だけを狙って蹴りまく
る。その陰湿な仕返しはバータが完全に戦闘不能になるまで続いた。
「バ、バータ!」
グルドがひたすら蹴られる同僚を見て叫ぶ。もっともすでに返事などできる状況ではないようだが。悟飯はそ
の隙に界王拳十四倍で地面にへばりつく天津飯を引きずりながらグルドに近づく。グルドはそれを察知すると
慌てて手を前に突き出して叫ぶ。
「止まれ!」
グルドが叫ぶとグルドの周りの全てのものが動きを止めた。これは息を止めている間時間を止められるという
さまざまな事に便利な技だ。問題はグルドの肺活量が少しばかり足りない事か。それはさておき天津飯を引き
釣りながら物凄い速度で近づいてきた悟飯から距離をとる。息を止めながら走るのはかなり辛いらしく、時間
にしてせいぜい十秒ほどしか時間をとめられなかった。
「ぷは〜!」
時間が動き出し、悟飯が目標を見失って一瞬戸惑う。グルドはその隙に息を吸い込み、もう一度時間を止めて、
近くの岩陰に隠れた。(くくく・・・これで場所はわかるまい・・・)とかありがちな事を考えながら息を吐く。
「ぷは〜・・・」
グルドは余裕の表情で悟飯たちを盗み見るが、天津飯はともかく悟飯にとっては気で場所を察知するなど朝飯
前に二元一次方程式を解くよりも簡単な事だ。あっさりとグルドの位置はばれ、岩に向かって天津飯が投げつ
けられる。派手な音を立て、岩をつきぬけグルドの頭の横に血まみれの天津飯の首がさらけ出された。グルド
は(何故居場所がわかったんだァーーーッ?!)と(仲間を武器に使うとは何てやつだァーーーッ!)を同時に考
えながらもうひとつの超能力を使った。グルドが両手を前に突き出したと同時に、悟飯の動きが止まる。天津
飯はもともと動いていないがくしゃみの途中で止まったので馬鹿面を曝け出してしまっている。グルドが汗を
ダラダラ流しながら親切に説明を始める。
「はぁー、はぁー・・・この技は体力をかなり消耗するがこうなったらもう動けんぞ・・・」
時間をとめても動けないが、こちらは気は消耗するが息をしてても使えるので奥の手だったのだろう。グルド
が切羽詰ったような表情を浮かべながらそこらへんの木を一本超能力っぽいもので抜き、先を超能力で尖らせ
て超能力で浮かせて超能力で天津飯に狙いをつける。照準くらい超能力使わないでやれと思ったが金縛り以外
の超能力は体力を使わないのだろう。またはそれを忘れてしまっている馬鹿なのか。グルドは緑色の顔を血の
引いた青緑っぽい色に変える。どうやら後者だったようだ。
「こ、この木で串刺しにしてやる・・・はぁはぁ・・・串焼きにしてチョコレートパフェにのせたらうまいか
もな・・・」
などといいながらわずか一メートルの距離の天津飯に目を向ける。天津飯が眼球を動かして目を逸らすが首は
動かせないので完全には逸らせなかった。目を逸らした程度で照準をやめてくれるとは思わないが。グルドが
細かい設定をしだして天津飯の表情が真っ青になる。
「お、おい!俺なんか焼いてもうまくないぞ!チョコレートパフェにも絶対に合わない!うまくないというか
むしろまずい!だからやめてくれ〜!」
「へっ。お前がまずいわけないだろう・・・ゲテモノは美味いと相場が決まっているからな(富樫先生ごめんな
さい)。」
「死ねェーーーーッ!」
グルドが叫びながら超能力で木を天津飯の顔面に直撃する。くしゃみの直前のアホ面を浮かべたまま天津飯は派
手に吐血する。が、一応基本的な能力で圧倒しているだけはあり、直撃した木は完全に粉々に砕いた。グルドは
期待通りにならなかったのが気に食わないらしく新しく木を用意していた。そして、二弾、三弾、四弾と次々に
天津飯を吐血させては砕けていく。グルドがかなり疲れた表情をしながら五弾を用意する、天津飯はくしゃみ寸
前のアホ面を浮かべながら口と鼻から血を噴出させて目からは涙をだらだらと流している。そしてグルドが手を
振り上げると、木が天津飯に飛んで・・・いかずに、代わりにグルドの首が悟飯のパンチで吹っ飛ばされていた。
「き、汚いぞ・・・お前超能力にかかってたんじゃなかったのか・・・」
グルドが首だけのまま喋る。悟飯は蔑んだ目でグルドを見下しながら冷笑を浮かべる。
「貴様ごとき下等生物の技が聞くと思ったか?思い上がるのも大概にしろ・・・クズめが・・・」
「ふぅ・・・悟飯の方も終わったみたいだな・・・」
「当然だ。時間をかけていたのはこのゴミが盾として使い物になるか試していただけのことだ。
貴様のように無駄な時間を使ったりはせん」
悟飯はそう言うと、血まみれになって健やかな笑みを浮かべているヤムチャに唐突に遅めの気
弾を放った。ヤムチャはびっくりしながらそれを慌ててよける。よけた先には、ヤムチャが先
ほどまで蹴りをくれていた奴が泡をふきながら伸びている。気弾がバータとその辺り一帯を完
全に消し飛ばした。ヤムチャはビビりながら悟飯に言う。「悟・・・悟飯さん?何も殺すこと
は・・・」
「甘い、チョコレートパフェよりも甘いぞヤムチャ」
「お、お前までチョコレートパフェと言い出したか・・・」
「黙れ、敵に情けは無用。負け犬は死あるのみだ。敵に情けをかけていては魔王の後継者の名
が泣くわ」
「いつから後継者に・・・」
「偉大な魔王を師に持ち、魔王の血を引く我こそが真の魔王の器よ・・・」
(魔王の血っつっても牛魔王じゃねぇか・・・)
ヤムチャは心の中でそう呟くが、反感を買わぬように『そうですか』と適当に相槌を打った。
それを横目で見ながら残り二人になった特選隊員はひそひそ話を始める。
「おい!バータとグルドがあんなにあっさりとやられたぞ!」
「た、たぶんバータもグルドも油断してた所に偶然が重なっただけじゃないよなぁ・・・」
「偶然で足や首が吹っ飛ぶか!」
「仕方が無い!隊長のいるところまで戻って助けてもらおう!隊長ならきっと奴らを倒せる!」
「でも隊長セコイから手伝うのにチョコレートパフェおごるの無しにされるかもしれんぞ!」
「この際仕方ないだろう!じゃあ隙を見せたら二手に分かれて逃げるぞ!」
最後にジースが叫ぶと、隙を見つける前にリクームが飛び立った。ジースは心の中で『あの馬
鹿』と罵り、急いで別の方向に飛んだ。と同時に背後から鈍い音が聞こえてくる。速度をでき
るだけ緩めずに背後を向くと、リクームが片手で何者かに持ち上げられていた。いや、ただ持
ち上げられているのではない。その『何者か』の拳がリクームの背中から空に向かって突き出
している。ジースは敵の圧倒的な強さに恐怖を覚え、全速力で場所を離れた。
「悟空!来てたのか!」
天津飯が泣きじゃくりながら悟飯の手を振り解いて悟空にしがみ付く。悟空はリクームの付い
た左手でそれを叩き伏せた。悟空は左手のリクームを投げ捨ててそのまま左手を逃げていくジ
ースに向け、気を集中する。そして気功波を放とうとした。その前に悟飯が何故か手を広げて
静止する。
「何してんだ悟飯?」
「恥も外聞も掻き捨てて逃げる雑魚をわざわざ殺すのは美しくないし気の無駄ですよ。きっと
あいつら援軍をつれてくるからその後一掃しましょう」
悟飯がいつの間にか元の口調に戻っているのは気にしないとして、悟空はそれもそうかと納得
し手を下ろす。そしてその視線は端でうずくまっているヤムチャへ注がれる。
「久しぶりだなヤムチャ、ところでドラゴンボールは何処にあるんだ?」
ヤムチャの最も恐れていた言葉がいきなり悟空の口から飛び出す。ヤムチャは震える足を抑え
て立ち上がる。
「お、おぉ・・・悟空・・・じ、実は・・・」
「ヤムチャさんがあまりに能無しなんで格下相手にあっさり盗まれちゃったんですよ」
「そうか〜、やっぱヤムチャに任せたのは間違いだったな。天津飯にすら劣るし顔に変な傷が
あるし」
悟空と悟飯は爽やかに笑う。ヤムチャと天津飯は地面に『の』の字を書いていじけている。
(傷は関係ないじゃないか・・・でも持ってた四つが今取られたと思ってるのは不幸中の幸いか)
自分からベジータに渡したのがばれなくて良かったとヤムチャはほっと胸を撫で下ろした。もち
ろん二人には見られないようにだが。
(・・・うぅ・・・ここは・・・)
ベジータは目を覚ます。ベジータは数秒で自体を飲み込む。
(ここはフリーザの宇宙船か・・・)
自分の周りには壊れたスカウターやら壊れた戦闘員やらが雑に置かれている部屋でだいぶ旧型の
メディカルマシーンに入れられてた。目の前ではザーボンと名前もしらない下っ端が話をしてい
る。水中なので耳に水が入って気持ち悪いが聞き耳を立ててみる。
(き、聞こえん・・・まぁきっとオレがドラゴンボールをまだ隠し持ってるかもしれないと思って
るんだろうが・・・)
そこで、大きい音が聞こえてきた。声ではなく、音だ。高い音が水を通して聞こえてくる。と、
同時に突然息が苦しくなる。まさかと思い、目の前の二人にばれない様に目を隣のメディカルマ
シーンの制御装置に向ける。そこには大きな文字でこう書いてあった。人工呼吸装置に以上発生、
と。ベジータは二人にばれないように平静を保ちながら慌てる。さっさと気づけこの野郎と言わ
んばかりに目の前の二人を罵倒する。心の奥底で
何を言っているか分からないが、一分ほどしてやっと気づいたようだ。ザーボンじゃないほうが
制御装置を慌てず騒がずザーボンと談笑しながら直そうとしていた。唇の動きから『やべ、やっ
ちまった』と最低三回言ってるのがわかった。十数分も経つとベジータは精神的にも肉体的にも
限界が近づく。『だめかも』といっているのを見てしまったのがベジータの心を乱す。息が荒れ、
ただでさえ少ない酸素を多く消費してしまう。そして、装置が故障して三十分後。とうとうベジ
ータの意識は途切れ、視界は真っ暗に閉ざされていった・・・が、すぐに視界は回復する。さら
に呼吸もできるようになっていた。あの能無しがやっと直したのだろう。ザーボンは既にいなく
なっていた。能無しがこちらを見て何かブツブツいっている。とりあえずさっきの仕返しに遠の
いたザーボン達に気づかれないよう軽くエネルギー波を打ってやった。そのエネルギー波は棒立
ちしていた能無しを飲み込み(アプール御臨終)、派手な音を立てて部屋を爆発させてしまった。
「な・・・?!そうか、死のふちから蘇ったせいで戦闘力が上昇したのか!くそっ!」
本来なら喜ぶところだが今はそうではない。戦闘力が大きければあっさりとフリーザに見つかっ
てしまうだろう。第一今の爆音を聞いてフリーザが何もしないとは考えられない。
「ドラゴンボールは惜しいが命には換えられん!」
ベジータはそう叫んで宇宙船をエネルギー波で打ちまくり何処から逃げるか分からなくしてから
そ〜っと水中に潜り込みゆっくりと宇宙船から離れていった。
「はぁはぁ・・・どうやらうまく逃げられたようだな・・・」
ベジータは海から這い上がりながら、数Kmほど遠くにある岩陰から宇宙船を除いて呟く。当然
の如く下級兵が騒ぎまくっている。その時ベジータは周りの風景を見て気づいた。ここは先ほど
ザーボンにやられた場所だ。ベジータの脳裏にあの触手の入り乱れたおどろおどろしい(自粛)が
蘇り、顔色が結構青くなる。が、それと同時にここはドラゴンボールがひとつ、海の中に落とし
ていたのを思い出した。
「とりあえずこの何処かにある一つを持っていれば奴らが願いをかなえる事は無い・・・」
ベジータは独り言を言うとすぐさま海に飛び込んだ。そして、意外と浅かった地面に顔面から突
っ込んだ。痛い。油断していた所をやられたので互角だったころのキュイのパンチ並にダメージ
は大きかった。ベジータは顔面を押さえて水面付近でのた打ち回る。転がっていると、何かに頭
をぶつけた。ベジータは顔面を押さえながらそれを見る。自分の探していたオレンジ色の巨大な
球体だった。
「くくく・・・これさえあればあいつらの願いは叶えられない・・・ばれないように残りのドラ
ゴンボールを手に入れれば俺が不老不死となり、フリーザを倒し世界征服を!」
ベジータは両手を天高く掲げ自分の野望を高らかに宣言する。誰もいないが。と、思ったらいた。
空を見上げていたベジータの目線の先に、ドラゴンボールを二つ抱えた紫色の生物が。ベジータ
の顔はみるみるうちに青ざめる。
「ギ、ギニュー!フリーザの野郎ギニュー特戦隊まで呼んでいたのか・・・!」
ベジータはびっくりしながら岩陰に隠れてやりすごす。幸いギニューは何故かスカウターをつけ
ていないらしく簡単にやり過ごせた。
「くそ・・・あいつらまでいるんじゃ気をつけて行動しないとな・・・ん?そういえばこれを俺
が持っていたら場所をスカウターで割り出された時お荷物になるし奪われてしまったらフリーザ
が不老不死になってしまうな・・・よし・・・」
ベジータはそれを適当な方向に放り投げた。ドラゴンボールは放物線を描かずに何処までも遠く
まで飛んでいった。
「ベジータめ・・・宇宙船を壊すとは・・・いくら修理費がかかると思っているんだ・・・」
ザーボンは愚痴りながら宇宙船から少し離れた場所を見回る。ベジータを逃がした罰として宇宙
船の修理費をアプール(死去)と二人で弁償しなければならなくなってしまった。結局罰として眼
球にワサビも塗られてしまった。そのせいで目からは涙が滝のように流れている。スカウターは
前の村の時のような事が無いようにフリーザが全て管理している。アレさえあればすぐに見つけ
てベジータを血祭りにあげてやれるものを・・・!
「修理費はアプールの遺産だけでは全く足りないんだぞ・・・!くそっ!俺の人生設計どうして
くれるんだ・・・!」
ザーボンはそう言った所で、何かが前から飛んでくることに気づいた。そして、その飛んできた
『何か』はザーボンがそれを認識する前にザーボンの頭を粉々に粉砕した。音を立てて地面にザ
ーボンの首から下と、オレンジ色の球体が落下した。
『ザーボン・殉職』
「ザーボンさんの反応が消えた・・・おかしいですね・・・他の戦闘力の反応はありませんでし
たが・・・」
フリーザが先ほどまでザーボンの反応があった方向を眺める。ただ山があるだけで何も見えない。
その時、フリーザのスカウターが戦闘力の反応を拾った。戦闘力約八万。これほどの戦闘力を持
っているのは一人だけ、自分の部下ギニューだ。反応のある方向を見るとやはりギニューが脇に
ドラゴンボールを抱えて飛んできていた。それを見て自然とフリーザの口元が緩む。ギニューは
ゆっくりとフリーザの目の前まで下りて来た。
「フリーザ様、ドラゴンボールを持ってまいりました」
「ご苦労です、その働きに免じてチョコレートパフェを後でおごってあげましょう」
「ありがたき幸せ!」
変なやり取りをして思わず感涙するギニュー。フリーザはチョコレートパフェ一杯でなんでもす
る強めのパシリくらいにしか見ていないが。
「ふふふ・・・あなたの持ってきた二つでドラゴンボールはほとんど揃いましたよ・・・宇宙
船はこの通り壊されてしまいましたがね・・・」
壊れかけた宇宙船の廊下を歩きながらフリーザはギニューに言う。現在フリーザが保有してい
るのは先ほど村で奪った一つ、ベジータが置いていった三つ、ギニューが持ってきた二つで合
わせて六つだ。ほとんどを手中に収めたといっても過言ではない。フリーザはドラゴンボール
を置いた部屋の扉を開けて、中に入る。
「さて、今からザーボンさんの反応が消えた場所まで行きます。また誰かにドラゴンボールを
取られないように全部持っていきます。ここにおいて置くより自分で持っていたほうがよっぽ
ど安全ですからね」
フリーザは微笑を浮かべ、ギニューにドラゴンボールを持たせ(強制)連れて飛んだ
「まさかこんなにあっさり見つかるとは思いませんでしたよ」
フリーザが笑みを浮かべながら最後のドラゴンボールを手に取る。少しザーボンの粉砕された
頭部が付着しているのが嫌だがそんなことは気にしていられない。既にギニューが他の六つを
横に並べていた。フリーザはそれを地面に置く。そして、一度深呼吸をして高らかに叫んだ。
「ドラゴンボールよ!この私を不老不死にしなさい!」
辺りにフリーザの声が響く。が、それだけだ。ドラゴンボールには何も起こらない。そのまま
数秒が過ぎ、ギニューが口を開いた。
「何も起きませんね・・・それともすでに不老不死に?」
「いえ、そうは思えません」
フリーザは否定して黙考する。そして、ドラゴンボールを奪った村での長老の言葉を思い出す。
(どうせすべて揃えても貴様らには使えんだろうがな・・・)
(すべて揃えても貴様らには使えん)
そして、ある言葉が特定された。
『貴様らには』
「まさか!集めるだけでなく奴らしか知らない暗号が?!並べ方か?!合言葉か?!場所か?!」
フリーザは焦燥を露にする。
「ナメック星人はほとんど生きているものはいません・・・これでは確かめようにも・・・」
ギニューが言う。フリーザはすぐにスカウターのスイッチを入れ反応を探す。そして、見つけた。
一箇所に集まった二つの戦闘力を。
「こいつらだ!私は直接こいつらから使い方を聞き出します!ギニューさん!貴方は絶対にその
ボールを死守しなさい!いいですね!」
「はっ!」
ギニューの返答を確認するとフリーザは全速力で飛んだ。最長老とネイルのいる場所へ・・・
「隊長!」
ギニューがとりあえずドラゴンボールをとられないように地面に埋めている途中、赤い顔の部下
が真っ青な顔色で、赤+青で紫色して飛んできた。
「隊長!花壇なんて作っている場合ではありません!」
「これは花壇ではない。フリーザさまからの命令でドラゴンボールを埋めているのだ」
「は?!そんなもの埋めても増えませんよ!それより早く来てください!」
「こ、こら!事情くらい話せ!それにまだ穴掘っただけでボールを埋めてない!」
「そんな大切なもの埋めてどうするんですか!話は後で聞きますから!」
ジースはスコップを担いだギニューを半ば強引に引きずり出した。
「何!グルドとバータとついでにリクームまでやられただと?!」
ギニューがスコップを投げ捨て、ジースに向かって叫ぶ。
「はい!バータとグルドはあっという間に殺され、リクームと共に逃走しようとした所を狙われ
リクームも・・・」
ジースはそういって黙りこんだ。ギニューは驚きを隠せない。
「あいつらほどの者があっさりやられるとは・・・敵は恐らく戦闘力八万前後と言ったところだ
ろう・・・五千のグルドや五万前後のお前らで全く歯が立たなかったのであればな・・・」
「は、八万?!ギニュー隊長の最高値ですら十二万だというのに!」
ただの推論なのに過剰に驚いて震えだすジース。ギニューはそのジースを黙って見つめる。
「ジース・・・」
「は?」
ギニューが神妙な面持ちで手招きしている。ジースは呼ばれるがまま近づく。そして、ジースの
体をギニューの右腕が貫いた。ジースは顔に驚愕の色を浮かべながらギニューを見る。
「すまんな・・・二人ではスペシャルファイティングポーズが決まらないのだ・・・」
ギニューはそう言うと辛そうな表情でエネルギー波でジースを焼き払った。
フリーザは円形状の建物の前にいた。その中から戦闘力の反応が二つ感じられる。裏切り者のベ
ジータではない。となればここは『当たり』だろう。フリーザが建物に近づくと中からナメック
星人・・・ネイルが姿を現した。フリーザは微笑を浮かべ、ネイルに問う。
「ドラゴンボールの使い方を教えなさい」
「貴様に教えることなど無い」
フリーザが言い終わった直後にネイルが言った。
「私に勝ったら教えてやろう・・・場所を移すぞ・・・」
「別にここでもいいでしょう?私は急いでいるんです。もう少しで念願が叶うのですからね」
フリーザはそう言って臨戦態勢をとる。が、ネイルがそれを止める。
「ここにいるのはドラゴンボールを作った最長老様だ。最長老様が死ねばドラゴンボールも消え
る。それでもいいのか?」
「最長老?」
フリーザは怪訝顔を浮かべ、建物に指を向け建物の壁をエネルギー波で砕く。一瞬埃が舞い、そ
れが消えると巨大な木彫りの熊が姿を現した。もちろん、最長老ではない。
フリーザが木彫りの熊を眺めて言う。
「なるほど・・・貴方が最長老ですか・・・他のものと雰囲気が違う。嘘ではなさそうだ・・・」
「それはただの置物だ・・・」
「・・・」
一瞬、会話が止まる。フリーザは無言で建物の違う方向の壁を壊す。今度は巨大なナメック星人
が姿を表した。
「なるほど・・・貴方が最長老ですか・・・他のものと雰囲気が違う。嘘ではなさそうだ・・・」
フリーザはさっきとまったく同じ台詞を言う。
「異星の方よ・・・そこのネイルが申したとおりネイルに勝てばドラゴンボールの使い方を教え
て差し上げましょう」
「私が勝てたら?それなら今教えてくれたほうが手っ取り早いですよ。どうせすぐ終わるのです
からね」
「そのネイルはこの星唯一の戦闘タイプのナメック星人。そう簡単にはやられません」
「・・・いいでしょう・・・数分で戻ってきますよ・・・」
フリーザは最後にそういうと最長老に背を向けた。
(ネイル・・・デンデにテレパシーを送って置いてくれ・・・いざとなればあの方たちにドラゴ
ンボールを使わせろ、と・・・)
(・・・はい最長老様・・・)
テレパシー、界王のものよりは性能は劣るがこの小さい星の範囲くらいなら戦闘タイプのネイル
でも何処にいても送ることができる。ネイルはフリーザを連れて遠くまで飛んでいった。
「頼むぞネイル・・・できるだけ時間を稼いでくれ・・・」
「悪い感じの気が近づいてきてるな・・・」
悟空が遠い目をしながら呟いた。悟飯は平然としている・・・というか薄ら笑いまで浮かべてい
る・・・が、天津飯とヤムチャは過剰に反応する。
「邪悪な気?!ピッコロか!それともベジータか!」
「お、俺たちの命運は尽きた・・・!」
とそれぞれで騒ぎ立てている。当然の如く親子揃って無視だ。
「てんで弱い気ですね・・・ちょっとかわいがってやりましょうか?」
と悟飯。
「かわいがるといっても、あたまをよしよしとなでたり、たかい、たかい、とかするんじゃない
ぞ、まず足を吹っ飛ばして逃げれなくした後、眼球を一つずつ抉って耳を引きちぎり、歯を一本
一本叩き割(自粛)最後に腸をぶち撒けることだぞ」(和月先生ごめんなさい)
「言わないでもわかってますよ。眼球に指突っ込むと生暖かいんですよ?お父さん知ってました
か?」(板垣先生ごめんなさい)
悟空と悟飯は爽やかに笑う。ほのぼのとした親子の会話だ。見た目は。
そんなやりとりをしている間にギニューが降りてきてポーズをとっていた。天津飯は驚愕する。
「ば・・・馬鹿な!全く気を感じなかったぞ!」
気すら感じ取れなくなった天津飯の相手など誰もしない。悟飯と悟空はまだ爽やかに笑ってい
て、ヤムチャは既に地面にパクリかめはめ波で隠れる穴を掘っていた。
「あの〜・・・そろそろ相手にしてくれると助かるんだが・・・ポーズをとっているのは結構
辛いんだが・・・」
ギニューがスペシャルファイティングポーズをとりながら悟空+悟飯他二人に言う。が、悟空
と悟飯はわざとらしくシカト、ヤムチャは隠れて様子見、天津飯は「馬鹿な・・・」とか言っ
て震えている。ギニューはスペシャルファイティングポーズをやめた。
ギニューはシカトされながらもスカウターのスイッチを入れる。そして、もう腰が抜けるくらい
驚く。
(せ、戦闘力十四万?!さらにその横のガキが十五万・・・あっちのハゲですら十万だと?!あ
っちの隠れている奴は・・・十九万?!馬鹿な!)
もう、帰りたい。ギニューは一瞬でその思考に辿り着いた。他の隊員なら大急ぎで逃げ帰って
いるだろう。だが、ギニューは仮にも隊長だ。どうせ逃げてもフリーザに殺されるだろう。そ
れにギニューには相手が強いほど効果のある技がある。ギニューは戦闘力が一番高い、穴に潜
ってる奴に狙いを定めた。ヤムチャだ。哀れなギニューは気を抑えている三人より抑えていな
いヤムチャが強いと錯覚してしまったのだ。実に哀れ。哀れな自分に気付くはずもなく、ギニ
ューは技を発動した。
「チェーンジ!」
ギニューの奇声と共に体から発せられた光がヤムチャにHITする。悟空も悟飯もとめようと
思えば止められたが面倒くさいので放っておいたようだ。光が直撃して無様に吹っ飛んで倒れ
たヤムチャが上体を起こす。そして、悪人っぽい笑みを浮かべた。
「頂いたぞこのカラダ!俺の必殺技ボディチェンジで体を入れ替えたのだー!はーっはっはっ
は!」
「な、何という説明口調!」
天津飯が驚き、叫んだ。驚く場所は間違っているが。ボディチェンジの説明はヤムチャギニュ
ー、略してヤムニューが言ったとおりなので省略。
「じゃああっちの紫色で気持ち悪い野郎がヤムチャなのか!」
「誰の元の体が気持ち悪いか!」
ヤムニューが気功波を後ろを向いている天津飯に撃つ。天津飯は痛そうな顔をしてで転がる。
「ふふふ・・・今から貴様らをボコボコにして・・・って・・・あれ?」
ヤムニューが座った状態のまま色々やっている。天津飯はそれを阿呆のような顔で見ている。
しばらくして、ヤムニューが口を開いた。
「あ、足が動かん・・・」
そう、ギニューではヤムチャのお留守な足は僅かにも動かすことすらままならなかったのだ。
「好機!今なら奴をヌッ殺せる!」
天津飯が物凄く楽しそうなツラでヤムニューに殴りかかる。が、あっさりと腕を捕まれ、逆
側に投げ飛ばされた。足が動かないことで図らずも猪狩アライ状態(板垣先生度々ごめんな
さい)が完成してしまったのだ。
※ナッパを一瞬で葬り、自分をこんな腰抜けに変えた下級戦士に対する怒りだった
ただの八つ当たりです。あんまり気にしないでください。それから
ベジータは自分が超サイヤ人だと言うことにまだ気づいてません。
悟空みたいに戦闘力がコントロールできないので自由になったりも
できません。本当に怒ったときだけです。