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ヤムチャ異星録

六章『六人対戦』



「ジンズは岩男、シスルは前髪、オレは飛んでトカゲと戦う。なるべく時間を稼ぐぞ。散れ!」
それぞれが場所へ駆け出す。
ヤムチャはもっとも気が高い奴をあえて選んだ。
味方の二人は敵の気孔波を弾いたときは、弾く箇所に気が集中していた。
怒りで3人とも気がアップしているが、それも一時的だろう。
パンジ博士が薬を取ってくるまで持たないと。
元の姿に戻り、全員の気がアップすればまともに戦えるかもしれない。
もっとも、それまでは相手にならないので、何とか時間を稼がなくては。
ヤムチャは舞空術で、ラクトースの目の前まで飛んだ。
羽はついているが、それで飛んでいるわけではなさそうだ。
パワーだけで押すタイプのようだな・・・・・と思ったが、すぐに考えを改めた。
そんな事を考えてミイラ君に負けたのだった。
相手はこちらの全てを上回っている。
「はっ!自殺志願者が。
 たかが戦闘力1060ごときで立ち向かおうとするとはな」
自分も怒りでちょっとは気が上がっているようだ。
まだ全然敵わないが、時間だけでも作ろう。
「待てっ!貴様らフリーザ軍だな。
 フリーザはもう死んだ。俺の仲間、スーパーサイヤ人の悟空に殺された。
 まだフリーザ軍にいる意味はあるのか?」
特に意味のない呼びかけ。適当に時間を稼ぐ、無駄話作戦。
ピクリと反応する。たぶん『俺の仲間、スーパーサイヤ人』あたりが効いたのだろう。
「そうか・・・貴様、スーパーサイヤ人の仲間か。
 我ら新生ギニュー特戦隊は、奇跡の生還をしたギニュー隊長の下、フリーザ様の仇討ちをする事を目的としている。
 嬲り殺しにしてやろう・・・・・フリーザ様の仇だ」

逆効果バンザイ。
無駄話作戦は相手を怒らすだけの結果に終わったようだ。
相手の姿が掻き消える。
動体視力だけは元のままだったから、何とか動きは分かるが肉体の反応がついていかない。
正面。ややフック気味に拳を振るう。
界王星で天津飯から、ハゲのサイヤ人の拳を受けたら腕が吹っ飛んだ話を聞いたので、受ける気にはなれなかった。
軽く相手の拳に手を突き、吹き飛ばされる一瞬で離す。かなり手加減しているようだ。
それでも右半身が後ろに引っ張られるような衝撃が来る。
それに逆らわずに、前に向かって回転しながら隣接。
ラクトースの膝蹴りとこちらの足の位置が合ったのは、偶然だった。
膝蹴りを足の裏で受け止める。上に吹き飛ばされながらわき腹に拳を放つ。
回転の速度をプラスさせた拳だったが、鱗が一枚はがれただけだ。
そのまま相手の上を飛び越え、後ろに回る。
体勢が逆さまのまま、鍛えようの無い後頭部と首の間・・・延髄を狙うが、顔面の前に突如ムチのようなものが現れる。
「っ!」
尻尾だった。そうだ。相手は爬虫類によく似た宇宙人だ。尻尾ぐらいある。
とっさに両腕でガードする。それでも後ろに弾かれる。
両腕にはミミズ腫れのような痣が出来ていた。

ガード時の硬直が解ける前に後ろ向きのラクトースの左手から気孔波が飛んできた。
狙いは、頭。頭が吹き飛ぶほど強くは無いが、それでも無視できるレベルじゃない。
気はまだ両腕に集中している。一瞬で戻すことは不可能だ。
意を決してそれに耐えようとする。しかし直前で気孔波は微妙に軌道がずれ、ガードが集中していた腕に当たった。
「!?」
なんで曲がったか知らないが、ラッキーだった。腕には軽い火傷の跡がついただけだ。
頭に当たっていたら、どうなってたやら。
「あの状態から避わすなんて、やるじゃないか。
 ちょっとは殺し甲斐が上がったぞ」
「そいつはどぅもぉ!」
刀を抜き放ち-居合いの要領で相手の胸を両断するように振るう。
微妙に間合いが遠く、ボディーアーマーの表面を削っただけだった。
「操気弾!」
操気弾をラクトースの股にくぐらせる。
一瞬そちらに気が取られる。その隙に刀を爬虫類独特のまぶたの無い目に突き出す。
「ふん」
首を横に曲げ避ける。
「だぁ!!た!った!」
連続で突きを放つが全てかわされる。
そして相手の側頭部に移動させた操気弾を引き寄せる。
しかし、やはり当たる瞬間ラクトースに噛まれ、吸収された。




「不意打ちのつもりか?だがスカウターをつけている俺には無駄だな。
 エネルギーを分けてくれてありがとよ」
どうやらこの爬虫宇宙人は相手の気孔波を食べ、自分の気にしてしまうらしい。
「そうそう・・・・・その後ろからこっそり攻撃するのは結構いい戦法だぞ。
 まぁそれをするのがお前だけとは思わないほうがいいがな」
相手の足元の違和感に気づく。
尻尾が、伸びている!
上を反射的に見ると尻尾の先がある。
相手もこっそり尻尾を伸ばして、こっちの頭上に忍ばせて置いたのか。
思いっきり上から叩きつけられる。地上の岩山にぶつかる。
「痛ててて・・・・」
舞空術で何とか落下の勢いを減らしたが、頭をぶん殴られてふらふらする。
相手は遊んでいるのだ。
本気で殴られていたら多分頭が吹き飛んでいた。
「ダーイ・・・・」
上空から気孔波を撃ってくる。
ヤバイ。動けない。外れろ・・・・外れろ!
「だぁ!」
苦し紛れに手を振る。何とか、片腕を犠牲にしても直撃は避けようと思った。
しかしその腕は宙を切る。気孔波はギリギリで体の横に逸れた。
体の横の岩に穴が空く。なんで逸れたんだ?相手も不思議そうな顔をしている。・・・・・まさか。

「当たらんな。どういうことだ?」
「波!」
ヤムチャは気孔波を相手に打ち込む。
一種の賭けだ。しかし、成功すると信じる。成功しなければ、困る。
当然ラクトースはヤムチャの気孔波を食べる。
「どうした?気でも狂ったか?」
「波!波!波〜!」
どんどんラクトースの気が膨れてくる。
くだらないと思うな。失敗するとも思うな。成功することだけ考えろ。
「最後にもっぱつ!か〜め〜は〜め---波ァ!!」
かなりの大きさのかめはめ波だが、なんなく吸収した。
気が、だいぶ減った。
「戦闘力250・・・・ふん、バカな奴だ。吸収しきれなくなるとでも考えたか?
 私にエネルギーを分けてくれた礼に一撃で消し去ってくれよう」
ラクトースは両手にエネルギーを集中させた。
予想通りだ。密かにほくそえむ。
相手が自滅しかけで、自分がパワーアップした奴は必ず調子にのる。
そして、格好良く決めようとする。すなわち必殺技で。
ここからはヤムチャの賭けだ。失敗すれば即・死。
しかしこれを成功させないとパンジが来るまでこれ以上時間を稼げない。
「はぁぁぁぁ・・・・いくぞ!必殺ラック・ノーユーボックゥゥ!!」

ヤムチャに直撃したら跡形も残らないような気孔波が飛んできた。
それを正面から見据え、おもむろに片手を上げた。
その動きにあわせて気弾が一旦止まり、上にあがる。
成功・・・・した。
「なにっ!?どういうことだ!」
「喰らいやがれ!必殺!ディバイン操気弾!!」
相手に散々気を与えて、自分の気を相手の気にミックスさせた。
こちらの手の動きで相手の気孔波が微妙に逸れたことで気がついた。
それで、ひたすら相手に気を分けて、後は必殺技を撃たせ、操る。
そのまま相手に飛ばし、ぶち当てようとする。
「ぐぅぅぅぅぅ!!!」
やはり自分の出したエネルギーは吸収できないようだ。
「がぁぁぁぁぁ!!」
ドーン!!
空中で爆発を起こした。
粉塵からラクトースの姿が見えた。
戦闘服は半壊し、スカウターは壊れ、あちこちに傷が出来ている。
しかしあまり気は減っていない。
「ッキサマ・・・ブチコロスゾォォォッ!!」
言葉が片言になっている。
ダメージはあったが・・・相当怒らせたようだ。
くっそ〜。早く薬を持ってきてくれ!




一方ジンズ。
相手は岩男。確かヨッグとか名乗っていた。
ごつごつした岩色の肌。
まるで岩石から生まれたようだ。
「ぐえっへっへ・・・・叩き潰してや--」
最後まで聞かずに、蹴りをイれる。
普通の岩石だったら砕ける威力だが、相手の肌は砕けていない。
一撃目は牽制。ニ撃目でしゃがみ、水平に足払いをかける。
かなり油断していたヨッグはそのまますっ転んだ。
「てめぇ・・・・!」
「敵を目の前に演説か。かかってこい」
「後悔しやがれぇ!」
一気に飛行し接近してくる。頭突きの体勢。
その場に仰向けになり、避けつつ真上を通るヨッグの腹に蹴りを叩き込む。
しかしその足は掴まれ、そのまま引きずられる。
進行方向には岩山。
片足を引きずられた姿勢のまま、背筋の力で浮かび相手の背中に乗る。
そのまま後頭部を踏みつけようとしたが、背中から棘が生えてきた。
「・・・っ!」
棘に足を取られバランスを崩す。
その棘は岩で出来ているようだ。ブーツを履いてなかったら足を貫かれたかもしれない。
背中からバック宙で飛び降りる。慣性に身を任せ、数回地面に転がる。

ヨッグがそのまま突っ込んでいき、巨石が崩れる。
粉塵がまだ消えないままに、ジンズの目がなにか動くものを察知した。
岩の残骸から、ジンズの体の二倍ほどもある岩石が飛んでくる。
足に気を集中。イメージ通り脚力が強烈に強化される。
「せい!!」
巨石は粉々に砕かれる。
あの岩山から放り投げたのであろうか。いや。
砕いた岩の後ろにヨッグが張り付いていた。岩を投げたのではなく、岩を持って飛んできたのだ。
「死ね」
ヨッグの腹部から強力な気孔波がでる。
当たると、死ぬ。そう直感し、何とか体を反らす。
ゴウンと唸り声を上げて胸元を通り過ぎる。
かすっただけなのに体がビリビリする。
「ち、外れやが--痛て!」
相手が喋り出すのと同時にジャケットから拳銃を取り出して発砲。
コンクリートを打ち抜く徹甲弾を詰めたハイパワー拳銃だ。
それを三連発。頭部狙いだ。たいしたダメージは与えられなかったが、目に付けている機械が壊れた。
「ってめ〜。人が喋っている時に攻撃するとは卑怯な戦ぽ---痛ぇだろうが!止めろ!」
再び話し出したヨッグに容赦なく銃弾を叩きこむ。
今度は小さく改良したカービン・ライフル。防弾ジャケットなどは易々打ち抜く。
やはり、あまり効果が無いようだ。

「ぜってー殺す!」
そう叫んで突進してくる。
体当たりしてきた相手の体に蹴りを入れるが、勢いは止まらず、そのまま吹き飛ばされた。
さっき崩れた岩山に吹き飛ばされる。
一撃でこれだけダメージを負ってしまった。全身ズキズキする。腕の骨が折れたらしい。
ふと視線がヤムチャのほうに向く。どうやら相手の尻尾で殴りつけられたらしい。違う岩に叩きつけられていた。
「くそっ・・・」
ヨッグが追い討ちに突っ込んでくる。当たったらまずい。
何とか力を振り絞り、相手の三度目の突撃を回避する。
岩山が完全に打ち砕かれ、空中に大小の岩石が舞う。
ジンズは跳躍して相手の近くに飛んでいた大き目の岩を蹴り砕く。
つぶてがヨッグを襲う。しかしヨッグは肩越しにこちらを見てにやりと笑った。
「なっ!?」
砕いた岩から、岩の棘がのびてジンズを切り裂く。
ただの棘ではなく、刃物のように研ぎ澄まされている。
その棘から頭や首、胸などは庇ったが、手足は裂傷だらけになった。
目を庇うために閉じてたのがいけなかった。
目を開くと眼前にヨッグがいた。
「よぅ」
防御する間もなく、ボディーブローを喰らった。
アバラの砕ける音を聞きながら倒れそうになるが胸倉を掴まれ、持ち上げられる。

「がはははは!どうした、抵抗せんのか?
 俺の能力、岩から自由に棘が生やせるんだ。
 まだ全然本気出してないんだけどなぁ・・・ん?
 まぁ戦闘力928程度でよく頑張ったほうだぜ---」
ジンズは血が滲む口の端をつり上げた。
内臓は壊れて無い。戦える。
本気で学習能力が無いようだ。まるで-いやまるっきり岩並みだ。
「演説。ご苦労」
機嫌よく喋り倒していたヨッグの口の中に手榴弾を放り込んだ。
そして顎に膝蹴りを叩き込み相手の手から逃げる。
ドゥ!
ヨッグの口の中で手榴弾が爆発する。
そしてぐらりと後ろに倒れる。
「やったか!?」
しかしむくりと起き上がるヨッグ。
その場に血の混じった唾を吐く。
「手加減は止めだ・・・・瞬殺に決定しましたオメデト----てめぇっ!痛えッつってんだろうが!ブッ殺す!!」
また喋り出したヨッグにふてぶてしく銃弾を叩き込む。
これ以上時間稼ぎは厳しい。手榴弾が体内で破裂したのに、なんて耐久力だ。
そろそろ戻ってくるころだが・・・・・早くしろ!




一方シスル。
相手は前髪の長い、緑色の男。
目元が見えないのとぼそぼそ喋るのでどうも陰気に見える。
「さぁて、パンジ博士が帰ってくるまでアタシが相手をしてやるさ!」
「相手・・・・?」
刀の鞘に手を付けながら告げるシスル。
今日の刀はコールドナイフではなく、家に飾っていた普通の刀。
普通とは言ってもかなりの業物だ。
「戦闘力890・・・・タイプ・剣士・・・自分に勝つ確立・・・・5%未満」
「わぁお!5%ありゃ十分さね!」
そう叫び刀を抜き放ち、接近。
チヅゥの手首から棒の様な物が出てくる。
ギッ!
振った刀は棒で受け止められる。鉄を両断する事も可能な斬撃なのだが。
太刀筋を逸らして一回転して、相手の武器を持っている左手を狙う。
一瞬視線が逸れた瞬間に棒が頭に振られる。
すれすれで頭を下げて避ける。三つ編みを叩いただけで済んだ。
こっちの刀はチヅゥの左手に当たる前に、棒の柄の部分で弾かれる。

剣術というか棒術というか、武器の扱いは互角のようだ。
しかし相手はパワーとスピード、あとスタミナも上だろう。
なるべくこのまま打ち合いをして、隙を見て仕留めよう。
「行くさね!」
剣術の基本。手を絞るように持つ。
右手は力まない。脇をしめる。
すると自然に気が手元に集中してきた。
シスルは気を扱いかたはジンズに説明されただけで、トレーニングなどは積んでいないのだが。
怒りがナチュラルにその扱い方を覚えさせた?
いや、ちがう。日ごろの剣術修行が自然と気の修行と似通っていたのだ。
「両ォォォォ断!」
思いっきり気を込めた刀を振るう。
相手の棒を真っ二つに切る。
「どうさ!」
チヅゥは半ば切断された棒を見た。
「・・・再生」
切断面から棒が生えてきた。しかも細長くなって三本も。
違う。あれは棒ではなく・・・・

「ムチィ!?」
ヒュンヒュンと三本のムチが不規則にこちらに飛んでくる。
周りの地面がはじける。ムチが地面に当たったようだ。
横に有ったサボテンがきれいに切断される。
岩が削り取られる。
当たると、自分も?
「冗談じゃないよ!」
大きく跳び、後ろに下がる。
ムチが迫ってくる。一本は刀で受け流す。
もう一本は侍服の袖を引き裂いた。
後ろに在ったテーブル上の岩山に乗る。広さがテニスコートぐらいある。流石にここまでムチは届かない気がする。
一呼吸置き、コールドナイフのカプセルを取り出そうとする。
その刹那、足元の岩が突き破られ、無数のムチが現れた。
1、2、3、4・・・・数え切れないほどその岩からムチが生えて好き勝手に暴れていた。
これでは岩の上から出られない。自分は空を飛べないのに。
「ターゲット・・・・・・・・バカ」
「んなぁぁぁぁ!ムカツクさ!」




近くに来たムチを切り落とす。
しかし切り口からまた三本生えてくる。
きりが無い。この攻撃手段を見切らねば。
弱点らしい弱点と言えば、このムチはさっきの棒に比べて柔らかく、斬りやすい。
柔らかい分当たったら痛そう。痛いで済んだらいいけど。
「こーゆー時は接近すれば攻撃できないのが無差別攻撃の基本さ!」
一番ムチの密度が薄そうな場所に走っていく。
風を切る音と勘を頼りにムチを避け、立ちふさがる物は斬る。
ムチが増えることはとりあえず頭から締め出した。
残り数歩で、岩から飛び降りれる。
「あとちょい!」
「・・・壁」
あと二歩、と言う所で大きく跳躍し、飛び降りようとした。
しかし、ムチが目の前で組み合わさって--というか編み合わさって壁になった。
「なんのっ!」

壁に短刀を突き刺し、それを足場に壁を飛び越えた。
そのまま垂直に切り立った絶壁を走って下る。壁走り。
チヅゥは足元の岩壁に手を着いてこちらを見ていた。
地上まであと数メートルという所でチヅゥがバックステップする。こちらが地面にぶつかり、自爆するのを狙ったものだ。
シスルは地面に着いた所で走る方向を90度変え、追撃をした。
飛んでも間に合わない距離。思い切り居合い抜きを放とうとする。
刀が当たる瞬間、猛烈に嫌な予感がして体をひねる。
後ろからムチが襲ってきていた。いやもうムチなんて硬度ではなく、もはや槍だった。
体を事前にひねった事で何とか致命傷は避けたが、腹をかすめた。
「っく・・・・お気に入りの侍ファッションが・・・・」
自分で痛みを我慢するために軽口をたたく。
どうやら大きな血管は傷ついていない。臓器は分からないが、軽口言える位だから大丈夫だろう。
それでも血がドロっと出る。固まるから大丈夫、と自分に言い聞かせる。
やっぱりこのままじゃあヤバイ。敵の攻撃方法はかなり正体不明だ。
相手を見て、さらにうんざりする。
増えてる。

合計12体。こっちを取り囲んでいる。
残像にも見えない。そもそも残像なら自分は見破れる。
つまり、どうやってか知らないが、分裂したと言う事だろう。
恐らく、分裂したにしても、最初の本体がいるはずだ。
そいつを狙おう。相手が間抜けである事を祈りつつ、最初に本体がいた位置にいる奴を狙う。
「はぁっ!」
突っ込んでいく。相手に動きは無い。
何の抵抗も無く刀が突き刺さる。しまった・・・失敗か。コイツは、本体じゃない。
他の11体から、一斉に先ほどの「槍」が伸びてくる。
改めてよく見ると茶色っぽい。さっきのムチは緑色だったが。
5本がその場に貫かれていたチヅゥの擬態をバラバラにする。
4本が空に大きく跳んだシスルを追う。最初に到達した1本を足場にさらに飛ぶ。
残り2本が着地した所を狙う。1本は刀の鞘で上に打ち上げられ、もう1本は刀で受け流され後ろにいた一体に突き刺さる。
突き刺さった1体は崩れて土に還る。また偽者か。
再び槍が飛んでくる。
上半身の動きで2本避ける。
一本が袴を切り裂いた。
片手を地面に付き、しゃがみながら移動する。
一匹に短刀を投げつけた。また一匹崩れる。近くに来たムチを切り落とす。
しかし切り口からまた三本生えてくる。
きりが無い。この攻撃手段を見切らねば。
弱点らしい弱点と言えば、このムチはさっきの棒に比べて柔らかく、斬りやすい。
柔らかい分当たったら痛そう。痛いで済んだらいいけど。
「こーゆー時は接近すれば攻撃できないのが無差別攻撃の基本さ!」
一番ムチの密度が薄そうな場所に走っていく。
風を切る音と勘を頼りにムチを避け、立ちふさがる物は斬る。
ムチが増えることはとりあえず頭から締め出した。
残り数歩で、岩から飛び降りれる。
「あとちょい!」
「・・・壁」
あと二歩、と言う所で大きく跳躍し、飛び降りようとした。
しかし、ムチが目の前で組み合わさって--というか編み合わさって壁になった。
「なんのっ!」

壁に短刀を突き刺し、それを足場に壁を飛び越えた。
そのまま垂直に切り立った絶壁を走って下る。壁走り。
チヅゥは足元の岩壁に手を着いてこちらを見ていた。
地上まであと数メートルという所でチヅゥがバックステップする。こちらが地面にぶつかり、自爆するのを狙ったものだ。
シスルは地面に着いた所で走る方向を90度変え、追撃をした。
飛んでも間に合わない距離。思い切り居合い抜きを放とうとする。
刀が当たる瞬間、猛烈に嫌な予感がして体をひねる。
後ろからムチが襲ってきていた。いやもうムチなんて硬度ではなく、もはや槍だった。
体を事前にひねった事で何とか致命傷は避けたが、腹をかすめた。
「っく・・・・お気に入りの侍ファッションが・・・・」
自分で痛みを我慢するために軽口をたたく。
どうやら大きな血管は傷ついていない。臓器は分からないが、軽口言える位だから大丈夫だろう。
それでも血がドロっと出る。固まるから大丈夫、と自分に言い聞かせる。
やっぱりこのままじゃあヤバイ。敵の攻撃方法はかなり正体不明だ。
相手を見て、さらにうんざりする。
増えてる。

合計12体。こっちを取り囲んでいる。
残像にも見えない。そもそも残像なら自分は見破れる。
つまり、どうやってか知らないが、分裂したと言う事だろう。
恐らく、分裂したにしても、最初の本体がいるはずだ。
そいつを狙おう。相手が間抜けである事を祈りつつ、最初に本体がいた位置にいる奴を狙う。
「はぁっ!」
突っ込んでいく。相手に動きは無い。
何の抵抗も無く刀が突き刺さる。しまった・・・失敗か。コイツは、本体じゃない。
他の11体から、一斉に先ほどの「槍」が伸びてくる。
改めてよく見ると茶色っぽい。さっきのムチは緑色だったが。
5本がその場に貫かれていたチヅゥの擬態をバラバラにする。
4本が空に大きく跳んだシスルを追う。最初に到達した1本を足場にさらに飛ぶ。
残り2本が着地した所を狙う。1本は刀の鞘で上に打ち上げられ、もう1本は刀で受け流され後ろにいた一体に突き刺さる。
突き刺さった1体は崩れて土に還る。また偽者か。
再び槍が飛んでくる。
上半身の動きで2本避ける。
一本が袴を切り裂いた。
片手を地面に付き、しゃがみながら移動する。
一匹に短刀を投げつけた。また一匹崩れる。




しかしどうも敵の動きが単調だ。まるで、こちらの位置がよく分からないような。
ふと気になって、気を消して移動する。消した地点を槍が貫く。自分は離れたので平気だった。
そのまま1体のチヅゥに近づく。かなり警戒する。気を消している状態で攻撃喰らったら絶対死ぬ。
目の前にきても全く反応無し。まるで見えていないようだ。
これはまさか・・・と思いながら懐からカプセルを取り出す。中身は、コールドナイフ。
やはり反応無し。どうやら相手は見えない場所からこちらを攻撃していたようだ。
こちらの気を感知する機械を持っているのだろう。多分あの目に付いていたやつ。
気を突然消したから死んだと思ったのか。
ならしばらく待てば・・・・・・
唐突に周りの偽チヅゥ達が全て崩れる。
そして真ん中の、最初自分が立っていた場所の地面が盛り上がった。
ずるずる地面から這い出す。気を消したまま後ろに回る。刀を右腰に、コールドナイフを左腰に。
「・・・・戦闘力反応無し。死体確認できず」

ぶつぶつ呟くチヅゥ本体の後ろでこっそりコールドナイフを抜く。
周りでジンズとヤムチャが派手に戦っているから機械の駆動音は聞こえなかったようだ。
「あ、せーの!」
気を一気に高めながら思い切り氷の刀を振り下ろす。
一瞬で相手は振り向く。が、遅い。
既に刀は避けられないところまで来ている。
それでも何とかチヅゥは体を反らし致命傷を避ける。かなりの超反応だった。
ズパァっとチヅゥの右上腕部から先が無くなる。
「・・・・片腕損失。患部過冷却状態・・・・・・・・死ね・・・・」
まるで何も痛くないかのように残った左手で氷の刃をへし折る。
そのまま腹に蹴りを入れられ吹き飛ぶ。
腹に穴が空くほどの衝撃。しかし実際は穴が空いていないからなお最悪である。
死ぬほどの衝撃を、死なないまま味わってしまった。
倒れこんだシスルにチヅゥが近づいてくる。
「死・・・ね」
手を振り上げる。頭を粉々に砕いてしまおうという意志がはっきり感じ取れた。
しかし体はまったく動かない。呼吸もうまくできない。
ああだめだ。アタシ死ぬ。

わざわざこんな最悪な連中を送り込んできた運命について神様に問いたい。
振り下ろす拳がゆっくり見える。脳内麻薬やら興奮物質やらの作用だろうか。
その瞬間、目の前の緑色の異星人が爆発して吹き飛んだ。
気孔波?飛んできたほうを見る。
ジンズとごつごつした岩の怪物が戦っている。
多分あの岩男が放った流れ弾だろうか。
何はともあれラッキーだ。この隙に逃げる。
吹き飛んだチヅゥはゆっくり起き上がりながら言った。
「ヨッグの流れ弾に直撃・・・・・
 腕の凍結解除・・・・・再生可能」
触手が切り口からしゅるしゅる生えてきて手の形をつくる。
逃げながら振り向いてそれを見る。
うわっ・・・・復活した。
回復サイクルかなりキショイな。友だちにはしたくないタイプだ。
しかしヤバイ。相手はハンデ回復したし。
自分は腹から出てくる血がなかなか止まらない。服がぐっしょりだ。
さっき蹴られた所為かも。体の節々がズキズキきて、内臓器官も休むように要求してくる。
休んだら殺される。闘っても殺されそう。
パンジ博士、そろそろヤバイです。


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