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ヤムチャ異星録

終章『終わらない異星録の始まり』



「もう行くのかい?」
「ああ、あんまり長居しても、帰り辛くなるからな」
ヤムチャは答え、ギニューが乗って来た宇宙船に乗った。
あの後、ヤムチャは両腕に包帯を巻き、いつものパーカーとジャージを着ていた。
既にギニューの宇宙船に地球の座標データは入れている。
自分が乗って来た機体は、こっちの宇宙船技術向上のために残してくれ、と言われたからだ。
「いいじゃないか。我々が宇宙船を修理して君の星にいってみるよ。
 そう遠い話ではないはずだがな」
「ふむ・・・では宇宙船が出来たら私が乗って行こう」
「ああ!ずるいさ。アタシも行く」
ジンズとシスルが手を上げて立候補する。
スクリームとか言う奴は未だに気を失って、寝ている。
止めは刺さなかったけど大丈夫かな。
「ふふふ・・・・なにを言っているのかね?
 私も行くに決まっているだろう・・・・ん?そろそろ三次効果が出るはずだが」
「え?なに--を--?」
「--なんだ?」
二人の気が一気に下がる。
パンジぐらいまで下がった。なんだ?
「はっはっは。あの薬は副作用があってな。
 24時間で効果が切れて、生体エネルギーが一気に低下する」
「・・・なんでヤムチャは下がらないさ?」
なんか不服そうに口を尖らせて、ヤムチャを見る。
「さぁ?ヤムチャ君は体の組織自体が代わってしまった所為か、一回既に下がっていたからか・・・・」
「いいではないか。普通の暮らしをする分には、無駄な力は本当に無用だ。私も傭兵は廃業だな」

ふーん。勿体無いな。
でも一般人よりは大分強いよな。
無駄な力は無用・・・・・・ね。
・・・・そろそろ帰ろ。
「よし、オレは帰るから・・・・・・
 じゃ!」
「ああ」
「また会うさ」
「それでは」
ヤムチャの乗ったフリーザ軍の宇宙船は一瞬で空に舞い上がり、消えていった。
宇宙船の中に睡眠装置がある。パンジに調べてもらった所、大丈夫だそうだ。
寝よ。
寝台に横たわり、目をつぶる。
眠りに付く最後のときに、何か大きな物が見えたような気がした。
それを確認する前に深い眠りに着いた。

「いっちゃったね」
「ああ」
二人は飛んでいった空を見上げて呟く。
パンジはヤムチャの宇宙船をカプセルに直し、胸ポケットに入れた。
「さぁ!立ち止まっている暇は無いぞ諸君!
 宇宙船の研究を再開だ!」

「ういっす・・・・ん?
 あ!ヤムチャの奴、アタシの刀間違えて持ってってる!」
シスルは腰の、少しヒビの入った刀を見ていった。
ため息をつき、まぁ次にあったときでいいかと考え直した。
「さて、街に戻るさ。お墓に添える花も買って来ないといけないしね。
 ・・・・・? ジンズさん?」
ジンズはじっと空を見ている。
彼は震える声で言った。
「あれは---なんだ?」
空には星が、一面に浮かんでいた。
文字通り一個の巨大な星が衛星軌道上にあり、空を塞いでいる。

フリーザ軍で開発された失敗作兵器。
大質量の星を、目標の星の衛星軌道上に転移させ、自然落下させる。
これが失敗だったことは、完全に地表が破壊される質量で、殖民星として使えなくなるから。
この兵器を、ギニューはサイヤ人戦の最終兵器として使うはずだった。
自分が死ぬか、チェンジしたらその星に自動発動するようにセットした。
チェンジした場合、余裕を持って2時間後に落ちるようにした。
今、ヤムチャの戦いから丁度2時間。

大変申し訳ありません。
もう少しですから最後まで投下させて下さい。
pcが壊れたのは本当に偶然だったんです。
このスレを立てたのも自分ではありません。本当に最近復旧したんです。
証明する方法はありませんがとにかくあと少しで終わります。

「な!なななな・・・・なにさ!あれは!」
完全に裏返った声で言った。
「・・・・・なんということだ。隕石だ。惑星クラスの。
 あんなものが落ちたら・・・・確実に滅ぶぞ!」
「どうする!?」
いつもは冷静な兄弟でさえ、慌てている。
パンジは胸ポケットからカプセルを取り出した。
「これに乗り込め!ヤムチャ君が言ってたろう。
 『なんでも願いが叶う球がある』と。
 夢物語のような話だが、地球に行ってそれに頼るしかない。脱出するぞ!」
シスルとジンズが乗り込む。
パンジは空間転送装置をだし、何か石の様な物を取り外した。
「マエバリウムだ。これで燃料は大丈夫なはず・・・・二人分は」
「え? それってどういう・・・・」
「弟よ」
パンジの合図でジンズがシスルの首筋にチョップして、気絶させた。
くたりと倒れるシスルをジンズが抱きとめる。
「・・・・・いいのか?」
「私はあの世にも知り合いが多いからな。シスル君をよろしく頼む。・・・・後が怖そうだがな。
 ハッチ閉鎖!」
ウィーンと入口が閉まっていく。
既に艦長はヤムチャからパンジに変えている。
声帯は、一卵性なので一緒だからパンジからジンズに変える必要は無い。
「じゃあな・・・・可愛い弟よ」
「ああ。さらばだ。・・・・・兄者」
ジンズはコントロールパネルをいじり、発射手続きをとる。
『.......発射システム不調
 惑星H-0982までの航行は困難........
 .......安全に到着するためにシステム名F・T・Tの起動を推奨。承認を』
「承認」

そのシステムが何か分からなかったが、とりあえず脱出する事が最優先事項だ。
ここで脱出出来ないで死んだら兄になんと馬鹿にされるか・・・・
『了解...........
Fales
Time
Transition............起動。発射まで240秒』
くそ、結局時間がかかるのか!
240秒・・・・・惑星が落下するまで何秒だ?

ウイーン。
閉まった扉を見てパンジはにっこりした。
一安心だ。これで、彼らは生き残る事は出来る。
さて、あと私のやることは・・・・・
「いっちゃいましたですね」
後ろで声がして、ぎょっとする。
見るとあの、スクリームとかいう女の子が立ち上がっていた。
「ああ・・・・君も乗って来た宇宙船で逃げるといい」
「いえいえ・・・それより、水イッパイとタオルありますですか?」
不審に思いながら、カプセルで水の入ったタルとタオルを渡す。
タオルを持って、水面を眺めながら彼女は言った。
「私は・・・あの星をなるたけ食い止めてくるです。
 彼らが脱出する前に落ちたら意味が無いですし」
「? 君にそんな義理があるとも思えんが・・・・何故?」
それに答えず、タルの中に頭を突っ込んだ。
さらに髪を洗うように頭をぐしぐしと掻く。
見る見るうちにタルの水が赤く染まり、パンジは驚いて止めた。
赤い水が滴らせながら、タオルで髪を拭いた。
「一体どういう---」

髪の毛の黒に近いほど赤い色が落ちて。
銀髪が、覗いていた。


「それはですね。ここが私の星だからですよ。兄さん」
そう言い放つとバシュッと隕石のほうに飛んでいった。
一瞬ポカンとしていたパンジは既に飛んでいった女の子のほうに手を伸ばした。
隕石は既にかなり迫っている。

「カフェオレのぉぉぉぉぉ!翼ですぅぅぅ!!」
光の翼を展開して、上空で隕石の表面を押し返した。
隕石の落ちる速度は確実に遅くなったが、止まる気配は無い。
翼を広げ、当たる面積を大きくしても同じだった。
下を見るとまだ宇宙船は発射していない。
持つですか・・・・?だんだん負荷が大きくなる。
「んん〜!!もぉどぉっってぇぇぇぇです!!」
グングン押されていく。まずいです。このまま体勢が崩れたら一気に落ちる。
予想以上の質量。耐え難い摩擦熱。
こんな兵器、隊長さんは教えてくれなかったです。
まだ?まだ?まだです?・・・・・・・・・・
だめですっ!?
突然、少し負荷が少なくなる。
ほんの僅か。しかし体勢を整えるには十分だった。
再び体を押しやすい位置に置き、押し返し出す。
横を見ると、いつもの笑顔でパンジがいる。
「はっはっはー!妹の危機に兄上様が登場せんわけないだろう
 ドーピングで装いも新たに天才・パンジ、はせ参じた!」
「兄さん!?何故ここにです!?」
一緒に押し返してくれるパンジを見ながら、スクリーム---いやスカットは叫んだ。
パンジは飛べないはずだが、気も大きく上がっている。
「さっき言っただろう!妹が危機だからだよ! 
 丁度、力をアップさせる薬があったもんでね!
 妹こそジンズに伝えんで良かったのか!?」
二人は笑顔で踏ん張りながら叫びあう。
どんどん地面に落下していくが、速度はだいぶ下がっている。

「ジンズ兄様に言ったら宇宙船から飛び出してくるです!
 私だっていきなり時間軸すっ飛ばされて大変でしたんですですよ!?
 変なオジサンたちの修行に付き合って、やっと帰ってきたら兄様たち老けてるですし!」
「そりゃあ15年ぐらいタイムラグがあるからな!
 てゆーか気づいていたんなら最初に言ってくれれば戦わずに済んだんだが!」
もはや上空数百メートルだ。
大気摩擦で焼け焦げる手の痛みはあまり感じなかった。
スカットはにやりと笑って答える。
「そんなこといったら本気で戦えないじゃ無いですか。
 せっかく修行したんだから、試したいのが女の子ってもんですよ!」
「なるほど・・・・・それは傑作だ!」
地表数十メートル。
下を見ると丁度ジンズの乗った宇宙船が消えていったところだった。
最後の刻。パンジとスカットは人生最高の笑顔を見せ合った。
「じゃあ最後に・・・・
 スカット、お帰り!」
「ただいまです!パンジ兄様!
 そして・・・・・」
さよなら。
ジンズ兄様も。
自分の子どもの頃の思い出も。
この星も。

その日。
惑星『ショヴァ・パンツァー』は大質量の小惑星に直撃され、砕け散った。
しかしそれは、光を超える速度で地球に戻っていたヤムチャに知るよしはなかった・・・・・・

後日談-ジンズ・シスルサイド-
その後、二人は謎のシステムで違う星に移動した。
着いた星は、彼らの住んでいた星にひどく似た星であった。
そこには先住民がいた。いろんな姿。自分らとあまり変わらない人が殆どだった。
その星でヤムチャについて調べた。
あれほど強い人だったら、何か知っている人がいるだろう。
しかし何も見つからなかった。ここはヤムチャの星ではないらしい。
宇宙船もエネルギーチャージにとてつもない時間がかかり、結局二人はその星に永住する事に決めた。
小さな家を立て、結婚し、子どももできた。
彼らはその星の材料でほいぽいカプセルを造ろうとした。
それは困難を極めたが、基礎理論は出来ているので、出来ないことはなかった。
シスルは小さな剣術道場も開いていた。
そこで、特に目を見張る弟子に、免許皆伝の証としてヤムチャが間違って置いていった刀を渡した。
ちなみに刀は既に修理して、ヒビは消えている。
カプセルの完成まじか、という所で二人は若くして病気にかかり、死んでしまった。
しかし、彼らの子どもが、そのカプセル完成させた。
パンジの血を継ぐだけあって、かなりの天才であった。
子どもの名前。歴史にその名を刻んだ偉人「ブリーフ」
その後、シスルの一番弟子は刀を自分の子どもヤジロベーに受け継がせた。
ブリーフの子ども、ブルマは顔も知らない祖父母の、ブリーフさえその存在を知らなかった宇宙船を掘り出し、調査した。
そしてまた、調べている最中に頬に十字傷がある男が、宇宙船に近づいていく。
「なんだこりゃ」
その中にあるヤジロベーの刀を手にして、一つのスイッチを押す・・・・・・・

始まりの見えない異星録。
終わりなど無いパラドックス。
歴史は殆ど狂い無く続いていく。

後日談-ヤムチャサイド-
ブルマの家の庭に、ギニューの乗っていた宇宙船は静かに着陸した。
ベジータが駆けつけるが、降りてきたのがヤムチャで、拍子抜けした。
「ちょっと、ヤムチャ!ここにあった宇宙船はどうしたのよ!」
ブルマが詰め寄る。
「・・・・そうだな。
 オレが違う星でフリーザ軍の幹部と激戦を繰り広げて来たって言ったら、どう思う?」
「鼻で笑うな」
ベジータが即答する。
「そうだよな。そんなもんだよ・・・・それでいいんだ。別に。
 どうせ信じないし。いいよ、思い出が大事なんだよ。くそっ」
「でも本当に心配したんですよヤムチャさん」
「ヤムチャおじさんも若くないんだから・・・・・って若返ってない?お母さん」
目をごしごしとこする。
目の前にいるのはトランクスとブラ。
一瞬ジンズとシスルに見えたような・・・・・・
気のせいだな。
「俺の刀・・・・何か変わってねぇか?」
何言ってやがんだ。それはギニューのやつが封印された・・・・・って。
変わってる。シスルの持って来ちゃった。
ま、いいか。
さてと。
いつか来るあの連中に少しは格好が付くように定職にも就かないと。
でも今日は。気分がいいから---
「プーアールの所にいこう!」

カプセルハウスの目立たない一角に墓が立ててある。
そこには珍しい二足の軍靴と、侍服が祭ってある。
刻まれた名前の人物は、誰も知らない偉人。彼らの息子しかその実績を知らない。
『カプセル理論の開拓者ジンズ・シスルここに眠る』

終わらない異星録-終-


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