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ふりかえればヤムがいる

287 名前: 作者の都合により名無しです [L-point] 投稿日: 03/04/07 02:46 ID:Txn/wtOk

『ふりかえればヤムがいる』 



「やっとできたー」 

最後の一文をタイプし、俺の右手がENTERキーを叩く音が小気味よく響く。 

上出来だった。スレの住人もこんなすげー小説を書いた俺をきっと歓迎するだろう。 

あとは、エディターに書き込んだこの一文をコピペしてっと・・・ 

そう思った瞬間、背後から誰かが俺に話しかけた 

「ぜんぜんダメ、はっきり言って才能ないぞ、お前。」 

オヤジもオフクロももう寝てる時間だ。こんな時間に声をかけられるはずはない。 

強盗かと思い、ギョッとしてふりかえった俺の目の前にはヤムチャがいた・・・ 



「お前さぁ、俺を活躍させればそれでいと思ってるわけ。」 

そういうと奴は俺の小説を読み始めた。それも馬鹿でかい声で。 

やばい、オヤジとオフクロが目ェ覚ます。てか、近所迷惑だよ、コイツ(欝 

さすがに俺はヤムチャに懇願した。頼むからやめてくれと・・・ 

そんな俺に奴はこう言った。 

「大丈夫だ、お前以外には俺は見えないし、俺の声は聞こえない。」 

でもさ、お前ここにいるじゃん!!てか、まだ読み続けてるし(欝 

結局、泣きそうになる俺を尻目にヤムチャは俺の小説を最後まで読み続けた。 



「なぁ、この小説のどこが面白いわけ?」 

そういうヤムチャの顔はまるで俺の小説が面白くないとでも言わんばかりだった。 

ふざけやがって、ヘタレの分際で・・・ 

そこで、俺はこの話の見せ場とその面白さをヤムチャに存分に聞かせてやることにした。 

だが、次の瞬間、俺は信じられないものを見た。 



コイツ寝てやがる・・・ 



ヒトが真剣に話してんのに、寝るか普通・・・ 



288 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 03/04/07 02:47 ID:Txn/wtOk

俺はヤムチャをたたき起こすと小一時間ry・・・ 

「仕方ないだろ、面白くないもんは面白くないんだからさ。」 

あっさりと言いやがった。絶対に聞き間違いとかじゃない。 

コイツ、今度ははっきり言いやがった。面白くないと(欝 

「お前なぁ、ヒトがせっかく活躍させてやってのにその態度はなんだよ。」 

詰め寄る俺にヤムチャはさらに信じられない行動に出る。 

「はい・はい・おー」 

わけの分からない『あの雄たけび』を挙げてこの俺に襲い掛かってきたのだ。 

「何すんだよ!!」 

「ほう、狼牙風風拳を食らって生きているとはな。」 

あれ、そういえば、痛くない・・・ 

「やっぱり、お前大したことネェじゃん。」 



「なにをー」 

ヤムチャの目が怒りに燃える。 

しまった、さすがにマズかった。俺の言葉は火に油を注いでしまったようだ。 

ヤムチャは俺の目の前で操気弾を作り上げようとしていた。 

さすがにこれ食らったらやばいのかな。 

待てよ、操気弾って確か・・・ものは試しだ。 

そう思い俺が繰り出した足払いに見事にスッ転んだヤムチャは 

したたかに頭を打ったらしく、頭を抱えて転げまわった。 

やっぱコイツ、ヘタレじゃんw 



「おい、ヤムチャ、さっきはよくも言ってくれたな」 

こんな弱い奴なら楽勝。そう強気に出た俺を再びヤムチャのパンチが襲った。 

い、痛い。さっきの狼牙風風拳で油断してしまったが、やっぱりコイツ・・・強い!? 

「なぁ、お前、俺のことどう思った?」 

ヤムチャの言葉に俺は返す言葉がなかった。 

ヘタなことを言えば殺されかねない。 

「正直に言えって。なっ!!」 

殺人鬼は満面の笑顔で言った。 



289 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 03/04/07 02:47 ID:Txn/wtOk

「わかんね、ヘタレかと思ったら、やっぱり強いしさ。」 

「だろうな、俺は今、お前が思ってる俺と正反対の行動をとった。 

狼牙風風拳は思いっきり力を抜いて、操気弾で足元がお留守になるフリをしてな。 

それで俺を弱いと思ったお前に今度はちょっと力を入れて攻撃した。ってワケだ」 

ワケワカンネー、何でそんなことする必要あんだよ? 

俺は声に出さず心の中で叫んだ。そう、確かに声は出していないはずだった。 

だが、まるで俺の心を読むかのごとくヤムチャが俺に答えた 

「ワケワカンネーか、ハハッ。お前はさ、決めてかかってるんだよ。」 

「は?って、なんでお前、今、俺が考えてたこと知ってんの?」 

「俺はお前が作り出したヤムチャなんだよ。」 

マジでワケワカンネー。だが、ヤムチャはさらに続けた。 

「だから、俺はお前にしか見えないし、俺の声もお前以外には聞こえない。」 

「じゃぁ、何、俺が消えて欲しいと思ったらお前消えるわけ?」 

「あぁ、消える。」 



じゃぁ、消えてもらおうw 

俺がそう思った瞬間、目の前からヤムチャは消えた。 

消えてしまった・・・ウソだろ。 

妙な気分だった、ワケワカンネー奴だったけどいなくなったらスゲェさびしい。 

出てきて欲しい、も一回、俺の目の前に・・・ 

そう願い目を閉じた俺に再び声が聞こえた。 

「よぉ。」 

ヤムチャがいた、目を開けるとそこにはヤムチャがいた。 



「なぁ、お前さぁ、何で出てきたわけ?」 

俺たちはベッドに腰掛け、落ち着いて話をすることにした。 

「話すと長くなるな。最近さ、お前ら俺のこと活躍させてくれようとしてるだろ。」 

ヤムチャスレのことだ・・・ 

「俺のこと、活躍させてくれようとしてんのは嬉しいんだけどな・・・」 

そう言って、遠くを見つめたヤムチャの目はどこかもの哀しかった。 



290 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 03/04/07 02:48 ID:Txn/wtOk

「なんで、そんな悲しそうな目ェしてんの、嬉しくないの?」 

「嬉しいさ、せっかく格好良くしてくれてるお前たちはありがたい、だけどな 

お前たちが描く俺は本当の俺じゃない。」 

「本当のヤムチャ・・・」 

本当のヤムチャ、何なんだろう?たしかに俺は鳥山明じゃない。またも俺の心を読んだヤムチャは話を続けた。 

「あぁ、作者が書くとかそういう意味じゃない。なんていうかなお前たちが書く俺にはさ、なんていうか俺らしさがない。」 

ヤムチャらしさ・・・キュピーン!!ヘタレってことか・・・うぶしっ 

コイツ、また殴りやがった・・・ 



「そういう意味じゃない。なんていうかさ。心がないんだよ。 

お前らの世界にも映画とかあるだろ。俺はその俳優なんだよ。 

主役になるか脇役になるかはお前らしだいだけどな。」 

「どういうことだよ?」 

「お前らはさ、俺をどんな風にも設定できる。その世界の神だからな。 

だが、俺にだってやりたい役もあれば、やりたくない役もある。」 

言われてみればそうだ。俺はそんなこと考えてもみなかった。 



「俺だってやりたくない役をやらされる時とやりたい役をやらしてもらう時とじゃ、 

やっぱり、演じる時の気持ちに変化が出る。やりたい役の時の方がいい芝居が出来る」 

「そんなもんか・・・」 

俺は芝居なんてしたことない。だから、今、ヤムチャの言ってることは 

完全には理解できない。でも・・・理解る気はする。 

「じゃぁさ、お前がやりたい役ってどんな役だよ?」 

「どんな役だってやるさ、ただ、お前たちが俺に演じさせるように 

俺もお前たちに声を送り続けてる。その声に気付いて欲しいんだ。」 

「声?」 

「お前は俺の声に気付いてくれただろ。」 

そう言うとヤムチャは笑った。 

こんないい笑顔を見たことがない。 

その時のヤムチャの笑顔はそれほどにまぶしかった。 



291 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 03/04/07 02:48 ID:Txn/wtOk

「俺はさ、今まで、ずっと作者たちに声を送り続けてきた。 

俺だけじゃない。悟空もピッコロも天津飯も餃子もクリリンもベジータも、 

みんなみんなお前たちに声を送り続けてきた。 

だけど、その声に気付いてくれる奴はそう多くはない。 

俺たちにだって心はある。だから、"こう演じたいんだ"って声をかける。」 

「その声に気付いてもらえなかったら・・・」 

「その時はその時でそれなりに演じるさ。」 

「じゃぁさ、気付いてもらえたら・・・」 

「やる気が出る。なんていうかな、こう、 

ドラゴンボールに出てた時みたいな、そんな気分になるんだ。」 



複雑な気分だった。登場人物に心があるなんて・・・ 

そういえば聞いたことがある。登場人物が勝手に動き出すことがあるって・・・ 

「そう、それだよ。俺たちの声に耳を傾けてくれた奴らはいつもそう言う。 

だけど、勝手に動いてるんじゃない。お前が俺たちの声に耳を傾け 

そして、俺たちの最高の演技を引き出してくれてるんだ。 

そういう時は生き生きとした演技が出来る。」 

「じゃぁさ、その声に耳を傾けたら俺もいい小説書けるかな?」 

「何、言ってんだよ。お前はもう俺たちの言葉に耳を傾けてくれただろ。」 

そう言うとヤムチャは消えた。 

消える瞬間も、彼は笑っていた。最高の笑顔で・・・ 





ヤムスレの作者さんたち、あなたのヤムチャは"生きて"ますか? 


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晴れ 後 フリーザ 時々 ヤムチャ