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哀・戦士

 第五部

 

808 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/08 00:14 ID:???
<28話>
地球に新たな侵略者、フリーザが現れた。
フリーザによって、サイヤ人集団はベジータ、ナッパを残して死亡。
地球中にばら撒かれたフリーザ軍戦士によって、地球は再び戦乱の地と化す。
バーダックからサイヤ人の行く末を託された王子、ベジータ。
彼はバーダックの最後の言葉どおり、同じサイヤ人の生き残りである悟空に協力を要請に行く。
サイヤ人の手で、フリーザを倒せと。
ヤムチャ達も、下界に異変が起こったことは察知していた。
地球中に散らばり、破壊、虐殺行為を繰り返すフリーザ戦士達。
もちろん放っておくわけにはいかない。ヤムチャ達は地上へ降りる。
悟空との決着後、意識を失っていたベジータ。
目を覚ました時は丁度悟空達が、下界へ降りた後だった。
起き上がるベジータに、神様が精神と時の部屋での修行を進める。
自分のプライドが許さないのか、しばらく修行を拒むものの、戦闘力をてっとりばやくあげる
いい手段として、ベジータは部屋に入ることを選ぶ。ナッパと共に。
神の宮殿には神様とミスターポポのみ。
ふ〜、と大きなため息をつき、神様はポポに語りかける。
「悟空も蘇り、ヤムチャ達も私の力を大きく上回る能力を身につけている。
私も、自分自身で起こした問題の、ケリをつけねばならんな・・・」
突然の言葉に、その意味もわからず呆然とするポポ。そんなポポに神様は言う。
しばらく、この神の宮殿を頼むぞ・・・・。

フリーザ軍は、主に5つの地域に部隊を展開させていた。
気によってその位置を把握していたヤムチャ達は、一人ずつ、5つの部隊を同時に壊滅させる
作戦に出た。フリーザ軍部隊それぞれの数は多いが、兵士達の戦闘力自体は、たいしたことなさそうだ。

 


810 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/08 00:15 ID:???
舞空術で空を飛行中のヤムチャ達5人は、一旦各地にばらけることとなる。
まずは、世界中に恐怖をばら撒いている、フリーザ兵士達を壊滅させ、本体を叩く。
最も、ヤムチャ達はまだフリーザという人物に対しての情報をほとんど持っていない。
その、恐ろしさ、強さも知らない・・・。
ヤムチャは、西の都近くに展開している部隊の元へと向かった。
ブルマは神の宮殿で待機しているから大丈夫。が、彼女の両親のことが気がかりだった。
現地へと到着したヤムチャは、愕然とする。
これまでの戦乱の影響がほとんどなく、きれいな町並みを残していた西の都。
無残にも破壊されている。ブルマと、初のデートをした遊園地も、見る影もない。
予想できたことだったが・・・。地上に降りたヤムチャを、フリーザ戦士達が囲む。
10名ほどの戦士。かんじられる気の数から言って、おそらく200名ほどがいるだろう。
兵士達の顔には、ここの住民達の物と思われる真っ赤な返り血。
中には切断された人間の手を、片手に持ち、むしゃぶりつく兵士もいる。
怒りがこみ上げる・・・。兵士達はヤムチャに向け腕部ビームガンの銃口を向ける。
そして一斉発射。閃光が走る。
兵士達の戦闘力は、約2000。今のヤムチャの敵ではなかった。
ビームガンをかわしたヤムチャは、自分を囲んでいた10名の兵士を一瞬にしてミンチにする。
騒ぎを聞きつけた他の兵士達も、一斉にヤムチャに襲い掛かってゆく。
が、真っ向から突撃するだけの兵士達は、ただヤムチャの拳に、引き裂かれるだけだった。

30分後、都を襲っていた兵士達は、壊滅。ヤムチャのまわりには死体の山が出来ていた。
ブルマの両親の元へ向かうヤムチャ。だが、突然大きなパワーを持った者が近づいてくる。
警戒するヤムチャ。パワーの持ち主は、すぐにやって来た。
ギニュー特戦隊の隊長、ギニューだ。最も、ヤムチャはそんなこと知るわけが無いが。

 

811 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/08 00:17 ID:???
「貴様か・・・我がフリーザ軍の兵士達をかわいがってくれたのは・・」
「この町を破壊したのは、お前の部下だな?俺の思い出を返せ、この野郎」
ヤムチャはギニューに問いかける。
ギニューは、自分がフリーザ軍のNO,1の戦士であること、フリーザの偉大さ等を
声高々に語った。そして、他の地域に向かった悟空達の元へも、すでに自分の部下が
抹殺に向かっているということも。
「フリーザ様はご立腹だ。お前達の、愚かな行動にな」
「ああ、そうかい。まあいいからはやく闘ろうぜ」
ヤムチャがぶっきらぼうにそう言った。
ギニューはスカウターでヤムチャの戦闘力を調べ、ふふっと笑う。
「思ったより、楽しめそうだ・・・」
両者が激突。ギニューは、気功波を放ち、ヤムチャの出端をくじく。
対するヤムチャは、気功波を弾き返す。と、背後にはギニューの姿が。
カミソリのような手刀を紙一重でかわし、ヤムチャは後ろ回し蹴りを放つ。
ギニュー、冷静にそれを片手一本で受け止め、ヤムチャのどてっぱらにひざ蹴りを入れる。
口から胃液を出して、あえぐヤムチャ。ギニューの攻撃は続く。
防戦一方のヤムチャ。両手での防御に限界を感じ、腰にある青龍刀を抜く。
青龍刀を振り回し攻勢に出るが、大振りの斬撃はまったく当たらない。
狼牙風風拳も見切られ、かめはめ波も弾かれる。こいつ・・・強い・・・。
すべての攻撃を封じられ、打つ手の無いヤムチャが、今さらながらにそう思う。
「なんだ・・・ちぇ、つまんないじゃないの〜。もう、終わりにしちゃうけど、いいか?」
「ま・・・ま・・・」
ヤムチャの返答も待たず、ギニューは極大の気功波を放つ。閃光と爆煙に包まれるヤムチャ。
「・・・悪い、なんかイライラしたから殺っちった」


812 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/08 00:18 ID:???
ヤムチャは立ったまま気を失っていた。気功波に耐えようと踏ん張ったものの
熱風に耐え切れず意識を奪われたのだろう。ギニューは、ヤムチャの元へ行き
とどめを刺そうと、力を込めた拳を顔面へと叩きつける。ヤムチャは倒れない。
ギニューは、さらに殴打を続ける。10発、20発、30発。
顔は変形し、地面は流れる血で真っ赤に染まっている。なぜ倒れない・・・?
ギニューは焦る。自分の方が、明らかに優位に立っている。だが何か、逆に自分が
追い詰められているような感がしてならない。
奇妙な不快感を断ち切る為、ギニューは渾身の力を込めた一撃をヤムチャに与える。
これで、完全に命を刈り取ったはず・・・。そう思ったギニューだったが、
刈り取られたのはヤムチャの命ではなく、ギニューの右腕だった。
ヤムチャの拳には、ギニューの右腕から吹き出した血がべっとりとついている。
ギニュー、何が起こったのか理解できない。気づいたら自分の右腕がなくなっていた。
そして、意識のなかったヤムチャの目が突然息を吹き返し、こちらを見ている。
体からは、ピンク色の闘気が放出されている。なんだ・・・・?こいつは・・・・。
さっきまでとは、感じが違う。こんな、鋭い殺気は持っていなかった。
ギニューは、スカウターで、戦闘力を測りなおしてみる。スカウターの数値は一気に上昇。
戦闘力、4000・・・4500・・・5000・・・5500・・・6000・・・
「ろ・・ろ・・・6000!6000だとぉ!!!?」
驚嘆の声をあげるギニュー。息を吹き返したヤムチャは、反撃を開始する。
攻防は一転。ヤムチャの拳が触れるたびに、ギニューの肉片が飛び散る。
ものすごい力、スピード。さっきまでとは、桁違い。目つきもまるで猛獣のようになって・・。
一方的にやられるギニュー。だが彼には、窮地に陥った際の切り札があった。
ギニューは突然、地面に大の字になって寝転ぶ。そのガラアキの心臓目掛けて、ヤムチャは
飛び掛っていった。ギニューが、にやっと笑う。
「チェンジ!!!」<つづく>


 

69 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:07 ID:???
<30話>
「チェンジ!!」
大の字に寝転ぶギニューの体から、まばゆい光が放たれ、向かってくるヤムチャを打ち抜く。
ギニューの切り札、「チェンジ」。自分と相手の体を入れ替える技だ。
自分よりも強い相手に出会い、窮地に追い込まれた時の切り札としてのこの技。
自分を上回る戦闘力を持った相手と戦ったことのないギニューは、実戦でこの技を使うのは初めてだった。
体を、と言うより精神や心を交換すると言ったほうが正しいかもしれない。
今ギニューの精神は、自分を窮地に追い込んでいた男、ヤムチャの中にいる。
「チェンジ」は見事成功した。元々の自分の体は目の前。
その中には、ヤムチャの精神が入っているはず。だが、ピクリとも動かない。
チェンジした際のショックで、精神がイカレてしまったのだろうか。
いや、そんなことになるわけがない。前例がない。
ギニューはさっきまでの自分の体を、ためしに殴ってみる。反応はない。
さらに殴り続ける。気功波も連射する。反応はない。それどころか、傷一つつけられない。
おかしい・・・。さっきまでの自分の体ではない。こんなに頑丈で・・・。
これも、ヤムチャの精神力が加わったせいだろうか。しかし、ヤムチャの肉体はこっちの物。
たとえ、奴が意識を取り戻したとしても、「ギニュー」の体では、たいした抵抗もできない。
ギニューは勝利の笑いを高々とあげる。大声が、あたりにこだまする。
約1分ほど、彼は馬鹿笑いを続ける。
だが、一分が過ぎようとした頃、彼は自分の声が、急に出しづらくなってゆくことに気づく。
笑い声どころか、声を出そうとするだけで肺がつぶれそうになる。
その苦しみは、ほどなく全身へとまわる。自分の体。いや、精神が溶けていくような感覚。
症状はさらにひどくなってゆく。チェンジを使用した反動か・・?ヤムチャの体の持病?
ギニューは考えをめぐらせる。だが、やがてその思考回路すら、何かに取り込まれてゆく。
ギニューは気づく。そして声にならない言葉を心の中で叫ぶ。

 

70 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:09 ID:???

「チェ・・・チェンジの失敗なのではない・・。俺の精神が・・・。
チェンジによって交換し、この体をのっとったはずの、俺の精神が・・。逆に取り込まれてゆく。
この、ヤムチャとかいう男の体・・・。その拒絶反応・・?ありえない・・・・。
いくらこの男が、桁外れの力を持っているとはいえ、これほどまでの拒絶反応を見せるとは・・」
ギニューの感情は、もはや風前の灯火。今にも消え去りそうな蝋燭の火程しか残っていなかった。
そのわずかな感情で、ギニューは自分の生命をつなぐための手段に出る。
再び「チェンジ」を使い、元の体に戻る。でなければ、俺の精神は、この体に食われる。
生命の危機に面しているギニューの行動は、早かった。残り少ない感情を駆使し、再び「チェンジ」
を唱える。先ほどと同様の現象が起こり、ギニューとヤムチャの体は、元に戻る。
これで、なんとかなったはず・・・。ギニューは元々の自分の体の左手を見てみる。
さっきまで、ぼやけていた視界も、正常に戻っている。思考回路も冴えている。完璧。
後は、目の前の男を倒すのみ。そう思い、拳を突き出すギニュー。
だが、今確認し、ちゃんとくっついていたはずの左手が消滅している。
一瞬にして。右手はヤムチャによって、もぎ取られた。左手は・・・?混乱するギニュー。
すると晴れていた視界が再びぼやけてくる。体の力も抜けてゆく。地面には、紫色の液体が・・。
これは・・、自分の体・・?溶けている・・・。自分の体が溶けている。
何故だ・・・。状況が理解できない。「チェンジ」と使ったせいか、ヤムチャの仕業か・・・。
顔の皮膚も、あっという間に溶解し、液体へと変わっていく。それにより、視界は完全に塞がれ
ギニューの前には真っ暗な世界が広がる。体と共に、精神も再び解けてゆく感覚を覚える。
もはや、解決策を考える力も、この場を脱出する力も残っていない。体を支えていた図太い両足が
完全に溶解し、ギニューの体は前のめりに倒れこみ、あっという間に紫の液体へと変わっていった。

ヤムチャが目を覚ました時、目の前には乾燥した紫色の粉と、ギニューの戦闘服が残っていた。
状況を理解できないヤムチャ。勝った・・・のだろうか。
オレはギニューに殺されかけたはず・・・。

 


71 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:10 ID:???
それがなぜ、自分は生きていて、ギニューのものと思われる戦闘服が落ちているのか。
数分間考えるヤムチャだったが、答えは見つからない。
が、直後に世界中に散らばっている、仲間達の気を探知する。ヤムチャはカプセルコーポにて
ブルマの両親の生存を確認し、急いで他の仲間の元へと向かう。
気を探知したのはクリリンだった。場所は南の都。赤い顔の男と、クリリンが戦っていた。
現地に到着したヤムチャ。クリリンは、必殺技「気円斬」を連射していた。
だが、モーションが大きいためか、すべて見切られ一発もあたっていない。
「クリリン、大丈夫か?俺、手伝ってやろうか?」
「ヤ、ヤムチャさん。いやぁ、僕一人でなんとかやってみますよ」
嫌味っぽく、ねぎらいの言葉をクリリンにかけるヤムチャ。
クリリンはちょっと悔しかったのか、断固としてヤムチャの援護をうけない。
クリリンの相手、ジース。ギニューと同じ、特戦隊の一員だ。彼はヤムチャに問う。
ギニュー隊長と戦っていたのか貴様か?と。ヤムチャは答える。
「ああ、あいつなら俺の操気弾で、あっという間にのしちまったよ。はっはっは」
一部、間違いのある返答を平然とするヤムチャ。挑発のつもりだろうか。ジースは愕然とする。
こんな、変体みたいな顔の野郎に、ギニュー隊長が・・・。信じられん・・・・!!
くそおおおー!!! ジースは絶叫する。そしてヤムチャに勝負を挑む。
「貴様、ギニュー隊長の命を奪ったというその操気弾という技。見せてもらおう。
俺の、クラッシャーボールと勝負だ!」
「へっ、望むところだぜ」
ヤムチャとジースの右腕から、同時に同規模のエネルギー弾が放出される。
ぶつかりあう両者の弾。だが、クラッシャーボールと違い、操気弾には汎用性があった。
一つの操気弾は、2つ、4つ、6つと次々に分裂してゆく。その動きに翻弄されたジース。
操気弾初の餌食になってしまった。一瞬にしてジースを倒したヤムチャは誇らしげな顔を
クリリンに見せる。

 

72 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:11 ID:???
「いや、でもね。あの人、俺と戦っててかなり疲れてたと思うんすよ。
だから、操気弾がまともに当たったんじゃないかな〜」
兄弟弟子同士に、不穏な空気が流れる。が、そこは大人のヤムチャ。小さなことは気にしない。
まあ、敵倒せたんだからいいじゃねえか、とその場を制し、他の仲間の元へ向かう。
悟空、天津飯、餃子共に、すでに特戦隊のメンバーを倒していた。
悟空は、力自慢のリクームを、一瞬にして撃破。天津飯は宇宙1のスピードを誇るバータを
四身の拳で翻弄し、辛勝。餃子対グルドの超能力対決も、餃子の切り札、腹痛超能力によって
グルドの動きを封じ、勝利。5人の活躍により、世界中に散らばっていたフリーザ戦士達は
すべて壊滅した。神様からもらっていた仙豆を、傷の深かった悟空以外の4人が食べて全快する。
丁度その頃には、夜も暮れ、あたりは真っ暗になっていた。
本体への攻撃を、明日に決めた一行は、近くの山で一夜を明かすことにする。
これまでにない、恐怖が明日、待っているとは知らずに・・・。

同じ夜・・・。世界の果て、ユンザビット高地。
獣すら住めないほどの、険しい山岳地帯。そのさらに奥。
ピッコロ大魔王率いる、魔族の総本山が存在する。
数百年前、世界を恐怖に陥れたピッコロは、亀仙人の師匠、武泰斗の手によって、この地に
封印された。長い眠りから覚めたピッコロは、この封印の地を総本山にし、
再び世界征服に乗り出したのだ。
キングキャッスルでの戦い後、ピッコロは自分の傷の治療と、兵士達の生産に従事していた。
魔族軍の高等兵士は、ヤムチャ達の手によってほとんど壊滅してしまった。
今、魔族の兵力はほぼゼロだ。下等な戦士なら、ピッコロの魔力によって地面などから
生み出すことが出来る。だが、ヤムチャ達を襲った、タンバリン級の高等戦士を生み出すには
ピッコロの体内の魔力で、少し育てなければならない。

 

73 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:11 ID:???
ピッコロの体内で育った高等戦士は、体内から排出されると同時に、活動を開始する。
ピッコロは、絶えず卵を生み出していた。一日に生み出せる量は、約10体。
それでも、かなりの魔力を要する。苦しみに耐え、いつか訪れる魔族が支配する世界を作るため
ピッコロは卵を産み続ける。
だが、そんなピッコロの元へ、以外な客が訪れる。
自らの分身、神様だ。門番をしていた兵士を、一瞬で倒し、神様はピッコロの部屋へと入る。
対峙する2人。ピッコロは丁度、今日最後の卵を生み出したところだった。
その卵を神様は気功波によって消滅させる。
「か・・神・・。貴様、いったい何しに来たのだ・・・」
ピッコロが怒りに震える声でそう言う。
「そんなに苦しい思いをして・・・。そこまでして世界を征服したいか?」
「ふふふ、ああしたいね。オレはそのために貴様から分裂し、この世に生をうけたのだ」
「そうか。だが、貴様に世界征服はもはや無理だ。私の弟子達は、もはや貴様すら凌ぐほどの
力を身につけてしまっている。ここらで終わりにしようではないか」
そう言うと、神様はピッコロにゆっくりと近づいてくる。後ずさりするピッコロ。
神様の気には、何か固い決意のようなものが感じられた。
「もう、この世界に私やお前のような、中途半端な存在は必要ないのだ」
「な・・・なに?」
神様はピッコロの身体に手を触れる。
「貴様・・・まさか・・・」
「そうだ。再び私と一つの身体になるのだ、ピッコロよ。そうすれば、私はヤムチャ達の力に
なれる。そして貴様という、世界のダニを排除することもできる」
ピッコロは、ばっと後ろに下がり、神様に向かって気功波の構えを取る。
「そ・・・そんなこと、させるものか!!おのれ・・・・」


74 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/09 20:12 ID:???
「討ちたかれば討つがよい。だが、私は一撃で死ぬ。もしお前がこの部屋から出て
逃げようとした場合、私は自害する。何か反抗しても自害する。これは本気だ」
「く・・・おのれ・・・」
ピッコロの顔に、脂汗があふれ出てくる。神様はじりじりと近づいてくる。
ピッコロは逃げられない。逃げたら死ぬ。逃げなくても死ぬ同然。打つ手がない。
神様は再び、ピッコロの身体にそっと手を触れる。ピッコロは命乞いをする。
「や・・・やめろ・・・やめてくれ・・・・・・・貴様だって、自分の感情が惜しいだろう!」
神様は、ふっと笑う。
「貴様は私が撒いた種から咲いた、悪しき花。それを摘むことに、なんのためらいがある?
私と貴様が一つになることによって、私の頭と、貴様のパワーを持った、究極の戦士が
誕生するのだ。光栄に思え。貴様がこれまでやってきた悪行も、すべて帳消しだ」
神の奴は、本気・・・。オレはもう逃げられない。ピッコロは諦める。
最後の抵抗をしようにも、卵を産んだ直後。身体が動かない。いや、動いたら死ぬ。
もはや、神様にその身をゆだねるだけ・・・。
「融合後の、基本ベースは私だ。この融合という能力は、私だけの物。悪く思うな。
これで、ドラゴンボールもいずれ復活できる・・・」
神様とピッコロが光に包まれる。二人の身体が重なり、一つの新たな生命体となってゆく。

 

311 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/13 23:02 ID:???
<31話>
ギニュー特戦隊との戦いの翌日。
休息を取っていたヤムチャ達は、夜明けと共に目覚める。
山々に生っている果実等で軽く朝食を取り、ヤムチャ達は出発する。
向かう先はフリーザの宇宙船。地球に現れた、新たな悪の親玉、フリーザ。
ヤムチャ達が「フリーザ」という男について知っているのは、宇宙の帝王の異名を持つこと。
そして、想像できないほどの、すさまじいパワーを持っているということだけである。
いずれも、ベジータからの情報だ。
だが、遠くから感じられるフリーザと思われる人物の気は、それほどのものではなかった。
悟空いわく、「界王拳を全力で使えば、なんとか倒せる程の相手」だそうだ。
悟空の言葉を聞き、未知の存在に恐怖しながらも、意気揚々とフリーザ討伐に向かうヤムチャ達。
悟空という、最も頼れる仲間がいることで、ヤムチャ達の心には余裕が出来ていた。
フリーザの宇宙船までは、一時間ほどで着いた。
円盤型の巨大な宇宙船。周りには、警備の兵士等がうようよしている。
ヤムチャ達は、宇宙船の目の前へと降り立つ。
群がっている警備兵達を一瞬にして蹴散らすヤムチャ達。ヤムチャは、宇宙船に気功波を放つ。
気功波は宇宙船にヒット。大爆発を起こし、バラバラになる。
「ざまあみやがれ」とガッツポーズをとるヤムチャ。
他の仲間は、いきなりやるなよ・・・といった表情でヤムチャを睨みつける。
煙の中から、人の影が出てくる。巨大な気と共に。フリーザだ。
その姿形を見たことの無いヤムチャ達も、その影がフリーザだということはすぐにわかった。
急激に増加した、威圧感。これまでの敵とは、桁が違う。
煙が晴れ、フリーザがその姿を完全に現す。凍るような冷たい目。背は小さめだが
それにそぐわない、とてつもない威圧感。ヤムチャはゴクリと、生唾を飲む。
「私の宇宙船、壊したのはあなた達ですか?私が寝ている間に、よくやってくれましたね」

 

312 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/13 23:03 ID:???
フリーザが口を開く。そして、気功波の構えをとったままの、ヤムチャを睨みつける。
ヤムチャは思う。俺、フリーザを一番怒らせることやっちゃったかもな・・・・と。
「これで私は、自力で自分の惑星に帰らなくてはならなくなってしまいました。
まあ、星の部下に頼めば、恐らく向かえには来るでしょうが・・・。それまでこの辺鄙な星で
生活をしなければなりません。・・・退屈です・・・。とりあえず、あなた達、
私の退屈しのぎのために、死んでもらえませんか?」
激しい憎悪の気・・・。どんどん膨らんでいく。
ヤムチャ達は立っているのがやっと。すさまじい、予想以上のパワー。
悟空だけは、平然とした表情でフリーザを見つめる。
「・・・こいつとは、オラ一人で戦う。おめえ達は手を出さねえでくれ」
悟空はそうヤムチャ達に言うと、ゆっくりとフリーザに向かって近づいていく。
そして界王拳を発動。真紅のあざやかな気が、悟空の身体から放出される。
フリーザの耳についているスカウターが、一気に反応を示す。
スカウターはショート寸前。悟空の気は、さらに上がってゆく。
戦闘力、6000。それが、悟空の戦闘力の計測結果。バーダックを倒した時よりも
強い戦闘力。悟空は、界王拳を2倍まで引き上げていた。
ヤムチャ達は、唖然とする。自分達との、次元の違いに。
フリーザも驚きの表情を見せる。ここまでの戦闘力を持っている奴がいるとは
思ってもいなかったのだろう。
「バーダックや、ギニュー隊長を上回る奴が、この世にいるとは・・・・
予想外でしたよ。今の私を十分に上回るパワーです。すばらしい。
ギニュー特戦隊を倒したのは、あなた達ですね?」
フリーザの問いに、ヤムチャが答える。「そうだ!そしてその隊長を倒したのは俺だ!」と。
ヤムチャの言葉を無視し、フリーザは言葉を続ける。
「そうですね、あなたぐらいなら・・3段階目の力で十分でしょう・・・」

 

313 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/13 23:04 ID:???
そう言うとフリーザは足を肩幅ぐらいに開き、踏ん張った。
隙あり、と思った悟空は、お構いなしにフリーザの顔面へ鉄拳をぶち当てる。
悟空の拳は、フリーザの頬にめり込み、首から上を半回転させるほどの衝撃を与える。
手ごたえは十分だった。悟空は第2撃、第3撃と立て続けに打撃を加え続ける。
その攻撃はすさまじく、離れているヤムチャ達へも、拳圧によって生じた衝撃波が届く。
20発程殴り続けた後、悟空は手を休める。フリーザは、後ろにねじれた首をゆっくりと戻し
薄気味悪いにやけ顔を、悟空に見せる。顔は傷だらけ。だが、ダメージの様子が感じられない。
界王拳2倍を発動しての拳。少なからずともダメージはあるはず。
悟空は、さらに追撃を加えようと、拳を構える。が、その瞬間。
フリーザの眼光が、悟空を刺す。金縛りにあったように、動かなくなる悟空。
フリーザの身体が、どんどんと変化してゆく。ただでさえ、化け物じみていた外見が
さらに、如何わしい身体に・・・。身体の変化に比例して、戦闘力も爆発的に増加してゆく。
余裕のあった悟空の表情にも、曇りが出る。悟空の金縛りが解けた時、目の前のフリーザの
姿は、まったく別の生き物に変化していた。身体を取り巻く気も、桁違い。
悟空は思う。界王拳を、2倍、いや3倍にしてもフリーザには勝てない・・・。
化け物め・・・。悟空の顔に、苦渋の表情が浮かぶ。フリーザはそんな悟空をあざけ笑う。
「さっきまでの勢いはどうしました?私が怖いですか?」
フリーザの拳が、今度は逆に悟空の身体を打ち抜いてゆく。腹部に打撃を受け
岩に叩きつけられる悟空。フリーザはさらに追撃。岩の破片の中でもがく悟空を見つけ
足蹴りで顔面を叩き上げる。ふわっと上空へ上がった悟空の身体に対して
フリーザは手から怪光線を放つ。ヤムチャ達が、その光線の光の筋を視認出来ないほどの
すさまじいスピード。そんな高速のエネルギーの雨を受ける悟空の身体は、瞬く間にボロボロになってゆく。
フリーザは手を休めない。「ヒャア!ヒャア!」と叫びながら、狂ったように怪光線を放ち続ける。
悟空はこのままでは死ぬ。これで2度目の死。もうドラゴンボールでも生き返れない。
助けなければ・・。そう頭では思うヤムチャ達だったが、身体が動かなかった。

 

314 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/13 23:05 ID:???
フリーザの圧倒的なパワーに、反抗する意識を刈り取られてしまったように、固まっている。
頭では思っているのに・・・身体が動かない。
悟空の身体は、空中でボロボロになっている。傷口からは、血がとめどなく流れ落ちている。
かなりの重傷。致命傷を負っているかもしれない。もはや、身動き取れないほどの怪我。
フリーザは、悟空にとどめを刺すための、エネルギーを溜めている。
あれを喰らったら、死ぬ・・・。ヤムチャは、震える足を両手でぐっと押さえ、フリーザに
向かって攻撃をしかける。悟空の命を守るために。
操気弾を放出。フリーザのあたりで右往左往させる。高速で動き回る操気弾。
だが、その動きは一瞬にして見切られ、操気弾はフリーザの右手に包まれ、そして砕け散った。
操気弾の動きが、簡単に読まれそして簡単に潰されるとは・・。
予想していた事だった。操気弾の完全なる敗北という事態。
だがそのことは、ヤムチャの戦意を喪失させるに十分だった。
「ふん、ゴミは大人しくしてろ。後でゆっくり料理してやる」
頭を垂れるヤムチャを尻目に、フリーザはエネルギー波の構えを取る。
すでに地面へと落下して来ていた、悟空に対して。
戦意を喪失していたヤムチャ。他の仲間達を見ると、自分以上に戦意を喪失している。
顔を見ればわかる。もう諦めている。俺がやるしか・・・。
ヤムチャは決意する。そしてフリーザに再度、攻撃を仕掛ける。
操気弾などではなく、文字通りの特攻。
彼の、「ヤムチャ」としての最後の攻撃。
フリーザは、向かってくるヤムチャの方向を向き、目から怪光線を放つ。

ヤムチャは倒れる。心臓に、大きな穴を開けて。
クリリン達は、その惨劇に思わず目を覆う。大の字に倒れこんだヤムチャの身体からは
血があふれ出し、地面はすぐに血の池となった。ヤムチャは動かない。ヤムチャ、死す。

 

683 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/21 00:52 ID:???
<32話>
ヤムチャは死んだ。フリーザの怪光線に心臓を貫かれて・・・。
大量の血を流しながら大の字に横たわるヤムチャの姿を見て、その場の誰もがそう思った。
ヤムチャの行動は、結果的に無駄死にだった。
彼が救出しようとした悟空は、フリーザの魔の手によって再び死の世界へと送られようとしている。
ヤムチャの必死の抵抗も、フリーザの超パワーの前には無力。
だがヤムチャの死は、戦意を喪失していた他の仲間達に、最後の抵抗をするための
勇気を与えた。ここでただつっ立ってるだけじゃ、死んだ仲間に顔が立たない・・・。
クリリン、天津飯、餃子の3名は、フリーザに突撃する。
ふいを付かれたフリーザは、天津飯のパンチを顔面にまともにくらってしまう。
体勢の崩れたフリーザに対して、3人の気功波が降り注ぐ。
体中の気が全部なくなるまで打ちまくってやる・・。3人の気迫のこもった気功波は
大小様々な爆発を繰り返し、地面を変形させ、あたりを爆煙で包んだ。
数分後、気功波連続攻撃はやむ。全身の気を放出し続けてた数分間。
3人の身体には、もはやすずめの涙ほどの気すら残っていなかった。
クリリンは、フリーザの気を探る。気を感じない・・・。
自分達が、気を使い切ったために気を感じられなくなったのか。それとも死んだのか。
3人はしばらく考える。フリーザの姿も爆煙で確認できない。
ひとまず、その場を離れ悟空の介抱に向かうことにした。はやく仙豆を食わせてやらないと。
悟空の倒れている場所までは少し距離がある。はやく行かなくては・・・。
舞空術を使い、悟空の所へと行こうとした時、3人は始めて自分達の身体の変化に気づく。
身体が動かない・・・。まるで毒を盛られたように、しびれている。声も出ない・・。
何故だ・・。クモの糸に捕まった虫のように、身体を動かしもがく3人。
その見えないクモの糸の中心・・・と言うべきか。爆煙の中からフリーザが姿を現す。
「おバカさん達。クモの糸から逃れられますか?はやく逃げないと食べられてしまいますよ」

 


684 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/21 00:52 ID:???
フリーザは両手を上下左右に動かす。すると、それに呼応するようにクリリン達の身体も
上下左右へ。フリーザの超能力。3人はその罠にかかってしまった。
超能力など使わなくても、フリーザは3人を一瞬にして倒すことは出来る。
彼は遊んでいるのだ。自分の宇宙船を破壊された、ストレス解消のために。
(お前達は、私のために一生懸命苦しみながら死ななければならない)
身体の痺れに耐え切れず、クリリン達は苦しみに満ちた表情を浮かべる。
フリーザにとっては、フルコーズの前菜だ。この後手足を段々と吹き飛ばしていき
タレ落ちる血を、食前酒とする。砕け散った肉片をオードブルに並べ・・・。
そしてメインは爆殺。人の何年もの人生が一瞬にして砕け散る。
人間の生命力を原料にした、きれいな、きれいな花火。フリーザはその花火が好きだった。
「まずは、めいいっぱい苦しんでもらいましょうか」
そう言うと、フリーザは両手拳を握り締める。クリリン達の身体に、何かに締め付けられるような
激痛が走る。身体が握りつぶされる・・・。悲鳴に似たあえぎ声が響く。
「ふほほほほhっほっほふぉっふぉfっふぉほほ・・さあ、もっともっと・・・」
口からよだれを垂らしながら興奮するフリーザ。宇宙の帝王とは思えないほどの醜態。
クリリン達の悲鳴は、数分間続く。筋肉は、所々潰され、骨もバラバラにされた。
声を出すだけでも痛い。もう身体も動かない。壊れたおもちゃを前に、フリーザは飽きた。
そして食前酒、オードブルをとばし、一気にメインへと・・・。
「とてもおいしいお料理でした・・・。きれいな花火、お願いしますよ・・・・」
フリーザの手から、3人に対して爆発波が放たれる・・・その時・・・。

ピーッッ・・・。スカウターの警戒音が鳴る。フリーザの耳のスカウター。
警戒レベル、赤。とてつもない危険が、迫っている。スカウターは、さらに反応を続ける。
戦闘力数値が一気に上昇する。周りにいる、何者かの戦闘力が・・。
5000・・・5600・・・6000・・・6800・・・7200・・・。


685 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/09/21 00:53 ID:???
戦闘力7500・・・。フリーザは驚く。かつて、見たことのない数字。
クリリン達に使っている超能力を解き、あたりを見渡す。どさっと地面へ落下する3人。
左右を見渡す。右方向に、ピンク色の光が見える。スカウターの反応は、そこからだった。
フリーザはピンクの光に近づいてゆく。自由になったクリリン達。
3人からも、ピンク色の発光物体の姿は確認できた。彼らはその物体の正体に、目を疑う。
ヤムチャ・・・。その姿はまぎれもなくヤムチャであった。
心臓を貫かれ、息絶えたはずの男。もっとよく見てみる。心臓には穴が開いたまま。
血は止まっているようだが、二つの小さな貫通跡が残っている。
どういうことだ・・・。状況を理解できない3人。だが、同じようなことは以前にもあった。
バーダックに殺されかけた時、ヤムチャは突然不思議なパワーを発揮し、バーダックを撃退した。
正に、今は同じような状況。死から蘇ったという、イレギュラーを除けば。
「貴様・・心臓を貫いたはずなのに生きてるとは・・・。しかも、その戦闘力・・・」
フリーザと蘇ったヤムチャ。両者が対峙する。
ヤムチャは、ふうう・・・と大きく深呼吸をついた後、込めていた気を開放する。
スカウターは、一瞬にしてオーバーヒート。バラバラに砕け散る。
ものすごい衝撃波が発生し、クリリン達は、目を開けていられない。
細目で、蘇ったヤムチャの顔を見てみる。すると蘇った著直後には見られなかった、変化が。
「ヤ・・ヤムチャさんの額に・・・”M ”の形をした紋章みたいなものが・・・・・」
蘇ったヤムチャ。新生ヤムチャと言うべきか。その額には、くっきりと
アルファベットのMの形をした紋章が浮かび上がっていた。これは・・いったい・・・
困惑するクリリン達。が、フリーザだけは落ち着きを取り戻していた。そして笑い出す。
「ふっふっふ・・・そうですか。あなただったのですか。本当に存在していてくれるとは・・・
しかも、こんなに速く めぐりあえるとは・・・。」

「魔の卵」から生まれた「不完全な成体」に・・・。




763 名前:哀・戦士 :03/09/22 00:08 ID:???
<33話>
額に”M ”の紋章が現れたヤムチャ。その戦闘力はスカウターで測りきれない程。
さすがのフリーザも、驚きの表情を見せる。だがすぐに落ち着きを取り戻す。
そして笑い出す。
なぜなら、この蘇ったヤムチャこそ、フリーザが捜し求めていた物だったからだ。
地球に来たもう一つの理由。フリーザ一味が、これからも宇宙の頂点でいるために
必要な存在。それが蘇ったヤムチャ。
「ふっふふふふ。あなたを探そうとしていたんですよ。まったく・・・。
もったいぶらずに最初からその力を出してくれれば良かったのに・・・。」
フリーザがヤムチャに話しかける。ヤムチャ、無視。というより、言葉がまったく
聞こえてないように思える。フリーザは、なおも近づく。
両者の距離が約1メートル程まで縮まった瞬間、フリーザの身体は吹き飛ばされた。
ヤムチャ、攻撃開始。まるで自分のテリトリーに入った者を排除する
戦闘マシーンのように、フリーザをめった打ちにする。悟空を圧倒していたフリーザが
手も足も出ない。すさまじいパワー、スピード。
そして、以前とはまったく違う形相。クリリン達は言葉が出ない。
フリーザは、ヤムチャの攻撃がわずかに止んだ瞬間に、「変身」をする。
フリーザ変身の最終形態。外見がすっきりし、姿も子供っぽくなった。
だが身体をまとう戦闘力は、さっきまでの比ではない。両者の戦いを見ているクリリン達は
フリーザの気の変化がよくわかった。次元の違う戦い・・。これ以上ついていけない。
目で追うのもやっとだった。
変身後のフリーザは、転じてヤムチャに対して猛攻撃を開始する。
手の指から発射される、強力な貫通力をもったレーザービーム。
フリーザは、その殺人的な技を、おしみもなく連射する。すべてがヤムチャに命中。
影も形も残らないはず・・・。


358 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/03 20:31 ID:ggTmj76I
<34話>
ヤムチャ、突然目を覚ます。薄暗く、病院の中のような薄気味悪い臭いがする。
何も見えない。ここはどこだ・・?手足を動かすも、動かない。
どうやら足かせ、手かせによって拘束されているようだ。拘束・・?
ヤムチャは記憶をたどってみる。まず頭に浮かんできたのは、フリーザだった。
あの恐ろしい戦闘力と、雰囲気は忘れようとしても忘れられない。
自分は一度フリーザに殺されて・・・。そこからの記憶があいまいだ。
その後、一度意識を取り戻した気がする。目をつぶって、当時の様子をゆっくりと
思い描いてみる。意識は・・・あいまいだった・・・。横目に、クリリン達の姿がある。
あれ・・・?なんで逃げちゃうの・・?俺を追いてくのかよ!?白状な仲間だぜまったく。
痛い・・顔が痛いよ。口の中、血でいっぱいだ。自分の血ってこんなにイヤな臭いだったか・・
なぜ血が・・・?顔に、何かぶつかってくる。連続で・・。
顔面に衝撃が走り、血が吹き出る。ああ、この辺でまた意識がもうろうとしてきたんだ・・。
顔の腫れで、ほとんど塞がった目。うっすらと敵の姿が見える・・・。あれは、フリーザ。

ヤムチャは口を開け、舌を口の周りにはいずらせる。血の味がする・・。
かさぶたになっているようだが、間違いなく傷の跡がある。かさぶた・・・。相当時間が経っている。
そうだ。フリーザにやられたんだ。一度殺された後、何故か生き返った。
その後、またフリーザにやられて・・・。それにしても、ここはどこだ・・・?

「おや お目覚めですか」

聞き覚えのある、イヤな声。耳に入ると同時に部屋の電気が一斉につく。
視界に入ってきたのはやはりフリーザ。ヤムチャは考える。俺を拘束してるのはフリーザか。
何故だ・・?まさか、俺・・犯されたりしないよな・・・。
フリーザに状況の説明を求めたかったが、あの凍るような目を見ると、声が出なくなった。
「狐につままれたような顔してますね。それにしても驚きましたよ。あなたが
「成体」だったとは。そうそう、あなたのお友達はとっくに逃げていきましたよ。
我々の戦いから、すでに五日程たっています。私があなたをボコボコにしてしまったせいで、
あなたは意識を失ってしまいました。目を覚ましてくれてうれしいですよ・・」



359 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/03 20:33 ID:ggTmj76I
ヤムチャには、フリーザが何を言ってるのかがさっぱりだった。
わかったこと。クリリン達が、自分をおいて逃げ帰ったこと。それくらいだ。
やはり、そうか。白状な仲間達だ。ちくしょう・・・。うっすらと悔し涙を浮かべるヤムチャ。
そんな傷心のヤムチャの両こめかみに、奇妙な機械がささる。
「おうっ」
うめき声をあげるヤムチャ。機械の先端には針のようなものがあり、完全に皮膚を突き破って
体の中へと到達している。「な・・何をしやがる・・・」
ヤムチャは、機械を刺したフリーザの部下に対して問いかける。問いに答えたのはフリーザ。
「これからあなたの体を調べさせてもらいます。と、同時に洗脳もね。
あなたは「成体」としての力は持っているが、まだ自在には使えない様子・・・。
それを完全な状態にしてあげるのです。そして、私の右腕になってもらいます。
きっといい気分で目覚めることでしょう。私の忠実な部下として・・・。
そしてあなたの細胞から生まれた、「成体」の力を持った戦士達と共に、宇宙を制服するのです」
何を言ってるのか、またさっぱりだ。このままだとやばい。そのことだけは本能的にわかる。
ヤムチャは必死で抵抗する。手足の自由を奪っている枷は頑強で、どうやっても破壊できない。
気を開放しようとするも、できない。どうやら抵抗はできないようにプログラムされているようだ。
唯一の抵抗手段は、ただ叫ぶだけ。
「や、やめてくださいよ・・・冗談だよ・・・ね?何やるんだかよくわかんないけど、
俺、普通の人間すよ。ははは。あ、そうだ。地球に住みたいなら、そうすればいいじゃないですか。
俺が仲介役になってあげますよ!ははは。そうすれば、事は円満に・・・」

「スイッチオン」

フリーザが機械のスイッチをポチっと押すと、ケーブルを伝って、ヤムチャの脳に直接
電流のようなモノが流れ込んだ。
「・・・や・・やめてくださいって・・・地球に住みたいんでしょ?だったら・あっ・・
こんな・・・あっ ・・ことせずに、素直に・・あっ なれば・・・あっあっあっあっあっ・・・」
ヤムチャはあえぎ声を上げながら、体を痙攣しはじめた。その様子を見て、にやりと微笑み
部屋を出るフリーザ。



360 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/03 20:58 ID:ggTmj76I
その頃、神の宮殿は絶望的な雰囲気だった。
フリーザとの戦いの後、宮殿へと逃げ帰ったクリリン達。
待っていたのはミスターポポと、精神と時の部屋での修行を終えたベジータとナッパだった。
ミスターポポは、すぐに仙豆を悟空に食べさせた。傷は癒え、命の危険はなくなった。
ベジータは、少し笑いながらこう言った。
「ふふ、今ならうっとうしい貴様らをかたづけるのは、わけないな」
クリリン達が、一斉にベジータを睨み付ける。ほくそ笑むベジータ。
「ベジータ、あんまり心にもない事言うもんじゃないぜ」
隣にいるナッパが、そう言った。ベジータは何も言わない。
クリリンは思った。ベジータの言ったことはまんざら冗談でもない。
精神と時の部屋での修行で、元々強かった2りは、さらに力をつけていた。
ぱっと感じる強さは、自分たちを超えているのは明らか。ベジータにいたっては
悟空にも匹敵するほどの強さを持っているように思える。いや、それはない・・。
そう自分に言い聞かせる。果たして正しかったのだろうか。この二人に、
修行をさせて。いずれ、自分たちの敵のなるかもしれない男達を、わざわざ強く
させてしまって。
ともあれ、悟空は順調に回復していった。
神様が消えていた。クリリン達は、ポポに問う。神様はどこへ行った?と。
ポポは暗い声で答えた。



361 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/03 20:58 ID:ggTmj76I
「神様は戻らない。しかし、きっとみんなを見守っている。きっと力になってくれる」
その言葉を理解できる者はいなかった。神様が消えた理由もわからなかった。
だが、きっと自分たちを見守っていてくれる。その言葉だけで十分だった。
「後は・・ヤムチャさんか・・・」
クリリンがつぶやいた。五日経った今も、ヤムチャの気は感じられなかった。
悟空を助けるため、ヤムチャを見殺しにし逃げ帰ってきた。後悔していた。
フリーザの気も感じられない。とりあえず、地球は安定している。心配と安堵感が同居する不安定な状態。
クリリン達のフラストレーションはたまる一方だった。
さらに5日後・・・。今だにヤムチャとフリーザの気は感じられない。
ポポが突然、クリリン達を呼び出した。ポポも、わずかながら千里眼を使える。
地上に異変を発見したのだ。また新たな敵か・・・?クリリン達は気を引き締めてポポの話を聞く。
地上にて、突然人間が消えるという奇妙な事件が多発しているらしい。
すでに、5000人ほどが犠牲になっているという。

 

410 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/12 22:34 ID:jsj0TK2o
<35話>
ポポの千里眼によって、地上で新たな異変が発生していることが判明した。
たった数日のうちに5000人もの人々が消滅。原因は不明。
「謎の隕石衝突、サイヤ人の襲来、謎の異星人・・そして今回の騒動。地球は・・・一体
これからどうなってしまうのでしょうか・・・!!」
地上波のニュースのアナウンサーが鬼気迫る声でそう伝える。無理もない。
ここ最近の地球の状況はおかしい。まるで、何かに気持ちを惹かれるように悪の勢力が
押し寄せてくる。
アナウンサーは原因不明・・・と言ったが、ポポには今回の異変の、元凶の目星はついていた。
消失事件が起きている時、必ず現場にいる若い男女二人組。おそらくこの二人が犯人だ。
とはいえこの二人組には妙な点があった。5000人もの人々を短期間で殺害出来るほどの
手練れなら、殺害の際かなりの気の放出があるはず。だがここ一週間、巨大な気の放出は
地球上のどこからも見られなかった。これは、ヤムチャとフリーザの気をずっと探っていた
クリリン達から見ても明らかだった。おかしい・・・姿形は人間なのに・・・。
これでは二人組のいる場所を特定できない。ポポは二人組が、また新たな犯行に及ぶ時を
待つことにした。そして二日後、ポポの千里眼が再び地上の異変を捕らえる。
場所は世界第二位の都市、ペッパータウン。かなりの被害が予想される。
クリリン、天津飯、餃子。ナビゲーター役としてミスターポポ。戦士達は現場へと急ぐ。
「面白そうだ」とベジータとナッパの二人もついてきた。療養中の悟空は宮殿で待機。
10分後、現場へと到着する一行。町の住民はすでに消滅した後だった。
残っているのは住民の物と思われる服のみ。二人組はどこだ・・・。ポポが千里眼を発動する。



411 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/12 22:34 ID:jsj0TK2o
「あっち・・・二人組が暴れてる。かすかに気のみだれもある」
悲鳴が絶えず鳴り響いている町の一角。クリリン達が目にしたものは、無惨にも
跡形もなく消滅してゆく人々の姿、そして二人の悪魔だった。
道を逃げまどう人々に対し、手を触れる二人。するとみるみるうちに触れられた人の
体が消滅してゆく。わずか一分ほどのうちに、その場にいた十数人が消え去った行った。
二人組がクリリン達に気づく。
「まだ、人が残ってたんだ・・・。おい18号。次はどんな方法で殺る?」
「そうだね・・・あれいいんじゃない?車でひき殺すやつ」
振り返った二人組。その正体は、若く、あどけなさも残る少年と少女だった。



412 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/12 22:35 ID:jsj0TK2o
振り返った二人組の女の子・・・。クリリンははっと思い出す。
あの時・・・ドラゴンボールを探していた時、町で出会った子・・俺が一目惚れした娘だ・・・。
間違いない。あの青い瞳、きれいな金髪。俺が一目惚れした娘。それが、何故・・・。
「お・・おまえ達は何者だ?」
クリリンが震える声でそう問いかける。
「その質問には私が答えよう」
瓦礫の山の中から老人が現れる。
「私の名はドクターゲロ。近い将来、世界の頂点に立つであろう男だ。
そして、この者達はその私の野望を手伝ってくれている人造人間。いわば私の子供達のような
ものだ」
「俺は17号、こっちは18号。ドクターゲロ様によって作られた人造人間の中でも
もっとも高い戦闘力を誇るんだ」
17号が笑いながらそう言った。
ドクターゲロ・・・。聞いたことがある。クリリンは記憶を思い返す。そうだ。
ブルマの父、ブリーフの昔話に出てきた。昔レッドリボンに雇われていた科学者。
何故、今頃になって・・。だがクリリンにとって、ドクターゲロの事などどうでも良かった。
自分が一目惚れした相手が、なんでこんな奴の・・・。悔しい気持ちでいっぱいだった。
「おまえ達の目的は・・・?」
クリリンが、今度は怒りに満ちあふれた声で問う。
「目的か・・・。さっきも言った通りだ。私は世界の頂点に立つ。おまえ達にも
その糧となってもらうよ・・・」



414 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/11/12 22:37 ID:jsj0TK2o
その頃、フリーザの宇宙船では・・・
「あっあっあっ・・・」
ヤムチャに対する洗脳は一週間続けられた。機械の動きが止まり、ヤムチャは起きあがる。
フリーザが部屋へと入ってきた。ヤムチャの顔をじろじろ見つめる。
「フリーザ様、お久しぶりでつ。僕、いい気分でつ」
ヤムチャの口調が変わった。そしてフリーザに対する感情も。どうやら洗脳はうまくいったようだ。
「ほっほっほ ヤムチャさん、あなたはイイ子ですね。よし、これからあなたをテストします。
ついてきなさい」
「はい、フリーザたま」
カルガモの子が親について行くように、ぴったりとフリーザの後ろについて行くヤムチャ。
今度の部屋は、まるで闘技場のように広い部屋だ。ヤムチャは部屋の真ん中に一人取り残される。
前方のシャッターが開き、中からは巨大な獣が現れた。
「ヤムチャさん、あれは宇宙1凶暴と言われている魔獣、ヤコンです。今からあなたに
あれを退治してもらいます。いいですね?」
「は・・はい、フリーザたま」
フリーザがヤコンにテレパシーを送る。ヤムチャと同じく、洗脳によってフリーザの
意のままに動く魔獣ヤコン。フリーザは命令する。目の前の男を殺せ・・・と。
ヤコンはその命令を忠実に遂行する。棒立ちするヤムチャの土手っ腹に、図太い爪が突き刺さる。
「う・・・うげぇっ」
血を吐き、悶絶するヤムチャ。するどい爪はヤムチャの胴体を軽く突き破っている。
痛みで身動きの取れないヤムチャを、ヤコンはぶんぶんと振り回す。
ボロぞうきんのようになったヤムチャは、部屋の壁に叩きつけられた。
「・・・い・・・痛い・・・ん・・?し、死んでない・・・。なんでだろう・・・・・」
ヤコンの爪によって作られた傷跡は深かった。だが血はすでに止まっている。
それどころか、傷跡はみるみるうちに塞がり、痛みも消えていった。
「ふふふ・・・やはりあなたの体には、成体としての力が宿りつつあるようです。
いい傾向ですよ・・・ふふふ」
フリーザが不気味なうすら笑いを浮かべながら、そうつぶやいた <つづく>

654 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/06 21:55 ID:4wl3WNX2
薄暗い、体育館ほどの広さの一室で対峙する一人と一匹。
ここはフリーザの宇宙船内部の闘技場。普段は、フリーザが宇宙で拾った戦士達同士を
戦わせ、血と肉の飛び散る様を楽しんでいる場所だ。宇宙の星々を制服するのが趣味の彼の
唯一の娯楽。それがこの闘技場での殺人試合。
洗脳をほどこされ、完全にフリーザの配下と化したヤムチャ。同じく洗脳によって
フリーザのペットと化していた宇宙1凶暴な魔獣、ヤコン。両者は、お互いを殺せという
指令をフリーザから受けていた。ヤコンの巨大な爪によって、腹部を貫かれたヤムチャ。
勝負はあったかと思われた。だが、ヤムチャの傷は、みるみるうちに癒えていく。
痛みもない。ほんの一分ほどで、深々と貫かれたはずの傷は、塞がった。
ヤコンはさらに攻撃を続ける。大木のような腕。その先端の鋭い爪。ヤムチャを襲う。
するとどうだろう。ヤムチャは、先ほどとはうってかわり、軽快な動きでヤコンの攻撃を
かわしていく。その額には、再び「M」の文字が浮かび上がっていた。
「ブゥウウウウウウウウウウウウッッ!!」
奇怪な声を発しながら、今度はヤムチャがヤコンを攻撃する。
「M」の紋章の浮かび上がったヤムチャ。通常の何倍もの力を発揮することができる。



655 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/06 21:55 ID:4wl3WNX2
理由はわからない。だが、その実力は本物で、宇宙1凶暴な魔獣、ヤコンでさえも
その圧倒的な速さの攻撃についてゆけず、ものの三分で肉片へと変わっていった。
壁や床一面真っ赤に染まった薄暗い闘技場に、一人たたずむヤムチャ。
下を向いた顔から、うすら笑いをし曲がっている口がかすかに見える。
戦闘力は7500を超えていた。フリーザの、最終変身時に匹敵する強さ。
そんな事実を知っても、フリーザは笑いを止めない。自分を超えるかもしれない
存在が現れたというのに、むしろ喜んでいる。宇宙の帝王のプライドはないのか・・・。
そばにいる兵達は、フリーザの変貌ぶりに驚きを隠せない。
「これは、宇宙全土を征服するという私の野望において、重要なことなのです。
彼・・・。そこに一人たたずんでいる彼の力無くしては、宇宙征服はなせない・・・。
魔神は存在している・・・。そしていつその驚異が私の所へ来るかはわからない。
対抗する術は、私にはありません。だから同じ力を持った彼の力が必要なのです・・・」
フリーザの独り言。兵達はさっぱり理解できない。



656 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/06 22:40 ID:4wl3WNX2
ヤムチャが洗脳を受けていた頃、クリリン達は、新たな敵勢力、人造人間軍団と対峙していた。
人造人間は、若い男女二人組だった。クリリンが以前町で出会い、一目惚れした
女の子。彼女の姿もあった。17号と18号。ドクターゲロによって作られたという
両者。ゲロは、この二人を使って、世界を自分の物にしようとしているという。
悪人の典型的なパターンだ。許せない。町の住民を、殺したこともそうだが
自分の一目惚れした相手が、こんなことをするなんて・・・。クリリンの純情な心に
火がつき、そして怒りの心へと変わっていった。そんな少年の純情な心などいざ知らず
ドクターゲロは、人造人間二人に指令を発する。目の前にいる邪魔者を排除せよ・・と。
「はい ドクターゲロ様」
自分を作った親に対して誠意でいっぱいなのだろうか。素直に、言うことを聞く二人。
ゲロの、悪魔のような命令によって、どれだけの命が奪われたのだろう。
瓦礫の山を、踏み台に人造人間二人が飛びかかってくる。
こちら側は、ベジータとナッパを入れて6人。数の上では圧倒的に優位だ。
だが、気を感じられない二人の強さは、検討もつかなかった。まずは、奴らの動きを見て・・・
そう考えていたクリリン達。動きを見る・・・。・・・見えない・・・。
クリリン達の周りを、二人は右往左往に飛び回る。そのスピードに、クリリン達はついていく
のが精一杯だ。気は感じられなくてもわかる。実力は桁違い。
「ふっふっふ・・。なかなかやるじゃないか。なぁナッパ?」
「え・・・?あ・・・あぁ・・・まあな」
余裕の表情なのはベジータ。クリリン達とは、少し離れていた場所に陣取っていた彼には
全体の動きがよく見えていた。精神と時の部屋で修行をしたサイヤ人の王子には
さほどすさまじいスピードには見えなかった。
ナッパの実力は人造人間達より劣っているようだ。動きを追うのが精一杯だった。
高速で飛び回る二人に、振り回されているクリリン達。遊んでいるのか・・・。
なんで攻撃してこない・・・・。クリリンが不思議に思っていると、後ろからうめき声が。
天津飯の声だ。振り返ると、17号に首根っこを捕まれてもがいている天津飯の姿が。
隣では餃子が、同じような体勢で、18号に首根っこを捕まれていた。



670 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/07 21:15 ID:D5JAyb42
>>656
もがく天津飯達。だが、じたばたと抵抗していた足は次第に静かになり
座っていた首も垂れてしまった。二人から、気がほとんど感じられない。
クリリンは焦る。だが何も出来ない。「やめろ」と声を発する事ぐらいしか・・・。
「こいつらのエネルギーはもらったよ」
そう言うと、17号は天津飯を離し、体を放り投げた。白目を剥いてピクリとも動かない
天津飯。餃子も同じ状態だった。気を吸い取る能力・・・。そうか・。町の人達もこれで・・。
抵抗力のない一般市民の体は砂のように崩れ落ちてしまうのか・・。
恐ろしい能力だ。一人残されたクリリンはそう思う。
「次はお前の番だよ・・・」
無惨にもやられてしまった二人の仲間を見て、クリリンは一瞬我を失ってしまった。
17号の言葉が耳に入った瞬間。クリリンは意識を失う。スキありと見た17、18号の
二人が、一瞬のうちにエネルギーを吸い取ったのだ。倒れゆくクリリン。
二人の人造人間は、うすら笑いを浮かべる。
「面白い・・・。貴様らのような人形、俺一人で片づけてやる」
次の相手はベジータ。戦闘好きなサイヤ人の血が騒ぐのだろうか。強敵の出現に
むしろ喜ぶように、意気揚々と戦闘力を開放する。そんなベジータを見て17号は近くに落ちていた
石を拾って、空高く放り投げた。
「地面に落ちたら、それが合図だ。いい戦いをしよう・・」
まっすぐに地面へと落下していく石を見ながら、ベジータはさらに戦闘力をアップしていく・・。



673 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/07 21:38 ID:D5JAyb42
人造人間達との遭遇から一週間後。
クリリン達、エネルギーを吸い取られた三人は宮殿へと戻り眠り続けていた。
動けなかった三人を、ナッパが運んできたのだ。
ベジータは、この一週間機嫌が悪い。楽しいバトルをふいにされたからだ。
人造人間達と、ベジータは戦わなかった。落下していく石が、地面へ到達する直前
18号の調子がおかしくなったという。突然腹痛を訴えはじめ、その場にしゃがみこみ
苦しみ出す18号。ドクターゲロは、これは一大事だと叫び18号へとかけよる。
そんなことはおかまい無しと、ベジータは戦闘を開始しようとするも
17号にバリヤーのようなものを張られて近づけない。
「勝負はおあずけだ。ベジータ」
17号はそう言い残し、ゲロと共に苦しむ18号を抱えて空へと消えていった。
突然の出来事に、興をそがれたベジータは憤怒する。そんな王子をなだめるナッパ。
倒れ込む3人を抱え、宮殿へと戻ってきた。そして一週間。ようやく三人の意識が戻る。
死の直前の状態まで、気を吸われていた三人。回復するのにもそれなりの時間がかかったようだ。
「気がついたか クリリン」
ゆっくりと目を開けるクリリンに、ミスターポポが声をかける」
「ポ・・ポケット・・・」
「何だ・・・・?」
「ポ・・・ポポさん、俺の胴着のポケットの中、調べてみて・・。なにか入ってるはず」
「わ・・・わかった」
寝ぼけてるのか・・?と思いつつも胴着の中を調べるポポ。ポケットの中には
手のひらサイズのビデオテープが入っていた。これがクリリンの言っていた物なのだろうか。
「18号から渡されたテープだ・・。あの時・・・エネルギーを吸われる直前。
耳元で一瞬ささやかれたんだ。「助けて」って。そして瞬間的にポケットに何かを入れられた。
18号・・・いや、あの二人の人造人間には何か秘密があるんだ」
ベットの上で、真剣な表情で語るクリリン。クリリンと同じく意識を取り戻した天津飯、餃子
そしてフリーザから受けた傷を完治させた悟空もやってきた。



674 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/12/07 21:52 ID:D5JAyb42
「きっと、18号が俺に・・・いや誰かに助けを求めているんだと思う。
そしてそのメッセージが、この中に入っているんだ」
握りしめたビデオテープを見ながら、クリリンはそう言う。
天津飯は、少し疑いの目で見ている。クリリンの話は信じたいが、町の人々を殺し
自分たちにまで攻撃してきたあの二人が、助けを求めているなどばからしい。
そんな表情だ。
しばらく誰も口を開かない思い雰囲気を、悟空の一言が切り裂いた。
「なあ、とりあえずそれ見てみようぜ。わかんねえよオラ」
宮殿にビデオデッキなどもちろんない。悟空達は、事の真相を確かめるため
ビデオデッキを探しに下界へと向かう。


「さて・・ヤムチャさん、あなたも本来の力を取り戻しつつあるようです。
ここで、私の本当の片腕として働いていけるかどうかのテストをしましょう。いいですね?」
「はい フリーザたま」
「まあテスト等不要などですが、そのほうが面白いですからね。地球の邪魔者を
ついでに始末できますし。相手は、あなた達の以前の仲間です。さあ、行きなさい」
「な・・仲間・・・?」
「カカロットとかいうサイヤ人と、その仲間の地球人!今すぐ殺してくるんだぁ!」



426 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/24 16:52 ID:9NTZYfmg
<36話>
人造人間達との戦いの後、18号からクリリンに託された一本のビデオテープ。
地上へ降り、ビデオデッキにテープを差し込むクリリン達。
テープには恐るべきドクターゲロの人類補完計画が記されていた。
テープには、ドクターゲロの研究室が写されていた。撮影しているのは恐らく18号だろう。
ゲロの留守を狙って、撮影したに違いない。ゲロの計画を打ち砕いてくれる強者に渡すために。
研究所の中心部には、巨大な円柱型の水槽が。様々な機器が装着されており、何かを培養する装置のように見える。
水槽内には、小さなセミのような生物が浮いていた。これはなんだ・・・。人間・・?昆虫・・・?
18号はその生物を指差しながら説明する。この生物の名はセル。ドクターゲロが生み出した
史上最悪の生物・・。ドクターゲロが、約20年かけて原型を作り出した化け物・・。
20年前、地球に落着した例の隕石を調査してる時のこと。ゲロは落着現場である細胞を発見する。
あたりにいる小さな虫等の生体エネルギーを吸って、少しずつ大きくなっていくその細胞。
姿形はまるでアメーバのようだった。およそ生物とは言えない形だったが、意志をもつのか。
あるいは本能のままに行動しているのか・・。延々と捕食活動を繰り返し、巨大になっていく。
ゲロはひらめく。この細胞を利用し、生体エキスを吸うことによって延々と強大な力を増幅することの
できる生物を作り出せたら・・。そしてその際の餌は人間。低俗な一般市民どものエキスを
吸い取る事によって、無駄な人口を減らし、強大な神を作ることが出来る。一石二鳥。
それから20年。ゲロはようやく「セル」の原型を作り出す事に成功する。後は人間の生体エキスを
集めるだけ。



427 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/24 16:53 ID:9NTZYfmg
そこでゲロは生体エキスを集める兵を製造する。それが17号、18号の2体だ。
最強の人造人間達は、最強の生物を作り出すために人間を駆逐しはじめた。殺した人間の生命力を
拳から吸い取り、それをセルの入っている水槽へと注入する。その作業が行われるごとに
セルの大きさは巨大になっていき、そして力も増していくのだ。だが二人の人造人間は知ってしまった。
最強の生物を作る計画に必要な人間・・。その中に自分達二人も入っているということを。
セルの完全体が完成するためには、2体の人造人間のエキスも必要だった。ゲロは自分の野望のために
18号達に人殺しをさせ、あげくの果てに殺してしまおうと考えていたのだ。元々ゲロに誘拐され
勝手に改造された17、18号の二人はゲロに不信感を抱いていた。二人はセルを作り出すために
ゲロに協力していると見せかけ、裏ではゲロを倒す計画を練っていた。だが、二人にはあるプログラムが
組み込まれていた。



428 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/24 16:55 ID:9NTZYfmg
ゲロに対する反逆行為を禁ずるプログラムである。そのプログラムが脳内にある限り、二人はゲロを
攻撃することは出来ない。むろん、水槽内の不完全なセルを破壊することも不可能である。
もっともそのプログラムも不完全なもので、二人に反逆行動を封じることは成功するも
思考回路までは支配することが出来ていなかった。つまり、二人は反逆行動は出来なくとも
策を練ることは可能なのだ。
テープはこんな18号の言葉で綴られていた。私達の代わりに、ゲロの野望を打ち砕いてくれる
方々、人類のため地球のためにどうか立ち上がってください・・。その時、私達はあなた方の敵となって
立ちはだかる事になります。その時は、容赦なく破壊してください。それが、私達の望みなのです・・・。
テープは約20分程で終了した。内容を確認した者達の反応は様々だった。
よく理解出来なかった者、また敵が増えるのか・・・と落胆の表情を見せる者。
そして惚れた女の悲しい過去、現在の悲惨な状況に怒りと憎しみを覚える者・・。そう、クリリンである。
18号に一目ぼれしていた彼は、ゲロに対する怒りを抑えるのに必死だった。
わずかな気のみだれに気づいた悟空が、クリリンに話しかける。
 「よ、よくわかんねえけどさ、まあ落ち着けよクリリン。オラ達でなんとかしてやれるだろうからよ」
いつものあっけらかんとした感じでクリリンをなだめ、肩をポンと叩く悟空。しかしクリリンはその手を
払いのけ、一人立ち上がる。



429 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/24 16:56 ID:9NTZYfmg
「皆は手を出すな。ここは俺一人で片付けてみせる。18号から直接テープを託されたのは俺だ。
 俺一人でやらなくちゃいけないんだ」
 「お・・・おいおい。あの人造人間二人の力をお前も見ただろ?自分達が望んでいないとはいえ
 あの二人にはゲロを守るというプログラムを組み込まれているはず。どうするつもりだ?」
 「関係ないね。それでもオレはやる。そして18号を普通の女の子に戻してあげるんだ!」
恋心に乗せられて、一人先走るクリリンとそれを必死でなだめる天津飯達。
展開にうまくついていけない悟空が、クリリンをからかい、天津飯が逆効果だろ!と悟空を突っ込み
そんな3人をボーっとみつめる餃子。その場はしばらくなごやかな雰囲気に包まれた。
だがそんな貴重な時間を切り裂く、刺客が接近する。接近する敵の気に気づいた悟空達。
テープを見るために勝手に借りていた民家を急ぎ後にし、神の宮殿へと戻る。
当然追ってくる刺客の気。弱弱しく感じられるが、暴走する力を必死に押さえ込んでいるような・・
そんな不気味な感じの気。しかし、少し懐かしい感じの気。悟空達はとまどいながらもある疑問を
感じ始めた。この気は・・・敵じゃない・・・。この気は、俺達の仲間・・・。でも悪意を感じる。
まさか、あの人がそんな・・・。
神の宮殿へと到着した悟空達。到着と同じに戦闘態勢を整える。気はもうそこまでせまっていた。
「ヤムチャ・・・」
悟空がふとつぶやく。ヤムチャの気だ・・。クリリン達も、その言葉にはっとする。
そうだ・・。ヤムチャさんの気だ・・。戻ってきた・・。生きていてくれた・・・。
神の宮殿に颯爽と現れた二つの影。迫り来る謎の気の正体だ。二つの影の一つ・・。
構えをとる悟空達の目の前へと降り立つ。
風で揺れる長髪・・・。青龍刀。樂の文字の胴着・・・。ヤムチャ復活・・・!?


454 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:40 ID:GOouihuo
<37話>
クールな目つきに、渋い長髪。「樂」の胴着に青龍刀。どこからどう見てもその男はヤムチャだった。
だがかつてのクールな目つきは、どす黒い悪の視線へと変わり、さらさらだった長髪も
汗でべとつき、汚らしくなっていた。明らかに、ヤムチャ。だが明らかに今までのヤムチャと違う。
「Mの紋章だ・・・」
クリリンがつぶやく。そう、突然舞い戻ったヤムチャの額にはあの「M」の紋章が浮かび上がっていたのだ。
以前は、ヤムチャが謎の力を発動する時にしか浮かび上がらなかった紋章。それがなぜ・・。
フリーザに拉致されてからの約二週間あまり・・。彼に何が起こっていたのだろうか。
そんなことはいざ知らず、仲間の帰還に喜ぶ孫悟空。上空で待機したままの、フリーザ軍と思われる
戦士の姿は気にはなったものの、たいした気は感じられない。
「ヤムチャ!心配してたんだぞー 一体今まで何やってたんだ?」
いつもの調子でヤムチャに話しかける悟空。ヤムチャ、返答せず。さすがの悟空も不信感を覚える。
「ヤムチャさん・・・ なんか、いつもと感じが変すよ・・・。せっかく戻ってきてくれた所悪いけど
 それに、仲間の前なんだから、いいかげんにその敵対心に満ちた気を抑えてもらえないですかね・・・?」
と、クリリン。彼は薄々気づいていた。目の前にいる男は、もはやかつての気さくなヤムチャではない。
何があったかはわからないが、悪に傾いてしまった様子。そして、「M」の紋章。
あの紋章を発動させたヤムチャの戦闘力を知るクリリンは、悟る。今の状況は、仲間同士の感動的な
再開とは程遠い、危険な状況だということを。


455 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:40 ID:GOouihuo
「フリーザたまの命令。おまへタチを殺しニ来た」
ヤムチャ、突然口を開きかつての仲間に宣戦布告。同時に自らの戦闘力を開放。
すさまじい戦闘力は、爆煙と音速並の衝撃波を作り出し、悟空達と宮殿の建造物を吹き飛ばした。
立ち上がる悟空達に、ヤムチャは容赦なく襲い掛かる。一番手はもっとも手前にいた天津飯。
ヤムチャの突進を、両腕でガードする。しかし、ガードはいとも簡単に破られ、まわりには血しぶきが飛ぶ。
ガードした両腕がえぐられてッッ・・天津飯の両腕の大半の肉は、ヤムチャの拳によってえぐりとられていた。
我が眼を疑う天津飯。自分の腕にしか意識を集中できていない。スキだらけの頭部上空。
弓のようにしなるヤムチャの右足。猛烈な勢いのカカト落としが天津飯の脳天に直撃する。
重力が逆転したかのように、反転する天津飯の身体。そのまま顔面から宮殿の床へと落ちる
顔の半分がめり込み、ピクリとも動かない天津飯。同時にその気も途絶える。

456 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:41 ID:GOouihuo
指についた血をペロっとなめ、にやりと笑うヤムチャ。残りの悟空達3人の顔を順に睨みつける。
クリリン、餃子、その戦闘力に身動きすら出来ず。餃子にいたっては、天津飯が一瞬のうちに
無残な姿に変わってしまったショックを隠しきれない様子。二人とも戦意喪失と同状態。
「二人とも手ぇだすな。ヤムチャ・・・いや、こいつはオラがなんとかする」
ヤムチャの恐るべき戦闘力を目の当たりにした悟空。自分以外の者では太刀打ちできないと悟る。
界王拳発動。真っ赤なオーラが、悟空の身体から吹き出す。死の淵からはいあがることで
戦闘力をアップさせることが出来る、サイヤ人の特性のおかげだろうか。フリーザに半殺しにされ
回復した悟空は、それ以前よりもパワーをアップさせていた。


457 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:42 ID:GOouihuo
「以外と強くなってたみてえだ・・今の界王拳は五倍ってとこか・・・。ヤムチャ、覚悟しろよ
 悪いが手加減はできねえ。おめえが天津飯に手加減しなかったようにな・・・」
向かい合う悟空とヤムチャ。一見怒りに満ちているように見える悟空だったが、わずかな笑みも見える。
強い者と戦うことが出来ること・・それが一番の喜び。サイヤ人の本能がうずくのだろうか。
この戦いを、心の中では喜んでいる。そんな遺伝子を持つ男が、宮殿内にもう一人いた。
「くっく。なにやら面白いことになってるじゃないかカカロットよ」
「ベジータ・・・」
どこからともなく現れるベジータとナッパ。どうやら宮殿内で睡眠をとっていたようだ。
眠りを妨げられた二人は、かなりご機嫌斜めな様子。
「俺にやらせろカカロット。事情は知らんが、今はフリーザの手下なんだろ?こいつは。
 このヤムチャってのには借りがある。丁度いい機会だ・・・」
体中の骨をポキポキならしはじめるベジータ。やる気満々である。ちぇ・・と舌打ちをする悟空。
そんな二人に対して、同時にかかってきてもいいぞ・・と言わんばかりに、指で挑発するヤムチャ。
ベジータの頭の毛細血管が、三本ほどぶちきれた。眉間にしわをよせ、 一歩前へ出る。
「ナッパ、貴様は引っ込んでいろ。貴様がかなう相手ではな・・・グォッ!」
ナッパの身を案じたベジータ。その身体は一瞬にして吹き飛ばされる。油断大敵とはこのことである。
怒りに我を失ったベジータのガラアキのどてっぱらに、ヤムチャの正拳が突き刺さる。
スピード、パワー、技の切れ。全てにおいて文句なしの見事な突き。間近で見ていた悟空は
その美技に惚れ惚れとしている自分に気づく。見事だぜ・・・。けど、オラあれ止められっかな〜・・



458 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:44 ID:GOouihuo
ひゅん、ひゅんと風を切る音がする。衝撃波が、悟空の顔をかすめ切り傷を作る。
ベジータを一撃で叩きのめしたヤムチャの突き。次のターゲットは孫悟空。悟空は、自分の顔面に
狙いを定めるその音速の拳を、紙一重のところでかわしていく。受け止めたら、その腕が破壊される。
かわすしかねえっ。防戦一方である。攻撃の糸口が見つからない。だが、攻撃は最大の防御。
一矢報いなければ、このままやられるっ・・・。まずは界王拳で、この場を少し離れて・・・。
ずんっという衝撃が悟空の身体に走る。同時に、ぐらぐらと揺れる目の前の世界。
腹・・を膝蹴りされた・・。とてつもなく、重い一撃。意識ごと、命まで押しつぶさらんばかりの
一撃・・。だが、界王拳で身体を強化していた悟空には、わずかに浅い一撃だった。0.5秒ほどで
意識を取り戻した悟空は、自分の顔を狙ってくるヤムチャの拳を見極め、それを受け止める。
ドスンという音と共に、悟空の腕にしびれにもにた衝撃が走る。続くヤムチャの攻撃。
悟空は、これも受け止める。両者は組み合った状態になり、一歩も譲らない。次第に上がっていく戦闘力。
両者が陣取る床は圧力で押しつぶされ、沈んでゆき、風のカーテンが、両者を包み込む。
フィールドに入る者全てを切り刻む勢い。次元の違う戦いに、ナッパ、クリリン、餃子は言葉も出ない。
「す、すげえパワーだ・・・。界王拳五倍の力が、押しつぶされるッッ・・!」
歯を食いしばり、ヤムチャのパワーに負けじと、必死に食い下がる悟空。


459 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:44 ID:GOouihuo
ヤムチャ、にやりと笑うと腕に入れている力を一気に倍増させる。悟空の腕へ、すさまじいエネルギーが
注がれる。ゴキッという鈍い音・・・。妙な方向へ曲がっている悟空の両腕。そして悲痛な叫び・・・。
いとも簡単に悟空の腕を破壊したヤムチャ。均衡の破れたフィールドはとけ、あたりは一瞬静けさを
取り戻す。と、同時に現れるベジータ。悟空のピンチを救うわけではない。自分に屈辱を与えた相手に
一矢報いるため、突撃する。打撃の連打。そして首筋への蹴り。並の相手なら首が消し飛んでいる。
だが、ヤムチャは仁王立ちしたまま。ものともしていない。愕然とするベジータ。冷や汗が垂れ落ちる。
その首元に、今度はヤムチャの右足蹴り。再び吹き飛ばされたベジータの身体は宮殿の床にぶつかり
3、4回 バウンドを繰り返す。悟空が・・・ベジータが・・・。
地球に存在する生物の中で、一番と二番の実力を持つ者がいとも簡単に敗れる。
もはや、この世のどんな生物も対抗できない。ヤムチャに・・・。かつての仲間に・・・!
折れた両腕の痛みに耐える悟空を蹴り飛ばし、ヤムチャはクリリン達の元へと近づく。
一瞬でやられる。悟空達のように、身体にも触れることなく、一瞬で。下手すれば肉片に変えられる・・。


460 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:45 ID:GOouihuo
抑えきれない恐怖がクリリン、ナッパ、餃子を襲う。発狂まじりの奇声を発し、エネルギー波を
一心不乱に撃ちまくるナッパ。すべてがヤムチャに命中するも、煙の中から現れるヤムチャは無傷。
絶望・・・。死・・・。ヤムチャは突然上空へと飛び上がる。真下のクリリン達を見つめながら
あの技の構えを。
「か・・・かめはめ波・・・!?」
すさまじいエネルギーが収束されていく。この宮殿含め、半径10キロ以内にある物体は
影も形も残さない程の・・・そんなすさまじいエネルギー。
「コレでオワリだ・・・・・!」ドオオオオォォォン・・!!
轟音と爆煙が、クリリン達に降り注ぐ。すごい音と衝撃波だ・・・。やっぱり、とんでもない威力だった。
って、あれ・・?なんで俺の意識は・・・。クリリンは、つぶっていた目を開けあたりを見渡す。
そこには、先ほどと同じような光景。悟空が痛みに耐え、餃子は恐怖で目が点になっている。
ヤムチャは・・。ヤムチャのかめはめ波はどうなったんだ・・・。状況を理解できないクリリン。
「ずいぶんと危なかったが、なんとかなったようだ。俺に感謝するんだな・・・」
聞き覚えのある声が、背後から聞こえる。はっと振り返るクリリン、悟空、餃子。神様・・・?
いや、ピッコロ・・?行方不明になっていた神様に、そしてその分身であるピッコロ大魔王にもそっくり
両方を足して割ったような戦士がそこにいた。一体何者だ。クリリンは尋ねる。
「名などない。本当の名も忘れてしまった・・・。かつて神だった・・そしてピッコロ大魔王でも
あった男とだけ名乗っておこう・・・」
??? どういうことだろうか。ピッコロでもあり、神でもあった男。
つまり、分裂していた両者が、再び融合した姿なのだろうか。クリリン達は強引に結論を出す。
「よ、ようするに、神コロ様ってことかい・・・?」
悟空が尋ねる。その男は、少し顔をしかめながら言う。
「ふん、どうとでも呼ぶがいい。詳しい説明は後だ。ヤムチャか・・。初めて会った時から
何か不思議な感じを覚えてはいたが・・まさかこんな風に化けるとはな」
そうつぶやく神コロ様の前に、ヤムチャが姿を現す。肌が多少焼け焦げている。神コロ様の気功弾を
受けて傷を負ったようだ。かめはめ波が発射される直前、神コロ様が放った気功弾がヤムチャを捕らえた。


461 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:46 ID:GOouihuo
体勢を崩したヤムチャはかめはめ波の発射を中断する。クリリン達は、万死に一生を得たのだが・・・。
ヤムチャの傷は、みるみるうちに回復していった。約30秒後。焼け焦げ、ただれていた皮膚は
元のきれいな皮膚に戻っていた。普通の人間では考えられない治癒能力。神コロ様はごくっとつばを飲む。
「人間ではないのか・・。わからん。だが、さすがの俺でも敵う相手ではないかもしれないな・・・」
そう言うと、神コロ様は懐から小さなビンのような物を出し、床へと置いた。大魔封じと書かれた
小さなビン。皆の注意が、そのビンへと向く。神コロ様、目から眼光を発射し、ヤムチャの動きを封じる。
かなしばりの術だ。魔と聖の神の合体神。さすがに技のバリエーションも豊富だ。
しかし、ヤムチャのパワーは、神コロの技を上回っていた。ほんの5秒ほどで、かなしばりから抜け出す
ヤムチャ。と、同じにヤムチャの身体を再び神コロ様の技が抑える。うずまき状の衝撃波。
必死でもがくヤムチャ。先ほどのようにうまくは抜け出せない。
「見たところ、貴様には何者かが取り付けたと思われる悪の精神が住み着いている・・・
 それを取り除いてやる。この私の魔封波によってッッ・・・!」
魔封波の中、絶叫するヤムチャ。苦しんでいる。悟空やベジータを簡単に倒した男が
苦しんでいる。体中の血管を浮き上がらせ、気を集中する神コロ様。それを見つめる悟空達。
「つあっ!」勢いのいい掛け声と共に、神コロ様が一気に攻勢をかける。よりいっそう苦しみだすヤムチャ。


462 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:47 ID:GOouihuo
突然、その身体からピンク色の奇妙なガス生命体が吹き出る。
「出たッ!あれがヤムチャの精神を犯していた悪の源だ・・」
悪の源が抜けたヤムチャは、抜け殻のようにぺたんと地べたに落下する。必死に悪と戦う神コロ様。
数分後、ヤムチャから抜けたガス生命体は、神コロ様の取り出したビンの中に吸い込まれ、封印された。
あたりは静けさを取り戻す。終った・・。ほんの数分間だろうが、異常に長く感じた戦いだった。
悟空達は安堵の表情を浮かべる。上空には、まだフリーザの手下が残っていた。無傷のクリリンが
手下の下へ向かうが、一瞬にして逃げ出す。追いかけようとするクリリンだったが
それを制する神コロ様。そんな小物相手にする必要はない、と大物ぶりを匂わす。
重傷者多数。クリリンはそのまま、カリン塔へと向かい仙豆を人数分取ってくる。
負傷者に食わせるクリリン。命に関わる怪我をした者はいなかったようだ。
しかし、ヤムチャだけは仙豆を食わせても意識を取り戻さなかった。外傷も特にない。息もしている。なぜだ・・。


463 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:04/02/28 21:47 ID:GOouihuo
その頃、フリーザの宇宙船では・・・。

「フ、フリーザ様、ザーボンただ今戻りました・・・」
フリーザは寝起きだった。当然機嫌が悪い。震える手を必死で抑えるザーボン。
「おやザーボンさん。ずいぶんはやかったんですね。それで、残りの抵抗勢力の抹殺には成功したのですか?
ヤムチャさんはどうしたのですか?姿が見えませんが・・・」

「そ・・それが、ヤムチャ氏は敵の術にかかってとらえられてしまいまして・・・。」
「なんですって・・?それは一大事ですね。で、あなたはなぜ戻ってきたのです?見たところ
まったくの無傷で戦闘をした形跡がないようですが・・・」
「そ、そ、それが・・・相手の戦闘力があ、あまりにも強力だったため・・・
まずはフリーザ様にご報告をと思いまして・・・」
「そうですか。しかし、できればそこで一矢報いてほしかったですね〜。敵前逃亡をするような負け犬は
私の部下には必要ないんですよ」

ボンッ
フリーザの寝室に、血と肉片の雨が降った。
「おのれ・・・。何をやったかは知らないが、洗脳を解かれるとはっ!魔の力を失うわけにはいかない・・・」

ところ変わって神の宮殿・・・
仙豆を2つぶ食べさせても一向に動く気配のないヤムチャ。なぜだ・・・。
悪の心は、消し去った。今ここにいるヤムチャは、かつての正義の心を持ったヤムチャのはず。
まさか、魔封波の影響でヤムチャの生命力に影響を与えてしまったのか・・・。神コロは考える。

「その答えは、私がお答えしましょう。かつての地球の神よ」
「あ、あなたは・・・大界王・・・」
「界王神様だ」


 


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