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哀・戦士

 第三部 〜デート

 

 

794 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/13 19:28 ID:???
<第18話>
神様の助けを得て、絶体絶命のピンチから脱出できたヤムチャ達。
だが、孫悟空の傷は予想上に深かった。宮殿に着いた直後、神様はミスターポポに、カリン塔
へ向かえと命令する。カリン塔には仙豆という不思議な豆があり、これを食べればどんな怪我
でも一瞬にして回復してしまうというのだ。悟空は正に一刻を争う状態だった。
神様に、人を治療する能力は備わっていない。あったとしても、ピッコロの攻撃からヤムチャ達
を守って結界によって体力がほぼゼロ。使えるわけがない。餃子の容態は安定しているようだ。
気を失っているだけで怪我もたいしたことはなかった。もう少し、駆けつけるのが遅かったら
やばかっただろう。とりあえずほっと肩を撫で下ろす天津飯。対照的に、悟空は、うめき声を
あげることもなくなっていた。
「神様!!仙豆、持ってきました。残り、3つ。急いで悟空に食べさせて!!」
ミスターポポがカリン塔から帰ってきた。投げられた仙豆を受け取り、神様は悟空の口に強引に
押し込む。
「・・・飲んでくれ・・・飲んでくれよ・・・」
強引に押し込まれた仙豆は、悟空ののどを通り、奥へと入っていった。
腹部の傷は・・塞がっていく。
「やった・・やったぞ!!」
喜ぶヤムチャ達。だが肝心の悟空の意識は戻ってこない。傷はふさがったのに・・・
神様が心臓に耳を当て、生死を確かめる。
「・・・・・し、死んでいる・・・・・」

孫悟空は死んだ・・・実の父親に攻撃されて・・・
「仙豆で、身体の傷は回復させることができた・・・だがその直前に、悟空の魂は身体から抜け出して
しまったのだろう・・・まさに、紙一重だったのだ・・・」
一時間後、悲しみにふけるヤムチャ達を置いて、神様が天界へと向かった。悟空の亡骸を持って・・・


795 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/13 19:28 ID:???
「オラ、死んじまったのか?」
悟空が神様に問いかける。
「そうだ。これから、天国行きか地獄行きかの審判を下される」
「えーオラ嫌だよ。もっと強くなってあいつらをぶっとばしたいんだ」
「大丈夫。死んでいてもお前は今以上に強くなれる。とっておきの場所と人がこの天界にはある」
「え!?本当?オラ、もっと強くなれんのかな・・・」
「そうだ。お前にはもっと強くなって生き返ってもらわねばならん」
「そっか・・・オラ、頑張るよ・・・」


一時間後、神様が宮殿へと戻ってきた。ヤムチャ達の様子は落ち着いているようだ。
だがその内心は悟空の仇を取りたい気持でいっぱいだった。
「お前達にはこれからドラゴンボールを集めてもらう」
ヤムチャ達、驚きの表情を見せる。が、すぐに気づく。俺達は肝心なことを忘れていた。
ドラゴンボールで悟空を生き返らせる。そうだ。その手があった・・・
「悟空には天界で修行をさせることにした。宇宙を納める神様・・・界王さまの元でな」
「界王さま・・・!?」
「もちろん生きていてくれたほうが良かった。だがこうなってしまった以上仕方ないだろう
お前達は、悟空のために、今できることをするのだ」
「はい!!!」
神様は界王さまのこと、悟空の今の状況など、詳しい話を続けた。
そんな中、ヤムチャはしばらく宮殿を後にすると言い出す。なんでも会っておきたい人物が
いるとのこと。その人は、ドラゴンボールを探すうえでも必要な人だという。

 

796 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/13 19:28 ID:???

悟空の死の翌日・・・ヤムチャは西の都上空へと来ていた。
そう、天下一武道会の日から今日まで、安否のわかっていないブルマの姿を確認しに来たのだ。
あの日以来ヤムチャ達は神様の宮殿に半ば監禁状態で修行に励んだ。その間の外界とのかかわりは
一切絶たされている。ヤムチャは世界のこれからのことももちろん気がかりだったが、ブルマの安否
についても気にしていた。神様に彼女の今の状態を聞くも、お前は修行に励めばよい と言われ
軽く流された。いや、それは心配しなくても彼女は生きている。お前は修行して強くなること
だけを考えろと言っているようにもとれる。だが実際に、この眼で見てみないとわからない。
天下一武道会会場はあの日、地獄と化したはず。ピッコロと桃白白の戦いによって、パパイヤ島の
人間はほぼ全滅。普通に考えたら生きているはずはない・・・
様々な思いをめぐらせながらヤムチャはブルマの家を探す。西の都は以外にも町の破損が少なかった。
都の軍隊がやけに強かったのか、運が良かったのか・・・ブルマの実家はカプセルコーポレーション。
世界で最も有名な企業だ。道端の人に聞けばすぐにその場所は教えてくれる。
カプセルコーポレーションには容易にたどり着くことが出来た。ほとんど損傷のない大きな建物。
ヤムチャは門にあるインターホンを押す。
「はい どなた?」
「あ、あの、ブルマさんはいらっしゃいますでしょうか?」
返答はない・・・やはり・・・家の中では、家族の方が「ブルマ」という名前を聞き、
悲しみにふけっているのだろう。やはりダメだったか・・・俺のせいだ。また俺のせいで、人を
一人死なせてしまった・・・ちきしょう・・・こうなったら、今からでもサイヤ人とかピッコロとかの
アジトに乗り込んで俺が全員ぶっ殺してやる。そんで死んだらブルマとかに謝ろう・・・そうだ、
それがいい・・・ヤムチャは少し下を向き、目をこすった。そして向きを変え、カプセルコーポを後に
しようとする。
「・・・ヤムチャ!?」
「え・・・・・?」
「やっぱりヤムチャだ!!!ヤムチャー!!!!!」

 

797 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/13 19:29 ID:???
自分の名前を呼ばれ、ふと振り返る。
ブルマさん・・・?まさか、死んだのでは・・・?ヤムチャがいろいろ考えてる間にもブルマらしき
女は近づいてくる。そして抱きついてくる・・・!?
「ひさしぶり!!ヤムチャ!!孫君たちは元気?」
「お・・・おっぱいが・・・2つ・・・・」

ブルマは生きていた。それも、前と変わらず元気な姿で。ヤムチャは問う。
あの状況でなぜ生きていられたのですか?と。ブルマは答える。
「ああ、なんかやばそうだったから緊急避難用カプセルを出してそこに入ってたのよ。
核ミサイルが直撃しても平気なやつね。そこにずっと潜んでて騒ぎが収まったみたいだから帰って
きたわけ。ヤムチャ達が助けに来てくれると思ってたのに、何やってたのよ」
平然とそう答えるブルマ。俺達も、かなり苦労していたんだけどな・・・ヤムチャは一瞬、ブルマ
とのギャップに落ち込む。ヤムチャも今までの状況をブルマに話すことにした。
神様との修行のこと、キングキャッスルでのこと、サイヤ人のこと。そして悟空の死のこと・・・
「嘘・・・孫くんが・・・あの元気な孫くんが死んだなんて・・・」
ブルマは始めて悲しい顔を見せる。ヤムチャは慰める。悟空は生き返る。ドラゴンボールで。
俺はそのためにここに来たんだ・・・と。
「ドラゴンレーダー貸してくれますよね・・・?」
「もちろんよ・・・ただ、条件があるわ」
「条件・・・!?」
「私と、今日一日、デートして欲しいの」
「・・・・・・・!!」
ヤムチャ、生涯で始めての女性とのデート。天国かはたまた地獄か・・・<つづく>


 

809 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:20 ID:???
<第19話>
とある日の昼下がり・・・場所は西の都、プリンスアイランド。西の都で唯一つの遊園地。
そこに、空から一組のカップルが来園した。正確にはカップルではないのだが。
ヤムチャとブルマ。元々ヤムチャに好意を寄せていたブルマがドラゴンレーダーを貸すことを
条件に、一日デートを申し込んだ。ヤムチャは断れなかった。ブルマのことだ。断ってもレーダー
は貸してくれただろう。だがヤムチャは断らなかった。女性とのデート20歳になって始めての
デート。こんなチャンス、もう無いかもしれない。つーかサイヤ人とかに殺されちゃったら
俺の人生女っけなくてつまんねー。ヤムチャの心の中には、地球に住むみんなを守って、亀仙人を
生き返らせることの他に、女が苦手という体質を改善するという大きな目標が(実は)あった。
「俺なんかで良かったら」とヤムチャは即答する。するとブルマ、もう出かける準備は出来ていると
ヤムチャの背中に抱きついてくる。
「このまま乗せてって」
「は・・・はい・・・」
遊園地へと着いた2人。途中ヤムチャは緊張からか、舞空術のやり方をど忘れし、何度か地面に
落下しそうになった。その度にブルマに殴られる。「何やってんのよ!!」
ちきしょう・・・ダメだ。完全に尻にしかれちまっている・・・ヤムチャはデート開始そうそう、
絶望感を覚えていた。だがまだデートは序盤。挽回のチャンスはきっとある!!
入場券売り場。ブルマ、券を買わずにそのまま直行。ヤムチャ、ブルマが券を買うのを忘れている
ものと思い、慌てて有り金をはたいて入場券を買う。
「ブルマ、入場券忘れてるぜ・・・」
「はぁ?私を誰だと思ってんの?この遊園地ねえ、うちの会社が経営してんのよ。乗り物の設計は
全部私がやってんの。ようするにオーナーよ。だからただなの わかった?」
ちょっと言い方をキザに決めてみたヤムチャ。見事に玉砕。
風によって舞い上がった落ち葉が顔のあたりを舞う。その顔はやけに悲しそうに見えた・・・・・

 

810 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:21 ID:???
お化け屋敷・・・中へ入る。真っ暗。ヤムチャ、ブルマの姿を失う。
「ど・・・どこだ・・・はっ、そうだ、気を探れば・・・」
「キャー!!」
「悲鳴・・・そっちか!!」
ヤムチャ、直行。そこには突然現れたお化けに驚いているブルマが。当然、お化けの中には普通の
人が入っているわけでまったく問題は無い。ところがヤムチャ、いきおいあまってお化けを撃破。
中の人、失神。ヤムチャ、警備員に呼び出される。
「あ、その人、私の連れなの。お化けの人の治療費は私が払うから、許してあげて」
ブルマの天の声。それだけで事はすんだ。また怒られて殴られる・・・今日何度目!?
が、目をつぶって覚悟するヤムチャに対する言葉は意外なものだった。
「私を助けに来てくれたんだね。ありがとヤムチャ」
ブルマはそう言うと次は観覧車に乗ろうとはしゃいで先に行く。ヤムチャ、小さくガッツポーズ。
観覧車の中、二人きり。ブルマ、楽しいのかはしゃぎだす。ヤムチャ、ブルマの顔をまともに
見ることも出来ず。顔、真っ赤。ダメだ・・・二人っきりなんて速すぎっすよ・・・
もっと段取りを置かないと・・・ヤムチャ、首を勢いよく振る。ダメだ。これはチャンスなんだ。
「ブルマさん・・・きょ・・・今日はいいお天気ですね・・・」
しばしの沈黙・・・自分の心臓の鼓動が聞こえる・・・怖い、次はどんなきついことを言われる
のか・・・サイヤ人達、奴らも恐ろしかった・・・だが、怖さの質が違う・・・!!
「ブルマ、でいいわよ ヤムチャ」
ブルマの優しい一言・・雰囲気は一気によくなった。観覧車での数分間。ヤムチャは今までの
自分では考えられないほど自然にブルマと話す自分に気づいた。楽しい・・女の子と話すのって
こんなに楽しかったんだ・・・俺ってやればできんじゃん。
「次はなんに乗る?ブルマ」
デートも中盤に差し掛かった頃、普通にブルマを呼び捨てで呼べるまで成長したヤムチャであった。

 

811 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:22 ID:???
ヤムチャがブルマとのデートを楽しんでいる頃、神様の宮殿ではこれからの事についての
話し合いが行われていた。餃子は仙豆によって復活。とりあえずは平穏なときが流れる。
最も下界は相変わらずひどい状態だ。神様の千里眼は、世界の状況を詳しく教えてくれる。
サイヤ人達は自ら乗ってきた宇宙船の中で一旦待機した後、キングキャッスルから最も近い
町、ジンジャータウンを襲う。襲撃から10分後、住民全滅。町、消滅。
ナッパよ・・あせることはない・・・あっさり全滅させちまったら、楽しみがなくなるだろ?
神様はそう言ったバーダックの言葉を聞き、絶望感と共に安心感を得る。
少なくとも奴らが連日連夜、暴虐を繰り返すことはないだろう・・ドラゴンボールを探すという
目的も奴らにはある。だがレーダーはこっちの物。奴らにボールを探す手立てはない。
放ってはおけない存在だということに変わりは無いが。

 

812 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:22 ID:???
クリリン達は、次なる戦いについて話し合っていた。ドラゴンボールを探す。普通に探せば
しばらく戦闘はないだろう。サイヤ人達は探す手立てがない。だがクリリンが気になる事を言い出す。
「半年前、天下一武道会の日、俺達が持っていたドラゴンレーダー、もうなくしちゃったんだけど
それに反応があったんだ。しかも武道会会場に二つ。同じ位置に。参加選手の誰かが持っていた
んだと思う・・・俺の予想だと・・・その持ち主は・・・・」
「鶴仙人さまとパイパイさんか・・・・」
天津飯、餃子はクリリンの言葉に思い当たるふしがあるようだった。
末端の2人には詳しく伝えられていなかったが、レッドリボン軍のレッド総裁は何やらボールを
集めているとの話を聞いたことがあるという。2人はそれがレッド総裁の趣味なのだろうとしか
思っていなかった。だが世界征服を企む男。そしてドラゴンボールという存在。天下一武道会場
での反応・・・天津飯はすべての情報を整理して仮定を立ててみた。
「レッド総帥はおそらくドラゴンボールを集めている。目的は何かしらないが・・おそらくパイパイさん達
もドラゴンボール探しの指令を受けていたのだろう。彼らは金さえ入ればなんでもやる。
探し出したドラゴンボール。だが総帥はそのまま所持していろと言う。パイパイさん達は
ドラゴンボールを持ったまま、武道会場に現れた。そう仮定すればすべて合点がいく・・・」

 

813 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:23 ID:???
すべてはドラゴンレーダーがあればわかる。反応が二つ、レッドリボン軍本部の方へあったなら
天津飯の仮定は確定へと変わる。だが3人は感じていた。おそらくこの仮定は正しいと。
次の相手はおそらくレッドリボンと桃白白兄弟・・・またしても強敵・・・
いや、構わない。この地球上の倒さなければならない敵は、すべて自分達より強い強敵なのだから。

ヤムチャとブルマは遊園地を後にしていた。乗り物は全部乗ったし飯も食った。
飽きたのだろうか、ブルマが急に海を見たいと言い出す。舞空術を使えば海まではたいした距離
ではない。二人は海へ向かう。海までは30分かからないだろう。
デートのはじめ。ヤムチャは舞空術をど忘れし、ブルマに怒られた。それは女性を乗せて
飛ぶことが始めてだったからだ。だが今は違う。快適だ・・・ブルマの身体が俺の背中に・・・
落ち着く・・・何故だろう。そうだ、俺は女が苦手という体質を克服したんだ。きっとそうだ・・
何事もなく、2人は海へと到着する。丁度夕方。太陽が地平線のかなたへと沈み始め、あたりは
きれいなオレンジ色に包まれている。
「きれいねー」
「ああ・・・」
2人の間に普通の会話が流れる。数時間前にはありえなかったような・・・
「本当はねー、ヤムチャに会えて嬉しかったんだよ・・・絶対、もう会えないと思ってたし・・
それに、デートもね、もうこんなチャンスないと思わない?世界中がやばいことになってて
ヤムチャも私もいつ死ぬかわからない・・・だったら一日ぐらい、楽しいことしたってバチはあたん
ないわよね?」
「ああ・・・・・」
ヤムチャは、気づき始めていた。舞空術を使って海までやってくるまでの間、ずっと感じていた
安心感・・それは女苦手を克服したからではない。いや、もはや苦手得意の問題ではない。
男として、俺はブルマという女に好意を抱き始めている・・・一緒にいてこんなに安心するなんて
半年前は考えられなかった・・こんな人、初めてだ・・・ブルマなら・・・


814 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 00:24 ID:???
「ブルマ、俺の悩みを聞いてくれないか?」
「え?いいわよ。何、突然」
「俺の出生についてだ・・・」
ヤムチャはブルマに語り始める。悟空がサイヤ人だとわかった。地球人じゃないことも。
つまり孫悟飯は悟空の肉親ではない。その頃から彼は考えはじめた。俺も悟空と境遇は同じじゃないか?
亀仙人の爺さんは俺の親父ではないことは明白。じゃあ俺の親はだれだ・・?俺は何者?
だが彼はこの悩みを誰にも打ち明けるつもりはなかった。もちろん他の仲間もそれどころでは
なかった。だが彼は自分が誰であるか知るのが少し怖かった。悟空とバーダック。
血の繋がった親子でさえ、あんな風に殺しあう。自分の親と、もし遭遇したとき同じように
なったら。それを想像するのもいやだった。そしてその気持を仲間に悟られるのもいやだった。
ブルマ・・・この人なら、なんでも話せる気がする・・そして俺の気持を一番よくわかってくれる
気がする・・・今、わかった。今日デートをした目的はもちろんそんなことではない。
女嫌いを克服するため。純粋に、彼はその目的だけをもっていた。だがヤムチャは幸運にも
その目的以上の物を得ることができた。亀仙人の死以来、自分が無意識に求めてきた安心感を・・
ヤムチャにはそれがブルマに対する好意として受け止められていた。
「俺は何者なのかこれから知っていきたいと思う。ブルマもついてきてくれ」
「もちろんよ、その代わり、私もお願いがあるの」
「なんだ・・・また条件つきか・・・」
「私も、孫くんを生き返らせるためのドラゴンボール探しに連れてって」
「・・・・・・」
「私だって役に立つわ。ヤムチャやクリリン君達の力になりたいのよ」
「危なくなったらすぐに帰るんだぞ」
「やったあ!!」
デートは終わり・・・だが、ヤムチャ達は次なる目的地に向かう。ここからはヤムチャ主導。
場所はカメハウス。唯一ヤムチャの出生について知っていそうなカメの元へ・・・<つづく>


 

848 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:50 ID:???
<第20話>
ヤムチャは自分自身を知るための小旅行に出る。ブルマを連れて。
物心ついた時からそばにいた唯一の存在、カメ。半年以上も会っていないが会えばきっと
何かわかるはず。どんな些細なことでも良かった。ブルマという自分を一番理解してくれる
人を見つけた今、ヤムチャは一気に貪欲になる。それは自分の出生のことだけにとどまらない。
もっと修行して強くなってサイヤ人とかを倒して地球を、ブルマを守る。向上心の上昇・・・
いいことだ。ヤムチャよ・・・人は、それを恋によるパワーアップというのだ・・
2時間後、ヤムチャは約8ヶ月ぶりにカメハウスのある島へと降り立つ。あたりはすっかり夜。
夜空にきれいな星空が見える。
「よう、ウミガメ、いるかい?」
「はいはい、や・・やや、ヤムチャ様じゃありませんか!心配しておりました。行方不明と
いう情報を聞いたものですから・・・」
お互いの無事を喜び夕食をとりながらしばしなごやかな団欒の時を楽しむヤムチャ。
カメハウスは8ヶ月前と変わっていない。世界が大変なこのご時世に相変わらず平和そうな雰囲気。
小さいけど住みやすい家。そのまんまだ。唯一つ、ヤムチャは相違点を見つけた。
壁にかけられた写真。そこには幼い頃のヤムチャと亀仙人が一緒に写っている。ヤムチャは
昔を思い出す。あの頃・・・今考えればよかったな。当時は修行ばっかさせられてうるさい
じいさんだったが、今ではもう一番もう一度会いたい人だ・・・幼い頃の自分も久しぶりに見た。
曇り一つない笑顔。最近はこんな笑顔をしたことはあまりない。ヤムチャはゆっくりと立ち上がり
カメにこう言う。
「ウミガメ・・・オレはどんな風に生まれてきたんだ?」

キングキャッスル付近・・・サイヤ人の宇宙船内部。
複数設置されているメディカルマシーン。どんな怪我でもたちまち治ってしまう優れもの。
そこからナッパとラディッツが出てくる。傷は全快したようだ。顔色もいい。

 

849 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:50 ID:???
「やっと全快したようだな・・・これから忙しくなるぞ」
二人に対してバーダックが言う。
「親父・・・カカロットの奴、どうなったのかな?」
ラディッツがバーダックに問う。彼らは親子同士。だがサイヤ人の社会の中で親子という関係は
あってないような軽いものだ。力が強ければ親など必要ない。なかには親を殺して自分で生きて
行く道を選ぶ者もいたという。
地球で言ういわゆる親不孝者はサイヤ人の社会では立派なほめ言葉となるのかもしれない。
だがバーダックはサイヤ人の中で最も高い戦闘力を誇る偉大な戦士。ラディッツは父を尊敬していた。
バーダックもまた、ラディッツの事を一人前の戦士としてみていた。それゆえ親子としての会話など
数年に一回程の回数しかしたことがなかった。ラディッツが久々に親父という言葉を使う。
実の弟のカカロットの存在。そしてバーダックがその弟を平然と攻撃。少し、親子としての会話を
したくなる衝動にかられたのかもしれない。
「カカロットか・・死んだかもな・・だがあいつが悪いのだ。俺達サイヤ人の誇りをあっさりと
忘れやがって・・親として恥ずかしいぜ」
「親父はオレのことをどう思ってるんだ?サイヤ人の一流戦士。それだけか?もしカカロットの立場
がオレだったら・・オレのことも殺すかい?」
「・・・・・・くだらねえな・・・お前はオレの息子。そしてサイヤ人の誇り高き戦士だ。
それ以上でもそれ以下でもねえ。そんなくだらん事を言う前に少しでも戦闘力をあげるんだ。
お前は今、俺達の中で一番足を引っ張っている存在なのだぞ」
「・・・わかった・・・いえ、わかりました・・・」
2人は去っていく。バーダックは考える。ラディッツめ、くだらんことを・・あんなことを
言ったのは初めてだったな。実の弟に会って、情が生まれたとでもいうのか?サイヤ人として
そんな甘い考えを持つのならば、俺は今すぐにお前を始末する・・・
「カカロットか・・おそらく助かるまい。だが生きていたとすれば・・あの傷を全快させ我らの
前へ再び立ちはだかる時、もっと大きな壁となっているかもしれん」

 

850 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:51 ID:???
宇宙船内部では少し故障箇所が多発していた。地球の大気圏に突入する際の衝撃でなったようだ。
だがそんなことはいつものことだった。サイヤ人は行動が早い。修理は迅速に行われた。
戦闘を生きる糧としてる者にとって、ウイークポイントを放置しておくことは即、死につながると
本能的に感じているのだ。あらかた修理は終った様子。だが通信システムの調子がおかしいらしい。
最も他に通信する者などいない。前まではフリーザからの指令がちょくちょく入っていたが、
奴らを裏切ってからは入ってきていない。あちらも裏切りには気づいてる。だがこちらの位置まで
は探せない。スカウターのシステムはあちらとのリンクをきってある。絶対に気づかれない。
通信システムは主に地球内での行動中に必要となる。宇宙船に残っている者が他の者への通信
をする場面もあるだろう。修理の担当はスラッグ。悪の心を持ったナメック星人。サイヤ人達が
ナメック星を襲撃した際、ドラゴンボールの事を教える代わりに命を生かしてもらった。
今ではサイヤ人集団の知識箱だ。ドラゴンボールが目的の彼らにとって、スラッグの存在は大きい。

 

851 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:51 ID:???
「スラッグよ、通信システムの修理はどうか?」
「え、え・・ええ。まああと少しってとこですかね」
バーダックの問いにスラッグが答える。やけに顔に汗をかきながら。力仕事なのだろうか。
「まあゆっくりでいい。それと、例のドラゴンボールレーダーの開発は進んでいるのか?」
「へえ、あれなら我々ナメックのDBから出る微弱な電波を参考に、作っております。まああと
数日かければ完成するでしょう」
「む・・・頼んだぞ。おい、そこは別に壊れてないぞ。その機械をなぜ取り付けるのだ?」
「へ・・?あ、ああ、こいつはナメックの技術でしてな。テ、テレパシーて奴で通信ができる
のですわ。ははは。いつか役に立てばいいと思いまして・・・」
「ほう・・まあいい、じゃあな・・」
スラッグは通信システムの修理と言っておきながら宇宙船に奇妙な装置をつけはじめている。
奴は隠し切っていると思っているが他にも見慣れない部品が増えた。ベジータも気づいている。
ナメック星人とは変わり者だ。何をしようとしているのか知らんが奴がいないことにはDBも
探せない。バーダックは汗を拭きながら作業を続けるスラッグを見ながらこの先のことを考えていた。

 

852 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:52 ID:???
「ヤムチャ様・・・なぜそんなことを聞くんです?」
「いや、最近、急に気になっちまってな」
「それを知ってどうするおつもりです・・・?」
「いや、どうってことはねえよ。ただすっきりさせたいんだ。自分がどんな風に生まれたのか・・」
「わかりました。私の知っている限りのことをお話しましょう・・・」
カメは話を始める。ヤムチャとブルマは静かに床に座りカメの言葉に耳を傾け始めた。
「始めに言っときましょう。ヤムチャ様の親はわかりません・・」
「なに・・・?」
カメの話・・・20年前の昔話・・・
20年前、サイヤ人襲来の時、亀仙人、孫悟飯ら地球の達人達は団結し、サイヤ人打倒軍を
結成したという。その頃、地球の軍隊は壊滅状態。亀仙人らは自分達に地球の運命がかかっている
と言い聞かせ、気持を高ぶらせていた。だがその気持も発揮することなく、サイヤ人達は撤退
する。地球に落下してきた巨大な物体。それのおかげだ。サイヤ人達にとっては悪夢だが
地球側の人間にとってはそれはまさに神風。誰もがその物体に感謝した。だがその物体が落下した
付近の土地はなぜか人が立ち寄れないほど猛烈な熱波に覆われていた。亀仙人達達人集団は
調査のため、そして地球を救った謎の物体を見るために現地へと向かった。
到着した彼らは恐るべき実態を目にする。そこには巨大な物体など何もなく、ただ真っ赤な空と
荒廃した土地、そしてとてつもない熱波が存在するだけだった。まだ落着地へと到達していない
にも関わらず、土地の気温は100度をゆうに超えていた。達人集団は落着地へと近づくが
そのたびに上がっていく気温に耐え切れず多くの者が脱落していった。落着地と思われる場所
へとたどり着けたのは孫悟飯と亀仙人のみだった。巨大なクレーターのようなものが見える。
まさに巨大物体が落下した場所だった。2人は数日間、その場を調査し、物体の残骸などがないか
調べることにした。
「悟飯様と亀仙人様はそこで思っても見ないものを発見しました。生まれたばかりの赤ん坊を。それも二人も・・・」

 

853 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/14 21:52 ID:???
あの世・・・
「ふー、ここが界王さまのいる場所か・・?う・・・やたらと身体が重いな・・・精神と時の部屋
みてえだ・・どうなってんだこの地面・・・」
「うっほっほ」
「ん・・・?あの猿みてえな奴・・・そうか、あれが界王さまか!!こんにちわ。オラ孫悟空です
修行、よろしくたのんます」
「うっほっほ うっほっほ」
「お、さっそく修行だ。あの動きをやれってんだな。うっほっほ うっほっほ これはきつい。
界王さま・・ここの地面、どうなってんのかな?」
「なーにやってんだお前」
「へ・・・?お、おめえは・・」
「わしはな・・うーん、かいーよー、かいーおー、かいおう。界王じゃ」
「へ?じゃああいつは・・・・?」(以下省略)

「ワシの修行は厳しいぞ!!ついてこられるか!!」
「うん!!」
「どーせ目指すなら宇宙1じゃ!!よいな!!」
「うん!!!」
「その前にちょっと茶でも飲むか・・・」<つづく>

 

10 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/16 20:48 ID:???

>>前スレ853の続き
<21話>
カメの話。ヤムチャの出生に関する昔話はまだ続く。
「現地で発見された赤ん坊は亀仙人様と悟飯様の手によって保護されました・・・」
謎の巨大物体の調査に出かけた亀仙人達。落着地へとたどり着いた2人はそこで赤ん坊を見つける。
最初に発見したのは亀仙人。物体の落着した跡だと思われるクレーターの近くで見つける。
近づいてみると正に生まれたばかりの赤ん坊。目も満足に開いていないし泣き声も聞こえない。
当たり前か。気温を調べると摂氏300度。亀仙人ほどの達人でも身体の不調を感じるこの地で
赤ん坊が泣けるわけがない。いや、それよりも・・亀仙人ははっと思い冷静に頭を整理する。
むしろこんな状態の地に、赤ん坊がほとんど丸腰状態でしかも生きている。ありえない・・・
外傷も見当たらない。見た目も人間の赤ん坊そのまま。信じられない。亀仙人はこの赤ん坊を
もっと入念に調べることにした。赤ん坊は丸裸のままそこにいたわけではない。肌は一応服に
包まれていた。だがその服は明らかに大人の物。外から見ると大人が中身だけが縮まって赤ん坊になって
しまったように見えたという。亀仙人はじかに触れてみる。服は緑を基調にし、首にはオレンジの
スカーフ。胴体の部分には”樂”という刺繍がされている。丁度、サイズは180センチぐらいの
人間用だろうか。さらに腰には青龍刀と呼ばれる種類の刀。横にはパンツァーファスト。
亀仙人は状況を理解できなかった。ふと、周りに目をやると少し離れたところに小さな猫のような
動物の白骨化した死体が転がっていた。なぜこんな所に・・・まあ爆風等で死んだと考えれば
妥当か・・・いや、ならばこの赤ん坊、そしてこの服の持ち主。それはどう説明すればいいのか。
この子が爆風に耐え、たまたま転がっていたこの服の中に自ら包まったとでもいうのか?
亀仙人は思った。この場で、そして自分の頭で、何か結論が出せるはずもない。それより
この赤ん坊。いくらなんでもここに放置したままではいずれ死んでしまうだろう。亀仙人は
赤ん坊を抱きかかえ、とりあえずはその場を後にする。抱きかかえ、よりわかったことがあった。

 

11 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/16 20:50 ID:???
その赤ん坊の服。いや、別の大人の服と考えたほうがいいだろう。下着を着用していた。
亀仙人は少し失礼かなと思いつつも下着の中も調べてみた。よく見るとパンツに几帳面に名前が
書いてある。
この名前が、この服の持ち主の名前か・・・赤ん坊とも何か関わりがあるかもしれない。
亀仙人は、すでに自分がこの赤ん坊を見つけ、拾ってきた責任を取るため、自分で育てることを
決心していた。パンツに几帳面に書いてあった名前・・・何かの手がかりかもしれない。
亀仙人は、赤ん坊をパンツの持ち主の名前の「ヤムチャ」と名づけることにした。そして、
そこから20年・・・彼はその赤ん坊が成人するまでの間、本当の親のように愛情を注ぎ、
育て上げることとなる・・・

「ま、まさか・・・その赤ん坊が・・・オレだというのか?」
「・・・・はい・・」
カメの話。間違いなく真実なのだろう。嘘をつく意味はないし。こんなたいそうな嘘、とっさに
思いつくわけが無い。カメの回想話の中の亀仙人と同様、それを聞いていたヤムチャも
話の内容をうまく理解することが出来なかった。自分が捨て子で親が不明。それだけでもショック
はでかい。だが、カメの話を聞いていると自分は何者なのか、わからない。それどころか、
摂氏300度の地帯で平然と存在していられる赤ん坊。化け物・・・としか形容できない。
自分がそんな化け物のような子供だったとは、思っても見なかった。「ヤムチャ」という自分の
名前がもしかしたら他の人の名前から取った物かもしれない。そんなことはむしろどうでも
よかった。ただただ、驚きと混乱。その時、ヤムチャの頭にはその二つの感情しかなかった。
「亀仙人様と同様、悟飯様も赤ん坊を発見されます。まあ、これは余談になってしまうの
ですが、ヤムチャ様にも関わりがあるお方・・お話しておきましょう」

 

12 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/16 20:52 ID:???
亀仙人がヤムチャを拾ってから数時間後、同行していた孫悟飯もまた赤ん坊を発見する。
ヤムチャが発見された場所から3キロほど離れた場所で調査を行っていた悟飯は丸型のカプセル
のような物を発見する。表面はただれ、傷だらけ。これはサイヤ人の戦士が使う丸型宇宙船
であり、テレビを見ていた一般の人間は一目みればわかるのだが、外界から閉ざされ、テレビも
もちろん写らない環境で修行をしていた悟飯には、それがわからなかった。
悟飯はそのカプセル、いや宇宙船の内部をのぞいてみる。中には気持よさそうにすやすやと眠る
赤ん坊が入っていた。なぜか、尻尾のような物が見える。いや、尻尾だ。この子には尻尾が
生えている。悟飯は驚く。「尻尾」という言葉を聞けば、この頃の人はサイヤ人のことを連想し
恐怖におののいただろう。だが悟飯はサイヤ人という言葉は知っていたものの、姿かたちは
しらなかった。赤ん坊を取り出して調べてみたいがこの暑さでは死んでしまうかもしれない。
悟飯はその宇宙船を担ぎ、安全な地帯へと帰還することにした。亀仙人も一緒に・・・

「し・・尻尾!?・・・悟飯さんってことは・・まさか、悟空か?」
「え・・?ヤムチャ様、よくお分かりになりましたね・・・私はまだ何も言ってないのに」
ヤムチャは悟空がサイヤ人であることを知っている。悟空の親父バーダックは言っていた。
地球から撤退する際に自分の息子、カカロットを地球に残し、人類を死滅させるつもりだったと。
それに今の話を照らし合わせれば納得がいく。悟空とヤムチャは同じ日に、ほぼ同じ場所で、
それぞれの養父に発見されたのだ。そして、二人はその養父の愛情によって、今日まで成長した。
悟空は死んでしまったわけだが。
「その後、お二人は現地の調査をやめ、ヤムチャさまと悟空さんを育てるため、平穏な暮らし
を始めたのです」

 

20 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/17 00:50 ID:???
<21話>
「ですが、ヤムチャ様を育てるにあたって、亀仙人様は苦労がたえませんでした・・・」
謎の物体の落着地の調査を終えた2人。物体の証拠等の収穫はなく、赤ん坊というとんでもない
落し物を拾ってきてしまった。2人は夜、お互いに拾った赤ん坊を持ちながら、バーで一服する。
「なあ悟飯よ・・一連のサイヤ人関連の事件。地球はメチャクチャになった。たくさんの人が
死んだ。だがワシらは生きている。いや、死ぬべきだったかもしれん」
「・・・武天老師さま・・・」
「ワシらのような人間が、もっとはやく抵抗運動を始めていれば、地球はこれほどまでには
ならなかったかもしれん。しかしワシらは修行してもっと強くなってからと言い訳をし、結果的に
サイヤ人との対決から逃げた。そのために、何人の命が消えたじゃろうか・・・」
「・・・・・」
「悟飯よ・・今日、ワシらがこの2人を拾ったのも何かの縁じゃ。ワシらのせいで死んでしまった
人達へのせめてもの償いのために、この新しい命の成長を、2人で助けていかないか・・?」
「わかりました・・・武天老師さま・・私はあなたの弟子で本当に良かった・・・」
バーでの一服後、2人は別れた。お互いが育てる赤ん坊を腕に抱きながら別れ間際誓った。
必ず、この2人を一人前に育てよう・・・そしてこの子達が成人になったとき、4人で酒でも
飲み交わそうじゃないか・・・と。
その後、2人は会うことはなかった・・・だがこの誓いは20年後、かなえられることとなる。
亀仙人を残念ながら欠いたものの、悟飯、悟空、ヤムチャの3人は20年ぶりの再会を
し、共に修行しお互いを高めあう大切な仲間となる。2人の誓いは、偶然ではあるが、地球を
守る正義の勢力を作るきっかけとなった。20年経った今、2人の子供、ヤムチャと悟空は
立派に成長した。亀仙人の償いは終ったのだ・・・

「亀仙人様はその後隠居し、この島に住み始めました。そしてヤムチャ様を一人前にするために
一生懸命愛情を込められていたのですよ」

 


21 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/17 00:51 ID:???

「ヤムチャ様も3歳ぐらいの時はわんぱくでねぇ・・・あの頃は亀仙人様よりも足が速かった
んじゃないかな・・・性格も乱暴で、いつも手がつけられない状態でした・・・
しかし、ある日一人で海に出たヤムチャ様がサメに襲われて重傷を負いましてな・・・
必死の治療のおかげで、一命をとりとめたのですが、それ以降、不思議と性格がおだやかに
なっていきました・・・そして、今のような立派なお姿に・・・」
亀の話が終る。ヤムチャはしばらく黙ったままだった。横にいるブルマも神妙な顔つきだ。
すると、そんなヤムチャをよそに、カメが家の外の倉庫に行き、奥の方でゴソゴソし始めた。
数分後、相変わらず黙ったままのヤムチャの前に、カメがほこりだらけになった箱を差し出した。
「これを開けてみてください・・・」
カメが言う。ヤムチャは黙ってその箱を開けてみる。かなり年季の入った箱。開けた瞬間、
カビくさい匂いとほこりがあたりを舞う。
「これは・・・・・」
「そうです。亀仙人様があなたを見つけた時に一緒にあった服と剣とパンツァーファストです」
中には亀がさっき語ってくれた通りの装備が入っていた。「樂」の刺繍の入った服。青龍刀。
パンツァーファスト、装弾数5。20年前の物だけに所々、傷んでいる部分もある。
ヤムチャは一つ一つ手に取ってみる。初めて触る物。だが、不思議と手になじむ。そして何か、
懐かしい匂いもする・・・亀仙人はヤムチャを拾った時から今までこの装備を大切に保管していた。
そしてヤムチャが成人し、亀仙人が一人前と認めた時に、ヤムチャ自身の出生の秘密を話すと
ともにこの装備を渡そうと思っていたという。そして、立派にひとり立ちをしてほしい・・・
大切に保管されていたこの装備一式には亀仙人の願いが込められていた。最も、とうのヤムチャは
二十歳になったものの、この装備のことを一切聞かされていなかった。あの頃はまだ一人前とは
いえないような情けない男だったからな〜。ヤムチャが小声でつぶやく。
「いえいえ、今のヤムチャ様を見たら、亀仙人様はきっとこれを渡してくれたと思いますよ」
カメが暖かい声でそう言った。ヤムチャの顔に、笑みがこぼれる。

 

22 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/17 00:51 ID:???
ヤムチャは箱に入っていた装備を身につけた。鏡を見る。結構似合ってる。外見もいい。
着心地もいい。不思議と安心感もある。最高の服を身につけ手になじむ青龍刀を腰に備える。
そして残念ながら使い道はなさそうなパンツァーファストを荷物につめ、
ヤムチャ達はカメハウスを後にすることにした。波打ち際でカメが見送りに来る。
「ヤムチャ様・・・詳しいことは存知あげませんが危険なことをやっている様子・・・
くれぐれもお体にはお気をつけになって・・・」
「ああ、じゃあ行ってくる。カメも元気でな!」
ブルマを背中に乗せ、夜空をかけていくヤムチャを見送りながらカメは思う。
亀仙人さま・・・あなたの息子は立派に育っています。どうかご心配なく・・・と。


翌日の朝、神様の宮殿に久々にヤムチャの声が響く。
「よう、みんな、起きてるか!?」
クリリン達が出てくる。
「あれ、ヤムチャさん、なんすかその汚らしい格好は?」
「な・・・なに・・・!?これは由緒ある、その・・・まあいいじゃねえか」
ヤムチャは自分の出生の事をあえて語らなかった。結局亀の話では自分が亀仙人に拾われた時の
様子などしかわからなかった。自分の親や、どんな境遇で生まれたか。そしてなぜ謎の物体の
落着地なとどというとんでもないところにいたのか・・わからないことはたくさんある。
だがヤムチャの心はすっきりしていた。自分の正体が知りたかった。だけどそれを知ってどうなる。
それよりもカメの話、亀仙人や悟飯の暖かい気持を知ることが出来てヤムチャは嬉しかった。
正体なんかどうでもいい・・・亀じいさんや悟飯さんに生かしてもらった命。
大事に使って一生懸命生きる。そしてオレの親は亀じいさん、ただ一人だ。
ヤムチャはもやもやした心を吹っ切ってそう考えることにした。

 

23 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/17 00:54 ID:???
その後、宮殿ではこれからのことについて話し合いがされた。まずヤムチャが天津飯や餃子に
ブルマを紹介する。元気に挨拶するブルマ。天津飯は少し困惑ぎみだ。女との関わりに慣れてない
らしい。しかもヤムチャ以上に。ブルマがドラゴンレーダーを取り出し、スイッチを入れる。
一同はその動きを見守る。反応が出る。7個の反応・・・世界中に散らばっている。
「2つに固まってる反応はありませんか?」
「・・ああ、あるわ。北の方、これはかなり山奥みたいね」
天津飯は思う。
この方角、覚えがある。何度か行っただけだがこの方角の山奥に巨大な秘密基地が存在する。
世界最悪の軍隊・・・レッドリボン軍の・・・
「やっぱりレッドリボン・・・桃白白か・・・」
クリリンがそう言った。天津飯、餃子は黙ったまま何かを考えている。ヤムチャが口を開く。
「何があったか知らないけどよ、一石二鳥じゃねえか。敵の親玉とDB」
「そう・・・そうだな。前ムキに考えよう」
そう言ったクリリンが作戦を考えようと言い出す。それに乗るヤムチャとブルマ。少し離れた所
から神様が作戦会議に入りたそうな顔をしながらヤムチャ達を見ていた。
そんな中、天津飯が口を開く。
「すまないが、オレに少し時間をくれないか?パイパイさんはオレ達の闇の師匠。そして今の
オレ達は正義のために戦っている。パイパイさんとの決着はオレ達の闇との決別を意味する」
そう言った後、天津飯はブルマに他の地点にあるDBはどれくらいで探し出せるかを聞いた。
5日ぐらい・・ブルマはそう答える。今度は神様にサイヤ人達の動向についてを問う。
「ところどころ町はやられているが今は安静にしている。奴らもDBを探しているのだろう」
「・・よし、オレは今から5日、特訓に入る。お前達はその間、すまないが残りのDBを探してくれ
そして5日後、みんなでレッドリボン基地に突撃だ」<つづく>

245 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/19 20:22 ID:???
>>23の続き
<22話>
死んでしまった孫悟空を生き返らせるためのドラゴンボール探し。
ヤムチャ達がドラゴンボールに出かけようとする矢先、天津飯と餃子はしばらく特訓するので
一緒には行けないという。その理由はドラゴンボールを探すにあたり、最大の壁となる桃白白
にある。闇の師との決別。正義のために戦う戦士となった天津飯にとって、それは必須だった。
チームは一時ばらけることとなる。ヤムチャ達も天津飯に桃白白との決着をつけてほしかった。
他のドラゴンボールは自分達ですぐに見つけ出せる。ヤムチャ達は天達に「がんばれ」とエールを
送り、下界へと降りていった。宮殿には残った天津飯達と神様。
「神様、オレ達も行きます。5日後、必ず戻りますから」
「ああ、頑張ってくるのだぞ」
天津飯達も宮殿を後にした。向かうは修行山。天津飯達が桃白白の教えを受け、毎日汗を
流していたところだ。
一方、ヤムチャ達は飛行機で移動していた。ブルマがどうしてもついて行きたいと言うので
彼女のジェットフライヤーを使用しているのだ。だがその性能は桁違いでヤムチャとクリリンは
自分達が飛ぶ速さよりはえーや、と驚く。出発から一時間後、一番近くにあったドラゴンボールを
見つけ出すことに成功する。ヤムチャ達が以前から持っていたドラゴンボールとあわせて自分達
が集めるボールは後3個。思ったよりはやく終りそうだ・・・久々の気楽な毎日にヤムチャ達は
思わずほっと肩を撫で下ろす。飛行機の運転はブルマ。助手席にはヤムチャ。そして後ろにクリリン。
前の2人は楽しそうにおしゃべりをしている。後ろのクリリン、話題を振るもまったく相手にされず。
この2人・・・こんなに仲良かったかなあ・・・付き合ってるのかなあ・・いいなあ・・・
オレも彼女欲しいな・・・2人を見ながらクリリンはそう思う。背は小さくとも年は18。
普通なら青春真っ只中のはず。何やってんだろ・・オレ。クリリンはふと盗んだバイクで
走り出したい気分に陥った。
次のDBの位置もすぐ近く。眼下に存在する、町のどこかだ。ヤムチャ達は地上に降り、探索を
開始した。

 

 

 


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