哀・戦士
第二部 〜サイヤ人再び編〜
631 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/19 17:44
ID:???
<第10話>
ヤムチャ達が神様の宮殿へと到着し、修行を開始してから約半年が過ぎた。
神様からこれまでの事のなりゆきを聞かされた一行は、修行にのみ時間を費やした。ヤムチャと悟空
は敵討ちという目標もあるからなおさらだ。とにかく強くなりたかった。今の状態では魔族にも
レッドリボン軍にもかなわない。天下一武道会で対立していた鶴仙流とヤムチャ達だったが共通の
目的を達成するために仲違いの事など忘れ、お互いを高めるために協力しあった。神様は修行中、
常に言っていたことがある。地球を平和に戻すのはお前達しかいないと。ヤムチャ達は無意識のうちに
それを自覚してきていた。
一行の修行中、地上では魔族とレッドリボンの戦いが続いていた。お互いほぼ互角の戦力を持つ者
同士。大きな戦闘収まったものの世界中のあらゆるところで両軍の小規模な激突が続発し、そのたびに
罪のない一般人が大量に犠牲になっていた。世界を治める王のいるキングキャッスルも崩壊した。
今はキングキャッスルをめぐって両軍がにらみ合いを続けているところだ。半年間のこの激突で世界
中の人々は疲れ切っていた。都市は崩壊し、あたりには家族を失った子供が物乞いをする姿が多く
見られる。まさに地獄である。
神様は千里眼によって宮殿からも地上の様子をよく観察することができた。その惨劇に当然のことながら
胸を痛めていた。時々、ヤムチャ達にも地上の状況を詳しく伝えていた。だがそのたびに悟空、ヤムチャ
の両名が地上に降りて戦うと騒ぎだす。修行によって大幅に戦闘力をアップさせていた二人を止める
のは大変だった。いつからか、神様はヤムチャ達に地上の状況を伝えるのを辞めた。
神様は自分の不甲斐なさが悔しくてしょうがなかった。仮にも世界を治める神である。世界中の人々
はその存在を知らないとはいえ、これでも世界の平和のために尽くしてきた。だが今の自分が地上に
降りたとて大量の軍の前にいずれ力つきてしまうだろう。落ち込む神様をミスターポポがねぎらいの
言葉をかけている場面も多く見られた。ミスターポポはそのたびに横で修行を続けるヤムチャ達を
指さしてこう言った。「彼らがきっと平和を取り戻してくれる。その時のために、我々は今できること
を一生懸命やろう」と。
632 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/19 17:45 ID:???
修行も終盤にさしかかったころ、最初に来た際に説明された精神と時の部屋での修行を行うことになった
精神と時の部屋。宮殿にある、特別な部屋だ。この部屋での一年が外の世界ではたったの一日。
一日で一年分の修行ができるという優れものだ。だが、部屋の中の環境は厳しいものだった。
重力は外の10倍。気温はマイナスまで変化する。食料もまともにない。そして部屋の入り口以外
真っ白で何もない世界。常人なら一時間もたたずに発狂してしまうだろう。
神様が修行の終盤にこの部屋での修行を持ってきたのは少しでもヤムチャ達の戦闘力がアップしてから
部屋に入ってもらいたかったからだ。この部屋には一生のうち2日間しか入れない。時間を過ぎると
部屋の入り口が消滅し、二度と外には戻れなくなってしまう。この宮殿に来たころのヤムチャ達の
実力ではすぐに根をあげて部屋から出てきてしまうのは目に見えていた。それでは意味がない。
この半年間でヤムチャ達の力は大幅にアップしていた。一人一人が神様に匹敵するほどである。
神様の思惑どおり、半年間修行した後の彼らは精神と時の部屋でも根をあげることなく二日間の修行
を完遂した。全員の部屋での修行が終わり、神様はヤムチャ達を集めた。
「おまえたち・・・この半年間よく頑張った。もはや私の力を大きく超える力を手に入れている」
「本当か!?オラ達いつの間にかそんなに強くなったのかなあ」
悟空が不思議そうな顔で自分の体をじろじろと観察する。彼の性格等はまったく変わっていない。
変わったところは背の高さが半年前とは比べ者にならないほど伸びたことぐらいだ。神様は言葉を続ける
「だが強くなったとはいえピッコロ大魔王や桃白白級の敵に太刀打ちできるかはわからん。奴らの力は並たいていのものではない」
「わかってますよ。でも俺たちは強くなった。神様達のおかげだよ。きっとやってみせるさ」
ヤムチャが自信に満ちた表情でそう言った。
633 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/19 17:46 ID:???
「ふふ・・そうか、その顔を見て私の心配も吹き飛んだよ。お前達ならやってくれそうだ。だが心配事はもう一つある」
「もう一つ?」
「地球に重大な危機が迫っている気がするのじゃ。下の2勢力からではない。もっと・・・強大な・・・力を持った・・・」
「大丈夫ですよ。俺たちはそんな奴らを倒すために修行したんですから。」
クリリンもヤムチャに似た自信満々の表情を浮かべてそう言った。半年間で少し臆病だった性格も強く
たくましく成長したようだ。クリリンの言葉に皆もうなずき神様のほうを向いた。
「今のお前達に何を言っても心配無用のようだな・・・だが心にはとめといてくれ・・・さあ、行くがよい。
これ以上、地上をほっとくわけにはいかない。おまえ達の強さで悪を打ち破ってくれ。ヤムチャ、悟空。
敵討ちもいいがまずは世界平和だぞ。おまえ達の望みは私がきちんと責任を持つ。頑張るのじゃ」
「はい!!!」
ヤムチャ達はそろって気合いの入った声で返事をし、地上へと降りていった。
地上・・・キングキャッスル周辺
世界でもっとも大きな町、キングキャッスルシティー。その西側には魔族が、東側にはレッドリボン軍
が陣取っていた。お互い、姿を確認することはできるがかなりの距離が離れている。すぐに攻め込む
のは容易ではない。そんな状態が一ヶ月ほども続いていた。その間の仕事は何もない。
兵士達のフラストレーションも限界だ。刺激を求め、略奪などを繰り返す兵士も多かった。
「ふう・・・大魔王様はまだ総攻撃の命令を下さないのか?あんな人間ども、俺たちの力なら簡単なのにな」
「大魔王様は用心深いのかもしれん。作戦を練っておられるのだろう」
「作戦なんて必要ねえんだよ。ドブくせえ人間なんざ俺たち高等魔族には勝てやしねえんだからな」
「オラ達人間をなめてっとおめえたちも痛い目に会うぞ!!」
「その通りだ・・・おまえ達、俺の狼牙風風拳で、天国を旅行させてやろう・・・」
「な・・・なんだおまえ達は・・・ぐわああああ!!」
634 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/19 17:47
ID:???
キングキャッスルシティー東側・・・
「あ〜あ暇だなあ・・・またそこらへんの女でも犯しにいくか?」
「はっはっは、お前も好きだなあ。でもあんまりやらかすとレッドリボンのイメージがますます悪くなるぜ」
「何いってんだよ。元々俺たちなんて悪人だろ?今更何やったってかわらねえよ」
「それもそうだな・・・よし!今日は負けねえぞ!!俺の方が多くやるんだ!!」
「まったく・・・ちゃんと恋愛しろよ・・・情けないな・・・なあ、天さん?」
「ク・・・クリリン・・お・・・俺は恋愛など・・わからない・・なあ餃子」
「うん 僕たち いつも一緒だからね」
「わかってることはこいつらはぶちのめすべきだってことだけだね。あんた達、覚悟してくれよ」
その日、キングキャッスルに居座っていた両軍の部隊、約3000が壊滅したとのニュースを
世界中のメディアが伝えた。地上のまっとうな軍隊もこの両軍によってほぼ壊滅させられている。
これまで世界を治めて来た軍隊がまったく歯がたたなかったのだ。そんな力を持った両軍を逆に壊滅。
新たな救世主が何者かはわからないが世界の人々はその出現に歓喜した。
壮大なキングキャッスルの前に5人の男達が立っていた。そう、神様の宮殿での修行を終え、地上に
帰ってきたヤムチャ達である。神様にキングキャッスルが窮地に立たされているとの情報を事前に
聞いていた彼らは宮殿を後にすると同時に現地へと直行した。西側の魔族軍をヤムチャと悟空が。
東側のレッドリボン軍をクリリン、天津飯、餃子が。それぞれ約一時間のうちに壊滅させていた。
半年前の実力だったらおそらく一時間ねばったあげく、力つきて全滅していただろう。だが今の自分
達は全力の半分の力も出していない。ヤムチャ達は自分達が強くなったことを初めて実感した。
キングキャッスルには王が今だにいる。両軍のせいで今まで身動きがとれなかったのだ。ヤムチャ達
は王に接見するため、キングキャッスルの階段を上り始めた。
キングキャッスルでの戦いの知らせは当然、両軍のボスの耳にも入っていた。<つづく>
702 名前:哀・戦士 [sage] 投稿日:03/07/20 19:17
ID:???
<第11話>
レッドリボンと魔族の軍が一瞬ににて壊滅したこと。その知らせはすぐに両軍のボスの耳に入った。
ピッコロ大魔王はその知らせに激怒した。伝達に来たキングキャッスル部隊の生き残りの兵士を
気功波によって吹き飛ばしてしまうほど煮え切っていた。たかが数人の人間にものの一時間たらずで
全滅させられる。その時間は気にはなっていなかった。彼にとって、人間に魔族の兵がやられる
ことが許せなかった。人間ごとき、下等な生き物に自分が生み出した兵達が倒される。
ピッコロ大魔王、彼のその怒りはすぐに行動へと変化した。キングキャッスルへは舞空術を使えば
すぐだ。数人の兵を連れ、ピッコロはキングキャッスルへと飛行を開始した。
一方、レッドリボン軍の長、桃白白は落ち着いていた。長と言っても戦闘面についての長である。
レッドリボン軍の実権は創設者であるレッド総帥にあった。20年前、サイヤ人襲来後
彼らの残していった技術に最初に目をつけたのがレッド総帥だ。それまで一事業家でしかなかった
彼はその驚異的な技術力を利用しての世界征服を思いついた。彼がそんな大それた野望を思いつき
それを実行に移すことができたのは彼が世界でも有数の大富豪だったことに他ならない。
サイヤ人の撤退からまもなく、彼は世界中から科学者を集め、サイヤ人の兵器や機器の分析に
あたらせた。分析が終了した兵器はすぐに量産させる。現在、レッドリボンの兵士達が使っている
防護服や腕部携帯型ビーム砲などは当時からすでに量産されていた。分析を終えた科学者達は大量
の礼金と共にレッドリボンを去っていった。だが中にはサイヤ人達の技術力に惚れ込み、狂気的な
開発を進めていく科学者もいたらしい。そんな連中は異常者扱いされ、レッドリボンから追放された
という話だ。兵器の量産が済んだ後は、次は兵士となる人集めである。
レッドは大量の金を使って世界中から人間を集めさせ、巨大な軍隊を作った。
なかば強制的に集められたその人間達だったが地球全体が荒廃したいた当時、兵士になれば
食いっぱぐれることはないというレッドの謳い文句におとなしく従った。
こうして20年間、レッドリボン軍は少しずつ勢力を高めていき、世界征服のチャンスを探っていた
703 名前:哀・戦士 [sage] 投稿日:03/07/20 19:18
ID:???
やろうと思えば設立当時の状態でも世界征服は可能だったかもしれない。だがそこにはレッドの
こだわりがあった。世界のどんな軍もかなわない、最強の軍隊を作ってから世界を手にしたかったのだ。
桃白白兄弟を軍に招き入れたのはそんな彼のこだわりからくるものだった。世界一の殺し屋と名高い
彼らを入れることを世界征服に向けての狼煙にしたかった。彼らの力はレッドリボンの一個大隊に
相当するほどのものだった。同時に彼らは二人の弟子も連れてきた。天津飯と餃子である。
世界征服の期は熟した。もっとも天津飯達二人は軍から離反してしまったわけだが。
レッドは戦闘面での指揮はすべて桃白白兄弟にまかせていた。彼ら兄弟は殺し屋。当然金が入らなければ
無駄な殺しはしない。一般の兵士に払う礼金の何倍もの金を彼らに支払、レッドリボン軍の先鋒と
なってもらっていた。桃白白にとって世界征服などどうでもよかった。ただ大金が手に入り、いい
暮らしをしていければ良かった。レッドリボン軍など、いいお得意先ぐらいにしか思っていない。
そんな彼がレッドリボンの兵士が何人殺されようと興味をしめさないのは当然と言えば当然だった。
が、キングキャッスル軍壊滅の知らせを受けてもソファーに座ったまま行動を起こさない桃白白に
レッドが罵声をとばした。
「なんのために大金を払っていると思っているのだ!!そのうえ天津飯と餃子が裏切った・・貴様の責任だぞ!!」
桃白白はそんな罵声にも動じることなかった。
704 名前:哀・戦士 [sage] 投稿日:03/07/20 19:18
ID:???
「たかが1000人たらずの兵でしょう。私がその何倍も働いてみせますよ。だが、今はピッコロとの戦いの際負った傷が治りきっていないのだ。少し安静にさせてくれるかね?」
「そ・・・そうか。それなら安静にしていた方がいいな。お前は魔族じゃなく人間だからな。傷の治りも遅い」
傷などとうに治っていた。そうでなければ殺し屋などやってられないだろう。兵が少しやられたぐらいで
大騒ぎするレッドリボンの総帥に少しあきれていた。この軍隊、装備や数はたいしたものだが
上に立つ者がこれでは長くはあるまい・・・まあ私は金が入ればそれでいいのだが。ピッコロと
戦った際に言った言葉もテレビがあったからこその偽善。私は金が入り殺しができればそれでいいのだ。
桃白白はそのままソファーで睡眠をとりだした。そんな彼をよそにレッドはそっと兵士達に出撃の
命令を出す。目的地は当然、キングキャッスルシティー。桃白白に制されたものの、自軍の兵士達
が簡単にやられたことを見過ごすことはできなかった。約1000人の精鋭部隊が静寂の戻った
キングキャッスルシティーへと出撃した。
705 名前:哀・戦士 [sage] 投稿日:03/07/20 19:19
ID:???
そのころ、ヤムチャ達はキングキャッスルの最上階で王に接見していた。ヤムチャ達が町を救って
くれたことを聞いた王は歓喜のあまり泣き崩れる。その涙は解放の喜びと今まで殺された町民への無念
がまじったものだった。そんな王様にクリリンが声をかける。
「王様、俺たちは奴らを倒すために修行してきました。力を合わせて平和を勝ち取りましょう」
「お、クリリン〜なかなかカッコイイこと言うようになったな〜。よ、色男」
場の空気を少し読み間違えたヤムチャがクリリンをちゃかす。そんなヤムチャをよそに王が提案をする
「キングキャッスルには、まだ温存してある精鋭部隊がおります。一ヶ月間の降着状態が続いていたため、戦闘に出せなかったのです。どうか彼らと共にキングキャッスルを守ってください」
「ああ、わかってるさ!!オラ達は世界中のみんなを守ってあげるつもりなんだ!」
王の願いは悟空のあっさりとした返答によって承諾された。精鋭部隊とやらはキングキャッスルの
地下にいるという。地下に向かったヤムチャ達はそこで天下一武道会会場で出会ったチャパ王他
地上の武道の達人達を目にする。再会を喜んだ彼らは団結し、キングキャッスル防衛軍を結成した。
そう遠くないであろう、全面衝突の時のために・・・
そのころ、キングキャッスルへと向かっていたピッコロは何か妙なパワーを感じていた。
ピッコロのような上位魔族には自然や環境からのパワーを感じ取る不思議な能力が備わっていた。
ピッコロと過去に一心同体だった神様がよくこれからの予言をしていたのもこの能力のせいだ。
もうまもなく、自分の近くにすごいパワーを持った何かが現れる。それはおそらくヤムチャ達ではない。
純粋に世界征服を目標にしているピッコロにとって自分の障害になる勢力の出現には敏感だった。
だがそこは魔族の長。圧倒的な実力と自信をそなえつけている。少しの不安を覚えたピッコロだったが
所詮自分の敵ではないだろうと特に気にすることはなかった。
半年前とは比べ者にならないほど強くなったヤムチャ達とピッコロ。その対決と時は迫っていた。
<つづきます>
759 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/21 18:05
ID:???
<第12話>
しばしの静寂を保っていたキングキャッスル。だが新たな危機はすでに間近に迫っていた。
キングキャッスル防衛軍を結成し、休息をとっていたヤムチャ達だったが接近してくるパワー
の存在に気づき、外へと防衛戦をひいた。接近してくるパワーは二つ。レッドリボンとピッコロだろう
どっちがどっちだか区別までは出来なかった。だが少なくとも片方のパワーの大きさはとてつもなく
大きい。地上に降りてまもなく、敵のボスとの対決を迎えることとなったヤムチャ達。
自信と不安が入り交じり、ここちよい緊張感を感じていた。その少しの余裕も神様の宮殿での修行が
充実していたおかげだ。半年前とは違う自分たちの実力・・・敵はない・・
気を感じて敵の位置を把握することの出来ない王やチャパ王達はただただおろおろするだけだった。
「レーダーに金属反応があります!!数は約1000。レッドリボンの戦闘部隊だと思われます!」
ほこりにまみれた通信機器を巧みに使いながら、キングキャッスルのオペレータがそう伝える。
「ここに来るまでの時間は?」
「・・・約20分ほどだと思われます」
「そうか・・・ヤムチャさん達、挟み撃ちになりそうです。どうすれば・・・?」
王が震える声でヤムチャ達に問いかけた。
「レッドリボンからはたいした気は感じない。問題なのはもう一つですよ。どうやらあちらさんの大将がじきじきにおいでなすったようだ」
「・・・ピッコロ大魔王・・・!!」
「時間的にも奴らの方が早く着く。俺たちはピッコロの相手をします。みなさんはレッドリボンを食い止めていてください」
760 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/21 18:06
ID:???
そう言うとヤムチャはキングキャッスルを離れだした。悟空達も続く。王の近くで戦うことは
できないからだ。ヤムチャ達はピッコロとの対決がそれほどのすさまじい戦いになると暗示していた。
レッドリボン軍に備えて、餃子はキングキャッスルに残ることとなった。精鋭部隊や武道の達人
といっても並の人間。大群の、ましてや超技術で武装しているレッドリボン相手に持ちこたえられる
はずがない。理想としては餃子の他にもう一人、残しておきたかった。だがピッコロの実力がそうは
させてくれなかった。いかんせん、まともに戦える戦力が足りない。ヤムチャ達がキングキャッスル
を放棄せず、二戦力との対決を決意したのは一種のかけだったかもしれない。
キングキャッスルより西へ約10キロ。あたりは小さな集落が密集していた土地だったが
両軍の進行により、今は焼け野原になっている。その上空、悠々と飛行しながらキングキャッスルへと
向かっている5つの物体があった。まがまがしい外見・・・ピッコロ率いる魔族軍はキングキャッスル
の目前へと迫っていた。
「・・・ん?おまえ達、止まれ」
突然部隊を静止させるピッコロ。その目の前にはヤムチャ達、4人の姿があった。
ピッコロはしばらく彼らが何者かを理解できなかった。天下一武道会で一度対峙しているものの、
ピッコロにとって、当時の悟空や天津飯など、話にならない小物にすぎなかった。だがピッコロは
4人の中にヤムチャの姿を発見する。そうか・・・俺が感じていたパワーはこいつからだったか。
いや、違う・・・だが・・・どちらにしてもあのヤムチャとかいう人間、こいつは生かしておけない。
ついでに他の3人も血祭りにあげてやる・・・
「何だ・・誰かと思えば貴様らか。あの時はよく逃げられたもんだ。それにしても貴様らごときにやられるとは、俺が生み出した魔族の兵達も、落ちぶれたということか」
「それは違うな・・・貴様の目が節穴ということだ。あんな魔族兵なんざ、何万いたって楽勝だぜ」
ヤムチャが少しキザな顔をしながらそう言った。
「言ってくれるではないか・・・ではおまえ達がザコと言った兵の真の力を今俺の横にいるこの4人が見せるとしよう・・・」
761 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/21 18:06
ID:???
地球には、宇宙科学研究所という宇宙からの侵略や隕石の落下について調べる機関がある。
サイヤ人襲来の教訓から、地球人ももっと宇宙に目を向けなければと作られた機関だ。もっとも
20年間、たいした異常もなく、宇宙からの落下物をしらせるレーダーも作られたてから一度も
稼働したことはない。ヤムチャ達とピッコロが対峙していたちょうどその頃、建造以来、研究所の
粗大ゴミ扱いされていたそのレーダーが、地球外からの落下物の大気圏突入を知らせていた。
「地球到着、大気圏に突入します」
「ベジータ、戦闘力1000を超える反応が一つや二つじゃない・・・20年前にはなかったはずだ・・」
「ほう・・・それは驚きだな。20年で、我々サイヤ人とも対等に戦えるほどの戦士が成長したのだろう。くっくっく、面白くなってきた・・」
<つづきまつ>
916 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/23 20:12 ID:???
<第13話>
その日、午後一時十二分。宇宙科学研究所はキングキャッスルから約30キロ北西の地点に
隕石と思われる巨大な物体が落下したと発表した。
そのニュースはテレビを通じ、世界中の人々に伝えられる。だが世界の人々はたかが石ころひとつ
が落ちてきたことなど、さほど大きなニュースには感じなかった。そんなものよりもっと脅威的な
侵略行為をすでに半年間受けていたからだ。隕石?ああ、そんなの落ちてきてもその地点にいた
何人かが死ぬだけだろ?誰もがそんな軽い気持でそのニュースを見ていた。
この知らせが、自分達の立場をますます悪化させることとなる予兆だということを知らずに。
ヤムチャ達も、自分達の近くに何かが落下したことは気づいていた。衝撃波を感じ取ったからだ。
だが彼らはそんなことよりももっと重大な場面に直面している。目の前にいるピッコロ大魔王。
その顔を見れば、そんな衝撃波も、隕石か何かが落ちたかな?ぐらいにしか思わなかった。
だが、ピッコロ大魔王。彼だけは気づいていた。地球に到着した、新たな強者達の存在を。
やはり・・・俺が感じていた予感は当たった。地球に、我ら魔族に敵対する可能性のある新たな
勢力が出現した。おそらく世界征服の大きな壁になるだろう・・・現に奴等が到着した地点・・・
そこからはとてつもないパワーを感じる。一つか二つ、俺に匹敵するぐらいのパワーが・・・
目の前のこいつらは気づいていない。まだ気を探る能力になれてないと見える。障害は、未熟な
うちに叩くのが得策か・・・
ピッコロは周りにいる配下4人に、指令した。
「ドラム!シンバル!オルガン!ベース!お前達の力で目の前の4人を瞬殺するのだ。こいつらは今のうちに始末しておかねばな」
「・・・へっ、俺たちの力をようやく悟っておじけずいたか?」
ピッコロは少しの焦りを感じていた。新たな勢力は少数。だがその力はすさまじい。いくらこちら
の数が多くても捨て駒にもならないだろう。自分の同等の力を持つ存在とは一度しか戦っていない
天下一武道会での、桃白白だ。そんな奴等が少なくとも二人いる。世界征服をあきらめるわけには。
その焦りは自信に満ち溢れていた言動にも出てしまっていた。そこをうまくヤムチャに見透かされる
917 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/23 20:12
ID:???
少し目のつけどころは違ったがヤムチャに自分の心を読まれたピッコロ。
だがそんなことは構うものかと配下の4人にヤムチャ達を襲わせる。こいつらなら・・・
こいつらもヤムチャとやらも危険だが今はそれどころではない。
邪魔なこいつらなど、一気に排除してやる・・・
戦いを始める自分の配下とヤムチャ達を見ながら、腕を組みながら少し落ち着きを取り戻すピッコロ。
だがピッコロは、ヤムチャ達の力を少し甘く見ていた。
キングキャッスルから北西へ30キロの地点。
地面に一つの巨大なクレーターが出現した。穴の底にはこれまた巨大な物体が。
その中から、5つの影が上がってくる。
「・・・地球か・・・懐かしいな。ずいぶん復興したようだが・・・」
「ああ、相変わらずなかなかいい星だ。ナッパ、スカウターの反応はどうか?」
「ここから約30キロの地点・・パワーの塊がある。巨大な建造物も。そこに近づく集団が一つ。
さらに少し行ったところに大きなパワーが複数・・
いくつかは戦闘力1000を超える強力なものだ。とりあえずこの近くはこんなもんだな」
「よし、とりあえずその建物を占領して、寝床にするか。宇宙船は住みづらくてたまらん。」
「ああ、ついでに邪魔者も始末しながらな。戦闘力1000を超える奴らか・・・
もしかしたら、例のカカロットかもしれんな。バーダックさん、早速息子とご対面か?」
「ふん、この地球の安定した様子じゃカカロットは仕事を行っていなかったようだ。
そんな役立たずは必要ないさ。」
「スラッグさん、あんたには宇宙船の通信室をあずける。俺たちからの通信を受け取れるようにな
フリーザからの連絡が来たら、通信を切れ。いいな?あんたにはドラゴンボール探しの時に役にたってもらうぜ」
「へい・・・わかっておりますぜ」
「よし・・・行くか!!」
918 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/23 20:12
ID:???
「狼牙風風拳!!」
ヤムチャの高速の拳がピッコロの配下の一人、ドラムの体に突き刺さっていく。
その拳に触れた体にはとてつもない衝撃が走り、あっというまに肉片へと変わっていく。
断末魔の叫びをあげる暇もなく、ドラムはヤムチャの手によって粉砕された。その時間、約30秒。
ピッコロはその光景にあぜんとした。周りを見渡すと、すでに自分以外の魔族はいない。
ヤムチャに目がいっている約30秒の間に、全員、悟空、天津飯、クリリンによって倒されていた
「バ・・・バカな・・・」
「俺たちの力を見くびるからいけないんだぜ。ほら、今度は大将の番だ。かわいい家来達の
とむらい合戦をしなきゃあなあ・・・」
口をぽっかりと開けて驚きの表情を見せているピッコロをヤムチャが挑発する。
こいつなら簡単に挑発に乗るはず。4人で力を合わせてこいつを倒せば平和に一気に近づく。
ヤムチャ達ははやくケリをつけたかった。丁度餃子達キングキャッスル防衛軍とレッドリボン
の戦いが始まった頃だ。はやく加勢しに行かなければ。それに目の前の強敵をあちらに
向かわせるわけにはいかない。
案の定、ピッコロは憤怒した。貴様ら〜、許さん!、殺す!などの大きな叫び声があたりに響く。
「お前達こそ、その余裕は命取りだぞ。俺の真の力も見ていないくせに
大きな口を叩くなあああああ〜!!!」
ピッコロが気を開放する。あたりには一気に緊張感がただよい始めた。
「へへへ・・・ちょっと余裕をかまし過ぎだったかな・・・ま、いいや、やってやるぜ」
ヤムチャがそう言った直後、隣にいた悟空の体が吹き飛ばされた。地面に体を打ちつけ、
悶絶している悟空。ヤムチャの隣にはに目を血走らせこちらをにらみつけるピッコロの姿が。
は・・・はやい・・・・姿が見えなかった・・・
ヤムチャ達3人の頬に冷や汗が垂れてきた・・・
919 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/23 20:16
ID:???
「はやく こっち 大丈夫か?」
餃子の小さな体があたりを駆け回る。キングキャッスル周辺は、再び戦火にまみれていた。
相手はレッドリボンの精鋭部隊約1000。ヤムチャ達の予想より少し速く到着していた
彼らは総攻撃を開始していた。餃子はもちろん、世界の武道家達も必死の攻防を続ける。
勝負は互角だった。そしてそんな両軍の戦場の上空には、まだ知られていない、新たな
侵略者達の姿が・・・
「数が多くて面倒くさいな・・・ナッパ、お得意のアレをおみまいしてやれ」
「ああ、この星の住人への挨拶がわりだ・・・」
クンッ!!
あたりは光と爆炎に包まれた。キングキャッスルも、王も、レッドリボンも。
光がやみ、砂漠のように何もなくなったキングキャッスルの跡地に4人が降りてきた。
かすかな笑い声も聞こえる。寝床がなくなっちまったじゃねえか・・そう言ってるように聞こえる。
周りには焼け焦げたレッドリボン軍兵士の死体が。敵とはいえ、その遺体の無残さに
胸が痛む。あたりにはまだ生き残っている者がいるようだった。チャパ王だ。
ダテに天下一武道会に出場していないな・・・だがそんな彼を見つけた4人は彼の
手をつかみ上空へと放り投げた。でかい奴にそそのかされた長髪の男がチャパ王に向かって
気功波を放つ。落ちてきた彼の体はそれからもう動かなかった。
あまりにも残忍な性格。奴らはその亡骸を見ながら笑い出した。
まるで自分達の力を鼓舞するかのように・・・奴らの一人が目につけてある道具のスイッチを
入れだした。あれには見覚えがある。レッドリボンの兵士もつけていた。確かスカウターとか
いう道具だ。レッドリボンはあれで敵の位置を探っているらしい。ということは・・・
スカウターに電気が入ってまもなく、奴らの長身のハゲ頭が寄ってきた。
天さん・・・助けて・・・・
「もうお前一人だよ・・・おチビちゃん」< つづく>
64 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/26 15:45
ID:???
<第14話>
キングキャッスルが消滅。一瞬のうちに。世界の中心であるキングキャッスルと王の消滅の
ニュースが世界の人々へと伝えられた。一瞬にして消滅?そんなことが可能なのか・・・?
できるとすれば・・・そういえばついさっき、隕石が落下したというニュースが入った。
20年前のあの時も、大量の隕石の落下のニュースの後、世界中が火の海に包まれた。
まさか、あの悪魔達が再来したのか・・・サイヤ人たちが・・・
ことの真相を確かめるために、テレビ局の報道ヘリが現地へと向かった。
「狼牙風風拳!!」
ヤムチャは再び高速のこぶしを繰り出した。相手はピッコロ大魔王。
さすがに魔族の王。先ほどの配下とは違って、ヤムチャの拳を正確に見切り、すべてを受け流している
ピッコロの第一撃をふいに受けた悟空は思ったより重傷のようで、下から上がってこない。
だがヤムチャ達には彼に救いの手をのべる暇などなかった。3対1。いくら相手が魔族の王とは
いえ、どう考えても不利に転じる数字だ。だが、戦いが始まってからというもの、ヤムチャ達は
ピッコロに対してほとんど有効な攻撃を加えることが出来ていなかった。
クリリンも半年前とは桁違いの威力のかめはめ波を放つものの、すでにかき消されている。
ピッコロの配下を一撃でしとめた「狼牙風風拳」にいたってもピッコロの前では無力だった。
そんな中、天津飯が、新たな技を繰り出すため、気を集中させた。
「・・・四身の拳・・・!!」
天津飯の体が4人に分裂する。彼が神様の宮殿での修行中、精神と時の部屋にて一人で編み出した
必殺技だ。よって他の仲間達もその存在は知らない。戦いに必死なピッコロ、ヤムチャ、クリリン
は天津飯の技の発動に気づいていなかった。
「ヤムチャ!!クリリン!!後は俺にまかせて悟空を見てやってくれ!!」
「い・・・!!?て・・・天さんが4人・・・!?」
65 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/26 15:45
ID:???
そんな中、ピッコロの攻撃を喰らって下でしばらく動きを見せていなかった悟空。
彼は気づいていた。キングキャッスル、自分達がさっきまでいた場所に、とてつもない力を持った
悪人達が現れたということを。
「す・・・すげえ気だ・・・それに、もうあそこの人間の気はほとんど残ってねえ・・・」
ヤムチャ達はピッコロとの戦いに必死でその存在に気づいていないようだ。悟空はそれを知らせる
ために上を向いた。するといつの間にか天津飯が4人になってピッコロを翻弄している。
わけのわからない状況に少し混乱する悟空の下へ、ヤムチャとクリリンがやって来た。
「悟空!!大丈夫か!?」
「ああ、オラは大丈夫だ。それより気づかねえか?キングキャッスルに、
もうほとんど気が残ってねえことを」
「な・・なに?」
悟空にそう言われた2人はキングキャッスルの方へと意識を集中した。
防衛軍の気はもうすでに感じられない。こんなに速くレッドリボンに壊滅させられたのか?
いや、餃子がいる。いくらなんでも壊滅はかんがえられない。とすると・・この邪悪な気・・
こいつらの仕業か・・・
「ご・・・悟空・・・こいつらはなんだ?俺達やピッコロ、桃白白の他にこれほどの力を
もった奴が地球にいるなんて・・・」
「悟空、ヤムチャさん、餃子の気も感じられない・・・まさか・・・」
ヤムチャとクリリンが驚嘆の表情を浮かべながら悟空にそう言った。上空では天津飯がピッコロ
相手に頑張っている。
「よし・・餃子を助けに行こう!!たぶん気を抑えているだけだ。死なすわけにはいかねえ!」
「ああ!!その前にお空の大将をなんとかしないとな・・・」
天津飯の攻防も限界を迎えようとしていた。序盤、4人同時攻撃という予想外の攻撃にリズムを
狂わされ、押され気味のピッコロだったがじょじょに挽回を始める。
「4人は4人でも1人を4等分しただけか・・・ふふふ・・・おしまいだな」
66 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/26 15:46
ID:???
「ぐわあっ!!」
ピッコロが4人の天津飯に対して的確に攻撃をヒットさせる。
そのダメージにより、天津飯の技が解け、4人は再び1人に戻った。攻撃を受け、
痛む体を押さえている天津飯の下へ、下からヤムチャ達が駆けつける。ピッコロがにやっと笑みを見せた。
「ふはははは!!4人がかりでその程度か?さっきのでかい口はどうした!!」
ヤムチャは天津飯に耳元で何かをささやいた。それを聞いた天津飯は握り拳をぎゅっと握り締め
キングキャッスルの方へと顔を向けた。
「今度は内緒話か?それとも死ぬ相談か?ははっははっはははっは!!」
口を大きく開け、馬鹿笑いしているピッコロに対して悟空、ヤムチャ、クリリンの3人は天津飯を
中心にかめはめ波の構えをとった。天津飯は仁王立ちしている。
「ん?またその技か!?さっき破られた技を何人でやろうが結果は変わらんぞ」
「天津飯!!」
「太陽拳!!」 「か〜め〜は〜め〜波!!!」
「うおおおおお!!」
キングキャッスルへと急いで戻る4人。後ろでは爆炎が火を噴いている。
「餃子・・・待っていろよ!!」
「きっと大丈夫だ。ピッコロも、太陽拳で目もくらみ、俺達のかめはめ波をまともに喰らった。
すぐには追ってこれないだろう」
「あと数分で着く。急げ!!」
「ぐ・・・またあの技か・・・うかつだった・・・ダメージが意外と大きい・・・奴らは
キングキャッスルへと向かったか・・・!!・・・あの正体不明の力を持った奴らも・・・
うまいぐあいに同士討ちになってくれればいいものだ・・・」
67 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/26 15:46
ID:???
砂漠地帯のように何もなくなってしまったキングキャッスル。
戦争の起きた跡地はこんな風になるのだろう。死体が転がり、焼け焦げた匂いが充満している。
そんな地獄にも似た場所に立つ4人の男。そしてその中でももっとも長身でスキンヘッドの男
の腕には、小さな、小さな傷づいた体がつかまれている。体は動かない。死んでいる?いや
まだ生きている。だがその男は今にもその体を握りつぶそうとしている。
「やめろー!!!」
ヤムチャ達はキングキャッスルの替わりように我が目を疑った。さっきまであんなに人がいて
にぎやかだったのに・・・そして殺される寸前の餃子。目の前の見知らぬ4人の男達・・・
何が起こったんだ・・・
「餃子を放せ。さもないと、俺達がお前を殺すぞ」
天津飯が必死に怒りを抑えているようなごもった声でそう言った。
「なんだ・・・このチビはお前達の仲間か?いいぜ、そんなチビ殺したってつまらねえしな」
長身の男は餃子を無造作に投げ捨てる。天津飯はそれを抱きかかえ、餃子の生死を確認する。
「生きている・・・良かった・・餃子・・なんでこんなことに・・・」
何か、機械の稼動している音が聞こえる。ピピピピピ・・・見ると、小柄な男がスカウターを
稼動させ、ヤムチャ、天津飯、悟空、クリリンの順で、じろじろと体を観察していった。
「戦闘力・・・1220・・・1378・・・1407・・・1178・・・この程度か・・・
確かに1000は超えているが、この程度とはな・・・」
「おめえ達・・・何者だ・・・?なんでこんなことをするんだ!!」
悟空が怒りの声を上げる。それを見た4人は少し、驚いた表情を見せた。そっくりだ・・・
バーダックさんに・・・まさか・・・この青年が・・・
「久しぶりだな・・カカロット。とは言ってもお前はまだ赤ん坊だった。覚えているわけないか・・」
182 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/27 18:19
ID:???
<第15話>
「・・・カ、カカロット・・?なんだ?」
悟空がきょとんとした表情を見せる。その悟空に向かって、奥から一人の男が向かってくる。
顔に傷がある・・・髪型は、悟空にそっくりだ。まさに瓜二つである。そういえば
さっきの声の調子もそっくりだった。
赤ん坊だった?まさか・・・この男が悟空の父親だと・・・?
ヤムチャ達は状況がよく理解できていなかった。だが、ふと近づいてくる男の下半身に
目がいった。すると、見覚えのある物がケツにくっついている。尻尾だ・・・
「し・・尻尾だ・・・こいつらにも、昔の悟空と同じ、尻尾がある・・・」
「昔の・・・?カカロット 貴様、尻尾はどうした!?」
男が突然怒声を上げる。
「ちょっと前に、神様って人が取っちゃったよ!!それがどうしたってんだ!!」
「ぐ・・・愚か者め・・・」
「何が愚か者めだ!!町をこんなにしやがって・・・おめえ達はなにもんだ!!」
悟空も負けじと怒りをあらわにする。すると、横にいるヤムチャ達戦士達もとっさに構えをとる。
ヤムチャ達はすぐにでも目の前の男達との戦いが勃発するものだと感じていた。
「サイヤ人・・・」
「・・・!?」
「俺達は・・戦闘民族、サイヤ人だ!!!」
「サ・・・サイヤ人・・・サイヤ人って・・まさか、20年前の・・・」
クリリンや天津飯、そしてヤムチャは驚愕する。悟空はサイヤ人という言葉自体をしらないのか、
たいして驚きを見せていない。だが、そんな悟空の人生において、もっとも衝撃的な事実が
告げられようとしていた。
「そして、この俺はバーダック。カカロット・・・貴様の父親だ!!!」
183 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/27 18:20
ID:???
「な・・・なんだと!?でたらめを言うな!!」
「では詳しく説明してやろう・・・あの日・・・巨大な隕石が突然落ちてきた・・・」
男の名はバーダック。元サイヤ人、地球侵略部隊、第1編隊の隊長である。
20年前、サイヤ人が地球に襲来した際、彼はその先鋒として地球へ降り立った。
サイヤ人は戦闘民族である。適当な星を見つけてはそこの人々を滅ぼし、異星人に売る。
バーダックとその編隊は、約一ヶ月のうちに、地球の3分の1ほどを制圧した。
毎日のように地球側の抵抗は続いた。だが、所詮は戦車や戦闘機など、原始的な兵器。
蹴散らすのはたやすかった。軍隊が出撃しては全滅。サイヤ人が地球におりたってから
一ヶ月半。その頃になると地球側も敵わないと悟ったのか、軍を出してくることはなくなっていた。
なんともろい民族・・・バーダックはこのつまらない制圧作戦を早く終らせようと
編隊に総攻撃の命令を出す。が、そんな彼らの元へ、悪夢が降りかかる。
地球に落下してきた巨大な謎の物体・・・総攻撃の用意をしていたバーダック隊は、皮肉にも
その巨大な物体の下敷きとなり壊滅。一瞬の出来事だった。物体をかわす余裕もなかった。
生き残ったのは、前線よりも少し後方にいたバーダック、サイヤ人の王子、ベジータ、その下僕
ナッパ、そしてバーダックの息子、ラディッツだけだった。その彼らも爆風によって
相当のダメージを負ってしまう。もはや、動くのが精一杯だった。はやく、宇宙船に帰って治療を・・
そんな極限状態のさなか、宇宙で待機中の、サイヤ人の大型宇宙船が巨大な物体の直撃を受けて、
沈んだとの知らせが入る。バーダック達、サイヤ人が乗ってきた宇宙船だ。これでは治療が
できない・・・惑星ベジータに帰って手当てをしなければ、俺達も・・・生き残ったバーダック達
4人は、やむなく、地球制圧を諦め、地球降下の際に使用した小型宇宙船で母星、惑星ベジータ
へと退却した・・・
「俺は考えた。俺達が退却しても、地球人を壊滅させられる方法を。
そこで俺は地球で生まれた息子を残し、地球人をうまく掃除してくれるようにインプットした」
184 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/27 18:20
ID:???
「そ・・・それが悟空とでも言うのか・・・!?」
話を聞いていたヤムチャがバーダックに問いかける。
「そうだ。だが、俺がインプットした命令は、どうやら実行されていなかったようだな。
命令さえ覚えていれば、今頃地球は第2の惑星ベジータになっていたはずだ」
バーダックはさらに話を続ける。彼らの星、惑星ベジータは、彼らが帰還する直前に、
巨大隕石の衝突によって消滅したという。行き場のなくなった彼らを拾い、治療を施したのは
フリーザという人物が率いる軍だった。それ以降、バーダック達は、フリーザ軍の一部として
新たな人生を歩むこととなった。だが、それは彼らにとって、苦痛の日々の始まりでもあった。
誇り高いサイヤ人は、人の下にされることを嫌う。だが、多勢に無勢。サイヤ人の生き残りが
4人いたところで、フリーザ軍には敵わない。フリーザは、それほどの大勢力を持った
男だった。それに従わざるをえなかった・・・
「だが、そんな日々ももうすぐ終る。この地球を制圧し、ドラゴンボールとやらを手に入れられればな」
「ド・・・ドラゴンボール・・・!?知っているのか・・・」
ヤムチャやクリリン、ドラゴンボールの存在を知っている人間は、その言葉に強く反応してしまった。
それを見たベジータは彼らに問いかける。
「貴様ら、ドラゴンボールのことを知っているな?俺たちに教えるんだ・・・」
「・・・く・・そんなことしたら、地球が・・メチャクチャになってしまうじゃないか!!」
「ならば、力ずくでも教えてもらうしかないな・・・」
ベジータは構えをとった。それに合わせて、ヤムチャ、クリリンも構えをとる。
天津飯も、餃子を下におき、力を入れ始めた。
「カカロットよ・・・死にたくなければ俺達の仲間になれ。貴様はまだ戦闘力が完全ではないが
それでもサイヤ人の生き残りだ。貴様の兄も・・・それを望んでいるぞ・・・」
後ろでは、ラディッツが不敵な笑みを見せている。
「冗談じゃねえ!!おめえなんか、父ちゃんじゃねえよ!地球からかえらねえと、ただじゃすまねえぞ!」
185 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/27 18:40 ID:???
「そうか・・・残念だ・・・ならば貴様らにはここで死んでもらうしかないようだな・・」
ヤムチャの横では、悟空がこれまでにないほど、怒りをあらわにしている。
無理もないか・・・突然現れた親が地球を滅ぼしに来た侵略者。現にキングキャッスルを
壊滅させている。悲しい出会いだ・・
悟空にとっては悟飯さんが唯一の肉親だったんだ。悟空は悟飯さんを本物の親の
ように慕っていた・・・
俺もそうだった・・・俺も亀仙人のじいさんを本物の親のように・・・
待てよ・・そういえば、俺の両親は・・?物心ついた頃からじいさんとウミガメはいた。
だがじいさんは年齢的に考えて俺の親とは考えにくい・・じいさんも、俺の親のことは
語らなかったな・・・なぜだ?今までたいして考えることもなかったが。
俺の両親は、誰なんだ・・・今、生きているのか・・・?どこにいるんだ・・・
「ヤムチャ、何をぼーっとして考えているんだ?今はそんな場合じゃないぞ」
「あ・・・・ああ」
天津飯に注意され、再び構えをとるヤムチャ。両雄の緊張感は、まさに一触即発の状態だった。
そんな中、対峙する両雄の所へ、魔族の王、ピッコロ大魔王が近づいていた。<つづく>
259 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/07/29 20:43
ID:???
<16話>
悟空の正体・・それは、20年前に地球にやって来た侵略者サイヤ人の戦士
バーダックの息子だった。バーダックは20年ぶり、それもほとんど関わりのなかった
息子、悟空に対して自分達の仲間になって地球を壊滅させようと言う。
だが悟空の心は地球人。体はサイヤ人の肉体を持っているとしても、そんな誘いに乗るはずがない。
悟空はその誘いを拒否し、サイヤ人達に対しての怒りをあらわにする。
ヤムチャ達も当然、地球を守るため、サイヤ人に対して断固として戦う覚悟だ。
そんな緊張感が漂うキングキャッスル跡地上空に、一機のヘリが訪れた。
テレビ局のヘリが、取材のためにやって来たようだ。中にはマイクを持ったアナウンサーと
カメラマンが見える。
「・・・キングキャッスルは、跡形もなく消え去っています!信じられません!!
その跡地に、何人かの人影が見えます!・・カメラさん、こっち回して・・・・
ご覧になれますでしょうか!?10人ほどの人影が・・・・・・ま・・まさか・・・・・
サイヤ人です!!サイヤ人が再び地球にやってきました!!あの、戦闘服・・・間違いありません!」
アナウンサーの興奮している声が、世界中のテレビに響く。やはり、サイヤ人が現れた・・・
もう地球は今度こそ終わりだ・・・世界にこれまでにない絶望感が漂い始めていた。
「操気・・・弾・・・!!!」
ヤムチャが右手を上にかざし、拳に気を集中し始めた。
それを合図に、悟空達も一斉にサイヤ人集団に突撃してゆく。
だがサイヤ人の王子、ベジータは余裕の表情だ。こいつらの戦闘力はたいしたことない・・
「その程度の戦闘力で・・・」
「ベ・・ベジータ・・あの長髪の奴の戦闘力がどんどん上がっていく!!・・1550・・・
1780・・・2097・・・!!!」
365 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/01 19:04 ID:???
キングキャッスル跡地において、サイヤ人対ヤムチャ達の戦いが始まった。
まさに地球の運命をかけた決戦である。ヤムチャが新必殺技「操気弾」を発動させる。
ヤムチャ達5人は神様の宮殿での修行中、それぞれ新必殺技を編み出していた。
天津飯の四身の拳もその一つだ。ヤムチャの「操気弾」。それは手の平から放出した気弾を
手の動きや脳波でコントロールし、敵を攻撃するというものだ。戦う相手からしてみれば、
敵が一人増えたような状態になる。だが体力の消耗が激しく、頻繁に使用することはできない。
ピッコロとの戦いで使用しなかったのは、そのためだ。先手必勝、ヤムチャは敵の出端をくじく
ために、しょっぱなからこの技を使った。ヤムチャの身体の周りに、無数の気弾が漂っている。
「操気弾・・・ばっ!!!」
ヤムチャの合図とともに、操気弾達がサイヤ人に向かって突撃を開始する。
それは、悟空達にとっての戦闘開始の合図でもあった。相手は4人。一対一で勝負をつけてやる・・
ヤムチャが放った複数の操気弾。そのいくつかは、ナッパ、ラディッツ、バーダックをとらえ、
その動きを一時膠着させることに成功する。そのスキをつき、悟空達が先制攻撃をしかけた。
父、バーダックには息子、孫悟空。ナッパには天津飯。餃子を痛めつけられた怒りを叩きつける
つもりだ。残ったクリリンの前には、悟空の兄、ラディッツが立ちはだかる。
そして操気弾集団のメインは、サイヤ人の王子、ベジータに向かって突撃した。
「こんな子供騙し・・・」
そう言うとベジータは向かってくる操気弾を余裕で交わし、上空へと退避した。
ベジータはヤムチャの位置を確認する。・・・いない・・・どこだ・・・!?
首を振り、あたりを見渡すベジータ。周りには戦いを始めているバーダック達の姿のみ。ヤムチャはいない
スカウターが突然、反応を示す・・・後ろから大きな戦闘力・・・!?
「狼牙・・・風風拳!!!」
「ぐうっ!!」
背後から現れたヤムチャが、ベジータに攻撃を加えた。ダメージはたいしたことはない。
後ろを振り返ると、気合のこもった表情をしているヤムチャの姿が見える。スカウターはまだ戦闘力の計測を続けていた。
366 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/01 19:05 ID:???
「せ・・戦闘力・・・2400・・・2960・・・3370・・バカな・・!!」
ベジータは計測の終ったヤムチャの戦闘力に驚いた。さっきはたかだか1000程度の戦闘力だったのに。
一気に俺達と同じ程度のレベルに・・・さっきの動きを確認できなかったわけだ・・・
ベジータのスカウターは、まだ反応を続けていた。周りの悟空達の戦闘力、それを計測している。
「2900・・・3068・・・3450・・・信じられん・・・
こいつら・・・戦闘力を自在に操りやがる・・・!!」
「余所見してる場合じゃないぜ」
ヤムチャ達の戦闘力の高騰に少し、驚きの表情を見せているベジータに、ヤムチャが不意打ちをかけた。
ヤムチャの握りこぶしはベジータの頬を打ち抜き、その身体を岩へと叩きつける。
不意をつかれたベジータ。口の中で血の味がする。口の中と頬を切ったようだ。地球人ごときに・・・
唇から垂れる血をぬぐい、ベジータはヤムチャへと突進した。上空で二人の身体がぶつかりあう。
互角。お互いに、一撃を加えては一撃もらう。一進一退の攻防。だが、必死の攻防を見せるヤムチャ
に対してベジータの動きにはまだ余裕がある。
(俺の戦闘力は3800・・・地球人ごときには負けはせん!!)
上空のヤムチャ達の真下では、悟空達3人が戦いを繰り広げている。
天津飯VSナッパ。ナッパはその豪腕から繰り出す一撃を武器に、天津飯に迫る。
対する天津飯はスピード勝負。ナッパの動きを交わし、翻弄する。時々近づいては攻撃を加える。
だが、ナッパの筋肉の壁の前では効果は薄いようだ。こちらも勝負はほぼ互角。
手数で上回る天津飯が押しているように一見見える。餃子をやられた恨みによって、能力が高まって
いるようにも思える。
クリリンVSラディッツ。天津飯達から少し離れた場所で、ぶつかり合っている。
この戦い、クリリンが圧倒的に押している。ラディッツは防戦一方だ。ラディッツは小技を多量に
使用してくるものの、クリリンにすべて阻まれている。小さな身体でラディッツを叩きのめしている
クリリンの顔は、たくましく見えた。<つづく>
581 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:18
ID:???
<17話>
サイヤ人と、まがりなりにも互角の戦いを続けるヤムチャ、クリリン、天津飯の3人。
それとは対照的に、孫悟空は一人、苦戦を強いられていた。
相手は実父のバーダック。元、サイヤ人戦闘部隊隊長。
その実力は今でも健在で、4人となったサイヤ人の中でもっとも高い戦闘力を誇る。
サイヤ人の王子、ベジータでさえもその存在に一目置いているほどだ。
実力の差は、他の3組に比べ、明らかだった。まさに親と子ほどの力の違い。
悟空の天性の俊敏性、パワーもバーダックの前ではまったく役に立たない。
バーダックは、戦闘開始から、一歩も動くことなく、悟空の攻撃を迎撃していた。
右方向から正拳突き。ひらりとよけられ腹部に膝蹴り。
かめはめ波を放ち、同時に背後から足蹴り・・上半身をそらしてかめはめ波を回避。
背後から突撃する悟空はその直撃をくらう。
そしてバーダックの攻撃。我が子に躊躇無く攻撃を加える。
スピード、パワー、どれをとっても桁違い。それは、離れていたヤムチャ達にも感じられた。
「か・・・勝てねえ・・・オラの攻撃が・・紙一重の所で・・・」
ピッコロ以来の強敵に出会った悟空。しかもそれは始めて会う実の父。
強い相手と戦って勝つことが何よりもうれしい悟空も、さすがに苦言を漏らす。
身体も傷だらけ。右足に深手を負ったようだ。動きが重い。
「カカロット、血が繋がっていようが貴様は我が一族の恥だ。死んでもらうぞ」
バーダックは右手人差し指を悟空に向けて、エネルギーを集中し始めた。
収束されていくエネルギーは、鋭利な光弾へと変わってゆく。悟空の身体などいとも簡単に
貫いてゆく強力なものに・・・
「やめろ!!自分の息子を・・・」
その状況に気づいたヤムチャが悟空の救援に向かおうとする。相手はサイヤ人の王子。
はいそうですかと道を開けてはくれない。悟空と同様、ヤムチャも戦いながら気づいていた。
このベジータという男も、自分を凌ぐ力を持っていると・・・
582 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:18
ID:???
「カカロットにはこれから死刑が執行されるのだ。我ら民族を裏切った罪でな。
貴様にそれを邪魔させるわけにはいかん・・まあ俺達の言うことを聞かず、地球人として
死んでいくバカな仲間の最後を見届けるがいい・・・」
そう言ったベジータ。一刻も速く救援に向かいたいヤムチャ。当然、目の前の障害を排除する。
複数存在していた操気弾もベジータにすべて迎撃されてしまった。もう一度、あれだけの数を
出す体力は残っていない。ヤムチャはベジータの真の力の存在に気づいていた。だがかなり疲れているはず。
肉弾戦に持ち込む。ベジータはすでにヤムチャの遠く上の領域にいた。
互角だった2人だったが形勢逆転。悟空の救援を考える余裕は一気に消し飛んだ。防戦一方。
大技をしょっぱなから出したヤムチャ。それに対し、ベジータは真の力を終盤まで見せることなく
体力を温存していた。根本的な戦闘力の違い・・・それもある。
だが戦闘においての駆け引きの差・・・戦いではそれが重要になる場面も見られる。
特に実力が近い者同士ではなおさらだ。ヤムチャは思った。はじめから、こいつの真の力を見抜き、
こっちも力を温存しておけば、勝機はあった・・戦闘民族サイヤ人。
実戦経験が違いすぎる。これが平和に慣れた者と、戦闘を生きる術のしている者との差か・・・
「天津飯!!クリリン!!ご・・悟空を・・悟空を助けるんだ!!」
天津飯はナッパとまさに互角の戦いを続けていた。お互いに動きは鈍ってきている。
だが、他の事を考えている余裕はない。仲間を助けることよりも、対峙している敵の事を考えるだけで
いっぱいだ。
ラディッツを倒したクリリンだったが、一瞬見せた油断をつかれ身体を押さえつけられる。
倒したといっても、少し意識を失わせた程度。とどめを刺すにはいたっていなかった。
だがラディッツは、クリリンの全身の骨を折らんがばかりの力を込めてくる。圧倒的優位と感じていた
油断があった・・・動こうともがくクリリン。その目線の先には、悟空の姿があった。
「悟空ー!!!」
バーダックの手から、まっすぐな、一筋の光が放たれた。
「やったか・・・」
ベジータがそう言いながら笑みを浮かべた。そのスキに、ヤムチャは悟空の下へと向かう。
倒れこんでいる悟空。その腹部には、大きな傷跡が・・・まるで、丸太で腹をぶち抜いたようだ。
とめどなくあふれ出てくる鮮血。ヤムチャは傷口を必死で押さえる。
「ぐあああああああ」
急所は少し外れている。即死を免れた悟空。だが痛々しい叫び声をあげている。
このままでは苦しみ、もがきながら、確実に死ぬ・・・!
583 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:19
ID:???
「カカロット・・いや、もはや聞こえないか。横にいる長髪、カカロットを死なせたくなければ
俺達に従い、俺達のために働くと誓え。そうすれば、宇宙船の治療室で傷の手当てをしてやる。
どうだ?悪くない話だろ?」
上空から降りてきたバーダックがそう言った。悟空はそんな決断はできない。
いや、出来たとしても当然、答えはNOだ。自由なのはヤムチャのみ。答えに迷う。
悟空は死ぬ・・・だがこいつらに従えば死なずにすむ。けど、地球は・・・
「くっくっく・・・迷っているな。だが断れまい・・貴様らはくだらん人情とかが好きらしいな。
20年前に、地球人のことは知り尽くしたつもりだよ・・・」
さらに、ヤムチャは苦悩する。そうだ・・・従ったふりをして、悟空を治してもらう・・・
そして、奴らに信頼感を与えた後、裏切る。そうすれば、奴らに不意打ちを与えられるし、
宇宙船を破壊することも・・・しかし、そう簡単にいくのか・・・!?
後ろからはベジータがやって来た。前後から強敵ににらまれながらヤムチャは様々な考えを頭に
めぐらせ、最もこの場をうまく乗り切る方法を考えていた。クリリンが「だまされるな!」と
叫ぶ声も、ヤムチャの耳には入っていない。・・・どうする・・・ヤムチャの顔からはものすごい
量の脂汗が滴り落ちていた。
「ス・・スカウターに反応が・・!!強力な戦闘力が・・・すぐ近くに来ている!!」
584 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:19
ID:???
ラディッツのスカウターが反応を示している。戦場の雰囲気が一気に変わった。
ヤムチャ達も、あたりに精神を集中するが、大きな気は感じられない。集中力を欠いているから
だろうか。
「そいつの戦闘力はどれくらいだ?あとどれくらいで視認できるようになる?ラディッツ」
「・・・戦闘力・・・3500・・・こ・・・この位置は・・真上・・!!真上です!!」
そう叫ぶと、ラディッツは真上を向き、太陽に向かって指差した。
まぶしい光の中・・・小さな影が見える・・・まるで、太陽の黒点のような・・・
「拡大して見てみろ。どんな奴で何をしようとしているのか、確認するんだ」
ヤムチャ達の上空・・・そこには魔族の王、ピッコロ大魔王の姿があった。
先ほど受けた傷も、ここまで飛んでくる間にふさがっていた。魔族の傷の治癒は早い。
その分、ここに来る時間もかなりかかってしまったようだ。ピッコロは下のヤムチャ達を確認すると
彼らに向かって気功波の構えをとった。
「俺様の爆力魔波を全力で放てば、あそこにいる連中は形も残らないだろう・・・
そして俺はこの場を立ち去る・・・奴らは俺の動きがわからない・・・そしてこの世は魔族の物に
謎の敵も正体はわからんが、一気に消し去ってやる・・・」
ピッコロは気を集中し始めた。全エネルギーを込めた一撃を放つために・・・
「・・・姿を確認・・こちらに攻撃態勢をとっています!!・・ナ・・ナメック星人・・・
敵は、ナメック星人です・・・!!」
「戦闘力がどんどん上がっていきやがる・・3800・・4150・・・4406・・・」
ヤムチャ達はやっと気づいた。ピッコロだ・・俺達を追って、ここまでやってきたんだ。
だが、さっきのような不意をついた攻撃で、この場を逃れることは出来ない。
上からはピッコロの全パワーを込めた一撃。周りにはサイヤ人。ここまでか・・・
「死ねー!!!」
585 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:20
ID:???
キングキャッスルがあった地に、再びすさまじい衝撃が走った。
ピッコロの一撃は、一瞬のうちに地表へと到達。大爆発を起こす。
周りにあった山まで吹き飛んでいる。ナッパの放った一撃とは桁違いだ。
「これでは・・・生きてはいまい・・・」
全パワーを込めた一撃は、ピッコロの体力を著しく消耗させた。
舞空術で浮かぶのも精一杯だ。自然に地上へと落ちていくピッコロ。
だが奴らは死んだ。地上で少し休めば体力はすぐ回復する・・・今だ爆炎の納まる気配のない
地上に向かって、ピッコロは降下を続けた。
「・・・ま・・・まさか・・・貴様は・・・」
「か・・・神様・・・」
数分後、ピッコロは自分が予想していた光景とはまったく別の状況に直面していた。
目の前には神・・・つまり自分の分身がいる。会うのは数百年ぶりだった。
神は何か結界のような物を張っていた。その後ろには、ヤムチャ達が瀕死の悟空をかばうように
よりそっている。そうか、この結界で奴らを助けに来たのか・・数百年ぶりの自分の分身との対面。
だが、周りには他にもゲストがいた。
「ナメック星人が二人・・・と言うことは、どちらかが、スラッグの言っていた龍族とかいう奴ら
の天才児・・・ドラゴンボールを作った奴か・・・」
サイヤ人達ともピッコロは初対面である。20年前の襲撃の際は、まだ目覚めていなかった。
3つの勢力が顔を合わせる。厳しい顔をしている神様に向かって、バーダックが話し始めた。
「そこのナメック星人さんよ、ドラゴンボールとやらを作ったのはあんたか?俺達はそれを
探してるんだ。分けてくれないかね?」
「・・・・・・」
586 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:21
ID:???
「言うことを聞かないのなら、力づくでも聞かせてやるぞ・・・」
神様の隣・・突然ミスターポポが現れた。宙に浮かぶじゅうたんに乗った彼は、ヤムチャ達を
それに乗せ始める。それを確認した神様が口を開いた。
「そう、ドラゴンボールを作ったのは私だ。だが、貴様らに渡すわけにはいかない」
「・・・そう言うと思っていたよ。では、後ろの連中と同じように、あんたも痛めつけるとするか・・」
「それも御免こうむる・・・」
「な・・・何!?」
神様はさらに言葉を続ける。
「ドラゴンボールを作ったのは私だ。そのドラゴンボールは、私の生命力があって、この世に
存在している。私が死ねば、ドラゴンボールはこの世から消滅する」
「・・・・・・」
「貴様らがドラゴンボールを欲していることは知っている。そして、それに正に命を懸けていること
もな。だが、この場で我々に危害を加えるようなことがあれば、私は自害する覚悟がある・・・
それは困るだろ?」
「・・・く・・・」
「ピッコロよ・・それはお前にとっても同じことだ。お前と私は一心同体。どちらかが死ねば
片方も死ぬ。」
「・・・・・か、神め・・・」
「どうする・・・?我々とまだ戦うかね?」
「・・・・・ふ・・・見逃すしかなかろう・・だが、俺達は諦めんぞ。この星に、ドラゴンボール
があることはわかった。後は徹底的にこの星を破壊しながら、手がかりを探すだけだ・・・」
バーダックは、拳を握り締めながらそう言った。
「・・・貴様らの思い通りにはならない・・・肝に銘じておけ・・・ミスターポポ、行くぞ」
神様はそういい残すと、ヤムチャ達の乗るじゅうたんにまたがり、その場を後にした。
588 名前:哀・戦士[sage] 投稿日:03/08/06 23:21
ID:???
ヤムチャたちが去った後、その場にはピッコロとサイヤ人のみが残った。
ピッコロの体力はほぼゼロ。たった数分では戻らない。それはスカウターでも確認済みだった。
走って逃げても捕まる。戦っても殺される。ピッコロは生まれて始めて、恐怖というものを
実感した。
「貴様も逃がしてやる・・・貴様が死ねばさっきの奴も死ぬんだろ?
それではドラゴンボールが消えてしまう・・さあ、行け!!」
バーダックは先のことを考え、ピッコロを生かすことにした。魔族の王、生まれてこのかた
味わったことのない屈辱である。だが一矢報いる力も残っていない。
ピッコロは何も言わず、その場を立ち去った。
サイヤ人達も、ナッパ、ラディッツの両名はそれなりの傷を負っていた。
「お前らの傷を治してからだ。地球人を、根絶やしにする・・・・」
神様の宮殿・・・
「ミスターポポ、カリンの所へ行って仙豆をもらってくるのだ。悟空は一刻を争う状態だ」
「はい 神様」
傷ついたヤムチャ達。たった一日で修行場へと逆戻りだ。地上を救うために、降りたのに・・・
「手ひどくやられたな。ずっと見ていたよ・・・」
神様が、ねぎらいの言葉をかける。
「神様が来てくれなければ死んでいました・・・本当に助かりました・・・」
「そうか・・・危機一髪だったな・・うっ・・・」
「神様!!」
突然、座り込む神様。ピッコロの一撃を防いだ結界を張るために、体力を使いすぎたようだ。
「神様、あなたは地球の神だ。簡単に自害するなんて言わないでくれよ」
「ふ・・神が自殺できるわけない・・・見事なハッタリだったろう?」<続く>