病的な




第13話

ブルマ「元に戻れないだと〜〜〜っ!」

ベジータ「ぅえーん。一生、男のままなの〜〜!?」
ペタンと女の子すわりをして、泣き喚くべジータ(ブルマ)。

ブルマ「オレのカラダで泣くなぁぁぁぁっ!」

ブリーフ「おやおや、どうしたんだい?」

ブルマの母「ベジータちゃんも泣くことあるのね。うふふ。可愛い〜〜」

ブルマ「お前らまでくんなぁぁぁっ!」

パニクっている二人。
そこへ呑気にヤムチャがやってくる。
ヤムチャ「どうしたんだ?願い叶えたのか?」

ベジータ「それが……元に戻れないっていうのよ〜〜!!」

ヤムチャ「…マジ!?…なんで?」

ベジータ「ベジータが神様の力も大きく超えているから、その者のカラダとかをどうこうすることできないって……」

ヤムチャ「へぇ……だったらさ、あの入れ替わる機械の材料を出してもらえればいいんじゃないのか?それが足りないだけなんだろ?」

ベジータ「そっ、そうか!かしこいっ!」

ヤムチャ「……やっぱアホかも……」

こうして、入れ替わる機械を作るのに足りなかった金属を神龍に頼んで出してもらった。

ベジータ「よかった〜〜!これさえあれば何とかなる!一時はどうなることかと思ったわ!」

ブルマ「よし!すぐつくれっ!さっさと元に戻るぞ!」
嬉しそうにはしゃぐブルマ(ベジータ)。
……が、そんなブルマ(ベジータ)にベジータ(ブルマ)はニヤリと怪しく笑いかける。

ベジータ「あら?その前に何か忘れているんじゃないの?」

ブルマ「……何がだ?」

ベジータ「あたしに一言謝ることを」

ブルマ「なにっ!?」

ブルマ(べジータ)は最初の状況に戻ったことに気づいた。そして、目の前の相手が自分を謝らせるために今回の作戦を仕組んだことを思い出した。

ヤムチャ「す……すごい執念だ……」

ブルマ「きさまぁ〜〜………」

歯をギリギリかみ締めながら、ワナワナと震えるブルマ(べジータ)。
ずいずいっとブルマ(べジータ)はべジータ(ブルマ)に近づいていくが、当のべジータ(ブルマ)は落ち着いたもの。

べジータ「あら〜〜?戻りたくないの?もう戻れる準備はできるのよ?
あなたが一言、ごめんなさい、って言えば戻れるのよ?」

ブルマ「くっ……!!」

何も言い返せぬブルマ(べジータ)はガックリと肩を落とし、家へと入っていった。
どうあがこうと今のべジータ(ブルマ)には敵わないことをこの数日のうちで悟っていたのだ。
かといって、謝るのもプライドが許さない……二つの思いの板ばさみで、ブルマ(べジータ)の心は疲弊しきっていた。

ヤムチャ「あれ……やけにあっさりだな……」
きょとんとしているヤムチャ。
この数日で二人の間に起こっている内心の変化など知る由もない。

べジータ「ふふっ。さすがに参ったみたいね……。あと一押しってとこかしら♪」
さっきまで、どうしよ、どうしよと困惑だったのに今は優越感たっぷりのべジータ(ブルマ)であった。



その夜−。

ベッドに寝転び、手を掲げて見つめるブルマ(ベジータ)。
細い腕。触っただけでに折れてしまいそうなほどに。
だが今は紛れもなく自分の腕。
そしてこんなカラダでいることがひどく頼りなく,そして恐ろしく感じていた。
当たり前だ。生まれてこのかたずっとこの腕っぷしだけに頼って生きてきたのだ。
その拠り所が今はもうない。地球の強情でわがままで下品な女に奪い去られてしまったのだ。
強烈なプライドもあの強靱な肉体に支えられてこそあったものだ。
今の自分のプライドもこんなか細い女のカラダの中でひどく脆いもののように思えてきた。
べジータ(ブルマ)に頭をさげることよりもこのままカカロットに差をつけられていくことの方がプライドが許さないこともわかってきた。

ブルマ「仕方ない。こんなところで終わるワケにはいかんのだ…!」

決心し部屋を飛び出し,ブルマの部屋へと駆け出した。

途中,ヤムチャとすれ違う。片手にはコーヒーを。のんびりとウォークマンを聞きながら歩いてくるヤムチャ。

ヤムチャ「…あれ…どこにいくんだ?」
ブルマ「ジャマだ!!」
気安く言い寄ろうとしたヤムチャをブルマ(ベジータ)は突き飛ばす。コーヒーが手に掛かって悲鳴をあげるヤムチャ。
ヤムチャ「あっちゃちゃちゃ……!!まったく!何だってんだ!バーカ!べジータのバーカ!
一生、戻れないでいろ!アーホ!…あ、いやそれじゃ駄目じゃん!俺が困る!!」
なんとも情けない。


ブルマ「おい。入るぞ」
ぶっきらぼうに言い放つブルマ(ベジータ)。中からは慌てたような「ちょっと待って」かつての自分の声が聞こえる。
ドアがひらいて中からベジータ(ブルマ)が現れる。
ベジータ「な…何?…謝る気になった?」
ブルマ「ああ」
ベジータ「……え?」

予想外の答えに言葉が出なくなるベジータ(ブルマ)。ちょっとした沈黙のあと。ブルマ(ベジータ)の口から信じられない言葉が飛び出した。

ブルマ「オレが悪かった。だから戻してくれ」
ベジータ「………」

呆然としているベジータ(ブルマ)。まさかこの男(今は女だが)からこんなことが聞けるとは…。

ブルマ「頼む!元に戻ってもお前に何もせん!」
ベジータ「ふぅん……反省したようね」

安堵の表情のブルマ(ベジータ)。……べジータ(ブルマ)も満足げな表情で答える。

べジータ「わかったわ……。ふふ、そういうと思ってね、もう明日の朝には直るわ」

ブルマ「ほっ…ホントか!!」

元に戻れると思って喜んだのは何度目か。今度こそ本当に戻れるのだ。ブルマ(べジータ)の顔は喜びに満ちていた。
そんな元自分の顔に頬を赤らめるべジータ(ブルマ)だったが……

べジータ「ただし……」

ブルマ「え……」

まだ何かあるのか…と思い、ピクっとこめかみがうごくブルマ(べジータ)。

べジータ「ちょっと明日、元に戻る前にこのカラダ使わせてもらうわ……」

ブルマ「なにっ……」

べジータ「安心なさいって。変なことには使わないわ」



そう……。あいつの尻でもちょっと叩いておきたいのよね……。
愛するあの人の……




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