病的な




第五話


ヤムチャ「な…なぁ。……やっぱりさ……」
夕食後、ヤムチャはベジータになった恋人を再び説得しようとしていた。ベジータ(ブルマ)でリビングでソファーに座りながらコーヒー片手にファッション系の雑誌を読んでいる。

ベジータ「しつこいわねぇ!……あたしやめないわよ!」
ギラリとべジータの顔でヤムチャをにらみ付けるべジータ(ブルマ)。オカマっぽさが加わった、より不気味なべジータの迫力にヤムチャはたじたじだ。

ヤムチャ「だってなぁ……いつまでもそんな汗臭そうな男でいると…」

ベジータ「ただヤリたいだけでしょ!あんたは!」

ヤムチャ「バ……バカ言うなよ。そんなことじゃないぜ(プーアルで我慢できるしな…)」

べジータ「あんたが修行して強くなってべジータを倒すくらいになったら、すぐ戻るわ」

ヤムチャ「無理!」

きっぱりと男らしく断言するヤムチャ。そのすがすがしい潔さにべジータ(ブルマ)は呆れ果て、ため息をついた。
(あたしへの執着なんてそんなもんだったの?)
何時の間にか頼りがいがなくなった目の前のボーイフレンドにさまざまな疑念が湧いてくる。

べジータ「じゃあ、戻ってやんない」

ヤムチャ「オレはたださ…、お前のカラダがあいつに使われるのが……その……いいのか?」

ベジータ「何がよ……!?」

ヤムチャ「あいつ…その…風呂とか入るときにお前の裸とか見ちゃうわけで…」

ベジータ「ぶふっ……!そ…そういえばそうだわ!!」
コーヒーを噴出すベジータ(ブルマ)。
ばっと立ち上がって、ベジータの部屋へ走っていく。

ヤムチャ「……あ…あいつ……頭が天才なのかアホなのかわからん……」



ドンドンッ!ドンドンッ!!
夜もふけたというのにカプセルコーポレーションがゆれんばかりの激しい音が響いている。
ベジータ(ブルマ)が顔を真っ赤にしてベジータの部屋のドアを必死に叩いているのだ。

ベジータ「ちょっと!いるんでしょ!出てきなさいよ!」
返事はない。
ベジータ「あ……あいつぅ〜〜〜まさか、あたしのカラダで……もうっ!」
べきっ!!
ベジータ(ブルマ)がドアノブを叩き壊す。今の身体では造作もないことだ。
…が感動しているヒマはない。すぐに部屋へと入り込み大声で怒鳴る。

ベジータ「なにやってるのよ!あんた……って……あれ…?」
部屋の中には誰もいない。
ベジータ「ったくぅ!あいつったらどこ行ったのよ!!」

部屋から出て廊下をウロウロといったりきたりしていると、トイレからブルマ(ベジータ)がぬっと現れた。目を合わせる二人。
気まずい空気が流れる。

ベジータ「な……なにやってたのよ……」

ブルマ「……な……なに言ってやがる……」

ベジータ「あ……あんた……見た……?」

ブルマ「な……何をだ……」

わなわなとふるえるベジータ(ブルマ)にぎこちなく目をそらすブルマ(ベジータ)。

ベジータ「見た………のね……。
ゆるさ〜〜〜ん!このスケベェェェェ!!」

ブルマ「ばっ!バカ言うな!じゃ……どうしろと言うんだ!漏らせとでも言うのか!!」

ベジータ「わ……わかっているけどゆ…ゆるせない〜〜!」
顔を真っ赤にして怒りに打ち震えるベジータ(ブルマ)。

ブルマ「いい加減にしろ!もとはお前がやったことじゃないか!」

ベジータ「もともとの原因はあんたでしょっ!」

ブルマ「フン……!それにキサマなんぞの裸など興味はない!
こ…こんな胸!歩くだけでも邪魔だ!!」
と自分の豊満な胸をむんずとつかんで大声を張り上げるブルマ(べジータ)。

ベジータ「よよよよしなさいよ!!あんた、何やってんのよぉぉ〜〜!!」
元自分の体の痴態を見るに見かねてべジータ(ブルマ)は怒り出した。
パシっとブルマ(べジータ)の胸を掴んでいる手を軽く叩く。
そのとき、べジータ(ブルマ)の手が元自分の体の胸に偶然触れてしまった。

べジータ(や…やわらかい!)
男のごっつい手でふくよかな元自分の胸に触れたため、その柔らかさに驚くべジータ(ブルマ)。
反射なのか、興味深々なのか、相手の胸をそのままもみはじめる。

ブルマ「あっ………。…!?…なっ……何をやっているかぁぁ!!やめろ!!」

べジータ「あっ………。何よ!!あたしのカラダよ!」
ブルマ(べジータ)の怒鳴り声ではっとわれに返ったべジータ(ブルマ)、顔を赤くしながらも怒鳴り返す。
(あ〜〜…おかしくなりそ……)
内心では妙な倒錯感で興奮気味だ。

ブルマ「てめぇのカラダなら、さっさと元に戻せ!!元に戻ってからてめぇのカラダいじくりやがれ!!」
一方、ブルマ(べジータ)の方は、かつて感じたことのない感覚にどぎまぎしながら、憤慨する。

ブルマ「……い……言ったわねぇぇ……!
な…なによ…人を痴女みたいに
……………もういいわ!戻りましょ!」

ブルマ「ほ…ほんとか……」
ブルマ(ベジータ)の顔がコロッと安堵の表情に変わる。
ベジータ(腹は立つけど……まぁいいわ。少しはこらしめてやったし、ちょっとくらいは反省しただろうしね……。もう少し、このカラダで遊びまわりたかったけど……)



―――研究室。

ブルマ「い…いつ戻れるんだ…!?」
やっと修行を再開できるとうずうずしているブルマ(ベジータ)。たった一日でも身体を鍛えないと不安でたまらない様子だ。それを見て呆れ顔のベジータ(ブルマ)。
(こいつ……体鍛える以外に興味ないの……?ったく……)

ベジータ「まぁ……装置自体は簡単だから、すぐできるわよ。明日にでも完成するから」
ベジータ(ブルマ)はぶっきらぼうに言い放つ。まだ少し納得がいってない様子だ。
(……ったく。謝らせてやりたかったわ!……でも好きでもない(っつーか嫌い)男に自分のカラダをいじくりまわされんのもいやだし!
仕方ないわね……。)

ブルマ「そ……そうか」

ベジータ「今日はさっさと寝てよね!……ねぇパパ。この金属ってまだあったっけ?」

ベジータ(ブルマ)は、研究室で何かを組み立てているブリーフに尋ねる。

ブリーフ「……ベジータ君かと思ったらブルマだったな。んーー?そりゃ知らんぞ。何の金属だ?……それってお前がナメック星から持ち帰ったというヤツじゃないのか?」

ベジータ「え……そ…そうだっけ……?」
ドキッと目を丸くするベジータ(ブルマ)。

ブルマ「お…おい。大丈夫なんだろうな!?」
部屋に戻ろうとしていたブルマ(ベジータ)が足を止めてブルマ(ベジータ)の方を振り返る。

ベジータ「あ……あはは……。どうしよ……材料がない……」

ブルマ「なんだとぉぉぉぉぉぉ〜〜〜!?」

はてさて……入れ替わった二人どうなりますことやら。


ヤムチャ「な…なんという強引な展開だ…むにゃむにゃ……」
ヤムチャは寝言で意味深なことを呟いていたが、まぁ特に重要なことではない。




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