病的なベジブル
第四話
カプセルコーポレーションにブルマ(ベジータ)をおぶって帰るヤムチャ。
来たときと同様にブルマの匂いそして柔らかさを感じる。だがその中身はあの凶悪なベジータなのだ。妙な倒錯感に襲われるヤムチャ。
互いに一言も言葉を交わすことなくカプセルコーポレーションに到着する。
ヤムチャの背から降りるとブルマ(ベジータ)は何も言わずに駆け出した。
一直線にブリーフの元へ。
大股で下品に走るブルマ(ベジータ)。途中ですっころぶ。
すぐに息があがってしまうこのカラダが非情にいらだたしい。
胸が激しく揺れて走りづらい。全力で走ってもこの程度のスピード…もどかしい。
イライラしながらもブリーフの研究室になぐり込む。
ブルマ「はぁっ…はぁっ…おいっ!オヤジ!これと同じものを作れ!!」
ぶふっ…。
コーヒーを吹き出すブリーフ博士。研究室のドアがいきなり乱暴に開けられ,乱暴な口調で娘に怒鳴られたのだ。無理もない。
ブリーフ「なななななに言ってるんだ?ブルマ。」
ブルマ「と…とにかくこ…これを見るんだ!これと同じのを作れ!」
ブリーフ「…???…。まぁ見てみよう…っか…」
あくまでも命令口調のブルマ(ベジータ)。ブリーフは銃を慣れたてつきで分解する。
小一時間ほど配線をいろいろいじくった後,首をかしげる。
ブリーフ「これは無理だよ。誰が作ったんだ?」
ブルマ「お前の娘だッッッ!!」
ブリーフ「へ!?」
ベジータ「やーっぱりね」
ふいに後ろで声がする。
見ると研究室の入り口にベジータ(ブルマ)が立っていた。
ブルマ「!!…もうきやがった!!」
ブリーフ「あれ?ベジータ君じゃないか。戻ってきたのか?」
ベジータ「父さん。ワケあってあたしとベジータは入れ替わっているのよ。だからそっちがベジータ。ね?ベジータ。」
ブリーフ「ほえ!?」
ブルマ「ちぃッッ!」
ベジータ「空の旅は快適だったわ。あんた,凄い速度で飛べるのね。目がまわるかと思ったわ〜。
ところで…残念ながらその銃はあたししか知らない技術を使っているのよ。父さんも知らないわ。全宇宙であたししか作れないのよ。ウフフ」
ブルマ「…こ…こうなったら…」
ベジータ「あれ?まだ諦めないの?」
ブルマ「ドラゴンボールだ…!ドラゴンボールさえあれば何とかなる!!」
ベジータ「プッ…!あははははは。」
ベジータのカラダのブルマが突然吹き出す。
ブルマ「あんたねぇ。何もわかってないのね。どうやってドラゴンボール探すのよ。レーダーは?仮にあたしが作ってあげてあんたにあげたとしても…
そのカラダでどうやって探すの?飛べもしない。かといって地球の乗り物の操縦の仕方もしらない…。いえ…。もし知っててもたやすく集められると思う?
あたしが昔1人で集めようとしてどんなに苦労したか……。
今のあんたはか弱い女性なのよ?女の子なのよ?」
(女の子はないだろ…女の子は…。むしろおばさんに近いんじゃないか?)とブリーフは何か思った。
ブルマ「く…くっそぉぉぉ〜〜」
完全に失意のどんぞこにつきおとされたブルマ(ベジータ)。
こんなことをしているうちにカカロットとの差はどんどん広がるばかりだ。素直に謝ってしまったらどうか?元に戻ったら消してしまえばいい。いや…オレのプライドがゆるさん………困惑のブルマ(ベジータ)。
ブルマ「…フン!まだだ。まだあきらめんぞ〜!」
ベジータ「うふふ。勝手するがいいわ。でも早く謝った方が身の為よ。こうしてる間にも孫くんはどんどん強くなっていくんだし」
ぐさっときつい一言を言われるブルマ(ベジータ)は,ふらふらっと庭に出て寝そべった。
優越感に浸るベジータ(ブルマ)。これほどまでこの男を叩きのめすことができようとは。これで、あの男から「すまない」の一言が聞ければ……想像しただけでウズウズしてくる。
ヤムチャ「なぁ……やっぱやめないか……?」
夕食前のひととき、キッチンでの光景を見て吐きそうになったヤムチャはベジータ(ブルマ)に言った。
ベジータ「なに言ってんのよ。これからじゃない。復讐は」
ヤムチャ「でも…謝って元に戻ったらアイツ何するか…。それにさ……何かベジータが鼻歌うたって、花を飾ってんのを見るの気持ちわりぃし……」
ベジータ「何よぉ!もともとはあんたが頼りないからこういう手段になったんでしょ!
だいじょうぶだって。すぐ戻るから!
それよりベジータにごはんだって呼んできてくれる?」
ヤムチャ「…は…はい…」
こうも強くベジータ(ブルマ)に凄まれてはヤムチャも反論できない。まぁブルマの顔で言われても同じなのだが。庭でふてくされているブルマ(ベジータ)のベジータを呼びに行く。
ブルマはだらしなく庭の木によりかかって空をぼーっと見上げていた。
完全にやられた…と思っているのだろう。こんなにも精神的にこっぴどくやられたのはフリーザにつづいて二度目かもしれない。
ヤムチャ「へぇ…こうしてみると…ブルマの意外な表情も…おい!ベジータ!ごはんだぞ!」
ブルマ「いらん!!」
ヤムチャ「そういうわけにはいかんだろう…。ブルマのカラダだし。いつもの屈強な肉体じゃないんだぞ」
そのとき,ブルマ(ベジータ)の腹から轟音が鳴り響いた。空腹を知らせるけたたましいシグナルだ。
ブルマ「ちっ!」
顔を赤くして仕方なく食堂にむかうブルマ。
艶のある髪…くっきりとしたくびれ…豊満なヒップ…細くきれいな足…その後ろ姿を見て,未だこの中にベジータが入っているなんて信じられないヤムチャであった。
ブルマ「うぇっぷ…。どういうことだ。もうくえん…」
がつがつと下品な食べ方をした挙げ句吐きそうになっているブルマ(ベジータ)。
ベジータ「あたりまえでしょ。あたしのカラダなんだから…。(こっちはいくらでも入っちゃうわ…太らないかしら…まぁアイツのカラダだしいっか…)」
ブリーフ「まさかベジータ君とブルマが入れ替わるとはなぁ。あっはっは…新鮮でいいわい」
ブルマ母「ホントね〜。可愛いベジータちゃんも男っぽいブルマさんもステキよ〜〜」
のんきな二人。
(なんつー親だ…)とヤムチャは心の底から思った。