病的なベジブル
第一話
カプセルコーポレーションに男女の声が響きわたる。
ブルマ「あんたねぇ。家の壁を壊しておいて何偉そうなのッ!?」
ベジータ「フン!うるさい!あんな脆い壁だから悪いんだ!!」
ブルマ「脆くないわよ!あんたがバカ力すぎるのよ!!」
ベジータ「ふん!」
男の方は口ではかなわないと見てさっさと戦線離脱する。自分で開けた壁の穴から外へ飛び出る男。
昨日もおとといもその前の日も毎日のように繰り返されている口論。
そんな様子を見て女の恋人――ヤムチャは疑問に思う。
ヤムチャ(何でベジータの奴を追い出さないんだよ…)
ブルマとベジータのぶつかりあいはベジータがカプセルコーポレーションにやってきたその日から始まっていた。
言い争いのネタなどどこにでも転がっている。
片や重力室を直せ,飯が少ない,俺に話しかけるな……片やモノを壊すな,食料を食べ尽くすな,夜は静かにしろ……
だが,ブルマはそんなベジータを追い出そうとはしない。ヤムチャは不思議に思っていた。むしろ,互いの衝突を楽しんでいるようだった。
ヤムチャ「なぁブルマ。何であいつを追い出さないんだ?迷惑だろ」
一度聞いたことがある。自分も居候の身…でかいことは言えないのだが。
ブルマ「まぁわがままなペットをかっていると思えばいいのよ。張り合いがあっていいわ。それにねけっこう可愛いところもあんのよ。アイツ!」
ヤムチャ「……そうか?まぁお前がいいのならいいけどさ」
ブルマの器の大きさに感心するヤムチャ。
しかしある日の朝食時のこと。
今までの二人の口ゲンカではもっとも大きな声が鳴り響いた。
ブルマのものだ。
広い食堂で二人が言い合っている。ブリーフ,ブルマの母親それにヤムチャも同席している。
ブルマ「な…な…何ですってぇ!!もう一度言ってみなさいよ!」
わなわなと震える声でベジータに怒鳴る。
いつもはブルマの文句を無視してその場を離れるベジータだったのだが,このときはついに口に出してしまったようだ。ブルマ自身への不満を。
ベジータ「何度でも言ってやる!キサマのような下品な女は初めてだとな!!」
ブルマ「あたしのどこが下品なのよ!!」
ベジータ「目を合わせればガミガミ言うその減らず口だ。サイヤ人の女を見習わせたいぜ。フン」
ブルマ「出てけっ!帰ってくるな!」
ベジータ「言われんでも…ブフッ!」
ブルマの投げた茶碗がベジータの顔面にめりこむ。
ベジータ「何しやがる!!きさまぁ〜〜!!」
今にもブルマをなぶり殺しそうな勢いのベジータ。そこにヤムチャがわってはいった。
ヤムチャ「や…やめろよ!ベジータ!相手は女だぜ!!」
ヤムチャの台詞が終わらないうちにベジータはヤムチャの懐へ一瞬にして入り込む。そして,ヤムチャのアゴにアッパーを…入れる寸前で止めた。
ヤムチャ(は…速い…見えなかった…)
生唾を飲むヤムチャ。
ベジータ「フン…。軟弱者め…」
今の一発が決まっていれば確実にヤムチャは天井を軽く突き破り上空まで吹っ飛ばされていただろう。全治4ヶ月…やられ経験豊富なヤムチャの頭脳が数値まではじき出した。
くるっとヤムチャに背をむけるとベジータは食堂から出ていった。
ヘナヘナとその場に座り込むヤムチャ。
ちょっとチビっていた。
……大のほうも。
そのヤムチャの様子を一部始終見ていたブルマ。どこか哀しげであった。
ブルマ「アイツ〜〜。絶対復讐してやるわ!!」
朝の騒動も終わり,冷静になったブルマ。ぶつぶつ言いながら食堂を後にする。
ヤムチャ「復讐ってどうやってだ?」
ブルマを追いかけながら問うヤムチャ。くるっとブルマは振り返り言う。
ブルマ「あんたがもっと強ければ,あんたにお願いするわよ〜!あいつを倒してくれってね!ホント頼りないんだから!」
ヤムチャ「む…ムチャいうなよ…。あいつら化けモンなんだから……」
ブルマ「まあ,いいわ。いい考えがあるから」
ヤムチャ「え?な…何だ?」
ブルマ「ナメック星に言ったときにね。おもしろい戦士がいたらしいのよ。フリーザの部下で…。クリリンくんたちに聞いたんだけどね…ウフフ…」
ヤムチャ「な…何者だ?」
ブルマ「内緒♪」
そういって研究室に入り,扉を閉じてしまうブルマ。
ヤムチャ「ちぇっ…何だよ。俺には教えてくれてもいいだろうに。おもしろくねぇ。プーアル誘ってドライブにでもいこ〜〜」
研究室に閉じこもって何かを作っているブルマ。できあがったものは――…。