ドラゴンボール最後の願い

 

第33話 さようなら。二人のトランクス

 

 


成長した方の未来トランクス(2)は,同じ時代にいる自分に会わないうちに自分の世界へと帰っていった。
彼の時間軸では5年以上も経っているのだ。

パンやブラとも会いたかっただろうが,この時代にいる自分自身に会ったりしたらパラドックスも生じる可能性もある(※)

優しい未来トランクス(2)はがっくりしているヤムチャを放ってはおけなかったが,ヤムチャは早く帰るように促した。

 

ヤムチャ「気にするな!トランクス!オレの詰めの甘さのせいだ。お前には本当に世話になったよ!本当に……未来……しっかり守れよ!」

トランクス「ヤムチャさんも……お元気で。」

ヤムチャ「………お前もな………」

トランクスは無理に明るい顔をしているヤムチャを見ながら寂しそうに時空の彼方へと消えていった。

ヤムチャ「さて…今度はあいつに無事に帰ってもらわんとな。今,帰ったあいつがここに来れなくなる」

そういって森から飛び出し,ブウとベジータの戦いの場へと戻っていった。

 

 


一夜あけすっかりよくなった現代トランクス。

彼が起きた頃にはもう未来トランクス(1)は自分の世界へと帰ったあとだった。

 

現代トランクス「ああー。帰っちゃったのかぁ〜…タイムマシンでかえるんだからゆっくりしていけばいいのに……」

トランクスはぼやいた。

ブラ「大変だったのよ。パンちゃんが泣いちゃって」

ブラが目を腫らして言った。ブラも大泣きしたらしい。

現代トランクス「オレも別れを言っておきたかったなぁ…。世話になったし…」

ブラ「世話って?」

現代トランクス「いやぁ〜。オレさ,肝心のところで腹痛でリタイヤしちゃったんだよね…。それで駆け付けてくれた未来のオレに薬をもらってさ」

ブラ「え…っ。かっこいい方のお兄ちゃんはずっと気絶してて…すぐに帰っちゃったはずなのに……」

現代トランクス「……へっ!? 確かにあいつ…っていうかオレの声だったんだがなぁ」

ブラ「……まぁいいわ……。むこうのお兄ちゃんはかっこよくて,こっちのお兄ちゃんはかっこわるいってわかったし!」

現代トランクス「お…おい!ブラ!!
あーあ。向こうのオレは人気者だな…」

 

未来トランクスは戦いのあとすぐにパンとブラ,ブウ,そしてヤムチャだけに見送られながら自分の世界へと戻っていったのだ。

あれからヤムチャが仙豆をカリンから貰い,未来トランクスとパンにのませた。

ベジータとブウは既に戦いをやめていた。
空が暗くなったことでドラゴンボールが使われたことを知ったのだ。
ベジータはデンデが最後に願いを叶えたことに腹を立てもせず「そうか…」と呟いただけで,すぐにブルマの待機している場所へと消えていった。

その姿を見て未来トランクスは何か言いたそうだったが,おいかけはしなかった。

ヤムチャが「また会える。オレたちの過去の時代で」とトランクスに助言したのである。

結局,この時代でのベジータのことはほとんど何もわからなかった。
だが…。とヤムチャは思う。

わからない方が,セルに自分が殺されベジータが怒ったことがわかったとき,喜びが増すのではないか…と。

トランクスのタイムマシンのエネルギーはブラが持っていた反重力飛行船用の特殊ガソリンで間に合うようで,満タンにいれてもらった。予備の分もかなり貰い,自分の世界に帰ったあと,またすぐに過去へと行けるようだ。

パンがもう一日くらいここにいてよと泣き叫んでいたが,トランクスは「早く未来をこの世界のように平和したいんだ」と言って,すぐに元の世界へ帰ることになった。

ブラも泣きながら「こっちのお兄ちゃんには帰る世界があるのよっ」とパンを説得していた。

「ごめんね。パンちゃん。オレ…むこうの世界に帰ってもパンちゃんのこと忘れないよ」と,トランクスもパンの頭をなでた。共に世界を飛び回った時間はほんのわずかだったが,それでも皆の心にできた絆は深いようであった。

トランクスがマシンを点検しながら,ヤムチャに問う。

トランクス「そ……それでヤムチャさんの願いは叶ったんですか?…プーアルさんの病気……」

ヤムチャは心なしかうっすら哀しげな笑いを浮かべて「ああ」と言った。

ヤムチャ「トランクス…ちょっと相談ごとがあるんだ。」

トランクス「はい。何ですか? この世界でのことは再び過去に行ったときは話しませんよ。知っていることがでてきても驚くふりをしますよ」

ヤムチャ「それもそうなんだけどな。オレらの世界での戦いが終わったあとでも,自分の世界で人造人間を倒したあとでも
いつでもいい。
エネルギーに余分ができたら……またこの時代に来てオレを助けてくれないか?
時代は今日の……」
時間と場所を伝えるヤムチャ。ここで伝えなければ予定調和は崩れ,パラレルワールドができあがってしまう。

トランクス「…?? ええ。わかりました」

デンデの汚い作戦を彼に伝えておけば,対策はとれるはずだったのだが,

デンデが叶えた『神を敬え』という願いによって,デンデを出し抜こうという思いはわいてこなかったのであった。

宙にふわーっとマシンが浮く。それを見送るヤムチャ,パン,ブラ,ブウ。皆,腕がもげるくらい激しく手を振っている。

 


トランクスも哀しげに,優しげに手を軽くふると…

次元のひずみの中へと消えていった。

 

ヤムチャ「サンキューな。トランクス。また頼むわ。ちょっとだけ過去のオレを助けに……」

トランクスを見送ったヤムチャの瞳は哀しいほど澄んでいた。

争奪戦は終わったが,ヤムチャにとってすべて終わったわけではない。

願いは叶えられなかったが,協力してくれた皆との約束を果たそう…。

そしてそれが終わったらプーアル…お前と共に………

 


オレも逝く。

 

 

 

 

 

 

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※タイムパラドックスに関しては興味深いところですが、よくわからんです。
以下、小難しいことはイヤンという人は読まないで下さい。
丁寧に説明しないのでw
未来トランクス(1)と未来トランクス(2)は完全に同一人物だとするなら、
未来トランクス(2)が、未来トランクス(1)だったときに、未来トランクス(2)、つまり未来の自分にあっていなければ、
未来トランクス(2)は、未来トランクス(1)に会う心配する必要はないわけです。
・・・わかりますかね・・・。
しかし、ドラゴンボール世界ではパラレルワールド説をとっていますので、
予定調和は簡単に崩れてしまうわけですよねぇ・・・。
つまり、もしかしたら、未来トランクス(2)は未来トランクス(1)に会ってしまう可能性もあるわけで、
そうなった場合、未来トランクス(2)は未来トランクス(1)とは別人のパラレルワールド同士の人物になってしまうわけで。
それともどうやっても未来トランクス(2)は未来トランクス(1)に会えないのか?・・・いや、しかしそうなるとパラレルワールド説は・・・。

仮に、ヤムチャが未来トランクス(1)が未来に帰るとき、「助けに来てくれ」と伝えなかったならどうなるのでしょう。
もちろん、「助けに来てくれ」とちゃんと伝えたからこそ、未来トランクス(2)が来てくれたわけで、来なかったらヤムチャはフリーザに殺されていました。
もし「助けに来てくれ」と伝えなかった場合、パラレルワールドが誕生するわけですが、その場合、死んでしまうヤムチャはどこのヤムチャなんでしょう。うーん。わからん。
どうなんでしょう。まぁこれは誰か考えてください。