ドラゴンボール最後の願い

 

第27話 駆け引き

 

 


ベジータ「………ところでブラはいつの間に!?」

ベジータが訝しげにブルマに尋ねる。先ほどまで家でウロウロしていたのに。

ブルマ「うふふ。あの娘もドラゴンボール集めようとしていたらしいのよ。それでまんまとヤムチャにやられたってわけ!
…で,ヤムチャの情報をよこすから小遣いアップよろしくですって。
あなたが仮眠をとっている間に無線連絡してきたのよ」

ベジータ「……で,ほかにどんな情報をよこしたんだ?」

ブルマ「うーん。やっぱりあんたが言った通りだったわ。悟飯くんは既にリタイヤしてるって言ってきたわ。」

ベジータ「くっくっく。ならば残すはヤムチャたちか……。」

当初,最後の敵となりうると想定していた悟飯と悟空が完全に姿を消したのである。
余裕の笑みを浮かべるベジータ。

ブルマ「しかし戦況はいいとは言えないわ。悪くもないけど。
まずむこうのボールの在処も動きもさぐれない。レーダーがこれじゃあね」

ベジータ「……そうだな。ブウは気を消せないが,そこにボールはあるとはかぎらん。ブウに振り回されてスキを突かれる可能性はあるな」

ブルマ「……ねぇ。ベジータ。ここは一つハッタリをかまさない?」

ベジータ「…何だ?それは?」

ブルマ「……決闘よ……」

ポツリとブルマは言った。

 


サタン邸の会議室で作戦を確認しあっているヤムチャ一味。

いきなりヤムチャの携帯が鳴る。
ブルマ特製の恐ろしく頑丈なもので今までズボンのポケットに入れていたのだが,全く平気だったようだ。
交友関係の広いヤムチャなのに,今までその携帯が鳴らなかったのは変だというつっこみはナシである。おそらくプライベートと使い分けているのだろう。
当たり前のように全世界のほとんど区域で通話可能である。

 

ベジータ『よぉ。オレだ。』
不機嫌そうに低い男の声がスピーカーからもれる。

ヤムチャ「ベジータ!?」
(へへ。やっぱりアプローチしてきたか……)

ベジータ『どうやったか知らんがドラゴンボールを集めたようだな。
やはりずる賢いやり方は得意のようだな……くっくっく』
(何人もたぶらかして仲間にしたんだろ…)

ヤムチャ「お…お見通しってわけだな……」
(てめぇらこそずるいやり方しやがってヌケヌケと……)

ベジータ『このままお互いボールを隠しあっていても埒があかん。
……どうだ?互いのボールをかけて戦うってのは?』
(びびっているのか演技なのかわからんな……コイツ……)

ヤムチャ「な……なにっ!断る!お前なんかにゃかなわん」
(やっぱりな……)

ベジータ『ふん。タヌキめ。
お前が何人も助っ人を集めているのを知っているんだぞ。
パンにトランクス…そしてブウ…だな。』
(アホウめ。キサマの手の内はわかっているんだ)

ヤムチャ「ブ…ブウだぁ…!?ば…ばかなこと言うな!!」
(知られているのはわかっているぜ。)

ベジータ『隠しても無駄だ。お前らの気の動きからわかっているんだ。
おそらく…実力はオレとブウなら互角くらいだろう。
それにお前とトランクス,それにパン……4対1ならもしかしたら勝ち目はあるんじゃないか?まぁオレも手加減はせんがな…くっくっく』
(まぁブラが内通者だがな…)

ヤムチャ「ちっ。ばれてるとはな…。
しかし……て……手加減なしかよ。だが…確かにこのままじゃ埒があかん」
(バーカ。気を消して行動してるんだからわかりっこねぇぜ。ブラから連絡がいったんだろーがよ…)

ベジータ『……だろ?
オレだって今すぐキサマの場所へ飛んでいってボールの在処を吐かせることだってできるんだ?それを敢えて決闘というカタチにしてやるんだ』
(気を消しているからわからんが,ハッタリだ)

ヤムチャ「わかったぜ。よし場所と時間は…」
(気を消してんだからオレの居場所はわからんだろ…嘘ばっかこきやがって)

ベジータ『3時間後…場所は無人の岩場であるFS200650CC…でどうだ?互いにドラゴンボールを持ってくること…』

ヤムチャ「わかった…。いいだろう」
(けけけ。)

 


通信を切る両者。

ベジータはブルマにむかってニヤリと笑みを送る。

ベジータ「ブウが仲間になっているのは間違いない…。」

ブルマ「うん。サタンシティからの通信だったわ……」

ベジータ「とりあえずはブラの情報は信頼できるものか…。
くっくっく。ブウとは………久々に腕がなるぜ。15年前の屈辱を晴らしてくれる」

ブルマ「ちょっと…やりすぎないでよ」

 

一方ヤムチャは…。

ヤムチャ「予想通り決闘を持ち込んできた。
ブウが仲間になったと知れば,焦って一網打尽にしようと。
手間がはぶけたところだが…みんな…。油断するなよ…。」

ベジータたちからアプローチがない場合は,ヤムチャの方から連絡を入れるつもりだったのだ。「こちらにはブウもトランクスもパンもいる。決闘で勝負しないか」と。
埒があかないのはこちらも同じ。
ボールの在処がわかっても傍らには現在,地球最強のベジータがいる。
どうにかしてベジータを出し抜かなければならなかった。

 

いよいよ決戦の火蓋が切って落とされた。

ヤムチャ…ベジータは決戦の舞台へと足を運ぶ。

 

 

数時間後…………。

争奪戦を勝ち抜いた者のドラゴンボールの願いは叶えられた。
ドラゴンボール最後の願いが……。

そしてその願いを叶えることができたのは………

 

………ヤムチャではなかった。


空にヤムチャの咆吼が轟いた…………。

 


 

 

 

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