ドラゴンボール最後の願い

 

第20話 覚醒

 



突然の大爆発。

台風以上の爆風が下に広がる針葉樹林をなぎ倒す。もうもうとあたりに立ちこめる爆煙。

パン「なっ…何よ……」

ヤムチャ「ごほっ…ごほっ。一体何が……。こ…この気は…まさか…」

煙の中からはまだ姿が見えないが,強大な気の持ち主がこの中にいることは明らかだった。

パン「こんな邪悪な気…。知ってるの?ヤムチャさん?」

ヤムチャ「知っている。ずっと前から…。そしてついさっきもこいつに会った。
だが…この時代ではなく25年も前にな…。そして今またこの瞬間に…」

何か意味深にかっこいいことを言おうとしているヤムチャだが,パンはさっきの張り手で頭の回路がおかしくなったかなと思っていた。

煙が消えてゆき,中からは日の光に照らされて輝く白いボディが現れた。その肉体には何の機能があるのか大げさなまでに装飾された機械が装着されていた。

宇宙の帝王……フリーザ(メカ)である!

 

フリーザ「はぁーっ!危なかった!!緊急用衝撃クッション(耐用時間1分)と足のジェットがなければ死んでいたぞ!くっそぉぉぉ。あの猿どもめ!
もう許さん。ドラゴンボールで永遠の命を手に入れたいところだったが…。
この星ごと吹っ飛ばしてくれる!!」

独りごちっているフリーザをポカンと見つめる二人。

フリーザが最後に発した言葉を聞き逃さなかったパン…。ずいっとフリーザの前に出る。

パン「ちょっとアンタ!」

フリーザ「ぉわっ!!」

びくっとするフリーザ。慌てて二人のほうをふりむく。

フリーザ「いつの間に…。誰だキサマら…!ん?背の高い方のやつ……
きさま。さっきの男じゃないか…!なぜここに…。さては追ってきたのだな。」

フリーザの口調は険しいままである。

ヤムチャ「追ってきたっていうか……。お前が勝手にマシーンに乗っちまうからだろ!!」

フリーザ「なるほど…。お前の乗り物だったのか。お陰で助かったが……。御礼がわりに消えてもらおうか!!もう地球も地球人も全滅だ!!」

ヤムチャ「ひぃっ!? まっ…まっ…」

フリーザが手を掲げて光球をつくり出そうとする。そのスキを見逃さずパンがフリーザにとびかかった。

ズシッ!!

スキだらけのフリーザの腹に蹴りが決まる。重い一撃。ヤムチャだったら一発であの世行きだったろう。が,フリーザは少し苦しそうに腹を抱えたが,決定的なダメージには至らなかった。

フリーザ「こ…小娘!!」

ビシッ!!

フリーザの裏拳がパンの顔をはたきつける。

叫び声もまともにあげられぬままパンは数十m吹っ飛んだ。

ヤムチャ「パンちゃんっ!!」

気絶してしまったかと思ったパンだったが,くるりと回転し,体勢を立て直した。

フリーザ「何っ!?」

パンは殴られた頬をさすりながらフリーザをにらみ返す。

パン「ひっく。よくもやったわね…。ひっく…。嫁入り前の乙女の顔をぶつなんてぇ…ひっく。
許さない!!」

パンの全身からオーラが吹き出た。その気の迫力にびびってちびるヤムチャ。

ヤムチャ「げっ!もらったタオルが〜〜」

こっちはこっちでピンチのようだ。

パンはフリーザの頭上に回り込むと,頭めがけて肘撃ちを喰らわした。さらにうずくまるフリーザのアゴを蹴り上げ,ガラアキになったみぞおちにパンチ!

フリーザ「ほぉぁぁぁが……っ!!?? …さっきとは別…ジン……」

もだえ苦しんでいるフリーザにパンは言い放つ。

パン「女の子はね!泣いてからが強いのよっ!」

パンの眠れる潜在力が今,覚醒した。悟飯の究極化が受け継がれていたのだろう。見た目は超サイヤ人ではないが,パンの今の実力はまさにそれに迫るもの!

フリーザ「ちっくしょぉぉ〜〜…。猿野郎にやられ…青二才にやられ…ベジータにやられ…アホ面したクソガキにやられて…最後にはこんなちっこい女にやられるとは…」

逆に情けない宇宙の帝王。

パン「ちっこいは余計よ!!気にしているのに!!」
次々にパンの攻撃がヒットしていく。

だが,パワーは完全に勝っていてもパンにはフリーザを瞬殺できるような技がなかった。
殴る蹴るではフリーザの頑丈なボディを破壊することができなかったのである。

地道に攻撃を続け,ダメージを蓄積するしかない。
それまでパンの怒りのパワーが保つかどうか…。ヤムチャの脳裏に不安がよぎる…。
と…そのとき,ヤムチャの背後に急に強い気が現れた。

ヤムチャ「……お…お前!!」
フリーザ「ベ……ベジータ!!??」
パン「えっ……!?」

3人がいっせいにベジータのほうを振り向く。

フリーザの身体のどこかのはずれかかったねじがカタカタ言っている。

ベジータ「もうにがさんぞ。フリーザ」

フリーザ「くそっ。もうだめだ……命だけは…。た…助けてくれ…!」

パンを無視して悪役によくある命乞いをするフリーザ。

ベジータは慈愛に満ちた顔で言い放った。

ベジータ「『ボクの負けでちゅー』と言って尻文字でマケと書いたら許してやる!」

ヤムチャ「はぁ…!?」

フリーザ「ボクの負けでちゅー」

ヤムチャ「フリーザがするわけね……してるぅぅぅぅ」

フリーザは恥じらうこともなく,かわいいヒップをベジータにむけてプリプリゆらしながら尻文字で『マケ』と描いていた。必死で。

ベジータ「…………いいだろう。……………死ね!!!!」

フリーザ「外道っっっっ!!」

ボコっとフリーザの尻を蹴りつけると,腹に膝蹴り,首筋に手刀を同時にたたき込んだ。

パンの攻撃力とは桁が違う。一瞬でフリーザは沈黙した。

首をベジータにつかまれ,手足をだらんとさせている。意識はないようだが,息はまだあるようだ。

パン「くっさぁ〜い……」

フリーザの尻から屁がぷっぷっぷっと断続的にもれている。宇宙の帝王にしては情けない最後の姿だ。

パン「でも,さすがベジータおじさんね!」

ベジータはパンとヤムチャのほうを振り返った。

ベジータ「フン,さすがは悟飯のガキだ。その年でフリーザを圧倒するとはな…。末恐ろしい限りだぜ。
ん?ヤムチャ。死んだんじゃなかったのか?」

ヤムチャ「勝手に殺すな!!」

ベジータはヤムチャにイヤミを言うと,どこかへ飛んでいった。

ヤムチャ(それにしても何でフリーザをもっていったのだろう…。気になるぜ…)

小さくなっていくベジータの姿を見ながら,妙な不安にかられるヤムチャ。

 

そう。ヤムチャとフリーザの戦いはまだ終わっていなかったのである…。

 

 

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