ドラゴンボール最後の願い
第19話 ヤムチャvsパン
意気消沈のヤムチャ。あれから砂漠で目を覚ましたヤムチャは，もはやボール集めの気力も失い欠けていた。
だが，こうしている間にもプーアルは苦しんでいる。もって５日…いや３日もないかもしれない。
ヤムチャ「だが……どうすりゃいいんだ…。まさかあんなとこで一番苦手なやつが来るとはな…。いや…一番はベジータだけどさ。」
ぶつぶついいながら灼熱の太陽の下を腹這いになってふらふら飛んでいる。
ふと遥かかげろうにゆれる地平線の向こうから大きな気がむかってくる。
ヤムチャ「ん…誰だろ…。ま。今はボールもねぇし，襲われないだろ…」
顔をあげ，ぼけーっとした目でその影を見つめるヤムチャ。
その人物は…。
パン「なーんだ。ヤムチャさんか。」
オレンジ色のバンダナをかぶり，赤いチビＴシャツを着たパンであった。
ヤムチャ「パンちゃんか……」
止まることもなく腹這いのまま飛び続けるヤムチャ。パンもその方向へと向きを変える。
パン「ヤムチャさん。ボールないよね。ま，レーダーに映らないんだから当然か」
ヤムチャ「…ないよ。つーかさっき悟天に奪われた。」
頭を垂らしてうなだれている。
パン「それで落ち込んでいるのね。しっかりしなさいよ！ヤムチャさん。あーあ。でもあたしも無理かぁ。
すてきな彼氏がほしかったんだけどな〜。
悟天おじちゃんたらね，何人も彼女作ってるし，夜も帰ってこないときもあるのよ〜。
まったく最低〜。」
ヤムチャ「ステキな彼氏って……ブルマじゃないんだから……。みんな何でこうも自分勝手な……」
ぶつぶつ文句を言うヤムチャ。
ヤムチャ「彼氏ならオレがなってやるよ」
パンッ！
ヤムチャ，いきなりぶたれる。気も抜いていたのでそのまま砂漠に落下した。
パン「あっ……つい…」
ヤムチャ「ひーぃ。ひーぃ。いだだだぁ…あっちちちちぃぃ」
むっくりと起きあがるヤムチャ。まぁ致命傷にはいたらなかったようだ。パンも降りてくる。
ヤムチャ「もう何すんだよ。オレはサイヤ人じゃないんだぞ。パンちゃん」
パン「えへへへ。つい。ごめんなさ……キャーーーーッ！！！」
ヤムチャ「へっ！？」
パンは向かい合ったヤムチャを見て絶叫した。いや正確にはヤムチャの股間を…であるが。
ヤムチャが下を見ると，ズボンの股間部分がきれいさっぱり破られていて，自慢のムスコがベロンと垂れ下がっているのが確認できた。
ヤムチャ「げっ！？……いつの間に！？」
パン「もーう。ヤムチャさんたら。」
といいつつチロチロと見ているパン。
パン（やーだ……。男ってあんなのなの〜〜？）
ヤムチャ「くっそぉ。クリリンの気円斬のせいか！あのやろぉ。だからあいつと１８号じっくり見ていやがったんだな？
天津飯もトランクスも教えてくれてもいいのによ…。みんなただ見しやがって…ゆるせん。
パンちゃん。そのバンダナ。貸してくれ。洗って返すから。まあ…そんなに汚いもんでもないし…」
パン「冗談じゃないわよ！！もう…あっ…そうだ。このタオルあげるから！もう返さなくていいから！」
パンは背負っていた小さなリュックからタオルを取り出し，ヤムチャにあげた。
それを腰に巻き付けるヤムチャ。
ヤムチャ「とりあえずアジトに戻るか…。トランクスも待ってることだし」
パン「…トランクス？」
ヤムチャ「いや…オレのパンツじゃないぞ」
パン「わかってるわよ！ヤムチャさん，トランクスと組んでいるの？」
ヤムチャ「え…！？
いや…ンなバカな。あはは。違う。違うよ。何言ってるの？
トランクスを履き替えなければって言うことだよ！」
怪しさ抜群のヤムチャにパンは付け入る。
パン「えへへ〜。隠そうとしても無駄よ。ヤムチャさん。何か企んでいるわねぇ？」
ヤムチャ「パンちゃんにはかなわないなぁ…。まぁいいや。来な。ただし誰にも言うなよ。」
パン「もっちろん」
もうボール探しを諦めていたパンはもうこっちの方に興味を持っていた。
一緒にアジトへと飛ぶヤムチャとパン。途中，パンのスピードについていけなくなったヤムチャが目をまわしそうになったが，まぁヤムチャの名誉のことも考えてここでは伏せておこう。
ヤムチャはパンのチビＴシャツを見て，思いっきりまくりあげてえなぁと妄想していたが，あることを思いついた。
ヤムチャ「パンちゃん……。サタンに言ってさ。サタンのボールをもらうことできないかな？」
パン「…え…？まだ諦めてないの？」
ヤムチャ「ああ…。プーアルがな…今…死の淵にいる…不治の病で」
パン「ホントッ！？」
ヤムチャ「ああ。だからオレは諦めるわけにはいかないんだよ…絶対に…！」
パン「んー。そういうことなら協力してもいいわ。あたしが頼めばサタンおじいちゃん何とかしてくれそうだし。サタンおじいちゃんの願い知ってる？
あたしたちのように『空を飛びたい』んだってさ！
ずーっと前から憧れてたみたいなんだけどね」
ヤムチャ「そうなのか！？ ……ったく舞空術くらい武道かじってんだから修行くらいしろよ…。ビーデルだって飛べたんだからあいつだってできるだろ。努力すりゃあ」
ヤムチャの口から自然にため息が出てくる。みんな，ボールに頼まなくても何とか頑張れば達成できる願いばかりではないか？
それなのになぜそんなにもドラゴンボールに頼ろうとするんだろう。最後と聞いて惜しくなったのだろうか。どうせ最後なら…と。
眉間にしわを寄せて考えているヤムチャにパンが話しかけた。
先ほど見た鍛え上げられたヤムチャの下半身を思い出しながら。
パン「ヤムチャさんってやっぱり性…あ…あの…恋愛経験豊富なのよね？」
ヤムチャ「ん…まぁな。あれ？悟空か悟飯から聞いたのか？意外だな…。あいつらが言うなんて。いやぁブルマに振られてからは遊んだ，遊んだ。
その前からも遊んでたけど。プッ。
って子供相手にまずいわな。こんな話題……んで？何？」
パン「うん。……で…あたしへの報酬なんだけど……」
ヤムチャ（男を溺れさせるような性技を教えてくれってんじゃないだろうな…）
パン「あの…恋人の…」
ヤムチャ「なーんだ恋人の作り方ノウハウか？」
パン「あったりぃ〜〜」
ヤムチャ「おやすいごようさ。０歳から１００歳までお好みの男性を恋人にする恋愛テクニックを教えてやるぜっ！」
パン「やったぁ！！」
これでクリリンに，トランクス…それにパンと約束事が増えたな〜と嘆くヤムチャ。
別に大したことでもないが，そんなこと普段，相談しにくればいいだけじゃないか，まぁそのおかげで，いままで乗り越えられてこれたんだけど…と複雑な気持ちになる。
ヤムチャ「芸は身を助ける…だな。まさに…」
ポツリとつぶやくヤムチャ。ゲイで身を滅ぼした天津飯とは違う。
パン「…え？何？ ん？……何あれ？」
パンが指さす方向には何か強烈な輝きが見える。それも徐々に大きくなっている。
ヤムチャ「気功波のたぐいだ！！まずいっ！！」
ヤムチャはパンを抱きかかえると光の予想される軌道から急いで距離をおいた。
ヤムチャ「はぁはぁ…はぁはぁ…ここなら…」
パン「何，あたしを抱いて息を荒らげているのよっ！あっ」
パンッ！
再びパンの張り手。
ヤムチャ「ぉうっ！ち…ちがっ。オレはロリコンじゃ…」
パン「だったらシャツの中に手を入れるなぁ――！」
ヤムチャ「いや…いつものくせで…」
くだらんやりとりをしている間に光は近くまで来ていた。
ドォォン！！
光はヤムチャたちの前を通り過ぎる前に大爆発を起こしたのだった。