ドラゴンボール最後の願い
第16話 決着!孫悟空VSミスター・ブウ
悟空とブウは未だに戦い続けていた。戦いが始まって数時間…休みなくである。見守るサタンも緊張でへとへとになっていた。
悟空の状態は超サイヤ人2。修行を積んだとはいえ,超サイヤ人3は体力の消耗が激しすぎた。何よりパワーが有り余っているのでブウを消し飛ばしてしまうかもしれないというおそれがあったのである。
パワーでは完全に悟空が上だった。だが,相手は特殊能力の塊のようなブウである。
伸縮可能,変幻自在,体力無限,おまけにお菓子化ビームなど意味不明な魔法もたくさん備えている。さすがの悟空も一筋縄ではいかない。
……いかないが,さすがは悟空。ブウの動きを完全に見切っており,徐々に…徐々にであるがブウを圧し始めている。
その気になれば一瞬でブウを消し去れる悟空だが,殺すわけにはいかないので,このような精神的においつめる作戦をとったのである。
悟空「この状態でおめぇを圧倒できるなんて…。オラはここまで力をあげてたんだな…!」
ブウ「困った…。ちょっと勝てない…。」
気も動きさえも読めないサタンであるが,長年連れ添ったブウの焦り具合は見てとれた。
サタン「ブウさん……。もうやめてくれ…。もういい。」
今にも泣き出しそうであった。
悟空「よぉ。ブウ。楽しかったけどオラそろそろボールを集めねぇといけないからな…。そろそろケリをつけるぜ…。」
ブウは別のブウが攻撃しなければダメージは蓄積されない。
他の者ではブウを超える気で細胞一つ残らず消し飛ばす以外倒す方法はない。
悟空もそれを知っていた。
悟空「ドラゴンボール集めが終わるまでちぃーっとばかし眠ってもらうぞ!」
このとき悟空が使おうとした技は,超ゴテンクスの技,連続スーパードーナツであった。この技はリング状の気をいくつも発射し,輪を縮め,相手をその中に封じ込めてしまうものである。
悟空は超サイヤ人3に変身し,莫大な気の輪の中にブウを封じ込めようと企んだのだ。
ブウ「……ホントに困った。オレ,サタンの手伝いできない…」
そのとき,空の彼方から,悟空の助太刀にとウーブがやってきた。あまりに長い戦いをおこなっているので心配になってきたようだ。
ウーブ「悟空さん。ブウさんは手強いでしょう。なんせ魔法も使いますからね。」
悟空「よぉ。ウーブ。わざわざすまねぇな。だが,オラ,1人で大丈夫だ。」
そういって,連続スーパードーナッツの構えを取る悟空。手で円形を作り,照準をブウにあわせる。
それを見てブウは悟空の技を思い出した。かつてのブウの記憶も今のブウにはあるからだ。
ブウ「…むっ!これならどうだ!!」
ブウは慌てて,身体を分解させた。ブウの身体が無数の小さいブウへと分裂していく。ベジータの自爆の後,ブウが復活したのと逆の状態だ。
悟空「考えたな〜ブウ…」
感心している悟空。まだまだ余裕そうだ…が…。
分裂した小さいブウは,何体か集まり塊を作り……
悟空「あぶねぇ―――ッ!ウーブ」
肉片となり,ウーブに襲いかかった。
肉片は風呂敷のように広がりウーブを呑み込もうとする。
…そう。ブウ特有の吸収である。ウーブを吸収して悟空との力の差をわずかでも埋めようとしたのである。
悟空がウーブを突き飛ばし,自分もそのまま肉片から逃れようとした。
……が!ブウは既に悟空の逃げ道にも肉片を用意していた。
悟空「いっ!?しまっ…」
ギュルッ……。
肉片が悟空を取り込み,一気に縮まった。
その肉片とともに,他の肉片も,小さく分裂していたブウも全て集合し,元のブウへと戻った。
ブウ「ぷふぅ……。」
ウーブ「悟…悟空さん……。」
サタン「あっ!やった!ブウが勝った!勝ったぞ!!」
ブウはもとのふとっちょのブウのまま。どうやら悟空はエネルギーの元にしてないらしく,パワーもそのままだ。
ほっとした表情のブウ。ブウ本人もうまくいくとは思ってなかったらしい。
その一方で唖然とした顔をしているウーブ。まさか悟空が負けるとは思っていなかったようだ。
しかも自分をかばったせいで。
目には涙を浮かべている。
ブウは下でやかましく勝利を褒め称えているサタンの元へ降りていった。
うなだれているウーブ。そこにサタンを背負ったブウが来て声をかけた。
ブウ「大丈夫。ボール集めが終わったら悟空は吐き戻すから」
にこっと笑うブウ。
ウーブ「そ…そうじゃないです…。ボクのせいで……悟空さんが負けるなんて…」
ブウ「よくわからないけど,悟空は怒ってないぞ。きっと。」
サタン「そうだぞ。ウーブ君。もしキミが後悔しているのならば,キミ自身がもっと強くなればいいんだ。悟空さんよりな!」
ウーブ「そ…そうですね…あ…ありがとうございます…」
人のこと言えた義理でないサタンがウーブにお説教をたれる。が,これっぽっちもサタンを見下すことなく,ウーブは礼を言い,彼方へと消えていった。
この悔しさをバネに彼はさらに強さを磨き,この地球の一級の戦士となっていくことだろう。……少なくとも悟天に任せて自分はとんずらするような男にはならないだろう。
あ…いや深い意味はないけれど。