ドラゴンボール最後の願い
第13話 驚愕の真実!絶望の天津飯
天津飯「かぁっっっ!!」
ドンッ!
界王拳を最大まであげた天津飯の気合いがトランクスの魔閃光をかき消した。
天津飯「はぁはぁ…。バカめ。あれくらいでやられるオレさまではない。あやうく死ぬところだったぜ」
あたりを見回すと波打つような白峰が辺りに広がっている。先ほどは熱帯地域だったが,ここは雪国。かなりふっとばされたようだ。
天津飯「…寒いと思ったら,こんなとこまで飛ばされたとはな」
おまけに今の天津飯は素っ裸だ。
こんなところにいたんでは凍死してしまうと,飛び去ろうとしたときだ。下から銃声が鳴り響く。下を見下ろせば大声で怒鳴り散らす男の声……。
天津飯「ん?あ…あいつは…確か…17号!?」
17号「こらぁ!キサマ!雪崩でもおこったらどうするんだ!!」
懐かしい顔に天津飯は思わず17号の前まで急降下していった。
天津飯「17号じゃないか!相変わらず可愛い顔してるな」
17号「お前,素っ裸じゃないか!……天津飯……か!?舞空術を使えるのでただ者ではないと思ったが…」
天津飯「ああ。久しぶりだな。お前がセルに呑み込まれて以来だ」
17号「その話はよせ。……まぁいい。昔のよしみだ。家へ来い。服をやろう」
天津飯「すまないな…。」
ずいぶん昔は敵同士だったが,今は敵対する意味もないことを二人はよくわかっていた。
天津飯「ここらに住んでいるのか?」
17号「まぁな…」
飛びながら声をかける天津飯。ニヤリと笑う。
しばらく飛ぶとログハウスが見えてきた。
17号「日に二度も来客なんて珍しいぞ」
ドアを開けながら17号は言う。天津飯が家の中に入る。さすがに暖かい。奥から女性の声がする。粗暴そうな声。
「もう帰ったのか?」
17号「あれ。『そっち』の方か。来客だ。何か暖かい飲み物でも出してくれ」
おーう,と女性が答える。17号は二階にあがっていった。服を取ってきてくれるようだ。
奥の台所から女性が出てきた。壁にかかっていた写真などを見ていた天津飯と目があう。
天津飯「………」
ランチ「………」
全裸の男が部屋に突っ立っていれば叫び声の一つもあげるだろうが,ランチは男が全裸であることよりも男が誰であるのかを知って声を失った。
天津飯「あんた……」
ランチ「天津飯……」
天津飯も目の前の女性が誰であるか一目でわかった。かなり老いてはいたが。
運の悪いことにこのときのランチは金髪の乱暴な方のランチであった。
ランチ「てんめぇぇぇぇ〜〜」
天津飯「えっ!?」
ランチは持ってきたココアをカップごと天津飯に投げつける!
余裕でよける天津飯。だが,カップが後ろの壁で割れ,ココアが飛び散る。
天津飯「ぎあ,あちぃぃーー!!??」
ランチ「よくもまぁノコノコ
オレの前に顔出してくれたなぁ!!」
天津飯「なっ…。何を怒っているんだ…」
ランチ「お前…オレがどれだけお前を愛していたか…わかるか?世界中探しまくって…。
しかしお前はオレからずっと逃げ続けた…。」
天津飯「だ…だってオレ…女好きじゃないし…」
下のわめき声を聞いて17号が降りてきた。
17号「なーに騒いでいるんだ?ランチ?」
ランチ「17号。何でこんなヤツ連れてきやがった!」
17号「知り合いなのか!?こいつと!?」
ランチ「ああ。天津飯っていうかつてオレが愛した男だ…」
それを聞いて17号は顔をしかめた。そのとき,ドアがコンコンとノックされた。
ランチ「今取り込み中だ!出てけっ!」
17号「入れてやれよ。誰だか知らんが入っていいぞ」
ギィとドアが開かれる。現れたのは天津飯の気を追ってきた餃子だった。
餃子「おじゃましま……あっ!」
ランチ「天津飯に続いて餃子もか。」
餃子「ランチさん!!」
餃子が叫ぶ。だが天津飯のときとは違い,とても嬉しそうだ。
ランチ「待ってな。お前の相方を血祭りにしてから…」
餃子「ランチさん!会いたかったんだよっ!ずっと」
天津飯とランチが同時に「えっ」と発した。
天津飯「え…まさか……じゃあ…お前のドラゴンボールでの願い…会いたい人がいるってまさか……」
餃子「うん。ランチさん!」
ランチ「…な…何でだ…?」
餃子は珍しく長く語りだした。なぜか空…というか天井を見上げて。
餃子「ボク…ずっとランチさんが好きだった。でも…ランチさんは天さんばっかり見てた。ボク悔しかったんだよ。ずっと。
天さんにも愛想が尽きてきたんだけど,天さんといればいつか必ずランチさんが追いかけてくるんじゃないかってずっと思ってたんだ。
だからこれまで我慢して天さんと一緒にいたのに,ランチさんは現れなかった…。
天さんの性的いたずらにも耐えてきたんだよ…。我慢していれば…きっと会えると思って…」
ランチの頬に涙が伝う。凶暴なランチにも関わらず。
ランチ「…すまないぜ。オレにはもう亭主が…」
餃子「わかっていたよ…。いつしか天さんをおいかけて来なくなったのも
きっとすてきなダンナさんを見つけたんだろうなってね…。
でも安心しているよ。天さんと違っていい人そうだもの」
と,餃子は17号を見て言う。ちょっと照れる17号。
ランチ「…オレは天津飯を諦めて放浪するのをやめたあと,いろいろ職を転々としたんだ。
だが,この二重人格だろ?どれも長続きはしないし。人からも敬遠されてな。
何で亀じじいたちとは仲間でいられたんだろって悩んでいたんだ。
もうあんな仲間とは会えないのかって思ってた。
でも,そんなときこいつと出会った」
17号「そうだったな。酒場でケンカしたんだよな。
それから意気投合…今に至るってわけだ。
今まで出会ったことのないタイプのオンナだったんだ。ランチは。
凶暴になったり,優しくなったり,忙しいヤツだけどさ,
どっちの人格も,飾り立てることもなく,媚びることもなく,いつも自分を持っていた。」
それを聞いて今度はランチの方が顔を赤らめた。
17号「…まぁオレたちはお互い過去に深い傷があるとわかっていたから,
互いの過去には干渉しあわないことにしていたんだ。
だが…まさか天津飯と関わりがあったとはな」
天津飯「そ…そんな。嘘だろ…。餃子はオレのことを好きでは…」
餃子「嫌い」
天津飯「…一緒にあんなこともこんなこともしたじゃないか…。
ああ。昨日ちょっと乱暴にしたから拗ねてるんだよな?
あぁ今晩はちゃんと優しくするから…な?」
餃子「消えろ」
天津飯「ぅわ〜〜〜〜ん!!」
天津飯はドアを乱暴に開け放つと全裸のままどこかへ飛んでいってしまった。
ランチ「お…お前はどうするんだ…?」
餃子「ランチさんにも会えたしね。とりあえず新しい生き方を探してみるよ…」
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