ドラゴンボール最後の願い
第五話 宇宙の帝王 現世に! あとヤムチャVS天津飯
さて……時間はヤムチャが過去に旅だった直後に遡る。
カプセルコーポレーションに一体の悪魔が出現した。
そう。時を超えてやってきた宇宙の帝王フリーザである!
フリーザを乗せた卵型のタイムマシーンはカプセルコーポレーションの広い庭に現れた。
タイムマシーンが発するほのかな輝きにあたり一面が照らされる。光が消えると同時にマシーンのハッチが開かれた。
フリーザ「……!? ど…どういうことだ? ここはどこだ…?」
中から混乱した表情のフリーザが顔を出した。おそるおそるマシーンを降り辺りを見回す。
庭のむこうには高層ビルがたちならび,その間をエアカーが目まぐるしく駆けめぐっている。すぐ近くにはドーム状の巨大な建物が聳えている。
遠くの景色とこのドーム状の建物を交互に観察しながら庭をしばし歩き回るフリーザ。そのとき,建物の陰から「ふんふふ〜ん♪」と鼻歌が聞こえてきた。
警戒するフリーザ。声の主がフリーザの前にぬっと現れた。
フリーザと同じくらいの背丈の若い娘。ベジータの愛娘ブラである。
ブラ「キャ―――ッ!!」
ブラはフリーザを見るなり金切り声をあげた。フリーザのまがまがしい雰囲気のロボットの姿に腰を抜かしたらしく,ブラは地面にペタと座り込んだ。
一方フリーザは全く動じずブラに近づいた。ガタガタ震えているブラ。
フリーザ「小娘。ここは……どこだい?」
ブラ「こ…ここ…?この街は西の都だ…け…ど……」
震える声で答えるブラにフリーザは声を荒らげた。
フリーザ「ここの星はどこだと聞いているんだ!」
ブラ「ひっ!? ……ち…地球よ!」
フリーザ「……地球?
…あのマシーンはワープ装置のようなモノか…?
何のためにあそこに……。まぁいい。あのおかげで助かったんだからな…」
ぶつぶつ言いながらフリーザは再び怯えているブラを睨む。
ブラは声を振り絞って目の前の凶悪なツラをしたロボットに尋ねる。
ブラ「あ……あんた誰…?」
フリーザ「……ふん。宇宙の帝王にむかって失礼だね。まぁいい。キミにもいろいろ聞きたいことがあるし,まだ生かしておいてあげるよ。
ボクの名はフリーザ…。これからこの星の王になる者の名前だよ。」
落ち着いた口調でしゃべるフリーザ。
ブラ「フ……フリーザ…あなたが…」
フリーザ「おや…これは光栄だな。さっきの男も知っていたし…ボクの名はこの星のすみずみまで知れ渡っているようだ。くっくっく」
ブラ「あなた……死んだんじゃ…」
フリーザ「……。ああ…。死ぬところだった…。あのにっくき猿ヤロウのせいで…。」
押し殺したようにつぶやくフリーザ。
ブラはフリーザの名をよく知っていた。母がナメック星での探検を武勇伝のように何度となくブラに語ってきたからである。フリーザの強さも…恐ろしさも…。
フリーザ「……さて。ここが地球というのならば…さっそくキミにやってもらうことがある……。ボクが誰だかわかるよね?さからえばどうなるか…わかるだろ?」
静かな口調の中に明らかに邪悪な意志がこめられていた。
ブラ「え…ええ…。反抗はしないわ…」
フリーザ「ふふ。いい子だ。確か地球にもドラゴンボールがあるはずだ。知っているかい?」
ブラ「ええ。し…知ってるわ。」
ドラゴンボールはもうすぐ,争奪戦が開始されるはずだ。最後まで私物かしようとするわがままな者たちのうちで。
もっともブラもそれに参加するつもりでいた。ある作戦をひっさげて。しかしフリーザに会ってしまった。
フリーザ「…ふうん。一般人も知っているほど有名なものなのか。
…で,ここも,ドラゴンボールは各地の長老が持っているのかい?」
ブラ「長老……?い…いえ…ドラゴンボールは世界中に散らばっているのよ……」
フリーザ「世界中に!?
ではどうやって集めるんだ!」
思わず怒鳴り声をあげるフリーザ。びくっとするブラだが,ある考えが浮かぶ。
ブラ「……で…ですから…ドラゴンボールが必要になったときに…こ……このレーダーで探すんです。あ…」
そういってブラはリュックからレーダーを取り出しフリーザに差し出した。直径15cmくらいの小さな円形の機械。興味深げにそれを受け取りながめるフリーザ。
フリーザ「……なんと。そういうものがあったのか…。いったい誰が作ったんだい?」
ブラ「あ…あたしです…」
フリーザ「…キミが…。ふっふっふ。なるほど。キミはなかなか優秀そうだ。我が軍に入れてやってもいい。入るかい?
もっとも地球人はおおかた絶滅させるつもりだったから我が軍に入らねば死んでしまうことになるけどね。」
ブラ「えっ!?……絶滅!?」
フリーザ「安心していい。キミは合格だ。……とりあえずキミのような優秀な者まで殺すのは惜しいな。だが,選別しているヒマはない。今すぐドラゴンボールが必要だ」
フリーザが急に険しい顔になった。
フリーザ「今すぐドラゴンボールを集めるんだ。」
ブラ「…え…なぜ…」
フリーザ「とにかく今すぐだ!」
彼の願いは……先ほど自分を酷い目にあわせた青年を殺すこと,もしくは超サイヤ人をこの世から抹殺することだった。
機械化により復活して自信を取り戻したフリーザだったが,突然あらわれた青年にまたもやプライドをズタズタにされてしまった。
相手を殺すことをドラゴンボールに頼るのは,フリーザも我慢ならなかったが,そうは言っていられない。今のフリーザにプライドなどはもはや必要なかった。
ブラ「で…でも……あたし…空飛べないし…お…お言葉ですが…フリーザ様が…ご自分でお探しになった…ほうが早いと思いますよ…いそいでいるのなら尚更…。」
多少は落ち着いたとはいえ,まだ声が震えるブラ。精一杯力をふりしぼってフリーザに提案した。
フリーザも面倒だとは思ったが,それが一番だと思い,コックリうなずいた。
スピードには自信がある。足の裏のジェットも試してみたい。
フリーザ「さっきは使う暇もなかったな……。まだいろいろ機能があるんだ。忘れてたよ。そういえばこの胸の丸っこいところからはミルクが出るんだよ。飲むかい?」
ブラ「いえ…いいです……」
フリーザ「では時間がない。そのレーダーをもらって探すことにしよう」
ブラ「は…はい。どうぞ」
フリーザ「キミには……そうだな。優秀な人間を集めておいてもらおう…」
ブラ「はい……。ではお気をつけて……。」
フリーザ「よし…せっかくだから使ってみるか」
そう言うと,自分の腰あたりにある小さなボタンを押した。するとフリーザの足から猛烈な勢いで火が吹き出した。
バランスを崩し,庭の中をぐるぐる飛び回るフリーザ。庭に放置してあったタイムマシーンに激突してようやく止まった。
フリーザ「ちっ。使えない!あのバカ科学者どもめ!……このマシーンも壊れてしまったじゃないか!まぁただワープするだけの装置だからどうでもいいけどね
」
ことの重大さに気づかぬままフリーザは空へと舞い上がり,彼方へと飛んでいった。
あとに残ったブラ。
へなへなとそこへ座り込んだ。全身からは堰を切ったように冷や汗がどっと出てくる。
ブラ「こわかったよ〜〜……」
いつ殺されてもいいような状況で,ハッタリをかますことができたのはさすがベジータとブルマの娘であろう。
そこへいつも脳天気なブリーフ夫妻がつれそってやってきた。
ブリーフ「いい天気だからひなたぼっこでもしようと思ったんだが,今の音は何だい?ブラ?」
ブラ「え…え?な…なんでもないわよ。おじいちゃん」
ブルマの母「あらブラちゃん。ドラゴンボール探しに行くんじゃなかったの?」
ブリーフ「ドラゴンボールが集まったらステキなギャルを連れてきておくれ」
ブルマの母「じゃあ。あたしにはステキな男性をお願いね…」
ブラ「あ…あははは……」
先ほどの緊迫とは正反対のアホな…いや…穏やかな空気がブラを和ませる。
こうしてはいられない。もう争奪戦は始まっているのだ。
ブラはブルマの部屋にあるドラゴンレーダーを取りに駆け出した。
ドラゴンボールをクリリン・18号から守ることができたヤムチャ。
意気揚々と次のボールを探しに行く。
一番近いボールでもかなりの距離がある。他の誰かに見つけられてしまうだろう。
ヤムチャ(これからはどうやって奪うかだな……)
海上を飛びながらそう考えていると…
ドカッ!!
何者かに背中を叩きつけられた!
巨大なしぶきをあげて海に激突するヤムチャ。
ヤムチャ「ぶへっ!だ…だれだ!?」
ずぶぬれになって海からとびだしてくる。
ヤムチャの目の前にかつての戦友…天津飯と餃子が現れた。
天津飯「よぉ。相変わらず間抜けなツラだな。ヤムチャ」
ヤムチャ「お……お前は天津飯!いやぁ久しぶりだな…ってさっき会ったな!よくもさっきはやってくれたな…」
天津飯「さて……今度はそのボールをいただきに来た」
ヤムチャ「冗談じゃないぜ。死闘の果てに守り抜いたボールだぜ。お前なんかにゃやらん」
天津飯「無理をするな。オレとお前では10倍以上の気の開きがある。餃子でも十分倒せるレベル内だ」
ヤムチャ「あっそ…。じゃあその強さとやらを見せてもらおうかな」
そう言ってヤムチャは全速力で逃げ出した。
だが,あっと言う間に追いつかれてしまう。
餃子「この卑怯者!ちゃんと戦え!」
ヤムチャ「ばかやろ!さっき負けたのに!逃げるに決まってるだろ!はぁっはぁっ……やるしかないようだな……」
天津飯「諦めろ。さっきもいったがオレとお前の力は10倍以上の差がある」
だが、ヤムチャは変に引きつった笑みを天津飯にむけた。
ヤムチャ「ふふふ。どうかな。先ほどの戦い…界王拳5倍までしか使っていなかった…。」
天津飯「……!!」
ヤムチャ「だが…オレは無理をすれば…6倍まで使用できる…!この意味がわかるか?」
天津飯「わからんな」
ヤムチャ「わからんか…。まぁ聞け。
…狼牙風風拳はスピードを利用した技だということは知っているな?この技を使うことによりスピードが2倍…。つまり6×2で12倍…お前と並ぶ!」
天津飯「え…!?えっと……。な…なんだと……」
ヤムチャ「さらに……かめはめ波で気を凝縮し2倍!……2×12で24倍!これでお前を上回る!」
天津飯「バ…バカな……」
ヤムチャ「その気になればお前以上の実力を持つオレがあえて全力をださなかったのは……かつての友と拳を交えることだけは避けたかった為だ。……オレの優しさがわからんのか!!」
ドーン!!
…と天津飯の心にヤムチャの言葉が突き刺さる。あともう一押しだ…とほくそ笑むヤムチャだったが……。
餃子「嘘だよ!天さん!」
天津飯「え!?」
餃子「そんな計算うそっぱちだよ!」
ヤムチャ「げっ!こ…こいつ算数得意になってやがる!」
餃子「ボク…クリリンに負けてから必死で算数を勉強したんだ!」
冷や汗をかいていた天津飯は一転して,怒りの形相に。
天津飯「オ…オレを出し抜くとはいい度胸だぜ…!」
ヤムチャ「くそぉ!やるしかないか!とっておきの…新・狼牙風風拳セカンドエディション!」
天津飯「おもしろい!」
15秒後……。
天津飯「さて…残り6個…」
天津飯と餃子は手に入れたドラゴンボールをリュックにしまうと,次のボールを探しにへと飛び立った。
顔をボコボコに腫らして海に浮いているヤムチャを後目に。
ヤムチャ「えぐっ…えぐっ…。ちくしょぉぉ〜〜」
ヤムチャ,またリタイヤの危機。
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