ドラゴンボール最後の願い

 

第二話 ヤムチャいきなりの戦線離脱

 

ヤムチャ「……誰もいないかな……」
カプセルコーポレーションに侵入したヤムチャ。
どこに何があるのかは長いこと住んでいたのでわかっている。
ヤムチャが狙うのは……タイムマシーンである。
そう,過去に行って誰もボールを集めていないときに願いを叶えてしまおうという魂胆なのであった。
この時代のブルマも何か危機があったときに備えてタイムマシーンを作っておいた。過去に知らせるために。もちろん時代を軽々しく変えてしまうのはまずいので,滅多なことでは使用されない約束だった。
…だが,ヤムチャによってその約束はやぶられてしまうのだった。

ヤムチャ「…よし。やはりここに保管されてたか。」
倉庫に入り込み,目的の卵型のタイムマシーンを見つけたヤムチャ。スイッチを押し,マシーンに乗り込む。
ヤムチャ「時代は…そうだな。人造人間戦までの3年間は誰も使わなかったはずだよな…。エイジ764年…。今から25年前か…。ずいぶん前なんだな。
よし…。エネルギーは往復分やっとか…まぁいいだろ。出発だ!ポチっとな」
ゆくべき時代を設定し,マシーンを起動させる。
ヴィーン………マシーンが機械音とともにあやしげな光に包まれる。
目の前の空間が歪み出した。
視界が暗転する。
直後,目のくらむような光があたりをつつんだ…。

ヤムチャの目に飛び込んできたのは荒野――…。

ヤムチャ「ついたのか…?」
おそるおそる外へ出てくる。
岩山が間近に迫っている。気のせいか見たことのある風景だ。
(まぁ荒野なんてよくある風景だしな…)
とあたりを見回しながらふらふらと歩き出す。
岩壁のすきまをぬって少し広々とした場所に出た。
…………。

 

硬直。

 

数十mさきには10人か20人くらいの…地球人とは思えない連中がたむろしていた。
そしてその中の二人からは恐ろしい気が感じられた。
どうやら初めてのタイムスリップで気が動転していて気を探るのを怠ってたらしい。連中を目の当たりにして,初めて巨大で邪悪な気に気づいたのだがもう遅かった。
ヤムチャ「……。」
連中と目線があう。
フリーザ「……何のようだ?地球人」
ヤムチャ「ふりぃぃざぁぁぁ!!?」
ヤムチャは泣きわめきたい気持ちでいっぱいだった。
フリーザ「ほう。ボクの名前がこんな辺境まで知れ渡っているとは光栄だな…」
ヤムチャ「…し…知っていますとも……フリーザさま」
フリーザ「…で…地球の案内でもしてくれるのかい?」

いいながら近づいてくるフリーザ。フリーザの姿をまともに見るのはこれが初めてだった。痛々しいほどにカラダに機械が埋め込まれている。にょきっとカラダから銃口が出てきそうな雰囲気だ。

ヤムチャ「え…えぇ。……おすすめのスポットをご…ご案内します…よ」

震える声で必死に取り繕うヤムチャ。
フリーザ「ふぅん…。悪いけどボクらは地球人を皆殺しにきたんだ。やれ!」

1人の部下が前へでる。ザコっぽい風貌であってもコルド大王の精鋭たちである。ナメック星にフリーザが連れてきたザコ軍団とはワケが違う。

男「戦闘力10000か…。微妙な奴め」
手から強力なエネルギーがヤムチャにむけて放たれた!
ヤムチャ「うぉぉぉぉっ!」
ヤムチャは全力でそのエネルギー弾をはじきかえすと,男に一瞬につめより殴りつけた。
男「ぷげっ!! や…やろぉ!」
部下1人も負けじとヤムチャに殴りかかる。
ヤムチャ「いたっ!いたぁ……お…お前!なかなかやるな!!」
ポコポコと殴り合っている二人。
フリーザ「何している!お前達も行け!」
ヤムチャ「げっ!?マジ!!??」
部下全員がヤムチャに襲いかかってきた。界王拳を全開にして精鋭を迎え撃つ。
バキッボコッドカッメキッ……。微妙なレベルの戦いが繰り広げられている。
その頃…付近にいたその時代の悟飯たちは何者かの登場に動揺していた。
悟飯「び……微妙な大きさの気が現れて…たくさんの気がちょっとずつ減っている…」

 

フリーザ「ちっ…何をもたもたしているんだ…ん?」
乱闘を観戦していたフリーザは何者かの気配に気がつく。いつの間に現れたのか,フリーザの視線の先には青年が立っていた。
フリーザ「何者だ?……キミも地球人かい?」
トランクス「お前達を殺しに来た…」
フリーザ「殺しにきたって?…こいつはお笑い草だな。本来ならばお前みたいなゴミはボクが手を出すまでもないんだけど……無能な部下たちがアレだからねぇ」
そういってフリーザはチラっとヤムチャと乱闘している部下たちを横目で見やる。
フリーザ「光栄に思うがいい。ボク直々に殺されることを!!」
トランクス「誤算だったな!!」
フリーザ「何が!?」
トランクスは超サイヤ人になり,気功波を放つ。慌ててよけるフリーザとコルド。だが背後の宇宙船があとかたもなく破壊された。
上空へと逃れたフリーザとコルド。だがトランクスは彼らよりもさらに上空に舞い上がっていた!
フリーザが気がついたときにはもう遅い。研ぎ澄まされたトランクスの刀が振りかぶられる。

 

一閃。

 

……となるはずだったが……。

 

ヤムチャ「ひぃッ!た…助けてくれぇ!」
遥か下から情けない声がトランクスに届く。
トランクス「ちぃっ!」
トランクスの剣に迷いが生じたのか、フリーザはかろうじて剣をかわすことができた。が,トランクスは追い打ちをかけず急降下した。ヤムチャを助ける為だ。

ヤムチャは既に8割がたの敵を倒していたが,つめの甘さで逆転されていた。トランクスは残りの敵をすぐさま消し去ると上空の敵をにらみ付けた。
フリーザ・コルドがゆっくり降りてくる。
フリーザ「なかなかやるようだね…。キミも超サイヤ人になれるとは…驚いたよ」
コルド「これが超サイヤ人か…。だが…超サイヤ人は1000年に1人しか…どういうことだ?」
トランクス「興味がない」
フリーザ「何がだよ!ま…まぁいい。サイヤ人は皆殺しだよ」
地上へ降り立った二人…ゆっくりと間合いをつめる。それを涙目で見つめるヤムチャ。

コルド「かァッッッ」
フリーザ「きぇぇえっっ」

奇怪な気合いを入れ,二人の帝王はトランクスに飛びかかる。二人の凄まじい攻撃の嵐をやすやす交わすトランクス、さっとフリーザの懐に入り、腹にブローを入れる。
叫ぶ間もなく吹っ飛び、岩山に激突するフリーザ。同じくコルドも脇にケリを入れられうずくまった。
ヤムチャ(ほっ……。何とかなりそうだ。このうちに逃げよ…)
ヤムチャがこっそり逃げようとしたときフリーザが復活した。ブチキレたかと思えば意外に冷静なフリーザ、コルドの元へ寄り、作戦を耳打ちする。
フリーザ「パパ…まともにやったのでは苦戦するよ。奴をひきつけて時間をかせいでくれないか?ボクはそのスキを狙ってありったけのエネルギーを奴にぶちあてる。」
コルドはうなずく。フリーザらしからぬ作戦だ。
トランクスと対峙するコルド。

コルドの顔には少々焦りの色が浮かんでいる。一方トランクスは無表情のままコルドをにらみ付ける。
フリーザが地を蹴りその場を離れる。一瞬トランクスの注意がそれる。その瞬間にコルドが間合いをつめた。
再び猛烈な攻撃。が,トランクスは余裕に交わし続ける。

コルド、怒りと焦りで恐ろしい形相に変わっていく。無理もない。自分がコケにされるという初めての体験なのだ。
さっと一歩ひいてトランクスが攻撃の体勢にうつる。
コルド(自分は交わせない!!当たったら……死!!フリーザまだか!?早くしろ!)


当のフリーザは…。


フリーザ「ふっふっふ。パパ。悪く思わないでくれよ。超サイヤ人の恐ろしさはよくわかっているんだ。さきほどの攻撃でわかった。ボクらじゃ適わないってね」
先の戦いで、プライドのために戦っても殺されてしまえば意味はないと悟ったフリーザは、コルドを囮にして逃げようと企んでいたのだ。
トランクスが気を察知できるとは知らないので岩山の陰に隠れやり過ごそうと思っていたのだが……。
フリーザ「な…何だこれは…?」
フリーザの目の前に突如現れた卵型のマシーン。そう。ヤムチャが乗ってきたタイムマシーンである。
興味本位でマシーンをいじくるフリーザ。偶然にもハッチが開き,そこに乗り込んでみる。
フリーザ「わからん…。見たこともないメカだ……。一体これは……」
カタカタカタ…と適当にスイッチを押してみる。
と…,マシーンがふいに動き出す。ヴヴヴ…と音を立てて。慌てふためくフリーザ。外へ出ようとするが,遅かった。マシーンはフリーザを乗せ時を超えた……。

 

その様子をそばで呆然と見て立ちつくしていた男が1人。ヤムチャであった。

ヤムチャ「ぅ…うそぉ〜〜〜ん……」
情けない声をあげるヤムチャ。
トランクスとコルドが戦っているうちに逃げだしたヤムチャだったが,マシーンをどこに置いたか忘れてうろうろしているうちにマシーンを横取りされてしまったのだ。

ヤムチャが見つけたときは既にマシーンはおぼろげな光につつまれ時空の歪みに消えていくところであった。

ヤムチャ「ど…どうしよ…。マジ」

悲嘆にくれるヤムチャ。だがはっと思いつく。この時代にはもう一台のタイムマシンがある。未来トランクスが乗ってきたものだ。すぐに交渉しなければとトランクスのもとへ駆け出した。

既にコルドを木っ端みじんにしていたトランクス。これから悟空を迎えにいかなくてはならない。重要な任務があるのにここでさらにお荷物が増えることとなる。

トランクス「くそっ!フリーザの気を感じない!あいつ…気を消せることができるのか…?」
ヤムチャ「やっほー。トランクス。ちょっと相談があるんだが…」

馴れ馴れしく近づいてきたヤムチャにトランクスは剣を抜く。

ヤムチャ「ひぃっ!よせ!バカ!オレだよ!ヤムチャだよ!!」
トランクス「ヤムチャ…さん?あなたが…?……ずいぶん老けてませんか…?この時代ではたしかまだ……」
ヤムチャ「ワケあってな…。オレはこの時代のオレじゃねぇんだ。」
トランクス「では…あなたも未来から?……バカな。ヤムチャさんは死んだはずだし生き返れないはずだ。」
ヤムチャ「えー…ややこしいなぁ。むっ。この気はベジータたちか。近づいてくるぜ…。オレと顔をあわせるとややこしいことになる…。あのさ,これから悟空を迎えに言って人造人間のことを話すんだろ?」
トランクス「なぜそれを…!?やっぱりあなたはホントウに未来から…?」
ヤムチャ「まぁな。でその話が終わったらこっそりここに戻ってきてくれないか?
な…なんだ,その顔は。変なことしないって」
トランクス「は…はい。わかりました。興味がありますしね」
ヤムチャ「よし。あ,そうだ。フリーザのやつはお前が倒したってことにしちゃってくれ。」
腑に落ちない顔をしながらもトランクスはベジータたちの元へ向かい,悟空の出現地点まで案内することにした。

 

数時間後,寂しそうに膝を抱えて座っているヤムチャの所へトランクスがやってきた。

トランクス「お待たせしました。ヤムチャさん」
ヤムチャ「うわっ!!ビックリさせるなよ〜…。チビっちゃうだろ!」
トランクス「やはり貴方はホントウのヤムチャさんだ…」
ヤムチャはトランクスにこれまでの経緯を語った。全く異なる未来世界が存在し,自分はそこからやってきたのだと。
トランクス「ということはオレが来たことで未来は地獄のような世界から回避できたということですね…」
ヤムチャ「ああ。お前の世界もお前自身が平和にしたらしい。こんなネタバレしちゃっていいのかな。まぁわかってくれたか?」
トランクス「まぁだいたいは…。で,オレに何の用なんです?」
ヤムチャ「それがさ〜。フリーザにタイムマシーンを奪われちゃってさ〜」
トランクス「何ですって!?だから奴の気が消えたのか!なぜそれを早く言わないんですか!」
ヤムチャ「まぁまぁ。それでお前への頼みなんだが,お前のマシーンでオレのもといた時代へ送っていってほしいんだ。フリーザもそこに行っているはず。リターンするようにセットしておいたから…。」
トランクス「…でもエネルギーが…。」
ヤムチャ「大丈夫!オレの時代は平和だからエネルギーは心配ない。ブルマも何とかしてくれるだろ…」
トランクス「はぁ…まぁしょうがないですね,フリーザを逃がしてしまったのはオレの責任ですから」

しぶしぶ納得するトランクス。胸ポケットからケースを取り出し,そこからタイムマシンのカプセルを選ぶ。ボンっと爆発音がして目の前にタイムマシーンが出現する。
トランクス「じゃあ行きますか…」

1人用の座席に大の大人が無理やり入り込む。窮屈この上ない…。
トランクス「ぅぅ苦しい…。あの…今気づいたんですけど…」
ヤムチャ「なんだ?」
トランクス「このまま未来に進んだら,ヤムチャさんの時代へ行くんじゃなくオレの時代へ行ってしまうのでは?」
ヤムチャ「えーと…いやまぁそれはご都合主義で何とかなるさ。」
トランクス「ホントかなぁ…」
ヤムチャ「え…気にすんなって!」
トランクス「……で年代はエイジ789ですよね。オレのいた未来よりもさらに先の世界ですね…。どんな世界なのか楽しみですよ…」

ヤムチャはトランクスに時間と位置を教え,マシーンは出発した。25年後の世界へと。

 

 

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