時をかけるヤムチャ







「神龍、叶えて欲しい願いは1つ、オレを若返らせてくれ」
「お安い御用だ」
 神龍が言い終わるや否や、ヤムチャの身体がみずみずしさを取り戻していく。彼はすっかりと昔のような整った顔立ちと潤しい肉体を得たのだ。


「ハァァァァ!」
 試しに全力で気を解放するヤムチャ。が、駄目。いくら力を捻りだしてもそよ風すら吹かない。
(しまった! 戦闘力も昔に戻ったのか……!?)
 ちなみに現在のヤムチャの戦闘力は100にも満たない。狼牙風風拳を主力技にしていた野盗時代と同程度だ。エネルギー弾など撃とうものなら5〜6発で卒倒してしまうだろう。
「……まぁいいか」
 しかし、意外とヤムチャは大してショックを受けていない
 コツは掴んでいるんだ、すぐに強くなれるさ。いや、むしろこれから始まる『新たな旅立ち』には好都合かもしれない。

「願いは残り2つだ。早く望むがよい」
 一人笑みを浮かべるヤムチャに痺れを切らした神龍がそう催促した
「ん? ……ああ、もういいよ。願いはこれだけだ」 願いはこれだけで充分、というより余計なことまで願いたくなかったのだ。
「そうだ。オレは、オレ自身の力で全てを手に入れるんだ……!」




 カプセルコーポレーション

 ブルマは作業着を身に纏い、ベンチを片手にせっせと何かの機械を組み立てていた。それはちょうど悟空がナメック星に行くのに使った宇宙船のような大きさで、側壁がまだ無く未完成であった。


 1m程のプレートを取り付け、流れるようにボルトをしめるその手捌きからは微塵も老いを感じさせない。
「母さん、少しは休んだら?」
 ブルマの背後からトランクスが言った。
「ん……もうちょい……」 振り返りもせずにそっけない言葉を返し黙々と作業に専念するブルマ。彼女にはもう機械の事以外頭に入っていない。
 母さんの悪い癖だ。トランクスは軽く溜め息をついた。

「別にさぁ……これが無くても普通の宇宙船があるんでしょ? 僕と悟空さんはそれでも構わないよ」
 その言葉に反応し、ブルマは初めてトランクスの存在に気付いたかのように作業を止めて振り向いた。
「まあそう急かさないでよ。この『タイムマシン2号』も今晩中には完成するわ。そしたら究極のドラゴンボールなんて一瞬で集められるんだから」

「一瞬て……大袈裟な」
「大袈裟じゃないわ! アンタ、まだこれの凄さが理解できないみたいね……いい! この『タイムマシン2号』は"あらゆる時空"に跳躍できる、……つまりその気になれば"別世界に行くこと"もできる私の英知を全て注ぎこんだ究極のマシンなのよ!」
「もう何回も聞いたよ……」
 興奮してまくしたてる母親と対照的にトランクスはうんざりとした表情を浮かべていた。
(こういうとこだけは科学者なんだからなぁ……)


「でもさ、それって一回跳んだら充電に50日もかかるんでしょ」
「う……け、けどほら、過去に跳べば実質プラスマイナス0だし……」
「無駄に年をくうし嫌だよ……」
「ああもう! 嫌なら乗らなくてもいいわよ! 孫くんだけでじゅーぶんよ!」
 なかば逆上したブルマは「帰れ帰れ!」とトランクスを強引に工場から追い出した。