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黄泉の門





12 名前:黄泉の門 投稿日:03/07/02 14:02 ID:Q8KbLQWp
プロローグ <開催>

「ほう。天下一武道会ですか」
「そうだ。世界各国の武道家たちを集め、文字通り天下一の強者を決める大会だ」
「世界中ですか……」
「鶴仙人、亀仙人を始め世界には強豪がひしめいている。
 そいつらの中で誰が最強なのかを決める大会を開く」

ピッコロの提案に対し、周りの者はざわめきだった。
今までも武道大会は多数あった。だがそれは、地方の大会であり
世界一の強者を決める者ではなかった。

今、世界には亀仙人・鶴仙人・チャパ王などの強者がいる。
しかし彼らが直接戦うことはなかった。
ならば、その中の誰が一番強いのかというのは格闘ファンとして当然の疑問となる。
これは誰もが一度は想像してみたことなのだ。

今、ピッコロは言う。真なる最強を決めると。噂ではない。
本当に戦って最強の格闘家を決めるのだ。

ピッコロに集められた者たちは顔を見合わせ考え込む。
「可能なのか」
彼らの疑問はその一点である。反対はない。だが、できるのか。
世界一の強者を決める大会。各国を代表する戦士が全員参加して初めて意味がある。
であれば、その費用は誰が出す。
いや、それ以前に最強といわれていた者たちが負けるかもしれぬ戦いに参加するのか。
誰の頭にも否定的な考えばかりが浮かんできた。
しかし、そんな彼らの胸中を察したかのようにピッコロは言う。
「ワシに任せろ! 必ずどんな手段を使っても
 世界各国に散らばる強者をこの一カ所に集めてくれる」

13 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/02 14:02 ID:Q8KbLQWp
数ヶ月後。ピッコロの指示により天下一武道会の準備が始められることとなった。
彼はこの大会のため、数千億ゼニーの大金を用意し、東の都近くの無人島を丸ごと
大会のための会場とした。

また、多数の出場者を募るため予選通過者全員に多額の賞金を約束した。
優勝者100億。準優勝50億。三位10億。予選通過者1億である。

無人島には武道会場を設置し、また観戦に来る客のためにホテルも用意した。
むろん、どちらも世界最大規模である。
彼はまず、全ての武道家に対し平等となる武道会場を作成するため、
コロセウム方式の会場を設置した。これは観客席の内側は全て闘技場になるという方式であり、
通常のリングに付き物である場外という概念は存在しない。
さらに、この闘技場の地面には衝撃を吸収しやすくするため、遠く南の都から取り寄せた土を敷き詰めた。

このコロセウムは50万人の観客を収容でき、その工事費用は1000億ゼニーを超えると言われる。
その多額の金をピッコロは惜しみなく出してきた。

このピッコロによる金にものを言わせた強引なやり方を好ましく思わない人間もいたが、
彼の計画は着々と進行し、ついに世界初の天下一武道会開幕まであと一ヶ月となった。

そしてその頃、世紀の大武術界開催の知らせを聞いた武道家たちは
それぞれ、己の技を最高にするため日々の鍛錬をいっそう厳しく行っていた。

26 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/03 09:07 ID:YqctdaL+
プロローグ <鶴仙人と桃白白>

「兄者。武道会の知らせが来たぞ」
「……またか、俺たち陰の者には縁のない話だ」

彼らは鶴仙人兄弟。兄鶴仙人と弟桃白白、どちらも世界最強クラスの武道家である。
だが、彼らは武道家と呼ばれることを好んでいない。
彼らはあくまで殺し屋。武道家ではないというのが信条なのだ。

仕事帰り、郵便受けを見れば時折、
武道会への参加を勧めるチラシや道場の勧誘などがある。
だが、彼らは殺し屋である。そのような勧誘を受けるはずもない。

だが、どういうことだろう。今日に限って桃白白の表情が違う。
兄、鶴仙人は弟の様子をおかしく思った。弟の表情が武道会出場を望んでいるように見えたのだ。

「兄者、今回の大会はな。今までとは違うぞ」
「ほう」
「曰く、”真の天下一”を決める大会」
「大きく出たな」
「口だけじゃない。優勝者には100億ゼニー出すと言ってる」
「なんだと……」
「それだけじゃない。試合では何でもあり勝敗はいずれかの戦闘不能でのみ決定される。
 一応金的や目突きは反則がとられるようだが、罰金1万ゼニーで許されるようだ」
「クックック。なんだそりゃ、俺等のための大会じゃねぇか」
「もちろん、出るよな?」
「あぁ、出るぜ。全員ぶち殺してオレが優勝。
 そして、おまえが準優勝だ」

37 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/03 19:53 ID:YqctdaL+
プロローグ <チャパ王>

ここは南の国。王の名はチャパ王。
世界最強の武道国家と知られ、その国王は正に千人力の力を持つと伝えられている。

その国王が今、天下一武道会に向けて最終調整を行っている。
四人組み手百番。一対四の対決を百回連続して行う組み手である。
むろん国王が相手とは言え、ここは武道国家だ。手加減は一切ない。
そして、国王以外にも世界チャンピオンクラスの猛者どもが大勢いる。
それがこの国である。

四人組み手百番が始まった。
チャパ王の周りに四人の強者が集まる。チャパ王は静かに構える。
カーンッ。
ゴングが鳴った。刹那。チャパ王が動く。いや、消える。
周りの者には追うことのできないスピード。
チャパ王はこのスピードで国を制覇したのだ。

一人目、前蹴りをみぞおちに入れKO。
二人目、振り上げた足をそのまま回してこめかみに一撃。
三人目と四人目は右と左の拳を同時にたたき込んでKOした。

一瞬の出来事。目視できた者は誰一人としていなかった。
それを見て、大臣は言う。
「素晴らしい。やはり、チャパ王こそ世界最強の男だ」
大臣絶賛のもと、この国最強の男チャパ王の組み手は続いていく。

38 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/03 19:54 ID:YqctdaL+
その横で一人の少年が王の姿を誰より挑戦的な目で見つめていた。
少年の名はチャパ王子。その名の通り、チャパ王の息子だ。

「ふん。親父のやつ。相手の攻撃から逃げるために動きばかり速くなりやがって」

彼に言わせれば、動きの速さは臆病さと表裏一体。
敵の攻撃が怖いから、かわす必要があるのだ。
己が強ければ、己に必殺の技があれば、速さなど必要ない。
それこそが、王子の持論である。

王子は国王が組み手をやっている最中、その近くで独闘をはじめた。
ボクシングで言うところのシャドー。それを始める王子。
注目する者は殆どいない。

王子は足でしっかりと地面を噛み、ほとんど上体のみでパンチを繰り出す。
繰り出す。繰り出す。繰り出す。
パンチを連続する王子、その間体は動いていない。
だが、パンチだけは神速。

たまたま、王子を見ていた兵士が言った言葉だ。
「俺には王子の腕が四本に見えた」
これこそ、チャパ王子が誇る最強の技、四手拳だ。


50 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 04:09 ID:SrMWqkXI
プロローグ <孫悟飯>

「さーて、薪割りおしまいっと」
少年の名は孫悟飯。彼は夕食までの仕事を終え家に帰るところだ。
山奥の家にただ一人住む少年。数年前まで老人と共に住んでいたが亡くなってしまった。
以来三年間、誰もいない山奥にたった一人で住んでいる。

薪割りを終えた彼は部屋にはいると、奥に飾ってある玉の前まで来た。
玉はオレンジ色をした野球用のボール程度の大きさであり、その中には四つの星が輝いている。
これは孫悟飯の祖父が生前拾ってきた玉で、いつも胸に飾っていた。
少年にとってこれは祖父の形見であり、忘れがたい思い出の品だった。

彼はこの玉の前まで来ると、手を合わせお辞儀をした。
「じっちゃん。オラ今日も元気に働いたぞ。今から飯とってくるな」
そう言うと、玉の部屋をあとにし夕食の支度に取りかかった。
支度といっても、彼の場合ただ獲物を捕ってくるだけである。
森の中に入り虎や熊などを捕ってくるのだ。

「虎はこの間食ったしなぁ、イノシシでも出てこねぇかなぁ」
そんなことを言いながら、森の中を歩いていく。
ここは山奥といっても、森林限界線を越えるほどの山ではない。
十分に木々が生い茂っており、動物たちもたくさんいる。その動物たちはどれも
少年にとって「ごちそう」だった。

しばらくすると、悟飯は今日の「ごちそう」を見つけた。
「やったぁ! イノシシみっけ」
そう言うと、彼はイノシシに飛びかかった。
一瞬の出来事。
イノシシは何が起こったのか分からず、突然の襲撃にあえなく倒れてしまった。

「さぁーて。今日もたくさん食べるぞ」
イノシシを背中に背負い、夕食を食べるべく家路につく悟飯。

51 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 04:11 ID:SrMWqkXI
だが、その頃彼の家に盗賊が入り込んでいた。
「ドラゴンレーダーの反応はこの家から出ているのか?」
「えぇ。間違いありません」
二人組の盗賊。どちらも20代前半といったところか。片方の偉そうにしている男は、筋肉隆々としている。
二人は悟飯の家に無断で入り込んでいった。

「ふぅ。今日の飯。早く食いてぇなぁ」
そんなことを言いながら悟飯は歩いている。彼は盗賊が来ていることなど夢にも思っていないようだ。

彼が家にはいると盗賊たちはオレンジ色の玉を見つけ、今にも盗もうとしていた。
「おめぇら。何で入ってきてるんだ?」
悟飯は相手が盗賊であることを知らない。
「この玉をもらいに来たんだよ」
盗賊、下っ端の男がそう答えた。
「いやだ。その玉はオラのじっちゃんの形見だ。渡せねぇよ」
「そう言わねぇでくれよ坊主、金ならいくらでもやる」
「金なんていらねぇ」
「金じゃなくてもいい。なんだって欲しいものをやる」
「いらねぇって。帰ってくれ」
「わがままなガキだな……」

刹那、筋肉隆々の盗賊が悟飯に殴りかかってきた。
「ガハッ」
吹き飛ばされる悟飯。

「こんなガキの戯言につきあうな。ドラゴンボールをもらって、すぐに退散するぞ」
「はい。申し訳ありませんでした。」
下っ端の男はそう言うとドラゴンボールと呼ばれた玉に手を伸ばした。
その瞬間。男が吹き飛ばされた。悟飯が蹴りを入れたのだ。
「じっちゃんに手を出すな。悪党ども」
「信じられん。気を失っていたと思ったのだが」

52 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 04:11 ID:SrMWqkXI
「失うわけねぇよ。ちょっと痛かったけどな」
「……ちょっとか。どうも最近体がなまっていたようだ」
盗賊は、上着を脱ぎだす。
その下には、筋肉のみで作られた体が現れる。体重は優に100kgを超えようと言う巨体。
だが、脂肪はほとんど見あたらない。筋肉のみの巨体。
「おとなしく寝ていれば良かったのだ。そうすれば死なずに済んだのにな」
「おめぇみてぇな悪党にはやられねぇよ。オラ強えぇからな」

二人が構える。
男は右拳を脇に抱え、腰を若干ひねり気味にしている。
明らかに中段突きをねらった構えだ。

二人は構えながら、徐々に距離を詰めていく。共にすり足。
その距離3m。徐々に詰まっていく。
2m90cm
2m80cm


2m
(オレの間合いだ!)
盗賊が動いた。体をひねり、右拳に力をため一気に打ち出す。
拳の軌道は直線。それが悟飯に向かって徐々に加速しながら進む。
標的に当たったとき、最もエネルギーが高くなる理想の中段突き。
(殺した)
男はそう思った。
だが、次の瞬間。男の拳は悟飯の拳で跳ね上げられた。
拳の軌道のわずか下を正確にねらい打つ悟飯。男は自らの力が制御できず
拳の軌道が上に外れる。悟飯はその下をかいくぐり、肘を打った。
みぞおちにカウンターの肘が炸裂。

勝負は一撃でついた。

53 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:03/07/04 04:12 ID:SrMWqkXI
「弱えぇヤツだな。もう二度と来るんじゃねぇぞ」
そう言いながら、悟飯は二人の男を抱え外に運んでいった。
家の外に出ると二人の男たちを山の下まで投げ飛ばした。

「さぁて、飯でも食うか」
ちょっと遅れてしまったが今日の食事だ。イノシシを家の中に入れて料理を始める。

夕食を食べ始めたとき、悟飯の目に妙なチラシが入ってきた。

「なんだこれ?」
どうやら、さっきの男たちが落としたものらしい。
”天下一武道会開催。来たれ強者たち”

「強者たちかぁ。スゲェ奴いっぱいいるのかな」

この少年、実は武道の経験がある。祖父に長年教わり続けたその腕は
もはや、大人たちをも遙かにしのぐ腕前であった。
そして、彼は誰より格闘を愛していた。

強者たち。このフレーズに悟飯が惹かれないはずはない。

数ヶ月後、少年孫悟飯はじっちゃんの形見、四星球を首から下げて天下一武道会に参戦した。


63 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 23:22 ID:SrMWqkXI
プロローグ <亀仙人>

甲羅をしょった妙な若者がカリン塔を上って既に三年近くがたった。
カリン塔。それは武道を志す者の聖地。その塔の頂上には武の神"カリン"がいる。
若者はそのカリンの修行を受けるため、塔を上ったのだ。

だが、この若者はあまり真面目に武術を志す者ではなさそうだ。
「カリン様。下界を覗く手段を教えてくれ。セクシーギャルが……」
(ボカッ)
「馬鹿者。そんなことばかり言うから、一向に上達せんのじゃ!」
「ぶー。教えてくれてもいいだろ。仙人友達じゃねぇか」
「フンッ。馬鹿なことを言うとらんで早くこの超聖水を取ってみせろ」

若者の名は亀仙人。背中にいつも甲羅をしょっているのでそのあだ名が付いた。
仙人といっても、ただの若者である。
この若者が受けている修行。それは"超聖水"という水をカリンから奪うというもの。
カリンは肌身離さずこの水を持ち続け、弟子の亀仙人はカリンを倒してそれを奪う。
亀仙人はこの超聖水を飲めば、世界最強の武が手にはいると聞かされている。
むろん、それはカリンが言った方便である。
本当は、超聖水を飲んでも全く変化はない。超聖水を手に入れるまでの過程。
カリンから超聖水を奪うという行為そのもの。それが修行であり、
それを達成したとき最強の武が手に入る。というのが、カリン塔の修行なのだ。

「うーん。取ってみせろって言われてもよぉ。アンタ意地悪して取らせてくれねぇじゃん」
「馬鹿者。ありがたい聖水がそう簡単に手には入ってたまるか、これも修行のうちじゃ」

(はいはい。んでも、やっぱあの水が取れなきゃ、しょうがないじゃん)
亀仙人は心の中で愚痴をこぼしつつ、カリンの修行を受け続ける。

カリンはと言えば、このどうしようもなく"ヘタレ"で"スケベ"な男を
三年間も鍛え続け、正直な話、最近はもう修行に飽きてきているようだ。

64 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 23:22 ID:SrMWqkXI
一週間後、こんな二人の修行もちょうど三年目を迎えた。
(早く取ってくれ。ワシはもう疲れた)
疲れ果てたカリンに対し、亀仙人はあくまでマイペースを貫いている。

「おぉ、カリン様。こっち来て下を見てみろ。裸の女が」
「んなわけあるかい! だいたいお前は下界をのぞけないだろうが」

今日もいつもと同じ毎日が繰り広げられるのかと思うとげんなりするカリン。
だが、よく見ると今日は亀仙人がおかしい。
どこがと言われると分からないのだが、明らかにおかしい。なぜだろう。

「相変わらず堅いなぁ」
そう言って亀仙人は突如、猛烈なスピードでカリンに襲いかかる。
(何じゃと!)
今までにない亀仙人のスピード。これまでの2倍。いや、3倍。
(馬鹿な。赤くなっておらんのに通常三倍の速度とは……)
カリンは何が起こったのか分からず、あっと言う間に超聖水を奪われてしまった。

「やったぜ!」
亀仙人の絶叫が響き渡った。
「……おぬし、今まで実力を隠しておったのか」
「そう言うわけでもないんだけどな。
 まぁ、そんなことはどうでも良いとして、この"超聖水"を飲めば最強になれるんだな」
「あ、いやその事だが、実は黙っていたのだが……」
「ストップ! 分かったぜ。やっぱ最強になれるんだろ」
「え、いや、その……」
「んでもって、カリンちゃんはオレが最強になるのが悔しいって訳だ」
「誰がカリンちゃんじゃ! よく聞けその水は……」

カリンが説明するのも聞かず、亀仙人は超聖水を飲み干した。

65 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/04 23:22 ID:SrMWqkXI
「分かったじゃろう。超聖水とは……」
「あぁ。分かった。スゲェ力が体中からわいてくるぜ」
「……」(いや、変わってないけど)
カリンは説明をあきらめた。
「ありがとう。カリン様。これでオレが世界最強の武道家だ!」

そう言って、亀仙人はあきれるカリンに別れを告げ、塔を降りた。

亀仙人が地上にたどり着くと、カリン塔にはポスターが貼ってあった。
天下一武道会開催の告知だ。
亀仙人も不真面目とは言え、武道を志す者。当然、天下一武道会には興味を示すはずだが……
その実、彼の目は別のに釘付けとなっていた。聖地カリンに迷い込んだ金髪の美女である。

なぜ、そんな美女がカリンにいるのかなどと聞いてはならない。
ともかく、スケベな亀仙人。天下一武道会のチラシなどには見向きもせず、
金髪美女に話しかける。

「お嬢さん。迷子になってしまったのですか」
「え。えぇ」
亀仙人は目が血走っている。スケベパワーが前進に蓄えられている証拠だ。
金髪美女はかなり引いている。
「オレにパイパイをつまませてくれれば、町まで案内してやるぞ」

亀仙人がその後、65536発ぶたれたのは言うまでもない。

< つ・づ・く >


90 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/06 13:17 ID:jfxuMQ+K
プロローグ <フルート>

魔族と言われる種族がある。伝説の種族である。実在はしない。
と思われている。

だが、ここにその常識を覆す二人がいた。そう魔族の二人である。

「大魔王、資金調達はぬかりなく進んでおります」
「定期報告ごくろう」

大魔王と呼ばれた男は、天下一武道会開催の第一人者ピッコロである。
そして、その前に立つもう一人の男の名はフルート。ピッコロ第一の部下だ。

彼らは天下一武道会開催のため、多額の資金を様々なところから捻出した。
銀行を襲う。
国を襲う。
海賊の隠し財宝を奪う。
様々な方法で数千億の金を奪い取った。

91 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/06 13:18 ID:jfxuMQ+K
そこまでして、天下一武道会を開きたかったのには理由がある。
一つは世界各国に散らばる武道家たちを一つに集め、それを一網打尽にしたかったのだ。
彼らの目的は世界征服である。魔族の名は伊達ではない。
人間たちを支配するために生まれてきた一族なのだ。
そのため、世界各国に散らばる魔に対抗できる力を持った者たちを一堂に集め、
それらを葬るという手段は非常に有効なものだと考えているのである。

そして、もう一つの理由がある。
それは魔族の力を世界に知らしめるためだ。
武道会に出場する選手たちを全滅させることで、魔族の最強を知らしめるのである。
この二つこそ、ピッコロが天下一武道会を開催した理由なのだ。

フルートは今、ピッコロ大魔王から命じられた資金調達を行っている。
だが、ピッコロは資金をもう十分な量だと判断した。そして、今日彼は新たな命令を
フルートに伝えた。その命令は

「天下一武道会で優勝せよ」

92 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/06 13:18 ID:jfxuMQ+K
プロローグ <謎の人>

ここに名の売れない武道家がいる。男は今宿敵と闘うため天下一武道会出場を決めた。

武道家の妻が言う。
「どうして、また闘いに行くの?」

男が答える。
「そこにあいつがいるからだ」

「馬鹿。いつも負けてるじゃない」
「だが、今度は負けるとは限らん」
「……」
「行くよ。どいてくれ」
「兄さんに勝てるわけ無いのに……」

一人の男が天下一武道会出場を決めた。
そう、彼には倒さなければならない相手がいる。
その相手に勝つために、武道会に出場するのだ。

93 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/06 13:19 ID:jfxuMQ+K
プロローグ <登場>

様々な者たちが、それぞれの思いを込めて出場する天下一武道会。
その大会が、今、開かれようとしている。

場所は東の都近くの無人島。
この大会を機に島の名前を大会優勝者にちなんだ物とするという。

島は充分に広く、中にはピッコロが建てたホテルが数件。
そして、50万人が収容できる大武道会場がある。

今日は予選を行う日。開会式の後に予選が行われる。
予選会場は武道会場の隣にあり、参加者以外は入ることができないが、
収容人数は5万人と多く、予選参加者およそ8000人を収容するには充分すぎるスペースだ。

今ここに、全ての参加者が集っている。
そして、この予選会場には計八つのリングが設置されており、参加者は8グループに分かれ
そのリング周りに集まっている。

ここにいる参加者たちはみな、開会式を待っている者たち。
そして、開会式の後の予選。本戦を待っている者たち。
全ての戦いを勝ち抜こうと夢見る武道家たちだ。

しばらくして、大会主催者による演説が開始されることとなった。
「みなさま、遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。
 えぇ、本日は……」
太り気味の男が話し始めた。どうやら、ピッコロではないらしい。

94 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/06 13:22 ID:jfxuMQ+K
参加者たちは、一部には演説に耳を傾ける者もいたが、殆どは周りの参加者の実力を確認している。
すなわち、観察することに熱心になっている。
体格、面構え、目つき、気合い。
これら戦う前から判断できる要素を分析する。

そして、おそらく全員が等しく思う。
「今から、こいつら全員を叩きのめし俺が最強になる」
そう、ここにいる者たちは自分が負けることなど考えていない。最強を自負する者たちなのだ。

だが、一部。そう第六リングの近く、ここの参加者たちだけ様子が違った。
何かに怯えるような、萎縮した空気が流れる。全員誰かに怯えている。

第六グループの参加者たち、殆どの者がみな一様に優れた体格を持ち、
傍目には「強者」としか映らない者である。だが、その者たちが皆怯えている。

そして、怯えている視線の先には一人の小さな男がいた。
その男、身長は170cmほど。周りに比べるとずっと小さい。
体重も70kgもなさそうだ。圧倒的に小柄な体格である。
だが、第六グループにあって唯一、この男だけが怯えてない。
静かに両目をつぶり、足を肩幅に開き、手は力無くぶら下がっている。
そして、顔は若干うつむき加減。明らかにやる気のない格好である。

だが、周りの者はこの男をおそれている。
怯えている。怖がっている。
理由は分からない、だが本能が、いや魂が呼びかける。
「この男は恐ろしい」
そう訴えかけている。

この小柄な男の名は武泰斗。千年不敗の武術を操る最強の男だ。

129 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/08 15:16 ID:???
第一話 <予選>

「……以上をもちまして、開会の挨拶とさせて頂きます」
開会式の挨拶が終了し、別の男が壇上に上がる。

「続きまして、予選会のルールについて説明いたします。
 予選は8グループに分けて行います。各グループでトーナメント戦を行い
 トーナメントを勝ち残った1名。すなわち合計8名が本戦に進出します。

 皆様、足下をご覧下さい。床の色が8色に分かれております。
 それぞれの色は各リングの色に対応しております。自分の色のリングで戦って頂くことになります。
 トーナメントの組み合わせはリング側の掲示板に二ヶ所載せておりますので適宜ご覧下さい。
 また、予選の運営は各グループの係員が指示いたしますので、そちらの従って下さい。

 次にルールについてですが、 予選会のルールは本戦とは異なり、若干の反則を設けております。
 急所攻撃、つまり金的や目突きは反則負けです。武器の使用は認めていません。
 リングの外に出ても負けとなります。また、ダウンは10カウントで負けです。

 以上をもちまして、予選会の説明を終わります。
 皆様が日々の鍛錬の成果を存分に発揮されることを期待します」

定番通りの予選説明が終わり、いよいよ大会が開始される。
選手たちは、我先にとリングに駆け寄った。そう、みな戦いたいのである。
自分が強いと信じるからだ。

だが、一部。そう第六グループだけは違う。

「あんな化け物とは戦えない」

武泰斗をおそれ、数百人の参加者が予選を辞退した。
ともかくも、天下一武道会予選開幕である。

130 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/08 15:18 ID:???
-- 第一グループ --

「殺すのは反則ではなかったよな」
そう言ったのは桃白白。彼は武道家ではない。人殺しの技を使う者である。

たった今、対戦相手の首を折り『殺した』
相手は殺される前に命乞いをしていた。二人の間には明らかなる実力差があり、
殺さずとも桃白白の勝利は確定していたと言ってよい。

だが、彼は己のプライドのため、世界最強の殺し屋を目指すため。
立ち塞がる敵は全て『殺す』。倒すのではない『殺す』のだ。

第二回戦。
桃白白が再度登場する。対戦相手はムエタイの世界チャンプ。

「貴様も殺してやる」
「無駄だ」

開始の合図よりも前に二人は戦っている。お互いの気をぶつけ合い闘っているのだ。
二人は同時にリングに上がる。同時に構える。奇しくも同じ構え。
左足を前に出し、重心は右足に乗せる。両手は胸の前で拳は開いている。

「始め!!」

131 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/08 15:19 ID:???
合図と共に動いたのはチャンプ。凄まじいスピードで間合いを詰める。
桃白白の膝にローキック。後にかわす桃。だが、それ以上のスピードでチャンプの足が出る。
後に逃げる桃の足を、さらに後から左足で刈上げる。バランスを崩す桃。
追い打ちをかけるように、右の回し蹴りをたたき込む。
桃は場外際ぎりぎりの所まで吹き飛ばされた。
「場外には逃がさん」
チャンプが吼える。続けざまにムエタイ流の連続蹴りを放つ。サンドバックと化す桃白白。
誰もが、チャンプの勝ちだ。と思った。
その瞬間、
チャンプのアゴが跳ね上がる。一瞬のうちに崩れ落ちるチャンプ。
何が起こったのか気づいた者はいない。桃白白神速の膝蹴りがチャンプのアゴに炸裂したのだ。
「ぅぅぁぁ……」
言葉にならない声を発するチャンプ。一撃。アゴが砕かれたのだ。
桃は全く本気を出していなかった。
「実力差が分かったかね」
「あぁぅ……ひっ」
桃はゆっくりとチャンプに近づく、チャンプは桃が一歩よりたびに一歩ずつ後じさる。
両者の明暗は決定した。
「死ね!」
桃白白の手刀がチャンプの胸を貫く。勝負あった。

結局、この一戦を境に第一グループは戦意を喪失。桃白白の独壇場となった。

第一グループ勝者、桃白白。


136 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/09 16:26 ID:+xrkjwdh
-- 第二グループ --

「こらこら、坊や。こんな所に来ちゃいけないよ」
「坊やじゃねぇ。オラは孫悟飯だ。おめぇらよりずっと強いぞ」
ハッハッハッ。リング周辺から笑いが起きる。
ここ第二グループでは孫悟飯の第一戦目が始まろうとしていた。
対戦相手は空手家。その身長は2メートルほど。体重は130kgほどはありそうだ。巨漢である。
悟飯はといえば、身長140cmほど。体重40kg程度。この年としては大柄かもしれない。
しかし、誰の目から見ても明らかな体格差。そして、それから類推される圧倒的な実力差。
「アレじゃ、実質不戦勝だぜ」
それが周りの者の感想である。

二人がリングに上がる。孫悟飯は対戦相手に一礼した。それにつられ空手家も礼。
審判はその姿を確認してから号令をかける。
「試合開始!」
空手家が構える。が、一瞬。構え終わる前に空手家は意識を失って倒れてしまった。
周りの者は何が起こったか分からない。ただ一つ。悟飯の姿が消えている。
「まさか……」
参加者の中に一つの考えが浮かぶ。
「あのガキ……」
そう。悟飯は誰の目にもとまらないほどのスピードで高速移動し、
空手家を一撃で倒したのだ。
「なんて奴だ……」
辺りに沈黙が流れる。空手家はまだ起きない。悟飯の姿はその空手家のすぐ前に現れた。
「オラ。ちゃんと手加減したつもりだったんだけどなぁ
 おっちゃん、大丈夫か?」

悟飯はその後も圧倒的な力をもって予選を勝ち進み、第二グループ勝者となった。

137 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:03/07/09 16:29 ID:+xrkjwdh
-- 第三グループ --

「かつて鶴とは猛禽類最強の鳥であった。大きさにして鷲の数倍。
 凶暴さにして鷹の数百倍。だが、そのあまりの凶暴さ、強さにより、
 共食いが絶えず、結局全滅した種族である。
 ちなみに、今現在"鶴"と呼ばれている鳥はこの猛禽類によく似ているため
 名付けられたのであり、本来の鶴とは若干異なっている」
民明書房刊、『鳥類の軌跡』

今は第三グループ決勝戦。この闘いに勝ち残った者が本戦に進むことになる。
鶴仙人vsブライアン・イーグル。
ブライアンはボクシングのチャンピオンである。
その名の通り、ジュニアミドル、ミドル級の両方を制したチャンプだ。

「ふっ。鶴とはねぇ」
ブライアンは笑う。そう、猛禽類最強のイーグル。つまり鷲。
彼にとって鶴などとるに足らぬ相手なのだろう。
むろん、彼は鶴仙人の言う『鶴』の本来の意味を知らない。
知っていればこの対決、戦うまでもなく『鶴』の勝ちなのだ。

「ブライアン・イーグル選手、鶴仙人選手。両者リングに上がってください」
二人の名が呼ばれる。
第三グループ決勝戦が始まろうとしていた。

138 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:03/07/09 16:29 ID:+xrkjwdh
「急所攻撃、武器使用は認められません。リング外は……」
定番の説明を行う。その間、ブライアン、鶴仙人ともに下を向いたままだ。
二人の距離は3m程。攻撃を行う間合いではない。
故に安心して下を向いていると言うことなのだろうか。

審判の号令が下る。「では、始めてください」試合開始。

開始直後、ブライアンはピーカーブーのスタイルで構える。
鶴仙人はまだ下を向いたまま。何かぶつぶつと独り言をつぶやいている。

(やる気がないのか)
ブライアンはそう思うと、ピーカーブーのまま突進する。
ブライアン・イーグルの右フック。そして左。また右。
振り子のように、右と左を連打するブライアン。
体が左右に揺れ、規則正しく右と左のフックが放たれる。
ブライアン・イーグル必殺のデンプシーロール。
そして、鶴仙人は無防備にもそれを全て受けてしまう。

(っく。やる気がないのか。所詮鶴だな)
そう思うブライアン。連打。連打。またまた連打。
休むことなく、デンプシーロールを続けるブライアン。

だが、異変に気づく。この技は右と左のフックを連続でたたき込む。
一発一発が必殺の一撃である。だが、鶴仙人。まるで平気。
デンプシーロールを蚊ほどにも感じていない。

(なんなんだ、こいつは)

139 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:03/07/09 16:30 ID:+xrkjwdh
(なんなんだ、こいつは)
ブライアンに焦りが募る。とっさに、ブライアンはデンプシーロールをやめ、
別の構え。右拳を脇に抱え、そこからもう一つの必殺技を出す。スマッシュだ。
破壊力はフックの比ではない。だが、それさえも鶴仙人には通用しない。
(ば、馬鹿な……)

「さて、そろそろ品切れかな。やはり所詮"鷲"はこんなものか」

最強の猛禽類"鶴"が動く。ブライアンと同じデンプシーロール。
だが、スピードが違う。右左右左。同じことの繰り返し。
しかし、スピードはブライアンの数倍。そして、威力はさらに違う。
ピーカーブースタイルのブライアンをガードごと押しつぶす。
(馬鹿な……鶴ごときにこんな力……)
ブライアンには信じられない。鶴がこのような力を出すなど。
彼にはあってはならぬことなのだ。
「認めん。認めんぞ!」
ブライアンは渾身の力を振り絞り鶴のデンプシーから抜け出す。
そして、間髪入れずスマッシュの構え。

鶴仙人に右のスマッシュを打ち込む。鶴もそれにあわせ、左の一撃。
ブライアンのスマッシュを外側から鶴のカウンターが回り込む。
必殺の一撃、クロスカウンター。
ブライアンは自分のパワーと鶴仙人のパワーをあわせた一撃をテンプルに受けた。

倒れるブライアン。敵を見下ろす鶴仙人。勝負あった。

審判のカウントが始まる。1,2,……もうブライアンは起きあがれない。

第三グループ勝者鶴仙人。


183 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/11 21:39 ID:WlKxhaAB
-- 第四グループ --

ここでは大方の予想通りチャパ王が勝ち進んでいた。
無駄が無く素早い動き。そのスピードはほとんどの選手には目にもとまらぬものである。
決勝までに要した時間は1分に満たない。それも合計で。

そもそも、今回天下一武道会は"初の世界規模武道大会"が売りである。
だが、チャパ王の国では武術に優れたものが王になるという話があるため、
毎年腕に自信のある強者が集まってくる。
故にチャパ王国では毎年"世界規模の武道大会"が開かれているのである。

その大会で毎年一位に輝く男がこのチャパ王である。
そもそも、チャパ王という名前は本名ではない。チャパ王国の王だからチャパ王である。
この国では最強の者が王になる。大会で優勝した者が王になる。
従って、一年ごとに王の入れ替えが行われる。
だが、現チャパ王になって以来、王が変わったという話は10年以上聞かない。
それほどに圧倒的な強さをもっているのである。

その強さを支える物は"スピード"。チャパ王は誰の目にもとまらないスピードをもって
国王の座に立ったのだ。
そのスピードは『縮地』と呼ばれる神速の動きである。
チャパ王が走ると地面が縮んでいるようだからその名が付いた。
そして、この縮地。普通、速さを形容するときには『目にも止まらない』という言葉を使う。
だが、これに対しては『目にも映らない』という言葉で形容される。
通常の『神速』とはレベルが違うのが『縮地』なのだ。

これまでの対戦でチャパ王は一度も相手に触れられることなく勝利している。
それこそが『縮地』の力だ。
そして今、その最強の男が第四グループ決勝戦に挑む。

184 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/11 21:40 ID:WlKxhaAB
「では、チャパ王選手。匿名希望選手。リングに上がってください」
チャパ王の相手は匿名を希望している。顔にマスクをかけ、服は大きめの物を着て体のラインを隠している。
だが、チャパ王はすぐにその相手が誰なのかを見抜いた。息子である。チャパ王子だ。

リングに上がるとチャパ王は息子に近づく。
「王子よ、なぜこの大会に出た。お前の実力では父には敵わん」
「……」
王子は返事をしない。

「試合前に無駄な私語は慎んでください」
審判に諭され、チャパ王は息子から離れる。

二人の距離が離れ、大会で規定された3mの間合いになる。
それを見計らい審判が号令を下す。
「試合、はじめ!」

合図と同時に構える二人。その構えは対照的。
息子。重心を低く保ち、足は肩幅より若干広くあけその十指で地面を噛んでいる。
動くには不利な体勢だ。しかし、パンチにはパワーが乗る構えである。
父は軽く体を上下させリズムをとっている。軽く柔軟な構えをとることにより
体捌きを素早くするのが目的だ。

二人が構えた後、王子が初めて言葉を発した。
「親父。その構えはあんた自身の弱さを映し出す鏡だよ、
 敵の攻撃をよけなければ勝てない。攻撃から逃げなければならない。
 それは強さではない。闘いではない。教えてやる、オレが本当の闘いをな」

185 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/11 21:42 ID:WlKxhaAB
父が動く。『縮地』による目にも映らないスピード。
そこから連続攻撃が繰り出される。誰にも見えない。だが確実な攻撃。
王子は為す術無くその攻撃を受ける。

「息子よ。お前がフットワークを疎かにしている事は知っている。
 今まで私はその事に触れはしなかった。だが、今日教えてやる。
 フットワークのない格闘術に勝利はない」

見えない攻撃。瞬く間に傷つく王子。誰の目にもチャパ王の勝利は揺るぎない物に思えた。
だが、

「ぅぅうおおおりゃ!」

王子が雄叫びと共に、神速のパンチを繰り出す。王子は動かない。
ただ前面に対してのみパンチを繰り出す。その速度はまさに神速。
だが、その前面は空気のみ。空気に対して神速の拳を繰り出している。

「王子よ。無駄だ。私にその攻撃は当たらん」
「無駄で結構。だが、オレはこの拳を信じる」

次々と傷つく王子。チャパ王は未だその姿を現さない。勝負は決した。
誰もがそう思っている。ただ一人、王子を除いては皆そう思っているのだ。

186 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/11 21:48 ID:WlKxhaAB
「この速度じゃ当たらないか」
拳を振りながら王子がつぶやいた。次の瞬間。王子の拳が割れる。
いや、そのように見えた。神速の拳が残像を作り、分裂したように見えたのだ。
腕が四本。一瞬のうちに王子の腕が増える。そして、その腕が血に染まった。
「この手応え、当たったじゃねーか」
「ば、馬鹿な……」
この大会。いや、この数年間。チャパ王に拳を当てた者はいない。
だが、それを実の息子が。それも全く動かず。ただ拳のみを振り回して。
当てたのだ。

チャパ王の動きが止まった。たった一発のパンチが効いたのだ。
「どうした、逃げないのか?
 オレの拳が襲ってくるぞ」
「……っく」

チャパ王は再び、縮地による動きを始める。だが、速度が鈍い。かすかに見える。
「遅いぜ!」
再び、王子の拳が四本に割れる。その瞬間。チャパ王ははじき飛ばされた。
「弱い。弱いなぁ。親父。アンタ最強じゃなかったのか」

王子の言う言葉。「敵の攻撃をよけなければ勝てない」
チャパ王は強いのではない。弱いから逃げていたのだ。
今までの闘いでは逃げ切る事ができただけなのだ。
真なる強者にあたった今、チャパ王に勝利はない。

王子がトドメの四手拳を放った。もうチャパ王に逃げ切るだけの力はなかった。
KO。

187 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/11 21:55 ID:WlKxhaAB
王子がチャパ王を倒し、審判が勝ち名乗りを上げる。
この瞬間。チャパ王国に新たなる王が誕生した。もう彼は王子ではない。
新たなチャパ王なのだ。必殺の四手拳を携えた新たな王である。

旧チャパ王が目を覚ます。そして、新たな王に言った。
「強くなったな。いや、私が弱くなったのか……」
「もうアンタの知ってるオレじゃねぇぜ」
「そのようだ……
 私はどうやら、『縮地』に頼りすぎていたようだ。
 たった数発のパンチを食らっただけでこのざまだ」
「逃げる事ばかり、覚えたからだ」
「そうだな」
「オレは逃げない。どんな敵があいてでもこの拳だけで勝ってみせる」
新チャパ王は自らの拳を握りしめ、そう宣言した。
そして、その足元を見ると、わずかに地面に彼の体がめり込んでいる。
これは新チャパ王がこの場所に踏ん張り、この試合中全く動かなかった証だ。
そう、彼は父の技から逃げなかったのだ。

「親父。見ててくれ。オレは必ず優勝する。
 チャパ王国の最強を世界に知らしめてやる」

第四グループ。勝者、匿名希望。いや、新チャパ王。

231 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/15 06:13 ID:2gsDPia7
-- 第五グループ --

亀仙人。なぜそのように呼ばれているのか。
背中にある甲羅だけがその理由ではない。彼はそれを背負う前から亀仙人と呼ばれていた。
なぜか。それは、彼の動きが亀のように鈍いからである。
その動きの鈍さ故に、格闘家の中では最弱クラスといわれていた。
ただ、その最弱である彼が有名になれたのは、動きの鈍さを帳消しにする程の強さがあったのである。
その強さこそ、最強の『パワー』。彼はパワーだけで今まで出場した全ての大会で
負け無しという戦績を誇っている。
格闘界、最鈍足にして最強の実績を誇る男。それが亀仙人だ。

そして、この男にはもう一つの話がある。最スケベ。最変態。最女好き。
そう。本来、潔癖であるべき格闘家においてこの男。潔癖からは最も遠い事でも有名。
様々な噂がある男がついに天下一武道会予選に参戦する。

しかし、当の亀仙人。第五グループ予選の組合せを見てふて腐れている。
「女がいない」
確かに組合せを見れば、女とは決勝まであたらない。スケベの彼にはそれが気に入らない。
「この日のために寝技を磨いていたというのに……」
彼のたくらみは残念ながら失敗に終わりそうだ。

232 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/15 06:13 ID:2gsDPia7
予選会が始まる。第一回戦。亀仙人の相手はレスリングの使い手。むろん男。
「密着型か……」
亀仙人の最も嫌なタイプだ。密着する技を得意とする男。
まぁ、男なら気持ちも分からなくない。しかし、亀仙人は人一倍嫌いなのだ。
「とっとと、すませるか」

リングに上がる二人。レスリングの男が亀仙人を見つめて呟く「いい男」。どうやらホモだ。
「気色悪い……」
亀仙人、当然の反応を示す。

ホモ・レスラーvsスケベ・亀仙人。対戦開始。

「いくわよ!」 開始直後、動いたのはホモレスラー。
鳥肌を立てて逃げる亀仙人。後ろは処女のままでいたい。それが彼の願いだ。
「捕まったら終わりだ」
そう直感する亀。無論、勝敗は彼の頭にはない。勝っても負けても、ホモにさわられては駄目なのだ。

が、しかし彼は最鈍足の男である。遅い。あっと言う間にホモに捕まってしまった。
「もらった!」
ホモは亀の胴体に横からしがみつく。そして、そのまま投げ技にいく。
しかし亀。それを強引に力で振り払う。3メートル程、ホモを吹き飛ばした。
「さ、触られた……」
鳥肌が最高潮に達する。そして、亀仙人が切れる。
「貴様。このオレに触れたな。ゆるさん!」

亀。今度は自分から敵に近づく。無論鈍足。

233 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/15 06:14 ID:2gsDPia7
逆にホモ。少し引く。「普通に捕まえただけでは力で引き剥がされる」
動きは遅いが圧倒的なパワー。まともに捕まえただけでは倒す事も、投げる事もできない。
普通に捕まえて駄目なら。ホモは攻め手を変え、亀の腕を取りに行く。
関節を極め。そのまま腕を折るようにして、敵を倒す。それがホモの計画だ。

鈍足の亀をホモが捕まえる。そして、腕を極める……
が、極まらない。ここでも亀が力ずくで引き剥がす。
「ぬぅりゃぁああ!」
亀。凄まじいかけ声と共にホモを投げ飛ばした。
「二度も触ったな。もう許さん!」

亀。さらに凄まじい形相でホモに近づく。そして渾身の蹴り。これも鈍足。
ホモはその蹴りを前に出て受け止める。
(どんだけパワーがあっても、根本で受け止めればダメージはない
 そして、受けきった後片足だけでバランスの悪い体は倒れ易いはずよ)
そう思い、亀の攻撃を受け止める。しかし、またも弾き飛ばされた。

「馬鹿な……一体どれだけのパワーがあるというの」
「貴様には想像もつかん程のパワーだ。説明しても意味がない」

そう言うと亀は再び渾身の蹴りを放つ。(受けては駄目)そう思い、今度は避けるホモ。
だが、よけても蹴りの風圧で飛ばされる。圧倒的、鈍亀パワー。
ホモが戦意を喪失するまで、時間はかからなかった。

第五グループ。亀仙人第一回戦突破。
だが、彼の活躍はこれで止まらない。

234 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/15 06:14 ID:2gsDPia7
「ホモに……ホモに……触られた……女。女はどこだ」
ホモに触られたと言う事実を払拭するため、女を捜す亀。
だがいない。確かにいたはずの女がいない。なぜだ。
不思議に思って、トーナメントの対戦表を見る亀。すると。
女、一回戦負け。

「貴様等! 全員殺す
 ころす。コロス。ヌッコルス」

ぶち切れた亀を止められる者は誰一人いなかった。

第五グループ。勝者、亀仙人。


333 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:20 ID:TBdeCqx/
第二話 <暗殺者>

予選が進む中。ある男は昔の話を思い出している。
男の名は武泰斗。一応、まだセリフはないが本編の主人公である。

武泰斗が思い出した話は、今から一ヶ月ほど前。彼が妹と話しているときの事だ。
暗殺者・武泰斗はいつものように仕事を請け負った。
殺しのターゲットは某国の大臣。依頼人は敵国のお偉いさんだ。

人を殺す。読者は考えた事はあるだろうか。
ほとんどの方がないと思う。仮に考えたとしても、普通の人間には恐らく不可能だ。
人を殺すための技術的な問題であれば、少し考えれば簡単に解決できる。
例えば、身近に空手の強い男がいたとしよう。この男を殺せ。
そう言われたら、どうする?
ほとんどの人間は真正面から闘う事を避けるはずだ。
寝込みを襲う。不意打ちする。飛び道具や爆弾を用いる。
等々。様々な方法を使い、ともかくも真正面からぶつかる事をさける。
それが当然の選択であり、このために必然の結果として格闘技などの
技術的問題は人殺しに関して大抵の場合解決される。
必要とされるのは寝込みを襲うため、相手宅に進入する際の
ピッキングまたはガラス切りの技術のみである。
これはご存じの方も多いと思うが小学生でも可能だ。
まぁ、何が言いたいかというと。人殺しに技術は必要ではなく、ほとんどの場合
技術的な問題というのは簡単に解決されるという事だ。

しかし、技術的な問題が解決できても、精神的な問題は残ってしまう。
「本当に人を殺して良いのか?」
「ばれたら、捕まるのでは?」
ほとんどの人間の場合。こちらの問題が解決できず人殺しに至る事ができない。

だから、ほんの一握りの人間。人殺しに対する精神的な問題を解決できる人間。
それだけが、人殺しをなしえるのである。

334 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:21 ID:TBdeCqx/
今ここにいる武泰斗という人間。彼もまた人殺しを為し得る人間に属する。
彼はその中でもさらに特別な存在。殺しを生業として生きる男。いわば殺し屋。
裏世界では最強といわれ、どんな殺しも必ず成し遂げる男として有名だ。
そして、彼は無手。すなわち、武器を一切用いない殺し屋として有名である。

一千年。長きに渡り彼の一族は殺しの技のみを磨き続けてきた。その間無敗。
最強の武術、武泰斗流を操る男。代々武泰斗の名を引き継ぐ最強の男。それが彼である。

この日。彼が請け負った仕事は要人の暗殺であり、本来ならば難しい仕事である。
だが、彼にとっては簡単な仕事であり、いつもの通りこなせばよいはずだった。

しかし、
「また、殺しに行くの」
妹のマトが邪魔をする。彼女は兄の暗殺業を快く思っていないのだ。
「オレの邪魔をするために戻ってきたのか……」
マトは既に夫を持っている。武泰斗とは一緒に暮らしていない。その彼女が戻ってくる。
その理由は自分の邪魔をする以外にない事を武泰斗はよく知っていた。

マトは人殺しを嫌う。彼女は全世界で戦争の被害にあった人々を救出する事を仕事としている。
兄の身近で殺される人をたくさん見た彼女は、兄を止められなかった自分にも人殺しの責任があると考え、
その罪滅ぼしのため全世界で活動を行っている。
力を用いず武力と闘う組織。平和を勝ち取り人々の命を尊ぶ組織。
彼女はその組織『NVO』のリーダーであり、兄とは正反対の人生を歩んでいる。

「今日という今日は、兄様に人殺しをやめさせる」
「断る」

335 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:21 ID:TBdeCqx/
マトの傍らから一人の男が現れた。武道家。優れた体格の持ち主。マトの夫、ベンケイだ。
「義兄よ。今日こそは力ずくで止めさせてもらう」
「力を用いない団体が……笑わせてくれる」
「時と場合によるのだ。アナタは力でなくては止められない」

二人が構える。マトはその様子を不安げに見つめている。
本来ならば自分の最も望まない方法。だが、その方法でなくては兄は止められない。
ベンケイ対武泰斗。最強の暗殺術を誇る男と。その義弟。二人の対決が始まった。

武泰斗がゆっくり動く。ベンケイが反応する。刹那、武泰斗が動きを速める。
ベンケイ、動き始めを狙われ無防備。そこに武泰斗の右正拳上段が決まる。
「ぃっ」ベンケイは咄嗟に上体を反らし急所をはずした。
だが、武泰斗は流れるような動きで追撃する。正拳を打った右拳から続けて正拳。
さらに左手は相手の右手をつかむ。
ベンケイは敵の右拳をいなしながら、左手を振り払おうとする。
が、振り払おうとするその瞬間。ベンケイの力を利用し、武泰斗はそのまま投げた。
合気である。そして、投げ飛ばしたベンケイから離れた。

「お前じゃオレを止められない事が分かっただろ」
「……クソ」

ベンケイは決して弱い方ではない。無名ながら最強クラスの武道家といって良い。
だが、武泰斗の前では全く歯が立たない。弱いのだ。
恐らく、地球上の誰が来てもこの男には敵わない。真なる最強。それが武泰斗だ。

「妹の旦那は殺したくないからな。もう行くぞ」

武泰斗は妹夫婦を残し、仕事場へと向かった。

336 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:22 ID:TBdeCqx/
彼は人殺しをする際、無駄な事は一切しない。最短の時間、距離でターゲットまで向かい殺す。
邪魔する物があれば、それが何であれ破壊する。
頑強に作られた城壁であろうと。
精密に作られたトラップであろうと。
屈強の戦士からなる軍隊であろうと。
彼の行く手を阻む事はできない。常に、最短の道を進む。それが武泰斗だ。

この日はいつもの様に、護衛の男達が彼の行く手を阻んだ。戦争中の国であるため、
護衛は数十人。武器はマシンガンや手榴弾など重火器。常人なら進めぬ道である。
だが、彼は進む。マシンガンを素手で打ち落とし。手榴弾を握りつぶす。
こんな物ではこの男を止める事などできない。

止まらずに突き進む。目指すはインスル国、大臣ピッコロ。
場所は既にクライアントから教わっている。そこを目指して一気に進むだけ。

……
たどり着いた。ここにピッコロがいる。ハズだ。
しかし、この部屋には一人しかいない。その一人はピッコロではない。ハズだ。
「なぜアンタがいるんだ?」
武泰斗が問う。相手はクライアント。ピッコロ殺害を要求してきた男だ。

「っくっくっく。分からんか」
「……?」
「オレがピッコロだ」
「へぇ……アンタ自分を殺して欲しいのかい?」

さすがの武泰斗もこれには若干とまどった。
クライアントがピッコロ。殺害のターゲットだと。
こんな経験は彼にとっても初めてなのだ。

337 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:22 ID:TBdeCqx/
「噂通りの腕前だ。まさか、マシンガンを素手で受け止める様な男がオレの他にもいるとは」
「アンタの狙いは何だ」
「要求通り、オレを殺して欲しい」
「……」
「ただし今ではない。天下一武道会会場でオレを殺してくれ」
「天下一武道会?」
「一ヶ月後、オレが開く武道会の名だ。世界各国から強者どもを集めて開く
 文字通り天下一を決める大会だよ」
「興味がないな」
「報酬は前払いしているだろ。依頼を断る気か」
「……」
「詳細はな。まず、武道会で優勝してもらいたい。
 その後、オレが優勝賞金を手渡す。その時にオレを殺してくれ」
「何が狙いなんだ」
「それは言えん。ただ、オレも黙って殺される様な者ではないとだけ言っておく」
「……分かった。要求を受けよう」

武泰斗は釈然としない気持ちを抑え、ピッコロの要求をのんだ。
一ヶ月後の天下一武道会。そこでピッコロを殺す。それが今の仕事だ。

338 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:25 ID:TBdeCqx/
同じ頃。武泰斗の妹マト夫妻は武泰斗の家でテレビを見ていた。
そろそろピッコロ死亡のニュースが放映されるはずだからである。
兄、武泰斗に狙われて生き残った者はいない。それが事実であり。
そして、この事実は過去だけでなく未来にも適用される。
だからピッコロの死は絶対なのだ。

しかし、どういう事だろう。いつまで待ってもピッコロ死亡のニュースは流れない。
それどころか、インスル王国に異変が起こったというニュースは何一つ無い。
まさか失敗したのか。いや、兄に限ってそんなはずは。
マトの頭には様々な考えがよぎる。だが答えは出ない。一体何が起こっている。
もうとっくに死んでいても良いはずだ。

「どうやら、失敗したか。あるいは中止したようだな」
ベンケイが言う。
「一体。何が……」


二人が疑念を持っている所に武泰斗が帰ってきた。
「なんだお前等。まだオレの家にいたのか」
「……ピッコロは?」
マトが問う。
「殺しちゃいないよ」
「なぜ?」
「人殺しは"罪"だろ」
「茶化さないで! 一体何があったの?」
「……」
武泰斗は答えなかった。代わりに「もう出ていけ」とだけ言った。

339 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/18 05:27 ID:TBdeCqx/
暫くして、マト夫婦は武泰斗が天下一武道会に出場する事を知る。
「なぜ……」
二人とも共通の疑問を抱いた。
暗殺者・武泰斗は本来、人目につかぬ所での活動を行う。
その彼が武道会に出場する事など考えもつかなかったのだ。

しかし……ベンケイは思う。これはチャンスではないのか。
武泰斗に勝つために。この武道会。利用できるかも知れぬ。

今まで、武泰斗との闘いでは常に負け続けてきたベンケイ。
しかも単なる負けではない。武泰斗の勝ち逃げだ。
ならば、自分の力は真の意味で武泰斗に劣っていないのではないか。
いつも決着をさけるように逃げる武泰斗。アレは自分を恐れているからでは。
トドメは刺さないのではなくて、刺せないのでは。

武道会。この場であれば、武泰斗は逃げる事を許されない。
だとしたら、自分が勝つのではないか。
そんな考えが彼の頭をよぎる。
勝つ。彼はそう思った。そして妻に言う。「天下一武道会に出場する」と。
「兄さんに勝てるわけ無いのに」
マトはそう呟いた。

<つづく>

450 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/19 14:51 ID:S2f3Z+Hf
第三話 <ヤムチャという男>

さて、話は予選に戻る。武泰斗のいる第六グループ。今はもう二人しか残っていない。
この二人で第六グループの勝者を決定することになる。

残っている男は。武泰斗とヤムチャ。どこかで聞いたことのある名だ。
ご存じの方も多いと思うが、彼は足下に修繕不可の欠陥を抱える戦士である。
いや、戦死と言った方が良いかもしれない。
曰く、ヘタレ。
曰く、お留守。
曰く、一般人。
様々な異名を持つ男。むろん、強くない。

この男がこの予選会に来たのには訳がある。
「勝てない」
ヤムチャは未来の世界から来た。未来にはサイヤ人とかいう野蛮種が蔓延り、
女たちはどういう訳かその野蛮種に惹かれ、地球の男は立つ瀬がない。
というのが未来の世界なのである。
本来なら、ヤムチャは戦士である。故にサイヤ人と闘い。彼女を取り戻し、
ヘタレの汚名を返上し、栄誉を勝ち取らなくてはならない存在である。
だが、「勝てない」のである。何に勝てないのか。
それは、キャラの魅力であったり、戦闘力であったり、様々である。
ともかく、サイヤ人には勝てないのだ。

451 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/19 14:51 ID:S2f3Z+Hf
さて、そんなことでヤムチャ君。元カノ(サイヤ人に寝取られた)
にタイムマシンを作ってもらい過去の世界に行くことにした。
過去にくればサイヤ人はいない。なんせまだ悟空もやってきてない時代である。
師匠の亀仙人だって若い。こんな時代だ。オレの天下になるに違いない。
彼はそんな風に思い。この世界にやってきた。
「ふっ。ここで優勝すれば世界一の格闘家としてオレは……女にモテモテ」
考えていることは低俗だが、彼は真剣である。

前置きが長くなったが、ともかくヤムチャ対武泰斗。
予選第六グループ、一回戦にして決勝戦。対決である。

審判が高らかに選手の名をあげる。
「第六グループ決勝戦。ヤムチャ選手」
「ハッ!!」
ヤムチャ。二回転宙返りをしてリングに上がる。ツルッ。着地に失敗し滑ってこけた。
「……同じく、武泰斗選手」
武泰斗は笑いをこらえながら、リングに上がった。
「畜生。これじゃオレは良い笑い物じゃないか」
ふてくされるヤムチャ。だが、この相手に勝てば本戦出場である。
そうなれば……あんな事やこんな事が……彼の妄想はふくらんでいく。

ヤムチャは対戦相手の武泰斗に対し、
「天国を旅行させてやるぜ」
「……先に行って観光名所を探しておいてくれ」
くだらない言葉であるが、武泰斗は適当に返事をしておいた。

ヤムチャと武泰斗が構える。ヤムチャはいきなり必殺(自称)狼牙風風拳の構え。
審判が号令をかける。「始め!」

455 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/19 14:53 ID:S2f3Z+Hf
「狼牙風風拳!!」
ただのパンチにしか見えない技に名前を付けて、攻撃するヤムチャ。
軽く捌く武泰斗。「っく。当たらない」まるで、第21回天下一武道会の時のように
ヤムチャの攻撃は全く相手に当たらない。
「当たらないねぇ……」

「なかなか、やるようだな。では、とっておきを見せてやる」
そう言うと、ヤムチャは両手を腰に構え呪文のような言葉をしゃべる。
「か〜め〜」
ヤムチャの掌に力がみなぎる。武泰斗にとっても初めて見る技だ。しかし
「隙だらけだぞ」
かめはめ波と言い終える前に武泰斗はヤムチャに蹴りを入れた。「ッゴハ」
「ひ、卑怯だぞ!」

「えーい。ならば、とっておきを見せてやる」
さっき見せたのに。まだあるのか。
ヤムチャ。今度は右手の掌を上にして力を込め始めた。
武泰斗。今度は待ってあげることにした。さっきは大人げないと少し反省。
「ハァッ」
ヤムチャの掌から光る玉が出てきた。バスケットボールとソフトボールの中間ぐらいの大きさの玉。
「これで終わりだ」
ヤムチャはその玉を武泰斗に向け投げつける。余裕でかわす武泰斗。
だが、玉は方向を変え武泰斗に再び襲いかかる。
「これが必殺。繰気弾。どこまでもおまえを追いかける」


457 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/07/19 14:53 ID:S2f3Z+Hf
「どこまでも追いかけてくるのか……」
武泰斗は少しだけ、対策を考え始めた。
「さぁ。あたっちまえ」

武泰斗。調子に乗るヤムチャに対してつっこんでいく。
「当たる直前でかわす気か。そんな古い手にはのらんぞ!」
ヤムチャ。繰気弾を操り、武泰斗を追いかける。武泰斗は無防備なヤムチャに向かって突進する。
ヤムチャの直前につくと、武泰斗はすぐさま方向転換した。
「だから、そんな古い手には……ゴハァ」
繰気弾。ヤムチャに直撃。ヤムチャKO。

「さ、さすがだ。オレを倒すとは。だが、紙一重の差だったぞ」
どこが? 審判、武泰斗は両者共にヤムチャのセリフに対して疑問を持った。

ともかく、第六グループ。勝者は武泰斗である。

<つ・づ・く>

671 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/20 02:56 ID:???
第四話 <ピッコロの孤独>

魔族に生まれた者として。世界を征服することはある種の義務と言ってよい。
しかし彼は世界を征服する。このことだけを目的に生きてきたわけではない。
彼は武道家として生きてきた。武術を磨き。世界最強の男を目指していた。
それ故に思う。自分は強すぎると。今まではどんな武道家も彼の相手にはならなかった。
強い。自分は強い。だがそれ故に孤独。ライバルがいない。

今回。彼が天下一武道会を開いたのはライバルが欲しいからだ。
世界を征服するため、魔族の力を知らしめるため武道会を開く。
それは部下に対する方便である。本当はそんなことをしなくても、世界征服なら可能だ。
しかし、それでは強者と闘えない。本当の強者と闘う機会がないではないか。

だから武道会を開いたのである。武道会に優勝する強者。そいつと勝負する。
それができればいい。世界征服はあくまで魔族としての義務。
ピッコロ個人の欲求は強者との闘いである。

さぁ。誰が勝つ。この天下一武道会。
世界中の強者を集めた大会。誰が勝っても相手としては申し分ない。
ピッコロは今から楽しみでたまらなかった。

オレの孤独をいやしてくれ。

672 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/20 02:57 ID:???
第五話 <本戦前>

それぞれの予選が終わり、八人の選手が出そろった。
桃白白、孫悟飯、鶴仙人、チャパ王、亀仙人、武泰斗、フルート、ベンケイの八人である。
今から抽選を行い、本戦トーナメントの組み合わせを決める。

抽選の結果。組み合わせは以下の通りになった。一回戦の組み合わせである。
第一試合。亀仙人vs孫悟飯
第二試合。武泰斗vs桃白白
第三試合。鶴仙人vsチャパ王
第四試合。フルートvsベンケイ

本戦は予選と同じトーナメント形式で行われる。
ルールは大きく変更され、勝敗はどちらかの戦闘不能を持ってのみ決する。
金的や目突き等の急所攻撃は一応反則になるが、それも罰金1万をとられるだけである。

武舞台はボクシングリングの四倍の面積を持ち、
周囲にはロープではなく観客席と隔てるため網が張ってある。
観客席は数万人の人間を収容できる世界最大規模の物であり、
特別席は網のすぐ裏から観戦できる。

武舞台には二つの入場口があり選手はそこから入場することになる。
この入場口を奥まで進むと各選手の控え室がある。
控え室には選手本人のほかに家族の入室が許可されている。

673 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/20 02:58 ID:???
ここはベンケイの控え室。中にはベンケイとマトの二人がいる。
「やっときた。本戦に……」
「でも、兄さんとは戦えないわよ」
ベンケイと武泰斗が闘う為にはお互い決勝まで進まなくてはならない。
だからこの二人が戦うことなどありえない。

武泰斗はともかく、全く無名であるベンケイが高名な武道家相手に勝つ術などないはずだ。
だからマトは思う。もうやめてくれと。武泰斗とは戦えない。

「今からでも遅くない。出場を辞退して頂戴」
「……」
「今、あの人と戦う理由は何もないわ。
 あの人は暗殺者。だから、人目につく所で仕事はしないはず。
 ここにあの人がいる限り、私たちがあの人と戦う理由はないのよ」
「お前にはないかもしれない。だがな、オレにはある。あいつがオレより強いかもしれぬから」
「かもしれない、じゃない。強いのよ。あの人は誰よりも。世界中の誰より強いの」
「闘ってみなきゃわからないだろ」
「何度も闘ったじゃない」
「だが、決着はつかなかった。いつも逃げられてるからな」
「……」
「ここなら、奴も逃げられない。ならば最後には俺が勝つ」

ベンケイは震えながらそう言った。恐怖か。それとも武者震いか。
マトには想像もつかない。だが、これだけはハッキリわかった。
もう夫をとめることなどできない。彼女はあきらめて部屋を出た。

674 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/20 02:59 ID:???
同じ頃。亀仙人の控え室。ホモに触られたという心の傷がまだ痛む亀。
一人控え室にいるが、やはりどうにも収まらない。女がほしい。
ホモを中和するには女。昔からそう決まっているのだ。
ここにいては駄目だ。そう思い、彼は部屋を出る。

控え室を出た廊下。そこで亀仙人とマトはバッタリ出会った。
「女……女か」
「え、えぇ」
亀仙人。目が血走っている。この男は若い頃からスケベだったらしい。
マトに詰め寄る亀仙人。マトは亀仙人のことをよく知っている。
武道家の間では有名な男だ。スケベ。女好き。だが、パワーのある格闘家。
この男につかまったら逃げられない。そう思うと、とっさに逃げ出すマト。
大丈夫。逃げ切れる。パワーはあるが鈍足で有名な亀仙人だ。
格闘をかじったマトなら逃げ切れる。はずなんだ。

しかし、「え……」あっと言う間につかまってしまった。
自分はこの男より速いはず。逃げ切るだけならできるはず。なのに。なぜ?

亀仙人は背後から、マトの右手をつかみ自分のほうに引き寄せた。
凄まじいパワー。これに逆らっても無駄だ。マトは一瞬でそう判断した。
亀仙人は自分の方向にマトを引っ張る。ならば、マトも同じ方向に亀仙人を押す。
亀仙人の力を10。自分の力を1。とすれば、亀仙人を押す力は11。
さらにこの状態で亀仙人の足を刈る。完璧なタイミング。

675 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/20 03:00 ID:???
しかし、すかされた。亀仙人は刈りに来るマトの足をかわし、
同時にマトの押してくる力を利用してそのまま投げてしまった。

「嘘……」
信じられない。パワーだけと思われていたこの男に、こんなテクニックがあるとは。
一体なぜ?
マトの頭に疑問が浮かぶ。だが、そんな事はお構いなく亀仙人は動く。寝技だ。
スケベな男が女に仕掛ける寝技は決まっている。マトは身に迫る危機を最大限に感じた。
その瞬間。亀仙人の手が止まった。いや、とまったのは手だけだ。
亀仙人は自分の頭をマトの胸に押し付けてくる。
「ハァ。極楽」
彼はどうやらこれで満足できるらしい。マトの動きをろくに固めぬまま胸に頭を埋めている。

何とか脱出しなくては。マトはそう考え、力の限り脱出しようとする。
だが、相手は重戦車・亀仙人。自分のパワーでは歯が立たない。
それに上回っているはずだったテクニックさえ。この男には……

だが、数分して。館内放送が流れる。
「ただ今より、第一回天下一武道会、一回戦、第一試合目を開始します」
この放送を聴いて、亀仙人がマトから離れた。
「っち。まぁ、十分楽しんだからよしとするか」
そんな事を言いながら、亀仙人は武舞台に歩いていった。

天下一武道会。
亀仙人vs孫悟飯の開戦である。
<つ・づ・く>



9 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/24 14:01 ID:???
「東。孫悟飯選手の入場です!」
孫悟飯が東門から入場する。小さな体。胸には祖父の形見であるドラゴンボールをぶら下げている。
実況が孫悟飯の解説を加える。
「孫悟飯選手は若干12歳。全くの無名選手であります。
 しかし、そのパワー、テクニック。共に大人顔負け。
 圧倒的な実力を持って予選を勝ち進んできました。」
観客席から大歓声が起こる。孫悟飯はそれに手を振って応えた。


同じ頃。西門からは亀仙人が現れようとしている。
甲良を背負い、廊下を歩き、武舞台を目指す亀仙人。
その前に一人の男が現れた。鶴仙人である。
「久しぶりだな」
「何に用だ」
「お前に忠告しておこうと思ってな。対戦相手のあの孫悟飯という小僧。
 アイツは……」
「知っている!」
「そうか……お前と俺は共に師の名を継ごうとする者。
 見せてもらうぞ。その武術を」
鶴仙人はそう言うと自分の部屋に戻っていった。

亀仙人が武舞台に入場する。
「西。亀仙人選手の登場です」

10 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/24 14:02 ID:???
再び実況が解説を行う。
「亀仙人選手は既にいくつかの武道大会で優秀な成績を収めた実績があります。
 圧倒的なパワーを持った選手で、テクニック・スピードでは他に劣りますが
 その不利をただ"パワー"だけで粉砕してきた強者であります」

実況の言葉に耳を貸さず、亀仙人は孫悟飯を見つめる。
胸にぶら下がった四星球。間違いない、師匠が持っていた玉だ。

(そういえば、武術に優れた孫が生まれたと言っていたな
 あの小僧。我が師、無天老師の孫か。
 いずれは無天老師の名を継ぐつもりかもしれん。

 だがな。小僧、お前は知るまい。無天老師の名に最も近いと言われた男の存在を
 これからの試合で貴様におしえてやる。無天老師の名を継ぐ者の武術をな)

そう。この対決。無天老師と呼ばれる男の一番弟子、亀仙人と孫、孫悟飯との対決なのだ。

二人が構える。同じ構え。師が得意とした構えだ。
両拳を胸の前に、足は肩幅に開く。オーソドックスな格闘技の構え。
二人が構え、一瞬の間が空く。

そして、実況が叫んだ
「天下一武道会。第一回戦、孫悟飯vs亀仙人。開始!!」

<つ・づ・く>


79 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 19:59 ID:???
第六話 <祖父の言葉>
「試合始め!!」
号令と共に動く孫悟飯。祖父、武天老師から教わった拳法。
連続でパンチを繰り出す。そのパンチ一つ一つが的確に急所を打つ。
スピード、打突位置、角度。どれをとっても一級品。完璧な打撃である。

孫悟飯は思う。自分は完璧なんだと。
(相手が誰であってもオラハ負けねぇ。見ろ、オラの攻撃を完璧だろ!)

悟飯は休むことなく打撃を続ける。亀仙人はただ打たれるのみ。
素人目に見れば悟飯が優勢。しかし、亀仙人にダメージはない。

悟飯の攻撃は正確。だが、パワーがない。孫悟飯の欠点を瞬時に見抜いた亀仙人。
そして攻撃に転ずる。右のパンチ。荒い。悟飯のガードの上から叩こうとするパンチ。
悟飯はそのパンチの軌道を読む。自分の左こめかみ。打突時のベクトルの読んだ。
そのベクトルに逆らわず、亀仙人の拳をかわして、そのまま投げ。

投げるときのタイミング。力の入れ方。敵の崩し方。これも全て完璧。

(今日も大丈夫。オラは負けない。いつもと同じだ。見える、力の流れが見える)

孫悟飯の才能。それは力の流れを見ること。読むのではない。見えるのだ。
力の流れが一つのベクトル場となって彼の頭の中に送り込まれてくる。
生まれついての格闘の才能。それを彼は持っていた。
小さな完璧戦士・孫悟飯。祖父、武天老師の技を受け継ぎ。類まれな才能も併せ持つ戦士。

80 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:00 ID:???
試合開始から数分が経過。未だに亀仙人の技はヒットしない。孫悟飯の一方的な展開。
亀仙人は反撃のため、パンチやキックを繰り出すけれど全てかわされる。そして投げられる。
防御と攻撃。どちらも孫悟飯の方が一枚も二枚も上手に見える。

「お。おい……もう決着ついてるんじゃないか?」

観客席からそのような声が聞こえる。だが亀仙人は一向に攻撃をやめようとしない。

亀仙人は何度も何度も攻撃を繰り返してはかわされる。孫悟飯は完璧な動き。
試合開始直後に比べ、若干動きは鈍くなっているが、それでも亀仙人の攻撃が当たる気配はない。

亀仙人の攻撃。孫悟飯かわす。
亀仙人の攻撃。孫悟飯投げる。
亀仙人の攻撃。孫悟飯カウンター。

(見える。おっさんの動きが、力の流れが、ハッキリ見える)

孫悟飯は相手の力の流れを見て、それに逆らわない形で敵の攻撃を受け流す。
完璧な動きで亀仙人を寄せ付けない。誰もが孫悟飯の完全勝利を疑わなかった。
たった一人、亀仙人を除いては。

「小僧。貴様の技量は確かに認める。だがな、経験が不足しているんだよ
 お前は気づいていない。俺の攻撃をかわしているつもりで、徐々に追いつめられていることに」

(何言ってんだ。もうどうみてもオラの勝ちだろ)

81 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:01 ID:???
亀仙人の攻撃。まっすぐ。正拳上段。力の流れは直線。
ならば、この攻撃は後ろにそらす。孫悟飯は重心をおろし、後に下がり投げの体勢を作る。

が、後には観客席。そしてフェンス。下がれない。孫悟飯は下がることができず体勢を崩す。
そして、亀仙人の攻撃がヒットした。
「さぁ、ここからがショータイムだ」

孫悟飯は亀仙人の攻撃を食らいながらも何とか立ち上がる。
一撃で孫悟飯は足が動かなくなる。痙攣。たった一発で。
だが、足が動かないのならそれなりの戦い方がある。
孫悟飯は上半身を振り、体の重心を移動する。重心の移動を頼りに体を移動する。
全身の力は抜けてもこれで移動できる。完璧戦士・孫悟飯健在。

だが、その『完璧』さが仇となる。
亀仙人の攻撃を読み。確実に技を返す。だが、悟飯はいつまでも後にフェンスを背負ったまま。
(ダメだ。このままじゃ、またコイツの攻撃を食らっちまう)
そう思いながら、孫悟飯は亀仙人の攻撃をさばき続ける。そして、少しずつ右に回る。
(右に……右に。フェンスを背負っちゃダメだ)

しばらくして、悟飯の右にもフェンスが。
(嘘だろ。オラ、隅に追いつめられたのか?)

「お前の動きは読みやすいんだよ」
孫悟飯は完璧な動きをするが故に、亀仙人にその動きを読まれていた。
亀仙人の動きを読んでいるつもりで、実は逆に読まれていた。
(オ・オラが負ける?? 嘘だろ)

82 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:02 ID:???
「負ける、負けるハズネェ。オラは無敵なんだ!!
 オラはじっちゃんの孫。武天老師の孫だ!!」

孫悟飯。自分の調子は悪くない。それは分かっている。力の流れが見えるのだから。
そんな時、自分はいつも負けなかった。だから思う。
フェンスを背負ったから?
隅に追いやられたから?
そんな理由で自分が負けるハズない。必ず勝つ。パワーしかない男に自分が負けるハズない。
自分は力の流れが見える戦士。完璧戦士。不敗の戦士。最強の男。だから必ず勝つ。

隅に追い詰められた悟飯に亀仙人の攻撃が襲い掛かる。
(避けられる!!)
力の流れは見えている。亀仙人がこう動けば自分はこう動く。
すべてマニュアル化されたかのように正確に動ける。だが、それが機能しない。
避けた所にフェンス。フェンスに気を取られた所に攻撃。
亀仙人の攻撃があたり始める。悟飯はかわせない。展開は逆転した。

「オラ。オラは負けねぇ!! おめぇなんかに負けてやるか!!!」

亀仙人の突き。悟飯の眉間目指して一直線にくる。悟飯はそれをしゃがんでかわした。
そこに亀仙人は蹴りを繰り出す。悟飯は右手を地面につけ、左手で亀仙人の蹴り足に乗る。
そのまま、亀仙人の力を利用して体を逆さにして上に跳ね上がった。
そして、足を亀仙人の首に絡める。
「これがじっちゃんから教わった最強の技。首折だ」

84 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:03 ID:???
亀仙人の首に悟飯の足が完全に絡む。そして、そのまま体を振る。
その名の通り首を折るための技。首折。
当然、亀仙人はこれをはずしにかかる。だが、
亀仙人が右に動けば悟飯も右に。左に動けば左に。
悟飯は亀仙人の力を読み、その方向に体を振る。亀仙人は自分の力で首を絞める。
強引に足をはずそうとしても、その動きを読まれ逆に締め付けられる。
力の流れが読める悟飯だからこそ出来る最強の技。いつかは亀仙人の首が折れる。

「もう、諦めろ。この技ははずせネェ」
「ガキが……師の教えを覚えてないのか」
「何言ってるんだ。オラの勝ちだろ」

亀仙人がどれだけ動いても、悟飯ははずれない。首をガッチリ固定している。
だが、ここは……
「忘れたのか。ここは武舞台の隅だということを」

亀仙人は悟飯をはずすことを諦め、体を大きく振ってくる。
首に数百キロもの重圧がかかる。だが、亀仙人はそれでも体を振る。悟飯を振り回す。
そして、亀仙人は勢いよく悟飯をフェンスに叩きつけた。

ダメージを受け、足をはずす悟飯。最強の技さえ亀仙人には通じなかった。

86 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:08 ID:???
「オラ。オラ。負けるのか……嘘だろ。オラは最強だ」
フェンスに叩きつけられ、圧倒的な力の差を見せ付けられても悟飯は立ち上がった。
だが、その顔には覇気がない。もう亀仙人の勝ちは動かない。

悟飯はともに暮らした祖父の言葉を思い出す。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「悟飯は強くなったなぁ。もうワシじゃ勝てん」
かつては最強と呼ばれた男。武天老師。だが、寄る年並みには勝てず、ついに9歳の孫に負けた。
「オラ。力が見えるんだ。じっちゃんがパンチ出すだろ。
 するとさぁ、それが水の流れよりハッキリとオラの目に見えるんだよ」
「ほう……」
「んで、じっちゃんがオラを掴んだりしてもさぁ……」
悟飯は自分の能力を誇らしげに語る。武天老師も気持ちよく聞いてくれている。
だが言う。
「悟飯よ。確かにお前の能力はすばらしい。力の流れが読める格闘家などそうはおらん
 けれど、それに溺れることなく修行せよ。世の中にはお前より強いものがごまんとおる」
「いるわけねぇよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

88 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/07/26 20:10 ID:???
(そうか。コイツが、亀仙人が、じっちゃんの言ってた奴か。
 ははっ。つえぇよコイツ。オラじゃ歯が立たねぇ)

(あぁ、じっちゃん。オラもっと強くなりてぇ)

悟飯は薄れ行く意識の中、そんな事を考えていた。


天下一武道会、第一回戦。亀仙人vs孫悟飯
亀仙人の勝ち。

<つ・づ・く>



391 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 21:38 ID:2cV/+oqP
第七話 <宿命>

亀仙人の勝利に終わった第一試合。孫悟飯は気を失ったまま。
勝者・亀仙人が悟飯を担ぎ上げる。
「一応、師範の孫だからな」

亀仙人は師の言葉を思い出す。武天老師との約束。
いずれ彼の名を継ぐときのために交わした約束。
「ワシには孫がいる。今はまだ弱いガキだが、いずれお前を凌ぐ実力になるかも知れん
 奴を倒せ! ワシの名を継ぎたくば、悟飯を倒して見よ」

フッ。弱い。亀仙人にとって、師の孫など相手にはならなかった。
(甲羅を背負ったまま倒せる敵など……
 コイツを倒しただけで名を継いで良いというのか)

武舞台を出ようとする亀仙人。
「今、勝者・亀仙人が武舞台を去ります。
 皆様、盛大な拍手を!!」
観客席から一斉に大きな拍手が沸き起こった。

392 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 21:39 ID:2cV/+oqP
武舞台を出て、廊下を進むと選手たちの控え室がある。
控え室の近くには治療室もあった。亀仙人は悟飯をそこに連れて入った。
「先生、頼みます」
「手加減してくれたのかね……それほど、大きな怪我はしとらんようだ」
「子供が相手ですから」
そう言うと、亀仙人は治療室を去っていった。廊下に出る。

「もう、名を継いだ気になっているのか?」
鶴仙人だ。
「師範の言葉に従った。名は俺のものだ。今日から俺が武天老師を名乗る」
「まだ、俺との決着がついてないはずだが……」
「決勝まで上がってくれば着けてやる」
「ガキ相手に苦戦する程度の腕前で、俺に勝てるのか?
 悟飯との対決も場外フェンスがなければ、負けていただろう」
「……」
「言い返すことも出来んのか」
「……」
「まぁ、良い。これだけの観衆が見ている中敗れれば
 お前も武天老師の名を俺に譲る気になるだろう」

鶴仙人はそれだけ言うと去っていった。亀仙人はその後姿を見て無気味に思う。
(鶴仙人の足運び。あの軽やかさは何だ?
 アイツの筋肉からすれば、あの歩き方。体重は……
 フッ。まさかな……どちらにせよ、あの試合が俺のすべてだと思った時点で鶴の負けだ)

今は亡き武術の神・武天老師。その弟子に二人の優れた武道かがいた。
一人の名は亀仙人。もう一人は鶴仙人。
その二人、どちらが強いのかいまだ明らかではない。

<つ・づ・く>

395 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 23:23 ID:2cV/+oqP
第八話 <子供達>

親子の絆。親の愛情をいっぱいに受けて育った子供は心清らかに育つといわれている。
その逆は? 親の愛情を受けられなかった子供は?
ここに一つの事実がある。
殺人を経験した者の半数以上が親のいない少年時代をすごしている。
国立の犯罪研究所が明らかにした事実だ。

地上最大の犯罪組織・ロッテバンド。この組織は上の事実を利用した組織だ。
彼らは世界中から幼い子供たちを集め、犯罪のエキスパートに仕立て上げる。
親の愛情を知らぬ子。犯罪の早期教育を受けた子。ロッテバンドが求める最高の人材。

その中の一人に桃白白がいる。
彼は幼い頃、親元から攫われロッテバンド配下の組織に入った。
以来数年間。組織の教育を受けた彼はトップクラスの戦士に育っていた。
義兄弟、鶴仙人と共に。

396 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 23:24 ID:2cV/+oqP
「ねぇパパ。起きて。起きてよ」
少年・桃白白の呼びかけに死体は答えない。
「ねぇママが動かなくなっちゃったの。パパ来て。
 アレ? パパも動かない」

閑静な住宅街の大きな屋敷。中にいるのは子供一人。ある物は死体二つ。
子供は親の死を知らない。だが、動かない二人。冷たくなっていく二人。
子供は少しずつ、少しずつ『死』を理解していく。

「ねぇ。パパ、ママ。嘘でしょ。死んじゃったの??
 ひぅ……うぁあわあーん」

幼き子供には絶えられぬ事件。死んだ。親が死んだのだ。

397 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 23:25 ID:2cV/+oqP
その日から、桃白白の生活は一変した。
両親がいなくなったことで彼は施設での生活を余儀なくされたのだ。
施設では十二畳ほどの板張りの部屋に子供が15人ほど暮らしている。
部屋にはテレビはおろか机さえない。
ある物は押し入れと、その中にあるかび臭い布団だけだ。

「ねぇ、この部屋何もないよ」
小さな子供としては当然の反応。そして、それに対する施設の大人の反応も当然のものだった。
「税金が勿体無いからねぇ」
子供には理解できない言葉。
ただその響きから感じる冷淡な姿勢は桃白白にも十分に理解できた。

398 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 23:27 ID:2cV/+oqP
桃白白が預けられた孤児院は不幸にもロッテバンド直属の組織であった。
ここは犯罪者予備軍の育成場。将来戦争になった時に戦う戦士を養う場。
当然、新しく入った桃白白にもそのための教育が行われる。

「爆弾の仕組みは……」
「手榴弾は安全ピンをはずし、一秒程度待ってから投擲すること」
「刃物を使うときは長さに注意しろ。建物内部の場合は短いものが良い。屋外なら長いものだ」
「敵を殺すときは突け。切るんじゃない。急所を突くんだ」

子供に対する教育とは思えぬ現場。中には桃を含め、五歳にも見たぬ小さな子供たちがいる。
ここではそのような子供達にも、通常の道徳からは認められぬ教育が施されている。


この中で、桃白白は新入生である。当然、他の誰よりも成績は悪い。
犯罪教育の成績が悪いというのは、喜ばしいことなのだが、本人はまだ子供である。
「僕……頑張ります!」
素直な少年。やる気ある少年。けれど、その先にある姿は……

399 名前:黄泉の門[] 投稿日:03/08/02 23:28 ID:2cV/+oqP
桃白白がロッテバンドの孤児院に預けられてから一ヶ月が経過した。
相変わらず、桃白白は他の子供よりも成績が悪い。
運動能力、知識、その双方で他より圧倒的に劣っている。
これに対し、教育者たちは当然のことと思い見守っている。
あの子はまだ小さい。それに来たばかりだ。だから、まだ能力面で他に劣るのは仕方ない。
ここは科学的な観点から効率的な子供の教育を目指している。
だから、大人たちには分かるのだ。桃白白はいずれ普通の子供と同じようにここの教育をこなすようになる。
それが大人たちにはわかるのだ。

だが、分からない者もいる。それは桃白白と同じく、ここに預けられた小さな少年たち。
彼らには桃白白がなぜ、自分たちと同じ運動、勉強が出来ないのかを理解できない。
そう、彼らにとって桃白白はただの「出来の悪い雑魚」なのである。
こうして、桃白白に対するイジメが始まった。

大人たちはそれを見て思う。良い事だと。
イジメは良い。子供の心を歪ませる。多感な少年期を虐められて生きた大人はまともに育たない。
彼らにはそれがわかっている。分かっているからこそ、イジメを黙認する。いや、推奨する。
こうして、桃白白は孤立した。

<つ・づ・く>


485 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 00:44 ID:???
第九話 <誓い>

桃白白は孤立した状態のまま孤児院を出た。
仲間に虐められ、大人たちに見放され、彼の少年時代は最悪のものだった。
しかし、言い方を考えれば人を信じない人間:犯罪者を作り上げるには理想の環境でもあった。

彼は孤児院を出た後すぐに犯罪組織、ロッテバンドに入った。

「さて、早速だが任務を行ってもらう」

任務内容は殺し。桃白白にとって初の殺しになる任務である。
人を殺す。桃白白はそう言われた時、幼き日誰とも知れぬ相手に殺された両親を思い出した。

アイツ等は、人間どもは、俺から親を奪いやがった。


今の桃白白に殺しをためらう理由など無い。
桃白白は任務を快諾した。

486 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 00:44 ID:???
殺しのターゲットは対立政治組織の役員。
決行は深夜。周りが寝静まり、ターゲット自身も寝たところを攻撃する。

念には念を入れて、ターゲットの家にガスを撒く。睡眠作用のあるガスだ。
桃白白はガスを撒いた後、自分はマスクをして家に侵入した。


ターゲットの場所まではあっさりと進む事が出来た。
グッスリ眠っている。桃白白はナイフを手にとる。ナイフを首に当てる。
このままほんの少し力を入れれば、目的を達する。

「殺す。殺す。人間殺す」

桃の頭によぎる復讐の念。間違った教育により生まれた偽りの復讐。

「殺す。コロス。ころす。コロス。ころす。……」

桃は腕に力を入れた。
刹那、彼の腕が震える。そして、そこから1ミリも動かなくなった。

487 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 00:46 ID:???
「何でだ? なんで俺の腕は動かない。
 動け! コイツを殺せ。 動くんだ!!」
桃は叫ぶ。だが、体はまったく動かない。

「何故なんだ!!!」

桃はその場に力尽き、気を失った。

翌日、桃白白は見知らぬ部屋で目を覚ました。
周りには誰もいない。何も無い。ベッドが一つ、桃白白が眠っているものだけ。

「質素な部屋だ」
桃白白は素直に感想を述べる。そして、考えた。

「なぜ、俺はここにいる。昨日任務に失敗し、そして気を失い……
 そこからの記憶が無い!」

桃白白が混乱しているところに、一人の男が入ってきた。
「君を昨日、この部屋に連れてきたものだよ。
 私の名は鶴仙人。君の先輩にあたる人間だ」

488 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 00:46 ID:???
これが、桃白白と鶴仙人の出会いであった。
先日、桃白白の初任務のとき、鶴仙人は桃が初任務をうまく行えるか監視していた。
どんな人間でも初めての仕事ではしくじることがある。
組織は十分にそのことを理解していた。そのために先輩にあたる鶴仙人を監視につけたのだ。
無論、桃白白が任務に失敗した場合は鶴仙人が事後処理を行う。

こうして、桃白白と鶴仙人の関係が始まった。
最初は仕事の先輩後輩。だが、二人は徐々に深い関係へと変わっていく。

元々、桃白白には信じられる人間など一人もいなかった。
しかし、鶴仙人は違う。彼だけは自分のことを見捨てずに見守ってくれていた。

そしてある日。鶴仙人と桃白白は義兄弟の契りを結んだ。

514 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 03:40 ID:???
第十話 <王への挑戦 -その1->

あれから数年。桃白白は組織ナンバー1の殺し屋になっていた。
鶴仙人はそのサポート役。二人はいつも一緒に仕事をしていた。
彼らは裏の世界で、武泰斗に次ぐ実力者として有名になっていた。

その彼等が今、天下一武道会に出場している。
そして、弟・桃白白は裏世界の王とも言える男、武泰斗に挑もうとしている。


二回戦を待つ武舞台。実況が声をあげる
「東・武泰斗選手の入場です」

武泰斗が入場する。ゆっくり、あくまでもゆっくり。
彼は派手に振舞うことを嫌う。だから、静かに入場し、武舞台の隅に小さく立っている。
観客席はそんな彼の振る舞いに動揺を見せる。
今までの選手、とは言っても二人だが、彼らは入場後、
手を振るなり、笑顔を見せるなりのしぐさをしたはずである。
だが、全くしない。動かない。静かな男。不気味、それが観客の印象だ。

そして、もう一人の選手。
「西・桃白白選手の入場です」

桃白白。入場しない。

515 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 03:40 ID:???
「桃白白選手、入場をお願いします」
実況は再度通達する。しかし、入場しない。

その頃。桃白白は選手控え室外の廊下にいた。そして、桃白白の前にはピッコロ。
「確か……アンタは武泰斗に殺されたはずじゃなかったか?」
「俺は不死身だよ。あんな奴に殺されるはず無い」
「そうか……」
桃白白はピッコロの横を通り過ぎる。ピッコロの背中に桃が来たとき、ピッコロが言った。
「親を殺したのが誰か、知りたくないかね?」
「何!」

「もう一度言おうか? 親を殺したのが誰か。知りたいとは思わないのかね?」
ピッコロはゆっくりと桃白白のほうに振り返りそう繰り返した。
「教えてくれ!」
桃が懇願した。

「お前の両親を殺したもの。それはな、お前を育てた孤児院の人間だ」
「なんだと……」
「孤児院が犯罪組織・ロッテバンドの配下にあったことは知ってるな
 ロッテバンドは有能な人材を幼いうちに確保するため、対向組織のメンバーを殺す際
 そこの子供を奪い取る事がある。そして、それを配下の孤児院に入れ犯罪者として育てる」

516 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 03:42 ID:???
「……」
桃白白は突然、ピッコロからこの様な事を言われた為驚いている。
「貴様の言うとおりだとすれば、俺は……ロッテバンドに利用されていたと言うことか?」
「その通り。だが、それはお前だけではない。ロッテバンドの末端で犯罪を実行する者。
 それらはほとんど全て、奴等に騙されて来た人種だよ」
「我が義兄、鶴仙人もか?」
「その通りだ」

驚愕の真実だった。桃白白は今までの人生を呪った。
「ならば、俺や兄者が今までしてきた事は一体なんだったんだ」
「さぁな。お前に関することで俺が知っているのはコレだけだ」
ピッコロはそれだけ言うとその場を立ち去ろうとした。しかし。
「一つ、聞きたいことがある」
「なんだ?」
「お前は何故、そんな話を知っているんだ
 ロッテバンドは秘密組織。名は知られているが、内情までは誰も知らんはずだ」
「誰も? 組織の一員でもかね」
「何だと?」
「俺、ピッコロはロッテバンドのトップだよ」
「……貴様、俺を愚弄する気か!!」
「くっくっく。どうとでもとってくれ」
笑うピッコロ。震える桃白白。
桃白白は構えた。そして言う
「貴様を殺す」

517 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 03:43 ID:???
二人の間に緊張が走る。
「俺を? 自分の組織のトップを殺すのか?」
「当たり前だ!」

同じ頃、武舞台では実況が再度、桃白白を呼び出していた。
「桃白白選手、後一分以内にこない場合は不戦敗となりますのでご注意ください」

そして、ピッコロと桃白白の戦いが始まった。
「俺には勝てんぞ。絶対にな」
ピッコロが言う。桃は答えない。


「桃白白選手失格まで後20秒です。カウントを始めます」

20秒。19秒。……カウントが続く。

「どうした、早く俺を倒さないと失格になるぞ」

15秒。14秒。……

「馬鹿な……そんなハズは……」

10秒。9秒。…… 桃白白が武舞台に現れた。

518 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 03:43 ID:???
「スマンな。ちょっと時間を食ってしまった」
汚れ一つ無いきれいな服で入場する桃白白。
「ついに来ました。桃白白選手です」
実況が叫んだ。


その頃、廊下には一体の、いや二つの体が転がっていた。
上下体を切り分けられた体。ピクリとも動かない体。ピッコロだ。


桃白白は武舞台の隅に立っている武泰斗に言う。
「お前も、あの程度の男に勝てんようでは大した事無いみたいだな」



天下一武道会、一回戦
第二試合目 桃白白vs武泰斗 開始!

564 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 19:45 ID:???
第十一話 <王への挑戦 -その2->

試合開始。武泰斗、桃白白は同時に動く。わずかに武泰斗の方が速い。
その距離が10mから9m……一気に縮まる。「後、0.003秒」桃白白は間合いが詰まるタイミングを正確に測った。

0.001秒後、 残り7m
0.002秒後、 残り4m
0.003秒後、 残り1m

完璧。読み通りのタイミングで間合いが詰まる。

0.004秒後、 桃白白は右手で相手の襟を取りに良く。
同じタイミングで、武泰斗がローキックを放つ。ローキックがあたるには0.0005秒。
桃白白はまたも正確に時間を測る。自分のほうが速い。

桃白白は0.0003秒で襟をつかんだ。そして、腕を引き敵の体制を崩す。武泰斗は足一本のため
簡単にバランスを崩した。
ローキックがあたる。しかし、バランスが崩れているためダメージは無い。

桃白白はそのまま相手を投げた。一本背負い。 投げた後は寝技に行かず、すぐに間合いを取った。

565 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 19:46 ID:???
「世界一の殺し屋と言っても、この程度か……
 武泰斗とか言ったな。お前、確かピッコロ殺害の依頼を受けていただろ」
「あぁ。そうだな」
「あの程度の輩を殺し損ねるとは……世界一の称号は偽りだな」
「どういう事だ?」
「俺がピッコロを殺してやったよ。ほれ、そこの廊下にまだあるだろう
 二つに分かれた死体。ピッコロの死体だ」
「殺してくれたのか。そうか、それは手間が省けてよかった」
「っくっくっく。手間が省けてよかった。だと?
 この腰抜けが!! 殺し屋がターゲットを取られて喜ぶなど。お前は許せん」

再び桃白白が動いた。

「許せんか……確かに、世界一の称号を甘く見てるお前は許せんな」

武泰斗も動く。

再び、桃白白の読みが始まる。
(再び間合いが詰まるのは0.002秒後)

桃白白は数秒後ではあるが未来を予測することが出来る。
今までそれを外した事は無い。

566 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 19:47 ID:???
(敵は右拳を打つと見せ掛けて、俺の襟を取りにくる)
武泰斗の動きが、未来が読める桃白白。当然、それが分かれば対応もたやすい。

武泰斗の右拳、それの小指を狙いながら自分の左拳を合わせる。ピタリ、武泰斗の小指に当てた。
威力の落ちた武泰斗の拳を額で受け止める。武泰斗は小指の痛みから相手をつかめない。

ならば、と。今度は左手で襟を奪いにくる武泰斗。無論これも読まれている。
武泰斗が腕を掴もうとするその瞬間に僅か後ろに下がってこれを回避する。
一瞬、武泰斗が硬直したところに、再び投げを打つ。

「相手にならんな」
そう言い放つ桃白白。ゆっくり立ち上がる武泰斗。
「なかなか、やるじゃないか」

再び構える二人。桃白白にダメージは無い。
対して武泰斗は二度の投げで大きなダメージを負っている。

「そろそろ、気が付かんかね? 俺の能力に」
「さぁね」

言うが早いか、もう一度動く武泰斗。しかし遅い。さらに桃白白に読まれている。
「未来が見える。貴様の動きも分かる。 俺は無敵!」

<つ・づ・く>

567 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 19:51 ID:???
これまでの展開について解説。

ピッコロが天下一武道会を開催する。
孫悟飯、亀仙人、鶴仙人、桃白白、チャパ王
武泰斗(主人公、オリジナル要素強し)、ベンケイ(オリキャラ)、フルート(オリキャラ)
が参戦する。

一回戦、第一試合は亀仙人vs孫悟飯。
孫悟飯は武術の神と呼ばれた武天老師の孫、亀仙人はその弟子。
ちなみに、鶴仙人も同じく武天老師の弟子。三人は武天老師の名を継ぐ為に修行を励む。

  一回戦、第一試合は亀仙人の勝利。

一回戦、第二試合、桃白白vs武泰斗
今ンとこ、桃白白優勢。  試合開始前にピッコロvs桃白白アリ。ただし、勝敗は不明。
桃白白は勝ったと思っている。

568 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 21:27 ID:???
数分後、試合は桃白白にとって一方的なものとなった。
武泰斗の攻撃は全くヒットしない。対して桃白白の攻撃は全てあたる。

「未来が見えるんだったな……」
「あぁ、だからもう諦めろ!」

そう言われたが、武泰斗は諦めない。同じように桃白白に突進する。
無駄だ。0.05秒後、武泰斗は桃白白の間合いに入る。

そのタイミング、桃白白は丁度入ってくるであろう瞬間に正拳突をあわせた。
「これで終りだ」

が、刹那。タイミングがずれる。ほんの一瞬。0.001秒、桃白白の読みが外れる。
僅かだが、武泰斗の動きが速い。その動きで、桃白白の正拳にカウンターを合わせた。

「未来が見える。って、格闘家としての基本じゃねーか」
武泰斗はそう言い放った。

「格下の相手と戦っていると、その筋肉の動きなどから数秒先の動きを
 ある程度予測することが出来る。格闘に慣れてくれば、読みをはずすことも少なくなるだろう
 それが、お前の能力の正体だ」

569 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 21:28 ID:???
「馬鹿な。一度当たっただけで何を言う」
そう言うと再び、桃白白は動き始めた。武泰斗は動かない。
「そのまま喰らう気か!!」
桃白白の蹴り。当たる寸前、武泰斗は後ろに下がってかわす。

「……な、馬鹿な……未来が見えなかった」
「だから言ったろう、格下の相手のみだよ。見えるのは」

「ふ、ふざけるな!!」
桃白白が動く。連撃。相手の動きなどお構いなし、とにかく腕を振る。拳を当てにいく。
が、一発も当たらない。

よく見ると、武泰斗は目を瞑っている。
「舐めおって」
さらにスピードを上げる桃白白。

武泰斗は小さく何かを呟いている。
「み……あし……」

何を言ってるんだ。そう思い、桃白白は聞き耳を立てながら攻撃を続ける。
「右足ロー、左拳上段、右手で掴みに来て……」

読まれている。桃白白の動きが全て、武泰斗に読まれている。
桃白白は今になって相手が世界一であることを実感した。

570 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/06 21:49 ID:???
桃白白は連撃を続ける。少しずつ速度が落ちる。武泰斗は相変わらず目を閉じたまま。

そしてついに、桃が力尽き、動きを止めた。
武泰斗が挑発する。
「目を瞑っていても全く当たらないか……
 ハンディが足りなかったな。もう少し痛めつけて見るか?」
「はぁ、はぁ……」
桃白白には答える気力も無い。ただ、ハッキリ感じている。自分と相手との実力差を。
勝てない。
それが彼の結論だ。

だが、勝てないなら勝てないで一矢報いる。
勝てないからと言って逃げるようでは誇りも保てない。

桃白白は最後の攻撃に出た。
右拳を脇に抱える、左足を半歩前に出す。力をためる。
中段突きの構え、狙いは武泰斗の心臓。

素人目に見ても、狙いが明らかな構え。だが、それで良い。相手はどんな動きも読み取る
達人である。どうせ読まれるのなら、最初からトリッキーな動きなど捨て、この一撃にかける。

桃白白は摺足で徐々に間を詰めていった。

572 名前:巡回船[sage] 投稿日:03/08/06 22:21 ID:???
>>黄泉の門
今日はなんだか張り切ってますね。
戦闘描写、いいと思いますよ。
やっぱSSで戦闘を完璧に表現なんて素人には無理だと俺は思います。
でも、戦闘の流れを数字で表したりするのはとてもイイ!と思いました。
わかりやすくなったし。
タオパイパイ対ムタイト。原作で昔ありそうだった話ですね。
期待しております。

604 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/07 02:40 ID:???
第十二話 <王への挑戦 -その3->

間合いを詰めながら、桃白白が問う。
「それだけの実力がありながら、なぜピッコロなどを倒せなかった」
「向こうからの依頼でね、この大会終了後に殺して欲しいと言われた」
「そうか……」
桃白白が正拳中段を放つ。神速。だが、武泰斗はそれを超えるスピードの拳を放っていた。

武泰斗の拳が桃白白の鳩尾に決まる。桃白白は力なくその場に崩れた。

「第二試合。終了!!!」
 実況が叫ぶ。  第二試合、武泰斗の勝利。

崩れ落ちた桃白白を残し、武泰斗は去っていく。
桃白白、微かに残った意識も途絶えようとしている。

605 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/07 02:40 ID:???
医療班がやってきた。桃白白の容態。別に医療班が来るほどのものでは……
「ただの気絶だな。心配ないだろう」
「確かにそのようですね、でもそうしたら何故。ピッコロさんは我々に……」
「わからんよ。とにかく、この患者を連れて行くぞ」
と医療班のリーダーらしき男が言う。

刹那、桃白白が動いた。
「今、貴様何と言った? ピッコロとか言わなかったか?」
「え、あぁ。はい。ピッコロさんにアナタの容態を確認するようにと言われて……
 元気そうですね、良かったです」
「……」
「どうしました?」
「ピッコロ。あいつが生きているのか?」
「えぇ、もちろんですよ。ほら、あそこを御覧なさい、いるでしょう」
そう言うと、男は選手入場口のほうを指差す。
そこには確かにピッコロがいた。
「馬鹿な。アイツは確かに殺したはず」
「え。何を言ってるんですか、さっきからずっといましたよ」
「…………」

606 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/07 02:41 ID:???
桃白白の中に得体の知れぬ感情が芽生える。恐怖。
いや、ただの恐怖じゃない。相手は死んだはずの人間なのだ。
不可解な現象を前に不思議と思う気持ちと恐怖が入り混じった複雑な感情。

アイツは何者だ? 桃白白の中に大きな疑問が生まれる。
自分の幼き頃を知るもの。
組織のトップ。
そして、死んだはずの状況から生還した人間。あり得ない。一体何なんだ。

桃白白はつい先ほどまで、気を失いかけていたが、それでもこの不可思議な現象に頭がさえる。
そして、起き上がる。

医療班の人間に言った。
「俺なら大丈夫だ。もう医務室に戻れ」
「え、いや……そういうわけには……」
「大丈夫だと言ってる!!」
桃白白の迫力に医療班は根負けした。
「そういうことでしたら……」
桃白白はまっすぐ、ピッコロの元へ歩いていった。

ここは武舞台裏の廊下。ピッコロと桃白白がいる。
「お前は確かに俺が殺したはず。それも、体を真っ二つにしてな」
「あぁ、確かに、二つになったなぁ……」

607 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/07 02:41 ID:???
「なぜ生きてる?」
「死んでなかったからだろ」
「ふざけるな!! 体を二つにされて生きている人間などいない」
「確かにね」
「どういうトリックを使った? 武泰斗からもそれで生き延びたのか?」
「何にも使っちゃいないよ。真っ二つにされても死なない生物なのさ俺は」
「何だと……」
「確かに、人間ならば死ぬかも知れんな。だが、俺は違う。 もう一度試して見るか?」
「……」
桃白白はうつむく。この男は一体なんだ? 人間じゃないだと?
だとしたら、ピッコロは何だというんだ? 人間でなければ……
桃白白には答えが浮かばない。とすれば、
「よかろう。試してやる」
そう言って、再び桃白白は構える。
ピッコロvs桃白白の第二戦が始まった。

桃白白の攻撃。ピッコロはガードする。ガードの上から叩きつける桃。
そして、ピッコロの腕がボロッと崩れ落ちる。「ほう、なかなか……」

608 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/07 02:42 ID:???
桃は続けて攻撃。貫き手。ピッコロの右肩に裂傷。
さらに立て続けに攻撃を加える。見る間にピッコロが血だるまになっていく。

桃白白はある程度攻撃を加えたところでやめにした。
「もう終わりかね?」
「あぁ、お前の回復力を見るのが目的だからな」
「そうかい」
そう言うとピッコロの傷が癒え始める。
全身の傷口が消える。切り落とされた腕が生える。あっという間に元通りになってしまった。
「…………お前、一体何者だ?」
「その答えは俺自身持っていない。人間ではないもの。
 一応、"魔族"と自称しているがね。俺はその中でも王に当たる魔王と呼ばれる者だよ」

「素晴らしい!!」
桃白白は素直に感動した。この男が何者でも構わない。
ただハッキリ言える事は人知を超えた究極の生物であると言うこと。
自らを魔族、魔王と称し、そしてその名に恥じない能力を持つ。
「俺も"魔族"になれるのか?」
「さぁね。それはわからんな」
「仲間にしてくれ、俺は"魔族"を目指す」
こうして、桃白白はピッコロの軍門に下った。

636 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/08 15:48 ID:???
第十三話 <強き者>

チャパ王国。その国では格闘技が全て。
強いことが国民の証、最強であることが国王の証。
今、この国の王が二人。現国王と先代国王。息子と父親である。

「親父。オレはこの大会、負けることができなくなったんだな……」
「そうだな」
「チャパ王であるためには必勝が義務づけられる。負けるわけには行かないんだ」
「その通りだ」
「けどよ。相手はあの鶴仙人は強いぜ。まともに戦ったら歯がたたねぇ」
「だろうな」

二人の間に沈黙が流れる。負けるかもしれない。いや、恐らく負ける。
そんな戦いに最強である王が挑まねばならない。

二人は黙ったまま武舞台へと向かった。

637 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/08 15:49 ID:???
「東からチャパ王選手の入場です」
チャパ王が入場する。観客席からどよめきが起こる。
「お、おい。チャパ王ってあんなガキだったか?」
観客達は予選での王位継承を知らない。だから動揺している。
だが、何人かの観客はすぐに気づいた。今入場してきた子供の奥に一人の男がいる。
それこそが、旧チャパ王。そして気づいた。「王位はこの子供に譲られたのだと」
つまり、現国王。最強の男はこの子供なのだ。

「西から鶴仙人選手の入場です」
鶴仙人が入場する。

二人が武舞台に揃った。

「では、始めて下さい!」

806 名前:黄泉の門[sage] 投稿日:03/08/13 23:04 ID:???
「桃白白よ、チャパ王国を滅ぼして来い」
とピッコロが言った。桃白白はピッコロの部下達を連れチャパ王国を目指す。
舞台は戻って天下一武道会会場。第三試合、観客は冷めている。
試合展開がつまらない。そんな感想が聞こえてきそうだ。
「逃げるな!!」 チャパ王が叫ぶ。
だが、鶴仙人はまともに組み合おうとしない。
鶴仙人は奇妙な技を使う。チャパ王がパンチを放てばそれをかわす。
いや、正確に言うと、パンチで弾き飛ばされる。
チャパ王がパンチを打つ。そのまま、数十メートル鶴仙人は吹き飛ばされる。
有り得ない。人間の体が軽くたたいただけで数十メートル飛ぶなど有り得ない。
だが、確かに鶴仙人は飛んでいる。
「軽すぎる。貴様何をやっている!! 闘え!!! 逃げるな!!!!」
チャパ王は叫ぶが、鶴仙人はまったく相手にしない。
試合開始からかれこれ、数十分が経過していた。
試合を見ている旧国王にも苛立ちの表情が浮かぶ。
「まともに戦ってくれ……」
祈るような言葉だが、裏腹に表情は怒りに満ちている。
と、その時、旧チャパ王の無線に連絡がきた。
「国王、申し訳ありません。国が、チャパ王国が滅んでしまいました。
 奴等人間じゃない、化け物の集団です」

<つ・づ・く>

892 名前:黄泉の門 :03/08/15 16:41 ID:???
「大魔王の考えでは、世界最強の武力を持つこの国を最初に滅ぼす。
 そのために、国で最も力を持つ国王がいない時をねらって攻撃する。天下一武道会はそのための物だった」
桃白白はそう呟く。そして、魔王から与えられた部下を見ながら思う。強い。と。
部下たちの実力は個体により様々である。ある者は格闘の素人としか思えぬ攻撃をする。
またある者は武道会予選に出場できそうな攻撃をする。しかし、総じて防御が凄い。いや、回復力が凄い。
マシンガンを浴びても、その連射速度以上の速さで傷が回復していく。これが魔族だ。
「守れ! 王宮だけはなんとしても守るのだ」
チャパ王国親衛隊隊長が言った。得体の知れぬ化け物の襲撃。しかし、最強の軍隊。負けるわけにはいかない。
「王が、王がもうじき戻られる。そうすれば、この化け物どもを駆逐して下さるぞ」
そう、親衛隊は皆信じている。国は滅んでも王は帰ってくると。そして、国王ならば神速の動きで化け物を駆逐すると。
そして、その頃。旧チャパ王は息子の試合観戦をやめ、ジェット機に乗って国に向かっていた。
王宮を守る親衛隊。攻める魔王軍。戦況は圧倒的に魔王軍有利。そして、ついに旧国王が到着した。
「なんと言うことだ……美しかった我が国が……」
数日前まで確かにあった国。数日前までたくさんの国民が生きていた国。だが、今は燃えさかる業火の中に原形を留めぬ死体。
間違いなく国が滅んでいる。「奴らか……奴らがオレの国を!!」旧国王は魔王軍をにらみつけた。
「死ね!!」国王が魔王軍兵士に攻撃を加える。パンチ、回復。パンチ、回復。「なるほど」
直ぐさま魔王軍兵士たちの特性に気づいた旧国王。攻撃の速度を上げる、パンチ、パンチ、回復。パンチ、パンチパンチ回復。
回復速度が追いつかない。神速のチャパ王は回復を上回る。ついに魔王軍兵士を一体倒した。
「まだ、王宮では闘いが続いている。逆襲開始だ」
旧チャパ王は王宮へと入った。国王が王宮に入るやいなや、戦況は逆転した。王の戦力は一騎当千。だが、それ以上に
親衛隊の志気が上がる。今まで全く敵を倒せなかったはずの親衛隊が敵を倒していく。一人一人、魔王軍の兵士は散っていった。
そして、残ったのは一人。部下たちを任された男。桃白白のみ。
国王が桃白城の前に立つ。桃白白が構える。二人の対決が始まった。


893 名前:黄泉の門 :03/08/15 16:47 ID:???
舞台は変わって武道会場。息子の国王と鶴仙人との対決。宙に浮く奇妙な技を使う鶴仙人。
それをチャパ王がとらえた。「貴様を叩けば後に飛ぶ。ならば、場外フェンスを利用すればよい」
亀仙人と同じ戦術。チャパ王は四手拳を使って鶴仙人をフェンスに張付けた。体が軽いが為に、
チャパ王の拳一つでフェンスに叩きつけられる鶴仙人。軽いが為にフェンスからはじき返される鶴仙人。
同じ事を繰り返しダメージは溜っていく筈だ。チャパ王は両足でしっかり地面を噛み、下半身を安定させて拳を繰り出す。
「ここならもう逃げられねぇ、死ね死にさらせ!!!」チャパ王の腕に血しぶきが舞う。鶴仙人がボロボロになっていく。
勝った。チャパ王はそう思った。しかし、次の瞬間。「足下がお留守だぞ」鶴仙人が足払いを仕掛ける。
避けきれず、転倒してしまうチャパ王。鶴仙人は武舞台の中央に歩いていく。チャパ王は5秒ほどして立ち上がる。
「貴様、最初からオレの拳から逃げられたんだな」「あぁ、そうだ。そして流石にあれ以上ダメージを喰らうと負けると思ってな」
「だから逃げたか」「そうだとも。だが、逃げてばかりいては勝てない。これからは攻撃させてもらうぞ」
鶴仙人は先ほどの攻撃でダメージを受けた。チャパ王は今までの攻撃で体力を消耗している。二人の体調は互角。後は実力差が勝負を決する。
鶴仙人が構えた。体が若干宙に浮いている。「この術、舞空術と言ってな。完成すれば空を事由に飛び回れるようになる。今は未完だが
それでも、体重をほぼ無にすることぐらいは簡単だよ」そう言い終わった瞬間。鶴仙人は地面を蹴った。「速い!」チャパ王には殆ど見えない速さ。
一瞬にして、場外フェンスまで叩きつけられるチャパ王。「体重を軽くできると言うことは、僅かな力で大きな加速度を得られると言うことだ。
オレは最速の動きをこの舞空術で手に入れた」倒れたチャパ王を見下ろし、鶴仙人が言う。チャパ王は立ち上がり叫ぶ。
「最速だと。ハッ笑わせるな、親父に比べたら亀より遅いわ」チャパ王は四手拳の構えをとった。


894 名前:黄泉の門:03/08/15 16:47 ID:???
同じ頃。旧国王と桃白白が王宮で闘っていた。「ふん、貴様の動きは手に取るように分かるわ」桃白白が言う。神速の動きで敵を翻弄しようとする
旧国王。だが、桃白白はその動きを読んでくる。神速の動きがかわされる、神速の動きにカウンターが決まる。勝負開始から数分間。
桃白白にダメージはない。だが、既に旧国王は虫の息。「最強の国王といってもたいしたこと無いな。オレの拳で死ね」桃白白の鉄拳がチャパ王に炸裂した。
「これで百発。息子はオレを二発でしとめた。比べれば貴様など雑魚にすぎん」

<つ・づ・く>