〜もしもヤムチャが元気玉発射の時までいたら〜
なんとか頑張ってヤムチャを生き残らせた悟空たち。その頑張り具合はと言えば、それはもう言葉では
語りつくせないほど凄絶なものであった。そして……。
バチバチバチ…!ボンッ!!
「わわっ!!なっ、なんだっ!?これ…?も…ものすげえ気だ…!」手のひらの上で光る、大きなエネルギー
ボールにクリリンは驚きを隠せなかった。
「元気玉だ…。や…やったな…!そ…そいつをヤツにぶつけてくれ…!おめえなら大丈夫だ…」大猿化した
べジータに痛めつけられたため、消え入りそうな悟空の声だったが、期待の色が強かった。この土壇場でも、
悟空は 少年時代からの親友・クリリンを信頼していた。
「がんばってくれ…。こ…この気のコントロールはヤムチャじゃ絶対にできない…!」
「分かってる。気を操る弾なら俺に任せろとか言ってたけど、あんなの実は誰にだって出来る技なんだからな…」
ただ、あの人の二番煎じになるのがイヤなんだよな…。オレだって例外じゃない…」
文句を言うのもそこそこにして、クリリンは手ごろな岩山に飛び乗った。もちろん、べジータを狙うためだ。
…下では、悟飯とべジータが肉弾戦を繰り広げていた。とんでもないスピードだ。やや悟飯が押され気味に
みえる。そして、その横の岩山の影では、ヤムチャがなにもかわっていない、新狼牙風々拳Uの素振りを
していた。が、クリリンはあからさまに見て見ぬフリをしていた。
「く…くっそ〜!あんなにはやいの、どうやって当てろって言うんだ…!」クリリンはあせり始めていた。
―その時だ。
(元気玉は目で見て当てるのではない。悪の気を感じとって放つのだ!)
あの世からの界王様さまからのアドバイスを信じ、クリリンは目を閉じ、精神を集中した。
(か…感じろ…!ヤツの悪の気を感じるんだ…!)
「バッキャローッ!はやくそれやっちまえよー!この、バッキャローッ!!」岩陰に隠れていたヤムチャが
いきなり狂ったように叫んでいた。
(とらえたーーーーー!!!!)クリリンは、悪の気をとらえていた。
〜もしもヤムチャが元気玉発射の時までいたら〜2
「ち…違うぞクリリン!その気はヤムチャだ!!」
「ずどどえやあ〜〜っ!!」だが、悟空が忠告したものの、時はすでに遅くクリリンはヤムチャに向かって
元気玉を投げ下ろしていた。
元気玉が自分に飛んでくるという、予想もしない展開にヤムチャはあたふたするばかり。元気玉はどんどん
近付いてくる!
「ヤム…ャさー…!あし…とが…お…す……よー!」クリリンが何か叫んでいるがほとんど
聞こえない。少しニヤついて見えるのは気のせいだろうか?いや、きっと気のせいだ。
(ヤムチャッ!!跳ね返せ!!そいつは味方だ!多分!!)悟空のテレパしいだ。
(頭がまっ白だ…。元気玉の跳ね返し方がわからない…。誰か……!)ヤムチャは心底困っていた。
「ドラゴンボール巻十101ページ!!【元気玉の跳ね返し方】!!」いきなり、さらに後ろの岩陰に隠れていた
ヤジロベーが池辺マニュアル的アドバイスを贈っていた。
(十巻…ひゃくいち……もしや……あれは……あれは……お父さん!?)
「ちが……」ヤムチャは違うことに気づき半泣きになっていた。むしろ、気分は全泣きだ。
ヤムチャはさらにあたふたしていた。元気玉との距離はあと20メートル程。
「は、はじけてまざれ!!」しかし、混ざらない、弾けない。
が、一瞬後にヤムチャは閃いた。
「く…くそうっ!こ…こうなったらしかたない…天津飯!!!技をかりるぜぇっ!!」
「排球拳!!!いくわよーーーっ!!!」