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ヤ氏屁垂れ 〜プーアル、その愛〜




 プーアルはヤムチャが好きだった。
 プーアルはヤムチャが大好きだった。
 プーアルはヤムチャが大好きで、なにかかたちを残したいと考えた。
 プーアルはなにがいいか、どんなのがいいか必死で考えた。
 プーアルは思いついた。映画を残そう。後世までヤムチャ様が存在し
たという記憶を残すため、映画を撮ろう。
 プーアルは、自分の大好きなヤムチャ様だもの、どうせなら多少事実
を歪曲してでもカッコイイ記憶を残そう。皆にヤムチャ様をずっとずっと
尊敬してもらうために。ドキュメンタリーを撮ろう、と思った。
 
 ヤムチャが昨日殺された。

 マイケル・プーア監督作品『ヤ氏屁垂れ』――製作開始



 プーアルはまず、カプセルコーポレーション跡地のスターバックスに入った。その奥に、かつて世界一の
大企業の跡取り娘として栄華を謳歌した、今はただ落ちぶれ薄汚れた娼婦のような女を確認すると、その
空いてる方の席に座り「カプチーノ」とだけ言った。「用件は? あたし今日は分刻みのスケジュールなのよ。
本来ならあんたみたいな小市民には会ってられない様な身分の女で、社交界の中心で支柱を廻してる様な
女なのよ。だけどさ、あんたがどうしても会って欲しいっていうからさ、来たんじゃない。とっとと済ましてよね」
大分、この前見た時より病状が進行しているな――プーアルはそう思った。この女は、憐れなことにカプセル
コーポレーション倒産後(理由は特に決められていない。ただ、複合的なものだとされている。両親が世界的
に大流行した伝染病で共に脳死状態、ことさら父親のほうは世界的に知られた大人物で、また商売上の信頼
も厚かったこともあって、取引が潮を引いたように破談になっていったことによる損失が十億を超したことなどが
要因という。また、これまでもピンチを救ってもらっていたウーロン氏(彼は超一流の変装技術を身に付け、たび
たび大銀行の頭取に化け、大金を二束三文の利子で貸し出してカプセルコーポレーションに多大な貢献をした
らしい。報酬はパンティ一枚だったというので驚きだ)の急逝もまた要因の一つであろう)、重い神経症を患った。
それからは、毎日毎日『人生が終った女のカタチをした生き物が巣食うバー』で、奇特な男性各位と蛆が湧いた
ような暗さの部屋で昔の輝かしいおもひでをぽろぽろと零し、小金を得ているという。当然、今日の取材・撮影も
プーアルの奢りである。「そうですね、お忙しいのでしょうからさっさと済ませることに致しましょう……お、ありがと
う」プーアルは、女の店員が恐る恐る運んできたカプチーノにまず一口付けた。恐らく、ブルマが余程酷いヒステ
リーを起こしたのだろう、店員全体が三万歩くらい引いたところからこの席を眺めているように感じられた。まあ、
そのお陰で撮影もし易いというものだが。



――あなたがヤムチャと付き合いだしたのは何十年前のことでしょうか? 私の記憶によると、あれはもう4、50年
前の事と存じます。当時はヤムチャがまだ女に対する耐性を持っていなかった頃で、私も大変に心配したものでし
た。

「あんたの語り長くない? ひゃひゃ」

――すいませんでした。以後気をつけますので……では、あなたに語っていただくと致しましょう。

「語るったって、あのダメ男のどこをさ? ひたすらにダメなトコを言ってきゃいいのかしらね」

――ええ、どうぞ好きなだけお話下さい(全カットだがな)

「そうねえ……そうそう、あの男初めてのときさあ……もうすごいんよ。いままで色んなヤツにのっかられたけど、あん
な早かったのは記憶にないわぁ、アレ以外」

――初めてとは、セックスのことでしょうか?

「当たり前じゃない! それ以外になにがあるっつーの、まあ、いいけど。あんまり早くて満足できなかったからあの後
別の――」

――分かりました。では、今日はこれまでということで……(もう足りるだろう)。



 プーアルは、カメラを止めた。そして、尾をくいくいと動かし、いかつい大男達を店内に招きいれた。
「ちょ、ちょっとなんなのよこいつ等!」
「今撮った映像、音声共に使用することはありません」プーアルは、ニコリとして言った「ただ、『ヤムチャを良く知るブ
ルマ氏にインタビューした』という事実のみが欲しかった――」ブルマは、体を弱々しくゆさゆさと揺り動かしたりしていた。
彼女なりのか細い抵抗であったが、勿論両脇を抱える大男達の前ではビクともしない。
「安心して下さい、悪いようにはしない、むしろ、あなたに良いようにしてあげましょう」プーアルは言った。そして、毛むくじ
ゃらの短い指をパチンと鳴らして「これで残りの人生は快適に過ごせるでしょう。無論、無茶な使い方をしなければ、ですが」
大男達はブルマの両腕を離し、空いていた片腕で抱えていたトランクを開けた。大男2人のトランクに全く同じ金額――あわ
せて1000万と、いかにもカラットの大きそうなダイヤが各2個が無骨に詰め込まれていた。
「ひいいっ、ひいい〜〜」こんな豪華なものを渇望していたのだろう。ブルマはトリュフを見つけた豚の如く地面に叩き置かれ
たトランクに抱きついた。その奇声は、もはや人間の尊厳というものは何なのか、と見ている人々にそう考えさせるほどに下卑
で醜悪であった。
「これから人に「どこでそんな大金を手に入れたのか」と聞かれたら「ヤムチャの遺産を受け継いだの。あの人は何十年前の女
にも財産を分け与えるほどの、この世に2人といない聖人なのよ」とでも答えなさい」プーアルはそう言って「分かったら早く消えろ
メスブタが」と小声で呟き、今度は尾を外に向かい振り、大男達にブルマを抱えさせ、外に出させた。

 映像はとりあえず欲しい尺以上に揃えた。あとはこっちで作ったセリフに音声を合成して被せればいいだけ。この際モラルは捨て
置き、ただ出来上がるもののクォリティのみ追求する。この場合のクォリティとは勿論、ヤムチャ……いや、『ヤムチャ様』をひたす
らに――