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ヤムロット伝 2

 



第一話「その後のヤムチャたち」

ある日の午後。何もなくてだだっぴろい空き地。そこで悟空が悟天に修行をつけていた。
「はあっはあっ・・・!ちょ、ちょっと休憩しようよお父さん」
「なんだ、またか。若いのにだらしねえなあ・・・」
悟空たちが休憩をしようと腰をおろすと、その空き地にブルマ一家が飛行機に乗って遊びにやって来た。
「よう、ひさしぶりだなー!」悟空が元気にあいさつをする。
「あんたってみんなが集まるってときも、修行するからって言って来ないし・・・。
 ほっといたら一生会えないんじゃないの?」
ブルマがいささか呆れ顔をして言った。

――――ヤムロットがブウを撃破してから10年がたっていた。
合体したらもとには戻れないポタラだが、
ドラゴンボールに頼んでヤムロットはすでに悟空とヤムチャの二人に戻っていた。
ブウ戦で名誉の戦死をとげたピッコロも生き返っている。
あれからというもの世界は平和で、みんなもそれぞれの暮らしを楽しんでいた・・・。

「何故だ?なぜ今回の天下一武道会にかぎって出る気になった?」
ベジータが前髪の生え際をさわりながら悟空に訪ねた。おそらく毛入頭を刺激しているのだろう。
アートネイチャーもリーブ21もないこの世界のベジータには切実な悩みであった。
「ああ、今回の大会にはすごそうなヤツが出るからさ。
 いまは全然気をおさえてるけど、オラにはそいつがすげえヤツだってわかるんだ」
悟空たちが会話をしていると、パンとヤムチャが空を飛んでやって来た。
「ただいま、おじいちゃん!ヤムチャおじちゃんと世界一周してきたよ」
「そうか、よくやったなパン!この調子なら武道会でイイ線いけるかもしれねえぞ」
そう言って悟空がパンの頭をなでる。この二人の会話に、トランクスは驚きを隠せない様子である。
「・・・も、もしかしてパンちゃんも天下一武道会に出るつもりなの?」
「ああ!こう見えてもうちでいま一番根性があるのはパンだ。な、パン!」
「うん!」
現在の大会には少年の部はない・・・つまり大人と混じって試合するのだ。トランクスが驚くのも無理はない。
「でもそのパンちゃんの世界一周に余裕でついて行けるヤムチャさんもすごいな。
 もしかしてヤムチャさんも大会に出るの?ねえ、ヤムチャさ・・・」
そう言いながら振り返ったトランクスは、ヤムチャの姿を見るとはっとした。
死者のごとく青ざめた顔。とめどなくあふれる汗。張り裂けそうな呼吸。
ヤムチャを彩るひとつひとつのものが、そのすさまじさをものがたっていた。
「あ・・・ああ・・・!優勝はこの・・・ヤム・・・チャ様が・・・いただき・・・マン・・・モスだ・・・ぜ!」
しぼりだすようにして、ヤムチャが答えた。そして右手でガッツポーズをつくって見せた。
(違う、余裕なんかじゃない・・・!オレはとんでもない思い違いをしてたみたいだ。
 この人はついさっきまで、世界一周という巨大な壁と戦っていたんだ!)



第二話「ヤムチャ生か死か?」

パンの舞空術の修行につきあっていたヤムチャは、呼吸困難により瀕死におちいっていた。
「ヤムチャおじちゃん、無理して私のスピードについてこなくてもよかったのに・・・」
パンが気の毒そうにヤムチャを見る。ヤムチャはすでにその人生の幕を閉じようとしている。
死の間際、ヤムチャの頭の中は意外と冷静であった。
(考えてみればオレは幸せものだ。オレに家族はいなかったが、
 こうして仲間たちに見届けられながら死んでいけるんだからな・・・)
禁断症状により、ヤムチャの目にはこの場にいないメンバーの姿もうつっていた。
(お前たちに出会えてよかったぜ・・・!ありがとう悟空、ブルマ、プーアル、ナッパ、クリリン、
 ピッコロ、えーっと・・・天なんとか、ギョウザ、M字、兎人参家、桃白白、ブリーフ&トランクス、
 あれ・・・あいつ誰だっけ?たしかサイ・・・サイ・・・?サイ・・・・・・サイヴァッ!!)
そこまで考えたところでヤムチャは力尽きた。
「ちょっとオラ、ヤムチャをデンデのところへ連れて行ってくる。
 デンデに触ってもらえばこんなのあっという間に治るさ。すぐ戻る」
そう言うと悟空はヤムチャをかつぎ神様の宮殿へ瞬間移動した。

「ねえ悟天君、キミも天下一武道会に出るの?」ブルマが尋ねた。
「うん。お前も出ろってお父さんが無理やり・・・。デートの約束があったのにさ」
悟天がしょんぼりしながら答えた。すると何かを思いついて、ベジータがこう言う。
「おもしろい、オレも出るか。トランクス、お前も出ろ。前髪をM字にされたくなかったらな」
「えーーー!?」突然の父親の提案にトランクスは泣きそうになった。

「ただいまー!」悟空がヤムチャを連れて戻ってきた。ヤムチャもちゃんと元気になってるようだ。
「ようカカロット。今度の大会、オレとトランクスも出ることにしたぜ」
ベジータが例によって前髪を触りながら言った。
「ひゃーマジか!そりゃあますます大会が楽しみだな!負けねっぞベジータ!」
悟空が嬉しそうな表情で言い返す。きっとワクワクしているのだ。
「フン。オレは一日たりとも修行をかかした日はないぞ。あれからずいぶんウデをあげた。
 カカロット、今度の大会ではこのオレが貴様に勝っ・・・うああぁぁぁぁぁーーーーーっっっ!!!!」
急にベジータがすっとんきょうな声をあげた。
ベジータの前髪がポロポロと抜けている。はっきり言って触りすぎである。
「あっはははははははーーーーー!!それじゃM字じゃなくて∩字だなベジータ!!」
ヤムチャが爆笑してベジータの額を指差しながらそう叫ぶ。
「き、貴様よくも人の不幸を・・・!オレを怒らせてそんなに死にたいか・・・!!」
ヤムチャに対しブチきれるベジータ。
「ほう、オレとやろうってのか?じゃあ天下一武道会の前にここでお前をブチのめしてやるぜ」
そう言いながら、ヤムチャがベジータのもとへ歩み寄る!



第三話「ヤムチャVSベジータ?」

ポロポロと崩れ落ちる前髪・・・あまりにも残酷に広がるオデコをただただ隠すベジータ。
そして・・・それをあざ笑うヤムチャ。二人の間に険悪なムードが漂っていた。

「貴様どうやらこのオレに殺されたいらしいな!」
「へっ!あっという間に白目をむかせてやるぜ!」
ベジータとヤムチャがお互いに構える。二人ともやる気まんまんである。
夫とかつての恋人が戦うのだからこれを見ているブルマの心境はきっと複雑であろう。
「ベジータがんばってーーー!!そんなヤツさっさとぶっとばしちゃえ!!」
いや、案外そうでもなかったようだ・・・。
「毎日かかさずプロテインを摂取して鍛えた成果・・・いまここで見せてやる!」
そう言ってヤムチャが狼牙風々拳の構えをとった。それを悲しそうな表情で見つめるパン。
「うわぁ・・・ヤムチャおじさんがあの構えになったらもう誰にもとめらんないよ!
 神様お願いします、(ヤムチャおじさんが)死にませんように・・・」

そのころ天界では・・・。
「おや?」
「お、神様どうかしたか?」
「いや、ポポさんさっき変な手の動きしなかった?」
「ポポなにもしてない。多分神様の見間違い」
「それならいいんだけど・・・。じゃあ、ポポさん牌を切ってください」
「・・・もうアガってる」
「ええっまた天和ーーー!!?」
・・・どうやら残念なことにパンの願いは届いていないようだ。


「いくぜベジータぁ!!つぇいっ!」
ヤムチャが先手をとって攻撃をしかけた。しかしそれを上手くさばいていくベジータ。
「ちィ、生意気な!だがベジータさんよ、顔面がガラ空きだぜ!!」
そう言ってベジータの顔面に拳を炸裂させるヤムチャ。見事に直撃である。
しかしベジータはそんなことなど気にもとめずに、なぜかワナワナ震えている。
「ガラ空きだと?オデコのことか・・・オデコのことかーーー!!貴様もう許さーーーーーーん!!!」
ベジータの怒りの鉄拳がヤムチャの頬にヒットする!岩山を貫通し吹っ飛ぶヤムチャ。
われにかえりはっとするベジータ。
「しまった、怒りのあまり本当に殺してしまった・・・。カカロット、ドラゴンボールで生き返してやれ」
「いや、その必要はねえよベジータ。ヤムチャはオラたちと毎日修行してっから、
 あれでもけっこう強くなってんだぜ。この程度じゃ死なねえさ。気をさぐってみな」
「な、なんだと?・・・いや、でも全然気も感じないぞ」
「あれ?そんなハズは・・・あ、ホントに気を感じねえ!」
次の日、悟空たちのおかげでヤムチャは無事に生き返ることができましたとさ・・・。



第四話「餃子×殴打×服従」

天下一武道会当日――――
スーパーチャンピオンのミスター・サタンの控え室に訪れる悟空たち。
悟空がドアをノックすると、少々老いたサタンが顔を出した。
「ややっ悟空さんじゃないですか!おおパンちゃん、おじいちゃんの試合を見に来てくれたのかい?」
「ううん、わたしも試合に出るんだよ、おじいちゃん」
「え!?」
「サタン、オラたちも大会に出場することになったんだ。もちろん、みんな予選突破した」
手を組んでガッツポーズしてみせる悟天とトランクス。
そしてベジータ、ピッコロ、天津飯、餃子もその傍らでくつろいでいる。
さらに、目標であった予選突破を果たし廊下の隅で真っ白に燃え尽きているヤムチャ。
「安心しろよサタン、オラたちの中の誰かが勝ち残ったらわざとおめえに負けてやっからさ。
 ・・・でも、オラたち以外のヤツが勝ち残るかもしれねえけどな」
悟空は意味深げにそう言った。

「それでは本戦出場者のみなさーん、対戦相手を決めますので
 名前を呼ばれたかたからクジを引きに来てください。ではウーブ選手」
「は、はいっ!」
ウーブがクジを引きに行く。その間に悟空がブウにそっとささやく。
「おめえ超能力使ってクジを操作してオラとあの子を戦わせてくれ!」
一方、ヤムチャも餃子にそっと何かをささやいていた。
「おい餃子、超能力でクジを操作してオレを一番弱そうなヤツと戦わせるんだ。
 あと一回戦で悟空とベジータをぶつけろ。いいな!」
「い、イヤだ。ボク普通に大会を楽しみたい・・・」
「なんだと、ゴチャゴチャぬかすな!!」
三発ほど殴られ、餃子はしぶしぶ引き受けた。
「じゃああのウーブって子をとりあえず6番にする」餃子がヤムチャに言った。
「それじゃウーブは1番でいいな。それで後でオマエを2番にする」ブウが悟空に言った。
ウーブがやっとクジを引き終わり、それを司会者に渡す。
「えーっと、ウーブ選手は14番ですね。では次、キラーノ選手」
「あれ?ボクの超能力が効かない・・・。6番にしたはずなのに・・・」餃子が不思議がる。
それもそのはず、ブウと餃子の二人の超能力がぶつかり相殺されているのである。
「こんの役立たずがぁっ!!」ヤムチャは餃子への攻撃の手をいっそう強めた。

「えーこれですべての人がクジを引き終わりましたね。これが対戦表になっております。
 30分後に第一試合を始めますので、準備しておいてください」

第一試合 天津飯VSノック
第二試合 キャプテン・チキンVSベジータ
第三試合 トランクスVS匿名希望
第四試合 悟天VSオトコスキー
第五試合 悟空VSピッコロ
第六試合 ミスター・ブウVS餃子
第七試合 キラーノVSウーブ
第八試合 パンVSヤムチャ



第五話「ノックアウト」

天下一武道会、本戦開始まであと30分弱―――
ここで出場者のそれぞれの時間の過ごしかたを見てみよう。

ヤムチャは他の出場者たちの顔をながめながら考え事をしていた。
(いきなりパンと試合か。子供にボコボコに負けたらいい恥さらしモンだぜ!
 しかも何とか勝てたとしてもまだ悟空やブウがいる!
 いや、それよりももっと危険なのはこないだオレを殺しやがったベジータか?
 いや、それより何よりあのオトコスキーという男・・・ホモの臭いがプンプンしやがるぜ・・・!)
ゴクリ、ヤムチャは生唾を飲み込んだ。
(おや?天津飯たちが何か話しているな。会話を盗み聞きしてみるか)

「悟空とは決勝までぶつからないからいいが、問題は2回戦のベジータだな・・・」
「天さん、ボクいきなりブウとだよ。ちょっと勝てない」
天津飯と餃子がそういう会話をしていると、一人の男が声をかけてきた。
「よお、オレはノックっていうんだ。対戦相手にあいさつしてやろうってんだぜ。
 ん?よく見たらてめえ目が三つあるじゃねえか!うわっキモーーッ!!」
「何だと・・・?貴様もう許さん!」
この後ノックは餃子の超能力で金縛りにされ、天津飯の四妖拳の肩から腕が生えてくるシーンを
何度も何度もまざまざと見せられ、恐怖のあまり泡をふいて倒れました。
「餃子、選手が一人棄権したと司会者に伝えてくれ。・・・あれ?」
ふと、天津飯の視界に泡をふいて気絶しているヤムチャがうつった。
「もしかしてヤムチャもオレの恐怖ショーを見ていたのか・・・?バカなヤツだ・・・」
「じゃあノックとヤムチャの二人棄権だね?わかった伝えてくる」
餃子が苦々しそうな表情で司会者のもとへ向かった・・・。



第六話「ヤムチャは是か非か?」

ピッコロは焦っていた。
(しまった、オレとしたことがピッコロという名で出場登録してしまうとは・・・!
 観客の前に対戦表が公開される前に、マジュニアという名に変更してもらわねば!!)
ピッコロが司会者を探していると、何かにおびえて隠れている悟天を見つけた。
「おい悟天、こんなとこに隠れてどうした?何かあったのか?」
「ぴ、ピッコロさん・・・!あのね、オトコスキーっていうボクの対戦相手がなんか
 いやらしい手つきで体を触ってくるんだ・・・だからいま必死に隠れてるの」
「そうか恋愛というやつだな?よくわからん・・・」
「いや恋愛ってゆうか、それちょっと違うんだけどね・・・。
 もうイヤだ、ボクあんな気持ち悪いヤツと戦いたくない!
 ・・・あ、そういやピッコロさんて性別ないんじゃなかった?
 だったら別にホモが対戦相手でもいいよね?変わりにアイツと戦ってよ!」
「対戦相手を交換することなんてできるのか?・・・まあとりあえず司会者に伝えてみよう」

トランクスは、自分の対戦相手のほうをじっと見ていた。
(なんであの人は匿名希望なんだ?名前を明かしたくないのかな・・・)
その匿名希望選手も視線に気づいたのか、トランクスのほうへ歩み寄って来る。
「やあ、キミがボクの対戦相手のトランクス君だね?よろしく。
 聞くところによると、あのベジータの息子さんだそうじゃないか」
「あ、うん。パパの知り合いなの?」
「うん、まあね・・・。キミにもある意味お世話になったんだけどね」
「え?それってどういう意味?」
「フフ、まあ気にしないでおくれよ。それじゃあね・・・」
そう言うと、匿名希望は去っていった。
全身を衣服で覆っているため顔は見えなかった。


本戦開始まであと10分程になった。
「もうすぐ時間だ。誰が優勝するのかなあ」
観覧席で悟飯が仲間たちに話しかける。クリリンがそれに答えた。
「そりゃ悟空かベジータだろ。いつも修行ばっかりしてるんだもんなあ。
 そういえば今年こそはヤムチャさん、一回戦突破できるかな?あの人クジ運ないからなあ・・・。
 あ、どうやら対戦表が張り出されるみたいだぞ!どれどれ・・・」


第一試合 天津飯VSノック(棄権)
第二試合 キャプテン・チキンVSベジータ
第三試合 トランクスVS匿名希望
第四試合 マジュニアVSオトコスキー
第五試合 悟空VS悟天
第六試合 ミスター・ブウVS餃子
第七試合 キラーノVSウーブ
第八試合 パンVSヤムチャ(棄権)


「き・・・け・・・ん・・・・・・?」
一回戦突破どころか、一回戦出場すらできないとは誰が予想しただろう?
クリリンたちは開いた口が塞がらなかった・・・。
「脱・・・毛・・・症・・・・・・?」
一方、選手控え室のベジータも抜け落ちる髪が止まらなかった・・・。



ヤムロット伝2 第七話「Y」

気がつくと、ヤムチャは医務室のベッドに横たわっていた。
「あれ・・・どうしてオレはこんなところに?そうか、気を失ってたのか・・・」
隣のベッドでは、ノックがノックダウンしている。ふと、司会者のアナウンスが聞こえてくる。
『大変ながらくお待たせしました!これより天下一武道会本戦を開始いたします!!』
「げっ!もう試合が始まるじゃねえか、こんなとこで寝てる場合じゃない!」
ヤムチャはベッドから飛び起きると、医務室を出て廊下をひたすら走った!
転んだ!すでに満身創痍だ!
立ち上がる間もなく、襲い来るめまいと吐き気!
負けるか俺はロンリーウルフ、千切れそうな手足を
引き摺りなお走った!見つけた!トイレだ!

トイレにこもったヤムチャは、もう耐えれないほど気持ちが悪くて今日の朝食を全て吐き出した。
ティッシュと醤油を吐き出した。

『第一試合はノック選手の棄権により、天津飯選手の不戦勝!
 第二試合はキャプテン・チキン選手VSベジータ選手です!さあ試合開始!』

「このキャプテン・チキン様が一回戦の相手とは運がなかったなぁ。ぐへへ」
「ほざけ、すぐ黙らせてやる(髪よ・・・もう少しだけもってくれ!)」
まあチキンがベジータにかなうはずもなく、試合開始直後コテンパンにされる。
普通に戦っては勝てないと悟ったチキンは、ベジータに対して心理作戦に出ることにした。
「お、おい、惑星ナッパが滅びた本当の理由が知りたくないか?」
「知りたくない。さっさと降参しやがれ!!」
バキッ
「ほぎゃー!」


『第三試合、トランクス選手VS匿名希望選手です!それでは試合を始めてください!!』

「フフフ・・・いきなりキミが相手だなんて本当にボクはツイてるよ」
そう言うと、匿名希望選手は全身を覆っていた衣服をおもむろに脱ぎ捨てた。
いままで隠れていた部分が現れ、本当の姿がみんなの前にさらされる。
その人間とは到底思えないあまりにも異形な姿に、観客席からは悲鳴がもれる。
そいつは悟空のほうを見てしゃべりだした。
「久しぶりだねソンゴクウ。キミにまた会うことができて嬉しいよ」
「えっ?・・・ああ、ひ・・・ひさしぶりだなあ〜・・・え〜っと・・・・・・リ・・・リクッ・・・!?
 え〜っと・・・・・・あっははは・・・なあ?もう久しぶりだよホントに・・・ハハ・・・」
「・・・」
悟空の微妙な反応に少々焦る匿名希望選手。
だが気を取り直して、今度は悟空の隣にいるベジータに話しかける。
「ベジータも久しぶりだね。あれ以来、随分とウデをあげたみたいじゃないか・・・」
「え、オレか?あ、ああ・・・もちろんウデはあがっている」
そう答えるベジータに、悟空は小さな声でそっとささやいた。
「おいベジータ、あいつ誰だっけ?セルとかいうやつだったっけ?」
「うむ、多分それだ!・・・いやでも待てよ、セロだったかもしれん。とにかくセ・・・なんとかだ」
「オッケー。
 ・・・・・・ようセミ、おめえ最近ちゃんと元気にやってっか?」
「誰がセミだ!!!!」
匿名希望選手、もといフリーザはキレ気味にそう答えた。



第八話「地獄からの帰還者」

匿名希望選手の正体はなんとフリーザだった・・・・・・!
しかし悟空とベジータはその姿を見ても全然思い出せないようだ。
「おい、おめえはいったい誰なんだ?オラさっぱりわかんねえぞ」
「ボクをここまでコケにしたのはキミたちが初めてだよ・・・。
 忘れてしまったというのなら思い出させてやろう、ボクは宇宙の帝王フリーザだ!」
「なんだフリーザかよ」
「なんだとは失礼だな、キミたち!!」フリーザのクチもとがヒクヒクする。
「あれ?でもよ、フリーザおめえは殺されたんじゃなかったっけ?・・・パンプットとかに」
「勝手に変なストーリーを作るな!ボクを殺したのはそこにいるトランクスというやつだ」
そう言うと、フリーザは自分の対戦相手であるトランクスをギロッとひとにらみした。
「オレ?アンタを殺した覚えとかないんだけど・・・」
このフリーザとかいうやつ、ちょっと頭がアレなのかなとトランクスは思った。
「そりゃ覚えはないだろう。ボクを殺したのは、正確には未来から来たというトランクスさ。
 でも、自分のカタキの同一人物と一回戦で戦えるなんて嬉しいよ。
 地獄に堕ちたボクがどうやってこの世に帰還したか知りたいかい?教えてあげようか」
「いやまったく興味ないからやめてくれ。ごたくはいいからさっさとやろうぜ!」
そう言ってトランクスはフリーザへ襲い掛かった。

一方のヤムチャもどうにか吐き気がおさまり、トイレという名の地獄からかろうじて帰還していた。
「ちぃ、いらぬ時間をくったぜ。急がないと試合に遅れる!」
ヤムチャは井手らっきょを超えるかのような猛スピードで、廊下を走っていった。

しーんと静まり返る会場。
観客のある者は手で目を覆い、またある者はあっけにとられポカーンとしている。
「と、トランクス・・・」
悟空はフリーザの手の中で血まみれになっている少年に声をかけるが、もはや届かない。
「安心しろ、殺しはしないよ。殺してしまうと反則負けになるらしいからね」
そう言ってフリーザはニコッと笑った。
そのフリーザの腕には、21という数字が彫られている。
地獄でドクター・ゲロに出会い、人造人間21号として改造された痕だ。
これによりフリーザは、トランクスが手も足も出ないほどの圧倒的な戦闘力を手にしていた。
「おいフリーザ、トランクスからさっさとその汚い手を離しやがれ・・・!!」
ベジータが怒りをあらわにしながらフリーザをにらみつける。
そしてそれと同時に、ベジータの髪の毛がもっさりと抜けてゆく。
ストレスは髪によろしくないのだが、この時のベジータはそんなこと知る由もなかった・・・。
フリーザがトランクスを悟空に向かって投げつける。悟空はそれをなんとかキャッチした。
『トランクス選手、じょ・・・場外です・・・。匿名希望選手の勝ち・・・です』
司会者がフリーザのバケモノじみた強さにおびえながら勝者の名をコールする。
しかし息子を半殺しにされたベジータにとっては、もう試合の勝者などどうでもよかった。
「カカロット、まだトランクスはかすかに生きている!そいつを連れてとっとと逃げろっ!!」
突然の言葉にとまどう悟空。
「え・・・?そんなこと言って、ベジータおめえはどうする気なんだ!?」
「さっさと行け!お前達は邪魔だ!みんなそろって死にたいのか!
 オレの髪の毛がちょっとでも残ってるうちにとっとと帰るんだ!!
 ゴチャゴチャ言ってオレをハゲさせたいか?」
いまにもフリーザに飛びかかろうとするベジータ。武道会場は大混乱だ!
ヤムチャも会場までの道に迷ってさりげなく大混乱だが、そんなことはどうでもいい。



第九話「前回のおはなしは>>228-229」

トランクスを半殺しにされ逆上するベジータ!あざ笑うフリーザ!!キモイ天津飯!!!
スーパーサイヤ人になり、ベジータの髪の毛が金色に逆立ってま〜す♪
おや、どうやらいつもよりも逆立ってる髪の量がすくないね?なんて言っちゃダメよ!
そんなこと言ったら次に死ぬのは「あなた」かもしれない・・・
いやがおうにも会場はヒートアップ!乱闘か?乱交か?やっぱり乱交か?

「えーーっ!?なんでオレが棄権者扱いになってるんだよ!」
突然誰かが大きな声で叫んだ。みんながいっせいにその声のした方向を見る。
ヤムチャだ。ヤムチャが部舞台の対戦表を見ながら「なんで?」とか言っている。
『あの〜・・・ヤムチャ選手とノック選手は棄権だとお聞きしましたが』
「いや、棄権なんてしませんよ。そんなこと誰が言ったんですか?」
『あ、はい、餃子選手から・・・。それでは棄権を取り消しておきますね』
「はい、お願いします」
司会者とヤムチャのやりとりをただ呆然と見つめる観客、そして悟空たち。
すっかりベジータも怒りを冷ましたようだ。スーパーサイヤ人化を解く。
「ちっ・・・フリーザ、かならず勝ち上がってこい。オレが試合で叩きのめしてやる!」
「フフ、それはそれは楽しみだね」
そう答えると、フリーザはどこかへ去って行った。ベジータが悟空の方へ振り返る。
「さあカカロット、早くトランクスをデンデとかいう神のところへ連れてってやってくれ」
「ああ、そうしてえんだけど・・・なんかデンデの気がみつからねえんだ」
「何だと!?」
二人は、麻雀で大敗したデンデが精神と時の部屋に軟禁されていることなど知る由もない・・・。


「デンデならこんな傷くらい一発でなおせるのによー。まいったな。
 最近じゃ仙豆もつくってねえらしいし・・・さてどうすっかな」
「しかたない、オレが医務室へ運んでゆく」
ベジータはトランクスをおんぶすると医務室へ向かった。
ベジータがそのドアを開けると、数人の看護士とブルマとブラが先回りして待っていた。
「トランクス大丈夫かしら・・・。ここまで痛めつけるなんてひどいわ!」
泣きながらトランクスの手をにぎりしめるブルマ。
「ああ、きっと大丈夫だ。なんと言ってもこのオレの息子なんだからな。
 フリーザのヤロウ・・・相当ウデをあげてやがった。だがオレがぶっ倒してやる!!」
そう言って拳を握り締めるベジータ。
(しかしヤムチャがあのムードを変えてくれなければ、オレは逆上したまんまで
 関係のない人間までまきこんでムチャクチャにしていただろうな・・・。
 今回ばかりはヤムチャに感謝しなければなるまい。ありがとう、ヤムチャ)
そのころ選手控え室では、ヤムチャと餃子の壮絶な死闘がくりひろげられていた。



ヤムロット伝2 第十話「MajiでKoiする5秒前?」

『えー、さきほど重症を負ったトランクス選手ですが、今のところ命に別状はないようです。
 それでは気を取り直して・・・第四試合、マジュニア選手VSオトコスキー選手!試合始め!!』

向かい合うピッコロとオトコスキー。先にクチを開いたのはオトコスキーの方だ。
「あら、そういえば対戦相手の変更があったのよね。悟天ちゃんと戦うハズだったのに。
 でもいいわ、アナタもなかなかイイ男だしわりとタイプよん。さあかかってらっしゃ〜い」
「フン、悟天が貴様とは絶対に戦いたくないと言うからオレと変更してもらったんだ。
 本来ならそんな変更は無理なんだが、あいにくオレたちはサタンの知り合いなのでな・・・。
 それと一つ言っておくが、オレは男ではない。無性生物だ」
「ふぅんそーなの?でも愛には国境も性別も関係ないのよ。好きという気持ちに変わりはないわ」
「オレは、貴様ら人間たちの言う恋愛というのがよくわからんが・・・。
 しかし貴様は男だろう?男は女を、その・・・ス・・・スキになるんじゃないのか?」
「うふふ、マジュニアちゃんはちょっと頭がカタイようね。きっとすごくウブなのね。
 アタシがアナタの恋愛力を測ってあげようかしら」
「・・・恋愛力?」
オトコスキーはピッコロの方へ歩み寄ると、いきなりピッコロの胸元をさわりだした。
その奇妙な光景に会場ではどよめきが起こる。
「き、貴様いきなり何をするんだッッ!?」
「ここをさわるとその人の持つ恋愛力が測れるのよ。マジュニアちゃんの恋愛力は・・・
 わお!すごいじゃない、42000ってトコね。アタシの結婚相手に欲しいくらいだわ・・・」
「な、何なんだいったい・・・・・・」
「ちなみにアタシの恋愛力は530000よん。
 もちろん本気でアナタを誘惑するつもりはないからご心配なく。
 あ、そうだ!左手だけでアナタを堕としてあげようか?」
「ほ、ほざけーーーっ!!」
ピッコロは胸元をさわっているオトコスキーの左手を振り払おうとした。
しかしあまりにも心地よすぎて、上手く振り払うことができなかった。
「42000じゃやはりその程度でしょうね・・・」
ピッコロの緑の頬がピンク色に染まっていく。


(バ・・・バカな・・・!このオレがドキドキして一歩も動けないとは・・・!
 もしかしてこれがスキという気持ちなのか?これが恋愛というやつなのか?)
ピッコロはオトコスキーの手を握り締めると大きな声でこう叫んだ。
「お、オレとケッコンしてくれぇーっ!!」
「いいわよ♪」

『おーーーーっと!!なんとマジュニア選手とオトコスキー選手が結婚してしまいましたーー!!』
思いがけない展開にずっこける悟飯たち。会場からは拍手と笑い声が起こる。
「おい、あんまりくっつくなよ」
「夫婦ってこういうもんなのよ」
ピッコロとオトコスキーはよりそい、そして支えあいながら武道会場を後にした・・・。

そういえばヤムチャのことすっかり忘れてた。



第十一話「ヤムチャ、敗れる」

『マジュニア選手VSオトコスキー選手の試合は、
 二人がどこかに行ってしまったため勝者ナシとさせていただきます!!
 では第五試合、孫悟空選手VS孫悟天選手ーーーー!!』

「ちぇっなんか調子狂っちまったなあ・・・」
そうつぶやきながら試合場にあがる悟空。続いて悟天も試合場にあがった。
「あれ?悟天、おめえめずらしくやる気まんまんな顔してるじゃねえか」
「うん、ボクが勝ち残ってトランクス君のカタキを討つんだ!
 あのフリーザってやつ絶対許さないもん!!」

『孫悟空選手はこの大会で優勝したこともある、超本格派の武道家です。
 一方、孫悟天選手はそのお子さんでありこちらもこの大会の少年の部で準優勝をかざった実力者。
 ハイレベルな試合が期待できそうです。それでは、試合始めーーーーーーーーっっっっ!!』

一方、選手控え室ではヤムチャと餃子がすさまじい殺し合いを展開していた。
「なんでオレを勝手に棄権にしてるんだよこのギョウザーー!狼牙風々拳ッッッ!!」
「うるさい、ギョウザっていうな!どどんっ!どどんっ!!どどんっ!!!」
「いてぇっいてっいてててて!!やめ、やめろ!!!くそぉ、操気弾ーーー!!」
他の選手たちはみな試合場のそばで観戦してるため、控え室には現在この二人しかいない。
床は、二人の血とベジータの髪の毛で散らかっている。まさに地獄絵図である。
「こんなとこで使いたくなかったけど・・・ボクのとっておきの技を見せてやる!
 天さんとのきびしい修行で習得したびっくりどどん波を!!」
「なに、びっくりどどん波だと?なんだ、餃子の表情がだんだんかわってゆ・・・
 うわぁぁぁぁぁぁぁァーーーーーーーーっっ!!」

悟空と悟天の人間離れした戦いにヒートアップする観客たち。
「かめかめ波〜!!」
悟天が巨大なかめはめ波を放つ。それを真正面から受け止める悟空。
どーん!!爆音とともにすさまじい煙幕がたちのぼる。
「はぁ・・・はぁ・・・。か、勝ったかな?」
悟天が勝利を確信した次の瞬間、煙幕の中から悟空が猛スピードでつっこんで来た。
「もらったーーーっ!」
強烈なキックが悟天の腹部に叩きこまれる。そのまま場外まで吹っ飛ぶ悟天。
『勝負ありーーーーっ!孫悟空選手、二回戦進出です!!』
わきおこる大歓声。悟空は場外でうずくまっている悟天のもとへ歩み寄った。
「いい試合だったぞ、悟天。さあ、オラの手につかまれ」
そう言って悟空は手を差し伸べた。しかし悟天は動かない。
「どうした?もしかしてさっきの蹴りがそんなに痛かったのか?」
返事がない。よく見ると、悟天が小刻みに震えている。どうやら悔しくて泣いているようだ。
(もっともっと強くなれ悟天!その悔しさを忘れなければ、いつかオラを超える日が来る・・・!)
善戦した悟天に、会場から惜しみない拍手がおくられた。

『さあ第六試合、ミスター・ブウ選手VS餃子選手です!!』
司会者のアナウンスがされるが、餃子がいっこうに現れない。
『おや?餃子選手はトイレにでも行ってるんでしょうか?
 まさか控え室で昼寝でもしてたりして・・・あ、来ました!』
餃子が試合場に姿を現す。しかし全身血まみれである。
『あの・・・餃子選手大丈夫ですか?もしかしてそれ大ケガなんじゃ・・・』
「だいじょうぶ。これボクの血じゃなくて、ヤムチャの返り血だから」
『そ、そうですか・・・。じゃあ、試合始めーーーーーっっっ!!!』

一方、控え室ではヤムチャが血まみれで横たわっていた。
「うぅ・・・びっくりどどん波恐るべし・・・・・・ぐふっ!」



第十二話「ぎょうざの秘策」

ブウと餃子の試合が始まった。まずは小手調べ、といった具合にブウが肉弾戦をしかける。
しかし餃子はその攻撃を上手くさばくと、ブウの顔面に渾身の力をこめたパンチを浴びせた。
ブウは場外寸前まで吹っ飛んだが、体勢を立て直してふみとどまった。
「おまえなかなか強いなー!サタンからは手加減しろって言われてるけど、本気出そっと」
「じょ、冗談じゃない、本気出されたらボク死ぬ・・・。こうなったら仕方ない」
餃子は一息つくと、右手の人差し指を口元にかまえた。
「まさかあの技は・・・!?やめるんだ餃子、寿命を縮めるぞーーー!!」
試合を見ていた天津飯が急に大声で叫びだす。
天津飯の言葉が聞こえているのかいないのか、餃子はその指をあさっての方向へ向けてこう言った。
「ブウ!あっちの方向にずっと行くと、とってもおいしいお菓子があるよ!!」
「え、ホントか?」
ブウは試合そっちのけで、嬉しそうに餃子の指差す方へ飛んで行った。
ポカーンとする観客たち。
「違った、びっくりどどん波じゃない!よい子だまし拳だ!!」
天津飯はそっと胸をなでおろした。
『な・・・なんとミスター・ブウ選手、どっかへ行ってしまいました!!
 試合放棄とみなし、この勝負は餃子選手の勝ちとさせていただきます!!
 ミスター・サタンの一番弟子、まさかの一回戦敗退です!!』


少年の詩(THE BLUE HEARTS)

プーアル、ブルマ お早ようございます 今日は何から始めよう
原稿の上のインクこぼしたら 鳥山の声が聞こえてくるかな
1.2.3.4. 5つ数えて 操気弾が撃てたよ
技を出しても 足がおぼつかない
オオカミの牙を 真似てるだけじゃ

別にグレてる訳じゃないんだ
ただこのままじゃいけないってことに
気付いただけさ
そしてサイバイマンと死んでた

僕やっぱりゆうきが足りない 卑猥な言葉が言えない
新技はいつでもクソッタレだけど 僕だってちゃんと考えてるんだ
どうにもならないことなんて どうにでもなっていい事
界王様は僕を 鍛えちゃいるけど
それほど大切な出番はなかった

誰の事も恨んじゃいないよ ただ額のとこに目がでてるような
バカにはなりたくない
そしてサイバイマンと死んでた

ヤムチャの命は風に消されても ラララ………
誰も見ちゃいない

そしてサイバイマンと死んでた

そして!
18号がオレの女になったらいいのになぁ


「い・・・い・・・淫乱肉奴隷ーーーーーー!!!」
ガバッ!ヤムチャは急に跳ね起きた。
ここはヤムチャ以外誰もいない控え室。まわりはゴチャゴチャに散らかっている。
「な、なんだ・・・夢か」
ふと、ヤムチャは自分が固く握り締めてるモノに気がついた。
「これは・・・髪の毛?もしかしてどっかのカワイ子ちゃんのかもしれない。もらっておこう」
そう言うとそのベジータの髪の毛を足にぐるぐるまいた。ウットリするヤムチャ。
「さあて、いまは誰の試合中なんだ?ちょっと見に行ってみるか」
ヤムチャは控え室を出て、薄暗い廊下を歩いて行く。やがて、外の光が見えてきた。
なんだか外が騒がしいようだ・・・光が近づくにつれてやかましさが増してゆく。
「い、いったい何の騒ぎだ?」
ビビリながらヤムチャが廊下の外に出るといきなりどこかから空き缶が飛んできた。
避けれずに顔面に直撃し、血ヘドをご披露するヤムチャ。

―――天下一武道会場はまさに大混乱となっていた。
ミスター・ブウのファンたちが試合結果にブチ切れて暴動を起こし始めたのだ。
激しいブーイング、飛びかう空き缶、殴り合いの喧嘩・・・
特に餃子に対しての攻撃はすさまじいものがあった。
観客たちに食べ物や飲み物を投げつけられ、餃子はもう顔も服もグチャグチャだ。
暴動は他の観客たちや選手たちをまきこんでどんどんエスカレートしてゆく。
必死にみんなをなだめる悟空と悟天、楽しそうに笑っているパン、
どうしたらいいかわからずとまどっているキラーノとウーブ、
びっくりどどん波で応戦する餃子、金属バットで迫害される天津飯・・・
悟飯やクリリンたちも必死に暴動を食い止めようと頑張っている。
司会者はすでにお手上げ状態だ。
マジギレしたヤムチャは司会者からマイクを奪うと、ありったけのデカイ声でこう叫んだ。
『てめーら皆殺しだぁーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!』



第十三話「ヤムチャVS観客」

あらすじ:天下一武道会一回戦第六試合・・・
ミスター・ブウVS餃子は、奇策を使った餃子が勝利をおさめた。
が、試合結果にブチ切れたミスター・ブウのファンたちが暴動を起こす。
大会出場選手や関係ない観客まで巻き込み、会場はもう大混乱!!
観客に空き缶をぶつけられてムカついたヤムチャは、司会者のマイクを奪ってこう叫んだ。
『おまえらーーーーーー!!!とにかく落ち着けっつぅの!!』


突然のヤムチャの叫び声に、一瞬しーんと静まり返る会場。
調子に乗ったヤムチャはさらにマイクアピールを続ける。
『あーみんな今日はオレのライブのために集まってくれてどうもありがとう。
 いまから歌う曲が、世界中の人たちのこころに届いて欲しいってマジで思うぜ・・・!
 それじゃあみんな聞いてくれ!曲目は、どすこい足元GENKAIアワー!』
死ね!と言わんばかりにまわりの観客席から空き缶やら食べ物が飛んできてヤムチャに命中する。
『いってぇーー!!やめろっ空き缶を投げつけるんじゃない!いてえっつーの!
 ぐはっ!お、おい、いまさっき腐ったみかんぶつけやがったの誰だ!?殺すぞ!!』

もはやヤムチャVSその他全員という状況になっていた。
観客に便乗して、餃子もさりげなくウンコとか投げつけている。
色んなモノを頭からお留守な足元までまんべんなくぶつけられ、もはや意識がトびそうなヤムチャ。
(や、やばい、しゃれにならん・・・うわっウンコ飛んできた!くそぉ、いったいどうすれば・・・)
悩めるヤムチャに、次の瞬間ある考えが浮かんだ。
(そうかっ!目には目を、ウンコにはウンコをなんだ!!)
無我の境地に達するヤムチャ。
結局のところ何の解決策もなく、さらなる窮地に追い詰められる・・・。


ヤムチャが殺られているスキに司会者は予備のマイクを取り出して、
キラーノとウーブを武舞台へ促した。
『そ、それでは第七試合、キラーノ選手VSウーブ選手始めーーーー!!!』
この暴動の中、ドサクサにまぎれて無理矢理試合を進行しようとする司会者。
「プロね・・・」ブルマは驚嘆の声をもらした。

「誰か助けて・・・」一方のヤムチャもパンツにシミをもらしていた。
テンションのあがりすぎた餃子はもう夢中でどどん波を撃ちまくっている。
悟空たちが必死にみんなを説得しているものの、暴動はますますヒートアップする。
「こりゃどうにもなんねえな・・・」
悟空があきらめの言葉をクチにしたそのとき・・・!

どっかーーーーーーーん!!

急にものすごい轟音が鳴り響いた。誰もがその音のした方角に振り返る。
・・・武舞台である。その中心にいるのは、まだ幼い少年。ウーブだ。
武舞台の一部がすさまじいくらいえぐれている。
そして白目をむいたキラーノが横たわっていた。
『・・・え〜っと、あ、ちゃ、ちゃんと息があるみたいです。
 こ、殺してはいませんので、ウーブ選手の勝利です!!』

「い・・・いったい何が起こったんだ?おれ試合見てなかった・・・」
「私は見てたよ。あのウーブって子がキラーノを吹っ飛ばしたんだよ」
「いや・・・でもさっきの音はハンパじゃなかったぞ」
「バケモノか?あのガキは・・・」
観客たちの注意は完全にウーブの方へ向けられた。
さっきまでの暴動のことなどもう忘れ去っている。
「あのウーブって子供、やっぱオラの思ったとおりの強さだ」
嬉しそうな悟空。
(やばいオレ目立ってる・・・。さっきは暴動中だったから大丈夫だったけど、
 こんなたくさんの観客に試合見られてたら緊張するだろうなぁ)
ウーブは恥ずかしそうに選手控え室に戻った。

『さあ、では第八試合!一回戦最後の試合です!パン選手VSヤムチャ選手ーー!!』
しかしヤムチャはウンコまみれで気絶中だ。



第十四話「ヤムチャ、マンをジして登場」

ウーブのおかげでどうにか暴動も収まり、次の試合で一回戦の組み合わせが全て終了する。
なお、二回戦ですでに決定している組み合わせは
第一試合 天津飯VSベジータ
第二試合 匿名希望不戦勝(マジュニアとオトコスキーが試合放棄のため)
第三試合 孫悟空VS餃子
である。次の試合のパンVSヤムチャの勝者が二回戦第四試合でウーブと激突することになる。

しかしヤムチャは暴動にまきこまれてケガを負っていた(半分以上は餃子のせい)ため、
場内整備もかねて一時間の休憩時間がもうけられることとなった。
武道会係員の人たちにタンカで医務室へ運ばれるヤムチャ。
ガチャッ。医務室のドアを開けるとトランクスが治療を受けていた。
ベジータたちもつきそっている。
「治療班、悪いけどこの人もお願いします!」
「またケガ人か!?わかった、任せてくれ」
ヤムチャはベッドに寝かされ、治療を受ける。隣のベッドにはノックもいる。
不思議そうなカオをするベジータ。
「おい係員、さっき外が騒がしかったが何があったんだ?」
「暴動がおきてたんですよ。もう我々もどうしていいかあたふたしていたところ、
 そこにいるヤムチャさんが体をはって止めようとしてくれたんです」
「そうか。ヤムチャが・・・・・・」
ベジータはベッドのヤムチャの方へ振り向くと、かすかな笑顔を浮かべた。
やすらかな顔で眠っているヤムチャ。


――――ヤムチャの回想シーン。
ある日ヤムチャと悟空は修行の休憩がてら、界王神界に遊びにきていた。
老界王神と久々に会う。
「久しぶりだなー界王神さま!オラのこと覚えてっか?」
「おお、孫悟空じゃろ。久しぶりじゃな、忘れるわけがなかろう」
「界王神さま、オレのこともちゃんと覚えてくれてますか?」
「ああ・・・え〜っと、その声はアムロ=レイじゃろ?」
「うわぁ惜しい・・・ヤムチャです」
魔人ブウ戦の時の話で盛り上がる三人。
「お前らがポタラで合体して魔人ブウを倒してからもう5年にもなるのか・・・。
 ところでヤムチャよ、お前あれからずいぶんウデをあげたようじゃな」
「はい。ドラゴンボールで二人にわかれて以来、毎日悟空と修行してますからね。
 ヤムロットになってみてなんとなく強さのコツもつかんだし、
 魔人ブウとの戦いもかなりの経験になったし。もっと強くなりたいんです。
 いまも重い胴着を着てるけど、もうこのくらいの重さじゃ満足できない!」
「そうか、じゃあわしがもっと重いものを作ってやろうか?
 目に見えず、触れることもできず、ただ重さだけは感じる不思議な胴着じゃ」 
「えっそんなんできるんですか?ぜひお願いします!!」
「わしの超能力ならちょちょいのちょいじゃ。ちょっと待っとれよ」
そう言うと老界王神はヤムチャのまわりで踊りだした。
ポカーンとするヤムチャと悟空。
「な・・・何してるんですか?」
「しっ!静かに!!大切な儀式なのだ。まず儀式で8時間かかる。悟空にも作ってやろうか?」
「いや・・・遠慮しとく」


50時間後、全ての儀式が完了した。
ぐうたら寝ていたヤムチャは、急に自分の体が重くなって目覚めた。
「うわっ!!なんだこれ、すごい重たい・・・!!」
「フフン、すごいじゃろう。その超能力を解く方法はただ一つ。
 合言葉を言いながら、気を開放するのじゃ。その合言葉は自分で好きな言葉に決めていいぞぃ」
「合言葉っすか?じゃあ○○○でいいや。ってかすごく重いのでもう解いていいですか?」
「あほか」

――――――夢から目覚めると、ヤムチャは医務室のベッドに横たわっていた。

「あれ?なんでオレはこんなとこにいるんだ・・・?」
部屋を見回すと、ベジータたちや医者や看護婦がいる。
「あ、お目覚めになりましたか?暴動に巻き込まれて気を失ってたんですよ。
 まだケガが完治していませんし、試合までまだ20分ほど休憩時間があるので
 ゆっくり休んでいってくださいね」
看護婦が優しく話しかけてくれる。
「ここじゃゆっくり休めないよ・・・」
「え・・・?」
「キミの熱視線のせいさ」
「はぁ・・・」
「もう行くよ。ファンのみんなを待たせるのはオレのプロ意識が許さないから・・・」
「・・・・・・(この人アタマでも打ったのかしら)」
「じゃ、行って来る!バイバイマイハニー!」
「行ってらっしゃい(死ね!)」
医務室を飛び出して武舞台へ向かうヤムチャ。
(ケガをおしてファンのために戦う美形武道家を演出してやったぜ。
 これであの看護婦はもうオレにウットリだな)
ヤムチャは大きな勘違いをしていた。
一方、そのヤムチャと看護婦とのやりとりを見ていたベジータは笑顔を浮かべていた。
(ケガをしているにも関わらず休憩時間を削って戦うとは・・・さすがだなヤムチャ!)

『みなさんお待たせしました!!一回戦第八試合、パン選手VSヤムチャ選手ーーーーー!!』



第十五話「ヤムチャ、行っきまーす!!」

「ヤムチャおじちゃん、おてやわらかにね」
「甘えるな、勝負の世界は厳しいんだ!・・・こちらこそおてやわらかにお願いします」

『ではパン選手VSヤムチャ選手、試合を始めてください!!』

お互い見つめあったまま動かないパンとヤムチャ。
「ヤムチャおじちゃんどうしたの?そっちからかかってきていいよ」
「おいおいオレを見くびるな、そんな優しさはいらない!・・・じゃあ仕掛けさせてもらうぜ!」
ヤムチャが狼牙風々拳の構えをとる。
「いくぜ、はいやーーーー!!はい、はい、オウ〜!」
スカッ、スカッ。ヤムチャの怒涛の攻撃を、全く表情も変えずにかわしていくパン。
「ヤムチャおじちゃんって、思ったより弱いんだね」
「生意気だぞお前!」
勢いにまかせて飛びかかるヤムチャ。
パンはうまくタイミングをあわせると、ヤムチャの膝にローキックを放つ。
バキョッ!インパクトの瞬間、なんかなんか嫌な音がした。
ヤムチャはこらえきれずその場に倒れこむ。
「ふぎゃぁぁぁぁぁーーーーーーっっっっ!!!足が・・・足がぁーーー!!」
「あ、ごめんヤムチャおじさん!足元があまりにもお留守だったからつい・・・」
子供が大人を子供扱いする光景に、観客席からは爆笑が起こる。

『カウントをとります!ワン・・・ツー・・・スリー・・・フォー・・・あ、ヤムチャ選手立ち上がりました!』


場内からわーーーーーっと歓声があがる。そして拍手のうず。
(う・・・嬉しくない・・・)
「ヤムチャおじさん、もう降参したら?」
「うるさい、まだだ!まだメインカメラをやられただけだ!!」
ヤムチャは気をためて手のひらの上に玉をつくり、パンに投げつける!
かなりの至近距離からの攻撃だったが、パンは上半身をそらすだけで軽くかわした。
「そ、そうくると思ったぜ!(え?あれ避けちゃうの?)」
ヤムチャは必死に指を動かし、気の玉を操作する。
「はっはー!この高速で動く繰気弾(フィンファンネル)の動きが見えるかー!?」
「スキだらけだよ」
どーーーーーん!パンのかめはめ波がヤムチャに炸裂した音である。
「あがが・・・な・・・なんでやねん」
再び倒れこむヤムチャ。

『カウントワン・・・ツー・・・スリー・・・』

(やばい、体が動かん・・・くっそ〜まさかまた一回戦負けかよ!全然歯がたたねえし。
 子供に負けるなんて恥さらしもいいとこだぜ!!・・・ん?)
ふと、ヤムチャは繰気弾がまだ消えていないことに気がついた。
都合のいいことに繰気弾があるのはパンの後方。パンは気づいていないようだ。
(しめた・・・!こうなりゃイチかバチかやってやるぜ)
ヤムチャは右手をグッと握り締めた。
どかーーーっっん!繰気弾が音をたてて爆発した!
びっくりして後ろを振り返るパン。
(今だっ!!)
ヤムチャは渾身の力をこめて立ち上がると、すぐさまパンにかめはめ波を放つ。
「え・・・?きゃぁーーー!!」
注意をそがれていたパンは背中からまともに喰らってしまい、場外へ吹っ飛んだ。


『ヤムチャ選手立ち上がりました!そして逆にパン選手は場外!!
 この勝負、ヤムチャ選手の勝利ーーーーーーー!!!』

突如の逆転劇に、大歓声が巻き起こる。
(なんとか勝てたか。初の一回戦突破は嬉しいけど、やっぱかなり疲れたな・・・)
ヤムチャは場外のパンにかけよると、おんぶしてやった。
「すまん、痛かったか?いま医務室に連れてってやろう」
「ヤムチャおじさんのバカ。あんな勝ち方ズルイもん!」
「ま、まあそう言うなよ。後でアイスクリーム買ってやるから」
「ホント?やったー!」
パンは知らない。
ヤムチャがとてつもなく大きなハンデを背負っていたことを。
老界王神に与えられた「見えない重り」をつけたまま戦っていたことを。
そして悟空も知らない。
ヤムチャが「見えない重り」を解除しない理由を。
そして誰もが知らない。
隠されたヤムチャの本当の実力を―――。


天下一武道会本戦二回戦組み合わせ

第一試合 天津飯VSベジータ
第二試合 匿名希望不戦勝(マジュニアとオトコスキーが試合放棄のため)
第三試合 孫悟空VS餃子
第四試合 ウーブVSヤムチャ



第十六話「特攻!!お笑い戦士・天津飯」

オレの名前は天津飯――――地球人の中でもトップクラスの戦闘力を持っている。
多彩な技を持ち、ただひたすら強さを求めて修行する生粋の武道家・・・と思われがちだ。
だが違う。そうじゃない。
オレは生粋のお笑い芸人。そう、人を笑わすのが大好きなんだ。
ところがオレの周りのやつらときたらギャグセンスのないボンクラばっかり。
なんなんだよあいつら。人がせっかくボケてんのに、誰もつっこんでこねえ。
ちゃんとつっこめよ!!誰か「お前オデコに目があるぞ」ってつっこめよ!!
おまえら普通に考えてみろ。オデコに目がついてる人間がいるわけねえだろーが。
まったく、オレの体をはったギャグがわからないとはほんとセンスねえな。
それどころか連中ときたら、「天津飯って視力いいよな」とか言ってくる。
おまえらアホか。視力がいいかだと?そんなもんよくねえよ。
ってゆーかオデコの目、あれ本当は何も見えてないから。
それと、オレは界王みたいに低レベルなダジャレとかで笑うやつは大嫌いだ。
まあオレが認めるほどのギャグセンスの持ち主といえば、餃子とヤムチャくらいのもんかな。
餃子とはコンビを組んでもうかなりになるが、あいつは本当におもしろい。
ナッパの背中で自爆した時なんか、そりゃあもう笑いをこらえるのに必死だったさ。
「いや、全然ナッパに効いてないから!」って思わずつっこみそうになったほどだ。
ヤムチャもいい。サイバイマンに殺されるっていうオチはかなりのハイレベルだった。
何もわかってないクリリンは「ヤムチャさんはきっとイヤな予感がしてたんだ・・・」とか
いらんフォローしてたがな。あれのせいでヤムチャのボケが封殺されちまった。
・・・確かにつっこみっていうものは難しいもんだ。
一歩間違えば、ボケそのものを死なせてしまいかねない。
だがオレは今日、なかなかいいつっこみをする男に出会った。
そいつの名はノック。初めてオレの三つ目につっこんでくれた男だ。(※第五話参照)
まだまだ荒削りだが、訓練すればかなりの芸人になる。
―――こいつは楽しみになってきたぜ!


『それでは二回戦に移ります!第一試合、天津飯選手VSベジータ選手ーー!!
 両選手は武舞台にあがってください!!』

天津飯がまず武舞台にあがる。
しばらくして、ベジータが医務室から戻り武舞台にあがった。
ベジータのことをキッとにらみつける天津飯。
「何か言いたそうだな」
「当たり前だ。なにしろ俺は貴様らに殺されたのでな。一緒に住んでいたヤムチャの気がしれんぜ」
「フン・・・」
二人の間に流れる険悪なムード。
この時天津飯は必死に考えていた。どうすればこの重い空気を笑いに変えられるのかを―――。

『それでは、試合始めーーーーーー!!』

「せめてものハンデだ。超サイヤ人にはならないでいてやろう」
「なめやがって・・・後悔するなよベジータ」
構える二人。しかしなかなか自分から動こうとはしない。まずは様子見、といったところか。
しかしいま天津飯は全然違うことを考えていた。
(これだけ多くの観客をドッカンドッカン笑わせたらかなり気持ちいいだろうな・・・。
 よし、やるぞ!笑いの神よ、おりてきてくれ!!)
意を決すると、天津飯はベジータの方へ突進した。
「とりゃぁぁぁぁぁぁーーーーーっっっ!!」
「フン、そんな攻撃返り討ちにしてや・・・」
「排球拳、いっくわよーーーーーー!!!」
「・・・はァ!?」
「ワン、ツー、アターーック!!!」
「う、うわぁーーーっ!!」


意表をつかれたベジータは、技をモロに喰らい場外寸前まですっとんだ。
観客席からわーーーっと歓声がわきおこる。
「ちっ・・・なかなかの技だな。だが今のでキサマは完全にオレを怒らせたぞ」
焦る天津飯。
(あ、あれ・・・?誰も笑ってないぞ。
 しまった、ギャグのレベルが高すぎて誰もついていけなかったか!?)
「何を考え事してやがる。喰らえっ!!」
「!!?し、しまったぁ!!」
次の瞬間、ベジータのパンチで吹き飛ぶ天津飯。
さらにベジータは天津飯に速攻で追いつき、上から強烈な蹴りを浴びせる!
どーーーーん!大きな音をたてて天津飯は地面に叩きつけられた。
「ぐぉ・・・っく・・・・・・!!」
「勝負あったな。降参しろ」
審判によってカウントがとられ始める。
ベジータは激しい運動をしたせいで、髪の毛が数百本したたり落ちていた。
天津飯はそれを見逃さなかった。

(そうか、その手があったか!笑いの神はまだオレを見捨てちゃぁいない!!)

笑いへの執念でなんとかたちあがる天津飯。
「な、何!?」

『なんと!!天津飯選手立ち上がりましたーーーー!!!』

「喰らえベジータ、太陽拳ーーーーー!!」
ピカーッ!天津飯から眩しい光が発せられ、ベジータや観客たちの目がくらむ!
突然の太陽拳にビックリした反動でベジータの髪の毛が80本抜けた。
その隙に天津飯は舞空術でベジータの真上に移動する。
「狙いはベジータの頭部か・・・。いくぞ、新気功砲!!」
ズンッ!!強烈な気の圧力がベジータにおしかかる!
そして1528本の髪の毛が宙を舞った。ベジータ自身もダメージを受けている。
「お・・・おのれぇ〜・・・!」
「はっ!はっ!はっ!はーーーっ!!」
ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!!
1298本!2867本!1881本!1990本!どんどん散ってゆくベジータの髪。
もはや天津飯は敵なし状態だ。
「貴様の髪の毛一本たりともこの世に残さぬ!!はーーーーーっ!!!」
ズンッ!!3209本の髪の毛が抜け落ちたところで天津飯は力尽きて武舞台に落ちた。
かなりのダメージを受けたが、なんとか立ち上がるベジータ。天津飯のカウントがとられる。

『ナイン・・・テン!テンカウントダウンによりベジータ選手の勝利です!!』

サングラスで太陽拳をしのいだ司会者によって勝者がコールされる。
観客たちの視力が回復したとき、武舞台には可哀相なくらいに頭を禿げ散らかしたベジータがいた。
どーーっと巻き起こる大爆笑。

(やった・・・オレが笑わせたんだ・・・オレが大観衆を・・・!)
ガクッ、天津飯は気を失った。だがその表情は安らかであった。
それとは対照的にベジータの表情は怒りと憎しみにあふれていた。
髪の毛はチリヂリになり、体は大ダメージを受け、衣服もボロボロである。
ベジータは天津飯のもとへのっそりと歩み寄った。
「このクソッタレ・・・!よくも・・・よくも・・・・・・!!」
ベジータが天津飯の首を持ち上げた。
焦る司会者。会場内にどよめきがおこる。
ベジータは髪の毛を失った怒りで我を忘れている。殺してもおかしくない。
「やめてベジータ!」
声のした方を振り向くと、餃子がベジータに人差し指を向けて立っている。
「なんだ、このオレとやろうってのか?ダメージは受けていてもキサマごとき・・・ん?」
ベジータは自分の身に起きた異変に気づいた。
(バ、バカな・・・あのチビの目を見た瞬間、体が動かなく・・・!?)
「びっくりどどん波!!」
餃子の指から光線が放たれ、ベジータは全く避けることができず観客席まで吹っ飛んだ。
そしてすかさず悟空たちがベジータをなだめに行く。
そのおかげでなんとかベジータも我に戻ったようだ。
「・・・スマン、許せ。アタマに血がのぼってしまっていたんだ」
「ああ、わかってるさ。気にするな・・・プッ!・・・フックック・・・!」
ベジータのアタマをチラチラ見て、必死に笑いをこらえているヤムチャ。
ベジータは、天津飯をタンカに乗せる手伝いをしている餃子の方へ目をやっていた。
(それのしてもあのチビ・・・不思議な技を使いやがるぜ)

次の対戦 孫悟空VS餃子



第十七話「猛スピードぎょうざ」

まちの人ごみ 肩がぶつかって ひとりぼっち――――。
果てない草原 風がビュビュンと ひとりぼっち ――――。
どっちだろう? 泣きたくなる場所は・・・。

「泣きたいのはこっちだぜ!」
ベジータは果てない荒野になったアタマを触りながらなげいた。
天津飯戦で思わぬ大ダメージを負ったので、治療のためひとり医務室へ向かう。
医務室のドアを開けると、中にいた人たちの視線がいっせいにベジータに集まった。
「ベ、ベジータ大丈夫?」
心配するブルマをよそに、医者につめよるベジータ。
「次のフリーザ戦はできるだけ全快で戦いたいんだ。急いで治療しろ」
「いやぁ〜・・・これはさすがに治りませんね。あきらめてカツラになさった方が・・・」
「髪じゃない!!体を治療しろと言ってるんだ」
「ああ、そっちならできるだけの事はしましょう」
ちっ、髪は治せないのか・・・ベジータはひそかにへこんだ。

一方、天下一武道会は順調に進行していた。
第二試合はマジュニアとオトコスキーが失踪したので匿名希望の不戦勝となった。
そして第三試合・・・すでに悟空と餃子は武舞台に上がっている。

『それでは両選手、試合を始めてくださーーい!』


試合開始と同時に猛スピードで突っ込む餃子。
「お、オラと接近戦やろうってのか?望むとこだ!」
ズガガガガ!餃子の激しい連続攻撃が繰り出される。
悟空はそれを受け止めたり、反撃して餃子に応じた。
「そういやオラたちが戦うのって初めてだよなー?」
「うんこ」
悟空が徐々に攻撃のスピードをあげていく。
だんだん動きについていけなくなり、何発もパンチを浴びる餃子。
「ちゃっ!!」
悟空が掛け声とともに気合で衝撃波のようなものを放った。
その爆風で餃子は吹き飛ばされてしまうがなんとか場外寸前でとどまり、
体勢をたてなおしたあと前方をキッとにらむ。しかし・・・
「あれ、いない!もしかして上?」
上空を見上げると、なんとかめはめ波がこちらへ迫ってきている。
「あ、危ない!」
必死で走って逃げる餃子・・・しかし突然目の前に悟空が現れた!
「い!?」
「へっへ〜わりぃな、オラ瞬間移動使えっから」
悟空は餃子のアタマをつかんで、かめはめ波の方へぶん投げた。
どっかーーーーーん!!爆発が起こり、餃子はあさっての方向にはじき飛ばされる。

『お〜っと餃子選手きりもみ状態です!場外により、孫悟空選手の勝・・・』

ピタッ!餃子が舞空術で上空に停止する。


『なんと、餃子選手ふんばりました!試合続行です!!』
わーーーっと場内大歓声。
意外なことに、舞空術・気功波などの常識外な技にも観客は素直に喜んでくれているようだ。

フラフラになりながらもリング内に戻る餃子。
「へ〜え、あの攻撃を耐えるなんておめえもかなり修行したんだなぁ」
「うんち。いまからとっておきの技をみせてあげる」
「とっておきの技・・・?もしかしてまた自爆ってやつか?」
「違う。あれはボクにもお前にも危険すぎる。・・・てゆうか死ぬじゃん。
 いまから見せる技は自爆ほどの破壊力はないけど・・・・・・絶対よけられない!」
餃子がどどん波の構えをとり、ふと、表情がなんとなく恐ろしくなった。
「なんだ、それってどどん波じゃねえのか?その技じゃオラは倒せねえぞ。
 いくらそんな怖いカオをしてみたって・・・・・・え?!」
急に悟空のセリフと体がピタッと止まる。
(な・・・なんだこれ?体が動かねえ!しかも気を練ることもできねえぞ!?)

「びっくりどどん波!!」


どーーん!!今度は逆に悟空が場外方向へ吹き飛ばされる。
(やば、このままじゃ場外負けになっちまう!!・・・ん?しめた、体が動くぞ!)
すかさず舞空術でリング内に戻る悟空。しかしすぐその場にしゃがみこんでしまう。
さきほどのダメージが効いているようだ。

『な・・・なんという戦いでしょう!形成逆転で今度は餃子選手が押しています!!』

「お、おめえとんでもねえ技使うなぁ。いまのはかなりヒヤッとしたぞ」
「いまの一撃は手加減したけど、本気でやればきっと命にかかわる。素直に降参しろ」
「じょ・・・冗談じゃねえ、降参なんかするもんか。それにオラ、さっきの技の弱点を2つも発見したぞ」
「え!?」

武道会施設の屋根からしあいを見守るフリーザ。
「この勝負・・・ソンゴクウの勝ちだな」


第十八話「ぎょうざか?チャオズか?」

「さっきの技はもう通じねえぞ。2つも弱点を発見したからな」
「弱点?ウ、ウソだ!ボクのびっくりどどん波は無敵だ!」

悟空がよろよろと立ち上がる。なぜか目をつぶって・・・
「なんなら言ってやろうか?びっくりどどん波って言ってるけどな・・・その名前フェイクだろ。
 おめえがさっき指から出したのはただのどどん波だ。
 そしてその技の本当の正体は・・・たぶん超能力。いや、催眠術のたぐいかもな。
 視線があった相手を動けないように封じるってモンだろ?
 考えたな餃子、びっくりどどん波って言えば指を出してる時にだけ注意を払うもんな。
 いざって時にはノーモーションで使うつもりだったんだろ? 
 普通に超能力やっても強い相手にはあんま効かねえってんでいろいろ工夫してんだな。
 さすがにサイヤ人も脳とかは鍛えられねえからな・・・。
 でも、目をつぶってりゃあその技は効かねえ。これが第一の弱点だ」
ギクリンコッ!餃子の動きが露骨にギクシャクする。

「なんと・・・あやつ、あのたった一瞬でそこまで見抜いたというのか」
悟空のセンスに改めて驚かされる亀仙人。


一方の餃子は冷や汗でグッショリだ。
「な・・・なんでばれた?」
「ガキの頃に似たような超能力を使うヤツと戦ったことがあるからさ。
 さあかかって来いよ。目つぶってたっておめえの動きぐれえ手にとるように分かっぞ」
「ウ、ウソだ、目を閉じたまま戦えるもんか!どどんっ!!」
バシィッ!!悟空は目をつぶったままで餃子のどどん波を軽くはじいた。
「そ・・・そんな!?」
「神様に修行してもらったはずなのに、まだ目に頼ってるなおめえ。
 大切なのは見ることじゃない、空気の流れとかを読むことだ。
 そうすれば相手がどんな動きをしているのかくらいカンタンに分かっぞ。 
 例えば・・・後ろで試合を見てるヤムチャ、右手で鼻クソほじってる」
「え!!?あ、いててっ!ムゴ・・・」
焦ったヤムチャは指を鼻にズボッと突き刺してしまった。

悟空のすごさに、司会者や観客たちは愕然としている。
一流の戦士にとって空気を読むのは基本なのだが、ついつい目に頼ってしまいがちだ。
現に、ピッコロやトランクスでさえもセルの太陽拳にしてやられたことがある。
さきほどのベジータも天津飯の太陽拳にやられていた。

「やはり強いな・・・ソンゴクウ。基本がしっかりできている。
 でもボクも地獄で目に頼らない戦い方を覚えたからね、負けないよ」
武道会施設の屋上でニヤリとするフリーザ。

「そして・・・二つ目の弱点が命取りになるんだ」
そう言うと悟空は閉じていた目を開けた。
(あ・・・今ならびっくりどどん波ができる!)
餃子はさっそく悟空と視線を合わせると、目にありったけの催眠波をこめた。
目に力が入ってるため、やけに恐ろしい表情になる餃子・・・
「遅いっっ!!」
猛スピードで突進する悟空。
「し、しまっ・・・」
次の瞬間、餃子は場外まで突き飛ばされていた。

『餃子選手場外!!孫悟空選手、準決勝進出でーーーーす!!』

「おめえらしい失敗だったな、ぎょうざ。
 相手の動きも気も封じて防御力を下げて攻撃するってのはすげえ作戦だったけどよ、
 その技を使おうとしてる間はかなりスキだらけだもんな」
足腰ガクガクしながらもなんとか立ち上がる餃子。
「ボクの完敗だ・・・まさかこんなに早く弱点を見破られるなんて」
「まあな。で、第三の弱点だけど・・・」
「え、まだあるの?!2つって言ってなかった?」
「そうだっけ?じゃあ2つでいいや」

次の対戦 ウーブVSヤムチャ 



第十九話「ヤムチャの失敗」

『いよいよです!!いよいよ次の試合で天下一武道会本戦のベスト4が決まるのです!!
 さあ第二回戦最後の試合、ウーブ選手VSヤムチャ選手―――――っっ!!!』

わーっとわきおこる大歓声。

「君がウーブ君か。よろしくな」
「あ・・・は、はい」
ヤムチャとウーブは握手をかわすと、それぞれ武舞台へあがった。
そのウーブの姿を見た観客たちはざわめき始める。
「おい、あいつだぜ!キラーノのやつを一瞬で倒したカイブツは」
「すごい破壊力だったよな」
「さっきは暴動でちゃんと試合見てなかったから、今度は注目しようよ」
みんなの視線を浴び、ガチガチに緊張するウーブ。
一方、気絶してたせいでウーブの強さを知らないヤムチャは余裕の表情だ。
(こんなガキが相手だとはラッキーだぜ。この試合は楽勝だな)

『それでは、試合を始めてくださいっ!!』

司会者の合図とともに構えをとるヤムチャ。しかしまだぎこちないウーブ。
そんなウーブを見てヤムチャは少しとまどう。
(なんだあのガキもしかして緊張してるのか?
 せっかく遠路はるばる天下一武道会までやって来たんだろうに、
 実力出しきれずに負けてしまったら可哀相だよな・・・。
 よし、じゃあちゃんと本気を出せるようにハッパをかけてやるか)

「おい、こら!さっさときやがれこのイケメンヤロー!」
「え?」
「さっきはみんないたんでクールなナイスガイ演じてたけどよ、ホントはとんでもねえ○○ガイなんだぞオレは!」
「はぁ……」
「てめえなんか…え…と…甘党だ!ぶっとばしてやる」
「………」
「それとも…その……ぶっ殺されて保険金になって家に帰りてえか!」
「そ、それは嫌だ!」
「え…とえ…とロボットのかあちゃんが待ってるぞ!」
「か、かあちゃんはロボットじゃないやい!!」
「じゃあマネキン人形か!やーいやーいマネキン人形か!」
「…………!!」

少しずつ怒り出したウーブ。体全体がワナワナしている。
(よし、あともう一息だぜ)
ヤムチャはウーブの方へ向かってジャンプする。

「おまえのとうちゃんもマネキン人形―――っ!!」

バキィッ!!そのままウーブの顔面にケリを叩き込んでやった。

体勢を立て直し、ヤムチャをキッと睨みつけるウーブ。もうブチギレ状態で、緊張なんか吹っ飛んでいる。
しかしヤムチャはなおも攻撃を続ける。
「おまえのばあちゃんは年甲斐もなくガングロでルーズソックス―――っ!!
 おまえのじいちゃんはスカトロマニア―――っ!!」
ドカッ!!ゴキャッ!!次々に叩き込まれるヤムチャの攻撃。
「おまえのひいばあちゃんは・・・」
そう言いかけたとき、ヤムチャの拳がウーブにつかまれていた。

「かあちゃんたちの悪口を言うな――――――っっっ!!!」

次の瞬間、ヤムチャはとんでもない勢いでぶんなげられていた。
(や、やばいこのままじゃ場外落ちる!!)
ヤムチャは必死で足を武舞台にこすりつけ、摩擦を利用してなんとか場外寸前に踏みとどまる。
その衝撃によりリングはバキバキに割れたり破片が飛び散った。
(な、なんつーバカぢからだよこのガキ!こんなに強かっ・・・・・・え?)
息をつく間もなく、ウーブが突撃してくる。
「ひ、ひぃっ!!」
ヤムチャはとっさに右腕を盾にした。ウーブの拳がうなる。

メキメキッ

「う・・・!」
ヤムチャの顔が歪んだ。

さらにケリによる第二撃。ヤムチャは右腕をかばいながらいったん空中へかわした。
空を飛ぶヤムチャをじっとながめるウーブ。
スリリングな展開に観客の歓声が強くなる。

『すごい攻防を見せてくれます!!やはりこのウーブという少年ただものではありません!!
しかしどうやら空を飛ぶヤムチャ選手には手が出ない様子です!!』

「え、そんなに強いのに空は飛べないのか?そうか、少し安心したぜ・・・」
ヤムチャは一息ついた。そして右腕をおさえる。
「まいったな、ほとんど動かないぜ・・・。回復するまでしばらく空中で待機しとくか」
しかしすぐヤムチャは青ざめた。
ウーブが足を折り曲げてこちらを見据えているのだ。
「まさかここまで飛ぶつもりなのか・・・?と、飛ばなくたっていいでしょ!!!」
なんか涙がでてきた。


第二十話「ヤムチャの爆弾」

あらすじ
第二回戦最後の試合、ウーブVSヤムチャ。
最初は有利に戦うヤムチャだが、悪口にぶちギレたウーブによって右腕を負傷させられる。
ヤムチャは舞空術で逃げるが・・・!?


「せいやぁーっ!!」
かけ声とともに大ジャンプするウーブ。ヤムチャに向かって一直線だ。
「うわーーー!く、来るなぁーーーっ!!」
とっさにヤムチャは左手だけでかめはめ波を撃った。
空中で自由に動けないウーブは避けることができなかった。回転しながら地面に激突するウーブ。
しかしすぐに体勢を立て直すと、空のヤムチャを睨みつける。
kill you・・・ウーブの目はそう言っている。

「あわわわわ・・・こ、殺される・・・!」
ヤムチャは生まれて初めて心の底から震えあがった・・・
真の恐怖と決定的な挫折に・・・
恐ろしさと絶望に尿すら流した・・・
これは16回目のことだった・・・

「えっと確かこんな構えだったかな?」
ウーブはヤムチャを真似て、左手でかめはめ波の構えをとった。
「えっと・・・えっと・・・・・・かめはめ波っ!!」
次の瞬間ウーブの手からかめはめ波が発射され、ヤムチャを襲った!

『なんとぉーーーっ!!ウーブ選手も同じ技を使っているぅーーーっ!!』

「こいつはバケモンか!?一度見ただけで相手の技をコピーしちまいやがった・・・。
 とりあえずこっちも応戦しないとヤバイ!」
ヤムチャはかめはめ波を撃ち返した。
衝突するふたつのかめはめ波。しかしウーブのかめはめ波がどんどん押し返していく。
「だ・・・ダメだ・・・・・やられる・・・!」
負けを確信したその時、ヤムチャの頭に聞き覚えのある声が響いた。

―――――おいおい、あきらめるなんてねえだろヤムチャ!
「何!?こ、この声はまさか・・・」
―――――おめえが全力を出し切ればきっと勝てるさ!
「でも右腕だって負傷してるし、気も半分以下になってしまったんだぜ・・・!」
―――――おめえはこころのどこかで地球へのダメージを考えてるんだ。大丈夫、ダメージはドラゴンボールでなんとかなる!
「・・・・・・ってゆうかさ、おまえ誰だ?」
―――――マイ・ネーム・イズ・餃子!
「おまえかよッッ!!気が散るから邪魔すんなボケッ!!」
―――――餃子の小ネタシリーズ第一弾!あのさあ、最近育毛剤を変えてみたんだけどさ・・・
「うるさい帰れーーーっ!!帰れ帰れーーーーーっっ!!!」

そうこうしてる間にウーブのかめはめ波が目の前までせまって来ている。焦るヤムチャ。
「くそったれ・・・あ、しめた!右腕の感覚が戻ってきたぞ」
さっそくヤムチャは右手に繰気弾をつくり、ウーブの顔面に投げつけた。
ドーン!まともに喰らい、わずかによろめくウーブ。
「いまだ!波ーーーーーーーっ!!」

ヤムチャはありったけの力をかめはめ波にこめ、ウーブのかめはめ波を完全に押し返した。
ドッカーーーーン!!激しい爆発がウーブを巻き込み、辺り一面に煙が覆いかぶさる。
「まだだ、まだこんなもんじゃおまえは倒れないはず。もう一発喰らいやがれ、繰気弾ッ!!」
ヤムチャは煙の中に繰気弾を投げつけた。
しかしまだヤムチャは攻撃の手をゆるめない。両手をクロスさせて地上を見下ろす。
「左手はそえるだけ・・・。ナムさん、技を借りるぜぇっ!天空×字拳ーーーー!!」
急降下するヤムチャ。その両手がウーブの喉のあたりをとらえた。

『煙のせいで見えにくいですが、ウーブ選手が倒れた模様です!
 カウントワン!ツー!スリー!あ、なんと立ち上がりましたーーー!!』

「いてて・・・・・・!くそ、もう許さないぞ!!」
「な、なんてタフな野郎だ。気の使い方さえマスターすればサイヤ人並の強さになるぜ」
ヤムチャはいささかあきれながら指をクイッと上にあげた。
すると突如地面から繰気弾が飛び出し、ウーブのアゴに炸裂した。
フラフラして、その場に倒れこむウーブ。

『・・・エイト!ナイン!テーン!ヤムチャ選手、準決勝進出決定でーーーす!!』

ほっと安堵のため息をつくヤムチャ。
しかしそれもつかの間、ヤムチャはパンツの中の悲惨な状況に気がついた。
「あれ?・・・もらしたのはオシッコだけと思ってたけど。
 どうやらオレはとんでもない爆弾をパンツ抱えてしまったようだ・・・」

準決勝組み合わせ  第一試合 ベジータVS匿名希望  第二試合 孫悟空VSヤムチャ          



第二十一話「ヤムチャ鰤鰤大漁」

『ついに天下一武道会のベスト4が決定しました!!
 二回戦で負ったダメージは大丈夫なのか!?生え際も気になるベジータ選手ーー!!
 会場も静まり返る圧倒的な強さ!最凶・匿名希望選手ーー!!
 いったいどれほどの実力をまだ隠しているんだ!?戦闘センスが光る孫悟空選手ーー!!
 生きてゆくだけで精一杯!番狂わせを演じられるか、ヤムチャ選手ーー!!
 さて、次のベジータ選手VS匿名希望選手の試合を始める前にここで10分間の休憩時間をもうけます。
 トイレに行く際は混雑が予想されるのでご注意下さい』

休憩時間、悟空がヤムチャに話しかけた。
「こっからの戦いはもっとハードになりそうだし、ケガ人の治療のためにデンデの力が必要だ。
 ちょっくら天界のミスター・ポポに逢ってデンデの行方を聞いてくる」
「わかった。オレとの試合までには戻れよな、悟空」
悟空が瞬間移動をしようとかまえたとき、、フリーザが目の前にやってきた。
「ソンゴクウ、いったいどこに行くつもりだい?まさか帰るんじゃないよね」
「いや、ちょっと用事で出かけるだけだ。逃げたりしねえから安心しろ」
その三人のもとへ、応急手当を終えたベジータが姿を現した。
「カカロットの出番はない!やっとキサマと戦えるぜ・・・覚悟しやがれ・・・!」
「フン、相変わらず威勢だけはいいねベジータ。試合が始まったらすぐに大人しくさせてやろう。
 ソンゴクウもちゃんと決勝でかわいがってやるから楽しみにしてなよ」
「・・・ああ」
そう言って悟空が再び瞬間移動のかまえをとった時・・・

バキッ!!

フリーザの足に衝撃が走った。なんとヤムチャがフリーザのスネに蹴りをかましたのだ。

「いないじゃん。いまのハナシじゃさ・・・・・・オレどこにもいないじゃん。しつれいじゃん。
 同じベスト4のオレの前であんなハナシ・・・オレのこと嘗(な)めてンじゃん!」

ヤムチャの大胆な行動に冷や汗を流す悟空とベジータ。なおもヤムチャは蹴り続ける。

「いっつもそうじゃん。
 "もし・・・わし(=武天老子)が死んだら悟空もおらん今、大魔王を倒すのはおぬし(=天津飯)しかおらんじゃろ"
 "(サイヤ人戦で)生き残った最後のひとりって、ピッコロなんでしょ?"
 "ブルマ、丈夫な赤ん坊産めよ(ベジータと)"
 オレはいつだって、いつだってかやの外じゃん!」

怒鳴り散らすヤムチャ。怒りでフリーザの額に青筋が走る。
それを見ているベジータにも緊張が走る。230本もの髪の束がずっぽり抜けた。
さすがに悟空はヤムチャを止めた。
「やめとけヤムチャ、殺されちまうぞマジで!
 おめえは医務室で寝てたからわかんねえのも無理ねえけど、そいつはフリーザだぞ」
「・・・・・・ま、マジで?」
一瞬にしてヤムチャの表情が恐怖で凍りつく。
(フリーザって確かナメック星とかサイヤ人の故郷の星を消したヤツだろ?
 やばい、オレとんでもないヤツを蹴っちまった!殺されるかも・・・)
フリーザにキッとにらまれたヤムチャはもはや蛇ににらまれた蛙だ。

『休憩時間終了です!さあ、ベジータ・匿名希望両選手は武舞台に上がってくださーい!!』

ベジータが武舞台の方へゆっくりと歩き出す。フリーザも無言でそれに続いた。
ほっと胸をなでおろすヤムチャ。悟空はこの間に天界へ瞬間移動した。

武舞台に上がろうとするベジータにフリーザがそっと何かをささやいている。
ヤムチャはなんとなく聞き耳を立ててみた。
「・・・安心しろベジータ、貴様もソンゴクウもまだ殺しはしない。いまはゲームを楽しみたいからね。
 二人ともボクが優勝した後でジックリとなぶり殺してあげるよ。
 次はソンゴクウの息子とパチンコ頭のヤツを公開処刑だ。ナメック星でのお礼をしてやろう。
 そして最後は・・・ボクのスネを蹴りまくったあのヤローだ!」

「げっ覚えてやがった!!」
ブリブリッ!!力みすぎてウンコをもらすヤムチャ。



第二十二話「ぎょうざ咆哮」

『それではベジータ選手VS匿名希望選手、試合を始めて下さい!!』

「このときを待ちわびたぜ・・・覚悟しやがれフリーザ!」
ベジータが全身に気合をこめた。髪の毛は金色に光り、体中にスパークが走る!
このときスパークしすぎた792本の髪の毛が天に召された。
ニコリと微笑むとフリーザはひとさし指を前に差し出す。
次の瞬間、その指先から超スピードの光線がベジータに襲いかかった。
ベジータはそれを紙一重でかわすが、さらに何発もの光線が連続で襲いかかってくる。

そのとき、観客席では・・・
「あ、あの技はどどん波だー!パクリだよパクリ!」
試合を見ていた餃子がおおはしゃぎしていた。
「違いますよ餃子さん。あれはナメック星でも使ってたしフリーザのオリジナル技ですよ」
悟飯が冷めた意見を言う。
「いいや、あれはどどん波だ!パクリだ」
「どどん波がパクるほどの技なんですか?実はそっちがパクリじゃないんですか?(笑)」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ブッ殺すぞこのガキャーーーー!!」
「魔閃光ーーーーっっ!!」

悟飯と餃子が激しい場外乱闘を繰り広げている頃――――我らがヤムチャはというと、男子トイレの個室にいた。
コンビニで新しいパンツを買って、ここで着替えていたのである。
「クッソー!たかがパンツごときで2000円もぼったくりやがって、あのコンビニ。
 今度のパンツは高級だからがんばって汚さないようにしないとな」
ヤムチャはさっきまではいていたパンツを便器で流して個室を出た。
するとドカドカという激しい足音とともに悟飯がやってきて、ヤムチャとすれ違いざまに個室に入った。
「おい、どうしたんだ悟飯。そんなに慌てて・・・」
「さっき餃子さんに変な超能力をかけられて、おなかの調子がおかしくなったんです!うぉぉぉーーっ!!」
ブリブリッ!!グチャッ!!ジョボジョボジョボ・・・
悟飯のいる個室から危険な音が飛びまくっている。
絶対音感を持つヤムチャはそのメロディをくちずさみながら廊下を歩いた。
ちなみにこのときにできた曲がウルフハリケーンである。
しばらく廊下を歩き、表へたどり着いたとき・・・
「え!?」
なんとヤムチャの方へ向かって、ベジータが背中から突っ込んできた。避けれずに衝突するヤムチャ。

『ベ、ベジータ選手場外!!匿名希望選手の勝ちーーーーー!!』



第二十三話「打ち切りへのカウントダウン!衝撃の決勝へ」

ベジータだと?いまオレのことをベジータと呼んだのか?
クックック、残念だったな人違いだ・・・オレはベジータじゃない。
そう、オレ様の名は超(スーパー)ベジータだ!!
フハハハハ・・・・・・!フハハハハハハ・・・・・・!!
えっベジータと超ベジータはどこが違うのかって?
え〜っと・・・い、いちいちうるせえヤツだな!そんなもんはてめえで勝手に想像してやがれ!!
そんなことより聞いてくれ。オレはいま非常に悩んでいることがある。
それは最近の抜け毛の数がハンパじゃないということだ・・・!
若いころから生え際はヤバかったが、いまは前頭部からえり足まで全体的に過疎化が深刻になっている。
なんとかして村おこしをしたいところだが・・・神龍に頼めばなんとかなるのか・・・?
あ〜あ!まったく、ご自慢のヘアースタイルがこれじゃあせっかくの男前が台無しだぜ!
というか、オレの髪型って逆立っててなんかすごくカッコイイだろ?
あの髪型キープするために1日にワックス3箱も使ってるんだぜ。知ってた?
ワックス代もバカにならないぜホントに・・・いや、マジで。
まあ悩んだって仕方ないぜ。気楽にいくとするか。こんないい天気だし・・・
「ビュゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!」(風の吹く音)
な・・・なんだあ今の風はあっ!?
か、髪はどこだ!?オレの・・・・・・・・・―――――――ない!!
うわあああぁぁぁぁぁぁぁあぁぃhqslgi,,ygqc絵xw見栄hmz/qgliua

「ベジータ、大丈夫!?しっかりして!」
ブルマがそう言ってベジータの手をにぎりしめる。
ここは医務室。試合に負けて意識不明の重症を負ったベジータはここに運ばれていたのだ。
ブルマの言葉でふと目を覚ますベジータ。しかし傷が深くてしゃべる気にもなれなかった。
(さっきのは夢か・・・。ここは医務室・・・?そうか・・・オレはフリーザに負けたのか・・・。
 それにしてもこっぴどくやられたもんだぜ・・・!クソッタレ、唇も切れてやがる。血の味がしやがるぜ・・・。
 仇を討てなくて悪かったなトランクス。・・・あれ?このしょっぱいのは血じゃあねえな。こりゃ涙か・・・)

一方の武舞台では、すでに準決勝第ニ試合孫悟空VSヤムチャが行われているはずだった。しかし―――――

『どうしたことでしょう?孫悟空選手がいっこうに現れません!
 あと1分たっても来ない場合は試合放棄とみなされますが・・・・・・』

ざわつく会場。すでに武舞台にあがっているヤムチャはドキドキしていた。
(はやく来いよ悟空!このままじゃオレがあの怪物と決勝で戦うことになるじゃねえかっ!!
 そんなことになったら殺されちまう・・・少なくとも半殺しにはされる・・・助けて・・・)

『3秒・・・2秒・・・1秒・・・ブー!時間切れです!いったい何という幕切れでしょう!?
 ヤムチャ選手、決勝進出決定でーーーーす!!』

「チッ、ソンゴクウめ逃げたか・・・?あんなゴミと決勝戦とはね・・・」
フリーザはあきらかに不機嫌なカオをした。

「悟空のアホー!!悟空のアホーーーーーッ!!!」
ヤムチャはふんぞり返って泣いた。




第二十四話「ヤムチャ出陣」

『決勝戦は10分後に始めたいと思います!みなさんどうぞお見逃しなく!!』
審判がそう告げると、ヤムチャはスピリットステップで武道会場の外に向かった。
(このまま逃げよう!あんなヤツと戦ったら命がいくつあっても足らないぜ!!)
そう、ヤムチャは決勝戦でフリーザと戦うことになっているのである。
フリーザは地獄で人造人間21号として改造され、異常なほどにパワーアップしていた。
その強さは、フリーザと試合で戦ったトランクスやベジータが虫の息にされてしまった程である。
ふと、ヤムチャは外へ向かう足を止めた。
(そうだ、あの封印をとけばフリーザといい勝負ができるかも・・・?)
ヤムチャは老界王神に魔法で重りをつけられていた。合言葉と同時に気を開放すればその重りは消える。
(いや、やっぱり無理だ。だって合言葉覚えてないし!オレのバカバカ!!)
ヤムチャはめいいっぱい自分の頭を殴りつけた。やりすぎて脳震盪をおこした。
フラフラな足取りで廊下を歩いていくと、医務室の扉が見えてきた。
その扉の前でブルマが座り込んでいた。
「どうしたんだブルマ?そんなとこに座り込んで」
「あらヤムチャ。ちょっと疲れちゃってね・・・いま休憩してるとこよ」
ブルマはずっとベジータやトランクスにつきそって看護してやってたので疲れるのも無理はない。
「ヤムチャさ、そういえば孫君が試合に来なくって不戦勝になったんでしょ?
 この医務室の中にも審判のアナウンス聞こえてたわよ」
「そうなんだ。おかげで決勝であのフリーザと戦わなきゃいけないんだぜ。やってらんねえよ」
そう言うとヤムチャはまた廊下を歩き出した。

「ちょ、ちょっと待って!どこ行くのヤムチャ?武舞台は反対側よ」
「逃げるんだよ。あんなのと戦ってたら命がいくつあっても足りないぜ」
「逃げるって・・・いまアンタが逃げたらどうなるワケ?フリーザが何をしでかすかわからないわよ!
 孫君やピッコロは行方不明、ベジータとトランクスは重症、
 いま頼れるのは決勝で戦うヤムチャだけなのよ!・・・あ、まだ悟飯君がいた」
「いや、悟飯は餃子に変な超能力をかけられてトイレで下痢ってるから戦えない・・・」
「え?何よそれ・・・じゃあやっぱりアンタを頼るしかないわ。
 いまヤムチャが試合放棄したら、やることのなくなったフリーザはきっとみんなを殺すわ。
 せめて孫君が帰って来るまで時間をかせいでよ!お願い!」
「いや、無理なもんは無理だって!悟空いつ帰ってくるかわからないし」
「お願い!・・・私悔しいの。ベジータやトランクスをあんな目にあわされたのに何もできない自分が。
 だから、あなたにこうやってお願いするくらいしかできないの・・・」
だんだん涙目になっていくブルマ。
「あ、相手はメチャクチャ強いんだぞ!オレに死ねって言うのか?冗談じゃないぜ!
 それになんでオレがベジータの敵討ちを頼まれなきゃいけないんだよ!
 あいつはオレからお前を奪った男だぞ?オレに頼むなんてお門違いもいいとこだぜ!」
「・・・・・・!」

『えー決勝戦開始まであと1分です。両選手は武舞台に集まってください』
場内アナウンスが流れた。

「ご・・・ごめんブルマ。言い過ぎた・・・」
「ううん、ヤムチャの言う通りだわ。こっちこそ無理言ってごめん。
 こんな無茶なお願い聞いてくれるのはバカなお人好しだけよ・・・。さあ、早く逃げて」
「あ・・・ああ」
ヤムチャが行こうとしたとき、医務室の中から声がした。
「待ってくれヤムチャ・・・!こっちに来てくれ・・・!!」
ベジータの声だった。さっきヤムチャが怒鳴った声が医務室の中まで聞こえていたのだ。
(やばい、さっきの会話聞かれちまったのか)冷や汗をかきながら医務室に入るヤムチャ。
中では何人かの選手たちが治療を受けていた。その中でもベジータの怪我はひどい方だった。
「ヤムチャ・・・頼む。フリーザと戦ってくれ・・・!」
「え、お前までそんなこと言うのか!?」
「オレはお前のいいところをたくさん見てきた・・・!お前にだからこそ頼むんだ・・・!」
ヤムチャの手を握り締めるベジータ。
「僕からもお願いヤムチャさん!僕の気をわけてあげるから!」悟天が二人の手の上から気を送る。
「わずかだがオレの気もお前に渡しておこう」天津飯もその上に手をかぶせた。
「よくわかんねえけど・・・頑張れ!」ノックがさらに手をかぶせる。
「え〜っと、じゃあオレも」キャプテン・チキンも手をかぶせる。

こんな風にみんなに期待されたのはヤムチャにとって初めてのことだった。
ヤムチャはそれがたまらなく嬉しかった。この期待をはねのけることはできなかった。
「わかったよみんな・・・。やれるだけやってみる」
ヤムチャの言葉に喜ぶベジータたち。
ブルマは泣きながらヤムチャの手を握り締めた。
「ありがとうヤムチャ!あなた底抜けのお人好しね!!」

『もうとっくに試合開始時間は始まってますがヤムチャ選手いっこうにあらわれません・・・』
ざわつく観客たち。決勝戦だというのに棄権などされては盛り上がらなさすぎである。
『仕方ありません!ヤムチャ選手の棄権により優勝は匿名希望選・・・』
「ちょっと待ったーーー!!」
いっせいに声の方へふりかえる。そこにはヤムチャの姿があった。わーっと歓声があがる。
『なんと!ヤムチャ選手やってきました!いまゆっくりと武舞台に上がっていきます!!』
「へえ・・・よく逃げ出さなかったね」フリーザが感心する。
「ヒーローは遅れて現れるもんなんだよ。それがメキシコ式だぜ!」かまえるヤムチャ。

『お待たせしました!それでは決勝戦、匿名希望選手VSヤムチャ選手です!!試合開始ーーー!!!』



第二十五話「ヤムチャ対フリーザ」

数年前――――修行に没頭する悟空とヤムチャ。
「いくぜ悟空、狼牙風々拳!あたたたたたあーーーー!!」
「甘い、また足元がお留守だぞ!」
ばきっ!悟空の蹴りがヤムチャの弁慶の泣き所にヒットした。
「ほら、おめえは上半身にばっかり気をとられているから下半身がお留守になるんだ。
 その技の時は片手使わねえ方が両足とバランス取れていい感じになるんじゃねえかな」
悟空のアドバイスが聞こえてるのかいないのか、ヤムチャは足を抱えてうずくまっている。
「いててて・・・!チクショー、悟空と組み手するとすぐケガするから嫌なんだよ・・・」
半べそをかくヤムチャ。
「下半身をちゃんと鍛えねえからケガするんだ。女といる時は下半身ばっかり使ってるクセに!」
冷たく言い放つ悟空。コイツもう禁斗雲乗れないな、とヤムチャは思った。
さらに悟空は冗談まじりにこう続ける。
「ヤムチャ・・・この先すげえ敵が現れてオラやベジータがやられちまった時、頼りにしてるからな」

そして現在――――ついにその時がやってきた。
悟天、パン、ビーデル、チチ、クリリン、18号、天津飯、餃子、亀仙人らが見守る中、
天下一武道会決勝戦、匿名希望(フリーザ)対ヤムチャが始まった。
「ヤムチャおじさん大丈夫かなあ・・・」パンが不安そうな顔でヤムチャを見守る。
「あやつもやる時はやる男じゃ。パンちゃん、狼の戦いをとくと見ておくのじゃぞ」亀仙人が答えた。

「そういえば、さっきはよくもボクのスネを蹴りまくってくれたね。そのお礼をしてあげよう」
フリーザの言葉に後ずさりするヤムチャ。戦えばあっという間にやられることは目に見えている。
ヤムチャはいつ帰ってくるかわからない悟空のために時間稼ぎをする必要があった。
(いまフリーザを挑発するのは得策じゃないな・・・こうなったら・・・)
キラーン!ヤムチャの目が光る!
「ふ、フリーザ様!!」いきなり土下座するヤムチャ。
「・・・は?」
「先ほどは失礼しました!何でもしますからどうかオレを部下にしてください!」
突然のことに冷や汗をかくフリーザ。
「い・・・いきなり何を・・・。本気で言っているのかい?」
「本気です!マジなんです!オレンジジュースください!」
必死に頭を地面にこすりつけるヤムチャ。

「見よ、あれこそが狼の戦いざまじゃ!あっぱれなり!」亀仙人はもう適当に叫んだ。

「そうか、フリーザ軍もずいぶん前になくなってしまい寂しかったところなんだ。
 でも使えない部下ならいらない・・・キミを部下にしてボクにどんなメリットがあるんだい?」
フリーザの意外な反応にガバッと顔をあげるヤムチャ。
「えっと・・・メリットですか?メリットというと・・・リンスのいらないアレですか?」
「違う!ボクにどんな利益があるのかと聞いているんだ!」
「え〜っと・・・炊事洗濯、その他フリーザ様が望むことなら何でもします!
 (しめしめ、食いついてきたぞ。適当に口からでまかせ言って時間を稼いでやる)」
「・・・じゃあボクが地球人を殺せと言ったら殺すのかい?」
「え?アハハ、そんなのもちろんですよ(殺すかバーカ)」ヤムチャは笑顔で答えた。
「じゃあボクが死ねと言ったら死ぬのかい?」
「死なねえよボケ!(はい、喜んで♪)」ヤムチャは笑顔で答えた。
「・・・本音と建前が逆になってるよ」
「し、しまったーーー!!」
飛び上がりフリーザから離れるヤムチャ。
「・・・虫ケラの分際でこのボクをだまそうとするとは・・・・・・!」
フリーザの額に青筋が走る!!

「いかん、フリーザが怒ってるぞ・・・!餃子、超能力でヤムチャを援護するんだ!」
「うんわかった天さん!」
餃子は手を武舞台の方へ差し出した。
「うっ!?」急にしゃがみこむヤムチャ。
「やった!天さん、ボクの超能力が効いてるよ!」
「ああ・・・ヤムチャにな・・・」
こんな大事な時にすごいボケかましてくれるじゃないか、と天津飯は思った。
でも今はホントに時が時だったのでとりあえず3発ほど殴っておいた。

超能力が解けて再び立ち上がるヤムチャ。
フリーザは完全に頭にきている。このままでは殺される!
ヤムチャは何とか話題をすりかえようとした。
「お・・・おいフリーザ、お前の腕に21ってタトゥー彫ってあるけどかっこいいな」
「・・・それがどうした」
「いや、あの・・・どういう意味かなと思って・・・・・・」
「人造人間21号という意味だ。もともと宇宙の帝王だったボクが改造されたんだ。
 つまりボクは全宇宙で最強の・・・」
「ロボか」
「え?いや、ロボというか・・・人造人間だ」

そのころ観客席では・・・
「ボク チャオズ ロボチガウ ボク チャオズ ロボチガウ」
「餃子がロボ語になってるーーーーー!!」
餃子の渾身のボケだったが天津飯以外誰も見ていなかった。

まだ必死に会話を続けようとするヤムチャ。
「な、なあ、フリーザ。人造人間に改造されたってことはドクター・ゲロにあ・・・」
「もういい」
「・・・え?」
よく見るとフリーザがワナワナ震えている。
「まったく、人をイラつかせるのが上手なヤツらだ・・・!ソンゴクウも貴様らも・・・!!
 このオレはフリーザ様だぞーーーーー!!!下等生物どもめ、皆殺しにしてやるぞ!!!!」

フリーザが大声で叫んだ。口調が変わり、額には何本もの青筋が走っている。
ピタッと静まる会場。ヤムチャはあまりの恐ろしさに一歩も動くことができなかった。
フリーザは客席の方を向くと、手をゆっくりとあげた。
フリーザの手に呼応するかのようにパンの体が宙に上がっていく。
「え・・・?どうなってんの・・・誰か助けて!」パンが叫ぶ。
「あ・・・あれはまさか・・・!」クリリンは自分が殺された時の恐怖を思い出した。
フリーザが拳をにぎりしめる。

「ヤムチャおじさーーーーん!!」

どーん!

パンの体があとかたもなく爆発した。
ニヤリと笑うフリーザ。いっせいに逃げ出す観客たち。
しかし、悟天とビーデルがフリーザの方へ飛び出した!
「貴様ら早死にしたいようだな!!」
カウンターの構えをとるフリーザ。しかし思わぬ方向からパンチを浴びる。
振り返ると、ヤムチャであった。
「み・・・みんな、さがってろ!」
ヤムチャは震える足をおさえてフリーザの前に立ちはだかった。



第二十六話「ヤムチャの戦い」

パンを殺され、真っ先にフリーザの方へ飛び出した悟天とビーデル。

「まずい、あいつら殺されちまう!」
「クリリン、私たちも行くよ!」

「仕方ないオレたちも行くぞ餃子!」
「うんこ!」

「ひぃっ・・・こ、怖い!でも孫を殺されて・・・スーパーチャンピオンの私が逃げ出すわけにいくかーー!!」

「武天老師さま、ぱ、パンちゃんが殺されちまったべ!」
「くっ・・・役に立てるとは思わんが・・・フリーザめ、許せん!ワシも行くぞ!!」

「オ・・・オレも・・・!あいつはきっと悪いヤツだ!!」

「よし、今こそワシの百八手拳をためす時だ!フリーザ覚悟ォーーーー!!」

こうして、武舞台のフリーザを囲むように戦士たちが集まった。
「みんな、下がってろって言ってるだろ!フリーザとはオレが戦う!!」
ヤムチャが周りのみんなを止める。なんかさりげなくチャパ王とかいるけど見なかったことにした。
「だけどヤムチャさん!ボクも仇を討ちたいんだ!」
「悟天、お前はオレに気を与えてもうほとんど残ってねえじゃねえか!ここはオレにやらせてくれ。
 それに他のみんなが手を出したら、この試合反則負けになっちまうだろ?」
『え?し、試合まだやる気なんですか・・・?』
逃げ遅れた審判が驚いた表情をする。一般の観客はもう一人残らず逃げ出していた。

「誰が相手でもかまわん・・・どうせ地球人は皆殺しにする予定なんだ・・・
 それよりも貴様・・・よくもこのオレを殴ってくれたな!!」

フリーザがヤムチャの方をにらみつける。どうやら怒りの矛先はヤムチャに向いているようだ。
「そ、それじゃあヤムチャさんお願いしますよ!」
そう言うとスーパーチャンピオンのミスター・サタンは18号の後ろに隠れた。
まかせろ、といわんばかりに親指を立てるヤムチャ。
「どこを向いている!!」
フリーザの指から光線が放たれた。それを間一髪でかわすヤムチャ。
「みんなここは危ない!もう少し離れて見ていろ!」
そう叫ぶとヤムチャはフリーザの方へ向きなおした。
「・・・よくかわしたな」フリーザが意外であったという顔をする。
「しょっちゅう悟空と組み手してたからな。速い光線でもちゃんと見えてるぜ」
もっとも、かわしきれたのは悟天や天津飯に気をもらったおかげなのだが。
それにしてもさっきのヤムチャの一撃は怒りを買っただけで全く効いてはいなかった。
(実力差がありすぎる・・・こうなったら最高の技で勝負するしかないぜ!)
ヤムチャは気をためると、両手からそれぞれ気弾をうみだした。
「いくぞフリーザ、ダブル繰気弾!!」ふたつの繰気弾がフリーザめがけて飛んでいく!
「そんなもの!」フリーザは片手で受け止めようとした。
しかし繰気弾はぶつかる直前で軌道を変え、猛スピードでフリーザの周りを旋回する。

「こしゃくなマネを・・・!」フリーザは目でふたつの繰気弾の動きを追った。
フリーザは繰気弾と気円斬を合わせたような技を使えるが、
操るスピード・機動性においてはヤムチャの繰気弾の方が上だった。
「とらえた!」フリーザの目がキッと光る!
その瞬間、ひとつの繰気弾が破裂した。
「さて、もうひとつは・・・ん!?」
フリーザはヤムチャが自分のほうへ急接近していることに気づいた。
ヤムチャは繰気弾を操りながら距離を縮めていたのだ。
「狼牙風々拳ーーー!!」ヤムチャの猛連打が繰り出される。
フリーザはそれを片手であしらった後、シッポでヤムチャの足をひっかけて転ばせた。
そしてガラ空きになった腹部を踏みつけた。
「ぐふっ!!」大量の血を吐き出すヤムチャ。
ヤムチャはかつてないほどの、人生で一番の痛みを味わった。
フリーザにとっては軽い一撃だったが、それでもヤムチャを死に至らせるには十分だった。

『や・・・ヤムチャ選手ダウン!か・・・カウントをとります・・・!ワン・・・』
フリーザがキッとにらむと審判のマイクが音をたてて破裂した。
「カウントなんか数えても無駄だ。それより次は誰が死にたいんだ?」
フリーザが周りを見回す。恐怖で動くことのできない戦士たち。
「この三つ目のひとが死にたいんだって!」餃子が天津飯を指差した。
「コラァーなんでやねんぎょうざ!!死にたいのはアフロのやつだ!」天津飯がチャパ王を指差した。
「私は一向に構わんッッ!」フリーザに突撃するチャパ王。
しかしフリーザがキッとにらみつけるとチャパ王は木っ端微塵に破裂した。
「きたねえ花火だ・・・」餃子はそうつぶやいた。
「さあ、次は誰が死ぬんだ?それとも全員同時にかかってくるか?」
フリーザが残酷な笑みを浮かべる。
「ま・・・・・・待て・・・・・・」
ふと、小さな声が聞こえる。振り返るフリーザ。
そこには血だらけのヤムチャがかろうじて立ち上がっていた。
「・・・貴様まだ死んでなかったのか」フリーザの表情が明らかな嫌悪へと変わった。

「パンのやつ・・・死ぬ前にオレの名前呼んだんだぜ・・・・・・?
 なのにオレは何もしてやれなかった・・・。
 弱いってことがこんなに悔しいと思ったのは初めてだよ・・・」
ヤムチャの頬を涙がつたう。
すでに死んでいてもおかしくないダメージだった。気力でなんとか立っているのだ。
そんな中でも、フリーザを倒す方法をしっかりと考えた。



第二十七話「ヤムチャ伝」

命が絶えてもおかしくない程の深刻なダメージ。しかしヤムチャは立ちあがった。
「うっとうしいぞゴミ虫が!!」フリーザがシッポで顔面を叩きつける。
ヤムチャは再び血ヘドをぶちまけて倒れた。
返り血を浴びたフリーザがクリリンたちの方へ振りかえる。
「さあ次はどいつが死ぬんだ?ん、貴様は・・・人造人間か?」
気を感じる能力を身につけたフリーザは18号の気がないことに気づけたのだ。
「だ、だったら何だ!」おびえる18号。
18号の後ろに隠れていたサタンは恐怖のあまりあとずさった。
その時、何かにつまづいてころんでしまう。
「なんだこれは・・・ひっ・・・ひぃい!!」
それはさっき木っ端微塵にされたチャパ王の頭部だった。運良く頭部だけ残ったのだ。
その頭はサタンに語りかけた。
「頼む・・・ワシをヤムチャの側まで持って行ってくれ!ヤムチャと話がしたい・・・」
「え・・・むっ無理だ!怖い!!」
「お前も少しは役に立ちたいだろ?スーパーチャンピオンらしいから・・・何なら近くに投げるのでもいいぞ」
「・・・わ、わかった・・・!」
サタンはその頭を勢いよくぶん投げた。数回バウンドして転がるチャパ王。
「怒りのままに自分を解放しろ・・・!話し合いなど通用しない相手もいるんだ・・・。
 ワシの大好きだった動物たちを守ってくれ・・・・・・」
川に落ちたチャパ王は魚に食われながらそうつぶやいた。
フリーザと18号が会話している間、ヤムチャは死の淵にいた。

いままでのいろいろな出来事が走馬灯のようにかけめぐる。
悟空と合体して魔人ブウを倒したこと、悟空一家と修行してきた日々、
見えない重りを装備したこと、そして・・・パンが目の前で爆破されたこと!
(何もできないまま死んだら・・・何のために修行してたかわからねえぜ!!)
ヤムチャの目がパッと開いた。そしてヨロヨロと立ち上がる。
「・・・1発や2発食らったくらいでオネンネしてられねーよなぁ!!」構えをとるヤムチャ。
「バカな・・・!」驚くフリーザ。
ヤムチャの狙いはただひとつ。カウンターを食らわすことであった。
自分の力だけではダメージを与えられない。だがカウンターなら相手の力を利用できる。
だからフリーザが懐に飛び込んでくる瞬間を凄まじいほどの集中力で見計らった。
「なかなかしぶといじゃないか!」フリーザはヤムチャの方へ飛び込まずに指から光線を放つ。
(しまった!!)ヤムチャがそう思った時にはもうヤムチャの左腕は吹き飛んでいた。
鮮血が宙を舞う。痛みでヤムチャは再び倒れこんだ。
「まあコイツはほっといても死ぬだろう・・・それより18号、さっきの話の続きだ」
どうやらフリーザは18号を仲間にしようとしているらしい。
「だ、誰がアンタなんかの仲間になるもんか!!」構える18号。
「同じ人造人間じゃないか・・・まあどうしても嫌というのなら仕方ないけどね・・・!」
フリーザがエネルギー波をためだした。
しかし18号の視線はフリーザの後ろにそそがれていた。
18号だけではない。クリリンや悟天など、全員がフリーザの後ろを見ていた。

「どうした・・・後ろにいったい何が・・・」
振り返るフリーザ。そこには片腕のヤムチャが立っていた。出血も止まっていた。
「そう何度も立ち上がられるとホントにカチンとくるね・・・」うんざりするフリーザ。
一方のヤムチャは静かに笑っていた。
「ありがとよフリーザ・・・痛みのショックで思い出せたぜ重りを解く合言葉を」
「合言葉?何を言ってるんだい」
ヤムチャが呼吸を整え気を開放する。
「合言葉はオレの名前・・・"ヤムチャ"だぁーーーーーーーー!!!!!!」
ヤムチャの叫びとともに辺りに爆風が巻き起こる。
その場にいたヤムチャとフリーザ以外の人間は十メートルほど吹き飛ばされてしまった。
――――そう、合言葉はヤムチャ。
特に意味もなく適当につけた合言葉。しかし月日を重ねるごとに思った。
自信を持って自分の名前を呼べるほどの男になった時、この重りをはずすのだと。
(これ以上仲間を死なせてたまるか!オレは強い!オレは強い!!オレは強い!!!)
ヤムチャから今までとケタ違いの気があふれ出している。ダメージもどこかに消えていった。
「まずいのォ。あいつわしより強くね?」チャパ王はピラニアを見てそうつぶやいた。
ヤムチャの急激なパワーアップに驚くフリーザだが、すぐに冷静になる。

「ずいぶん強くなったみたいだけど、それじゃまだまだ・・・」
「界王拳10倍!!」
ヤムチャの体から大量のオーラが吹き出る。
「す、すげえ。あれがヤムチャさんか・・・!」クリリンが驚嘆の声をもらした。
一方ヤムチャは界王拳の負担の軽さに驚いていた。
(10倍でもこんなもんか。まだまだ余裕だぜ)
調子にのったヤムチャは20倍まで界王拳をひきあげた。オーラが辺りに舞う。
(あれ?20倍ってこんなもん?めちゃ楽っ・・・!)
みんながヤムチャに注目していた。フリーザも少しあせっている。
ヤムチャは精神を集中させ、一気に気を爆発させた。
「界王拳50倍だぁーーー!!!」
武舞台の石版が全部粉々になり、審判のサングラスが割れ、大地が揺れた。
珍しく冷や汗をかいているフリーザ。
「ち・・・地球人にしてはすやるじゃないか。だが片腕しかない貴様に何ができる?」
フリーザが言い終わる前に、狼牙風々拳の構えをとるヤムチャ。
「片腕の方が強い技もあるんだぜ!いくぞフリーザーーー!!」

(続く)


第二十八話「ヤムチャが活躍する話」

激しいオーラに包まれたヤムチャがフリーザに襲いかかる!
「今度こそ喰らわせてやるぜ、狼牙風々拳っ!!」「ちぃっナマイキだよ!!」
フリーザはヤムチャの鋭い牙を手の甲ではじきあげると、全身を回転させ足払いを仕掛けた。
が、小さくジャンプしてそれをかわしたヤムチャはヒザをそのままアゴに叩き込んでやった。
わずかに体勢がよろめくフリーザ。
そのスキを見逃さない狼牙風々拳の追撃が何発も撃ち込まれる。
1発、2発、3発、4発・・・全部カウンターを合わせられたヤムチャはもう顔面鼻血まみれだった。
だがヤムチャは諦めない。相手のカウンター以上のスピードで押し返す。

ヤムチャの攻勢を見たみんなはもう驚きを隠せなかった。
驚嘆の声をもらす悟天、夢かと頬をつねって見るチチ、
開いた口が塞がらないクリリン、開いた○○○が塞がらない18号、
顔面真っ青の審判、顔面真っ白の餃子、それを見て体が火照ってきた天津飯・・・

次第にヤムチャの旗色が悪くなってきた。
それまで何とか喰らいついていたヤムチャだが、目に見えて押され始めたのだ。
だがそれは仕方ない。人には、超えられない壁というものがある。
ヤムチャがどんなに修行してパワーアップしても、ここまでが限界だったのだ・・・。
一方的にボコられてしまうヤムチャ。

「くそったれ・・・っ!!」
ヤムチャはいったん疲労回復のためにフリーザから距離をとった。
明らかに気を消耗しているヤムチャ。肩で息をつくほどに。
(この片手の狼牙風々拳がいまできる最高の技だ。これ以上の攻撃はオレにはない・・・。
 あっ!かめはめ波の加速をプラスしてみたらどうかな。ダメか。手がふさがるしな・・・)
そんなことを考えていると、熱い応援の声が耳に飛び込んできた。
「ヤムチャ様がんばってーーー!!負けるなーーーーーっ!!」
声の主はプーアルだった。主人の一世一代の大舞台に、その小さな体から大きな声援を送っていた。
ヤムチャは優しく微笑んだ後、表情を引き締め、何の構えもとらずに気をためはじめた。
「か〜め〜は〜め〜・・・」
「いったい何をする気だ?」ヤムチャの狙いが理解できないフリーザ。
(プーアル・・・。こんな情けないオレのことを、ずっと主人と慕ってくれてありがとう。
 見てろよ。オレが主人だったことを誇りに思えるようにしてやるから!)
狼牙風々拳の構えをとるヤムチャ。
「ファイヤーーーー!!!!」
ぼーん!!とヤムチャの尻が火をふいた。その加速でフリーザに突撃するヤムチャ。
あっけにとられるフリーザの体に、渾身の力を込めた狼牙風々拳の嵐が突き刺さる。
「そうか!尻からかめはめ波を出せば手足が自由だから狼牙風々拳が繰り出せる。
 何という思いがけん発想をするヤツじゃ・・・!」
ヤムチャのセンスに亀仙人は脱帽した。
そして怒涛の攻撃を喰らい足がガクガク震えるフリーザ。
これがラストチャンスとばかりに一気に攻めまくるヤムチャ。
この戦いを見て天津飯と餃子はヤムチャに対する認識を改めていた。
「あいつもう地球人の壁を越えてしまったかもな・・・」ボソっとつぶやく天津飯。
「そうだね。もうヤムチャは立派な狼だね・・・って言えって言われた」
「・・・・・・誰に言われたんだ、餃子?」
「え・・・・・・・・・そ、そんなの誰でもいいだろうがぁぁぁぁあ!!!」
天津飯と餃子の想像を絶する死闘がはじまった。


「クソッ手こずらせやがって・・・!」
フリーザはヤムチャを踏みつけながら口元から流れている血を拭いた。
結局、ヤムチャの最後の特攻もフリーザを苦戦させただけにとどまった。
ボロボロの体で仰向けに横たわっているヤムチャ。
フリーザが足元に力をこめると、ヤムチャはたまらず血をふき出す。
もうヤムチャは虫の息だった。
フリーザが周りを見渡す。なんか三つ目のハゲとキョンシーが暴れてるけど見なかったことにした。
「誰かこいつを助けにきてみるか?まあ無駄だと思うけど・・・ククッ」あざ笑うフリーザ。
「くっそ〜・・・あ・・・あれ?」
クリリンが上空を見て何かに気づいた。
「天津飯・・・あんた目いいよな。あれって・・・」
「別に良くねえよ!今話しかけんな!」
「あれは・・・やっぱり繰気弾だ!!」
みんなが空を見上げると、繰気弾と思わしき物体がフリーザの方へ向かっているのが見えた。
ふと、フリーザは足元のヤムチャに目をやった。
ヤムチャの右手の指がわずかにピクピク動いている。
「き・・・貴様ーーーーーー!!!」
繰気弾はもうフリーザのそばまで迫っている。フリーザは両手を差し出して受け止めた。
「こん・・・な・・・もの・・・!!」
どんどん繰気弾に押されていくフリーザ。踏みとどまることすらできない。
「こんなちゃちな技なのに・・・なぜ止められない・・・!?」
フリーザが焦りの表情を浮かべる。ヤムチャが苦しそうに口を開いた。
「止められちゃ困るんだよ・・・そんなちゃちな技でもオレの人生がこもってんだぜ・・・・・・!」
バァーン!繰気弾にはじかれフリーザがぶっ飛んだ。
武道会場の壁を突き破り島の果ての丘に叩きつけられるフリーザ。
唖然とするクリリンたち。審判の方を向くヤムチャ。
「審判さん・・・オレ・・・勝ったよな?」
「・・・え?」
「だから試合さ・・・フリーザのヤツ場外だろ・・・?」
「あ、そういえば確かに・・・」
試合のことなどすっかり忘れていた審判。
プーアルは武舞台のヤムチャのもとへ飛んでいった。
ガッツポーズを作って見せるヤムチャ。
糸が切れたようにみんなが大声を上げて祝福した。
予備のマイクを取り出す審判。
『天下一武道会、優勝はヤムチャ選手ーーーーーーー!!!!』

(次回最終回)


第二十九話「大団円?」

ヤムチャの周りを囲んで、優勝を祝福するクリリンたち。
ブルマも医務室から駆けつけて来た。ヤムチャの勝利を知り驚きを隠せない。
「まさかあんたが勝つなんて・・・かなり見直したわよ!それよりケガは大丈夫?」
「はは・・・・・・ちょっと大丈夫じゃねえな・・・もうすぐお迎えがやってきそうだ」
みんなの顔から笑顔が消えた。死の瞬間は刻々と迫っている。
「よ、おめえら何で暗い顔してんだ?」
「!?」
いっせいにみんなが声の方へ振り返った。悟空とデンデがこっちに手を振っている。
「ご、悟空さ!今までどこ行ってたんだべ!?」
「いや〜デンデが精神と時の部屋で迷子になってたみたいでさ。
 んでオラが瞬間移動で見つけたんだけど帰りの出口が見つかんなくて・・・
 迷ってたら遅くなっちまった。悪い!」
のんきに謝っている悟空。
「こっちの世界でこんだけ時間たってるってことは何日間迷ってたんだ・・・」
あきれ果てるクリリン。地毛に見せかけたカツラもずれ落ちた。
「(あっヅラが・・・)そういえば試合はどうなったんだ?フリーザは?」
全然状況がわかってない悟空に、亀仙人たちが説明した。
その間にデンデがヤムチャを治療する。
ヤムチャは回復すると、いきなり悟空に襲いかかった。
「てめえ悟空!お前が帰って来ないせいでどんだけ怖い目にあったと思ってんだ!!」
「いて!いてて・・・ちょっとま・・・待てって!!」
たまらず超サイヤ人3になってヤムチャの拳を受け止める悟空。
「ビックリしたぁ〜おめえめちゃくちゃ強くなってんじゃねえか」
「うるっせえ!オレが何滴ちびったか教えてやろうか!?だいたいおまえはんぐべあっ!!」
どうやら舌を強く噛んでしまったらしい。泣きながら転げまわっているヤムチャ。

「ところでフリーザをどうするんだ?遠くに吹き飛んだだけだし間違いなく生きてるぞ。
 しかも多分私と同じエネルギー永久式だ。お前ら二人がかりでも倒せるかどうか・・・」
18号が悟空とヤムチャに問いかける。
「う〜ん・・・あ、ポタラ持ってきてっかヤムチャ?合体すればあんなヤツ楽勝だろ!」
「ああ、当たり前だ!」
二人がポタラをつけるとまばゆい光とともに、一人の戦士が姿を現した。
「よっしゃーーーーーー!!!」
ヤムロットが誕生したその横では、地球の命運をかけた大決戦が行われていた。
「新気巧砲!!!はっ!!はっ!!はっ!!はっーーーー!!」
餃子が白目をむいて地中深くに沈んでいく。
「はあ・・・はあ・・・苦戦させやがってこのキョンシー野郎が・・・」
「・・・・・・」


―――――ヤムロットがフリーザを撃破してから幾日かの時が流れた。
ここはカプセルコーポレーション。
そこにはヤムロットや悟空の家族、ベジータ一家、クリリン一家、
ノックとお笑いコンビを組んだ天津飯、ピッコロ・オトコスキー夫妻など仲間たちが勢ぞろいしていた。
今日はドラゴンボールでパンを生き返らせ、さらにヤムロットを元の二人に戻す日なのだ。
「あの、ピッコロさん・・・顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・大・・・丈夫だ・・・悟飯・・・・・・元気ハツラツオロナミンC!!」
そう答えるピッコロだが、明らかにミイラみたくヨボヨボになっていた。
オトコスキーとの夫婦生活のすさまじさを物語っている・・・悟飯はもうこの話題に触れないことにした。

「さあ・・・じゃあ呼ぶわよ。いでよ神龍!そして願いを叶えたまえ!!」
ブルマがそう叫ぶと空が真っ暗になり、ドラゴンボールから巨大な龍が現れた。
「ねえどうするクリリン君・・・天下一武道会があった日に死んだ人間を生き返してくれって頼んでみようか」
「いや、それだとチャパ王も生き返ってしまう。パンちゃんを生き返してくれって頼みましょう」
こうして、一つ目の願いでパンが生き返った。パンに駆け寄り喜ぶ悟飯たち。
「願いは叶えた。さあ、二つ目の願いを言うがよい」
「よし・・・次はオレが願いを言う番だな」
ヤムロットが一歩前に進み出た。
しかしその瞬間、背後から顔面真っ白のチビが現れて神龍に向かって叫ぶ。
「天津飯を この世から けっ・・・!!」
餃子がすべて言い終える前に、天津飯の新気巧砲が炸裂した。
「ふう、あぶなかった・・・!まったくしぶとい美白野郎だぜ・・・」
「・・・・・・」
ヤムロットは気を取り直して、神龍に向かって叫んだ。
「オレを元の二人、孫悟空とヤムチャに戻してく・・・」
「オレとノックをお笑い界のスターダムにのしあげてくれーーーーー!!」
はっとして振り返るヤムロット。先に願いを言ったのは天津飯だった。
みんながしーんと静まり返り、神龍の反応が待たれた。
「・・・その願いは無理だ。神の力を超えてしまっている」
「なんだと!?む・・・無念・・・」
「天津飯、てめーー!!」
ヤムロットは天津飯を標本にしてカプセルコーポレーションの玄関に飾ってやった。

「さあ、今度こそオレが言うぞ!みんな邪魔すんなよ!!」
ヤムロットがみんなを睨みつける。
パン似のダッチワイフが欲しかった亀仙人だが、命を優先することにした。
「オレの髪の毛を100万本にしろーーーーーー!!」
突然、ベジータが声高らかに叫んだ。
あっけにとられるヤムロットたち。
「たやすい御用だ。了解した」
ドクン・・・ドクン・・・鼓動とともにベジータの頭部が膨らんでゆく。
鼓動が止まった時には、もっこり頭のベジータが立っていた。
「き、きもーーーーっ!!」
生き返ったばかりのパンは泡をふいて倒れた。
「願いは叶えた。では、さらばだ!!」
どこかに飛び散っていくドラゴンボール。
「ま、待ってくれ神龍!!・・・くそ〜ベジータ!もう一回ハゲにしてやるーーー!!」
「ふははははは・・・!!こい、ヤムロット!!!」
ヤムロットとベジータの壮絶な死闘が幕を開けた。
「まずい、巻き込まれるぞ!みんな避難するんだっ!!」
さっき天津飯が新気巧砲で開けた穴にみんなを先導して逃がす悟飯。
中に黒コゲのチビがいてちょっと怖かったけど見ないことにした。
「あれ・・・?ピッコロさん何してるんですか、早くこの中に避難して下さい!
 そんなとこにいたら危ないですよ!!・・・ピッコロさん?」
悟飯はピッコロの元へかけよって肩をさわった。その反動で倒れるピッコロ。
「ピッコロさん・・・死んでる」

(ヤムロット伝2・おしまい)



ヤムロット3へ