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Wolf



第一話 「サイヤ人、侵略」

1年前、地球一の武闘家孫悟空は侵略者サイヤ人と共に死亡。
更に死んだサイヤ人死に際に他の二人のサイヤ人と通信、
そして地球に呼び出した。
そんなサイヤ人に対抗するため、
孫悟空は天国で修行を積み、他の仲間達は修行を黙々と積んでいた。

そして、今。孫悟空は生き返ったものの未だ不在。
そんな中、2人のサイヤ人は地球に侵略した。
そして孫悟空の仲間とサイヤ人は先程から3時間程、睨みあっている。
「3時間過ぎちまったぜ」
大柄なサイヤ人はぼそっと呟く。
小柄なサイヤ人は何も言わず、ニヤっと笑っている。

大柄なサイヤ人はしゃがみ、地面に種を六粒植え、立ち上がる。
そして、種を植えた所から不気味な生物が6匹生えてくる。
「丁度6人・・・・・・どうだ?この栽培マンと1対1で戦うと言うのは?」
小柄なサイヤ人は孫悟空の仲間達に呼びかける。
「俺が先にやる。力を見極めたいしな」
最初に、元盗賊のヤムチャが名乗りを上げた。

そしてサイヤ人と栽培マン、孫悟空の仲間達が後退し、
ヤムチャと栽培マン一匹だけが残る。
「いきなり終わらせてもらうぜ、操気弾!」
ヤムチャが威勢良く、叫んだ。

ヤムチャの掌から球体が現れ、高速で栽培マンに向かって飛んでゆく。
しかし、球体は栽培マンに軽いジャンプで避けられる。
と、突然、球体がUターンし、再び栽培マンに向かって飛んでゆく。
完全に油断していた栽培マンは避けきれず、直撃。
そして更にヤムチャは栽培マンに急接近し、独特の構えを見せる。
「狼牙風風拳っ!」
ヤムチャの素早い突きの嵐が、栽培マンにクリーンヒットする。
そして栽培マンは吹っ飛び、意識を失う。
更にヤムチャは先程の球体を掌から出し、栽培マンに当てる。
ドカァーンッ――――――。
爆音と共に栽培マンの体は消し飛ぶ。

大柄のサイヤ人は目を疑う。
小柄のサイヤ人は何も驚かず、もはやそれが当たり前だと思っている模様。
緑色の皮膚をしたクリリンがそれを見て、名乗りを上げる。
「よ、よし、次は俺がやってやる」

十分後・・・・・
クリリンは倒れ伏した。



第二話 「栽培マン決死の爆発」

「フン、雑魚の癖にでしゃばりやがって。次は俺がやる」
緑色の皮膚をしたピッコロは先程の栽培マンの前に歩み寄る。
「下らんゲームは終わりだ。全員で掛かって来い」
それを聞き、今まで退いていた栽培マンはピッコロの周りを囲む。
そして、栽培マン全員でピッコロに襲い掛かる。
ニヤッとピッコロは笑い、栽培マンを一瞬で手刀で3匹、蹴りで2匹を吹っ飛ばす。
栽培マンは怯まず、「キキィー」と奇声を発しながら、ピッコロに襲い掛かる。
「死ねぇっ!」
そう言ってピッコロは右腕を伸ばして栽培マン一匹の腹を貫く。
他の4匹の栽培マンはそれを見て、咄嗟にピッコロに抱きつく。
ピッコロは右腕を縮め、栽培マン達を振り払おうとした時、栽培マン達が爆発する。
「ピッコロさーーんっ!!!」
悟空の息子である、悟飯の声が、響いた。

そして爆発の後に残ったもの、それは・・・・・・
ピッコロや栽培マンの頭や左腕、足など。
胸などは消し飛び、ピッコロの復活は不可能だと思われた。
しかし、ピッコロの頭から顔が生え、顔から首が生え、
ピッコロの体はみるみる元通りに再生していく。
「危なかった、頭が消し飛んでいれば今頃俺はあの世行きだったな」

大柄のサイヤ人はそんなピッコロを見て、呟く。
「あいつはナメック星人!頭さえ無事でいりゃ再生出来るし緑色の皮膚だし間違いねえ!」
それを聞き、小柄のサイヤ人は口を開く。
「つまり、アイツがDBを作ったという事か。なら、奴を連れてくだけでも十分だな」
「お生憎様、俺はそんな器用なことは出来ん」
2人のサイヤ人は驚く。今まで小声で喋っていたので、
数十mも離れているピッコロには聞こえないと思っていたが、思いっきり聞こえていたからだ。
「ベジータ、栽培マンも全員やられちまったようだし、今度は俺が出る」
大柄のサイヤ人は小柄のサイヤ人―――ベジータ―――にそう言って、ピッコロの前に現れる。
「くくく、今度はお前等が全員で掛かって来い。望みどおりさっさと終わらせてやる」
大柄サイヤ人の余裕の宣言を聞き、警戒しながら悟飯とヤムチャ、
三つ目で禿げの男天津飯と超能力使いのチャオズがピッコロの横に並び、構える。

そして、大柄のサイヤ人は真っ先にヤムチャに向かって走り出した。



第三話 「動き出すサイヤ人、動けない狼」

「ゲッ、こっちにくるなぁっ!」
ヤムチャはそう言って繰気弾を5,6発出し、大柄サイヤ人に直撃させる。
しかし大柄サイヤ人は全くの無傷で、これっぽっちもダメージを受けていない。
ヤムチャは必死に繰気弾を出し、大柄サイヤ人に当て続けるが、
怯みもせず、ヤムチャに向かって走り続ける。

そして大柄サイヤ人はそのまま急接近し、ヤムチャの頬に強烈なパンチを浴びせる。
「ごふぉっ!」
ヤムチャは歯が折れ、血がダラダラと口から漏れつつ、吹っ飛んでいく。
まるでその姿は「ヘタレ」そのもの。
先程栽培マンに圧勝したのが嘘のようだ。
大柄サイヤ人は次にヤムチャの隣に居た天津飯の顎をアッパーでぶん殴る。

ヤムチャは腰を勢い良く岩に打ち付けられ、痛くて立ち上がれない。
「くそっ、あの禿げたサイヤ人、よくもやってくれたな」
ちなみに禿げたサイヤ人とは、大柄のサイヤ人の事。
ヤムチャは大柄サイヤ人を睨み、掌から先程より巨大な球体を作り出す。
「まだだ、あの禿げを倒すにはもっともっと力が要る」

その頃、ピッコロが大柄サイヤ人の餌食となった。

「気が集まったっ!!!こいつを食らえぇっ!」
ヤムチャは不気味な笑みを浮かべながら、繰気弾を大柄サイヤ人に向かって放つ。
大柄サイヤ人は次の獲物であるチャオズに気を取られている。
間違いなく、このまま行けば大柄サイヤ人に直撃する。
しかし、ベジータが大柄サイヤ人に向かって叫ぶ。
「ナッパっ!避けろっ!」
その声を聞き、繰気弾を見つける大柄サイヤ人―――ナッパ―――。
ナッパは咄嗟に繰気弾をジャンプして避ける。
「甘ーいっ!繰気弾は俺の思うがままに動かせるんだよっ!」
栽培マン戦の時のように繰気弾はUターンし、再びナッパに向かって飛んでいく。
「そんなもの何度も避ければ問題は・・・・う、動けないっ!?」

ナッパは止まったまま、動かない。
それは何故か?チャオズが超能力でナッパの動きを止めたからである。
そして、デカイ繰気弾がナッパに直撃する。



第四話 「ピッコロ死す」
ズドーン――――。ドガガガァ――――。
凄まじい地響きが鳴り、近くに居たチャオズ、ピッコロ、悟飯は爆風で吹っ飛ぶ。
やったか?とヤムチャの期待は高まる。
そして、仁王立ちする影。
「ち、畜生・・・・・・やりやがったヘタレはてめぇかっ!?」
ナッパは腰を痛めたヤムチャに向かって走り出すが、
途中、悟飯のドロップキックが顎に直撃し、吹っ飛ぶ。
「ヘタレの分際でぇ・・・・・・俺様の最高の技を食らえっ!」
そういい終えると、カパッ、と口を大きく開き、悟飯の方を向き、睨みつける。
悟飯は恐怖のあまり足が竦み、体が震えている。

そして、ナッパの口から凄まじい光線が放たれる。
「ちっ、手間かけさせやがって・・・・・・」
刹那、ピッコロが悟飯の前に現れ、悟飯を庇う。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ピッコロの叫び声が、木霊する。

ピッコロはドサッと倒れ、悟飯に話し掛ける。
「悟、悟飯・・・・・・お前と居た1年間・・・・・・悪くなかっ」
言葉は途中で途切れ、プチン、と悟飯の怒りが爆発する。
「ピッコロさんの・・・・・・仇・・・。ピッコロさんの仇ぃっ!!!!魔閃光っ!!!」
悟飯は立ち上がり、両手を重ね、頭の上に掲げて、縦に振り下ろす。
紫の閃光が悟飯の両手から放たれ、ナッパの胸部に直撃、
と思いきや、ナッパは手で紫の閃光を弾き返す。

弾き返された紫の閃光はナッパの攻撃をあびて立っているのがやっとな天津飯にぶつかり、
天津飯は凄まじいダメージ量を負う。
「くそ、こうなったら・・・・・・」
チャオズは咄嗟にナッパの背中にしがみつき、呟く。
「天さん・・・・・・どうか死なないで・・・・・・」
チャオズは栽培マンがピッコロにしたように、自爆を図る。
ドガガガァッ――――。
栽培マンの自爆、魔閃光、そして繰気弾。そのどれよりも勝る、凄まじい爆発。
だが、ナッパは死んではいなかった・・・・・・。



第五話「悟空、遂に到着」

「くそっ、こうなれば最後の手段、気功砲しかない・・・・・・」
気功砲とは、自らの命と引き換えに、絶大な威力を誇る気功波を放つ大技。
覚悟を決め、上空を飛ぶ天津飯。
天津飯は中指、人指し指、親指をそれぞれ右手と左手で合わせ、他の指はグーの状態。
「チャオズ、今すぐお前の元へ行ってやる・・・・・・」
そして人指し指と親指の間の空間から、黄色い球が現れ、ナッパに飛んでいく。

しかし、ナッパは軽く気功砲を避ける。
フラフラ、とゆっくり空から地上に落ちる天津飯。
生存者は、ヤムチャと悟飯、そしてナッパ、ベジータ。
しかもヤムチャは腰を痛め、悟飯は魔閃光を使い、立つのがやっと。
「ベジータ、俺様だけで十分そうだぜ」
ベジータに話し掛けるナッパ。
そんなナッパに高速で飛び掛る影。
それを察知し、ベジータは叫ぶ。
「ナッパ、背後から敵が来てるっ!」
「え?」
ナッパはその影の蹴りを食らい、ぶっ飛ばされる。
「おめぇら、よくもやってくれたな・・・・・・」
クリリンと同じ、山吹色の胴着。
髪は伸びきり、胸部や腕などにがっしりと付いた筋肉。
身長は天津飯程で、ナッパ以上の力を持つ男。
その名も、孫悟空。

「禿げた野郎に復讐するチャンスだっ!」
孫悟空の到着などそっちのけで、ほとんどの気力を繰気弾に集中させるヤムチャ。
その気の量はヤムチャが持つ気力の6割はある。
先程の巨大な繰気弾など、ヤムチャが持つ気力の内の2割程度の物だったのだ。
「行けぇっ!弾丸繰気弾っ!」
6割も集中させた繰気弾の割には細長く、先端が尖がっている。
そんな繰気弾のスピードは、先程孫悟空がナッパに接近したスピード以上の物。
孫悟空やベジータすらもその繰気弾のスピードに付いていけず、見逃す程だった。

ナッパは振り返ると、黄色い物体が真っ直ぐ飛んでくるのが見え、避けようとする。
流石に繰気弾が真っ直ぐ見えるナッパには、見つけられたようだ。
だが、ヤムチャはニヤリ、と笑う。
「この弾丸繰気弾は、何人たりとも避けられないぜ」
ナッパは繰気弾に胸部を貫かれ、ベジータの真横へ吹っ飛ばされる。
「ベ、ベジータ・・・・・・助けてく」
「動けないサイヤ人など必要無い、死ねっ!」
ベジータは無防備なナッパを空中に放り投げ、気功波で爆発させる。

仲間を殺す、ベジータの行動に呆気に取られる孫親子。
そしてナッパが死んでウキウキ気分のヤムチャであった。



第六話「戦う猿と見守る狼」

「オラが相手だ、ベジータっ!」
「くくく、カカロット。潰してやるぞ」
悟空は大きな声を上げ、ベジータは不気味に笑う。
悟空は先程ナッパに接近したよりも早く、ベジータに接近する。
そして、パンチやキックの連続攻撃をベジータに繰り出す。
だが、全てベジータに紙一重で避けられる。
「無駄だ、カカロット。俺様には勝てん」
ベジータは悟空の攻撃の隙を見つけ、頬に一発拳を打ち込む。
悟空はヤムチャの一歩手前の所まで吹っ飛ばされる。
「終わりだ・・・・・・カカロット!!!!」
ベジータは気功波を4つ程手から出し、悟空に放つ。
だが、悟空は焦りの表情は見せない。
「界王拳2倍だあぁぁ!!!」
悟空は突然そう叫ぶ。
悟空の体には赤いオーラのような物が纏い、気もさっきより倍程に膨れ上がっている。
悟空はその状態のまま、全て軽く避ける。
ベジータに再び接近していく悟空。
「今のはわざわざ避けやすくしてやったんだ」
そう呟くベジータ。悟空の攻撃も、以前として避けられる。
「くそっ・・・体・・・持ってくれよ・・・・・・。界王拳3倍っ!」
先程より赤みが増したオーラが悟空の体を纏った。
次第にベジータを押していく悟空。
「く、くそっ!?どうなってやがんだ!?」
焦るベジータ。それを見たヤムチャは
「プッいい気味だぜ」
とか言っている。
スピードもパワーも、数秒前とは全く別格。
ベジータは、空に上がって悟空の攻撃を逃れる。
「俺が、宇宙一なんだ・・・・・・。地球もろとも宇宙のチリになれーっ!!!」
ベジータは突然、巨大な気功波を放つ。
間違いなく、地球を滅ぼす程の威力はあるであろう。
悟空は先程の技が無理をしたのか、全く動けない。
「ヤムチャさんっ!地球がっ!」
悟飯は取り乱しているが、ヤムチャは冷静さを欠いてはいない。
「こうなれば・・・・俺の狼牙風風拳で受け止めるしかないっ!」
前言撤回・・・・・・。とても無茶苦茶な考えだ。
痛い腰を動かし、必死に悟空の前に走っていくヤムチャ。
「うおぉぉぉぉっ!!!」



第七話 「狼の意地」

ヤムチャが精一杯気を込めた狼牙風風拳を、ベジータの気功波に放つ。
凄まじい突きの一突き一突きが、ベジータの気功波を辛うじて受け止める。

ベジータの気功波の勢いでヤムチャの辺りの地面は崩れ、消し飛ぶ。
「うおぉぉっ!!!」
ヤムチャの叫びで一時、気功波を少しだけ押すが、依然として形成は逆転せず。
ギリリ、とヤムチャの歯軋りの音が聞こえる。
「さっさと消し飛んでしまえぇーーーっ!!!」
ベジータも必死になっている。
次第にジリジリと押され、ヤムチャは焦り始める。
気もそろそろ限界状態。そして指の骨も今にも折れそう。

刹那、ヤムチャの指が急に軽くなる。
辺りを見ると、悟空がかめはめ波でベジータの気功波を受け止めている。
「ヤムチャ、下がれっ!」
悟空の突然の声を聞き、無言で下がるヤムチャ。
そんなヤムチャに、悟飯が駆け寄ってくる。
「ヤムチャさん。お父さんがこれをって・・・・・・」
悟飯はそう言って右手の掌を広げ、ヤムチャに差し伸べる。
掌に乗っかっている物。
それは緑色の豆一粒。
しかし、ヤムチャははっと思い出したように、それを摘んだ。

ヤムチャはその豆粒を口の中へ放り投げる。
そしてゆっくり、味をしっかり味わいながら食べるヤムチャ。
ヤムチャの折れそうな指の骨が一瞬にして治り、気も全快する。
その豆粒の名前は「仙豆」。
一粒食べるだけで3日は飢えず、死亡した者以外のどんな傷をも治してしまうと言う神秘の豆。

その頃、段々とベジータの気功波を押していく悟空のかめはめ波。
「4倍だぁっ!!!」
今までよりも赤みが増したオーラを纏う悟空。
そして、一気に悟空のかめはめ波はベジータごと気功波を吹き飛ばす。
悟空はへなへなぁ〜、とその場に座り込み、大きいため息をつく。
(何とか地球爆発は防げたが、ベジータとかいうチビはまだ生きてやがるな、きっと)
心の中で呟くヤムチャ。たしかにあの程度で死ぬ輩とは到底思えない。

悟空は腰に掛けた袋から仙豆を一粒取り、口に入れた後、立ち上がって、
ベジータが飛んでいった方向を見続けた。



第八話「暴走する大猿」

しばらくして、ベジータが飛んでくる。
「カカロット、サイヤ人が満月を見て変身するというのは知っているな?
それはサイヤ人が目から満月から発する1700万ゼノを超えるブルーツ波を吸収するからだ。
そして限られたのサイヤ人は、人工的に1700万ゼノを超える小型の月、パワーボールを作り出す事が出来るのだっ!」
突然、ベジータは不気味に笑いながら左手の掌から青白い光の球体を出す。
球体を出した後、ベジータの気はぐっと下がる。
その球体からは妙な力や、邪悪な力を感じさせられる。
「弾けて混ざれっ!」
ベジータは青白い球体を空高く投げる。
球体は勢いが止まると爆発を起こし、強烈に光り輝く。
ベジータは球体を見上げると、突然、長い牙が生え出す。
そして毛が生え、目が赤くなり、どんどん巨大化していくベジータ。
その姿はまるで、猿。巨大な猿だ。

「うははははっ!どうだっ!」
高らかと声を上げるベジータ。
その姿に、ヤムチャ達は恐怖を感じた。

「ここまで気が上がっただと!?」
同様するヤムチャ。
ベジータの気は、青白い球体を出した後の10倍ぐらい上がっているからだ。
大猿と化したベジータはヤムチャ達に向かって走ってくる。
「すまねぇがヤムチャ、囮になってくれ」
悟空の頼みに驚愕するヤムチャ。
誰だってそう言われれば驚くに違いないだろう。
「元気玉っつう必殺技なら奴を倒せんだが、それには時間がちょっと掛かってな」
「お、俺が死ぬ前までには間に合うよな・・・・・・?」
恐る恐る悟空に問うヤムチャ。
それを聞き、悟空は自信満々にヤムチャに言う。
「おめぇの実力なら、不可能だな」
・・・・・・。
沈黙するヤムチャ。
だが決意を固めたのか、咄嗟にベジータに向かっていくヤムチャ。
(もし死んだら、奴を恨んでやる・・・・・・)
そんな想いを持って、ヤムチャは弾丸繰気弾を作り出し、ベジータに放つ。



第九話 「変則的」

弾丸繰気弾は真っ直ぐベジータへ飛んでいく。
しかし、ナッパに放った一撃よりもスピードが無く、
ナッパレベルでも何とか見切れる程だった。
それは気の消費を抑えているから。ベジータの気功波を防いだ時の二の舞にならないようにする為に。
「そら、もう一発!」
今度はとても小さな繰気弾を左手の掌から出し、ベジータに放つヤムチャ。
小さな繰気弾は変則的に動き、とてもスピードが遅い。
右手と左手、両手を使い、そんな二つの繰気弾を器用に操るヤムチャ。
ベジータは弾丸繰気弾をジャンプで避け、ヤムチャに襲い掛かる。
繰気弾を操るヤムチャは無防備、完全に隙だらけ。
ヤムチャは右手を引きつつ、バックして何とか避ける。
左手は色々と動かしている。あの小さな繰気弾の操作をしているのだろう。
そして再び襲ってくるベジータをニヤリ、とヤムチャは笑った。

「ベジータとかいうサイヤ人、てめぇの命は俺に握られているんだぜ!」
ヤムチャの突然の言動に、やや困惑するベジータ。
しかしはっと気付き、ベジータは背後に接近してきた弾丸繰気弾をジャンプで避けた。
そして飛んでくる弾丸繰気弾を、ヤムチャはマトリックス的動作で避ける。
弾丸繰気弾は岩山に直撃し、消滅する。
「こんな技が俺の命を握っているとでも言うのか?」
ケタケタと笑うベジータ。しかしヤムチャは笑ったまま。
気付けば、ヤムチャの左手はグーにしたまま、動かしていない。
「貴様が次に動けば、命は無い」
「やってみるがいい、ヘタレがぁっ!!!」
再び動き出し、襲い掛かるベジータ。
それを見て、ヤムチャは左手の中指と一指し指を突き出し、左手を引いた。
刹那、ベジータの腹が膨れ上がり、爆発する。
ヤムチャはニタリ、とほくそ笑む。
密かにベジータの腹に潜んでいた物。それはあの小さな繰気弾。
「お前の腹の中にあったのは圧縮繰気弾っつってなぁ、
巨大な繰気弾を数mm程度に圧縮したもんなんだ。
だがら威力も絶大。お前はそれが口から入ったのも気付かず、
生意気な事をほざいていたんだよ」
ベジータは倒れ、力を失う。
「繰気弾ってのはなぁ、色んな意味で変則的なんだぜ!?」
ヤムチャはそう吐き捨て、悟空の元へ飛んでいった。
背後に赤い光線が接近しているとも知らず。



第九話 「変則的」
弾丸繰気弾は真っ直ぐベジータへ飛んでいく。
しかし、ナッパに放った一撃よりもスピードが無く、
ナッパレベルでも何とか見切れる程だった。
それは気の消費を抑えているから。ベジータの気功波を防いだ時の二の舞にならないようにする為に。
「そら、もう一発!」
今度はとても小さな繰気弾を左手の掌から出し、ベジータに放つヤムチャ。
小さな繰気弾は変則的に動き、とてもスピードが遅い。
右手と左手、両手を使い、そんな二つの繰気弾を器用に操るヤムチャ。
ベジータは弾丸繰気弾をジャンプで避け、ヤムチャに襲い掛かる。
繰気弾を操るヤムチャは無防備、完全に隙だらけ。
ヤムチャは右手を引きつつ、バックして何とか避ける。
左手は色々と動かしている。あの小さな繰気弾の操作をしているのだろう。
そして再び襲ってくるベジータをニヤリ、とヤムチャは笑った。

「ベジータとかいうサイヤ人、てめぇの命は俺に握られているんだぜ!」
ヤムチャの突然の言動に、やや困惑するベジータ。
しかしはっと気付き、ベジータは背後に接近してきた弾丸繰気弾をジャンプで避けた。
そして飛んでくる弾丸繰気弾を、ヤムチャはマトリックス的動作で避ける。
弾丸繰気弾は岩山に直撃し、消滅する。
「こんな技が俺の命を握っているとでも言うのか?」
ケタケタと笑うベジータ。しかしヤムチャは笑ったまま。
気付けば、ヤムチャの左手はグーにしたまま、動かしていない。
「貴様が次に動けば、命は無い」
「やってみるがいい、ヘタレがぁっ!!!」
再び動き出し、襲い掛かるベジータ。
それを見て、ヤムチャは左手の中指と一指し指を突き出し、左手を引いた。
刹那、ベジータの腹が膨れ上がり、爆発する。
ヤムチャはニタリ、とほくそ笑む。
密かにベジータの腹に潜んでいた物。それはあの小さな繰気弾。
「お前の腹の中にあったのは圧縮繰気弾っつってなぁ、
巨大な繰気弾を数mm程度に圧縮したもんなんだ。
だがら威力も絶大。お前はそれが口から入ったのも気付かず、
生意気な事をほざいていたんだよ」
ベジータは倒れ、力を失う。
「繰気弾ってのはなぁ、色んな意味で変則的なんだぜ!?」
ヤムチャはそう吐き捨て、悟空の元へ飛んでいった。
背後に赤い光線が接近しているとも知らず。



第十話「二匹目の狼」

ズドーン――――。
赤い光線が背中に直撃し、大きな岩の陰へと落ちていくヤムチャ。
背中から胸に貫通しなかったものの、大ダメージを負う。
そして立ち上がる大猿ベジータ。
赤い光線を放った奴も、このベジータだろう。
「くくく、カカロットとその息子はじっくりと甚振ってやる」
ベジータは悟空と悟飯を巨大な手で掴もうとする。
悟飯は魔閃光をベジータの手に放つが、全く効かず、掴まれる。
悟空は万歳ポーズを取ったまま、避けようとするが、反応が遅れ、掴まれる。
ベジータは右手に悟空、左手に悟飯を掴み、じわじわと力を込めていく。
「ぐああぁ・・・・・・!!」
「うあぁぁ・・・・・・!!」
悲痛のあまり叫ぶ孫一家。
それを聞きニヤッと笑うベジータの紅い両目に、突然気功波が直撃した。

両手の力は一気に力が増し、痛烈に叫び出すベジータ。
「ぐわあぁぁ!!!俺様の・・・・・・俺様の顔に傷をぉーーっ!!!」
孫一家の叫びはベジータの叫びによって掻き消される。
そんなベジータの前に歩み寄るヤムチャ。
ベジータはヤムチャを見つけ、口から赤い光線を連続で放つ。
本来の赤い光線ならばヤムチャ等避ける動作すら出来ないが、今回は違った。
ヤムチャの反応が素早い。いや、それだけでは無い。
ベジータが怒り狂っているからこそ、ヤムチャが避ける事が出来たのだ。

「2157程度の戦闘力で、この俺の顔に傷をぉーーっ!!!!」
幾つか隙が出来るベジータ。それを冷静に見切り、ベジータの背後に回り込むヤムチャ。
ヤムチャの狙いはベジータの尻尾。
大猿を解くには、尻尾をなくすか、1700万ゼノを超える物を排除しなければいけないのだが、
ヤムチャはあんなに離れた光を排除するパワーは無く、ベジータ自身の尻尾を無くす作戦に出たのだ。

「馬鹿めッ!!!尻尾でなぶり殺してやるぞっ!!!!!」
そう言ってヤムチャの頭に尻尾を直撃させるベジータ。
これで勝利が決定した。ベジータはそう思った。
しかし、ヤムチャの体ごとベジータの尻尾は爆発し、消滅する。
尻尾が無くなったベジータは大猿化が解けながら、倒れていく。
そして掴まれていた孫一家はその勢いでベジータの手から離れ、投げ出される。
完全に大猿化が解けたベジータの前には、再びヤムチャの姿があった。



第十一話「元気玉完成」

ベジータの前に立つヤムチャ。
ベジータは赤い光線を放ちすぎ、体力が消耗して立つ事が出来ない。
そして、ヤムチャも先程の光線を食らい、辛うじて立っている模様。
ベジータはヤムチャが存在しているのを見て、意味が分からず、困惑する。
「繰気弾は変則的だ、って、前に言ったよな?」
ベジータはそれを聞き取り、はっと気付く。

最初の眼球への一撃。それは視力を落とす為。
そして最初に現れたあの野郎。あれは奴が自分に似せて作った繰気弾。
視力が落ちた自分に取って、判断など出来る訳が無い、と思ったから。
実際、自分には判断が出来なかった。
当の奴は隠れて自分似の繰気弾を操っていた、と。

ベジータも興奮が収まり、やっと冷静になったようだ。
「お前は悟空の必殺技によって葬られる。覚悟しやがれ」
ヤムチャは悟空の所へ歩み寄る。
沈黙するベジータ。
しかし、ベジータは死ぬ覚悟等して居なかった。
「俺は・・・・サイヤ人の王子だ・・・・。誇りを持ったサイヤ人の王子だあぁぁっ!!!」
力を振り絞り、ヤムチャ等に襲い掛かるベジータ。
誇りと命を懸けて戦う、それがベジータの覚悟。

「悟、悟空!元気玉とやらは完成したんだろ、早くやれっ!!!」
焦るヤムチャ。先程大猿ベジータを圧倒したとは言え、
あそこまで多大なダメージを受け、とても勝ち目など無い。
となると、やはり悟空のあの切り札、「元気玉」しかなかった。
「半分以下はエネルギーが無くなっちまったが、それでもベジータは倒せる筈だ・・・・」
ヤムチャの手に悟空は手を当て、離す。
ヤムチャの掌から突然強大な気の量の球体の塊が出てくる。

悟空は先程のダメージで力を失い、元気玉を放てなくなる程だった。
ベジータは、何としても攻撃を当てさせまいと、左右に動きながら迫ってくる。
そのスピードを見て、ヤムチャは元気玉を放てきれずに居た。
そんなヤムチャの耳に、今まで聞いた事の無い声が聞こえる。
「ヤムチャとやらよ、元気玉は目で見て放つのではない、悪の気を感じ取って放つのだ」
その謎の声を聞き、一瞬戸惑うヤムチャ。
だが、それに賭けてみるしかないと思い、目を瞑るヤムチャ。

そして一瞬だけ感じた禍々しい気。
「いけぇーーーっ!!!!」
目を開け、叫ぶヤムチャ。
そして、元気玉は豪快に放たれた。



第十二話 「決着」
「馬鹿がっ!その程度のスピードでぇっ!!!」
軽く元気玉を避けるベジータ。
膨大な気の量の為、ヤムチャ程度の気のコントロールではスピードは多少落ちてしまう。
悟空や悟飯は諦め、ベジータはそれをあざ笑っていた。
しかし、ヤムチャは何故かある自分の技を思い出していた。
ヤムチャに飛び掛るベジータ。
空高くジャンプし、何とかベジータの大振りを避けるヤムチャ。
ベジータはニヤリと笑い、巨大な気功波を出し、ヤムチャに放つ。

ヤムチャは落下のスピードと自分の技量で辛うじてその気功波を受け止める。
「いつまで耐えられるかな?」
更にニヤリと笑うベジータ。
ヤムチャはそれを見て、苦しみながら言い放つ。
「人の心配してる場合か?」
刹那、ベジータの背中にとてつもない圧力が掛かる。

ベジータは凝縮された気の塊――元気玉――を背中に食らい、凄まじいスピードで吹っ飛んでいく。
「うりゃあぁっ!!!」
受け止めていた気功波を上空に飛ばし、その反動でベジータ目掛けて飛んでいくヤムチャ。
ヤムチャは人指し指と中指に今ある全気力を集中させる。
そして、ベジータに接近した所で、空中用の独特の構えを見せるヤムチャ。
「これで終わりだっ! 狼 牙 風 風 拳 っ !」
力の篭った一突き一突きがベジータを襲い、確実にダメージを与えていく。

「ぐ・・・・この俺が・・・・・・この俺があぁーーーっ!!!!」
地面に叩きつけられるベジータ。
ベジータの『誇り』。それをヤムチャが粉々に砕いていく。
地面に足を着けるヤムチャ。
身動きが出来ぬベジータに止めを刺さず、話し掛けるヤムチャ。
「早く自分の星に帰れ。次に卑劣な事をすれば、俺はお前を殺す」
誇りをズタズタに引き裂かれ、粉々にされたベジータは何も言わず、球体状の機械に乗り、去っていった。

それを見続けるヤムチャと孫一家。
「悟空・・・・これで、良かったんだよな?」
「ああ、間違ったことは言ってねえ筈だ・・・・」
一方地球から立ち去ったベジータ。
「情けをかけられなければ、殺されていた・・・・くそったれ・・・・」

そして彼等は、ドラゴンボールと言う不思議な球によって、そう遠くない未来、再会する事になる。



第十三話 「希望」

大きな病院が佇む隣の公園。
住宅街の中央にあると言う理由もあり、子供達が賑やかに遊んでいた。普段ならば。
しかし今日は違った。
風が中心部から吹き荒れ、草木が揺れるという、不自然な現象が起こっていた。
そして、子供の声など一つも聞こえず、中心部にただ二人の男が居るだけ。
それは今日だけでは無く、半月程前から。
一人は赤いオーラを纏いながら自身の気を爆発させるように膨れ上がらせ、
もう一人は車椅子に乗ってその男を傍観していた。

男の今まで膨れ上がっていた気は収まり、赤いオーラは消え、今まで吹いていた風は止む。
「ヤムチャ、たった15日で界王拳をマスター出来るなんてオラ、驚いたぞ」
車椅子に乗った男――悟空――が気を膨れ上がらせている男――ヤムチャ――に話し掛ける。
悟空は一ヶ月程前に襲来したサイヤ人との戦闘により、体中が負傷していた。
そしてこの公園の隣にある病院に入院。仙豆は切れていたものの、
それでも何とか外出が出来る程までに回復していた。
そしてヤムチャはそんな悟空に界王拳の伝授を頼む。

怠け性のヤムチャならば、尚更平和と言うことに浮かれる筈なのに。
何故こうも平和という理由で浮かれず、怠けず、只管頑張り続けているのか。
その答えは25日程前に遡る・・・・・・。

「ドラゴンボールがもう一組あるですってぇっ!?」
大病院3805号室。その室内で、騒がしい叫び声が響き渡る。
この室内には孫一家以外の病人や怪我人が居ないのは幸いだったが、
「やかましい」「静かにしろ」等、近くの病室から苦情を言いに押しかけてくる病人が何名も居た。

「サイヤ人、ピッコロに言ってた。
 ドラゴンボール、ナメック星人作れるって。
 神様とピッコロ元は一人の人間。
 だから神様乗ってきた宇宙船ある。きっとそれでナメック星行ける」
今は亡き神様の付き人、ミスター・ポポ。
ポポ自らが言ったように神様とピッコロは元は一人の人間。
だから、ピッコロが死ねば、神様も死ぬのだ。
更に、神様は地球のドラゴンボールの創造者。
その創造者が死ねば、ドラゴンボールもただの石と成り下がってしまう。
そして、近くに居たヤムチャ達でさえ聞こえなかった声を遠く離れた場所で聞き取れたポポには驚愕を覚える。

こうして、ナメック星という未知の惑星への出発への準備は始まった。
宇宙船の乗組員は、先程声を響き渡らせた女科学者ブルマ、
武士でぽっちゃりとした体系が特徴のヤジロベー、
悟空、悟飯、そしてヤムチャ。
ブルマ、ポポ、そしてブルマの父ブリーフ博士は神様が乗ってきた宇宙船を改良中。
そしてヤムチャ、悟空、悟飯は修行。
尤も、悟空、悟飯はサイヤ人戦の負傷により入院中なのだが。

これがヤムチャが修行する理由。
そして10日後、ナメック星へ無事に出発することとなった。



第十四話 「修行」

宇宙船は大きく分けて二つの種類の部屋がある。
一つは無重力ではなく、地球の重力に合わせている部屋。
設備は揃っているので、なんら不自由は無い。
そしてもう一つは、無重力から地球の重力の300倍まで重力を調整出来る部屋。
悟空や悟飯、ヤジロベーやヤムチャが修行する時に使うものだ。

地球出発から30分もしない内に、地球圏を抜け、自由行動が可能になる。
早速悟空、悟飯、ヤムチャ、ヤジロベーは重力調整室に向かう。
悟空は操作盤で無重力から地球の150倍の重力に調整する。
「ぐおおぉぉ・・・・・・」
聞こえたのはヤムチャやヤジロベーの呻き声。
ヤムチャとヤジロベー、悟飯は床にへばり付く。
何しろいつも普通に暮らしている150倍の重力が掛かったのだ、超人とは言え無理は無い。
悟飯は声すら出す事が出来ない。
辛うじて悟空は歩く事が出来る。
死後の世界で10倍の世界を一度体験する事があった。
悟空はその10倍の世界を通常の90%以上を行動出来るようになった。
悟空にしてみればそのたかが15倍、という物だ。

ヤムチャは「駄目かも知れない・・・・」と必死に重い体を上げようとしながら、一人呟いていた。

修行から既に5日が経った。
悟空はほぼ普通に動けるようになった。
悟飯とヤジロベーは這い蹲りながら動ける位、ヤムチャは何とか立てる位にまでレベルが上がっていた。
悟空はその状況下でキックやパンチの連続などをする。
さすがの悟空もこれは少々きついようだ。
突然、ヤムチャは界王拳を発動させる。
界王拳は力やスピードが倍増する技。しかし体に負担が掛かるという諸刃の剣でもある。
ヤムチャが負担に耐えられる界王拳は1.5倍。
その限界値の1.5倍界王拳を、ヤムチャは発動させた。
すると、ヤムチャは悟空と同じ位にまで動けるようになり、早速狼牙風風拳を連続して行った。


それからしばらくして、悟飯、ヤジロベーも普通に立てるまでに成長し、
ヤムチャも界王拳2倍まで扱えるようになる。
悟空はそれを見て、300倍の重力に変更する。

ドガアッ―――。
受身も取れず、先程の2倍の重力が全身に掛かり、床に叩きつけられる4人。
この悟空でさえも、立つ事は出来なかったのだ。
たった2倍でこれだけ違う。そう実感させられる4人。
悟空は、今まで使わなかった界王拳を発動させる。
悟空は何と4倍まで発動させても負担は全く感じない程になっていた。
2倍、3倍と序々に倍率を上げる悟空。そして、3.5倍の時点でやっと立つ。
ヤムチャは既に2倍の界王拳を発動していたが、先程と至って様子は変わらなかった。
そして、悟空も長時間の界王拳により、気が消耗し、2倍、1.5倍・・・・・・とどんどん倍率が落ちていく。

再び悟空は床に叩きつけられる。
地球出発から12日目、修行は苦境に達した。



第十五話「無茶」

修行の時間を終え、地球の重力とほぼ同じ重力を持つ部屋に戻る悟空達。
修行の部屋から出るだけでも床を這い蹲り、数時間掛け、やっとの抜け出したのだった。
悟空でさえ、多大なダメージを負っていた。
というか、二度床に叩きつけられた悟空が一番ダメージを負っていた。
ヤムチャはこのままではナメック星に着く前に死んでしまう、そう思った。
とはいえ修行は止められない。もしも侵略者やピッコロに似たその星の住人と戦闘が起こったら?
サイヤ人の時のようにテクニックでどうこう出来るレベルで無ければどうなるか?
答えはもちろん、『死』。それは免れぬ真実だ。
皆を生き返らす為に行ったのに、自分が死んでは元も子も無い。

ヤムチャは考える。300倍重力に耐える為にはどうするか。
「ヤムチャ、早く食べなさいよ」
「ん?あ、ああ」
ブルマに急かされ、高性能ロボットが作った昼食を食べながらも、ヤムチャは考える。
ヤムチャは昼食を食べた後、自分の部屋に篭って、ヤジロベーと共に考える。
修行の時間は1時間半後。それまで自由行動。
悟空と悟飯は安眠ベットでゆっくり休むらしい。

そして1時間半はあっという間に過ぎ去り、修行時間がやって来た。

ヤムチャ達の考え。それは靴や靴下を脱ぎ、重力室に入ること。
これなら数百kg程、軽くなる筈だ。
真っ先に、ヤムチャがゆっくりと重力300倍の重力室に入る。
足、腰・・・・・・と体を順々に入れていくヤムチャ。
胸を入れた所でヤムチャの体は床に叩きつけられ、のそのそと這い蹲りながら重力室に入る。
次に悟空。
先程より倍率が少し低めな界王拳3倍を使い、重力室に入る。
誰もが普通に歩く事は不可能、そう思った。
しかし、悟空はやや苦しみながらも重力300倍の重力室を歩く。
それだけでは無かった。悟空の気の量は、先程よりも強く感じられた。
その姿を、ヤムチャは這い蹲りながら羨ましそうに見つめる。
ヤジロベーも悟飯も、ヤムチャと同じように入った途端に床に叩きつけられ、這い蹲る。
「こうなったら・・・・5倍だぁーーーっ!!!!」
思いっきり叫んで、無理やり5倍の界王拳を発動させるヤムチャ。
悟空はサイヤ人戦の時に使った4倍界王拳は、とても体が痛んだらしい。
ヤムチャの界王拳は、その頃の悟空と許容限度は同じ2倍。
凄まじい闘気と赤過ぎるオーラを纏うヤムチャ。
ヤムチャは、今まで這い蹲っていたのが嘘のように、軽く立ち上がる。
そして、その裏腹に、ヤムチャの体には、今まで受けた事の無いような苦痛が体中に迸った。

――――そしてそのヤムチャの凄まじい闘気により、重力室では異変が起こっていた。



第十六話「分離」

ヤムチャの痛みはピークに達していた。
五倍界王拳を使ってからたかが数分しか立っていないというのに。
ヤムチャは自分の非力さがしみじみと伝わっていた。
だからこそ、ヤムチャは五倍の界王拳を使った。
サイヤ人戦ではそこそこ活躍できた。
いつもそうだった。悟空が居なければベジータを倒す決定的な技も使えず、勝てなかった。
そんな自分に、ヤムチャは嫌気が差していた。
『それ』から決別する為に、敢えて無茶な五倍の界王拳を使ったのだ。
五倍程度の界王拳では、今までと殆ど変わらぬ戦力だろう。
五倍界王拳まで扱えるようになれば、悟空と同じ位活躍出来る。
そう思って、ヤムチャは五倍界王拳を使った。それをマスターする程の丈夫な体を作る為に。

その傍で修行している悟空は気付いていた。
(この部屋の重力がジリジリと重くなってるな。このままだと・・・・)
そう、この部屋には、300倍を有に超える重力が存在していた。間違いなく。
ヤムチャが5倍界王拳を使ってからだ。その異常が起こり始めたのは。
凄まじい気のせいかどうかは分からない。
だが、重力が重くなっている、というのは事実だった。
「ヤムチャ、ヤジロベーと悟飯を普通の部屋に運んでって・・・・・・」
悟空は、思いっきり叫んだ刹那、強烈な気功波が腰に直撃し、ドアの方に飛んでいった。

悟空だけでなく、ヤジロベーや悟飯さえも背や足に強烈な一撃が直撃し、ドアの方へ吹っ飛んでいく。
悟空までも飛ばされる、その威力。
それが放てるのは、今五倍界王拳を使った――――。
「や、ヤムチャっ!?」
悟空は動揺しつつも、ヤムチャの方を向く。
ドサッ――――。
悟空達が重力調整装置の範囲内を超えた所で、気功波が消滅する。
気功波にのっかかっていた悟空達はそのまま床に倒れ、ヤムチャの方を見る。
ヤムチャは急いで調整装置の奥にある部屋に向かっていく。
奥の部屋には、操縦席と機械が幾つか並んでいた。
ポチッ。
軽快な音が一つなると、重力調整室と普通の部屋の間にあったドアが幾つも閉まる。
ポチッ。
二つ目の音で重力調整室と普通の部屋が完全にシャットアウトされ、分離を始める。
「危ねぇ、あのままだと普通の部屋にまで異常な重力が及んでいたな」
ヤムチャは操縦席に座り、前にある窓から外を眺める。
その窓からは先程分離した宇宙船が見える。
どんどんと離れていき、次第には見えなくなっていった。

ヤムチャは宇宙船に乗り込む前に、ブルマから色々な事を聞かされた。
この宇宙船は分離できる事や、ナメック星のある場所、
重力調整装置が異常を来す時、普通重力の部屋まで異常が及んでしまうかも知れない事。
その他にも色々聞いたが、必要な事はこれぐらい。
後は脱出装置、攻撃装置などだ。多分、まずそんな物は必要ない筈だ。

暗い暗い闇の宇宙で、一つの宇宙船が、彷徨っていた。


第十七話「苦悩」

宇宙船を分離させ、一人重力室に残ったヤムチャ。
修行をしようにも二倍程度の界王拳では床にへばりついてしまう。
かといって今使っている五倍の界王拳を使って修行をすれば間違いなく、体力や気が尽きてしまう。
仙豆や体力を回復させるマシーンなど無い。
寝るにしても部屋全体に掛かっている異常な重力によって殆ど体力を回復出来ないだろう。

ヤムチャは操縦室から、先程修行していた部屋に戻ると、五倍界王拳を解き、通常の状態に戻る。
轟音と共に床に叩きつけられるヤムチャ。叩きつけられるのにはもう慣れた様だが、とても痛そうだ。
ヤムチャは俯けで体を伸ばしきって、床にへばりついた状態から、通常状態で立ち上がろうとする。
「ぐおぉぉぉぉ・・・・・・っ!!!」
呻き声を上げるヤムチャ。
先ず腕を動かそうとするが、微動だにしない。
仕方なく足だけで立ち上がろうとするが、縮めきるのがやっと。
やはり手の力も無ければ、今のヤムチャでは立ち上がる事は不可能。

ヤムチャが試みた修行、それは基礎戦闘力を上げる修行。

修行再開から、10時間は経っただろう。

依然として腕すら微動だにせず、修行は困難を極めた。
ヤムチャが感じるもの。それは苦痛以外に他ならなかった。
一番痛みを感じるの部分は脚。
今まで縮めたり立ち上がろうとしたりで、負担はもの凄い物だった。
(くそっ・・・・・・ちっとも進歩していない・・・・・・)
ヤムチャは半分諦めかけていた。そして『駄目な奴』と自分で自覚していた。

誇り、怒り、願望、使命感・・・・・・。人間が戦う理由。
ヤムチャにも幾つもそんな理由があった。しかし、それはどれも弱い物ばかりだった。
そんな自分に嫌気が差していたのに、決別する筈なのに。
ヤムチャは何も変わっていなかった。決別など出来ていなかった。
口を苦しそうに開けるヤムチャ。

「くそ・・・くそっ・・・・くそぉぉぉーーーっ!!!!」
ヤムチャの叫びは、宇宙船の中で虚しく、木霊していた。

ナメック星到着まで残り推定五日。
刻々と、時間は迫る。



第十八話「不時着」

増してゆく痛み。消えてゆく力や決意。
ヤムチャの腕は未だに動かない。というより動く気すら無かった。
(もう何でもいい・・・・早くナメック星に着いてくれ・・・・)
意識は、もう以前のヤムチャに戻っていた。いや、それ以下だろう。
ピピピピピッ――――。
全くの無音であった室内に、突然サイレン音が響く。
「な、何だっ!?」
ヤムチャは何が何だか全く分からず、困惑する。
「これより、緊急着陸システムを起動させます。船内に居る者は、ただちに安全区域に入りなさい」
現在状況を知らせるアナウンスの音声が聞こえる。
アナウンスの声の主はブルマ。
ヤムチャは一瞬聞き惚れたが、はっと今ある状況を思い出し、
五倍界王拳を発動させ、安全区域である操縦室に走り出す。

操縦室の窓に映っていた物。それは紛れも無く、星だった。
「ナメック星・・・・!?いや、こんなに早く着く筈が・・・」
アナウンス時に『着陸』というキーワードがあったが、ヤムチャは混乱してそれを把握する事さえ間々ならなかったのだった。

何処の星か、何故そんな星に来たのかも分からない。
余儀無く到着の準備をするヤムチャ。
取り敢えず、この状況下ではそれ以外の方法は考えられなかった。

現状を何とか理解したヤムチャは、気を探る。
「大した気は感じられない・・・・が、油断は禁物だ」
自分と同じように、気を隠す事も出来るかも知れない。そう気を引き締めるヤムチャ。
「着陸まで後30秒。衝撃にお気お付けください」
再びブルマ声のアナウンスが聞こえる。着陸までどうやら後30秒らしい。

ウィィィィン――――。
機械音の音量が上がっていく。
そして窓から見える星がドンドンと近付いていく。まあ実際には、こちらが近付いているのだが。
「10・9・8・7・・・・・・」
アナウンスがカウントダウンを始め、ヤムチャは唾をゴクッと飲む。
「3・2・1・・・・・・着陸開始っ!!!」
宇宙船の下に付いている噴射口から炎が噴射され、宇宙船のスピードが落ちていく。
埃を撒き散らしながら、宇宙船は着陸する。
ドゴォォン――――。
凄まじい轟音を上げ、グラグラと揺れる宇宙船。
しばらくして揺れが収まると、宇宙船の出入り口が開き、五倍界王拳を使ったヤムチャが出てくる。
「重力は地球よりちょっと軽いぐらいかな・・・・」
軽くパンチの素振りをして、重力を確かめるヤムチャ。
そしてヤムチャは五倍界王拳を解き、舞空術を使って、空を飛び、辺りを見回す。

岩山や砂等が殆どで、かなり殺風景。草木などの緑は全く無いようだ。
この星を観察しているヤムチャの頭上から、突然声が聞こえる。
「侵略者め、消え失せろっ!!!」
ヤムチャの背中を、何者かが手刀で思いっきり叩く。
「かはっ!!!!」
吐血をしながら、ヤムチャはそのまま地面へ向かって落下していく。



第十九話「能力(上)」

地面に叩き落されるヤムチャ。辺りに土煙が舞い、視界がゼロになる。
ヤムチャを襲った人物。薄い緑色で、黒点がポツポツと一面に広がっている皮膚。
ピッコロのような触角が生え、クリリン位の身長。目は尖がった垂れ目。
とても非力そうな人間ではあったが、姿とは裏腹に、その力は悟空でさえもたじろぐ程の物だった。

「これで・・・・終わりだーーーっ!!!」
右手と左手を重ね合わせ、前にある左手の掌から、巨大な光線を放つ異星人。
その光線は土煙が舞っている全域を包み込む程の大きさで、威力も山を3つ程壊すものだった。
ズドオォォン――――。
大爆発が起こり、爆音が轟き、土煙が更に増す。
地面は中心が数メートル程削れ、近くにあった岩などは粉々に砕け散っていた。
数分程すると、土煙が収まり、何処にも人の姿など無かった。
「消し飛んだか・・・・」
異星人が立ち去ろうとした刹那、左方からヤムチャのストレートが異星人の左頬に炸裂する。

「ほげっ!!!」
奇声を発しながら吹き飛んでいく異星人。
ヤムチャの姿は衣服ボロボロ、髪はボサボサ。鼻血や吐血、額や腕、足からの出血。
既にはぁはぁと息が切れ、気も少なからず減少している。
「早めに終わらせてもらうぜっ!!!」
かめはめ波の溜めの構えをするヤムチャ。
「か〜め〜は〜・・・・」
刹那、異星人の姿が消える。
ヤムチャは異星人が消えた事で戸惑い、かめはめ波を止める。
辺りを見回すが、そこには異星人の姿は無い。
よく居そうな頭上も見るが、やはり異星人の姿は見えず。
「下だっ!」
その声を聞き、下を向くヤムチャ。しかし異星人の姿は無い。
「馬鹿めっ!掛かったなっ!」
異星人の見事な踵落としがヤムチャの頭に直撃する。

今度は地面に叩きつけられなかったが、かなりのダメージを負うヤムチャ。
そして意識が朦朧となりながらも、ヤムチャは考える。
(一体何が・・・・確かに頭上は誰も居なかった筈だ。どうして・・・・)
そう考えている間に、瞬時にしてヤムチャの眼前に現れる異星人。
異星人は超高速のパンチをヤムチャに繰り出す。それはまるで、鬼そのもの。
異星人の猛攻は、止まらない。



第二十話 「能力(下)」

強烈な一撃。それを連発し続ける異星人。
「てやあぁっ!!!」
ドゴッ――――。
ヤムチャに重い拳が溝にクリーンヒットする。
血を吐き、溝を押さえながら、凄まじいスピードで吹っ飛ぶヤムチャ。
ヤムチャは何とか舞空術のパワーを上げ、スピードを落としていく。
「俺は平和主義者であり侵略者では無いっ!信じてくれっ!」
戦闘では勝ち目は無いと思ったのか、ヤムチャは両手を挙げ、降参のポーズを取る。
「前にそういう侵略者が来てな。俺らヤードラット星人は馬鹿みたいに正直だ。
 どうなったか分かるか?俺のような戦闘向けのヤードラット星人以外全員どっかに拉致された」
異星人、基、ヤードラット星人は静かに話す。
「ヤードラット星人は一人一人別々の超能力を持っている。
 その為、拉致されたんだろうな。そして俺の超能力は――――」
全て言い終える前に、ヤードラット星人は姿を消す。
「――――瞬間移動だ」
ヤムチャの背後に、ヤードラット星人の姿があった。
そしてそれは即ち、ヤムチャにとっては危険だと言う事を意味していた。

「え?」
予想外の回答に驚くヤムチャ。
咄嗟にヤムチャは急降下し、間を置く。
ヤードラット星人は瞬間移動でヤムチャの目の前に現れる。
「逃げても無駄だっ!」
刹那、ヤードラット星人が見事に吹っ飛ぶ。
そして其処には赤いオーラを纏ったヤムチャが居た。
そのヤムチャの気は、先程の物より三倍程、膨れ上がっている。
ヤムチャは掌から直径1mはあろう巨大な球体を作り出す。
「こうなりゃ無理矢理分からすしかねえなあ・・・」
そしてその巨大な球体を、ヤードラット星人に向かって放つ。
巨大な球体のスピードは、以前ナッパに放った弾丸繰気弾の4倍程。
避けるにはかなり難しいスピードの筈。
だが、当然ヤードラット星人は瞬間移動でヤムチャの頭上に移動する。
そして気功波を打つ構えを・・・

「良いのかよ?繰気弾が狙ってるぜ?」
繰気弾は直ぐにUターンして、ヤードラット星人に向かって飛んでくる。



第二十一話「形勢逆転」

「ちぃっ・・・」
ヤードラット星人は繰気弾の方を向き、右手の手刀で弾こうとする。
「散っ!!」
ヤムチャが突然叫ぶ。
刹那、繰気弾は50つに散らばり、ヤードラット星人を囲む。
ヤードラット星人は咄嗟にガードの体制を取る。
先程の大きな繰気弾は確かに強大だった。
だが、その強大な気を50に割った。
幾ら強大だったとしても、50に割ればどうってことは無い。
ただのへなちょこな攻撃。連続して食らったって、それは同じ事、
ヤードラット星人はそう考えていた。

しかし、それは違った。
速さの分が加算されていなかった。
「ぐおぉぉぉぉっ!!!」
轟音と叫び声が同時に響き渡る。

先程の大型の繰気弾。その速さはナッパに放った弾丸繰気弾の4倍。
その繰気弾が分裂した100つ全ての繰気弾の速さは、分裂する前と、殆ど変わらない物だった。
いや、僅かに分裂した繰気弾の方が速いかもしれなかった。
それを50つも食らうのは、相当な苦痛であろう。
「くっ・・・・油・・・・断した」
煙から出てくるヤードラット星人。
淡い緑色の皮膚が血で覆われ、何よりも気の量も大幅に減っていた。
「出来れば俺は無駄に殺したくないんだ。この辺で勘弁してく――――」
――――ズキンッ。
界王拳の『ツケ』が体中に響く。
三倍だけなら何とかなった。だが、五倍の界王拳を容易に使いすぎた。
そして、動きに一瞬隙が出来る。
それを、ヤードラット星人は見逃さなかった。

ヤムチャの眼前に瞬間移動し、ヤムチャの腹部に拳を放つ。
重く、速く、猛烈な一撃。そして、全てが決まった。
地上に落下するヤムチャ。
ヤードラット星人は、渾身の力を振り絞り、気功波をヤムチャに放つ。

ズドーンッ――――。
形勢は完全に、ヤードラット星人に戻された。