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ヤムチャの最後



これはもう一つの未来の物語である。


第23回天下一武道会、悟空VSビッコロの壮絶な闘いがあった。
悟空は勝利したが、神様とピッコロの関係を知らなかった為、ピッコロにトドメを刺してしまい、
神様とドラゴンボ―ルは消えてしまう。だが、地球は永い平和を手にした。


そして2年後…


第一章:


出来事 それは、子供達が心踊る正月の出来事である。
ヤムチャはブルマの家で正月を過ごしていた。

「ヤムチャ〜。羽子板やらない?」
「うん、やろう。」

しかし、ヘタレ王・ヤムチャはあっという間に墨だらけの顔になった。

「今度は負けないぞ!うおおおお!!」

ヤムチャが打ち上げた羽予期せぬ方向へ飛んで行き、大きな鉄塔の頂上へ引っ掛かってしまった。
「悪い、取って来る。」
「あんな高い所危ないわよ、それに今日は風も強いんだから。」
「大丈夫だって。」

そう言うと、少しは頼りになる所を見せたかったのか、ヤムチャは舞空術で飛んで行く。そして、頂上に近付いたその時である!

「ビュ――!!」
凄まじい強風が吹き、瞬く間にヤムチャは落下してしまった。

「うああああああ!!」
「ドコッ!!」
鈍い音がした。
この鉄塔はどれ位の高さだろう。ブルマにはとても高く見えた。



第二章:悲劇

「ヤムチャ〜!!」
「ヤムチャ様〜!!」
「おい!ヤムチャ!」

ここは都立病院。
不幸な事にヤムチャは頭を強打し、意識を失っていた。
ブルマ、プ―アル、悟空が必死に話しをかける。連絡を受け、クリリン、天津飯、餃子、ランチ、ウ―ロンも駆け付けた。

「ブルマさん、ヤムチャさんは大丈夫なんですか!?」
「ううう……。」
ブルマはその場に崩れ座り込んだ。
「手術をしなければ、ヤムチャはこのまま、ずっと植物人間みたいになってしまうんですって…」
「じゃあ手術をしてヤムチャさんを助けてください!!」
「…失敗すれば死んでしまうかもしれないの…」
「こんな時にドラゴンボ―ルがあればなあ…」
「く…くそ、オラのせいだ、オラがあの時、ピッコロを殺してなければ………!!!」
悟空は拳を床にたたき付けた。
「やめて、孫君のせいじゃ無いわ。私が悪いのよ…羽子板なんかしようって言ったから…」
ブルマは自分を責めた。



第三章:決断

それから1週間。ヤムチャの意識は一向に戻らない…。

「先生。手術の成功率はどれ位なんですか?」
「今までの成功例から言いますと、3%以下です…………。」
「…………………」
「でも、このまま何もしなければ、ヤムチャさんは………。」

手術をしなければ、ヤムチャは生命すら危険な状態であった。
しかし、手術の成功率は余りにも低い…。
『3%でも、ヤムチャさんが助かるなら、手術して、ヤムチャさんを助けよう!なあ皆!?』
クリリンは皆は言う。皆は、しばしの沈黙の後、静かにうなずいた……。




第四章:運命の8時間

『お願いします先生。』
迷ってる暇は無い。ブルマは先生に手術をお願いした。
運命を賭けて…
『よし!緊急手術を行う!大至急手術室へ運んで!さあ早く!』
病院内に緊迫した空気が張りつめた。
手術室は2階の502号室だ。皆も、意識の無いヤムチャの後を追った。
ドアが閉められると、手術中のランプが点灯した。3時間位たっただろうか…。

『うおおおおお!!!』

皆が驚いた。ランチが突如大声を張り上げたのだ。
近くの看護婦が大声の元を探しだして、こっちへ来た。
『ここで、大声出さないでください。』
『うおおおおお!!!』
『静かに、迷惑です。』
『ヤムチャが頑張ってるのに、何もしてやらない仲間がいるか!!ヤムチャは俺達の大切な仲間なんだ!そうだろ?皆?』ランチは雰囲気を必死に盛り上げる。

『フレ〜♪フレ〜♪ヤ・ヤ・ヤムチャ〜!!』
看護婦はヤムチャの迫力に驚いた。皆もランチの後に続く。
『頑張れヤムチャ〜!』
『ヤムチャ様〜!!!』
『負けるなよ〜!!!』
『へこたれるな〜!!』
『こらえろ〜!!!!』
『ヤムチャ〜!!!!』
『フレ〜♪フレ〜♪』
皆の声援は館内中に響き渡った。
看護婦は皆のヤムチャを思う気持に心を打たれたのか、それ以来無理に止めさせようとはしなかった。



第五章:不幸

手術中のランプが消えた。
8時間に及ぶ大手術だった。結果は…
『やった〜ヤムチャ様は助かったんだ〜!!』
ドアから先生が出て来た。その顔は険しい…。
『…一命は取り止めましたが、ヤムチャさんは症状が酷く…植物人間です。申し訳ありません…』
『そ…そんな…!!!』
ブルマは立ちすくんだ。
『嘘だぁぁぁぁぁ!!』



最終章:さようなら…

忙しい1月が終ろうとしていた。
いつものように平和な一日が始まる。ヤムチャの病室を除いて…ブルマは毎日ヤムチャの側にいる。
どれ程眠れない日が続いただろうか、ブルマはすっかりやつれていた。
だが、ブルマは明るく振る舞っている。
プ―アルはあれ以来誰とも口を聞かなくなった。
そして夕暮れの時間…

『ブルマさ〜ん、ヤムチャさんは?』
クリリンを筆頭に今日も皆がヤムチャの見舞いにやって来た。
『あら、クリリン。まだヤムチャは寝てるのよ。しょうがない人ね。ほらヤムチャ、皆が来たわよ、起きなさい!』
『ブルマさん…まだ起こさなくていいですよ。まだ眠いんですよ…きっと………。』
『そう?悪いわね。』
『プ―アル!元気出せよ!ヤムチャは死んだ訳じゃないぜ。』
『オラ達のヤムチャはここにちゃんと居るぞ。』
『み…ん……な………』
プ―アルが口を開いた。
『僕…ヤムチャさんが好きだから…寝たきりのヤムチャさんを何処かに連れて行きたいんだ…』
『プ―アル…』

その時である。
まばゆい光がプ―アルとヤムチャを包んだ。
そして二人は見知らぬ場所へワ―プしていた。
『ここは…?』
そこには素晴らしい景色が広がっていた。
『魔法の絨毯に変化!』
プ―アルは絨毯に変化するとヤムチャを乗せる。
『重くなりましたね…ヤムチャ様…。』
気のせいか一瞬ヤムチャが微笑んでいるように見えた。
ヤムチャを乗せて奥まで行くと更に綺麗な景色が広がる…。
綺麗な蝶々が飛んでいた。
見た事もない程可憐で、良い香りのする花がたくさん咲いていた。
ヤムチャが最後に行きたい所、そこは天国だった。

『行きましょう、ヤムチャ様。一緒に…。』
プ―アルは動かないヤムチャを乗せて進んでいった。


―完―