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駆逐されゆく者ども



584 名前:もうちょい続く[sage] 投稿日:03/12/03 20:54 ID:0K3uln5w
  もうウンザリだ、この暮らし。
ヤムチャは心底からそう思った。世界に平和が戻り早十年。
かっての仲間たちと離れ、惨めな人生をただ無為に垂れ流している。
金ない職ない人徳ない…ないものを挙げれば枚挙に暇が無かった。
ヤムチャが今在る場所は、家と呼ぶのもおこがましい貧相なあばら家。
テレビもラジオもプレーヤーすらも存在しない、全く電子音の響かない環境。
いつものように目を覚まし、しばらく天井を眺めている。穴だらけである。
そんな時、静寂を破壊するまぬけな音がヤムチャの腹から発せられた。
もう一週間何も口にしていない。働こう。ヤムチャは心の中で呟いた。

  日の光が平等に人を照らす都会に来ると、ヤムチャの無様な様子が浮き彫りにされる。
もう十年着たままの胴着、ふけで埋まった頭部、顔を覆う毛、そして、そこからわずかに覗く生気の無い眼。
都会の人間がどんな腕利きのメイキャップアーティストにかかっても再現できないであろう姿。圧倒的だ。
こんなナリの人間だかどうかも微妙な男に仕事など与えられるわけがない。
今都会はかなり景気がよく、就職やバイトは比較的とり易い状況だが、そんなことは関係ない。それほど、なのである。
道行く人にゴミを見るような目で見られながらも、それを意に介さず次の面接場所に向かうのであった。

  「…37番、ヤムチャさん。どうぞお入りください」
ツルカメ総合商事。創業してわずか数年だがすでに商業商社トップクラスの規模を誇る。まさに社会の勝利社である。
当然、十年も引き篭もっていたヤムチャにはそんなことは分からない。ゆえに、無謀にもこの一流企業の警備員を希望した。
  「……失礼します」
ヤムチャは蚊の鳴くような声で呟いた。なにか、精神的な病に蝕まれているのかもしれないが、そんなことは今はどうでもいい。
ヤムチャが面接場に入場したとき、会社役員の連中から悲鳴にも似た声がおこった。
まず面接を受ける格好じゃあ到底ないし、臭いし…そんな反応になるのも当然の話である。
だが、その中に一人眉も動かさず口元に微妙な笑みを浮かべてヤムチャを凝視する男がいた。
彼こそがツルカメ総合商事社長・クリリン――――。


597 名前:俺は577ではないよ[sage] 投稿日:03/12/04 20:20 ID:0.NYWFTY
  「やあ、久しぶりだねヤムチャ…」
典型的な社長体型(豚のようだ)。似合わないちょび髭を生やしている。
クリリンはもうヤムチャの記憶とは大分異なった風貌をしてそこに居た。
しかし、ヤムチャはそれを気に止めはしなかった。今、彼の思考を支配しているものは一つ――。
「僕も君とは数十年来の仲だからさあ…無碍にする訳には行かないよねぇ…」
なんで、コイツ………。
「だから…まあ、君は面接など関係なしに採用だよ。普通にやったら、まあ、まず落ちるだろうがね」
なんでコイツ…………!
「警備員と言わず、君にはこの小会社を任せたい。昔はポイポイカプセルで一躍時代の寵児となった会社だが、趣向の変化に対応出来ず…」
「なんでヤムチャ“さん”と呼ばないんだ   こ   の   バ   カ   ァ   ッ   ッ   !!!!!   」
ヤムチャはクリリンの説明なんざ聞いちゃいなかった。格下の相手(とんでもない)に呼び捨てにされたことが、ただ許せなかった。
「バカァ…?」
「バカじゃないかッ!!! なんだよ、昔は俺を慕ってくれてたのに、それかよ!? やめろよ、そういうことッ!!」
「ヤムチャ…」
「ヤムチャ“さん”と――」
「ヤムチャ!!!!」
ヤムチャはここ十年間のクリリンの変化を知らない。環境は時に人を劇的に変化させることがある。悲しくもあるがそれが現実だ。
ともかく、時代の最前線で荒波に揉まれてきたクリリンにもう甘さは無かった。自分以外は屑――迷わず彼はそう言い切るかも知れない。
「考えろ。ここで俺を、社長の俺をバカ呼ばわりして、せっかく掴みかけた栄光を失う気か? 成り上がるチャンスを失う気か!?」
「…………」
「ハッキリ言ってやる。お前、この機会逃したらもう終るぜ? 社会的にも成り上がるチャンスは無くなる筈だ。お前からツキを感じない…!!」
「なにを…」
ヤムチャに勝ち目はない。これが成功者のオーラである。偉そうに詭弁を弄するクリリンの体躯が自分の何倍にも見えていた。
「これを見ろ」
クリリンは傍らにあった秘書を用い、子会社の資料をヤムチャまで運ばせた。
「!!」
その会社はカプセル・コーポレーションといった。


611 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:03/12/05 18:25 ID:XmI0MqRc
  ヤムチャは資料を見て愕然とした。
「カプセル・コーポレーションは確かに世界有数の大企業だった。前世紀最大のヒット作【ポイポイカプセル】を発明し一躍頂点に上り詰める」
突如説明口調となったクリリンは雄弁に語る。
「その天下は永く続いた…天才・ブリーフ博士はその後も魅力溢れる新発明を連発し、その牙城は揺ぎ無い物となったハズ、だった」
しかし。クリリンは続ける。
「哀しいかな、ブリーフの死後トップに立ったのは、あのブルマ……!! 彼女は時代のニーズに合わない高価格商品ばかり作り続け会社のイメージを
 悪い意味で一変させた。そこに主力商品ポイポイカプセルの世界的飽和が重なり、経営は一気に苦しくなった…ブリーフ時代に膨張を続けた会社規模はそれに耐え切れず」
破産宣告。
「大きくなりすぎるのも困りモノ、ってトコかな…おっと、大分熱中しちまった。さあ、ヤムチャ。今君の目の前には『二つの道』がある」
「ひとつ。最初君がしようとしたように、部下の面前で俺を罵倒し、幾ばくかの爽快感を覚えつつまた元の暮らしへと還る…」
「ふたつ。甘んじておれの支配下に入り、子会社の経営を立て直す…さあ、どちらの道を選ぶ?」
しかしこの時、既にヤムチャの目に片方の道は見えていなかった。彼は目の前の巨人に呑まれ、吸収されてゆく。
「言っとこう。おれは君に経営の才を見る。しかし、縁故採用みたいなモンだってことを忘れるな。俺の部下の中に君より優秀な人間など幾らでもいるんだからね?」
もう、チャンスはない…一時の快感に浸るか、現状を見据えた的確な選択をなすか、決めろ………。


612 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:03/12/05 18:34 ID:XmI0MqRc
  ヤムチャは唯一つの道を歩み始めた。
そして辿り着く。カプセル・コーポレーション――若かりし頃、ここでヤムチャはわずかな蜜月を味わった。
かっての恋人・ブルマ。幾度と無く体を重ねた、全てを知り尽くした女。
そういえば、もう随分セックスをしていない…十年、いや、それどころか射精すら……。
そんな事を考えた後、ヤムチャは吹き出した。これから再起を懸けた勝負が始まるってのに、何を考えてんだおれよ。
それから数秒の間。ここでヤムチャは呼吸を整え、覚悟を決める。闘いの日々に身を委ねる覚悟を――。
「たのっ……!!」
たのもー!! 口を噤んだヤムチャの中で苦しそうに響く言葉。覚悟など足りなかった。身を突き抜ける衝撃がヤムチャを襲う。
「始めましてヤムチャ社長。秘書のブルマです、宜しくお願い致します」
ヤムチャはここ十年使わなかった脚力を用い、全速力で社外に逃げ出した。
「クリリン…社長! どういうことです!? なんでよりによって秘書があの……」
『あ、嫌? そうだよねえ、かつて付き合ってた仲だもんねえ…いやあ、辱めみたいなものかな? 元社長が今はその秘書…笑えない?』
くくくく…電話の向こう側から本気100lの笑い声が受信される。ヤムチャはいたたまれない気持ちになった。
「外道だよ、テメエ…」
『テメエ? 誰に口聞いてんの? 代わりは幾らでも――』
「分かりましたよっ、大社長!!!」
勢いよく電源ボタンを押して会話を完了させる。今後もこの調子なのだろうか……。

  この後もなかなかブルマと顔を合わせる覚悟がつかず、三日が過ぎた。

710 名前:ヤムチャが掌で踊らされる話[sage] 投稿日:03/12/11 19:33 ID:/oGI5ZG6
  ヤムチャが未だにウジウジ悩んでいる頃、既にクリリンは次の手を打ち出そうとしていた。
「…そうか、分かった。ああ、この件は極々内密に進めろよ? うん、CC? 大丈夫だろうが、一応気を付けて見ておけ。なんせヤムチャはまだ――」
ここまで言ってクリリン社長は口元を閉じる。ドアを見て、中年らしい汚い顔で微笑む。
「トランクスです、入ります」
「おお、来たかぁ!!」
クリリンはその若者の帰還を心から悦んでいるようだった。ソファーに座ることを奨める。
「失礼します」
「おい! 茶を持って来い!! 二代目社長のご帰還だぞぉ」
才気溢るる顔立ち。全てにおいてパーフェクトにこなす若者は、クリリンにとってこの上のない希望であり、羨望でもあった。
「それで、社長…僕を呼び戻した訳とは? 何かご不満が有りましたでしょうか」
「とんでもない、君の残した結果はおれの想像以上のものだった。何が不満だろうか」
「では…?」
クリリンはこんな時でも冷静に相手を見極める。こんな時、常人ならばまず興奮状態になるであろう。
相手は自分が目にかけられている事を知っている。おそらくこれは何か景気のいい話だ、とでも思うだろう。
そういう人間はバレないようにと、軽く身を乗り出しつつも勤めて平静を繕って対応するであろう。
だが、それ自体が既にバレバレ。そんな欲望に弱い人間に重要なポストを任せることは出来ない。
これは、類まれな集中力を生来持っているクリリンだからこそ出来る業だ。気円斬などの操作系技が得意だったのはそのためだ。
そのクリリンから見て、この若者は非の打ち所の無い、完璧な超人だ。彼は欲に躍らされることは無い。


711 名前:ようするにクリリン社長が(ry[sage] 投稿日:03/12/11 19:33 ID:/oGI5ZG6
  「CCの新社長、知ってるかい?」
「はい、ヤムチャさんですね。昔会った記憶があります。ここしばらく外に出なかったと聞いていましたが…」
「おれにしたら、地に伏した龍が眠りから目覚めたとでも言うのかな…そんな気がしたんだよ。アイツの復活は…」
「正直、社長の真意が掴みかねます。いきなり社長を任せるだなんて…そこまでの男なのですか?」
「大丈夫だろ、最初のステップとしてCCはふさわしい。比較的難度も低いしな。まだ有能な研究員も多く残ってるしなんとかなろう。
 ヤムチャには『三ヶ月以内に今の業績を二倍に引き上げろ』と言ってある。本当は一ヶ月以内を期待してるんだけどねぇ…ククク」
「確かに。あの会社ならどんな素人が舵をとっても利益を出すことが可能でしょうね。」
「そう、可能だ。ただ一人を除けば…おっと、君にとっては良くない話題かな」
「いえ、構いません。もはや関係の無いことですから」
トランクスは表情一つ崩さず言い放った。過去をいとも容易く切り捨てられる強心臓。これもまたクリリンの好むところ。
「さて、君への頼みだが――」

  ヤムチャは未だウジウジ悩んでいた。自分を巡る魑魅魍魎を知らずに…。 


770 :眠い :03/12/20 01:00 ID:MJrVPw9k
  オレは別に何もあいつに望んではいなかったんだけどな……。

  オレは今南国の過疎島に身を寄せている。もう何年前だかも忘れちまったが、ウーブという才能溢れるわけえ奴と稽古して過ごしてる。
初めて会ったとき、ウーブの奴はいかにも原石って感じだった。このままでは持て余して終っちまうだろうが、磨けば輝き光る宝石だ。
おれは天下一武道会をばっくれて、ウーブの島に住み着いたんだ。

  島に住み着いてから数年後…今から三年くらい前のことだったか。アイツがこの島に着たんだ。
「悟空、今日はお前にい〜い話を持ってきたんだよ」
アイツは変わり果てていた。どう変わったかはよく分からねえが、オレの今まで会ったことのないタイプの人間、ってとこだろうか。
「俺はこれから世界を牛耳ろうと思ってるんだ。でもそうなると邪魔臭い連中が現れるんだ。人の足を引っ張ろうとするクズどもが…」
オレは何か夢でも見てるんじゃないかって気になったな。今でも思うぜ、アレは…クリリンか?
「悟空、俺のボディーガードになってくれよ」

  クリリンは様々なメリットを提示してきた。魅力的だったのは確かだ。
色々書いてあったが、この部分に目がいった。
・もしまた地球に危機が迫り、孫悟空及びその子供達に不幸があった場合、クリリンが私財を投入してその遺族の生活を維持させる。
これは魅力的だ。実際また地球に強敵が現れないとは言い切れねえし、当然オレが死なないとも言い切れない。しかし、しかし…。
なんで、なんで普通に頼まない…!? オレとお前は親友じゃねえのか! 親友の頼みごとに首を横に振ると思うのか!!?
「なあ、悟空。いいだろ、この条件? 魅力的だろ? いいよなあ」
おめえは、本当にクリリンなのかっ…!? オレがいねえ間に一体何がどうなっちまったんだ…。

803 名前:とりあえず変なタイトルの奴は皆俺のです[sage] 投稿日:03/12/22 16:12 ID:zlIzMJ3k
  神様…っ! 神様…っ!! 神様…っ!!!
ひどい、ひどすぎる…こんなっ…こんなことが許されるのかっ!!!
潰された…っ!! アイツに、あの、悪魔みたいな男にッ……!!!!
許さない……許  さ  な  い  っ  !  !  !  !

  平日の昼下がり、都。
彼はコンビニでジャムパンとミルクティーを購入。木漏れ日の照らすベンチに腰かけそれを貪り食う。
日の当たる顔に光は無い。無表情の中に確かな狂気を見る。何かを秘めている、そんな体である。
最近のコンビニで売られているパンはかなりうまい。リプトンのミルクティーも同様にうまい。
しかし彼の表情は変わらず無。まるで、力を無駄に使わないように、少しの力も体から漏らさないようにしているかのよう。
やがて食べ終えた彼は、ゴミをベンチ横のくず入れに放り込み、立つ。表情が少し変化した。決意のあらわれか。



804 名前:俺は移転はしなくてもいいと思います[sage] 投稿日:03/12/22 16:13 ID:zlIzMJ3k
  やる。やってやってやりまくってやる。
ひたすらにやりまくってやる。がんがんにぶちこんでがんがんにめりこませる。
がんがんにがんがんに
ひたすらにやりまくる。
おれはかみだ。きょうだいなあくにてっついをくだすかみなのだ。
おれはただしいんだ。なにをやろうともただしいのだ。
まっていろあくよ。おれはいままさにおまえをとろうとしているぞ。

  彼が通り過ぎた跡に、立っている人は無かった。ツルカメ商事社員、大半が気絶。



805 名前:前回書いたの、続きだと分かりにくくて申し訳ない[sage] 投稿日:03/12/22 16:15 ID:zlIzMJ3k
  「桃白白か」
社長室。奥の檜で出来た机にひじを置く恰幅のいい中年男性、クリリン。
社員の返り血により真っ赤に染まった桃白白はクリリンに向かって虚ろ気に進む。
「おまえのせえでなんぴとがくるしんだ。なんぴとがなげいた」
「ん…? 聞き苦しいな、もっとはっきりと喋れよ。おれには分かる、お前は気違いを演じてるだけだ」
「………何故分かる?」
「分かるさ。時代のトップを邁進する男だぞおれは。人を見る目くらいは備えてらァ」
「そうか…なら遠慮は要らんな。死ね、狂人」
「待てよ。お前は何故におれを殺そうと言うんだ? おれが何かしたかい?」
クリリンは勤めて冷静に言った。それが演技なのか、そうではないのかは窺い知れない。
自分を殺そうという人間が今目の前にいるというのに、彼は動揺しなかった。そんな様子もまるでなかった。
対照的に、桃白白の表情は怒りに染まってゆく。憤怒は堪え難く、溢れる。
「俺は貴様に潰された!! 潰  さ  れ  た  ん  だ  ッ  ッ  !  !  !  !  !  」
怒号が空間に響いて消える。クリリンの冷静は変わらない。
「それはつまり…ウチの会社がなにかお前に損害を与えた、ってことか?」
「ああそうさ!!! お前が把握していないような辺境におれは店を構えていた!! 小さな店だが、繁盛していたんだっ!!
 だが…あの日、忌まわしいあの日!! お前の子会社が近くに出来た!!! 一蹴だったさ!! おれは一蹴されたんだ!!! 消されたんだ!!」
「しゃあねえっしょ。経済はある意味生身で戦うより過酷なバトルだかんな。鮮明なコントラストが生じるのはしょうがない。
 お前は今熱くなってて気付かないかも知れんが、お前はすげー身勝手なこと言ってるぜ。それに今さらどうこう言っても――」
クリリンの言葉を遮る銃声。天井を貫通して天に消えた。
「貴様と会話するために来たんではない。今度こそ死ね、クリリン。平和の為だ」
もういいや、飽きた。悟空、来い。



806 名前:これで今日は終り[sage] 投稿日:03/12/22 16:16 ID:zlIzMJ3k
  カリン塔の屋根に建てられた異質なる棒。まるでテレビのアンテナのような。今まで静かなものだったが、突然細かく振動を始めた。
「おや、珍しい。クリリンか、悟空か、どっちか」
カリン様と呼ばれる猫のような仙人があっけらと言う。
「非常事態かのお。まあ、呼んでいるのは大方クリリンじゃろうなぁ」

  桃白白はもう立ち上がることは出来ない。
「何故……な…ぜ。いきなり…そ、そいつが、現、れた……?」
桃白白の前に厳然と立ち塞がる男、悟空。
「おれと悟空は繋がっているのさ。ただ心でメッセージを浮かべれば、すぐに助けに来てくれる」
「そうだ、カリン塔に建てられた特殊なアンテナで俺とクリリンは結ばれている。」
クリリンと悟空が言う。悟空は厳しい表情で、クリリンは笑顔で。
「そうだ、死ぬ前に教えておいてやるよ。各地に散らばる子会社の指示は、一部の例外を除いて全て…」
おれが出している…!!! クリリンの発言とほぼ同時に桃白白の命は尽きる。死ぬ前に言おうとしたことも言えずに――――。

  この、悪魔め。


28 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:03/12/29 10:28 ID:QJO5nFRU
  CC(カプセル・コーポレーション)は復活した。
特筆すべきことはしていない。ただマニュアルを見てそれに従ったのみである。
それで十分であった。元々資本力・企業力共に優れていた会社であり、普通にやればトップシェアを再度奪うことは容易だったのだ。
CCが危機に陥ったのは前社長・ブルマの責任である。
彼女は特にする必要の無い無駄な資本投資を行う・ニーズ未知数の新商品を莫大な金額をかけて開発するなど、
およそ商才を微塵も感じさせない行為を繰り返した。
結果CCは長らく保持してきたトップシェアの座を奪われ、苦境に立たされることとなったのである。
前出のように、それは堅実な経営方針を執った新社長の存在により解決した。
そう、ヤムチャ社長のおかげで――――。



29 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:03/12/29 10:28 ID:QJO5nFRU
  「社長、今日の会議で、この商品開発を提案しようと思うのですが…」
「社長! 我が社の主力商品であるカプセルについてなのですが、もう十分に行き渡っているので生産量を従来の五分の一程度に…」
「社長、トイレの水漏れが――」
「しゃちょ〜! 飲み行こうよ飲み!!」
「社長――」
ヤムチャ社長は就任以来社員の評価を上げていた。それはまさに鰻登りであった。
といっても実力を認められたとかではなく(勿論業績を立て直したことは評価されているが)、純粋にその温和な人柄ゆえである。
そう、ヤムチャ就任以来CCの雰囲気が確実に変わっていたのだ。この社長の男を立てたい、認めさせたい――そういう空気が出来つつあった。
またヤムチャはいい意味で上の人間の香りを発していなかった。それゆえ意見を通しやすく、社内の風通しを良くする一因にもなっていた。
これが後に結実し、CCの成長と共にヤムチャがツルカメグループの中核を成してゆくこととなるのであった。
ヤムチャは自身の実力だけでなく、周りの力も借りて上に上り詰めることになる。

 

30 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:03/12/29 10:29 ID:QJO5nFRU
  「ほれ、やっぱりオレの眼は正しかったろう?」
クリリンは得意げな面持ちで威張る。相手は懐刀・トランクス。
「さすがです、社長。私は正直勘繰っておりました、たとえヤムチャさんに実力があろうとも、素人です。まさかこんな短期間で立て直すとは…」
「ヤムチャに実力なんてないよ。アイツはただ人を使うのが抜群にうまいんだ。そこを買っている訳だよ、オレは」
「成る程…トップに立つ人間にとって下の人間をどれだけうまく扱えるかは最重要ですからね」
「そう! 覚えておけよ。お前も遠くない未来同じ立場に立つんだからね。しかし、まだ、ヤムチャは物足りない…」
「わずか三週間でCCを立て直したヤムチャさんにまだ御不満がおありなのですか?」
「まだ、足りねんだよな、アイツ。いくら人をうまく使えるからって本人が無能でいいかというと、そうではない。誰か、優秀なブレインが必要かな」
クリリンはしばらく考えた。物事を考えている時、クリリンの眼は遠く宇宙の果てを眺めているかのようになる。
「うん、そうだ!! お前CC行け!」
「僕が、CCに、ですか?」
「ヤムチャに教えてやってくれ。そして、教えられてこい」

76 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/08 13:16 ID:s//keDUY
  静寂が満ちる部屋。それを壊す切断音が等間隔で鳴り響く。鋏の音――。やがて微かな声も混じる。
「クリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリン…………」
じゃき、じゃきと、音は鳴り止まない。声もまた止まない。ひたすらに人の写真を切り刻み続ける。
「クリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリンクリリン……?」
ふと手に持つ冊子の片隅を見たとき、彼の鋏が止まる。
「ヤムチャ…………」


77 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/08 13:16 ID:s//keDUY
  「社長」
年増女がヤムチャに声をかける。ブルマ。
「これはどういうことでしょう? 『新年あけましておめでとう! CCからのお年玉だ!!』キャンペーン、あまりにも利益を度外視しています。
 というか利益はまるで無いではありませんか? 確かにポイポイカプセルはダブついていますが、それに我が社の製品を詰めて
 ただで配るなんて…しかも、どれも安い物ではないのに2000セットも……正気の沙汰とは思えません」
ヤムチャは臆せずに切り返した。
「後々まで考えたら利益になると思う。これでCCのイメージは確実に好転する。まさかウチみたいな大企業がこんな捨て身のキャンペーン
 撃つとは誰も思ってはいなかっただろうからな。しかも、品質はお墨付きだ。ウチが自信を持って送り出せる商品ばかりだ。
 お客さんも気に入るに違いない。つまり、ウチのレベルの高さを広く一般に知らしめることに繋がるわけだ。至極正気だよ」
確かに、これは効果的かもしれない。今までのCCでは考えられないような企画だったのである。
なにせ、今までの社長は高値の商品ばかり開発し、無駄にブランド主義を取り入れ失敗したブルマである。タダで配ると言う発想などあるわけがなかった。
ヤムチャはつい最近までどん底の生活を送っていた。それゆえに一般市民の(つまり自分の)ツボを掴んでいたのである。
「しかし…今回の我が社の損失は三千万を越えて……」
「その位、今のウチなら十日もあればプラマイゼロに戻せるんじゃないか? 大したことはない」
この発言を聞いたとき、ブルマは言い知れない不安を覚えた。この男は確かに業績を立て直した、それは評価せざるを得ない。
しかし、今後会社をさらに安定的に発展させていくには役不足な男なのではないかと。今回にしても、安定には程遠い。
しかし、ブルマは疑念を無理やり自分の中に留めた。もう私の出る幕は無いのだ、と――。
そんなとき、CCをなにか気味の悪いモノが覆った。それは感覚的に人を縛り付けるものだった。


81 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/09 12:00 ID:nv0I3EIo
  大音量の叫び声が社内に満ちる。謎の、息苦しい気配。
ラップに包まれた食い物はこんな気持ちなのだろうかとヤムチャは思った。
必死の思いで周りを見渡すと社員は皆悶絶していた。勿論、普通の人間と大して変わらないブルマも――。
「ヤムチャ、ヤムチャ……僕は、天さんを、殺した。殺してしまった」
「チャ………チャ、オズ……!! お前………か? …お前、が……これを………」
繋がりの薄い言葉をうわ言のように繰り返しながら、チャオズは現れた。
「ヤムチャ、僕、クリリンが許せないよ。あいつに復讐したいんだ。天さんの仇を討ちたいんだ」
「天…津飯が、殺された? …お前が、殺した? それが、なんで復讐に、なるんだ………?」
「ヤムチャ…僕を使え。使うんだ」
「というか…この、結界みたいの…早く、解いて、くれ……」
「僕は役に立つ……平常時は君の命を受けて力を使うよ」
「分かった…雇う、から、解いて、お願い、ほら、周りの、社員とか、秘書、とか、俺、とか、もう、死」
ブンッと振動音のようなものが鳴って、気配は解けた。社内の空気が一気に薄くなる。皆生きるために必死に空気を吸っているからだ。
咳き込むヤムチャに、チャオズは怪しげな笑顔で言い放つ。
「感謝する、ヤムチャ……!!」

  「これは、どういうことだ?」
今日から赴任するトランクスがあくまで冷静に疑問を呈す。
「何故、皆地面に伏している?」


141 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/13 18:23 ID:AnDQ7LQc
  チャオズの得体の知れない力からようやく解放されたCC。
「ヤムチャ、僕を好きに使え」
「分かったから…もうこういうことはやめてね」
そんなとき、エレベーターが到着する。中から現れたのは銀髪の颯爽とした若者だった。
「ヤムチャ社長、何があったのです?」
「トランクス……か? 十年見ない間に立派になったなあ」
「そんなことを言っている場合ではないでしょう。まずは会社全体がどのような状態になっているかを調べなければなりませんよ」
「あ、ああ……そうだな」
いきなり来て何をぬかすんだコイツは…突然来た奴に口を挟まれたヤムチャはあまり面白い気持ちではない。
「トランクス……!!」
急速に変化する気配。チャオズの周辺が激しく歪む。顔には怒りの色が浮かんでいた。
「トランクス!! クリリンの懐刀!!! 殺す!!!!」
チャオズは両の手の付け根を合わせ、トランクスに向けて力を発しようとする。
刹那。
チャオズの額にトランクスの右手が接する。静かな、気配だった。
「チャオズさん、落ち着いて下さい。少なくとも今、僕はクリリン社長直属の部下という訳ではありません。」
「…………………………」
「攻撃準備を止めないのなら、このまま頭部を胴体から引き離しますが、宜しいでしょうか?」
「………………………………!!」


142 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/13 18:23 ID:AnDQ7LQc
  気配は治まる。トランクスは額から手を離した。
「大体、僕を倒しても仕方が無いでしょう。あなたの標的はクリリン社長、違いますか?」
ヤムチャはトランクスから目が離せない。またも、格の違う男と出合った。一生かかっても追いつけないと思わせられる男と――。
しかし…いいのか!? 今のセリフをクリリンに聞かれたら、謀反の可能性有りと判断されてもおかしくは無い。
つまり、この男は冷静沈着且つ大胆不敵。そんなおよそ並び立つことの無さそうなものを両方持っている、異端のモノなのだ。
「ト……トランクスゥゥッ!!!!」
ブルマが感情を抑えきれないという風に叫んだ。
「あなたは誰です? 初対面ではないでしょうか。失礼、申し遅れました。私はトランクス。ツルカメ商事の……」
アナタハダレ? ショタイメン? それは何? どういう意味なの?
「さあ、皆さん、早く被害状況を調べましょう。私は一階から五階までを、ヤムチャ社長は六階から十階までを、ブルマさんはこの階を頼みます」
仕切りやがって……しかし、ヤムチャはそれを言葉にすることが出来なかった。
自分より格上の男には何も出来ない。それがヤムチャという男の性であった。
「ああ、言い忘れました。私は今日からこのCCでヤムチャ社長直属の部下として働かせていただきますので。今後宜しくお願い致します」
ヤムチャは人知れず一生分驚く。こんな男が、自分の部下に…………?


188 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/17 15:37 ID:5.8K5bRQ
  世界の北の果て――――。

  その日、一人の男が知れずに空から入国を果たす。男は舞空術を用いていた。
髪と眼鏡のフチは黒く、学者然とした雰囲気を漂わせながらも所作に隙は無し。
男が降りた地は森の中。堂々と立つ大木を顔を上げて眺めた。しかし、隙はやはり無い。まるで幾つもの眼を持っているかのようだ。
「…このブナ林は荒らされた跡が無い。今の世界にこれほどまでに立派な木があるとはな――」
男はその後数時間に渡って木を仰ぎ見続けた。おかげで首が痛くなった。

  男は一歩一歩大地の感触を確かめながら進んだ。飛べばいいだろうと思うが、彼はじっくりと見て行きたい様である。
「踏み荒らされた跡がほとんどない。誰にも乗られていない大地――なんと貴重なんだ」
この現代にこんな秘境が残されていることに驚嘆しつつ足取りも軽やかに進む。


189 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/17 15:38 ID:5.8K5bRQ
  やがて川が見えた。原始的な生活を送っているのなら、この周辺に集落があるはず……あった。
男は悠然と入り口から入ってゆく。それぞれの生活を変わらずに営んでいる集落の民が、訝しげにその様子を眺める。
男には揺らがぬ確信があった。たとえ、今俺を警戒した民に襲われようと何の問題もないという確信が――――。
少なくとも、こんなところに自分を脅かす戦士はいまい。俺は過去地球の危機を幾度と無く救ってきた男なのだ、と――。
旧態依然にもほどがある生活。それは男が過去学んだ古代の生活様式とピッタリ合致するものであった。
で、その学んできた知識によると……やはり。
古代の民は強さ、権力をシンボルとして扱う。それは石像や壁画にみられるものであり、今目の前に広がる大屋敷のようなものにも見られる。
集落のボスは、ここにいるのだ。

  「失礼」
集落の入り口に入る時と同じく、ボスの大屋敷の門にも真正面から入ろうとする男。門は相当の大きさだ。さすが支配者と言うべきだろう。
「#лбдХвСи!!!!!」
さすがにボス屋敷には門番が付いている。ロシア語のように聞こえなくもないが、彼の学んできたどの言語とも異なる。
「かーなり、怒ってるみたいですねぇ……ま、いいや」
男は軽く跳び上がって大門を越す。本当に軽く跳んだ。貧乏ゆすりのように――――。
「бΜΘцΙп!!!!!?」
「今度はギリシャ語みたいのが混ざってる。ホントに訳分からん言葉だ」
今度は走る。足指パッチンくらいの力で……。



190 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/17 15:39 ID:5.8K5bRQ
  「пцибСв?」
「+#$й@цеИ!!?」
「ははっ、やっぱ適当にロシア語組み合わせても通じないか。つか、通じてるかどうか確かめようがねえ」
それにしてもこの男、先程自然に趣き深く語りかけていた男と同一人物とは思えない。自然に優しく、下賤なるものに厳しく。
差別撤廃が声高に叫ばれている現代、しかし、それでも人間とはこういうものなのかもしれない。これが、真実の姿なのかも、しれない。
「まあどーでもいい。俺は上司の命令でこの土地を奪いに来たんだ。今すぐ荷物纏めて北の都にでも行きな」
「+#$й@цеИ!!!?」
集落のボスはあまりの事態に現状を把握しようと躍起になっている。しかし、それは無駄というものだ。
「三秒以内に集落全体に号令をかけるんだ。『集落を捨てろ』とな――――もし、出来なければ」
何故なら、彼は――。
「スリー…」
彼は。
「+#$й@цеИ!!!!!??」
「ツー……」
彼は。
「+#$й@цеИッ―――!!!!!??」
「ワン………」
彼は――――。
「ゼロ」
集落は壮大な光に包まれた。そして、次の瞬間、消え失せた――――。
彼は、ハナから集落民を生かす気など無かったのだ。
当然ながら、男は知らなかったことだがこの民には何かを書き残すという習慣が無かった。
口頭のみによって伝えられる歴史が唯一だったのだが、男はそれを一瞬にして人類史から永久にかき消した。
しかし、男は破顔していた。破顔していたのだ。



191 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/17 15:42 ID:5.8K5bRQ
  男は胸ポケットから携帯電話を取り出した。  
「もしもし、クリリン社長でしょうか? 俺です、悟飯です」
『おう、どうだ? 首尾よく進んだか?』
「はい、すばらしい大地と森林ですよ。ここなら次期リゾートモデルとして十分の器でしょう」
『うん、よくやってくれたな。気をつけて帰ってこいよ』
「はい、どうも、はい」
男――孫悟飯――は携帯をしまい、翻ってブナ林を見上げた。
「本当に、美しい、力強い木だな。また見たいものだ」
そう言って悟飯は飛び立った。滞在時間約一時間。舞空術のスピードと同様、まるで光のような速さだった――――――。


226 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/21 21:02 ID:fXJJsgso
 俺は俺であって俺ではない。
意識は紛れもなくこの俺自身のものであるはずだ。しかし、それが行動に反映されることはない。
どう俺が思おうと、この体は勝手に動く。聞く耳を持たない。というより、耳自体存在しないのだ。
俺の声が体に届くことは、何か外的要因が発生しない限り、永遠に無い。
元々、こうではなかった――。

 憎きあの男、クリリン。
あの悪魔こそが俺を今の状況に貶めた。
肉体はインプットされたセオリー通りに行動する。インプットしたのは…チャオズだ。
あれがチャオズを用いて俺を意思を相手にしない玩具とした。実用性の高い玩具へ――。
チャオズ、可哀想に。俺を慕っていてくれたのに、その俺を…つらかったろうに。

 俺は知っている。もうすぐあの悪魔は大々的に行動を起こす。
それは恐ろしい遊びだ。下手をすれば、世界が「消える」――。
奴の目的は知らない。ただの戯れなのかも知れない。戯れで世界が無きものとなる。
そのことを知っているのは、まだ俺だけ。しかし、俺には何も出来ない。
今、俺の体はツルカメ商事の支社の社長として動いている。とことん、人に屈辱を与えるのに長けた男だ。意思が反映されないのをいいことに――。
しかし、それこそが奴の油断なのだ!!
現状では、俺があの「遊び」に参加することになる。チャオズに会えれば…どうにかなる。
風の噂では、今チャオズはヤムチャの所にいるらしい。ヤムチャも「遊び」出場者だろう。
接触するチャンスはある。だが、俺の意思がまるで意味の無いことを考えると、それ相応の備えをしなければならぬ。
逐電する。意思の力を貯め、チャオズの目の前で放出する。チャオズは俺の意思が死んだと思っている。まず、意思の無事を報せねば。
そうすれば、あとは自然と話が進む。チャオズが俺の意思を解き放ってくれるだろう。そうなれば、奴の思惑を裏切ることが可能となる。
あと、アイツの意思も解かねばならぬ…俺ほどではないとはいえ、アイツも多少の支配を受けている。
いずれにせよ、俺とチャオズが再び遭った時こそ、悪魔の落日だ――――。


239 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/24 17:12 ID:P43OUDXw
 某日――ツルカメ商事本社ビル最上階社長室。
クリリンは、一人一人の顔を舐めるように見つめた。
トランクス,孫 悟飯,天津飯,そして、ヤムチャ――。
そう、この四人こそが、神の如き洞察力をもつクリリンの認める男たちであった。
「うん、よく来てくれた。君たちそれぞれ各々、評判は聞いてるよ。…トランクスはさすがおれの秘蔵っ子だけあって
 ヤムチャをよくフォローして、CCの業績を過去最高以上に引き上げた……」
ヤムチャはこの時、「全部俺の手柄になるっつってなかったっけ?」と思いながらも、
こんなこと言ったら評価落とすかなーと考えて表には出さなかった。非常に小物である。トランクスは普通に聞いていた。
「悟飯もよくやった。北の未開地域開拓は後の繁栄のために必要不可欠だったからな。期待通りの結果を残してくれて
 感謝している」
悟飯は、まるで表情を変えずに佇んでいた。何も考えていないかのようにも、ヤムチャとトランクスからは見えた。
「天津飯。君の安定度はピカ1だ! 何事にも惑わされることなく、ただ冷静に必要最低限の事をこなす。
 おれは突飛な発想力をもつ者も好きだが、君くらいの男ならそんなことは関係しない。文句なしだ」
天津飯は悟飯とは微妙に違った。表情を変えないのは全く同じだが、悟飯の目がどこか泳いでいるような感じがしたのと
比べて、彼は一度もクリリンから目をそらさなかった。クリリンの目は、どこか人を値踏みするというか、量っている風がある。
それは勿論、クリリンがその人間の事を「洞察している」のだが、普通その対象に当てられている人間はどこか嫌な感じがして
自然と気付かないうちに目を横にそらしているものだ。だが、天津飯にその様子は全くない。悟飯もそこは本質的に共通している。
というか、悟飯は今日クリリンと対峙してから全く目線を合わせていなかったのだが。
「そう、皆気付いていると思うが、今日わざわざ遠くからお越し願ったのはウチのエース級ばかりだ」
ヤムチャは省かれたことに内心気付きつつも、俺はきっと特別扱いで最後に褒めてくれるに違いないと本気で信じていたので黙っていた。
最初に書いておくが、そうはならない、絶対。
「勿論、意図はある。君たちにある課題を出す。といっても、単純至極。君たちには造作もないこと――」


240 名前:駆逐されゆく者ども[sage] 投稿日:04/01/24 17:12 ID:P43OUDXw
 「君たちは、基本的には今までと同じように働いてくれていればいい。ただ、心持を変えておけよ、ということだ。
 実は、おれはそろそろこの『社長』という職を降り、名誉職につきたいと考えている。」
「ええっ!?」
ヤムチャのみ、おおげさに驚いた。トランクスは内心で、「名誉職とは言っても実権は持ち続けるだろう」と即座に判断したので、
驚きは薄かった。悟飯と天津飯はまるで変わらなかった。悟飯など、暇になったのか手をこねくり回している。
「なっ! 何故急に!? 聞いてないですよ!!?」
「当たり前だ。誰にも漏らしていないのだから。問わず語りで悪いが、動機はな……なんというか分からんが、別の次元の
 ことをしてみたくなったんだ。そう、会社経営とは全く異なる次元のな――」
(そりゃそうだろう。お前の言う「別次元」ってのはな…世界を終らせることなんだよ!!)
内心の内心で天津飯が歯軋りした。