さかなin地球
466 名前:さかなin地球(1/5) [sage] 投稿日:03/04/13 03:05
ID:eRc65Lod
斉天大聖・孫悟空って聞いたことあるかい。
サルの妖怪のことだ。
無論、本当にこんな名前じゃない。いや、正確に言うとこんな称号じゃない。
彼に斉天大聖を名乗る資格なんかあるはずない。
斉天大聖っていうのは、徳の高い聖人にのみ許される称号だからね。
だから、あんな暴れ者に許されていいものじゃないんだ。
さて、みんなは知らないだろうけど、僕らの周りにも
斉天大聖を自称する乱暴者がいた。そいつの名前は孫悟空。
あのサルと同じ名前だ。
『西遊記』を読んですっかりその気になった、あの馬鹿は
同じ名前だったっていう理由から、斉天大聖を自称しだしたんだ。
身の程を知らないっていうのはこのことをいうんだと思う。
だってね、あいつは本当にどうしようもない暴れ者だから。
467 名前:さかなin地球(2/5) [sage] 投稿日:03/04/13 03:06
ID:eRc65Lod
紹介が遅れたけど、僕の名前はアーユ。魚、鮎族の一匹だ。
ここは人里はなれた山の中の川。上流の川にしちゃ結構大きいほうだ。
それに、僕ら鮎族にとっては住み心地のよい川でもある。
いや、あった。という方が正確かな。
どういうわけか、この川には僕らの天敵になる山椒魚が一匹もいないんだ。
昔はいたらしいけど、人間の少年が近くに住み始めてから山椒魚は一匹もいなくなったんだって。
ちょっと、うれしい。
でも、そんな気持ちを吹き飛ばしてしまったのが、あの暴れん坊『孫悟空』だ。
魚のくせにサルの名前を持つ奇妙なやつ。
それに、この川には珍しい巨体を持っている一匹でもある。
僕は山椒魚っていうのを見たことがないけど、きっとあいつなら一口でそれを食べてしまうだろう。
それぐらいに大きいんだ。人間の尺度はよく知らないけど、多分・・・2Mぐらいあるんじゃないかな。
でね、あの魚『孫悟空』ってやつがどんな乱暴ものかっていうと。。。
それはね、あいつは僕らを食べる化け物なんだ。
え? 魚が魚を食べるのは当たり前だって?
じゃぁ、君らが僕と同じ立場だったらどうだい。
自分たちを食べる化け物を当たり前のものって思えるかい?
2Mはあろうという巨体に、僕らの仲間がどんどん吸い込まれていくんだよ。
やつが口をあけたら、まるで栓を抜いた風呂みたいに、水が飲み込まれていくんだ。
そして、僕らの仲間もね。
いったい何匹、やつに食われたかわかったものじゃない。
それにね、あいつはしょっちゅう仲間を食べるんだ。信じられないよ、乱暴者め。
468 名前:さかなin地球(3/5) [sage] 投稿日:03/04/13 03:07
ID:eRc65Lod
『孫悟空』がやってきたのは、実はつい最近だ。
山椒魚がいなくなり、天敵がいない幸せを噛みしめていた僕たちに、突然現れた恐怖。
それは一ヶ月前のことだったんだ。
やつは来るなり、僕の仲間たちを6匹も平らげた。突然のことだった。
あの時はみんな尻尾を巻いて逃げたさ。いや、魚だから尾ひれか。
やつが来て以来、僕らに平安が訪れたことはない。
いつも、食べられることを心配しながら暮らしている。
そりゃ、天敵のいる魚なら当然のことだと思う。
けど、やっぱり辛い。
この気持ち。。人間にはわからないかな・・・
ある日、僕の結婚式があった日だ。
本来なら、祝福すべき日。でも・・・こんな日はどうしたって魚が集まる。
僕らを祝ってくれるのは嬉しいけど、集まると『孫悟空』がやってくる。
そして、たくさんの仲間が死んでしまう。
僕らにどうしろというのだろう。
469 名前:さかなin地球(4/5) [sage] 投稿日:03/04/13 03:07
ID:eRc65Lod
結婚式が始まった。人間の式とは少し違うかもしれないけど、
でも、みんな喜びに満ちた顔をして祝ってくれる。
僕はそんなみんなを見るのが嬉しい。
でも・・・・
恐れていたことが起こった。やつが来た。
僕らを食べるためにやつが来た。
人間はこう言うかもしれない。『孫悟空』だって生きるために僕ら鮎族を食すのだと。
でも、じゃぁ僕らはどうしたらいい。
やつに食われるために生きてきたわけじゃない。
僕らの生は僕らのためにある。
僕らはやつの襲来により、くもの巣を散らすようにバラバラになり逃げ出した。
必死だった。やつに食われたらおしまいだ。そう思うと、いつも以上に速く泳ぐことができた。
でも・・・・不幸は僕を許してはくれなかったらしい。
必死で逃げたはずなのに、改心の泳ぎだったはずなのに、やつは僕の後ろにぴたりとくっついてきた。
死んだ。
そう思った。
470 名前:さかなin地球(5/5) [sage] 投稿日:03/04/13 03:08
ID:eRc65Lod
僕があきらめかけたそのとき、やつの視線がこっちからずれた。
「しめたぞ、サルか山猫か」
何を言ってるんだ? 突然、妙なことをやつが叫んだので、僕は不思議に思った。
僕がふと上を見上げると、尻尾だ。
奴の言う通りらしい。僕らの体は山猫に比べても小さい。
奴にとって、サルか山猫のほうがご馳走なんだろう。
僕は助かったことを確信した。
そして、奴が尻尾に突進していった。
次の瞬間。僕は信じられないものを目撃した。奴が、『孫悟空』が死んだ。
尻尾に見えたのは人間。
そうか、人間が釣りをしていたんだ。
僕らの仲間も時々やられるつり。それが僕を助けてくれたんだ。
『孫悟空』はその後、その人間の少年に連れ去られていった。
おそらく食べられたんだろう。
僕は助かったんだ。
これで、僕らの住む世界に平和がやってきた。『孫悟空』がいなくなったおかげでね。
え? 孫悟空ならまだいるって?
あの少年の名前がそうだって言うのかい?
そんなハズないだろう。だって、彼は僕らを助けてくれた人だよ。
あれこそ、本当の斉天大聖だよ。
471 名前:作者の都合により名無しです [sage] 投稿日:03/04/13 03:17
ID:eRc65Lod
エピソードに具体性がないため、
『ゲロ』よりわかりづらい話になってしまった。
『ゲロ』の場合、血液型の話にしても、スキーの話にしても
ある程度、俺の知っているところから話すことができた。
もちろん、人工抗体云々の話は全くのフィクションだけど。
それでも、抗体っていうものが存在しないわけでもないし、
通常よく言われる程度の血液型、つまりABO分類、RH分類の血液型は
作中にかいたとおり糖鎖で構成されていることも事実。(ほかにはたんぱく質がある)
その意味では、エピソードに具体性が『ゲロ』の場合はありました。
今回の作品の場合、俺の人生経験が足りないためか、それとも単なる力不足か
なんにしても、具体性の強いエピソードが一つもかけませんでした。残念です。
でも、まぁ一つだけ、あの作品よりましになったのがありまして(自分で思うには)
それは文体の統一性って奴なんですよね。『ゲロ』では主人公が読者の存在を知っていたのか?
っていうところで大きな疑問を感じてしまいます。っていうか、統一されてません。
これはイカンということで、今回の作品ではせめて、その点だけは・・・と思い改善しました。
つーことで、バイチャ