プロブレム
712 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/11 03:59 ID:???
日本某所―
「規定の三時を過ぎた。皆集まっておるかの?」
老婆の声。だが、一瞬の隙をも感じさせない締まった声質。
それは、この枯れ木とも見える人間が、どれほどの力をもっているかを確実に表現していた。
「総勢4872人…まあまあかねえ」
電車どころかバスすらも通らないこの辺境の地に、これほどの人間が集まる理由は―
「これからお前等には、問題を身に付けてもらう!」
老婆の声は、よく通った。
ヤムチャは、そんな4872人のうちの一人であった。
(ここに来ると強くなれるというが…問題って何だ!?)
「お前らには、この中に入ってもらう!!」
ババアがパチンと指を鳴らすと、巨大な筒状の容器が現れた。
しかも、ババアの家の下から、ズゴゴゴゴ…と。
い き な り な ん だ ー ー ー ー ー ! !
4872人は一斉に突っ込んだ。ババアが見えなくなる。だが、相変わらず声はよく通る。
「これは、お前等に『問題』を与える機械じゃ!!」
「問題って何だババア!!」
どっかの奴がババアに尋ねた。すると…
「失格!!」
「なにィ〜〜〜〜!!??」
「質問はしない!それが最低限のルールじゃよ。私が必要と判断した情報だけを与える!」
「ううう…ちくしょうーーーーこのババァ〜〜〜〜〜!!」
どこぞの奴は地面を強烈に蹴り上げてババアのいるてっぺんに向かう!
ヤムチャはここぞとばかりに
「すげえっ!なんてジャンプ力だ!?」
と驚いた。
「やれやれ…まだ、私の言葉を理解出来ない低脳がいたか…」
713 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/11 04:00
ID:???
「うるセェーーーーー!!年寄りは早く―」
その時、場が凍りついた。
空に、一閃の輝やかしい光に包まれたかと思うと、馬鹿はもう消えていた。
「やれやれ…4871人の皆、よく聞きな!二度は言わないからね」
「この中では、生半可な問題の人間では生きていけないからね!!死にたくなければ今帰りな!」
さっきの馬鹿男の死に様を見て、ビビッた奴も多くいたようだった。
また、さっきの老婆の放った閃光は、人間を超えた異能力。大方それに怯えて逃げ帰った奴もまた多いのだろう。
「124人か…物分り良すぎだねぇ。じゃあ、残ったあんたらに、もう少し突っ込んだ説明をしようかねえ
『問題』を抱えていればいるほど強くなれる―私の持論だ。現に、私は今まで生きてきて17389個の問題を得てきた」
ざわざわ…その数に、ざわめきが起こる。
「問題を心に抱えることによって、より心が強化され、さっきのような芸当も可能になるわけだ。」
(消費者金融で借りまくるとか、結婚詐欺を働くとか、そんなことでもいいんだろうか?)
「まあ、それも有りだね、ヤムチャ」
ヤムチャは驚く。
「俺の心を読んだかッ!?」
「まあこういう芸当も可能じゃ」
いけしゃあしゃあとババアはのたまう。
「この筒の中に入ると、様々な問題シチュエーションが各々の脳裏に描かれるじゃろう。この筒は、バーチャルに問題を体験
させてくれるのじゃ。しかし―」
婆さんの言葉が、少し止まった。
「この中の体験は、ある意味事実といってもいいリアリティーに溢れておる。この中で怪我をしたら現実でもそうなっているし
勿論、死ぬことも―」
「婆さん」
「お主は、カズマ―」
カズマは不敵に笑い、言った。
「さっきのへタレ野朗どもならともかく、ここに残っている連中なら、そんなコト覚悟済みさ。そう思うだろ?あんたも!!」
急に話しを振られたヤムチャは
「ぁ…当たり前じゃないか!!し、死ぬ、死ぬ覚悟なんてと、と、とうに…」
どもってしまった。
714 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/11 04:01
ID:???
「うむ、この老いぼれも、喋るのがしんどくなってきたところじゃわい。お前等全員中入れ!」
「正直、俺は怖いぜ…情けない話だが、この中で俺が一番弱そうだ…」
もう全員筒の中に入っている。ヤムチャは踏ん切れずにいた。
「ヤムチャ」
「婆さん…ははっ、情けねぇ!せっかく残ったってのに、足が動かないんだ。…死にたくない」
「私は、アンタに期待をかけとるよ」
「えっ!?こんな俺の、一体どこに?」
「アンタは、既にでっかい『問題』を抱えているじゃあないか。その、へタレた心を、ね。
今のところ、アンタは最強に最も近い男なんだよ」
最後のヤムチャも搬入終了し、機械が動き出す。「問題」を与える脳内トリップ―
「さすがに、これだけは言わなくてよかったね…生き残る者は、一人」
ババアは、そう呟くと、今高度140メーターのところにある自宅に入っていった。
問題だらけの人間が、勝利する―(続く)
722 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/11 13:26 ID:???
ヤムチャに与えられた『問題』一つ目―
ヤムチャは、鬱蒼とした森の中にいた。
「キャアアアアアァ――――――!!!!」
森に響くはうら若き少女の叫び声。
「大変だ、お助けしなくては!」
ヤムチャは急ぎ悲鳴のした方向へと走った。
「嫌ァ…来ないでよォ…!!」
三人のならず者に囲まれる少女。
「うっせぇ〜なあ、とっとと金だしゃいいんだよお!!」
その時、ヤムチャは、木の裏から様子を伺っていた。
(男どもに囲まれてどんな子なのかは分からないが、声から察するに相当な美少女に違いない!!)
一瞬、なんで「金を出せ」なんだろう。このパターンは普通襲わないか?と思ったが、すぐこの考えは消えた。
ヤムチャのヒーロー論―美少女を助けるものは正義である!!
「そこまでだ!!」
ヤムチャカッコよく参上!
「うら若き乙女を、むさい男三人が囲むなんて、カッコ悪いぜ?」
「なんだァ?部外者はすっこんでろよォ〜〜!!」
ならず者達がヤムチャに突進する。しかしヤムチャも腐ってもZ戦士。
「遅いぜ!!狼牙!!風風拳!!!!」
「うわぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
あっさりと、ならず者達は星になりました。
723 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/11 13:26
ID:???
「お嬢さん、怪我は無いかい?」
「ええ、ありがとう優しい人…」
「あの獣どもに何も…!?」
ヤムチャは見てしまった。そして、自分の行為はある意味全て無駄だったのだと気付いた。
どブスじゃん!!!???
「本当に、ありがとう…あなた様をお父様に紹介致します」
どうやら気に入られてしまったようだ。
「いや、ウチまで送るから…それで勘弁してくれ」
「和食がお好みですか?それとも中華?」
彼女は、人の話を聞かないタイプのようだ。
第一の『問題』―ブスに惚れられた―
760 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/13 09:38
ID:???
「もうすぐ到着ですわ」
ブスに連れられて(送っていくハズが…)森を抜ける。
(逃げたいが…腕が)
ヤムチャの右腕は、彼女にがっちりと掴まれていた。
掴まれた腕の周辺は青く変色し、機能障害を起こすのではないかと思われた程である。
「なんつーパワーだ…」
「何か?」
「いや!なんでもないさ!!あははは…」
「さあ、着きましたわよ」
「えっ?森は出たけどまだ…」
そう言いかけたヤムチャの目に映ったのは、今までに見たことも無いようなデカイ邸宅だった。
(こりゃあ、カプセルコーポレーションなんてメじゃないぜ)
「ここが、私の家ですわ」
「は〜…凄いなあ、エライ人なんだろうね、親父さんは」
「一応世界最大のマフィアということになっておりますわ。」
「ま…マフィアァァ!!!???」
「お父様は、今まで私の旦那様になる殿方を探しておられましたの。でも…」
心なしか、ヤムチャには、ブスの舌なめずりの音が、聞こえた気がした。
「もう、その必要もありませんわ…」
惚れられたブスは、マフィアの一人娘でした。『問題』追加―
15 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/16 22:07 ID:???
前スレ>>760の続き
屋敷の方から微かに歌が聞こえる。その声は、だんだんと近付いてくる…
「♪人生三寸夢半ば 死ねど泣く奴ァいやしねえ〜
♪信ずる者は裏切られ けれど仁義の筋通さん〜
♪我ら地獄の構成員 指を詰めよが構わねえ〜
♪親分の言うこた最優先 親兄弟でも沈めるぜ〜」
ザッ!!声の主は、ヤムチャとブスの前へとやってきた。
「お嬢、お帰りなせえませ!!」(お帰りなせえませ!!)←他の構成員
え…?マフィア?これ…793じゃないの?ヤムチャは呆然と突っ立っていた。
「ん?お嬢、その男は?」
「私の旦那様じゃ!」
「ええっ!!?」
「お…お嬢!遂に見つけたのですか!?しかし、親分がなんと言うか…」
「構わぬ!!私の決めた殿方じゃ、お父様の意向など反古じゃ!!」
彼女と、坂崎というらしいエライ奴が口論してる間、ヤムチャはひたすらに
「オレの意向は?オレの意向は?」
と、遠く離れた場所で、小声で呟き続けていたと伝えられる…
数時間後―
「ヤムチャ様、部屋にご案内致しやす」
「へ?ああ、はい、宜しく…」
坂崎に連れられて、屋敷に入るヤムチャ。もう逃げらんねーぞ(続く)
189 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/19 12:16 ID:???
>>15
俺はどうしてここにいるんですか?
我に返った頃には、どこぞの客室に隔離されていた。
一応ドアを開けようとしたけど、やっぱりと言うか、当然と言うか、開かなかった。
「あの〜、誰かいますか?」
「へい」
ドアの外側に、マフィアっつーか793の方がいらっしゃるようだ。
「あの、出して―」
「お嬢に『開けるな』と言われておりますゆえ…辛抱してくだせえ、婿さん」
婿かよ。ヤムチャは脱出を諦めた。
数時間後…
「婿さん、食事の準備ができやした、こちらへ―」
「ああ、はい、わかりました」
ヤムチャは、客室を出、やたら豪華な装飾品が飾りまくってある廊下を歩く。
ここからでも、脱出しようと思えばできんだろ、と思うかもしれないが、今のヤムチャはどこかがまともじゃない。
きっと、幼い頃に、793関係のトラウマでもあるのだろう…(続く)
254 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/19 20:53 ID:???
>>189の続きのようだ
「おう、こっち来て座りや、『婿さん』」
煌びやかなお部屋に着く。どうやら、ここで食うらしい。
中央には、大きなテーブルがある。ブスと、親分らしきお方がお座りだ。
「はあ、すんません失礼します」
構成員の方が椅子を引いて下さる。ここに座れということらしい。
ヤムチャは特に考える様子も無く、アホ面のまま座った。
その瞬間、部屋が冷たい殺気に包まれる。
(な、なんか急にゾワゾワするぜ!!)
しかし、ゾワゾワしか感じなかった。
「婿さん…食事前でなんやが、2、3質問ええかい?」
「な、なんでしょう?」
「ワシの一人娘を助けてくれたことは礼を言うがの…実際、どないや?」
「は?、じ、実際、とは?」
親分の笑顔に、かなりの無理が見られる。
ヤムチャもさすがに気付き始めた。自分の身に危険が迫っていることに―
255 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/19 20:54 ID:???
「だからァ…娘に、どうのこうの、しとらんのか…」
「は、はい!?」
「…つまり〜〜手前のようなモンに娘をやれるか〜〜〜〜〜いッッッ!!!」
親分が取り出すは、793の代名詞・日本刀!!
「ええ〜〜〜〜!!?」
「坂崎!!その餓鬼押さえとけ!!」
坂崎が、ヤムチャを羽交い絞めにする。
「すんませんねえ、婿さん。死んでやってくだせえ…」
ブスが叫ぶ。「お父さん、止めて!!」
「ええいっ、お前はなッ、一生嫁にやらん!!」
「一生なんて無理!!いつかは私もお嫁にいくのよ!!?」
「行かせん!!!」
「なんて…」
ヤムチャがふと呟く。そう、ヤムチャには、来ていたのだ。
今まで流されていて、気付かなかったが、大分理不尽な思いをしてきた。
その溜まり溜まった思いが、噴出した!!
「てめえら自分勝手過ぎだコノヤロ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」(続く)
285 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/20 11:40
ID:???
>>254-255
前回のあらすじ「オレの存在を認めろ!!」
「オレをないがしろにして話を進めるな!オレは婿入りはゴメンってか結婚したくねえ!!」
やっと言えた!!ヤムチャには、堪えられない快感が広がっていた。
ただ、これは、4、5レス程前に言っておかなければいけないことではないかと思うが…
「ええ!?そんな、あなたここまで来ておいてなによ!!」
「知るか!オレのことはオレが決めるんだ、このブ…」
ヤムチャの言葉が途切れた。何かが、変わりつつある―
「…坂崎ィ、その餓鬼、ちゃんと抑えとき!」
親分が、ヤムチャを叩き切ろうと近付いてくる。
手には、鈍く輝く日本刀。
「覚悟せいやあ、エロ餓鬼がぁ――――!!!」
振り下ろした日本刀が、ヤムチャを切り裂く―ハズだった。
だが、実際に切り裂いていたのは、部下である坂崎。
「おっ、おやぶ〜〜〜んッ!!いてえよおっ!!」
「ようやく、分かったぜ。あのばあさんの言ってた意味が―」
ヤムチャは、光の速さで回避した。羽交い絞めを解き、親分の背後に回る。この間0・5秒。
ヤムチャの中で、今急速に目覚めつつあったのだ。「プロブレム」の力が―
286 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/20 11:41
ID:???
「そうか、ここに来て、沢山の問題に遭遇したものなあ…知らない内に、オレの力になっていたのか」
「何訳分からん事いっとんじゃーーー!!」
親分がヤムチャに向き直り、再び日本刀を振り下ろす。
ヤムチャはなんとそれを片手で受け止めた!!
「さよなら、『親分』」
「ど、どういう意味じゃあ!?」
ヤムチャは、刀を掴む手を、思い切り上に向かってブンと振る!!
「うっ、うわお―――――ッ!!!?」
親分は、屋敷の天井を突き破り、お星様になったとさ。日本刀と共に―
「お前等聞け、今日からオレがこの組を仕切る!異論のある奴ァいるかい?」
全員が、首がもげるんじゃねえかという勢いで、ヤムチャの従属した。
ヤムチャ、真に問題だらけの人間になる序章であった―
「旦那様!私をお嫁に貰ってくれるんじゃろね?」
ブスが寄って来た。
「ブスは死ねーーーーー!!!!」
ヤムチャはブスを吹っ飛ばした。
「きっと、お父さんと再会出来るだろうよ」(続く)
376 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/22 11:56 ID:???
>>285-286
ヤムチャが組のトップに就いて数ヶ月。
シマはさらに拡大し、この界隈では、三つ目組とトップを争うほどに成長した。
ヤムチャは、初心を忘れないよう、組名を「へタレ組」と改めた。
これは、実際へタレな訳ではなく、心の中のへタレ心を忘れてはならない、という自らの戒めである。
元組長の愛人+若妻も手に入れ、ヤムチャの勢いと心の問題は、さらに加速する―
「お前ら!遂に、決着を付ける時が来た!!」
ヤムチャが、百数十人の構成員達を前に演説。
皆、ヤムチャが絶対の信頼を置き、また、ヤムチャの為に命を投げ捨てられる猛者揃いだ。
「三つ目組を潰すぞ!!!」
オォ――――――――ッッ!!!!!!!!オォ――――――――!!!!!!!
377 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/22 11:57 ID:???
「ふん、ヤムチャ。お前如きがいいご身分じゃないか」
「来たな……三つ目組頭、天津飯!!」
天津飯、登場。そう、こいつも今回の試練に参加していたのだ。
この男も、参加する資格を満たしている―ヤムチャは、天津飯を買っていた。
それゆえに、この闘いは厳しくなるであろう、ということも分かっていた。
しかし、ヤムチャには確固たる自信があった。自分が、負けるはずが無い。最強のへタレの自分が―!!
「このドンパチの勝敗は、要するにオレか、お前、どちらかが生き残るかってことだ!!」
「まあ、そういうことだな…」
ヤムチャは、妙な違和感を覚えていた。天津飯、以前までとは、何かが違う―(続く)
400 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/22 17:04 ID:???
>>376-377
「ヤムチャ―お前はもしや、『自分は最強だ』だの、『オレ以上に問題のある奴はいない』
とか思ってるのでは無いだろうな?」
「い〜や、そんなことは無いぜ?」
「嘘をつけ。顔を見れば、俺の三つの目は何でも見通す。…アドバイスしといてやるが、
思い上がりは止したほうが身のためだぞ?」
「へっ!天津飯、テメエ、忘れてるんじゃないか?心に問題ある奴ほど強いんだぜ!!
最強のへタレ心にさらに上積みを重ねたオレの心が負けるわけが無いだろう!!!」
「それが、思い上がりだと言うのだ!!!!」
二匹のへタレ虎が、激突する!!
まず、ヤムチャが空中に飛び上がり、そのまま蹴りに移行する。
それを見た天津飯、自分は飛ぼうとせず、カウンターを狙う。
二本の右足が交差する。相殺―厳密に言えば、僅かに天津飯が優勢―
(やっぱりだ…おかしいぞ、オレより天津飯の方が、攻撃が重い!!全力で行ったのに―)
「ヤムチャ、お前も、仮にも一つの組を束ねるものだ。分かっただろう、実力の差というものを」
「認めるかよ」
「分からないか」
「認めたらなァ!オレの今まで築き上げてきたものが一瞬にして無くなっちまうんだよォ!!」
401 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/22 17:05
ID:???
ヤムチャ、一直線に特攻を仕掛ける!!
明らかに平静ではない。カウンターを合わせてくれ!とでも言っているようなものだ。
「だから へ タ レ は ダ メ な の だ ッ ! ! ! ! 」
ど ど ん 波 ァ ! ! ! !
「ぐああああああッッッ!!!!」
ヤムチャ、防御体勢もロクにとれずにどどん波正面衝突。
天津飯のどどん波は、遥かに強化されている。それを防御せずに喰らったのだ。致命傷は避けられない。
ヤムチャはもんどりうって地面に這い蹲る。それは、まごう事無きへタレそのものだった。
「ヤムチャ、確かに貴様は強くなった。いや、潜在能力は俺を遥かに凌駕するだろう。しかし、貴様はヘタレだ。
そして、へタレを強さと勘違いした時点で、貴様の負けは決まっていたんだ!!」
「そんな…そんなハズはない!へタレは確かにオレの力を引き上げてくれた!!」
「確かにそうだ。では、分かり易く、貴様の敗因を二つ言ってやろう。まず一つ目―」
『ヘタレのみに頼りすぎた』
「貴様のへタレは超一級品。しかし、へタレ心自体は戦闘の際邪魔なもの以外の何者でも無い!
さっきの特攻などがいい例だ。追い込まれたら貴様はああすることしか出来ない…」
「………」
402 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/22 17:06 ID:???
「二つ目―」
『貴様は俺に比べて圧倒的に経験が不足している!!』
「ヘタレ心だけでは、勝てんぞ、ヤムチャ―」
「それだけじゃない!ブスにも惚れられたし、それに…」
「甘いと言うのだ!!俺がここに来てどれほどの経験を積んで問題を増やしていったか、貴様に分かるか!?
貴様がトップに付きのうのうと日々を過ごしてきた間に俺がどれほどのことをしてきたか…」
「…もしかして、天津飯、お前には部下なんて―」
「今までの三つ目組の抗争は、俺一人でこなしてきた」
この瞬間、ヤムチャは思い知ったのだ。いかに自分のメンタリティーが幼稚で脆弱なものか。
努力してきたものを見ると、ほんの一瞬で萎縮する―へタレだ。
「じゃあな。期待してるぜ、ヤムチャ!」
天津飯は、いつからこんな大人物になった?
いつから、こんなにも、コイツは強く、逞しくなった!?
オレは、全てにおいて、へタレを誤解していた。
ヘタレは、表に出さず、心の奥にそっと潜ませるものだったんだ!!
いつのまにか、部下達は消えていた。いつからかは、分からない。
天津飯も去って行った。場に残るは、惨めなへタレ一匹―
「…強くなるとか、そんなのはどうでもいい!!天津飯…お前を倒す、絶対に!!」
へタレは敗北を覚えて強くなる―「へタレ組」解散―
生まれ変わった一匹狼、ヤムチャの闘いは、続く……
543 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/23 16:18 ID:???
>>400-402
朝靄の残るどこぞの港。
ヤムチャはそこにいた。
天津飯の個人組である『三つ目組』との個人抗争に敗れたヤムチャは、全てを失った。
しかし、彼の心はとても澄み渡っていたのだ。
『へタレ心』は、胸の内に秘めるモノ――――――
ヤムチャは修羅の道に入り込む事を覚悟した、というよりも寧ろ自分から望んだ。
「よお、ヤムチャさん。」
海際の倉庫沿いの道を歩くヤムチャに声をかけた男。
ヤムチャは、彼の感性で、それを敵と認識していた。
「お前も試練を受けている…俺の敵かい?」
544 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/23 16:19
ID:???
「アンタは神様さ、ヤムチャさん。俺は片桐。通称ヤム桐―」
「お前もまた、へタレを心に持つ者か―」
「キャラがへタレになる事を『ヤムチャ化』という奴がいる。あまりにもアンタがへタレだったから―今日、ここで!俺が勝って
『片桐化』という言葉に変えてやるぜ!!行くぞ!!必殺!!…」
言い終わる前に、ヤムチャは拳を片桐に叩き込んでいた。
その余りの威力。腹に大穴を開けるほど――
ヤムチャ、腕を振り、片桐を海に捨てる。
「げボォッ!!何故…何故、ヤムチャ、ヤムチャなのにィ…あの隙の無さはァァッ!!…」
「教えといてやるよ。へタレは心に秘めるモノ、闘いはクールにこなすんだよ…隙は突く、キッチリと―
「っと、もう、聞こえちゃいないかな?」
いつの間にか、片桐は海の底に沈んでしまったようだ。
「まだまだ、強く…強くならなくては」
846 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/25 19:25 ID:???
>>543-544
ヤム桐を倒したヤムチャは、改めて「へタレ」というものの罪を痛感していた。
相手のスキを突こうともしない。
根性もない。
引き立て役etc…
天津飯、そしてこの後に待ちうける強敵達に勝利するには、この部分はなんとしても矯正しなくてはならない…
舞台は、鬱屈とした森へと移る―
森にそびえ立つ中世風の城。
『君、あの男、なかなかいいと思わないかね?』
モニターを見つめる男の声。
かなり年老いている声質だが、やけに声が高いのが気持ち悪い。
人を舐めくさっているような―そんな印象を否応なく抱かせる声。
「そうでしょうか?私には分かりかねます、ご主人様」
『君、三万回死にたまえ』
848 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/25 19:25 ID:???
「はい喜んで!!」
そういうと、ご主人様といわれる男の従者と思われる男は、ナイフを取り出す。
そして、自分の心臓へとそれを突き立てる。
ブスッ(バタン…むくっ)ブスッ(バタン…むくっ)ブスッ(バタン…むくっ)………
不思議なことに、従者は何度自害しても絶命せずに起き上がってくるのだ。
主人が、笑った。実に、気味の悪い声で―――
『我が、不死バンパイア族にも、新しい血が必要な時期だな…この男、欲しい…』
「私(ザクッ、バタン…むくっ)には(ザクッ、バタン…むくっ)分かり(以下略)かねます(ry)」
『君、二万回追加』
「よろこ(ドブスッ、バタッ…むくっ)んで」
そんな危険なバンパイア城。ヤムチャは誘い込まれようとしていた――(続く)
663 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/31 18:07 ID:???
前スレのどこか…
「ご主人様!捕らえましたぞな!! 」
ヤムチャはあっさり捕まった。
ある日森の中熊さんに出会って逃げ回っていたら、落とし穴に落ちたのである。
ちなみに、熊に化けたのは下僕だ。
「ご主人様……」
『ああ、褒美かね…ふむ、53万回死にたまえ』
「あああ、ありがたき〜〜」
下僕はまた心臓の辺りを自傷しまくり、悦んでいた。
「ああ〜〜〜この快感堪えられぬ〜〜〜」
ヤムチャは、状況がまるで掴めなかった。目を隠されていたからだ。
前方に、禍々しいドス黒い気配は感じられるのだが、いかんせんどうしようも無かった。
『さて、頂くとするか… 若さに溢れ、力に満ちた血を…… 』
664 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/31 18:07
ID:???
「うっ…く、臭い!! お前、何モンだ!! 」
『私は、血に飢えたバンパイア。 大丈夫、死にはしないさ…
吸われたあとは、私の唾によって、従順なしもべとなるのよ。 あそこの男のように、ねえ……… 』
向こうの従者は、今日何万回目かの死と生を同時に味わっていた。
それは、ドラッグのように耐えがたいモノらしい……
「うひひひひひ…血ィ、血ィ…うひひ…… 気持ちよすぎて、昇天しちまう!!!! 」
(よく分からんが、もうしてんじゃないのか!? )
ヤムチャは、恐怖に怯える心の中で突っ込んだ。
そうしてる間に、バンパイアの荒い鼻息がヤムチャの顔に降りかかる。
もう、そんな所まで近付いているのだ、バンパイアは。
『わたしゃあ死にはしないがね、ある時期に新鮮な血を補給しとかな死んでしまうんよ。 じゃあ、頂き… 』
ヤムチャの首に、生暖かい液が落ちる。
そして、尖った牙が、当たる……
「や、止めろォ――――!!! 」
『ん、んんっ!! やはり、若い血は… ゲボォッ!!!! グハッ、グハッ…… 』
旨そうに飲んでいたと思いきや、突然血を吐き出すバンパイア。
665 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/31 18:09
ID:???
『きっ、キサマの血は… “へタレの血”!! ああ! あの忌まわしい記憶がァア!! 』
(し、しめた!!さっき血を吸う時に、野郎、目隠しを外しやがった!! )
ヤムチャはロープでぐるぐる巻きにされていたが、力で引き千切る!
「喰らえや化け物ォ―――――!! 」
そう言うと、バンパイアの顔面に強烈な拳を突き当てる。
バンパイアは、ひっくり返って倒れる。
『きっ、貴様ァァ!! 何をするダァ―――――!!? 』
「へっ、仕返しだ!! 」
『糞…グブッ、毒が…毒だッ!! “へタレの血”は、毒だァァァッ!!! 』
そう叫びながら、バンパイア、ヤムチャに向けて突撃。
迎え撃つヤムチャ――
「悪いがな… このへタレの俺が! 力勝負で負けるとでもォ!? 」
操気弾!!
ヤムチャは去った。城の壁に大穴を開けて――
666 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/08/31 18:09 ID:???
『ぐうっ!! あの野郎、あの野郎ッ!!! 』
憤りを隠せないバンパイアの長。当然の事だ、人間の、しかも、因縁のへタレに敗れたのだから…
『ううっ、動けぬ… へタレの血液が、我が動きを…くそう、恨めしい!! 』
「うひひ、うひひ」
こんな状況になっても、今だ自傷を続ける従者。
もう、いいストレス解消の道具にしか見えない。
『死ね―――――!!!! 』
「うひいっ!! もっと殺してェ!!?? 」
ヤムチャの旅はまだ続く…問題を身に付ける旅が(続く)
877 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:03/09/03 21:41 ID:???
>>676-679
ヤムチャは進んだ。道を踏みしめ、ずん、ずん、と。
ヤムチャは、ある名も無き町へと辿り着く。
町の入り口のすぐ横に、世界の地図が貼ってある。
この世界のことが、少し分かってきた。
この世界、基本的には現実の世界と変わらないのである。
ただ、世界が全て陸続きになっているのだ。
つまり、世界は一つの島のようになっているわけだ。
世界の全てを見てきたわけではないから、きっと吸血鬼のいる場所もリアルにあるのだろう。
ヤムチャはそう考えた。ところで、ここはどんなとこ…
「邪魔だよ、どきな!!」
威勢のいい声と共に迫り来る暴走自転車。
ヤムチャは対応出来ず、思いっきり轢かれる。
879 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/09/03 21:42 ID:???
「痛え痛え!!??」
「ふんふ〜ん…♪」
チャリを操る小柄の女は、ヤムチャを轢き終わると、気にもかけずに走り去ろうとしていた。
「ま…まて!!」
「へ?」
まず、ヤムチャは聞いておかなければならないと思ったようだ。
ここでこの女を逃したら、男としての尊厳に関わる。
「お……お前は、誰だ?いきなり、人を轢いて、何のリアクションも無く…」
「ああ、悪いねぇ。見えてなかった」
「お…お前さっき『邪魔だよ』って言ってたじゃないか!?」
「知らん。見てない」
そう言うと、女は前を見て走り出そうとした。
880 名前:プロブレム[sage] 投稿日:03/09/03 21:43 ID:???
「納得いかないな……勝負しやがれ、女!!」
走り出した女の動きが、再び止まる。
ヤムチャに向き直り、自転車を降りる。女、言う。
「いいねえ…最近闘ってないから退屈してたところさ!!」
「女、名は…」
ヤムチャがそう言った瞬間、目の前に岡持ちが迫る。
ヤムチャ、間一髪のタイミングで回避する。鼻にかすったか、少し出血する。
「…やるな」
女は、構わず攻撃を続ける。なんと荒々しい、しかし、急所を的確についてくる攻めだろうか。
ヤムチャ、女のアッパーをギリギリでかわす。
女、次の動きが速い。ヤムチャの回避法が、頭を後ろに反らす、隙の大きい方法だったのをすばやく察し、
がら空きの顎に向かって回し蹴りを敢行する。
「がはあっ!!」
「教えといてやる、私の名は…」
顎に入ると、どんな人間でも一瞬体の機能がマヒする。
ヤムチャが尻餅をつく、その動きの間、女は言う。
「鬼丸美鬼!!」(続く)