The One -yamucha-
222 :The One -yamucha- :03/02/13 17:32 ID:utnfoPgZ
Yamucha.1 序章
世界は一つではない。
今我々が認識しているこの世界と平行して、多くの異なる次元が存在しているのだ。
その数、実に125。
普段これらの異次元世界は見ることも、認識することさえかなわないが、ふとしたきっかけで他の
次元の存在に気付き、干渉を試みようとする者も少なからず存在する。
そのような者は大概の場合、多次元監視委員会により発見されなんらかの処置をとられることに
なっているが、ごく稀に、例外的にこの委員会の目をくぐり抜け、異なる次元へ干渉を持ってしまう
例もある。
今ここに、そのあってはならない例外が発生してしまった。
多次元の存在に気付き、他の次元に存在する全ての自分を抹殺しようと目論む男が現れたのだ。
その男の名は、ヤムチャ
223 :The One -yamucha- :03/02/13 17:32 ID:utnfoPgZ
Yamucha.2 1000人ヤムチャ
叶えられてしまった。ヤムチャの願いが。
サイヤ人との決戦に向けて孫悟空を生き返らせようと呼び出した神龍は、よりにもよってヤムチャの
願いを叶えてしまったのだ。
「オレを1000人にしてくれ」
願いが叶えられると暗い空は晴れ、神龍は姿を消し、ドラゴンボールは世界各地へ散った。
後に残ったものは1000のクズの山と、あきれかえったブルマ達だけだった。
「・・・世界もこれで終わりだわ」
「おお・・・さすがにこれだけ俺様がそろうと壮観だぜ!よし、サイヤ人たちを倒しに行こうぜ!」
目を覆うブルマを無視してオリジナルヤムチャは1000人の自分達に呼びかけた。
「はい!その前に本当に1000人いるのか確認した方がいいと思います!」
他のヤムチャより少しだけ賢いヤムチャがオリジナルヤムチャに提案した。
「それもそうだな・・・。誰か、数かぞえるのが得意な奴いるか?」
子供のころにそろばんを習っていたという設定のそろばんヤムチャが人数を数え始めた。
「998・・・999・・・1000・・・」
「お、本当にいるじゃねぇか。さすが神ろ・・・」
「・・・1001」
「あ?」
「1000人じゃありません!1001人います!」
224 :The One -yamucha- :03/02/13 17:32 ID:utnfoPgZ
「数え間違いだろ?もう一回数えろ!」
「もう五回も数えました!間違いありません!数かぞえるのだけが取り柄なんです!」
ヤムチャ達がざわめきだした。元のヤムチャも群れの中に入り、既に区別がつかなくなっていた。
統率役を失って混乱におちいったヤムチャ達。
その中から他の者と異なる気を発するヤムチャが群れの外に出た。
「静まれ、皆のもの!」
その声は大きく響き、威圧感をもってヤムチャ達を静めた。
「そろばんヤムチャよ、数が合わないと言っていたな?すまん。それは俺のことだ」
そろばんヤムチャのいる辺りに言い、そのヤムチャは再び群れ全体に呼びかけた。
「俺はドラゴンボールによって呼び出されたヤムチャでは無い!こことは異なる次元からやってきた、
アナザーヤムチャだ!」
不思議な現象にはそこそこ慣れているため、ヤムチャ達はすぐに信じた。
「どうでもいい!ようするに俺たちの手伝いをしに来てくれたんだろ?」
元のヤムチャだったヤムチャが群れの中から叫び返した。
「違う!率直に用件を言ってやろう・・・俺はお前らを殺しにきた!!」
225 :The One -yamucha- :03/02/13 17:33 ID:utnfoPgZ
群れからはたちまちブーイングの嵐が起こった。
アナザーヤムチャが繰気弾による威嚇攻撃を行い、37人のヤムチャが爆死した。
「俺は125の次元のヤムチャのうち他の全てのヤムチャを殺すつもりだ!」
もはやヤムチャ達は黙ってアナザーヤムチャの話を聞いている。
「本来これらの異なる次元は決して交わらず、互いに干渉しあうことは無いが・・・もしも例外的に
次元の異なる自分同士が出会い、どちらかがどちらかを殺すとどうなるか・・・わかるか?お前」
アナザーヤムチャは少し賢いヤムチャを指差した。かわいそうなことに、震えている。
「わ・・・わかりましぇん」
少し賢いヤムチャとその周辺のヤムチャ、あわせて23人が繰気弾の餌食になった。
「殺された自分のエネルギーが他の全ての次元の自分に流れ込むのだ!俺自身すでに17人の異
次元ヤムチャを葬っているが・・・そこで気が付いたのだ。この次元のヤムチャが1000人になってしま
えばエネルギーの分散が激しくなってしまうということに!」
アナザーが熱く語っている間56人のヤムチャが逃亡を試み、殺された。
「俺はこの次元のヤムチャを先に始末することに決めた!雑魚ヤムチャとはいえ戦闘力177。その
千倍のエネルギーが他次元に流れる。貴様ら・・・覚悟を決めろ!!」
アナザーヤムチャは残り884人のヤムチャの群れにとびかかっていった・・・
94 :The One -yamucha- :03/03/12 23:59 ID:33jiseYn
Yamucha.3 1000人ヤムチャ〜復讐者〜
1000対1という圧倒的数量差の中で優位に立っているのは、1000人ヤムチャではなかった。
アナザーヤムチャが腕を振るたび、10を超えるヤムチャが吹き飛ぶ。
戦意を失った者、逃走する者も容赦無く殺す。
アナザーヤムチャという狂気の嵐がヤムチャ達の生命の灯火をあっけなくかき消していく。
それは虐殺だった。
追い詰められた鼠のように蛮勇を奮い起こした一人のヤムチャが雄叫びを上げ、特攻をかける。
が、無慈悲な一撃が左肩を吹き飛ばし、片腕になったヤムチャはそのまま巨岩に叩きつけられた。
衝撃で気を失い、砕けた岩がその上を覆い尽くす。
ヤムチャの意識が戻った時、空には月が昇り、虐殺は完了していた。
95 :The One -yamucha- :03/03/12 23:59 ID:33jiseYn
瓦礫の山から這い出たヤムチャが目にした光景は言語を絶するものであった。
無数の肉塊が目の届く限りまでに広がり、地には踝が漬かるほどの池が出来ていた。
微弱な月明かりの元でその色は判別できなかったが、匂いから池は血で出来たものだと察しがつく。
動くものは無い。
「お・・・おおぉぉぉぉッッ!!!誰か・・・誰かいないのか!」
ショック状態にある中でようやく振り絞ったその叫びは、むなしく荒野にこだまするだけであった。
「そろばんヤムチャ!賢いヤムチャ!誰か・・・生きてるやつ・・・」
ふと頭が重くなり、ヤムチャは膝をつく。目の前の現実を許容することが出来なかった。
そのままの姿勢で一時間ほどを過ごすと、ようやくヤムチャは立ち上がることができた。
自分が何をすべきなのかが、見えた。
足元に横たわる死体の道着を破り、血に浸す。山吹色だった布地は黒に近い真紅に染まった。
片手ではちまきを巻くのは難儀をしたが、巻いてみると頭を締めつける圧力が心地良くも感じられる。
「クリリン、悟飯、天津飯、餃子、ピッコロ・・・すまない。俺は俺の戦を始めなきゃならないみたいだ」
片腕ヤムチャは歩き出した。どの世界、どの次元にいるのかもわからない仇を求めて。
辿り着けるかどうかもわからない。
だが、必ず仇は取る。己の血を、肉を、魂を、いくら削られようとも・・・