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老兵

 

817 名前:マロ[sage] 投稿日:03/09/02 09:07 ID:???
TVの光だけが薄暗い部屋に明かりを灯している。
そのTVには累々と続く死体死体。
「世界の危機なのです!我々は空前絶後の…」
興奮して死体を踏んでいることにも気付かない若いレポーター。
続いて映し出される「RR」のマークと無表情な男の顔。
「人造人間がまだ残っていたのか。」
爆発が起こり輝きをましたTVの光が老人を照らし出す。
老人の顔深く刻まれた二つの傷に我々は見覚えがある。
「そろそろ俺も逃げるかな。」
散歩に出るような落ち着いた雰囲気で老人は呟く。
実際、老人は世界の危機など微塵も感じていなかった。


悟空とべジータの孫があと1日で地球へ帰ってくるんだ。
終わりは見えている。
「いい奴から死んでいく。」
この年になると強く実感がわく言葉だ。
俺みたいにさっさと逃げ出す奴が長生きをする。
文字どおり最後のZ戦士だな…。


818 名前:マロ[sage] 投稿日:03/09/02 09:07 ID:???


老人は感慨に浸りながら車を走らせる。
突然の銃声。
目をやると銃を構えた少女が人造人間の前で震えている。
人造人間の足下には少女の両親と思われる死体が転がっている。


嫌なものを見た。
9、10歳、チビ達と同じぐらいの年齢か。
糞っ、なんで俺は車をとめてるんだ。逃げろよ俺っ。
瞬殺されるぞ。キーをまわせっ。

ああそうか、わかっちまった。
あのひよっこどもに地球の危機をまかせられるのか?
悟空じゃなければ安心して逃げることができないんだよ。
そうだよあの時も俺が一番最初に人造人間を発見したんだ。
いつもは物忘れが激しいのに、今日はやけに記憶が蘇りやがる。
本当に瞬殺されるかもな。

930 名前:マロ[sage] 投稿日:03/09/04 17:41 ID:???
>>831
老人ーヤムチャは震えた。
武者震いではない。心底怯えていた。
一度は死んだ身、死を恐れるわけではない。
実戦で味わうだろう己の無力感、ふがいなさに震えていた。

そうだよ俺は弱いよ。
子犬のようにブルブル震え、
血反吐はきながらゴキブリみたく地面を這いずり回り、
敵に背を向けるし、何一つ役にもたたねぇ。
でも俺は何度も生き残ってきたんだよ!!

「来いよポンコツ。」
美味しい餌があるよというかのようにヤムチャは気を高める。
人造人間がヤムチャへ顔を向けた瞬間、閃光が走った。
太陽拳!!!
人造人間は気を探るが、何も見つからない。
少女は緊張のあまり気絶し、ヤムチャも気を消していた。
ヤムチャは少女を抱え近くの民家へと逃げ込んだ。

931 名前:マロ[sage] 投稿日:03/09/04 17:43 ID:???
助かったと思う余裕はない。
「次の手を次の手を」
頭では分かっているが体がいうことを聞かない。
老いた。
わずかな距離を走っただけで息があがり膝が痛む。
老骨が悲鳴をあげる一方で頭だけは落ち着いてくる。
久しぶりの感覚。

胸にあったナンバーからすると11号か。
17、18号より強いって事はあるまい。
追ってくるなら俺より戦闘能力が高いって事か。
あの能面のような表情は16号と同じ100%機械ベースか?
TVの映像を見る限りだとエネルギー吸収式。
運が良かった。
人造人間が感覚器に熱探知を持っていたら終わりだった。
そうだ昔からあいつらは気に頼り過ぎなんだよ…。


932 名前:マロ[sage] 投稿日:03/09/04 17:44 ID:???
「気だ。」
11号はかすかな気を感じた。

老人は上手く気を消してるようだが、
少女は意識を戻したらしい。
それにしてもあの老人、結構な気の持ち主だ。
あれを吸収すれば一気にパワーアップできるぞ。
データにはないが、先ほどの戦闘能力からすれば、
まず負けることはないだろう。

11号は能面を奇妙に歪ませると、
民家の一つへと向かった。

11号は民家の中ひとつの扉の前にたどり着いた。
「この部屋にいる。」
突如、11号を炎が多い尽くす。
ドアを引いただけのはずだった。
しかし体は爆風で浮き、上下の感覚も定かではない。
爆発はとどまるところを知らず、
家を飴細工のように溶かしていく。
辛うじてガードこそ間に合いダメージはない。
炎のうねりに身をゆだねながら11号は舌打ちをする。
「糞っ。罠とは。くだらん。」

「チンケで安っぽい俺にぴったりの罠だ。」
日は既に沈み、爆発の炎がヤムチャの顔を照らし出す。
台所のガス栓をあけ、目張りをし、
蛍光灯とドアノブを紐で結んだだけの単純な罠。
ペットボトルの中に浮遊させた操気弾で11号を誘き寄せ、
蛍光灯の明かりを合図に操気弾をガスに引火させる。
ダメージを与えるためではない。
それでも少女を逃がす時間は作れた。
今頃は自動操縦のスカイカーの中で眠っていることだろう。
「何度でも出し抜いてやる。嫌がらせを続けてやる。」
雨垂れ石を穿つ己の行為にヤムチャは喜びを覚えていた。

 

622 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/07 15:06 ID:???
「雨か。」
ひたすら待ち続ける11号を雨がうつ。
雨が火事を消していくように、11号は落ち着きを取り戻していく。
熱を帯びた体が雨で冷やされて「気持ちがいい。」
その人間臭さゆえに11号は封印された。
再びその人間くささ故…「勘」で待ち続けている。
合理的ではないかもしれない。
しかし11号は気を探り続ける。
「来た。」
先ほどと同じ気がかなりのスピードで移動している。
どう動こうか考えあぐねていると、今度は別の場所で気が増えた。
次々と気が生まれては飛び回り、あるいは消えていく。

下水道でヤムチャは操気弾を操っていた。
移動しつつマンホールの蓋を開けわずかな気を飛ばす。
「馬鹿の一つ覚えだ。」
光速で両手の指を動かしながら自嘲する。
しかし見えない場所にいくつもの操気弾を通すー
これは驚異的な集中力と技術、老熟である。
「食い付いたか。」
操気弾が吸収される感じを覚え、二つ三つと続いていく。
11号はまだ遠くにいる。
時間を稼げると安堵したとたん、光とともに右足がはぜた。
悲鳴はあげない。息を殺し下水道の闇を探る。

続く

 

878 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/08 17:41 ID:???
>>622
ちぎれた右足が下水に浮かび、誰かの足下へ流れ着く。11号だ。
11号はその右足を拾い上げて猫をあやすようになでまわす。
「臭えなおい。でも下水道とは考えたねヤムチャ君。お前のドブ臭さを隠すにはもってこいの場所だ。はいっヤムチャ君に拍手…って今右手が無いんだよね。
操気弾を追いかけさせてるんだよ。てっきり俺が上で必死こいて走り回ってると思った?最初に操気弾を見た時にがっピーンと来たね。こんなチキンな技を使うのはヤムチャだけだって。
ここに来るのも楽勝楽勝。
操気弾が出たとこに行けばマンホールが必ずあるし。ところでその足じゃーもう逃げられないっしょ。あれっ?おれ喋り過ぎ?血がどくどく出てるね。死にそうなくらい痛い?ゲロ様にも言われたんだ。『お前は感情が不安定過ぎる。』ってね。
でねっ。何を言いたいかっていうと、俺は雑魚になめられるのが一番嫌いなんだよ!!!!!!!!」
11号の左の指の間から肉塊がポロポロ崩れ落ちる。
ヤムチャはすぐさま11号に背を向けた。
「お前馬鹿じゃん。人の話を聞いてなかったのかよ。飛んで逃げてもすぐに追い付くよ。」
あっという間に11号はヤムチャを追い抜き対峙する。

 

880 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/08 17:42 ID:???
>>876
緊張をやぶったのは歌声だった。
「シンギン イン ザ レイン」
ヤムチャが笑いながら歌う。
「何のつもりだ?」
「踊りたくなるような気分って事さ。」
ヤムチャは気を放った。
気弾は11号にはかすりもせず下水の奥へと消えていく。
「何のつもりだ。」
ゴゴゴゴゴッッッッ…
「あの音はなんだ?」
11号が奇妙な音に気付く。
「外は雨だよな。」
ヤムチャがにやつく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッ…
「質問に答えろ!!」
「雨にしちゃー水かさが浅くないか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッッ!!!!
11号が振り向いた瞬間、汚水の波が目の前まで迫っていた。
「糞っこいつ下水道を…」
「せき止めてたのさ。」
地上をかき回していた操気弾は、
下水道をせき止めるための目くらましだった。
11号はバリアを張りその場になんとかとどまる。
しかし既にヤムチャの姿は消えていた。

 

881 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/08 17:43 ID:???
>>880
「右足だけですんだのは俺の運がいいからだ。」
ヤムチャは下水の流れに身を任せていた。
「ピッコロも腕がちぎれた時は痛くてこっそり泣いたのか?」
「義足になったらちょっとハクがつくかもな。」
くだらないことを考えてなんとか意識を保とうとする。
しかし出血と痛み、緊張からの解放に冷たい下水、、、ヤムチャは意識を失った。

 

129 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/11 15:54 ID:???
>>前スレのどこか

マンホールの隙間から差し込むかすかな光が、下水に浮かぶヤムチャを起こす。

左手が動かない。下水を流れているうちに折れたのか。
人造人間20号に腹わたをぶちまけられた。あれは最悪だった。
腹からぶら下がる自分の内臓を見て吐き気をもよおす。
しかし吐くための物が腹から外にはみ出てる。
サイバイマンの自爆を食らった。あれは最悪だった。
何しろ死んじまった。
あの時に比べれば今は上等だ。
下水で口ゆすぎ、右足は欠け、左手は動かない。
満身創痍には程遠い。まだやれる。
「地上へ…」

130 名前:老兵[sage] 投稿日:03/09/11 15:55 ID:???
>>129
今のヤムチャを支えるものは何か。
ヤムチャの頭の中には自分が最後のZ戦士だということしかない。
意識は朦朧とし、記憶は混乱している。
頭の中では悟空の孫の存在は消え、己の体は若返っていた。
「俺がやるしかない。」
悟空はもういないということ。
逆にそれはヤムチャを強くした。
地上に出たからといって何かあるわけではない。
梯子を登り、マンホールから出るだけでも「ぶっ倒れそうになる」。

「腹をくくった。」
待つのはくたびれた。
これ以上長引かせる体力もない。
ヤムチャは腰をおろした。

11号は気を感じ取る。
けっして強い気ではない。
しかしその落ち着きは地中深く根をはりめぐらせる大樹を思わせた。
「ヤムチャ本人か。近いな。」

続く。