無題
405 名前:禁煙中名無し [sage] 投稿日:03/03/21 01:55
ID:BMGnJxLx
「あんた遅いじゃないのよ」
出迎えたブルマは思い切り眉間にシワが寄っていた。
ヤムチャは習性のようにおもわず一歩後退しかけたが、ブルマの様子はいつもの
マジ切れバージョンとは少し違っていた。彼女はおもむろにヤムチャの腕を掴むと、
ぐいぐいと家の中に引っ張っていく。
「ど、どうしたんだよ」
「ちょっと…頼むわ」
「何をよ?」
ブルマは無言で、戸惑うヤムチャを客間のひとつに押し込んだ。
そこで待っていたのは悟空だった。
「なんだ、久しぶりだな。珍しいじゃないか」
悟空はいつもの緊張感のない笑顔で、茶菓子を食いながらオッスなどと言っている。
しかしブルマは二人を残し、頭を抱えながらそそくさといなくなってしまった。
「…何かあったのか?」
「いや、ちょっと聞きてぇことがあってさー」
406 名前:禁煙中名無し [sage] 投稿日:03/03/21 01:58 ID:BMGnJxLx
頭をかいている悟空と、テーブルを挟んで向かい合わせに腰を下ろす。
妙な空気の原因を探るように部屋を見回したヤムチャは、テーブルの上に目を留めた。
なぜか地鶏の卵が3パック置いてある。
「それ牛魔王のおっちゃんが、特産品だから持ってけって。うめーぞ」
「そりゃ、どうもすまんな」
悟空が手みやげを持ってやってくるなど怪しさ満開である。
しかし、ヤムチャが不審がる間も大してあたえず、悟空は開口一番ぶっちゃけた。
「あのさ、チチが何か機嫌わりーんだ。『そろそろ子供がほしいだv』とか
最近言い出したんだけどさ、オラに言われてもよくわかんねぇからさ…。
子供ってどうすりゃ産まれるんだ?(爆)
チチに聞いても怒って口きいてくれねえんだ。だからブルマに聞きにきたんだけど」
「………」
ヤムチャは自分がいま、さっき自分を部屋に押し込んだブルマと同じ表情に
なっているのをはっきりと感じた。
「……おしべとめしべから話せばいいのか…?」
「何だそれ?」
407 名前:禁煙中名無し [sage] 投稿日:03/03/21 02:00 ID:BMGnJxLx
淡泊王・悟空の抱える問題を解決するには、まず「新妻より先に布団に入って
心地よく爆睡してしまう」というところから更正しなければならなかった。
それでも耐えて彼につきあったヤムチャの友情?は大いに評価されるべきだろう。
「まぁ、とりあえずお前たち寝室は一緒なわけだな?
状況としては、お前は嫁さんより後からベッドに入る方がいいわな。
初心者向けとしては」
「ふんふん」
「メモをとるな」
「だってオラ全部憶えてらんねぇよ。あ、図に描いて説明してくれねぇか?」
「描かねーよ!!!」
壁の向こうで、誰かが(複数人)鼻からコーヒーを吹いた音がした。
408 名前:禁煙中名無し [sage] 投稿日:03/03/21 02:03
ID:BMGnJxLx
「ま・なんとなく分かった。気がする。」
卵の殻にクリリンの似顔絵を落書きしながら、悟空が頷いたのは夜も更けた頃だった。
「分かった? ホントに分かったのか? マジで? まあいいや…
じゃあ最後に大事なこと教えといてやるよ」
まだ何かあんの?
といっぱいいっぱいな顔をしている悟空に、
ヤムチャはそっと何かを握らせた。
「何だこれ」
「子供がデきちゃマズイときに使うものだ」
「別にマズイことねぇだろ」
「マズイときもあんだよ! いいから持ってろ!」
「この薄っぺらいのを財布にいれとけば子供ができねぇっていう、まじないか?」
「……使い方は義父にでも聞け。つうか、そろそろ帰ってくれ」
いまいち納得のいっていない悟空を疲労感いっぱいに見送ったヤムチャは、
きっちり聞き耳を立てていたブルマにその後
「なぜあんなもんが財布に入っていたのか」
と小一時間問い詰められる羽目になるのだが、それはどうでもよい。
カプセルコーポに、チチの名前で地鶏の卵20パックが贈られてきたのは、
その3ヶ月後だった。