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ヤムの奇妙な冒険

 

 

294 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/28 23:17 ID:???
『ヤムチャ! 隕石を頭に受ける』

第21回天下一武道会はジャッキー・チュンの優勝に終わった。
そして大会の出場者である孫悟空とその友人らはそろって中華料理に舌鼓を打ち、失った体力を充填する。
その帰り道、我らが天才ヒーローヤムチャは試合の疲れも省みず、亀仙人をカメハウスまで送ることを申し出た。
亀仙人はその申し出を受け入れ、一行は飛行機の離着陸が出来る野原へと向かった。
「じいちゃん、オラの荷物持ってるか?」
野原についてすぐに、悟空が亀仙人に聞いた。
「ん? 持っておるが、どうした?」
「オラ、このままドラゴンボールを捜しに行くよ」
悟空が亀仙人から荷物を受け取りながら言った。
「なんだ、もう行くのか」
「せっかちじゃのう」
クリリンと亀仙人の呟きを軽く無視し、悟空は大きく息を吸い込むと「筋斗雲」と叫んだ。
漆黒の夜空に、ピンク色の筋斗雲は目立って見える。
猛スピードで近づいてくるそれを、悟空たちはじっと待っていた。
「あれ?」
最初に気付いたのは悟空だった。筋斗雲のほかにもう一つ、夜空から迫ってくるものがある。
「なにか、来ますね……」
クリリンがまだ疲れているのか、ぼんやりとした表情で言った。
「燃えてるみたい……。隕石かしら。
 大きさはあまりないみたいだけど、あの分だとずいぶん(少なくとも筋斗雲よりは)早いわね。
 落下したらちょっとした事故になりかねない」
ブルマが冷静に分析する。
「お、おい。あれ、こ、ここに落ちてくるんじゃ――」
ウーロンの言葉は途中で途切れた。素早く危険を察知した彼は、脱兎の如く野原から逃げ出していく。
続いて亀仙人が、クリリンの肩を叩いてその場を離れる。
クリリンもそれで我に帰り、オリンピック級の俊足で道路に避難した。
悟空はプーアルの尻尾をつかむと、余裕を持って駆け足で逃げ去った。
あとには隕石の様子を観察するために逃げることを忘れていたブルマと、
なんとなくぼうっと突っ立っていたヤムチャが残される。

295 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/28 23:18 ID:???
「ヤムチャ様とブルマさん! その場を離れて!」
プーアルが悟空に引っ張られながら叫んだ。
「あ、まずい」
今になってブルマが逃げなければならないことに気がついた。
「隕石か!」
そしてヤムチャはようやく隕石の存在に気付いた。
アタマの回転はそこそこ早いヤムチャ。瞬時に今しなければならないことを計算し、実行に移す。
「危ない、ブルマ!」
ヤムチャはそう言ってブルマを突き飛ばすと、自分はその反対方向に華麗に飛び去った。
そして隕石はなおも速度を速めながらまっすぐ野原に落下していき、
今まさに華麗に空中を跳躍しているヤムチャの脳天に激突した。
ゴン、という鈍い音が野原の端のプーアルに届くぐらいの大きさで鳴り響き、
続いて「ぶっぎゃあああ」という耳障りな叫び声とともにヤムチャは地面に落下していった。
「だ、大丈夫か!」
悟空がプーアルを持ったまま、ヤムチャの元に駆けていく。
「自分から隕石に突っ込んでってどうするのよ! 元の場所にいれば当たらなかったのに」
ブルマはそういいながら身体を起こすと、やはりヤムチャのもとへと急いだ。
「おい、プーアル! 何か乗り物に変化してヤムチャを病院に運ぶんだ!」
ウーロンが自分も変化できる事など忘れたかのような口調でプーアルに指示を出す。
しかしプーアルはそんなことを気にとめる余裕はない。
「う、うん! 魔法のジュータンに変化!」
「筋斗雲は無事だったみたいだけど、オラが乗せていこうか?」
「ヤムチャはたぶん筋斗雲には乗れないわよ。
 それよりこの隕石、燃えてるのかと思ったら光っていただけみたいね。
 何もないのに光るなんて、変わった物質だわ……」
「や、やばい反応が起こってるんじゃないでしょうね。
 病気になったりとか、髪の毛が抜けたりとかしたら怖いな」
「クリリン、おぬしにはすでに髪の毛は……」
「剃ってるんスよ!」
こうして各自が好き勝手なことを喋り、野次馬も集まってきた騒がしい中を、
ヤムチャは病院へと送られていった。

296 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/28 23:18 ID:???
病院では応急手当を受けたあと、単なる脳震盪だという診察を受け地元の西の都の病院に移された。
特に大事にはなりそうにないということで、安心した亀仙人とクリリンはカメハウスに帰った。
そしてウーロンとブルマもそれぞれ自宅へと向かい、旅立つ時期を逃した悟空もブルマ宅に招かれた。
カプセルコーポレーションにつき、時計を見ると、短針は11時の少し右をさしている。
すでにみな就寝しているかと心配したが、意外にもブリーフ博士が玄関前に立っていた。
「ただいま。父さんが出迎えてくれるなんて珍しいわね」
「おかえり。さっそくだが病院のヤムチャ君のところへ行こう」
ブリーフが車のキーを取り出して、音を立てて回して見せた。
「え、何で? 今その病院から帰ってきたとこなのに」
「車の準備は出来ている。ああ、孫悟空君も一緒にな」
「いや、だから理由を話してよ」
ブルマと悟空が車に乗り込み、ブリーフは運転席に着くとキーを差し入れた。
「実はな、お前が持ち帰った隕石のサンプルを調べてみたところ、ものすごい発見があったんじゃ」
「クリリン君がハゲる、じゃなかった核物質だったとか?」
「いや、あの隕石自体は単なる安山岩で、珍しくないはずじゃ。わしは専門じゃないが」
「え、それなら何で光ってたの?」
ブルマが少し興味を示した。悟空は眠そうだ。
「光っていた原因じゃが、どうやら隕石自体じゃなく、
 隕石に閉じ込められていた未知のウィルスが原因らしい(ウィルスのせいで光るというのも変な話じゃが)。
 このウィルスはとにかく変わっていて、どうやら感染した相手に特殊能力を与えてしまうようなんじゃな。
 マウスに注入して実験してみたところ、
 マウス君1号はしばらく高熱で苦しんだあと、狙ったものをどろどろに溶かす能力を手に入れた。
 そしてマウスたちのリーダーだったマウス君3号に至っては、なんと時間を止める能力まで身につけてしまっているようなんじゃ。
 こういう個体ごとに違った、強力な特殊能力を引き出す性質が、あの隕石にはあるらしい」

297 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/28 23:19 ID:???
「じゃあ、その隕石で頭を打ったヤムチャにも……」
「ああ、今頃はなんらかの特殊能力が身についているはずじゃ。彼は格闘家じゃからきっと凄い能力になることじゃろう。
 そしてヤムチャ君に会ったらすぐに退院してもらって、一緒に例の隕石をまるごと回収してきて欲しい」
ブリーフはそういうと、ラベルのないカプセルを一つブルマに渡した。
「回収? ……ああ、一般の人にその能力を身につけさせないためね」
「そう。一般人ならまだいいが、悪人に目をつけられたら大変なことになる。
 お前たちを休む暇もなくつれてきたのも、一刻も早く南の都に向かわなければならないからじゃ」
そこまで話したところで病院に着いた。
ブルマたちはすぐにエレベーターに乗り、ヤムチャが入院している8号棟6階の8号室へ向かう。
しかしドアは閉まっていて、「868」とかかれたプレートの下に「面会謝絶」という張り紙がしてあった。
「ヤムチャ様は面会謝絶ですよ」
一人病院に残っていたプーアルが、ブルマたちを見つけていった。
「面会謝絶? どこか悪いところを打ってたの?」
「頭のほうは中身をのぞいて問題ないんですけど……、急に熱が出て」
「熱じゃと。ひょっとして……」
ブリーフは素早く周りを見回して医者がいないことを確かめると、病室のドアを細くあけて隙間からヤムチャの様子を伺った。
ヤムチャはベッドに寝転んで、「う〜んもう食べられない飲めないなめられない」などとうなされている。
その様子を見てブリーフは叫んだ。
「これは、ヤムチャ君に能力が発動しようとしておる!
 しかし今は、能力が逆に"害"になってしまっている。
 努力しないおちゃらけた性格のヤムチャ君には、能力を操るだけの精神力がないのじゃ(ネズミでも操れたのに)!」
「へ?」
「オラ、もう眠い……」

TO BE CONTINUED

386 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/29 17:29 ID:???
『スタンド使い ヤムチャとシルバー その1』

病室でうんうん唸っているヤムチャをはるか西の都に置き去って、ブルマと悟空は南の都に降り立った。
時刻は午前5時。空には青みが増し、東からは赤い光が見えてきている。
「隕石が落ちてきたのって……、どっちだったっけ?」
ブルマが眠そうな声で言った。
「右の方だと思うぞ。匂いがする」
悟空も眠そうな声で答える。
「匂い? あの隕石、光るだけでなく匂いも出してるのか。しかしあんたの鼻は本当に犬並みね」
悟空の先導で隕石の野原にたどり着いた時、ちょうど太陽が東の山から顔を出した。
西から野原に入った悟空からは逆光になる。その光の中に、コートを羽織った長身の男の姿が見える。
「なるほど……。組織の予想通り、この隕石のことをかぎつけた奴が他にも現れたか。
 だがもう遅いぞ! この隕石とそれによってもたらされるパワーはすべて我が軍のものだ!
 邪魔者はこのシルバー大佐が始末する」
男はコートを脱ぎ捨て、ボクシング風の構えを取った。ちょうど太陽が登りきり、男の顔がはっきりわかる。
「あら、結構いい男じゃない。
 ……じゃなかった孫君、あいつを適当に片付けてやって」
眠気のためか、ブルマのテンションは低い。
「わかった」
悟空は持っていた荷物を地面に置き、軽く準備体操をした。
「フフ……。こんなガキが素手で勝負を挑もうというのか」
「おっちゃん、あんまり強そうじゃないね。
 痛い目にあわないうちに逃げた方がいいよ」
「やってみろ」
「やってやる!」
悟空は一瞬腰を落とすと、シルバーに向かって一直線に跳躍した。
しかし空中で右足を繰り出そうとした瞬間、何かに弾き飛ばされたように悟空は落下し、頭を軽くぶつけてしまう。
「いってえ……。今、何されたんだ……?」
「フフ……。お前は隕石はおろか、俺にたどり着く事も出来ない」
シルバーは不敵に笑って見せた。
「たどり着けなくてもさあ……、おっちゃんを倒す方法はあるよ」
悟空は素早く両手を合わせ、腰の位置に置いて気を溜めた。

387 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/29 17:31 ID:???
「かめはめ波!」
悟空が放ったエネルギー波は、しかし再びシルバーの手前で何かにぶつかり、拡散した。
「フハハハハ! 無駄だったようだな!
 やはりスタンドの能力は無敵だ!
 そして隕石からみながスタンドを身につければ、完璧にわが軍の天下は約束される!」
「スタンド能力……?
 やっぱりあいつ、マウス君1号たちと同じように、隕石から能力を身につけているのね……」
「攻撃がとどかねえのもそいつの仕業みてえだな。どうしよっか、ブルマ?」
ブルマは答えの代わりにカプセルを投げると、サブマシンガンを取り出して弾丸を掃射する。
しかしかなり広範囲にバラけて飛んだこの弾丸も、やはり何かに弾かれて地面に落ちてしまった。
「ダメか。あいつのスタンドの効果、かなり広い範囲にわたっているわね」
「う〜ん、飯食っとけばよかった。腹いっぱいなら何とかなるかもしんねえのに」
「無理だな」
シルバーが勝ち誇った様子で言った。
「わがスタンド"ドント・パス・ミー・バイ"はこと防御にかけては無敵の力を持っている。
 さっきの妙な光線が10発同時に来ても防ぎきれるはずだ。
 さて、そろそろ攻撃させてもらうか……」
シルバーが2,3個のカプセルを取り出して足元に投げると、ロケットのおもちゃのようなものが数発と、
円状の胴体に筒が乗っかった大砲のようなものが一つ現れた。
「は、迫撃砲だ……! あれをまともに喰らったら孫君でも危ないかもしれない」
「でもあれ、狙いが全然合ってないぞ。上を向いてる」
「あれはそういう武器なのよ」
ふたりが喋っている間に、シルバーはテキパキと筒にロケットをつめ、火をつけた。
数秒後、花火か太鼓のような轟音とともに、ロケットが煙をたなびかせながら上空へと飛んだ。
ロケットはある程度上昇すると方向を変え、悟空たちのいる地点を目掛け真っ逆さまに落下する。
悟空はすばやく気を練ると、天に向かって手をかざした。
「かめはめ波!」
かめはめ波は上空10メートルほどのところでロケットに命中し、大きな音を立てて爆発した。
破片があたりに降り注ぐが、その破片さえもシルバーのところまで届かない。
「上手く防いだな……。だがどこまでそれが続く?」
「続けてもらわないと困るわよ! 孫君、頑張って!」
「腹減ってきた……」

388 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/29 17:32 ID:???
「うわあああ緑色の大群が俺の足元を!」
ヤムチャは自分の叫び声で目を覚ました。
あたりを見回すとそこはあの野原ではなく、綺麗に整えられたベッドがあり、点滴のビンがある。
「病院……。隕石にぶつかったあとここに運ばれたのかな……」
「そうデス」
背後から答える声がする。
「ふーんそうかそうか。って、誰だ!」
ヤムチャは慌てて振り向いた。ベッドとテレビの間の壁に寄りかかるようにして、犬の頭をした人間が立っていた。
「その大きな耳、つぶらな瞳……、チワワだ! なぜか俺の病室にチワワが!
 ……えーと、お医者さんですか?」
「違いマス」
この世界では半動物の類の人間もそう珍しくはない。なのでヤムチャは、最初この人間を病院関係者だと思った。
しかしよく見ると、彼は普通の市民の外見から少し外れていた。
上着を何も着ていなくてトランクス1枚の服装だったし、何故か両肩の毛がそれぞれ「W」「H」という形に剃られている。
一般人の服装にしては奇抜なスタイルだ。
そして、なにより……、
「あ、あなた、チワワさん、よくみると身体が少し透けてますけど……、ま、まさか幽霊さんですか?」
「ソレも違いマス」
彼はそういうといきなり右手を突き出して、ヤムチャの肩に触れようとした。
しかしその手は肩を突きぬけ、背後の空間まで延びている。
ヤムチャは肩に力が湧いてくるような、奇妙な感覚を味わった。
「見ての通り、ワタシはアナタの身体をすり抜けマス。
 床をすり抜けたりはしないのに、何故アナタだけをすり抜けるのか?
 答えは簡単デス……、ワタシがアナタから生まれた、アナタのスタンドだからデス!」
「スタンド? 何だそれ?」
「スタンドの名は……、"ウルフ・ハリケーン"!」
「いや、だからスタンドって何?」

TO BE CONTINUED

709 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/31 20:36 ID:???
『スタンド使い ヤムチャとシルバー その2』

「つまりスタンドとは、自由に操れる幽霊のようなものなのデス」
ウルフ・ハリケーンと名乗るチワワがヤムチャに説明する。
「ただしスタンドは、スタンドを使える人(スタンド使い)にしか見えません。
 例えば博士にはワタシは見えませんでしたが、あなたには猛々しい狼男が見えるはずデス」
「チワワに見えるけど」
「さらに大きな特徴として、スタンドは一体に一つ特殊能力を持っていマス。
 博士の話では、すでに物をドロドロにする能力や時間を止める能力が存在しているらしいデス」
ヤムチャを無視して説明は続く。
「そしてここからが重要なのですが、あのスタンドを引き出す隕石は南の都に置かれたままになっていて、
 隕石を独占して悪事を働こうと言う輩が出てくる恐れがあるらしいのデス。
 悟空さんたちはそれを未然に防ぐため、隕石を回収に向かっています」
「まあ、悟空なら大丈夫だろ」
「イヤ、さっきも言いましたがスタンドはスタンド使いにしか見えないのデス。
 相手がスタンド使いだった場合、見えない敵が相手ではさすがの悟空さんも苦戦することでしょう。
 ここはワタシたちが救援に向かい、敵をバッサバッサとナデ斬りにして一躍ヒーローになるべきなのデス!」
ウルフ・ハリケーンは語気を強め、ヤムチャは思わず何度もうなずいた。
「な、なるほど。よくわかった。
 悟空たちの窮地を救えるのは、このヤムチャだけだということだな。
 ところでスタンドは一体一能力だと言ってたが、お前もやはり時を止められたりするのか?」
「時は止めませんが素晴らしい能力がありマス。
 今から試しますので身体を起こしてクダサイ。スタンドはあまり距離があると能力を発揮できマセン」
ウルフ・ハリケーンは机にあるポットを指差した。ヤムチャは身体を起こし、どうぞという風にうなずいてみせる。
「では行きマス! ウオリャアァ!」
ウルフ・ハリケーンがポットを殴ると、途端にポットは振動し蒸気が溢れ出してくる。
「おお、これが俺のスタンドの能力か! 一体何があったんだ?」
「ワタシの得意技! それは、水を熱湯にする能力!
 冷めたお茶もすぐさまホットに! カップヤキソバ作成にも役立つ優れものデス!」
「……つ、使えない」

710 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/31 20:37 ID:???
ロケットは白煙をあげて上昇すると、方向を転換し高速で悟空たちに向かい落下してくる。
地上で迎え撃つ悟空は、手を腰の位置において力を集中する。
しかし技を放つ寸前にブルマが悟空を引っ張りながら跳躍し、地面に伏せた。
ロケットは地面に着弾し、激しい爆発音をたてる。
「なるほど、そこへ逃げるか」
シルバーが感心したように言う。
ふたりはシルバーが作り出したすべてを弾く領域ギリギリのところに伏せていた。
「我がスタンドの壁の隣……。確かに直撃は受けないだろう。
 直撃の必要もないわけだがな」
ロケットが撃ちあがり、今度は前のロケットの近くに着弾した。
爆発。熱気と破片があたりに広がる。
「こうして少しずつ体力を削っていけばいい。
 弾は充分にあり、小僧の方は空腹で体力を減らしている。
 お前らのところがどんな惨状になろうと俺には関係ない。破片は俺のところまではこれないのだからな」
「あんたのスタンドの壁が破片を弾いてしまうわけね」
シルバーは少し目を見開いた。
「わたしには見えないけど、あんた今"壁"って言ったわね。
 つまりこのスタンドっていうの? ……そいつは壁の形をしてることになる。
 大きな壁の形で突っ立ってるだけ。ただ防御力は最高に高い。それがあんたの能力ね。
 弾丸をすべて同時に叩き落としてしまったのも、そんな能力ならよくわかる。
 そしてあんたが何故ロケットなんか使ったかを考えれば、この能力の限界もわかる。
 まず、この壁はあんた自身の攻撃も跳ね返してしまうってこと。そして、空を行くものは防げないこと」
シルバーはチッと舌打ちをすると、急いでロケットを打ち上げた。
「孫くん! この見えない壁を飛び越して!」
ブルマが爆音の中で声を張り上げる。
悟空はうなずくと、素早く膝を曲げて垂直に飛び上がった。
「飛び越すだと! この壁の高さは10メートル、棒高跳びの世界代表でも乗り越えられない!」
シルバーは強気を見せたが、表情からは余裕が消えていた。
悟空の姿は8メートルを越えて順調に上昇し、
ついにシルバーの目に見えるドント・パス・ミー・バイを飛び越してしまったのだ。
「バカな……、ただの垂直飛びで、20メートル……」
悟空は身体を反転させ、ロケットの軌道に照準を合わせて足を振りかぶった。

711 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/08/31 20:38 ID:???
鈍い音とともにロケットは悟空に蹴り飛ばされ、発射された場所に帰っていった。
シルバーと砲台、そして隕石があるその場所に、ロケットは着弾する。
すぐそばにおいてあった他のロケットにも火がついて、シルバーの悲鳴と耳を貫くような爆発音があたりに響いた。
ブルマが寄りかかっていたスタンドの壁は消え、彼女はそのまま隕石のもとへ向かう。
しかし煙が退くまで待ってみたが、何故か隕石の姿は影も形もなくなっていた。
「隕石、ねえな」
悟空が地面に着地し、つぶやいた。
しばらくあたりを歩いてみるが、やはり隕石の姿は見当たらない。
「おかしいわね。あの一瞬でシルバーって人が持って行っちゃったのかしら」
「でもよ、匂いはするんだよな」
悟空が鼻をひくつかせる。
「そういえばウィルスには匂いがあるんだっけ。どっちの方にありそう?」
「それがさあ。隕石があったところもこの辺も、同じぐらいの匂いでよくわからねえんだ。
 近くにあるとは思うんだけどな……」
ブルマはその言葉を聞いてはたと立ち止まり、慌てて空中に目を走らせる。
あたりは朝になっていたが僅かな木陰に闇が残っており、その闇の中に一瞬だけ、粉のようなものが輝くのが見えた。
「隕石は……、そこら中にあったんだ。
 さっきのロケットの爆発で一緒に隕石も吹っ飛んじゃって、あたり一帯にウィルスがばら撒かれたのよ」
「ああ、なるほど。匂いもなんとなく薄れたような感じだな。
 おめえさすがだな〜」
「感心してる場合じゃないわよ」
ブルマの言葉は、突然聞こえ出したエンジン音によってかき消された。
いつのまにか空中に飛行機が滞空しており、その窓からはヤムチャとプーアルが顔を出している。
「ブルマ、悟空! 爆発が起こっていたが、無事だったか。俺が来たからにはもう安心だぜ」
「ああ、ヤムチャ。ちょうどいいところに。
 私たちを家まで乗せてってくれる? さすがにちょっと、眠気が限界に……」
ブルマと悟空は飛行機に乗り込むと、あっけに取られたヤムチャを無視してクッションに顔を埋めた。
「隕石回収は失敗した。ウィルスはばら撒かれ、世界中に能力を持った人が現れてくるかもしれない。
 でも……、まあいいや。寝よ」
ブルマはつぶやき、そして眠りに落ちていった。

TO BE CONTINUED

844 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/03 00:00 ID:???
『今にも落ちていきそうなヤムチャを下に』

ヤムチャは一人雪山を歩いていた。
あたりは晴れていたが、むしろ悪天候の時より気温は低い。
服装は普段着のままだったので、凍りつきそうなほど寒かった。
何度目かの眠気が襲ってくる。彼は睡魔を追い払うため、とにかく何かを考えようと思った。
あれから、ウィルスは繁殖しながら風に乗り全世界にばら撒かれていったことが調査でわかった。
つまり南の都はもちろん、西の都や北の都、フライパン山周辺からユンザビット高地まで、
世界中のどこにでもスタンド使いがいる可能性があることになる。
ブリーフ博士は「限られたものの手であの隕石が使われるよりはいい」という楽観的な判断を下し、
実際今までは大きな問題は起こっていない。
しかしヤムチャは仲間内で唯一のスタンド使いとしての正義感に燃えており、
ことあるごとに「何かあったら俺に任せろ」と語っていた。
そしてそれを聞いたブルマが悟空のドラゴンボール探しをヤムチャに手伝わせることを提案し、
とんとん拍子に話が進み、気がつけば悟空とともに西の都を旅立っていた。
しかし「筋斗雲に乗れない」という致命的な弱点はどうにもできず、
ヤムチャは睡眠中に筋斗雲から落下し、何もしないうちに旅から脱落したのだった。
そして今ヤムチャは、自分を忘れて飛んでいった(眠っていたのだから仕方ないが)悟空を捜して雪山をさまよっている。
ヤムチャはそれらのことを一気に回想した。回想を終えても現状は変わらず、真っ白な世界がただ続いている。
「……も、もう限界だ。ウルフ・ハリケーン!」
ヤムチャはスタンドを発現させると、手持ちの水筒に雪を詰め入れた。
「例の奴、頼む」
「マタですか。……まあ、いいでしょう。ズドドエヤアァ!」
ウルフ・ハリケーンが水筒を叩くと、中身の雪が解け始め、暖かい湯気が立ち上り始めた。
「これ、これ! いやぁ、ここに来て急に役に立ち始めたなぁ、スタンドって奴は」
「マルデ、普段は役に立っていないみたいな言い草ですが……、まあいいでしょう。
 ……ん? あっちに人がいませんか」
ウルフ・ハリケーンが右前方を指差した。ヤムチャが水筒から顔をあげてそちらを見る。
雪が深い山中だというのに、確かに何人かの人々が歩き回っていた。

845 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/03 00:01 ID:???
「キノコ狩りか何かか? まあいい、村が近いとしたらありがたいことだ」
ヤムチャはそちらに向きを転じる。
近寄ってみると、そこでは何かの捜索作業を行っているらしく、
さらにその作業はなんらかの騒ぎで中断している様子だった。
「ですから、別に仕事が嫌だとか抜けたいとか、そういうんじゃないんです!
 家から急な連絡があったので早引けしたいだけなんですよ!」
人ごみの中から大声が聞こえる。
中年の男が、銃を持ち腕に赤いリボンを巻いた男になにやら掛け合っている。
「それじゃ、その連絡というのを聞かせてもらおうか」
銃の男が鷹揚にうなずいて見せる。中年は慌てた口調で説明した。
「うちの娘が、道端で倒れていた少年を見つけたんです!
 少年は長いこと雪の中をさまよっていたらしく衰弱していて、町の病院での看護が必要です。
 しかし我が家で飛行機を操縦できるのは私だけ、村のほかのものも全員作業に出ているので……」
これを聞いて、ヤムチャとウルフ・ハリケーンは顔を見合わせた。
悟空もヤムチャと同じように、はぐれた仲間を捜し歩いていたことは充分考えられる。
しかしヤムチャよりさらに軽装で、その上暖を取る能力もない悟空には、ここはあまりにも寒すぎるはずだ。
ヤムチャは歩調を速める。
「残念だが、そんな理由じゃ家に返すわけにはいかねえな。戻るには手間もかかるし……」
銃を持った男はこともなげにそう言った。
「もし生命に関わることになったらどうするんです!
 あなたたちが捜している何とかボールと少年の命と、どっちが大切だというんですか!」
「当然ドラゴンボールだ」
冷たく言い放つと、男は銃を中年に向けた。
「早く帰りたければせいぜい早くボールを見つけるんだな。
 さもないと、こいつが火を噴くことになるかもよ」
しかし彼はそのまま動かなくなった。木陰から腕が伸びて、男の首を捉えていたのだ。
「そっちの人を、すぐにうちに帰してやるんだ……」
その腕の主であるヤムチャはそういうと、男の銃を左手で払い落とした。

846 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/03 00:02 ID:???
「て、てめえ!」
少し離れたところにいたもう一人の男が発砲しようとしたが、ヤムチャは素早く石を投げつけてそれを止めると、
大ジャンプして首筋に回し蹴りを喰らわせた。
さらにもう一人の兵士が飛び出してきたが、これは中年の男と一緒に働いていた男たちによって押さえられる。
「村へ行きましょう。どっちの方です?」
ヤムチャは中年の男の手を引くと、言った。
「は、はい。村は東の方角です」
「さっき言ってた、あなたの娘さんのところにいる子ども……、俺の友人かもしれないんです。
 できれば早く村に行きたい」
ヤムチャはそう言って歩き始めようとしたが、はたと立ち止まった。
「え〜と、東ってどっちです?」
「こ、こっちですが……」
男が指差した方向に身体を向けると、その方角にはまだ一人、兵士らしき人物が立ちはだかっていた。
雪の中だというのに比較的薄着で(それはヤムチャも同じだったが)、黒装束で髷を結うという不思議ないでたちをしている。
相手が一般人だと強気になるヤムチャは、この男を雑魚だと判断し構わず突き進んだ。
「待て待てぃ! 仕事中だというのにどこへ行こうとしておる!」
男が時代がかった口調で尋ねた。
「村だ」
ヤムチャが質問に答える。
「ジングル村です」
中年も答えた。
「村だと? 作業終了時間の午後7時になるまでは、親が死んでも帰すわけにはいかんのだ!
 それでもぬけ出すというのなら、このムラサキを倒してからにせい!」
ムラサキはそういうと、背後に紫色の像を出現させた。
紫色の石でできた人型の彫刻のような形状で、あちこちにヒビ割れのような模様が入っている。
「なに、スタンド?」
ヤムチャは身構えた。

TO BE CONTINUED

 

65 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/04 23:08 ID:???
『ムラサキ曹長のディープパープル その1』

「ほほう、"ディープパープル"が見えるのか。
 このあたりに来てから初めてみるスタンド使いだ」
ムラサキが感心した様子で言った。
「そして、お前が最後に見るスタンド使いになるわけだな」
ヤムチャが憎まれ口を叩いてみせる。
相手も自分もスタンド使いで条件が同じなら、本体の差で勝利できる。自分は天下一武道会の出場者なのだ。
そういう楽天的な考えの元に、ヤムチャは自信過剰になっていた。
「……ほほう」
ムラサキの顔つきが鋭く変わった。ディープパープルがゆっくりと腰を落とし、戦闘態勢に入る。
そしてふたりは同時にスタンドを繰り出した。
二つのスタンドが同時に右ストレートを放つ。
しかしその威圧感とフォームから、ヤムチャは相手の拳の方が威力が高いことを感じ取った。
スピードはウルフ・ハリケーンの方が上である。
ヤムチャとウルフ・ハリケーンは攻撃を中止して身をかわし、ディープパープルの拳は空振りして地面に激突した。
ヤムチャはその隙に攻撃しようと試みたが、何故か思うように足を踏ん張れず、ブレーキが利かずにつんのめった。
ディープパープルの拳の衝撃で地面がたわみ、揺れていることに気付く。
そして白い新雪に稲妻のように亀裂が入り、その隙間から黒い土の色が顔を出した。
注意してみると、雪だけでなくその下の地面までも断裂しているのがわかる。
「じ、地面を叩き割りやがった!
 この破壊力、避けてなかったらやばかったぜ……」
「スタンドのスピードはそっちが上か!
 だがオレ様も忍びの者、本体のスピードでは負けはせんぞ!」
ムラサキは素早くヤムチャの背後に回りこみ、再びディープパープルを繰り出した。
しかしヤムチャはムラサキの懐にもぐりこむと、ウルフ・ハリケーンを発現させ地面を叩いた。
雪から水蒸気が立ち上り、ムラサキの顔面を襲う。

 

68 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/04 23:08 ID:???
「ぐおおお……。な、何をした!」
「雪を沸騰させたんだ……。
 そういうときはゆっくりまばたきするといい感じだぞ」
ヤムチャが乱れた呼吸を整えながら言った。
後ろに回りこまれたときのムラサキのスピードは、本体の差で勝利できるというヤムチャの余裕を消し飛ばしていたのだ。
「そ、そうか!」
ムラサキはヤムチャに言われるまま、何度か目をしばたかす。
「ま、まぶたとまつげがくっ付いてしまった!
 め、目が開けられん! 騙しやがったな!」
ムラサキがあさっての方向を向いて怒鳴った。
これはヤムチャの方向がつかめていないということであり、つまり目潰し作戦は成功したことになる。
「ここは寒いから、湯気もすぐに凍ってしまうわけだ。
 敵に言われたことをそのまま実行するか? 普通。
 マヌケな奴だ」
ヤムチャはホッとした声で言った。
どうやらあのスタンドの破壊力は、ムラサキの性格が単純なところに由来するものらしい。
強敵だが、扱いやすいタイプではあるようだ。ヤムチャは少し余裕を取り戻す。
「う、うるさい! こんな卑怯な手を使うのは自信がないからだろ!
 この弱虫が!」
「な、なんだと! 弱虫って言った方が弱虫だと学校で教わらなかったのか! バーカ!」
「そういいながら自分もバカとか言ってるし! バーカバーカ!」
「あ、あの、旅のお方、今のうちに逃げません……?」

TO BE CONTINUED


 247 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/06 08:27 ID:???
『ムラサキ曹長のディープパープル その2』

「ヤムチャじゃねえか! どうしてここがわかったんだ!」
自宅までたどり着いた中年の男とヤムチャを最初に出迎えたのは、意外にも悟空だった。
「ご、悟空! てっきりお前がここで倒れてるのかと……」
「確かにさっきまで死にそうだったのよ」
家の奥から母親が歩いてきて、ヤムチャと夫を迎え入れた。
「裏手の林で倒れているところを、スノが運んできたの。
 衰弱していたけど、あなたに連絡した直後に目を覚まして、スープを一杯飲んだらすっかりよくなっちゃって……。
 驚いたわ、私も」
「いやはや、無事でよかったよ」
男が胸をなでおろした。
「父さん、ドラゴンボール捜しは? ぬけ出してきたの?」
スノという名前らしい娘が、父親に尋ねた。
「ああ、ちょっと揉めたがね。このヤムチャさんが上手く奴らをあしらってくれた」
「ドラゴンボール? その人らもドラゴンボールを探してるのか?」
悟空が眼を丸くした。
「ああ、レッドリボン軍という軍隊らしい。
 私らもあまり関わりたくはないんだが、村長さんが奴らのアジトに監禁されていてね……」
「やばい奴らなんですか? ひょっとして俺がしたことはまずかったんじゃ」
ヤムチャが眉をひそめる。悟空と同様田舎に長く住んでいたヤムチャは、レッドリボン軍のことを知らなかった。
「いやいや、なんとかするさ」
父親はそう言ったが、表情はやや重たかった。
悟空は神妙な顔をして黙りこんでいたが、やがて顔をあげていった。
「よし、オラその村長さんという人を助けてくる!」
「急に何を言い出すのよ。第一まだ寝てなきゃダメだって」
スノが軽く窘めたが、ヤムチャは悟空に向かってうなずいた。
「そうだな。ついでにそのレッドリボンの親分を軽く締めてやれば、この村も平和になるだろう」
「みんなにはお世話になったから、恩返しだ。
 じゃ、行こうぜヤムチャ」
「おう」
ふたりはあっけに取られたスノ一家を背後に、すたすたと家を出て行った。

248 名前:ヤムの奇妙な冒険[sage] 投稿日:03/09/06 08:29 ID:???
「あれがアジトだな」
スノの家から数分歩いた後、ヤムチャが前方の塔を指差した。
「でっけえな。それにカギがかかってるみてえだ」
「まあ、どうぞどうぞと入れてくれるってわけには行かないだろうな。
 ここは俺に任せておけ。一応プロの盗賊だからな」
ヤムチャは見張りの兵士のところへ歩いていくと、いきなり胸倉をぐいっとつかんだ。
「この塔のカギを出せ」
「は、はあ? いきなりなんだよ?」
「出せといったら出せ!」
「あれがプロのカギの開け方か……。勉強になるなあ」
悟空が素直に感心する。
「そいつはカギを持っていない!」
上方から声がした。見上げてみると、塔の2階のテラス部分に、見覚えのある顔が立っていた。
「ム、ムラサキ曹長!」
兵士が嬉しそうな表情で言う。
ヤムチャはその兵士から手を放すと、ムラサキの方に視線を向けた。
「誰かと思ったらさっきのマヌケか」
「それはこっちのセリフだ、弱虫。
 しかし自分からこのマッスルタワーに出向いてくるとはいい度胸だ。
 カギはオレ様が持っている。塔に入りたければオレ様を倒すしかないということだ。
 もっともそれは不可能だがな……。はっ!」
ムラサキはポーズを決めながら塔から飛び降りた。
しかし着地の直前に、ウルフ・ハリケーンが着地点の周辺の雪を溶かしてぬかるみ状態にする。
不安定な着地姿勢だったムラサキはもろにぬかるみに足を滑らせ、ひっくり返って後頭部を強打した。
「ぐ……、おおおお……」
「やっぱりマヌケだ、お前は」

TO BE CONTINUED