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ハンター・ヤムチャ

第6部




436 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/13 20:57 ID:jiX8NXhU
前回>>419

さーて、ちょっくらホレ薬使ってハーレム作るか。
ヤムチャがそんな事を考えていると、
前方からラディッツが凄い勢いで飛んできた。
「あ、ラディッツさんどうかしたんですか?」
ヤムチャの言葉を聞くそぶりも見せずに、ラディッツが掴みかかってきた。

「元はといえばヤムチャさんのせいですよ、チチさんがあんなになったのは」
ヤムチャはここで思い出した。チチがラディッツに惚れた事を。
「女性にモテて羨ましいですよラディッツさん。じゃあそう言う事で」
ラディッツの言葉を軽く受け流して、
その場を立ち去ろうとするヤムチャの腕をラディッツは掴んだ。
「ヤムチャさん俺はね。チチさんに連れ去られた後、
命からがらチチさんから逃げてきたんですよ。判ります?」
「ラディッツさん照れ屋なんですね」
ヤムチャを殴りたい衝動を必死に抑えて、ラディッツは話しを続ける事にした
「チチさんは俺を捕まえるために、巨岩を投げるわ
怪しい薬を嗅がせて来るわ、変な魔方陣を書いたり接着剤を…もうアレですよ。
とにかくどうしようもないくらい暴走してるんです、助けてくださいヤムチャさん」
その言葉を聞いてヤムチャは状況を理解した。
何の状況かと言うと、チチがラディッツを羽交い締めにしている状況をだ。


437 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/13 20:59 ID:jiX8NXhU
「ヤムチャさん助けてください」
チチに羽交い締めにされて身動きが取れなくなったラディッツ。
ヤムチャと話している隙にチチに襲われてしまった。何とも情けない話しだ。
「ラディッツさ、もう逃がさねえだ」
満面の笑顔でチチがラディッツに囁きかける。
ラディッツの耳に息を吹きかけたりもしている。
周りから見れば、二人はどこからどう見ても、いちゃついているカップルだった。
ヤムチャはその様子を見て少し思った。これはひょっとしたらアレではと。
以下しばらくの間は、ヤムチャの脳内で繰り広げられたアレの妄想。

438 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/13 21:01 ID:jiX8NXhU
俺の名前は〇△。市内の学校に通う高校一年生。
これと言った特徴は無い、普通の高校一年生、青春真っ盛りの男の子。
朝も早くから女の子の幼馴染と一緒に登校中。
そして一緒に毎朝登校しているこいつが俺の幼馴染、名前は▼×。
こいつときたら俺の事が好きなのか、年中俺に抱き付いてきて困るぜ。
この前なんか、町で偶然会った時に抱きついてきてよ、
周りの目もあるのになにやってんだか。
それで俺が少し離れろと言ったら、少しムっとして抱きつくのを止めたんだ。

何故あの時抱き付くのを止めた? お前は俺が本当に嫌そうに見えたのか?
周りの目? 確かに大事ですね、でも16歳のオナゴの身体が
密着する状況の一瞬一瞬に、我の体内エネルギーが激しく燃え上がり、
かけめぐる性エネルギーが不死鳥になり全身のチャクラが50回程開いたと言うのに。
別に貴方さえ良ければ、俺から抱きついても良いのですが、
周りから見ると、痴漢に襲われている少女としか見えないのです。
抱き付いている俺でも痴漢に襲われている少女としか思いませんよ。
痴漢だ!! と言われたら俺のことかと一瞬で気付くと思うね。


439 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/13 21:03 ID:jiX8NXhU
っと、ちょっと熱くなりすぎたな、
こいつはこんな俺の心なんて知らないんだよな。別に良いけどな。
「〇▽くーん」
おっと、またいつもの様に抱き付いてきやがった。周りの目もあるって言うのに。
「少し離れろよ、恥ずかしいだろ」
そう言うと、少し顔を膨らまして抱き付くのを止めてしまった。
だから何故止めるのですか。ここで、俺の言葉を無視して抱き付いてくださいな。
俺の心はドント来い、ドント来い、ガッと来いだと言うのに、そこを(以下略

                  妄想終了。
「つまりこう言う事だったのか」
ヤムチャは全てを理解した。要はラディッツは恥ずかしがっているのだ。
「ラディッツさん、そんなに恥ずかしがらなくて良いのに」
ヤムチャは本心からそう思った。そして、ちょっとしたおせっかいをする事に決めた。
「チチさん、このホレ薬をラディッツさんに飲ませてください。
大丈夫、ラディッツさんの心がどうであれ、これを使えば二人の関係は上手く行きますよ」
チチにホレ薬の使い方を教え始めたヤムチャ。
一方、ラディッツの方は状況が全く飲み込めない。
「さーて、じゃあそろそろ部外者は立ち去るかな。後は二人で楽しんでください」
「ヤムチャさん、ありがとう。オラ何と言って良いか解らねえけど、これでラディッツさも素直になるだ」
チチに軽く頑張れというヤムチャ。チチもありがとうと答える。ラディッツは言葉も出ない。
「さ、ラディッツさ、これを飲むだ」
チチがラディッツにホレ薬を飲ませ様としている。ラディッツも抵抗する。
それをヤムチャが暖かい目で見守っていた。

続く


461 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/17 02:39 ID:AW95.qWg
>>前回436

流星を思わせる動きの速さ、一瞬の隙も見逃さないその戦闘センス。
恋は女を強くするというが、ここまで強くなるとは。
ラディッツはチチの強さにほんの少し憧れた。
実は、ホレ薬の原材料に、危ない気品漂う物があり、
それがチチの戦闘力を上げているのだが、ラディツは知らなかった。
そしてついにチチがラディッツの口を捉えた。
ラディッツの口にホレ薬が入れられようとしたその瞬間。
ラディッツの頭の中で、今までの恋愛が走馬灯の様に流れた。

幼稚園の時。近くの星にある宇宙幼稚園に入ったラディッツ。
しかし、戦闘民族サイヤ人と言う事で、周りの子供達が恐れて近づいてこない。
自分から近づいて行っても相手が泣くばかり。
結局ラディッツは独りぼっちになってしまった。
しかし、そんなラディッツにやさしく声をかけてきた
ショートカットの似合う、少しぽっちゃりしている女の子。
孤独だったラディッツの前に現れた一人の天使。

しかし、その女の子は数年前に、サイヤ人に星を滅ぼされた種族の生き残りであった。
ある蒸暑い日、女の子の家に遊びに行ったラディッツ。
するとそこには、レーザー銃とビームサーベルで武装した大人20人が待ち構えていた。
どうやら親にサイヤ人だとバレタらしく、仲間を引き連れてラディッツめがけて襲いかかってきた。
仇だ突撃だのと叫んで襲い掛かってくる大人達から、何とか逃げ延びたラディッツ。
しかし次ぎの日から幼稚園にその女の子は来なくなった。


462 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/17 02:39 ID:AW95.qWg
他にも思い起こせば、9歳の時の悪魔の眼鏡娘。
12歳の時のラディッツ消失事件。18歳の時の親父の壁事件。
そして地球に来てからの、遭遇ナッパ様などの数々の思い出が頭に浮かび上がる。
「まともな恋愛した事ないや」
ラディッツは、ホレ薬で偽りの愛に身を落す事もありだと考え始めた。

その時、チチの動きが止まる。
それを見逃さないラディッツ。渾身の力をこめてチチの腕を払いのけ、
辛くもチチの羽交い締めから逃げ出した。
ラディッツはチチの方に視線を向けると、チチは両目から涙を流していた。
「そんなに嫌か?」
ラディッツの今までの態度に心が傷ついていたチチ。
悲しそうなチチの問いに、ラディッツは声に力を込めて返事をした
「嫌です」
これは、ホレ薬が嫌だと言う意味だったのだが、チチは何かを勘違いした。
周りの空気がピリピリと張り詰める、眼下に広がる森から、鳥や獣たちが
我先にと四方に散らばって行く。そして先ほどとは違うチチの顔にラディッツは戦慄した。
「は…般若!」
時を同じくして、ヤムチャはチチに向って駆け出した。

つづく


514 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/25 00:09 ID:krhN5v6Q
>>前回461

ヤムチャの周りに黒いオーラが立ち上る。その黒いオーラは
黒い手に姿を変えて、チチに向って伸びて行く。

恐怖で身体が全く動かないラディッツ。メドゥーサの様な逆立った髪と、
般若の笑顔でラディッツに近づいていくチチ。ラディッツの命のロウソクの火に
チチと言う突風が迫り来る。
もはや風前の灯火となったラディッツが覚悟を決めた時、チチの背後から黒い手が姿を現した。
そして黒い手がチチの足や腕に絡み付き、チチは身動きが取れなくなる。
「ラディッツさ助けて〜」
先ほどまでとは全く違う、少女のような愛くるしい顔でラディッツに助けを求めるが
髪の毛は先ほどと同じ様にメドゥーサだ。ラディッツは直にあの愛くるしい顔は偽りだと観抜いた。
つまり助けた瞬間に先ほどと同じ状況が再開される。
「ラディッツさ、早く助けるだ。今なら軽い御仕置きだけですましてやる」

徐々にチチの顔が般若の顔に戻って行く。
軽いの意味がどの程度なのか、どんな基準で軽いと言っているのか不明だが、
このまま助けないと、チチが自由に戻った後に待ち構えているのは死だけであった。
覚悟を決めて、軽い御仕置きを受ける事にしたラディッツは恐怖で振るえながら、
チチに絡み付いている手を払おうとする。だがその時、突如現れたヤムチャがチチに惚れ薬を飲ませた。
当然の如く意識を失うチチ。そのチチをヤムチャが優しく抱きしめる。
先ほどまで温かく見守っていたヤムチャだったが、やはりチチを自分の物にする事に決めた。
結局最後は欲が勝つ。それがヤムチャだ。


515 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/25 00:11 ID:krhN5v6Q
「チチさんは俺が貰ったよ、さらばだラディッツさん」
そう言い残して去っていくヤムチャ。取り残されたラディッツはただ呆然と立っていた。
ヤムチャの脳内はハーレム一色だ、ハーレムだ、男の夢であるハーレムを作るのだ。
その犠牲者第一号はチチ。仲間の妻だけれどもヤムチャは気にしていない。
「後はチチさんが目覚めるだけだ」
しかし喜びもつかの間、ヤムチャの腕の中にいたチチはシュンと音を立てて消えてしまった。

少し時間は遡り、ヤムチャがホレ薬を奪って飛んでいった後の神様の神殿にて、
ブリーフがシェンロンを呼び出そうとしていた。
ヤムチャはドラゴンボールの事をすっかり忘れていた。つまりそのまま置いていってしまったのだ。
ブリーフの本来の目的はドラゴンボールを奪う事だ。結局の所ブリーフは目的を達成した。
「出でよシェンロン」
ブリーフの言葉に反応して、七つのドラゴンボールから光が溢れ出す。
そして次第に巨大な龍が姿を現した、どんな願い事でも叶えると言われている伝説の龍、神龍である。


私の名前はブリーフ、職業は王様。だが普通の王様ではない愛国心溢れる王様だ。
愛しい民衆の為なら、どんな危険な兵器でも開発してやると心に誓いを立てて今日まで生きてきた。
そのおかげで、民衆たちは私を敬愛し、私もまた彼らを愛している。
私はその愛を胸に秘め、様々な犠牲を払い、針の穴ほどの小さき正義の門をくぐりぬけてきた。
だが私はある欲望を抑えきれなくなっている。そう英雄になりたいと言う欲望を。
人は他人からの名声を欲する。ならば英雄になりたいと思う事は当たり前の事ではないか。
だが、人々の苦痛と絶望がなければ英雄とは生まれてこないのだ。
そう、私が英雄になるには人々の絶望が必要なのだ。愛しい国民達よ許せ、ただ1度の過ちだと思え。
さあシェンロンよ私の願いを叶えてくれ。
「サイヤ人に代わる脅威を世界に与えたまえ」


516 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/25 00:14 ID:krhN5v6Q
神龍は怒った。何に怒ったかと言うと、なんだこの願いはと思った。
1年前にはこの男はずいぶん立派な事を言っていたはずだが何だこれはと。

少し前、頬に傷のある男が、わけのわからない言葉を言って願いを叶えろと言ってきた。
何を言っているか判らんと答えたら、
「今の言葉を理解して願いを叶えてください、これが願いです。
どんな願いでも叶えてくれるんでしょ?」
とふざけた事を言ってきたので、思う存分尻尾でぶっ叩いてやった。
次ぎに来る奴の願いはマトモかなと期待していたが、まさかこれとは。
神龍は取り合えず、目の前にいるブリーフを尻尾でなぎ払い、遥か遠くまで弾き飛ばした。

「近頃の地球人はどうなっている。パンティーくれとかそれくらいならまだギリギリ許せるが、
これはなんだ。最近の地球人は全く礼儀がなっとらん」
神龍が怒り心頭と言った様子で叫んでいると、五歳くらいの子供が現れた
ゴクウの息子のゴハンである。
「ねえ神龍さん神龍さん。昔お父さんに聞いたんですけど、どんな願い事でも叶えてくれるって本当?」
「ああ本当だ」
「じゃあお母さんがどこに行ったか知りませんか?」
やっとまともな願いが来たかと神龍は思った。そのおかげで神龍の怒りは少しだけ冷めた。
「良しちょっと待ってろ」
神龍がカッと目を見開くと、ゴハンの横にチチが姿を現した。
ヤムチャの所からここに連れてきたのである。
「サービスして連れてきてやった、それと薬も抜いておいた」


517 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/11/25 00:16 ID:krhN5v6Q
「神龍さん、薬ってなんですか?」
「判らないのならそれで良い」
「うーん、気になるなあ」
とその時チチが目を覚ました。勿論ホレ薬は抜けてあるので、普通状態のチチだ。
「お母さーん」
ご飯がチチに抱き付く。ゴハンはチチがいなくなってからずっと捜していたのだ。
抱き付いたとしてもしょうがない。
「ゴハンちゃんどうしただ?」
「お母さんがいなくなった後、父さんと一緒にずっと捜してたんだよ、どこに行ってたの」
しかし、チチは殆ど覚えていなかった。覚えている記憶はラディッツが
嫌だと言った場面だけだが、どんな状況だったかも覚えていない。
「まあいいやお母さん帰ってきたし、神龍さんありがとうございました」
「よくわかんねえけど、何か御世話になったみたいで、ありがとうございました」
ゴハンとチチは神龍に御礼を言うと遠くにいるゴクウの元に帰って行った。

神龍は知っていた。あの親子を引き裂こうとしていた男がいる事を。
ハーレムを作るなどと言う下らない事の為に。
しかもホレ薬などと言う物を使い、チチが行方不明になった原因を作った事を。
神龍はその男に罰を与えることにした。本来なら神龍の力は願い事を叶えるためだけに
使うのだが、今日は虫の居所が悪いらしく、少々頭に来た。
「少し痛い目を見てもらうか」

つづく

688 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:21 ID:jbLfnOPI
>>前回514

ヤムチャはチチを捜したが、いくら捜してもチチは見つからない。
どうするか悩んだすえ閃いた。そうだ、ドラゴンボールがあるじゃないかと。
ここで初めて天界にドラゴンボールを置いてきた事に気付いた。
天界までドラゴンボールを取りに戻ろうと決めたヤムチャ。
そのヤムチャの前に、かなり不機嫌な顔のシェンロンが現れた。
シェンロンは、これから少しばかりお前に罰を与えると告げると、そのまま空の彼方に消え去った。
いきなりの事で、なんなんだと首を傾げるヤムチャの前に大男が現れた。我等がナッパ様だ。

ナッパ様は良い男を見ると乳首を触りたくなる。
街中でフッと気になる男と出会うと、ついつい乳首触って良いですかと襟を正してお願いしてしまう。
本人も困った癖だと思っているが、なかなか止められない。
そして先ほど、頭の中で何かの声に導かれてこんな遠くまで来て見ると、なかなか良い男がいるではないか。
ナッパ様はいつもの癖でついついこう言ってしまった。
「すみません、乳首触って良いですか?」
ナッパの頼みをやんわりと断るヤムチャ。
頼みを断られたナッパは笑顔のまま頭を低くする。
後は、身体全体の筋肉を通常モードから狩猟モードに変えれば準備完了。
そのまま笑顔でヤムチャに飛びかかるナッパ。

必死の抵抗も空しく、ナッパに力づくで組み伏せられるヤムチャ。身体全体から黒い気を噴出させるが、
それでもナッパからは逃れられない。
「静かにしろ、俺は良い男を見ると乳首を触りたくなるんだ。ちょっと触らせてもらうぜ」
「止めて、離して、この獣」
ヤムチャは必死に抵抗するが、ナッパからは逃げられない。助けを呼ぶにしても辺りには誰もいない。
乳首の一つや二つと諦めの観念がヤムチャの頭によぎるが、気力を振り絞って諦めの心を頭から追い出す。
そしてこの時、ヤムチャは決意した。こうなったらなにがなんでもこの場を乗り切ってやろうと。

689 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:23 ID:jbLfnOPI
「解った、乳首を触らせてやろう、好きなだけ触るが良い、なんならはさんでも良い。
だが、今の俺を見て乳首を触りたいほどの良い男だというのは、俺が納得できない」
「納得しないだと」
「そうだ。今の俺を見て、乳首を触りたい程の良い男だと思われるのは、俺が納得しない。
今までお前が、どれほどの男の乳首を指でつまんで来たのかは知らないが、このヤムチャを
少し良い男だと言われて満足するような、軟弱な奴らと一緒にしてもらっては困る。
俺の乳首を触ると言うならば、俺の最高の姿を見てから言ってくれ」
ヤムチャが不敵に言い放つが、ナッパも負けてはいなかった。

「おいおいおい、このナッパ様をなめてもらっちゃ困るぜ。
俺はな、一瞬で相手のあらゆる姿を頭の中で映像として見る事が出来る。
仮にお前が眼鏡をかければ、もっと良い男になると言ったとしても、
その程度の事は、既に俺の中で映像済みだぜ。今の俺はお前のバニーガール姿まで考えているんだ。
お前が最高の姿を見せると言っても、今更俺に見せる格好なんぞ残っていないはずだ」
「お前は所詮二流のタコ坊主だな」
「タコ・・だと!」
「そうだよ、二流のタコ坊主以外のなんだと言うんだこのタコ坊主。バニーガールや眼鏡くらいで
いい気になっているのが何よりの証拠だ。
その程度で乳首を狩っていたとはタコだなタコつうかマダコ」

690 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:25 ID:jbLfnOPI
ナッパが額に血管を浮きぼらせて、顔が真っ赤になる。
「俺は大抵の悪口なら、さらりと受け流すくらいの度量は持っている。
だがな、俺はタコと呼ばれるのだけは勘弁ならねえ。
貴様、もはや乳首だけではすまされないぞ」
ヤムチャを組み伏せていた両手を離して、少し距離をとるナッパ。
自分のズボンを下ろし、履いていたフンドシをゆっくりと脱ぎ始めた。
そして、脱いだフンドシを右手で高々と掲げる下半身丸出しのナッパ。
その姿を見て、ヤムチャはフンドシが光り輝く伝説の勇者の剣の様に見えた。
「このフンドシはナッパ家初代当主が履いていたとされる伝説のフンドシ。
代々我が家に伝わってきた当主の証し。これをどうすると思う?」
「それをどうするんだ」
「嗅ぐんだよ」

嗅ぐと言った。ナッパが優しげな目をして嗅ぐと言った。
そのまま愛しい恋人の肌着の匂いを嗅ぐ様にゆっくりと自分の鼻にフンドシを密着させるナッパ。
ナッパ家初代当主のフンドシの臭いはナッパの体の中で莫大な気に変化する。
その莫大な気はナッパの身体を変化させる、もう一つのナッパの身体へと。
「さて待たせたな、これで身体の問題は無くなったぜ、後は楽しむだけだなダーリン」
アレが無い、先ほどまで下半身丸だしのナッパについているはずの物が無い。
男の象徴たるアレが無い。それどころか胸も膨らんでいる。
ヤムチャが身体中から黒いオーラを噴出させた。先ほどナッパに組み伏せられた時の比ではない。
ヤムチャの頭の中で、危険を知らせる鐘がけたたましい音を立てて、危険だと鳴り響いていた。

691 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:27 ID:jbLfnOPI
この黒いオーラは、ヤムチャが手を加えた、ヤムチャ流の界王拳を使うと発生する。
この界王拳は術者の気を爆発的に高める事が出来るが、体に掛かる負荷が強すぎて、
寿命を削ってしまい、普段はかなり抑えて使っている。
しかし今のヤムチャは、少しも抑えずに全力で使っている。
寿命だなんだと言ってられない事態が起きた。今ここで全力を出さなければヤラレテシマウと
ヤムチャの中にある何かが語りかけていたのだ。

ナッパと肉薄するほどの力を手に入れたヤムチャだったが、そのまま戦おうとはせず
その場から逃げ出した。
闘えばナッパに勝てない事も無いだろうが、勝率は多く見積もっても六割だ。
ヤムチャにはそんな危険な賭けをする勇気は無い。負ければ何をされてしまうのか
考えるだけで身震いがした。
逃げるヤムチャとそれを追うナッパ。その様子を満足そうに天界から見ているシェンロン。
その三者の中にシェンロンの手によって、もう一人加わる事になる。

フンドシ片手に振りまわして追ってくるナッパから、必死で逃げているヤムチャの前に
巨大な円盤型の飛行物体が現れた。
しかもそれは一つや二つではない、ざっと見積もっても百以上はあるだろう。
船体には大きな文字でババと書いてある。
「聞こえるかヤムチャ。度重なるこのわしのアプローチを全て断りおって。
覚悟は出来ているだろうな」
船団の中で一際大きい円盤から、ヤムチャの知っている人間の声が聞こえてきた。
占いババの声だ。

692 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:29 ID:jbLfnOPI

天界ではパーティーも終り、皆さん家に帰り始めている所であった。
ちなみにあの後、天界に戻ったラディッツは、ゴクウ家族と仲良くなる事ができた。
ホレ薬の後遺症なのか、チチがラディッツに対して妙に優しくなっており、
ゴクウとゴハンを説得してくれたからだ。
結果論だが、フリーフの発明品もたまには人の為に役立った。

天界でヤムチャの様子を見ていたシェンロンは、そろそろ疲れたので消え様かと思っていた。
あの男にも罰を与え、用事は終わったと判断すると、シェンロンは何処かへと消え去った。
そして七つのドラゴンボールは空高く舞いあがり、勢い良く世界中に四散して行く。

「シェンロンが行っちゃったけど、良いのベジータ?」
ベジータにそう聞いているのは、ベジータの妻ブルマである。
ブルマはベジータに、なんでも願いを叶えてくれるドラゴンボールの事を話していた。
それを使えば、巨大彗星との衝突で死んだサイヤ人も生き返らせる事が出来ると。
しかしベジータは生き返らせない方が良いと言っている。
現にシェンロンが先ほどまでそこにいたのに、何もしようとはしなかった。
「良いんだ、生きかえらせない方が良い。そもそも俺はサイヤ人を捨てた身だ」
ベジータも少しは生き返らせたいとは思っているが、サイヤ人たちは闘いを生業としている。
そんな奴らは生き返らせない方が良いだろうとベジータは思っていた。
「でも…」
「いや、べジータ君の言うとおりじゃ」

693 名前:ハンター ◆sXwp.hkc [sage] 投稿日:03/12/09 22:32 ID:jbLfnOPI
どこからともなく現れたブリーフが拳を握って力説する。
「戦闘民族サイヤ人を復活させるのは平和を乱す事になる。そんな事はこのわしが許さん。
何よりも美しいのは平和なのだ。平和な宇宙に平和な人々に平和な地球
平和こそ何より…ウウッッ」
ブリーフが頭を抑えて苦しみ出した。
「お父さんしっかりして、どうしたの」
ブリーフは苦しみながら地面に倒れた。
シェンロンはヤムチャの他にブリーフにも手を出していた。
単にブリーフの心に良心を植え付けただけなのだが、、ブリーフにとっては
どんな拷問よりも苦しい責め苦であった。

ブリーフ博士を助け起こすブルマ。
震える手でブリーフ博士は懐から小さな箱を出した。
「こ…これをヤムチャ君に渡してくれ、決してお前が開けてはならんぞ」
そのまま気を失うブリーフ。箱を渡されたブルマは好奇心から箱を開けてしまった。
すると中には人形が一体ある、その人形が口をパクパクさせて、無機質な声で喋り出した。

「パスワードを答えて下さい。パスワードのヒントは、ミスターヤムチャの
一番大事な物です。では、後1秒以内にパスワードを答えて下さい。
はい時間切れ。コノ箱は証拠隠滅のタメ、爆発シマス爆発爆発爆発爆発」
ブルマとべジータが慌てて箱をいじくりまわすと、人形は無機質な声で話を続けた。
「嘘デス。爆発はシマセン」
フルマとベジータはほっと胸を撫で下ろした。
「大爆発シマス」
大きな爆発音と共に巨大な炎が天界を包んだ。

続く


761 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/18 23:17 ID:nzxpFCmg
>>前回688

ババの船団と戦う事になったヤムチャ。
幸いにもナッパ様との距離は離れているので、今の所そちらの心配は無い。
だが、余裕があると言ってもせいぜい三分が限度だろう。
それまでに目の前のババ船団を殲滅する必要がある。
そんな時、ヤムチャの目に映ったのはカリン塔。

カリン塔に近寄ると、ヤムチャは優しくカリン塔に手を触れる。その感触はまるで巨大な大樹。
その大樹を優しく持ち上げると、ヤムチャはカリン塔をババの船団に向けて一振り。
ヤムチャがカリン塔を使い、ババの船団をなぎ払った。
隙を突かれた船団は、その一振りで約二十隻撃墜された。
ババは散開する様に命令。ババもすぐさまその場から離れるが、その間にヤムチャは
三回ほどカリン塔を振った。
たった四回振っただけで、残っているのはババの船を含めてわずか七隻。
ババが状況を確認している間に、生き残った六隻をヤムチャが軽く始末して、
ババの船以外は全て撃墜された。

生き残りが自分一人だと知ったババは特攻を仕掛ける。船体を最大に加速させ、ヤムチャ目掛けて突撃。
ヤムチャは、カリン塔を大きく振りかぶると、狙いを定めて全力で振り下ろす。
こうして、ババの船団は全て行動不能となった。
戦いを終えたヤムチャがカリン塔を元の場所に戻していると、遠くから奴がやってきた。


762 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/18 23:20 ID:nzxpFCmg
夕日をバックにヒゲヅラのおっさんがフンドシ片手に特攻してくる。
間違い無く奴だ。
ヤムチャは、自分の持っているカリン塔を眺めてふと思った。
こいつと一緒なら、奴と闘えるだけの勇気が持てるのではないか。俺は奴と戦えるのでは。
カリン塔を持ちなおして、夕日の彼方からせまり来るナッパ様との闘いの準備を整える。
ヤムチャの真の闘いが、今始まろうとしていた。


少し前、小箱が大爆発。その爆心地にいたブルマとベジータに怪我は無い。
二人とも鍛えられた戦士であり、身体に怪我は全く無い。
あの程度の爆発の衝撃では、二人にダメージを与える事は無い。
一般人で例えると、ちょっとポンポンと叩かれた程度で、身体の内部にもダメージは一切無い。
爆発の炎も、少し温かい風くらいしか感じず、全く持ってダメージは無い。
だがそれは身体や髪の毛の話しであって、身につけているものとなると話しは違った。

お気に入りの服やアクセサリーが崩れ去っていくのを、涙目で見ているブルマと
そのブルマを慰めているベジータ。
発狂寸前のブルマが、ブリーフに刀で切りかかる事、数えて八回。
そのたびにベジータがブルマを抑える。
そこへ先ほどの爆発の事で、神様がやってきた。素直に事の顛末を教えるブルマとべジータ。
事情を聞いた神様が、ブリーフの額に手を当てる。何かを調べている様だ。
神様がブリーフの額に手を当ててから二分が過ぎた頃、神様は声を震わせてこう言った。
「わしが調べたところ、ブリーフ君の心の中に良心が芽生え始めていた…」


763 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/18 23:24 ID:nzxpFCmg
ブルマとベジータは驚いた。あのブリーフ博士に良心が芽生えていると言う事に。
「おかしいと思ったんじゃよ、あのブリーフ君がヤムチャ君に爆弾を送るだけで
すまそうとしてたのじゃぞ。まさかと思って調べてみたら、まだほんの小さな良心だったが、
ブリーフ君の心の中に存在していたよ。しかも凄い速さで良心が肥大化していた」

それを聞いてブルマは思った。確かに父らしくない行いだと。
爆弾一つ送るにしても、普段のブリーフなら中性子爆弾レベルの物を送る。
それがただの爆弾一つとは、おかしすぎる。
「じゃあもしかして、お父さんは普通の良い人に変わるの?」
「あのままだったら確実に良い人に変わってただろう。
だが安心したまえ、わしがちゃんと調べるついでに良心の芽を握りつぶしておいたよ」
「…………」
昔からブルマは、お父さんが普通の人になれます様にと願っていた。これはブルマの一番の願い
と言って良い。
そして今日、自分の父に良心が芽生え始めたと言う。ついに願いは叶ったかと喜んだ次ぎの瞬間、
絶望の底に叩き落された。
この緑色が、自分の父の良心を握りつぶしたらしい。


764 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/18 23:27 ID:nzxpFCmg
ブルマが右手に持っている、名刀斬鉄剣が光りだした。持ち主の殺気に反応しているのだ。
「良い根性してるよ神様。一回あなたと戦ってみたかったんだ」
ブルマの顔が羅刹に変わっている。あのベジータさえも恐怖で近づけない。
「その緑の触角を切り落としてやる」
ブルマが神様に飛びかかろうとしたその瞬間、ブリーフ博士が目覚めた。
「止めるんだブルマ」
父が闘いを止めろと言った。普段なら、進んでやっちまえと言う男が。
神様は良心を、捻り潰したと言っていた。だが、もしかしたら。
「お父さん。なんで止めろって言うの?」
「刀を振り回して他人に切りかかろうとする娘を止めて何がおかしい」
ブリーフは良い人になった。

続く

772 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/20 06:54 ID:0myT0nu.
>>前回761

ブリーフの横顔がなんと凛々しい事か。今のブリーフは先ほどとは違い
地球の王に相応しい凛々しさを持っている。
「お父さん」
ブルマが溜まらず駆け出した。そして勢いよく抱き付くと、顔に笑顔を浮かべる。
「やっとまともになってくれたのね、お父さん」
ブルマの頭を優しくなでると、軽く頷くブリーフ。
「今まで辛い思いをさせてすまなかったなブルマ。これからは真面目に生きると約束しよう」
美しい親子愛に、あのベジータも瞳が少し潤んでいる。
二人の姿を見た人間は、誰しも二人を祝福するだろう。ただ一人を除いて

「正気にもどるんだブリーフ君」
神様が自慢の右手を伸ばす。数十センチメートルほどの長さだった右手が、
何メートルの長さにまで伸びる。
もう一度ブリーフの額に手を当て、今度こそ良心を完全に消滅させるつもりなのだ。
その神様の手をブルマが掴む。
「神様。これ以上父さんに何かする気なら、私が黙っちゃいないわよ」
「今のブリーフ君を見て、ブルマ君は何も思わないのか」
「まともな人間になって良かったと思ってるわ。昔のお父さんに
良い所なんて一つもなかったでしょ」
神様は、ブルマに反論しようと思い、昔のブリーフの良い所を並べ様と頑張ったが、
全く思い浮かばなかった。せいぜい昔に比べてつまらなくなったくらいだ。その程度しかない。
「わしの負けだ」
神様は自分の負けを認めると、その場に崩れ落ちた。


773 :ハンター ◆sXwp.hkc :03/12/20 07:00 ID:0myT0nu.
天界の下で、カリン塔片手にナッパと闘っていたヤムチャ。
予想していたよりもナッパは強かったのか、かなり苦戦している。
ナッパはカリン塔をフンドシで受け流す。どんな攻撃でも、あのフンドシの前では意味が無い。
ゆらりとフンドシが動くと、次ぎの瞬間には攻撃が受け流されている。
ヤムチャは思った。こいつは最強のフンドシ使いだと。
だが、武器の扱いではナッパに分があるが、肉体的な強さではヤムチャの方が上だ。
カリン塔の重量が桁外れと言う事もあり、ナッパは徐々に押されていった。

「ねえお父さん、これからどうするの? 今まで通り王様でいるの?」
天界は、とても和やかな雰囲気だった。神様だけは、ヤケ酒を飲んでいるが。
「王様を続けるつもりだよブルマ。そして、兵器なんて作らずに、
民衆達の生活を豊かにする発明品を、沢山作るつもりだ」
「ふふ、昔のお父さんだったら、そんな事は熱が無くちゃ言わなかったわよ。
実は、今のお父さんも、ただ熱があるだけだったりして」
ハハハハハと笑いあう、ブリーフとブルマと神様。
「どーれ、熱があるか見てやろう」
神様がブリーフの額に手を当てようと近づくと、ブルマが神様に正拳突きをかました。
そして、何処までも吹っ飛んでいく神様。

下界では、ヤムチャがババの船を沈めたあの技を使おうとしていた。
勢い良く、カリン塔を大きく振りかぶるヤムチャ。ただ先ほど使ったときよりも、
ヤムチャの位置は天界にかなり近かった。
つまり、カリン塔は天界に直撃した。

続く

40 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:03/12/31 23:47 ID:e8yF78mk
>>前回772

カリン塔の直撃で、半壊した天界。
ブルマとベジータは、何とかカリン塔が直撃する前に天界から逃げる事に成功したが、
逃げる時にブリーフとはぐれてしまった。
ブルマとベジータがブリーフを探し始めて十分後、夫であるベジータが、ある情報を掴んだ。
ラディッツが、先ほどブリーフと神様が一緒に居る所を見たと言うのだ。
ブルマの顔から血の気が失せた。

「まさか、あの緑色の触角人間が、お父さんの良心を今度こそ本当に握り潰したんじゃあ。
また昔のお父さんに戻っているかも」
つまり、ドサクサにまぎれて神様がブリーフの良心を握りつぶしたと思っているのだ。
ブルマは想像した。自分の父が神様に捕らえられ、抵抗も空しく額に手を当てられる。
次第に顔つきが邪悪に成っていく父親。その様子を神様は笑いながら眺めている。
そして、昔の父へと逆戻りしてしまうのだ。
見事に邪推しているブルマ。神様を一片たりとも信じていない。

「おいブルマ。あれはブリーフ博士だろ」
いきなりベジータがブリーフを発見したと言ってきた。
ベジータの突然の言葉に少し驚きながらも、ブルマはベジータの指差した方を振り向いた。
するとそこには神様がブリーフを担いでいた。
「お父さん!」
ブルマが神様に駆け寄る。お腰につけた斬鉄剣に手をかけながら。


41 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:03/12/31 23:49 ID:e8yF78mk
ヤムチャ最強の技、カリン塔振り下ろし。
ただカリン塔を振り下ろすだけと言うこの技は、一撃で大陸を破壊する事も可能だ。
その振り下ろしをまともに食らってしまったナッパ。
もはやナッパに戦う力は残っていない、つまりナッパの負けである。
だが、荒れ果てた荒野に倒れているナッパ様の顔は実に安らか。
戦士として出来る事を全てやり尽くした。そんな安らかな顔だった。

ヤムチャはそんなナッパに向かい、手に持っていたカリン塔を投げつけた。ちゃんと止めを刺したのだ。
轟音とと共に安らかな顔のナッパ様は消え去った。
ヤムチャは満足そうな笑顔を浮かべると、二度と復活するなよと一言だけ吐き捨てた。
そして、そのまま天界目指して飛んで行く。先ほどカリン塔に破壊された天界に。


少し前、大空を落下中のブリーフを神様は見つけた。
先ほどのカリン塔と天界がぶつかった衝撃で気絶したのだろう。
ブリーフは飛ぶ事もできずにいた。

ブリーフを保護した神様は、辺りにブルマが居ない事を確認すると、
当たり前のようにブリーフの額に手を当てる。
ここまではブルマの邪推も少しは当たっていた。だが、神様はブリーフの心に入り込めなかった。
いくらがんばっても無理だ。何か巨大な黒いもやが神様の邪魔をしている。
しょうがないので、天界に戻る事にした神様。
天界には色々な便利グッズがある。それを使ってブリーフの心をこじ開けようとしてるのだ。
やる事は決まった。ブリーフ復活まで秒読み体制だ。
心に希望を浮かばせながら、気分高揚にブリーフ担いで天界まで戻るその道中で、
いきなりブルマが襲い掛かってきた。


42 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:03/12/31 23:50 ID:e8yF78mk
ブルマの太刀筋はそれはもう見事なものだ。ブリーフ共々神様を葬り去ろうとしている事は傍目に見ても判る。
ベジータに抑えこまれるブルマ。ベジータにはいくつも刀傷が出来ていた。
死を覚悟したわりには傷は少ないなと思いながら、ベジータは優しくブルマを説得し始めた。
「話だけでも聞いてみないかブルマ」
「良いの、もう判ってるから。きっとお父さんは、神様のせいで昔のお父さんに戻ったのよ。
今は気絶しているみたいだけど、それは好都合だわ。
私は娘として、あの男を二度とこの世の復活させるわけには行かないの。全てこいつのせいよ」
「わしは神様じゃぞ。もう少し有り難味を持って接しても良いと思うのじゃが」
問答無用とばかりに、ブルマが再度神様に襲い掛かる。
「待てブルマ君。どうだね? ここはひとまず取引でもしないか。わしを見過ごす代わりに世界の半分を上げようじゃないか」
神様の言葉を聞いたブルマの太刀筋が鋭くなった。
どうやら火に油を注いでしまったらしく、ベジータさんもブルマを抑えるのに必死だ。

間に入ったベジータが、ブリーフ博士が目覚めるまで待つという事でブルマを納得させた。
神様、ベジータ、ブルマの三人は半壊した天界に戻ってくると、ブリーフが目覚のを待っていた。
「もしも昔のお父さんに戻っていたらどうなるか判っているでしょうね?」
「それは無いよブルマ君。わしもブリーフ君を元に戻そうとしたのじゃが、なぜか心に入り込めなかった
きっと昔のブリーフ君には戻っていない」
妙に説得力のある神様の言葉に、ブルマも二の句を告げられない。
そんな雰囲気の中、ある男がやってきた。
先ほどカリン塔で天界を壊した男、ヤムチャだ。

つづく


144 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:00 ID:dFs/U4I2
>>前回40

天界は大きく変わっていた。
大きな亀裂の入った今にも崩れそうな地面と、半分ほど倒壊している神様ハウス。
奇妙な形をした木々達は、全て根から折れていた。

「本当にすみませんでした神様」
一人の男が、腰を直角に折り曲げて頭を下げている。
名前はヤムチャ。クールな瞳とホットなハートの持ち主。
この男、カリン塔と呼ばれる太くて長い建造物を好き勝手に振り回して、天界を半壊させてしまった。
つまり、今回の事件の加害者。
「そんなに謝らなくて良いよヤムチャ君」
ヤムチャを優しげに諭す、無数の刀傷が身体に刻まれている緑色の触覚を頭に生やしたこの人物、名を神様と言う。
天界の持ち主で、天界半壊事件の被害者でもあった。
「いえ、こうでもしないと俺の気がすまないんです神様」
「君の気持ちはわかるが、しかし」
「いえ、本当に申し訳無いです。まさかこんな事に成っていたとは」
「良いんだよヤムチャ君。ちょっと首を置いていけばわしは許すよ」
神様ご自慢の便利グッズの一つ、切っ先がかなり鋭い槍をヤムチャに向ける。
普段のヤムチャなら神様と戦うことも出来るが、ナッパとの戦いで体力を消耗している今のヤムチャには
神様と戦うだけの力は残されていなかった。
「犯人は誰か知らないかと聞かれたから、素直に俺ですと言っただけなのに」
「ちょこっと素直過ぎだ、ヤムチャ君」


145 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:01 ID:dFs/U4I2
「それくらいにしたら神様」
そう言ってきたのはブルマだった。
「他の人は黙っていてもらおう。わしはヤムチャ君を許すつもりは無い」
「貴方は神様でしょ、広い心を持って許したらどうなの?」
「刀を持ってわしごとブリーフ博士を切り捨てようとした人間に、そんな事言われたく無いわ。
どうせブリーフ博士が悪人に戻っていたら、わしを刀の錆にしようとでも思っているんじゃろ」
ブルマは黙ってしまった。神様の言っている事がもっともだからだ。
「わかったわ、もしお父さんが悪人に戻っても何もしないと誓うわ。だから、ヤムチャを見逃してあげて」
「本気で言っているのか?」
「本気よ」
「絶対だな?」
「絶対よ」
今度は神様が黙ってしまった。ブルマの決意が本物だと感じたからだ。
「さ、ヤムチャがした事は許してもらうわよ神様」
「だがしかしなあ……」
「駄目だって言うんなら、父さんが悪人に戻っていたときは覚悟してね」
「わかったよブルマ君。ヤムチャ君は許すよ」
神様が槍をヤムチャの首から離してポポに渡した。

この場で一番驚いているのはヤムチャだった。
ブルマが自分の為にここまでしてくれるとは思いもしなかった。
「ありがとうブルマ。この恩はいつかちゃんと返すよ」
「良いのよヤムチャ。私もベジータと勝手に結婚したから負い目を感じてたのよ。
でもこれで勝手に結婚した事はチャラよ」
「ああ、当たり前じゃないか。じゃあ俺はもう家に帰るぜ、ブリーフ博士が良い人に変わっていると良いな」
「何を言ってるんだヤムチャ君。わしは元々良い人だよ」
ヤムチャが爽やかな笑顔でその場から立ち去ろうとしたとき、ブリーフが目を覚ました。


146 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:02 ID:dFs/U4I2
場が凍りついた。その場にいる全員がブリーフ博士を見ている。
「どうした? わしがどうかしたのか」
全員がブリーフの言葉を反芻していた。元々良い人という言葉を。
「悪人に戻ったのね、お父様」
「待てブルマ、決め付けるのはまだ早い、もう少し様子を見るんだ」
ベジータが今にも飛び掛ろうとしているブルマを制止した。
「ブリーフ君、元に戻ったんだね」
その横で神様が嬉しそうにブリーフに話し掛けた。横にいるブルマの気持ちなんて考えてない。

「元に戻った? そう言えばさっき変な夢を見たよ。
わしがブルマに平和だの愛だのと語って、挙句の果てには兵器を作らないだのと言いよった」
「それはとんでもない悪夢だったな。だが大丈夫、もうそんな悪夢は終わったよ」
「そう言えば夢の中で地球の神よ、あなたにも出会った。
そうだ、あれは夢ではない。確かにわしは兵器を作らないと語っていた。
わしとした事が何と言う醜態を晒してしまったんじゃ」
ブリーフが拳を強く握り、歯軋りを一つする。
ちなみに、近くで二人の話を聞いているブルマは歯軋りが鳴りっぱなしだった。

「じゃが、君は自力で戻ってきたじゃないか。醜態なんかでは無かったよ」
「いや、あなたのおかげだ。あなたが最初にわしの心に巣くっていた変な良心を握りつぶしてくれ
なかったら、わしはあのままだっただろう。きっと自分の心を取り戻すことは出来なかった」
「いや、これも全てブリーフ君の精神力の強さの賜物だ。わしは背中を押しただけに過ぎない。
流石だなブリーフ。それでこそ地球の王だ」
「神よ!」
「ブリーフ!」
がしっと二人は抱き合った。それを見ていたブルマの殺気が跳ね上がった。
その凄まじい殺気は、あのベジータもその場から逃げ出したほどだ。


147 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:04 ID:dFs/U4I2
暗闇の中に一体の龍がいる。シェンロンと呼ばれる巨大な龍。
この龍は死者を生き帰らせる事も出来るほど強大な力を持っていた。
「あの男は私以上だと言うのか」
あの男とはブリーフの事だ。
シェンロンは、ブリーフの心に良心を植え付けた。
最初の内は、この良心がブリーフの心を支配することが出来た。
神の妨害も全く問題になっていなかった。それほどブリーフの心の奥深くに植え付けていたのだ。
だが、時間がたつに連れて、シェンロンが植え付けた良心は力を無くして行った。
例えて言うなら、芽を植付けたは良いが、土は腐っていたという感じだ。
しかも、ブリーフ本来の心が前にも増して強くなって行った。
まるで厳しい修行を乗り越えた修行者のように、激しいトレーニングをこなしてきたアスリートの様に。
今では、以前よりも何倍も強くなったブリーフの心に、シェンロン如きでは手が出せなくなっていた。
「化け物か……」
シェンロンは暗闇の中で一人呟いた。

ここは天界。ブルマが現在大暴れ中。
「待てブルマ君、これを見ろ」
神様が右手でヤムチャの後頭部を掴んで持ち上げた。
「確かにわしは聞いたぞ、ブルマ君はヤムチャ君を助ける代わりに、わしには切りかからないと
それなのに、何でブリーフ君だけじゃなくて、わしにまで手を出して来るんだ。
いや、ブリーフ君を切りかかることも間違いだ。さっき君は言ったじゃ無いか、
広い心を持って許してやれと。
それなら、君も広い心を持ってわしとブリーフ君を許してくれ」
ブルマは少しだけ悩む仕草を見せると、ボソッと一言だけ呟いた。
その一言をヤムチャは聞いていた。確かにブルマはこう言った。
「ヤムチャ、あんた邪魔だよ」


148 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:06 ID:dFs/U4I2
「待ってくれブルマ、俺に対して負い目感じてるんじゃないの?」
「誕生日プレゼントに台所のキュウリ渡す奴が偉そうに言ってるんじゃないよ」
ブルマは手に持っていた刀を投げつけた。ヤムチャと神様の二人を一片に片付けると言う修羅の攻撃だった。
ヤムチャの鼻先三oの所でぴたりと止まる刀。ヤムチャが真剣白刃取りで受け止めたのだ。
ホッと胸を撫で下ろす神様とヤムチャ。
それと同時にグイッと凄い力で押される刀。
ヤムチャの目の前には何時の間にか距離を詰めていたブルマの姿があった。
「止めてくれブルマ」
「そうじゃぞ、ヤムチャ君がどうなっても良いのか」
「どうなっても良いから頼むから殺させて神様、ついでにヤムチャも」
刀を押しつづけるブルマと、力を振り絞って抵抗するヤムチャ。
鼻先に刀がプスリと刺さった時、ブリーフが叫んだ。
「止めるんだブルマ」

ブルマが驚きの表情でブリーフを見た。いつもなら進んでやっちまえというはずの男が、
戦いを止めろと言っている。
ブルマの動きがとまった。その隙をついてサササっとブルマから逃げ出す神様とヤムチャ。
(これで良いのか神よ)
(そうだ、それで良いんだ)
「お父さん、何で止めろって言うの?」
「刀を振り回して人に切り掛かろうとしている娘を止めて何がおかしい
全く、何度もこうやって娘を止めるのは、わしでも疲れる。言っただろ刀を振り回すのは駄目だと」
「ご……ごめんなさいお父さん」
(ここまでは大丈夫だよな神よ)
(完璧だよブリーフ君)
神様がテレパシーを使ってブリーフと心の中で話し合っている。
この状況では、ブルマを止めるにはブリーフが良い人になったと思わせるしか道はない。
それならば、先ほどと同じ状況を再現すればブルマもブリーフが良い人のままだと
勘違いすると神様は思ったのだ。


149 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:08 ID:dFs/U4I2
そして、その作戦は見事に成功した。
普段のブルマなら、見破られていたかも知れないが、今のブルマは感情的過ぎた。
冷静な判断力はほとんど無かった。
「お父さん、元に戻ったかと思ったけど、良い人のままだったのね」
「はははっわしは元か……良い人に戻ったよブルマ」
ブルマがブリーフに泣きながら抱きついた。
ようやく天界の騒ぎも収まった。
(どんなものかね、地球の神よわしに掛かれば簡単なものよ)
(流石だなブリーフ君。それでこそ地球の王だ)
「わかった。もう刀なんて使わない。こんなもの使っちゃ駄目だよねお父さん」
「その通りだ、いつも言っているだろ、武器は最新の物を使えと、
刀みたいな前時代的な武器を使っているのは止めなさい。今度父さんが加粒子砲を作ってやろう」
場が再び凍りついた。
ヤムチャがやっちゃったという顔で見ている。実は遠巻きに一部始終見ていたラディッツも同じ顔だ
「お父様…」
一度は消えたはずのブルマの殺気が再び燃え出した。
「神よ、わし何か間違えた?」
ブリーフが神様の方を向いたときには、神様は遥か彼方まで逃げていた。
ヤムチャもラディッツもその場から逃げていた。
取り残されたブリーフも状況を理解して、すぐさま逃げ出した。
天界に一人残されたブルマは、獲物の数を数えはじめた。
「一人…二人…三人…四人。なぜか一人増えてるみたいだけどまあ良いわね」
狩は始まった。


150 名前:ハンター ◆kwnurxPg [sage] 投稿日:04/01/13 22:10 ID:dFs/U4I2

夕焼け空も暗くなり、天の星々が輝き始めたころ、
ヤムチャハウスでは、召使の喋る猫プーアルが夕食の準備をしていた。
時間は六時を回ったところだ。そろそろヤムチャが帰ってくる。
実は、自分の主人がどんな土産話を持って帰ってくるのか楽しみにしていたプーアル。
いつもより豪勢な夕食を作っていると、不意に玄関のドアが開いた。
「お帰りなさいヤムチャ様」
プーアルの元気な声が家中に響き渡るが、ヤムチャからの返答は無い。
首を少し傾げて、玄関まで主人を迎えに行くと、そこには刀傷だらけのヤムチャがいた。
「ヤムチャ様しっかりしてください」
プーアルが駆け寄る。
身体を揺すっても全く返事は無い。プーアルが包帯を取りに行こうとすると、そこに占いババがやってきた。
「ついに見つけたぞヤムチャ、さっきはよくもやってくれたな。この償い身体で払ってもらおうか」
来ていた服を引き千切り素っ裸になった占いババ。貞操の危機を感じたヤムチャが、目をカッと見開いて
占いババにかめはめ波を放った。断末魔を叫びながら、占いババは光の中に消えていった。
「ただいま…プーアル…」
「ヤムチャ様、この傷は一体どうしたんですか」
「ブルマは最強だったよ。流石ブリーフ博士の娘だ」
ヤムチャは微かな笑みを浮かべると、そのまま気を失ってしまった。
プーアルには何がなんだか判らなかったが、尋常ならざる事が天界で起きたことだけは判った。

続く



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