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ヤムチャの願い 最後の戦い



あの魔人ブウを倒した日から十年後・・・
その日、それは行なわれていた
地獄の悪人どもの魂を浄化し、新たな生命体に変える
これを昔は閻魔大王自らが行なっていたのだが、最近それを自動で行なう装置を
占いババが開発した
よって近年は子鬼が一人で見張っているだけとなっている
「はいはい、一列になって並んでください」
・・・と、言っても並ぶ奴などいない
純粋悪魔人ブウやフリーザなんかも抵抗する・・・が、魂のみの姿なので無駄だ
攻撃がすり抜けてしまう
「抵抗は無駄ですよ
 それと魂のみの姿なのであの世から逃げ出すことも不可能です」
子鬼は事務的に言う

抗うこともできずに浄化される悪人たち
魔人ブウ、レッドリボン軍総帥のレッド、キュイ、フリーザ、クウラ
一人ずつ浄化されていく・・・
(・・・次は私の番だ・・・
 嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
 私は消されたくない!!ずっと自分のままでいたい!!)
セルは強くそう思う
セル・・彼はその昔レッドリボン軍の科学者『ゲロ』によって作られた人造人間
セルがここにいるということは人造人間にも魂はできるらしい

子鬼はセルに近づいていく
魂の姿のままでは抗うことができない
セルはタックルをかますが、すり抜けてしまう
「抵抗は無駄ですよー」
くだけた感じで子鬼はいう
この子鬼は浄化される側の気持ちが分からないからこんな態度をとっているのだろう
それがよけいに浄化される側の不安をあおった
まぁ、こういうことされるのは因果応報だろという意見が大きいが

セルは何度もタックルをする
恐怖と混乱でパニックになり、何度も・・何度も・・・・・
そして何十回のタックルが行なわれただろうか?
そのとき突然セルの魂の姿が消えた
「え・・!?」
子鬼は焦って周りを見渡すが、セルらしき魂はどこにもいない
すると突然頭痛がしてくる
眠くなってきたのは気のせいだろうか?
そして意識の奥底で言葉を聞いた気がした
(消えろ・・目障りだ・・・・)
どこかで聞いたような声で・・・・

『憑依』
そう、子鬼は憑依をされていた
悪の科学者によって作られた人造人間『セル』に
「私は・・・この鬼を支配できた!!
 これで元の世界に戻れるぞ!!
 ふはははははははははは!!!」
鬼を乗っ取ったセルは笑いながら瞬間移動する
その昔、自分が殺された星
地球へと・・・



セルは地球に向かった
何故ならば、そこにはドラゴンボールがあるからだ
ナメック星にもドラゴンボールがあると聞いたこともあるが、どこにあるか分からない
それに地球には自分を殺した人間がいる
すなわち・・・孫悟飯
今、自分が望んでいるのは自分を生き返らせること
そしてあの孫悟飯を自分の手で殺すことだ
しかし孫悟飯を殺すためには今のこの体では役不足
まずは自分を生き返らせ、肉体を取り戻してあいつと戦う

「久しぶりだな・・・地球も・・・
 十七年ぶりか・・・」
セルはユンザビットの崖の上に立っていた
いわゆる地球の果て・・
「ふん・・!」
セルは鼻を鳴らすと、一直線にカプセルコーポレーションに飛んでいった
まずはドラゴンレーダーを手に入れなければなるまい
話はそれからだ

カプセルコーポレーション
ここでベジータの家族は毎日を過ごしている
数年前に『ブラ』という娘も誕生した
戦闘力は普通の人間程度
この子のほうはトランクスのようにサイヤ人の血は濃くなかったようだ
ちなみにヤムチャもここで過ごしている
ヤムチャは住む場所がここしかない
ブルマのお情けでここに住まわせてもらっている

「・・・!?」
ベジータは大きな気に気づく
悟空やベジータなどの強い男たちの気を混ぜたような気に
「どうしたの・・?ベジータ・・」
一緒に大きな庭を散歩していたブルマが問う
どうやらこの夫婦は暇なときには一緒に散歩するらしい
ベジータは毎日をトレーニングだけに過ごしているわけではないらしい
「逃げろブルマ
 たぶんこの気は・・・セル」
「え・・?セルって一度悟飯くんが・・・」
「いいから逃げろ!!」
ブルマはベジータに促されてその場を去る

「くっくっく・・・ずいぶんお優しくなったな、ベジータ」
その声に気づいて上を見るベジータ
そこには死んだときに出てきた鬼に似ているような男
いや・・そのまんま鬼かもしれない
ぜんぜんセルとは似ても似つかない
しかし気の質を探ってみるとやはりセルだ
「大きなお世話だ
 それよりてめぇどうやって地獄から出てきやがった・・?」
「この鬼に・・そう、俗に言う『憑依』したのだ
 だが、精神と体が一致してないから満足にこの体を動かせないのだよ・・・」
セルは不敵に笑う・・

精神と体の一致
それは以前ナメック星でカカロットから聞いたことがある
そう、たしかギニューのときだ
「・・・だからどうした」
「ふふ・・・」

タッ

ベジータの問いかけに答えもせず着地するセル
そしてベジータに近づく
ベジータはそれを警戒してかファイティングポーズをとる
「そんなにびびるなよベジータ・・・
 お前の気のほうが大きいんだぞ・・?」

「・・・俺と戦うつもりか・・・?」
「いや・・・」
セルは問いかけに答える
すると・・

シャッ

高速移動でベジータに近づき、腕をつかむ
「お前の体を・・貰い受ける!!」
「な・・!?」
ベジータは抗うが、セルの手はベジータの腕を離さない
超サイヤ人になれば簡単にはがせたのだが、パニックになったベジータはそれを考え付けなかった

ベジータは頭が重くなり、だんだん眠くなっていった・・・
そして意識は闇の底へと消えた・・・
「ふふ・・・これがベジータの体か・・・」
セルはベジータの体を乗っ取った
あの世の子鬼の時はタックルをするうちの偶然だったのだが、今回は違った
「今度は少し体が軽くなったぞ」
子鬼のときより体を動かしやすい
それは精神と体の関係だろう
ベジータは普通の人間より悪の気が大きい
彼は穏やかになったものの、悪の気を完全になくすことはできなかったようだ



セルは考えた
今度は孫悟空や孫悟飯の肉体を乗っ取ろうか
しかし、よく考えてみると彼らには悪の気がまったくと言っていいほどない
戦うどころか体をうまく動かすこともままならないだろう
ならピッコロか?
いや、ピッコロも悪の気はあるとはいえベジータよりは悪の気は少ない
それに強さの関係でもパワーダウンは必至だろう
ならばこのままでドラゴンボールを探そう
ベジータの力も充分発揮することはできないが、他の奴らよりを乗っ取るよりマシなはずだ

ベジータの体を乗っ取ったセルは家の中に入る
玄関に入るとベジータによって避難させられたブルマがいた
「ブルマ・・・ドラゴンレーダーはどこだ?」
「確か・・・二階のあたしの部屋にあったと思ったけど・・・
 それよりセルがいたんでしょ・・・?倒したの・・・?」
ブルマがそういうとセルは不敵に笑う
そして・・・

ズンッ!!

セルはブルマの胴を貫いた
「ベジー・・・タ・・・・?」
「ふふ・・・
 ベジータはな、私が乗っ取った・・・」
セルがそれを言い終わる前にブルマの命の灯火は消え去った

セルはブルマの部屋でたしかにドラゴンレーダーを発見できた
「一番近いところにあるボールは南西に30公里か・・・」
そう言うとセルは壁を破壊し、外へ飛んでいった
しかしセルは気づかなかった
一部始終を見ていた者がいた事を
ヤムチャの存在を・・・

「・・大変だ!!セルが復活した!!」
この事柄をヤムチャはみんなに伝える
居場所が分かっている孫家のみんなや、クリリン、サタン達、天界のみんな
そして・・・偶然家に居合わせなかったトランクスに・・・
詳しい話は省いてみんなを天界に集める
「セルが復活したって・・・どういうことですか?ヤムチャさん」
セルを倒した悟飯が問う
一番この事が信じられないといった様子だ

「セルが・・・あの世からやってきたセルがベジータの肉体を乗っ取ったんだ」
「パパの肉体を!?」
今度はトランクスが驚愕する
ヤムチャは一瞬すべてを話していいものかと悩んだ
すべてを話したら・・・
母の死を知ったらトランクスがショックを受けるだろう
しかし隠したところでいつかは知れること
ヤムチャは全てを話すことにした・・



ヤムチャは話した
ベジータが肉体を乗っ取られた事、自分はただ陰から見ていることしかできなかったこと
セルがドラゴンボールを狙っていること
そして・・・ブルマの死を・・・・
トランクスは呆然としている
父が肉体をのっとられ、母が殺されたのだ。
その悲しみは計り知れない

「・・・・・と、言うわけだ」
ヤムチャの話が終わる。しばし沈黙のときが流れる
そして最初にその沈黙を破ったのは孫悟飯
「・・・悲しんでいても何も始まらない
 今、やらなくちゃいけないのはセルを倒すことなんだ」
悟飯は沈痛といった面持ちで言った
そして言葉を続ける
「しかしセルもブルマさんを殺した以上、自分が狙われるのは分かっているはず
 僕たちに気づかれないように気を消してドラゴンボールを探し始めるはずだ
 そこで僕たちもドラゴンボールを集めるんだ
 するといつかはセルと出会うはずだ」
こういうときに学者である悟飯は頼もしい

「でも・・・」
口を開いたのはデンデだ
「でも・・・ドラゴンレーダーがないのにどうやって集めるんですか・・・?」
デンデは質問する
そこで質問に答えたのは悟空だ
「それなら、オラがガキのころにブルマからもらったやつがある
 悟飯に言われて持ってきた」
悟空はそう言うとポケットから古いドラゴンレーダーを取り出す
見る限り故障はしてなさそうだ