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餓狼伝


24 名前:ヤムヤムオレンジ [sage] 投稿日:03/04/21 22:53 ID:d8PnP9sW
『餓狼伝』〜プロローグ1〜

我が名はヤムチャ。

砂漠の隠れ家で、今まさに死に臨まんとする一人の老いぼれだ。
今となっては、かくも老いさらばえた私だが、かつて盗賊として
悪名を轟かせたこともあった。
あの頃は、生気がみなぎり、力強く、そして何より自信に溢れて
いた。自分が世界の中心だと信じてやまなかった。
「フフッ」
昔のことを思い出すと、どうしても自嘲めいた笑いが込み上げて
くる。嫌な癖だ。しかし、それも仕方のないこと。

そんな私も、ある日初めて敗北の味というものを知った。
それからだった、私の人生がガラリと変わることになったのは。


625 名前:ヤムヤムオレンジ [sage] 投稿日:03/04/21 22:55 ID:d8PnP9sW
『餓狼伝』〜プロローグ2〜
             とも
かつての好敵手が、いつしか戦友と呼べる存在に変わった頃、私
は盗賊家業から足を洗い、武道家として武道の道に生き、ただ武
道のためのみに死のうと堅く心に誓った。

毎日が、自らの限界との戦いだった。
しかし、それが辛いと思ったことは一度もない。
心を見つめ、技を磨き、肉体を極限まで高める。
盗賊をしていた時には感じたことのない、新鮮な喜びがそこには
あった。

あの敗北以来、私の人生には穏やかな光が溢れるようになった。
自らの生きるべき道を見つけ、愛する者もできた。
毎日が充実していた。人生の喜びを噛み締めていた。
我が人生の転機に感謝こそすれ、呪う理由など全くなかった。


626 名前:ヤムヤムオレンジ [sage] 投稿日:03/04/21 22:56 ID:d8PnP9sW
『餓狼伝』〜プロローグ3〜

だが、それも今はもう過去の話。
もはや誰も私の名など覚えておるまい。
かつて私を包んでいた光はどこぞへ消え失せ、今は死神どもの忌
々しい黒衣だけが、私を包み込んでいる。
仲間たちも、私が今こうして死を迎えようとしていることなど、
知る由もないだろう。

ただ一人砂漠の穴の奥底で、死出の旅路に赴かんとする私の胸の
内を、今更ながらに去来するマグマのように熱くドス黒い想い。
あぁ、私に残された時が許してくれるなら、どうか、どうかこの
想いを語らせてくれ。

脆弱なる人の身で、運命に抗った一人の男の死に様を・・