ヤムチャ最後の戦い
ヤムチャ最後の戦い〜勝つのはオレだ!生き残りをかけた最終決戦〜
―――――戦ってきた……
……戦い抜いてきた……
……だが、その戦いも、恐らくは今日で終わる……
「フリーザ……!」
オレの目の前には、DB最強の敵――フリーザ――が、余裕の表情で立っている。
この場に残った戦士はオレだけだ。たったの一人で、フリーザを相手にしなければならない。
一対一、勝つか負けるか、生きるか死ぬかの、やり直しの効かない一本勝負。
フリーザの部下は……数百人以上もいた惑星戦士たちは、オレの仲間たちが引き受けてくれた。
ドドリアとはkが、ザーボンとはサイヤンキラーがそれぞれ戦っている。
チャオズ様はキュイを受け持ってくれた。残った百人を下らない惑星戦士たちも、病的を筆頭としたみんなが食い止めてくれている。
……オレはただ、この戦いにすべてを集中させればいい。
「さて、もう死ぬ覚悟は出来ましたか?」
フリーザが――悪の帝王が、冷たく言い放つ。
その目に、慈悲の光は浮かんではいない。ただ冷酷な光が宿っているのみである。
ぞっとするような冷たさと、心臓を鷲掴みにするような恐怖を持ち合った瞳に見つめられ、オレはぞっとする。
……だが今更、そんなことを恐れるわけにはいかない。覚悟なら、とっくの昔に出来ている。
――オレは静かに、フリーザに向かって跳躍した――
「……ッ!」
右の拳を、牽制の意味を込めて軽く打ち出す。
軽くとはいえ超速で打ち出されたその拳はしかし、フリーザにかすりもしなかった。
次いで、蹴りを放つ。美しい弧を描いて、つま先の更に先端がフリーザの身体をえぐる様に突き刺さる……
……はずの足は、ただ虚しく空間を切り裂いただけだった。
だがここまでは予想通り。もとより、フリーザを相手にこの程度の攻撃が通用するとは思っていない。
反転し、身体を戻す。瞬時にして構えを戻すと、そのままロケットのようにフリーザ目掛けて突撃する。
……ように見せかけて、オレは空中を跳んだ。オレの残像は狙い通りフリーザに突き進んでいる。
空中で身体のバランスを戻し、手のひらに気を集中させる。
集中された気は形を成し、フリーザに突き刺さる光となって現れる。そんなイメージを思い浮かべる。
拳を突き出す。ただし拳自体は開いたまま、手のひらだけはフリーザに向けて……
……そして、叫ぶ!
「かめはめ波ーーーーーー!!」
突き出された拳のその先端、フリーザに向けられた手のひらから、光が溢れる。
それはイメージどおりの形を作り、フリーザ目掛けて直進した。
フリーザはそれを避けようともしない。あっけないほど簡単に、エネルギーの塊がフリーザを飲み込んだ。
……亀仙流奥義『かめはめ波』
気を集め、エネルギーの塊にして打ち出すという、放出系の基本とも言える技。
そんな単純な技ではあるが、それでも奥義とまで言われている技だ。その威力は並みのものではない。
オレ自身、完全に極めたとは言えない技だが……それでも、今の俺が使える技の中では最高の威力を持っている。
最初から全力で最高の技を放ったのは、そんな技でもなければフリーザには効果がないと思ったからだ。
考えたくも無いが、もしもこれがまったく効かなかったなら……もう、オレに打つ手はない。
かめはめ波の衝撃で起こった爆発が、余韻を残したまま消える。
もうもうと立ち込める煙の中に、フリーザの姿は見えない。気も……集中力を欠いているからか、上手くは捉えられないが、感じなかった。
「勝った……のか?」
あまりにもあっけない展開に、逆に不安になる。
確かにかめはめ波は今の自分にとっての最高の技ではある。
だが、最高の技とはいえ、実際のところフリーザに対して有効かと聞かれれば自信を持ってハイとは言えなかった。
ただ少し威力が高いだけの基本的な放出系の技である。その威力も、フリーザを倒せるほどとは思えない。
だからこそ、例え直撃したとしてもよくて軽症、悪ければ無傷だと思って、最初から腹をくくっていた。
少しでも傷を付けられれば儲け物だと思っていた。
ゆっくりと、煙が晴れていく。薄くなってきてはいるものの、やはりフリーザの姿は確認できない。
あの一撃で完全に消滅させることが出来たのだろうかと、少し楽観的にまでなってしまう。
……そして、煙が完全に晴れる。その中に、フリーザの姿を確認することは出来なかった。
「終わった……」
やっとのことで勝利の実感が湧く。本当に、オレがフリーザを倒したんだと言う実感が湧いてくる。
これでもう、何も恐れることは無い。このスレも平和になることだろう。
だが、どうやら仲間たちの戦いはまだ終わってないらしい。助けに行かなければならない。
とは言っても、フリーザのいない惑星戦士軍団など、今のオレにとっては脅威にすら思えなかった。
ふわりと、飛び上がる。そしてそのまま、仲間たちの下へ駆けつけようとして……
「油断したね!」
……気付いたときには、オレは大きな岩に叩きつけられていた。
背骨が折れたのを感じる。肋骨がバラバラになっていく感覚もある。
叩きつけられた衝撃で、左足と左腕がぐにゃりと折れる。
……たったの一撃で、オレはこんなにも満身創痍になってしまった。
「な、何だと……!?」
頭だけを動かして、空中に静止している敵をじっと睨みつける。
そこには、軽症どころか、まったくの無傷で――フリーザが、笑っていた。
……勝てない。
遠くで、サイヤンキラーが瀕死になっているのがわかる。kももはや虫の息だ。
チャオズ様はキュイを倒したものの、その後に続いた連戦でもはやボロボロである。
惑星戦士を相手にしていた病的やみんなも、それぞれ大なり小なり傷を負っているのを感じる。
……もう、ヤムスレは駄目なのか?
……オレたちの長い戦いは……オレたちの想いの全てが、水泡に帰すと言うのか?
そんなことには耐えられない。そんなことにさせるわけにはいかない。
……それでも、身体は動かない。
圧倒的な実力差を見せ付けられて、精神の方も悲鳴を上げかかっている。
もう、限界だ。
「諦めるな! まだ全てが終わったわけではない!」
……だが、覚悟したオレの耳に、確かに鋭い叱咤の声が響くのを感じた。
「オレたちも力を貸そう! さあ、立ち上がるんだ!」
聞こえてくる声は誰の物だろう……? その昔、まだヤムスレが出来て間もない頃に聞いたような声……
その声を聞いていると、身体に力が溢れてくる。強い想いが、全身を満たしていくのを感じることが出来る。
……まだ、オレは立ち上がれる。そんな気になる。
オレは、力を振り絞り、なんとか立ち上がった。
ボロボロの身体はそのまま、気力だけが満たされたような感覚。
そんな中、確かに声の主の姿を見た気がした。
……あれはいつだったろう? 1000人のヤムチャ?
ともすれば、オレを助けてくれたのは……
「最強への、道……」
オレは、静かに呟く。
……そして、先ほどと同じように、構えを取った。
「かめはめ波……オレの、最高の攻撃……!」
さっきはまったくと言っていいほど効かなかった、オレの必殺技……
「行くぞ! フリーザアァァァァーーーーー!!」
そしてオレは、最後の攻撃を仕掛けた。
「ヤムチャ! 後はお前だけが頼りだ! やっちまえーーー!」
聞こえてくる声に振り向く、と、そこには病的の姿があった。
「バキスレのみんなが助けてくれたんだ! あのパオも来てくれたぞ!」
「さあ、バキスレの面々も力を貸そう! ヤムチャ、フリーザを倒せ!」
病的に続いて、バレが叫ぶ。
……そうだ、ヤムスレは孤独な存在じゃない。
いつもそばには、バキスレと言う兄弟のような存在がいてくれたじゃないか。
「……今こそ、オレの力を、この拳に託す……」
拳が、ゆっくりと輝きだす。その熱い力は、先ほどのかめはめ波とは比べ物にならないほどのものだった。
さすがに焦ったのだろう、フリーザが向かってくる。だがそれを、間一髪の所で食い止めた影があった。
「ヤムチャ! 早くやっちまいな!」
その影が……パオが、フリーザを食い止める。
「……オレの力と、みんなの想いのすべてを込めて!」
拳の輝きが増す。それは、悟空のかめはめ波と比べても差が無いほどに……
むしろ、こちらの方が強くも思えるほどに、燦々と輝いていた。
「流派亀仙流、最終奥義! か〜め〜は〜め〜……波ァーーーーーーー!!!」
放たれた光は、フリーザを飲み込むと、今度こそ完全に消滅させた。
その後……
なんとか生き延びたヤムスレの戦士たちは、それぞれの道を歩み始めた。
病的はまだ引退すべきときではないと宣言し、まとめサイトを続けることを決意する。
サイヤンキラーは荒らしにも負けず、作品を完結させた。
kは三年間を書き終えた後もヤムスレに残り、気持ちも新たに新連載を始める。
チャオズ様はヤムロットを続け、今ではヤムロット伝説10の連載をしている。
バキスレとはお互いに友好関係を築き上げ、真の友人と、兄弟とも言えるほどの良関係を作り上げた。
職人も、入れ替わりは激しいものの新たに増え、住民もなるべくよい雰囲気を作ろうと努めている。
西暦2010年4月……
今では、ヤムスレとバキスレと言えば世界最大手のSSサイトと呼ばれるほどになっている……
〜FIN〜