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Z戦隊ドラゴンレンジャー


  【設定】
・ナメック星編
・Z戦士はピッコロ以外生きている

  【あらすじ】
地球侵略に来たサイヤ人たちをやっとのことで追い返したZ戦士たち。
だが彼らの払った代償もまた大きかった。神様兼元大魔王のピッコロが死んでしまったのだ。
ピッコロを生き返らせるため、ドラゴンボールのあるナメック星へとZ戦士たちは旅立つ。

しかし、ナメック星にもまた魔の手が忍び寄っていた。
宇宙の帝王、ドラゴンボール最凶の戦士フリーザ様が不老不死を手にすべくドラゴンボールを集めていたのだ。
なんとか悪の手をかわし、ドラゴンボールを集めつつも敵幹部を屠っていくZ戦士たち。
そんな使えない手下に業を煮やしたフリーザ様は、とうとうギニュー特戦隊を呼び出した。

どうする! Z戦士!?



第一話「最強の敵」

その時、ここ最長老の家の前でヤムチャ以下Z戦士たちとべジータが対峙していた。
Z戦士たちの平均戦闘力はせいぜい15000。その中で一番強い悟飯でさえ18000である。
対してべジータの戦闘力は30000。絶望的である。
だがその時! 宇宙のどこかからこのナメック星へと向かってくる大きな気をクリリンが感じ取った!
「悟空だ! 悟空が来てくれたー!」
「でも、気がひとつじゃないような……」
悟飯のその言葉に。チッと舌打ちをするクリリン。
「もしかしたら悟空が仲間を連れてきたのかもしれないだろうが、ヤジロベ―とか」
イラつきながら言う。どうやら年下の悟飯が自分に逆らったことが気に入らないらしい。
「1……2……3……4……5……ま、間違いない! ギニュー特戦隊だ!」
「知っているのか雷……べジータ!?」
突然べジータが言った言葉に、天津飯が敏感に反応した。
「俺以上の力を持っている、そんな奴らが五人集まったのがギニュー特戦隊だ!」
「確かに、邪悪な大パワーが五つ……」
ピッコロとそっくりなナリをしたナメック星人――ネイル――が確認するように言う。
「お、おい! どうすんだよ!?」
それまで会話に参加していなかったヤムチャが情けない声を上げた。
ちなみにヤムチャの戦闘力は8000。一人だけ10000に届いていない。
「くそったれー! おい、俺を不老不死にしろ! 貴様らには手を出さん!」
「ちっ、残念だがそれしか無いようだな!」
叫ぶベジータにクリリンが言った。二人して飛び去っていく。
「私は最長老様を守らねばならん。すまんな、地球人」
寂しそうに言うネイルに、ヤムチャが親指を立て、ニカッと笑顔を見せながら言い返した。
「ああ、任せろ! こっちは俺たちがなんとかする!」
そして、残ったZ戦士たちも二人を追って飛び立っていった。

その頃、フリーザ様の宇宙船のすぐ近くに五つの個人用小型宇宙ポッドが到着した。
そこから、ゆっくりと一人ずつ現れる戦士たち。
彼らは、全員が無事に到着出来たことを確認すると、フリーザ様の宇宙船へと飛び立った。

フリーザ様は、宇宙船の上で一人佇んでいた。
「まさか、ザーボンさんやドドリアさんまで倒されるとは思っていませんでしたよ……」
言いながら、右手に握っていた石を握りつぶす。
「許さん……許さんぞ虫けらども……」
と、後ろに降り立つ五つの気配を感じ、フリーザ様はゆっくりと振り向いた。
「よく来てくださいましたね、みなさん」

「真紅の食べごろ! アプールレッド!」
「まだ酸っぱいぜ! アプールブルー!」
「カレー食べるぜ! アプールイエロー!」
「語呂が悪いぜ! アプールパープル!」
「紅一点のでも男! アプールピンク!」

「五人揃って! 超戦隊アプールレンジャー!」

どぉぉぉおん! ……などと、アプールレンジャーの後方で何かが無駄に爆発した。
( ゚д゚)ポカーン とするフリーザ様。

「お待たせしました、フリーザ様」
アプールレンジャーのリーダー格だろう、レッドが一歩前に進み出る。
「これが、最新型のスカウターになっております」
言いながら、隣にいたブルーに目配せする。
それに気付いたブルーは、どこかから大きなキャッシュケースらしき物を取り出し、レッドに手渡した。
「どうぞ、お渡ししておきます」
言って、フリーザ様の横にスカウターの入ったケースを置く。
一歩下がり、アプールレンジャーの列に入ってから、レッドは聞いた。
「それでフリーザ様、今回の我々の任務は何なのでしょうか?」

「それでフリーザ様、今回の我々の任務は何なのでしょうか?」
その言葉を聞き、ハッと我に返るフリーザ様。
「あ、ああ……すいませんね。ところでわたしが呼んだのはギニューさんたちのはずですが?」
「ナメック星とは気候の穏やかなところですね。そうは思いませんかフリーザ様」
突然、レッドが話の方向性を変えた。
「え、ええ、穏やかですね。ところでわたしが呼んだのはギニューさんたちのはずですが?」
「そう言えばフリーザ様、ザーボン様はどうなされたのですか?」
次に横から口を出したのはイエローだった。
「ザ、ザーボンさんなら行方不明です。ところでわたしが呼んだのはギニューさんたちのはずですが?」
「あ、あんなところに蛙がいますよフリーザ様」
「……」
無言で。
フリーザ様は、片手を上げた。その顔にはいくつかの青筋が立っている。

それを見てさすがに怖くなったのだろう。レッドが一歩下がり、言った。
「ギ、ギニュー特戦隊の皆さんは、アニメのDVDをあと50巻くらい見てから来るそうです」
「アニメの……それはいつごろになりますか?」
「えぇと……あと10日以上はかかるんじゃないでしょうか」
ピンクが言う。フリーザ様はそれを聞き、俯いた。

「ど……」
「ど? ドドリア様がどうかなさったんですか? まさか肥満症とか」
「レッド、ドドリア様が肥満体型なのは昔からだろ」
「ああ、それもそうだな」
ハッハッハッと、アプールレンジャーは朗らかに笑いあった。
「ど……」
「うーん、どうも違うみたいだな。わかるか、パープル?」
「俺? そうだな……土管を潜ったら地面の下でしたってのは無理がありすぎないか、とか」
「ふっ……フリーザ様が赤い髭親父のことなど相手にするはずがなかろう」
「まだまだ青いなパープル、もっと赤みを足せ。今のままじゃ青リンゴだぜ」
「おいおい、それじゃあこのブルーの意味がなくなるじゃないか」
またもハッハッハッと笑いあうアプールレンジャー。

「どういうことだあぁぁぁぁぁ!?」
突然フリーザ様が叫んだ。その声量にビクッとするアプールレンジャー。

「ああんコラ! てめぇらこの俺様を舐めてんのか!?
 ギニュー特戦隊といいベジータの野郎といい変な連中といい、絶対舐めてんだろ!?
 死なす、死ね死ね死ね死ね! 俺は宇宙の帝王だぞコラ―!」
パープルの首を絞めながら叫ぶフリーザ様。
なんとかアプールレンジャーの全員でフリーザ様を諌めようとするも、やっぱり駄目だった。
「フリーザ様、ご乱心ッ!」

……数分後。
なんとか落ち着いたフリーザ様の前に、アプールレンジャーが整列していた。
死にかけたパープルなどがまだゴホゴホ言っているが、誰も気にしない。
「……と言うわけで、ドラゴンボールの回収をお願いしますね」
「ハッ! お任せください」

「さぁ、俺たちアプールレンジャーの初出陣だ!」
「決めるぜみんな!」
「おうッ!」

言って、五人揃って飛び立っていく。
後に残されたフリーザ様は胸に一抹の不安を抱いていた。



第二話「迫る巨悪」

「もっとだ! 目いっぱい飛ばせーーーーー!」
ベジータが叫ぶ。Z戦士たちはその後ろを飛んでいた。
すでに2つのドラゴンボールが手元にあるので、あとはベジータの持っている残りのドラゴンボールのある場所まで行くだけだ。
(と言っても、それが難しいんだけどな)
ただひとり、他の戦士たちのスピードに付いていけないヤムチャが胸中で呟いた。

そのころ、アプールレンジャーたちは……

「おいレッド! スカウターもなしにどうやってドラゴンボールや裏切り者のベジータを探すつもりなんだよ!」
「何だとブルー! 最初に勢い込んで飛び出したのはお前じゃないか!」
「二人とも喧嘩してる場合じゃないだろ! とにかく一度戻ってスカウターを……」
「駄目だ! そんなことをしたらフリーザ様に殺される!」

案の状、迷っていた。


「ふぅ……あの連中はいったい何なんでしょうね」
宇宙船の中で、フリーザ様は優雅に紅茶などを飲んでいた。
目の前にあるモニターに目を移すが、そこにはまだ何も写っていない。
ここは通信室。フリーザ様はこの部屋の機械を使ってギニュー特戦隊に連絡を取ろうとしていた。
「お待たせしましたフリーザ様、モニターを起動します」
声が聞こえると同時に、部屋中の機械が小さな唸りを上げる。
すると、さっきまで何も写っていなかったモニターに一人の男が写りこんだ。

「随分待たせてくれましたね、ギニューさ……( ゚ 3゚)- =, , .: 。 ブプーーッツ」
勢いよく紅茶を吹き出すフリーザ様。だがそれもそのはず。
モニターに写ったギニューは、お団子頭のカツラに化粧と言う、いわゆる「女装」をしていたのだ。
「そ……その格好は何ですか、ギニューさん……」
「ああこれですか? これは今流行のコスプレですよ。ちなみにキャラクターはセーラーゲホッゴホッ!」
と、突然咳き込むギニュー。それを察してか、となりから水が差し出される。
「ギニュー隊長、体調は大丈夫ですかい? 隊長に体調、ププー!」
でて来た男――リクーム――がそう言った途端、モニターの向こうで大爆笑が起こった。
だが、フリーザ様の意識はそんなところには向いていなかった。モニターに写ったリクームを凝視し、言う。
「リ、リクームさん……その格好は……」
「いやんフリーザ様、あたしはリク子にょ」
ネコ耳、メイド服、そして語尾のにょ。
三拍子揃った不気味なリクームを見て、フリーザ様は気を失った。

そのころ、Z戦士たちはとうとうすべてのドラゴンボールを集めた。
「出でよシェンロン! そして願いを叶えたまえ!」
クリリンが叫ぶ!
……が、しっかり数十秒待っても何の反応も無かった。
「おい、どういうことだ!?」
ベジータがクリリンに食って掛かる。
「もしかして……シェンロンを呼び出呪文が違うんじゃないか?」
そんな二人を横目にヤムチャが言った。言われて、慌てて飛び出す悟飯。
「僕、最長老様に聞いてきます!」
「いや……俺が行こう。お前たちはドラゴンボールを守りきるんだ、いいな!」
悟飯が言うのを遮って、ベジータが言う。そしてそのまま、超高速で飛び立っていった。

「そうだ! 確かポケットの中にスカウターを入れてたんだ!」
イエローが叫ぶ。その言葉に全員が期待の視線を向ける。
「えぇと……これだ!」
ポケットから取り出されたのは確かにスカウターだった。心持ち神々しい輝きを放っているように見える。
レッドがそれをイエローから分捕り装着した。ピピッ……と操作する。
「むむっ! あっちの方角にある程度大きな気が集まっている。その数は五つ!」
「フッ……どうやらドンピシャだったようだな!」
「早速行こうぜ! みんな!」
言うが早いか、アプールレンジャーはその方角に向かって凄い速度で飛んでいった。

あたり一面、お花畑だった。そこにフリーザ様が佇んでいる。
「これは……なんと美しい風景なのでしょう」
呟き、花を一輪手に取った。そのまま空を見上げる。
空には大きな入道雲がふわりふわりと浮かんでいた。夏の日差しが降り注ぐ中、セミがジーンジーンと鳴いている。
まるで、今が夏だとフリーザ様に強く印象付けるかのように。
「ブリーザザバー」
と、遠くから自分を呼ぶだみ声が聞こえてくる。
「ド、ドドリアさん!?」
目を凝らすと、そこには確かにドドリアが立っていた。
純白のウェディングドレスに身を包んで。
「ぎゃああああああッ!」
「ブリーザザバー、ばだあなだばごぢらにぎでばぐぎゃあああああッ!」
何かを言おうとしたドドリアに、フリーザ様の全力で放ったであろうエネルギー波が炸裂した。
「ひゃぁぁぁぁぁッ!」
背を向け、一目散に駆けていくフリーザ様。それを見届け、ドドリア様はポテッと燃え尽きた。

「うーんうーん、メイドがにょが〜、花嫁が〜……ハッ!」
フリーザ様が、ガバッと跳ね起きた。見れば、そこはさっきまで自分がいた通信室である。
「ふぅ……どうやら私は夢でも見ていたようですね」
「おお、フリーザ様! お気づきになられましたか!」
目を上げると、そこにはやはりコスプレをしたギニューとネコ耳メイド服のリクームがいた。
「グハッ! ま、まさかこの世にここまで恐ろしいものがあるとは……」
血などを吐きながら、フリーザ様が呟く。
だがそこは宇宙の帝王フリーザ様。見なかったことにして忘れることにした。

「それでギニューさん、一体どうしてあのような方々をこちらに送り込んだのですか?」
モニターから目を逸らして、フリーザ様が聞く。
「あの方々とは、アプールレンジャーのことですな」
フリーザ様がこちらを見ないのが残念なのだろう。すこし悲しそうな様子でギニューが聞き返す。
「彼らは、全宇宙から選りすぐられたアプールたちです。とてもお役に立つと思いますよ」
自信満々といった風にギニューが言った。それを聞き、フリーザ様の顔色も少しは回復した。
「ということは、あなたがたの様にそれぞれが特殊能力などを持っていたりするのですね?」
「いえ、五人とも普通のアプールです」
サラリと言い返すギニューに、フリーザ様はしばし言葉を失った。
だがそこは宇宙の帝王。すぐに気を取り直して聞く。
「では、戦闘力が並ではない、と?」
「いえ、ですから五人とも普通のアプールですって」
またもサラリと言ってのけるギニュー。
「で、では、一体何を基準に選ばれたのですか?」
「ハッハッハッ、趣味です。基準は顔だそうです」
しかしギニューはやはり、サラリと言ってのけるのだった。

「そ、それはどなたの趣味ですか?」
「そんなの、我が軍の科学者に決まってるじゃないですか」
我が軍とは、もちろんフリーザ軍のことである。
「何でも戦隊モノが好きだそうです。アプールレンジャーを作ったのも我が軍の科学者ですよ」
「色は仕方ないから着色料を使ったとか言ってたにょ」
横からリクームが口を挟む。ちょうど顔を上げたフリーザ様は、ばっちりリクームを見てしまった。
「にょ、フリーザ様が見ていらっしゃるにょ」
言って、ウインクをしながら投げキッスをするリクーム。もちろん頬は赤らめられている。
宇宙の帝王フリーザ様も、さすがにノックアウト寸前だった。
「ここ、こんな物……こんなものぉぉぉ……」
「大変だ! フリーザ様が! 救護班はいないのか、アパーム!」
ギニューが叫ぶが、そんなこととはお構い無しにフリーザ様の意識は落ちていった。

数分後、ギニューたちとの通信を切ったフリーザ様は宇宙船の上にいた。
「こんな星……あの連中と一緒に破壊してしまいましょうか……」
いやいや、と首を横に振って、フリーザ様は考え直す。
「ですがこの星にはドラゴンボールが、不老不死が……」
地平線の彼方を見つめながら、フリーザ様はグッと拳を握り締めた。
「不老不死になったら……アプールレンジャーもベジータもこの星ごと潰してやる……!」
いつもの余裕がまったく感じられない表情で、フリーザ様は一人決意するのであった。



第三話「戦いの火蓋」

「とうとう見つけたぞ、ドラゴンボール!」

突然の声に、Z戦士たちは驚愕した。反射的に振り向く。
そこには、五人のアプール戦士たちが立っていた。
「そんな! いつの間に!?」
「気を探っていたのに、まったく気が付かなかった!」
天津飯とチャオズが驚きの声を上げる。それに応えるようにアプールレッドが言った。

「フン! どうやってかは知らんが、我らの戦闘力を探ろうとでもしていたのか?」
「こいつは愚かな連中だ! 俺たちの戦闘力を測ることなんて不可能だぜ!」

自信たっぷりといったふうに叫ぶレッドに、パープルが続けた。
Z戦士たちは更に驚いた。前方にいる五人のアプール戦士からは気が感じられないのだ。

「まさか……お前らも気を自由に操れるのか?」
「馬鹿め! 俺たちにそのような力など無いわ!」
クリリンの問いに、胸を張って答えるレッド。心なしか威張っているようにも見えた。
「な、なら何故!」
「聞きたいか! ならば教えてやる!」
叫ぶイエロー。Z戦士たちはゴクリと唾を飲み込んだ。

「我らが戦闘力はみな5以下! 何をどうしても散開的に探っていては拾えるわけが無いのだ!」

「フッ……そんな自慢にも何にもなりはしないことを大声で叫ぶとは、流石はイエロー……」
「そこに痺れる憧れる」
ハッハッハッと笑いあうアプール戦士。

「……なんだ、それじゃあただの雑魚なんじゃないか」
「驚いて損したな。かめはめ波ー」
ヤムチャが放ったかめはめ波は、あっさりとアプール戦士たちに突き刺さった。
そして起こる爆発。それにより生じた砂埃とかに紛れて、アプール戦士たちの姿は消えた。
「これで終わったろ」

「!?」
と、悟飯が大きな気を感じる。それは先ほどかめはめ波が炸裂した辺りから感じられた。
他のZ戦士たちもそれに気付いたのだろう。視線をそちらに移している。
もう完全に倒したと思い込んでいるヤムチャだけはあさっての方角を向いていたが。

かめはめ波が炸裂し、もうもうと立ち上がる炎と煙……
その中から、五つの影が姿を現した。そして、叫ぶ――

「真紅の食べごろ! アプールレッド!」
「まだ酸っぱいぜ! アプールブルー!」
「カレー食べるぜ! アプールイエロー!」
「語呂が悪いぜ! アプールパープル!」
「ちょっと焦げたぜ! アプールピンク!」

「五人揃って! 超戦隊アプールレンジャー!」

「あ、ああ……」
悟飯が、クリリンが、天津飯が、チャオズが、それぞれ後ずさる。
――アプールレンジャーの、その身体から発せられる気に押されて――
「さ、さっきまでとは段違いの気だ……それに姿も違う……!?」

アプールレンジャーの姿は、先ほどと変わっていた。
いつの間に着込んだのか、全身にぴったりフィットしたスーツを着ている。
もちろん、それぞれの色に対応した物だ。

「ふっ……どうやら、俺たちの力を過小評価していたようだな……」
「確かに俺たちの戦闘力は5以下、隊長のレッドでさえたったの4だ……」
「だが、俺たちがこのスーツに身を包んだとき……」
「俺たちの力は、通常時のなんと10000倍にも跳ね上がるのだ……」

「それこそが、俺たちアプールレンジャーの強みよ!」

ブルーが、イエローが、パープルが、ピンクが、そして最後にレッドが。
まるで話す順番をあらかじめ決めていたかのようなチームワークですらすらと話した。

「ゲゲェー! い、いちまんばいだとォォォ!?」
「反則だ! 勝てるわけねぇじゃねぇか!」
驚愕する天津飯。既に弱気になっているヤムチャ。
Z戦士たちはもうこの時点で逃げ腰になっていた。ただ一人、悟飯を除いて。
「相手がどんなに強くたって、所詮はアプールじゃないか! 魔閃光ッ!」
悟飯の手のひらから打ち出された魔閃光は、真っ直ぐにアプールレンジャーの方へと突き進んでいった。

「来るぞみんな! 対ショック防御! 左舷弾幕薄いぞ何やってんの!?」
「ここは俺に任せろ! アプール・ギガエレクトロンッ!」
レッドが叫び、迫り来る魔閃光へと両手を差し出した。そこから巨大な擬似球電が生み出される。
瞬時に、ソレは魔閃光の元へと奔り出した。そのまま魔閃光を飲み込み、Z戦士たちの元へと迫る。
「みんな、避けろー!」
クリリンが叫ぶと同時に、Z戦士たちは各々に散った。直後、擬似球電がZ戦士のいた場所へと着弾する。
「そこで、はじけろッ!」
レッドが叫び、腕をクイっと持ち上げる。その瞬間、巨大な擬似球電は更に膨れ上がり、Z戦士たちを飲み込んだ。

「ぐあああああッ!」
バチバチ……と、火花を散らしながら落下する悟飯。
魔閃光を撃った体勢からまだ戻っていなかったため、一番強く擬似球電の影響を受けたのだ。
満身創痍となった悟飯は、既に戦える状態ではなかった。

「悟飯ッ! ……くっそぉ、あいつら強すぎるぜ……!」
倒れた悟飯に歩み寄り、クリリンはそう呟いた。クリリン自身も腕に傷を負っている。
クリリンに遅れて集まってきたZ戦士たちも、全員どこかしらを負傷していた。

「フッ……さぁ、この華麗なるブルーが止めを刺してやろう!」
言って、手を差し出す。ブルーの差し出された手のひらには巨大な青い光が生み出されていた。
「食らえ……ッ! ブルー・スマッシャー!」
放たれた青い閃光は、動けない悟飯を目掛けて飛来する。
「もう、駄目だーーーー!」


「諦めるな、戦士たちよッ!」


突然、黒いシルエットが悟飯の前に降り立った。
そのまま右手を一文字になぎ払う、と、飛来してきた青い閃光をあっさりと弾き飛ばした。
「な、何だぁッ!?」
ヤムチャが叫ぶ。すると、まるでそれに応えるかのように黒いシルエットがゆっくりと立ち上がった。

「俺は強き者在るところに現れる戦士。人は俺をこう呼ぶ、戦場を駆ける漆黒の牙と……」
淡々と語る黒いシルエット。語るにつれ、段々とその影が消えていった。
すべての影が消え、輪郭を判断できるようになる。そこに立っていたのは、真っ黒なスーツで全身を覆った男。
――額に黄金の紋章を付け、胸に大きな月のマークを持った男――

「サイヤンブラック! 見・斬ッ!」

ビシッとポーズを決め、男――サイヤンブラック――が名乗りを上げた。
「な、何だかわからないが、助けてくれたらしいな」
「勘違いするな……」
天津飯の言葉を否定するサイヤンブルー。その背中には哀愁と言う名の隙間風が吹きすさんでいた。
「俺は貴様らを助けたわけじゃない。貴様らを倒すのはこの俺だから、奴らに邪魔をされたくないだけだ」
「Σ(゜Д゜;) 」

「かっこいい、かっこいいですサイヤンブラック! まさに男の中の男!」
そこから少し離れたところで、悟飯が呟いていた。

「よくわからんが、だからどうした! アプール・ギガエレクトロンッ!」
レッドが両手を掲げて叫ぶ、と、さっきと同じように巨大な擬似球電が発生した。
「まずいッ! いくらなんでもあれは……ッ!」
先ほど悟飯が放った魔閃光をあっさりと飲み込んだ技だ。
その時のことを思い出して、クリリンが警告するように言う。
「サイヤンブラック! いくらなんでもあれは止められない! 逃げるんだ!」
「フン、このサイヤンブラックを舐めるな!」
だが、それを遮るかのようにサイヤンブラックも叫んだ。
そして、大地を蹴る。サイヤンブラックは前方へと跳躍して、レッドと対峙した。

「受けてみやがれ――――ギャリックほ……もといッ! サイヤンギャリック!」
レッドと同じように両手を差し出し、その手のひらにとても巨大なエネルギーの塊を生み出す。
それをそのままレッドへと投げつけた。同時に、レッドの擬似球電もサイヤンブラックへと奔り出す。
直後、二つの超エネルギーが衝突した。それにより発生した衝撃波が辺りを吹き飛ばす。

そして、今度は――――――

――――――サイヤンギャリックが、打ち勝った。

アプールレンジャーの足元に着弾し、炸裂する。
大きな煙が立ち込める中、サイヤンブラックは一人孤独に佇んでいた。


次回、衝撃の展開!?
果たしてサイヤンブラックとは一体誰なのか!?




第四話「出陣、ドラゴンレンジャー!」

「つ、強ぇ……」
「驚いたな……奴は何者だ?」
驚愕するZ戦士たち。遠巻きにサイヤンブラックを見つめている。
と、それまで背を向けていたサイヤンブラックがくるりと振り向いた。
「これを!」
言って、いつの間にか握っていたカプセルをZ戦士たちへと投げつける。
投げられたカプセルは軽く放物線を描いて、Z戦士たちの足元へと落ちた。
するとビックリ。ボン! という音を立てて、カプセルの中から五着のスーツが現れたのだ!
「それを着るんだ!」

突然の出来事に唖然とするZ戦士たち。このスーツを着てもいいものか悩んでいる。
だが、彼らはわかっていた。サイヤンブラックが敵ではないということを。
「何だかわからないが、ここはあいつを信じるしかないぜ!」
だからこそ、ヤムチャは彼を信じた。信じて、そのスーツを着ることを決意したのだった。
「よし、みんな! それぞれ着替えよう!」
クリリンの提案にみんなが賛同したのだろう。それぞれバッと飛び立っていった。
いつの間に回復したのか、悟飯もちゃっかり自分の分のスーツを手に飛び去っている。

「それでいい……貴様らもなるのだ、一匹の孤独なる狼に……」
一人残されたサイヤンブラックは、孤独な風を受けながら静かに天を見上げた。



↓ここから回想
*************************************

「最長老とやらに聞きたいことがある! いいから会わせやがれ!」

ドラゴンボールの使い方を聞き出すため、ベジータは今最長老の家の前にいた。
だが、そんなベジータを遮るようにネイルが立ちはだかっている。
「駄目だ、貴様と最長老様を会わせるわけにはいかん」
言って、ネイルはベジータを睨み据える。ベジータも負けじと睨みかえすも、心の中では焦りを感じていた。
(くそっ! このままではギニュー特戦隊の連中が……! こうなったら!)
スッ……と、威嚇するようにベジータが片腕を上げる。そのまま、その手のひらに気を集中させ始めた。
「これ以上グダグダ言うつもりなら……このままぶっ放すぜ?」
「……駄目だ、貴様がなんと言おうと最長老様に会わせるわけにはいかん」
ネイルは、その脅迫じみた言葉には屈さなかった。
静かに戦闘態勢を整える。構えて、ベジータの攻撃を待った。

ベジータは非常に困っていた。
ただちょっと脅すだけのはずだったのに、自分としてはまったくもって撃つ気は無いのに、ネイルがやたらと本気になっているからだ。
だが、ここまで言われては退けない。なぜなら自分はサイヤ人の王子だから。
――プライドだけは捨てちゃいけないって、ベジータパパも言ってたことだし――
よし、撃っちまおう。
「フン、いい度胸だ。後悔しやがれ―――――」
「お待ちなさい、ネイル……」

と、突然聞こえた声にベジータは動きを止めた。見ると、ネイルが驚いたかのように放心状態になる。

「し、しかし……わかりました、最長老様」
言って、ネイルが横に退く。よくわからないがベジータを通してくれるらしい。
「フン、それでいいんだよ」
偉そうに言いながら、ベジータは最長老の家に入った。
最長老と対峙する。目の前には、ナメック星人の頂点として君臨する男が――いや無性だが――座っている。
そこから感じられる威光は、元惑星ベジータの王であるベジータ王の非ではなかった。

「……というわけで、ドラゴンボールの使い方を教えてもらいたい」
大まかな事情を説明し、ベジータは言った。言い終わり、最長老の返事を待つ。
「フム……なるほど、そういうことでしたか。
 確かにそれでは願いは叶わないでしょうね。何せアレにはナメック星の言葉で話しかけねばなりませんから」
落ち着いてゆっくりと、最長老が語る。
確かにそれはその通りだった。ナメック星のモノなのだからこの星の言葉で話しかけないといけないというのはわかる。

だがベジータは思った。ちょっと待てと。
どうしてそんな大切な事をさっき俺たちに伝えなかったのか、と。
だからこそ、聞いてみる。
「……何で、そういうことを先に言わなかったんだ?」

その言葉を聞いた途端、あれだけ落ち着いていた最長老の様子が明らかに変わった。
何やら挙動不審な様子で、貧乏ゆすりなどをしつつ顔をあさっての方向に向けたりしている。
傍らに控えているネイルも顔にだらだらと脂汗――だろう、恐らく――を流していた。

明らかに、怪しい。

「おい、聞いているのか?」
イライラと、ベジータが聞く。

「そ、そんなことよりベジータさん、あなたに渡したいものがあるのですよ」
と、突然口調を変えて最長老が言う。そして、傍らのネイルに何やら合図を送った。
それを受けて、ネイルが最長老の座っている椅子の後ろから何かを取りだす。
その何かを最長老に手渡すと、最長老は満足げな笑みを浮かべた。
手渡されたソレは、見るからに怪しさ満点なベルトである。
最長老は、その怪しいベルトをまるで宝物でも持つかのように掲げ、ベジータに差し出した。
「どうか、これを受け取って下さい」
「いらん」
無下に断るベジータ。最長老は残念そうにそのベルトをネイルに手渡した。
手渡されたネイルは、超高速でベジータの懐に潜り込む。そのままベジータに反応させる時間を与えず、ベルトをベジータの腰に巻きつけた。
そして、ベルトの真ん中にあるボタンを押す。

するとどうだろう、ベジータの身体が淡く輝き始めたではないか!
「説明しようッ! このベルトを腰に巻き、正義の力でボタンを押すことで
 ベルトを巻いている者は正義の戦士に変身することが出来るのだッ!」
どこからともなく解説も流れてくる。これぞまさにヒーロー!

ベジータは変身しながらも自分の子供時代のことを思い出していた。

「ハハハー、俺は伝説のスーパーサイヤ人仮面だー。ナッパは悪の怪人だぞー」
「へっへっへっ、ベジータ様もこういう遊びが好きだな」
「お、俺はどうなるんすかベジータさん!?」
「お前は戦闘員な」
「そんなー、戦闘員ならこいつらがいるじゃないですかー」
パラパラ……と、手に持った種を地面に蒔くラディッツ。
次の瞬間、地面からは大量のサイバイマンが生まれた。その数4匹。

「イー」
「イー」
「イー」
「イー」

「いや、こいつらだけじゃ面白くないだろ。オラオライーって鳴いてみろよラディッツ」
「ひえー、止めてくださいよー」


(すまんラディッツ! あの時の俺はどうかしていたんだ、許してくれ)

光が、一段と強くなる。
ベジータの持つ正義の心がベルトの力を引き出したのだ!

かくして、変身は無事終了。
光が収まった時には、一人のヒーローがその姿を現していた。

「こ、これは……おいそこのナメック星人! 鏡を持てぃ!」
言い放つヒーロー……いやベジータ! その正義の言葉は何よりも強い!
言われたとおりに鏡を持ってくるネイル。ベジータはその鏡に映った己の姿に酔いしれた。

「そのスーツを着ることによって、あなたの戦闘能力は大幅に向上したはずです」
言われて気付く。確かにベジータの戦闘力は上昇していた。
「これは……これなら、フリーザにも勝てるぜ! 待ってやがれフリーザ!」
そのまま飛び出そうとするベジータ。その背中にネイルが叫んだ。
「待て! 俺も付いていこう!」
言われて、ベジータはゆっくりと振り向いた。己の目に映ったネイルを見る。
――確かに、あのナメック星人は強いだろう。だが俺は、俺は……ッ!――
「悪いが、断る!」
「何故だ!? いくら強くなったとは言え一人では……」

だがベジータは、はっきりと言い放った!

「正義の味方は……本当のヒーローは……いつだって孤独を抱えて生きていくものだッ!」

そのまま、今度こそ振り向くことなく、ベジータは空の彼方へと飛び去っていった。

「俺はもうベジータではない。一匹の孤独な戦士、サイヤンブラックだ!」

――そしてここに、一人の究極戦士が誕生した……!――


「……で、最長老様。結局のところ、ドラゴンボールの使い方を教えなくて良かったのですか?」
後ろに控えていたデンデがしずしずと尋ねて来る。
その言葉を聞いても振り返ることも無く、最長老は言った。
「嫌ですよ、誰がサイヤ人なんかに」
そう、その通りである。誰がサイヤ人なんかに。
――と言うか、あのサイヤ人が変な美的感覚の持ち主でよかった――
「まさかあの姿をかっこいいと思うなんて、見ていたこっちは吹き出しそうだったと言うのに……」
静かに、最長老が呟く。その言葉にデンデはうんうんと頷いた。

一人、恍惚とした表情でベジータを見つめていた男もいたが。

そんな恍惚とした表情でベジータを見つめていた男、というかネイルが、最長老のほうへと振り向く。
「しかし、あの地球人たちには願いを叶えさせてやってもいいでしょう」
あの地球人たち、素直そうな悟飯や、善人であろうクリリン。ヘタレそうなヤムチャを思い出しながら、デンデはまたも頷いた。
「そうですね……彼らならよいでしょう。デンデ、行ってあげなさい」
突然話を振られて驚くデンデ。だが、彼は了解の証として深く頷いた。
「ボクは彼らに命を助けてもらいました。今度はボクが皆さんを助ける番です」
言って、数歩前に出る。振り返り、最長老に深く一礼をしてから、デンデは飛び立っていった。

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↑回想終わり