奴隷船
324 名前:奴隷船 第1話[] 投稿日:04/02/08 15:59 ID:ytLEhgfw
―盗賊なんてヤクザな商売、本当は辞めたいのさ。けど、しょうがないだろ?何もないこの過酷な砂漠で
生きていく為にはこうするしかないのさ―
ゴミ砂漠に旅人を襲っては金品を強奪して生活している19歳の青年がいた。名はヤムチャ。
彼に両親はいない。兄弟も友人も恋人も。天涯孤独の身である。たったひとつ、彼の空虚な心を癒すものを
挙げるとしたら、それは手下のプーアルという猫の姿をした空飛ぶ生物の存在であろうか。
しかし、ヤムチャはプーアルを完全に信頼している訳ではない。そう、人(もしくは生き物)をいとおしく思う
気持ちが芽生えてしまったら、盗賊なんてできなくなってしまうからだ。ヤムチャは生きていく為に己の心を
殺しているのだ。そんなことをしてまで何故、ヤムチャは生きるという行為を続けるのか。彼の肉体、意志、
そしてダイナミックな生命を突き動かすものは一体何なのか?そして、もっとも基本的な問いかけとして、
彼は盗賊をやりたくないのに盗賊を続けるのは何故か?都会で職を求めて暮らせばよいではないか―
そう、彼は「不良」であり「ひきこもり」でもあるのだ。本質的に「不良」は己の持つ負の感情を外に向けて
爆発させるのに対し、「ひきこもり」は逆に己の持つ負の感情を自身の心の内に溜め込み、外との繋がりを遮断する。
このふたつは相反する存在なのだ。しかし、ヤムチャはこの水と油を両方備えていた。
盗賊を辞めたいと思いつつも辞められずそのスリルを味わう。一方で、人との関わり合いを極端に畏れ天涯孤独の
生活を送る。
ヤムチャの精神は崩壊寸前まで達していた。
(つづく)かもしれない