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漆黒の魔狼 YAMUCHA -The Dark Side- 第二部

登場人物 ヤムチャ・・・本編の主人公、ひょんなことから殺し屋、桃白白の弟子(勘違い)となるが、桃白白が仕事で負傷したため        桃白白の兄、鶴仙人の弟子となる。現在、武道家兼殺し屋。 天津飯・・・・ヤムチャと同じく鶴仙人の弟子、ヤムチャのよき理解者でもある。 餃子・・・・・同じく鶴仙人の弟子、元々はどこかの王子様らしい。 鶴仙人・・・・ヤムチャたちの師匠、武術会の双璧と謳われるが、暗殺の元締めもする男。 桃白白・・・・殺し屋、かつてヤムチャはこの男のパシリだった。現在消息不明。 プーアル・・・変身が得意なヤムチャの相棒、桃白白と共に現在消息不明。 孫悟空・・・・亀仙流の門下生。かつて桃白白を倒したことがある。 クリリン・・・同じく亀仙流の門下生、前回大会にも出場している。 亀仙人・・・・鶴仙人と並び、武術の神様と崇められる老人、別名・武天老師。 ブルマ・・・・孫悟空と共にいる少女、実はカプセルコーポレーションという企業の令嬢。 第一部のあらすじ 砂漠の盗賊、ヤムチャはある村を襲ったために殺し屋・桃白白に命を狙われる。 何とか命乞いし、桃白白のパシリとなるかわりに一命をとりとめたヤムチャ。 だが、桃白白の元でひどい虐待を受け、心の中で桃白白をピンクと呼び、 いつか、この生活を抜け出すことを心に誓う。 そんなある日、仕事で桃白白が負傷し、ヤムチャは桃白白の兄・鶴仙人に弟子入りすることになる。 鶴仙人の元で驚くべきスピードで成長するヤムチャであったが、突然、伸び悩んでしまう。 だが、兄弟弟子・天津飯の助言を受け、調子を取り戻すヤムチャ。 そんな折、その天津飯が人殺しを行っていることを知る。 その裏に鶴仙人の暗躍があることを知ったヤムチャは天津飯のかわりに暗殺者となる決意をする。 武術の修行のかたわら、暗殺者としての仕事をこなし時は流れた。 そして今、ヤムチャはパパイヤ島へと降り立った。 第22回天下一武道会に出場するために・・・ 第一話 パパイヤ島到着!めざせ武道天下一!! パパイヤ島は熱気に包まれていた。 天下一武道会の見物人の数はヤムチャたちの想像をはるかに上回っていた。 お祭り騒ぎの中、何とか会場にたどり着いた一行の目の前を赤い道着を着た少年たちが通り過ぎた。 そして、その後ろにいた老人が一行を認めると足を止めた。 「久しぶりじゃの、まだ生きたおったのか、鶴よ?」 「ふん、それはこっちの台詞じゃ、ハゲ。」 事情を知らないヤムチャは相手が誰なのか分からない。 「なぁ、天津飯。あのジィさん、一体?」 だが、天津飯は呆けた顔をして二人を見つめている。 「おい、天津飯、おいって!」 「あぁ、ヤムチャ、どうしたんだ?」 「あのジィさん、一体、誰だよ?」 「知らないのか?武術の神と謳われる武天老師様だ。」 「あれが武天老師様?」 俄かには信じられない事実だった。少なくとも痴話げんかを繰り返すこの二人を見ている限り、 どちらも武術会の頂点に立つ者たちではなく、その辺で走り回っている子供と大差なかった。 「あの二人は昔から仲が悪いらしい。」 そんなことは見れば分かる。そう思いながらも口には出さないことにしたヤムチャであった。 その時、武天老師の後ろから一人の少年が姿を現した。 その少年はまぶしいほどの笑顔を振りまき、武天老師の足元にまとわりついた。 その背からは尻尾が見え隠れしている。 「じっちゃん、なにやってんだ?」 その少年を見て鶴仙人が口を開いた。 「何じゃ、子守りのバイトでも始めたか?」 「ふん、わしの弟子じゃ。今回の天下一武道会に出場させるために連れてきた。」 「はん、そんな子供を出場させてせいぜい怪我をさせんようにするんだな、 まぁ、うちの弟子たちにはかなわんだろうが、予選くらいは突破できるかな?」 「何を言うか、この悟空は前回大会、準優勝じゃぞ、そっちの弟子こそせいぜい怪我をせんようにな。」 「ふん、前回準優勝だか何だか知らんが、運が悪かったな、優勝はうちの弟子たちがもらうぞ、はっはは。」 そういい残すと鶴仙人は登録所へと向かった。天津飯が名残り惜しそうにしながらも、 鶴仙人を追いかけたのでヤムチャもそれに倣うことにした。 こうして歴史の影に隠された二人の英雄、漆黒の魔狼・ヤムチャと金色の超戦士・孫悟空の出会いは 言葉を交わすこともなく果たされたのだった。 第二話 仕組まれた対戦表、汚された天下一武道会 予選は186名で行われたが、ヤムチャたちは危なげもなくそれを突破していった。 しかし、ヤムチャはにどこかで物足りなさを感じていた。 あまりにも他の選手たちのレベルが低かったためだ。 いや、実際には他の選手たちのレベルが低いのではなく、天津飯や餃子との組み手が当たり前だった ヤムチャにとっては一般の参加者では相手にならなかっただけだ。 そして、ついに八名の本選出場者が決定した。 その中にはもちろん鶴仙流の三人の姿があった。 先刻の少年、孫悟空、そして彼と同じ道着を着た禿頭の少年クリリンの姿も。 だが、何と言っても注目を集めているのは前回優勝者・ジャッキー・チュンである。 ふらふらとまるでやる気のなさそうな変則的な動きで相手を翻弄する。 それゆえに対戦相手は自分の実力を出し切れずに次々と敗北を喫していった。 派手さはないが、注意して見れば無駄のない理想的な戦闘スタイルであることが分かる。 だが、自分のスピードに絶対の自信を持つヤムチャは紙一重で攻撃をかわすジャッキー・チュンの実力を軽んじていた。 (こんな老人に負けるとはあの孫悟空とか言う奴も実力は知れてるな。) この過剰な自信が彼を屈辱的な敗北へと導いていくことを彼はまだ知らない。 予選が終わり、決勝進出を決めたヤムチャたちを次に待っているのは対戦組み合わせを決める抽選会である。 他の決勝出場者たちよりも早く予選を終えたヤムチャたちは鶴仙人に呼び出されていた。 この時ヤムチャたちにはある支持が与えられた。天津飯、餃子によるヤムチャの優勝のサポートである。 まず、餃子の超能力により組み合わせを操作し、ヤムチャと天津飯の二人を別のブロックに分ける。 そして、亀仙流の二人には一回戦で潰し合いをしてもらい、体力を消耗させ、 さらに前回優勝者であるジャッキー・チュンとチャオズを戦わせる。 チャオズがもし勝つようなことがあればよし、もし負けるにしても体力を消耗させるために 餃子には消耗戦が命じられていた。 そして、体力を消耗した亀仙流の勝利者とジャッキー・チュンには難なく勝てる言う想定の下、 天津飯には決勝での八百長が命じられていた。 ヤムチャにはこの指示が意図するものが何なのかはっきりと分かっていた。 殺し屋としての自分のギャラを上げるための宣伝だ。 天下一武道会という格好の舞台でヤムチャの実力をアピールできれば これまで以上の値で殺しの依頼を受けることが出来る。 鶴仙人にとってこの天下一武道会に弟子たちを出場させた目的は、 結局そこにしかないことにヤムチャは怒りを覚えたのであった。 だが、ヤムチャはもう一つの理由に気付いていなかった。裏社会にお決まりの賭けである。 三年に一度、世界一の武道家を決めるために開かれるこの大会は裏社会の人間にとっては格好の賭場であった。 そしてこの大会以降、鶴仙人もまた数奇な運命にもてあそばれることになる。 鶴仙人の非情な命令を受けた後、三人は鶴仙人をホテルに残し無言で会場へと向かった。 だが、ヤムチャにはどうしても納得がいかなかった。 (天津飯と真剣に勝負をしたい。) その思いは会場が近づくにつれ強くなっていった。 そして、沈黙を破りヤムチャがとうとう堰を切ったように、二人に自分の思いをぶつけた。 「チャオズ、頼む、俺と天津飯を一回戦で戦わせてくれ。」 この言葉に困惑の表情を浮かべる餃子、そんなことをすれば鶴仙人の怒りを買うことは確実だからだ。 ヤムチャは天津飯に同意を求めようとするが、天津飯は何か考えるように沈黙を守っている。 「天津飯、お前からも頼んでくれよ、なぁ、お前だって八百長なんてしたくないだろ。」 だが、天津飯は何か考え事をしているかのように沈黙を崩さない。 そしてヤムチャは怒りに耐え切れず重大なミスを犯してしまうこととなる。、 「くそっ、なでそんなにあの男の言うこと守ろうとするんだ!あいつはなっ、お前らを・・・。」 自分が何をしゃべっているのかに気付き、あわてて黙り込むヤムチャ。 「あの男、お師匠様のことか?」 餃子が訊ねた。無理もない自分たちのあずかり知らないところで鶴仙人が何かをしている。 それも自分たちに何か関係があるのだ。 知りたくないというほうが無理というものだろう。その時沈黙を破り天津飯が口を開いた。 「ヤムチャ、お前、修行を休んでいる間どこへ行っていた?」 「それはお前らも知っての通り桃・・・」 「ウソをつくなっ、桃白白様はずっと消息を絶っている。」 (これ以上、黙っているわけにはいかないか。) ヤムチャは覚悟を決めた。 第三話 戦士のプライド、第一回戦開始!! 「餃子、ここで待っていろ!俺はヤムチャと話がある。」 怒気をはらんだ口調で天津飯は言った、これほどまでに感情をあらわにした天津飯は見たことがなかった。 そして天津飯は餃子を一人残しヤムチャを岩陰へと誘った。 「ヤムチャ、お前、なぜ人殺しを引き受けた?なぜだ?」 「それは・・・」 覚悟を決めていたとはいえ、このことを天津飯に話すのはやはり苦痛だった。 天津飯のことだすぐにでもホテルに戻り鶴仙人に勝負を挑むことだろう、下手をすればこの男のことだ。 自分で命を絶つかもしれない。鶴仙流の門を叩いて以来、ヤムチャがもっとも親しくしてきたのは天津飯だ。 かけがえのない友、プーアルと離れ離れになった今のヤムチャにとっては天津飯がそれにあたった。 沈黙の時が流れ、いつまでも答えようとしないヤムチャに天津飯が痺れを切らした。 「いいだろう、お望みどおり、お前とは一回戦で戦ってやる。」 そう言い残すと天津飯は場を立ち去った。そして餃子に自分たち二人が一回戦で当たるように指示した。 さすがの餃子もこの時の天津飯の言うことはすんなりと聞き入れた。 その後、会場までの道のりの途中、二人が言葉を交わすことはなかった。 「な、何だ、これは・・・。」 抽選結果を見た時の鶴仙人の驚きようは尋常ではなかった。 第一試合で潰し合いをするはずだった亀仙流の二人は同ブロックながら一回戦で当たることはない、 それどころか餃子の一回戦相手が亀仙流のクリリンとなっている。 だが、そんなことはどうでも良かった。一回戦の第一試合に天津飯対ヤムチャの対戦が組まれている。 しかもその勝者の相手はおそらくジャッキー・チュンというおまけ付きである。 (これでは亀仙流のために組まれたようなものではないか?いや、 まさか、そうか亀の奴、自分の弟子を優勝させるために汚い手を使いおって。) 事態を飲み込めず鶴仙人は錯乱していた。彼の人生は今、転落への一途をたどろうとしていた。 こうして、第22回天下一武道会は波乱含みの幕開けを迎えた。 ヤムチャは結局、天津飯と言葉を交わすことなく一回戦を迎えていた。 だが、試合前にも関わらず天津飯の様子がおかしい。 そわそわしてまるで落ち着きがない。鶴仙人の怒りを買うことを恐れているのだろうか。 だが、時間はそんな天津飯を、そしてヤムチャを待ってはくれなかった。 「第一回戦、天津飯選手対ヤムチャ選手。はじめっ。」 無情にもレフェリーの声が会場にこだました。しかし、どちらも微動だにしない。相手の出方を窺っているのだ。 一緒に修行をしてきただけあって天津飯の手の内は知っているつもりだ。 だが、自分は今日のために新たな技を完成させてきた。おそらく、それは天津飯も同じだろう。 先に動いたのは天津飯だった。様子見のためかそれほど重い攻撃ではない。 とはいえ天津飯のパワーに押され徐々に形勢は悪くなる。さすがに耐え切れずヤムチャは舞空術を使い上空へと逃れた。 いや、実際には逃れたのではない。この武闘場では狭すぎる。 自分の新たな技を試すには天津飯にも舞空術を使ってもらわなければならない。 だが、天津飯はその誘いに簡単には応じなかった。上空に逃れたヤムチャが降りてくるのを武闘場で待っている。 舞空術を使えばスピードで勝るヤムチャが有利になると分かっているからだろう。 そこでヤムチャは天津飯に舞空術を使わせるためにどどん波の連発で牽制を行った。 しかし、全て天津飯に見切られ、武闘場に爆煙を起こしたがために天津飯を見失う結果となってしまった。 だが、気付いたときには遅かった。天津飯はヤムチャの後ろに回りこみヤムチャは武闘場へと叩きつけられていた。 すかさず、天津飯がどどん波を放つ。体勢は悪いがよけられないほどではない。 だが、その時、ヤムチャはあることに気付いた。 (まさか、天津飯の奴これを狙っていたのか?) 第四話 天津飯の狙い、武天老師の叫び ヤムチャは後悔していた。まさか、天津飯がこんなことをするとは思いもよらなかったのだ。 確かに天津飯のどどん波は避けられないものではない。だが、避ければ、後ろにいる者に当たってしまう。 そう自分たちの師匠・鶴仙人に。しかも、おそらく自分自身が壁になり鶴仙人には天津飯のどどん波は 見えていないに違いない。これではいくら武道界の双璧と呼ばれる男でも避けようがない。 確かにヤムチャにとって鶴仙人は憎むべき男である。 だが、とっさのことにヤムチャは過去のことを全て忘れ防御の体制をとっていた。 天津飯のどどん波をまともに受け吹き飛ばされるヤムチャ、すんでのところで舞空術を使い、 場外負けだけは避けることは出来た。だが、左腕が動かない。これではまともな攻撃は出来そうもなかった。 (何とか、戦いの舞台を空へと移さなければ。) しかし、このままでは天津飯を上空へとおびき寄せることも出来なさそうだった。 その時天津飯が舞空術を使った。ヤムチャにとっては願ってもない展開だった。 だが、実際には天津飯は自分の目論見が失敗したことを悟り、舞空術を使わないという 制限を自ら解除したに過ぎない。 「ヤムチャ、なぜあの男をかばった?」 ヤムチャが追いついたところで天津飯が話しかけてきた。 「ふざけるな!俺が避けていたらお師匠様に当たっていたんだぞっ!」 「それがどうした?あの男は祖国の敵と偽り俺たちに人殺しをさせていた。当然の報いというものだ。」 「なぜ、それを?」 俄かには信じられなかった。それでは自分がしてきたことはなんだったというんだ。 ヤムチャは虚脱感に襲われていた。 「お前が時々いなくなるようになってからな。俺なりに考えてみたんだ。なぜ俺たちに情報が入らなくなったのか。 そして、それと引き換えにお前がふらっといなくなるようになった。なぜか? そして気付いたんだ。俺たちは利用されていたに過ぎないのではないかということにな。」 「天津飯・・・。」 「もっと早くお前に確かめるべきだったのだろうが、なかなか言い出せずに今日に至ってしまった。すまない、ヤムチャ。」 天津飯の気持ちはヤムチャには痛いほど良く分かった。二年前、自分も同じ気持ちだったからだ。 「気にするな、俺もそれを知ったときは同じ気持ちだった。いや、逆に知っていながらそれをお前たちに伝えることが 出来なかった俺にも責任はある。すまない、天津飯。だが。今はおしゃべりをしている場合じゃない。」 その頃、地上では 「じっちゃん、あいつら筋斗雲もなしにとんでっぞ。すげぇぞ。オラ、あんな奴らがいるなんてワクワクしてきちまった。」 「うむ、あれは舞空術といってな・・・・」 孫悟空と武天老師の会話が弾んでいた。 そして、武闘場では 「オーッと、天津飯、ヤムチャ選手なかなか降りてきません。と、飛んでいるように思えるのですが・・・。」 アナウンサーが進展しない状況に困っていた。 「そろそろ、決着をつけるか。」 ヤムチャの言葉に天津飯が動いた。先ほどまで動かなかった左腕も万全ではないとはいえ動かないということはない。 (これなら、いける。) 天津飯の攻撃をかわしながらヤムチャは一旦、距離を置いた。そして振り返ると同時に一気に加速をつけ、 天津飯めがけ突っ込んでいくかと思われた。だが、目測を誤ったのか見当はずれの方向へと飛び去る。 しかし、ヤムチャは決して目測を誤ったのではなかった。ここからがこの技の本当の姿だ。 ヤムチャの心の中は新必殺技を試す時が来た喜びで満ち溢れていた。 天津飯は自分を狙うかと思われたヤムチャの攻撃に対しカウンターを仕掛けるべく待ち構えていた。 だが、ヤムチャはどうしたことかあらぬ方向へと向かっている。 これならタイミングさえ合わせることが出来れば、カウンターという危険を冒すことなくダメージを与えることが出来る。 天津飯は自慢の眼力でヤムチャの動きを確実にとらえ、攻撃を仕掛けた。 だが、手ごたえはなかった。 天津飯が攻撃を仕掛けた瞬間、ヤムチャは自分の飛んできた方向へとどどん波を放ち、加速していたのだ。 そして、すかさず、天津飯の後方へと回り攻撃を仕掛ける。 攻撃の直後を狙われた天津飯は防御の体勢もとれずヤムチャの打撃を受ける、しかもその打撃の反動を利用し天津飯から下方へと 移動したかと思うと、再び天津飯の後方へと回り込みどどん波で撹乱しつつ攻撃の手を緩めなかった。 いかに第三の目を用い驚異的なまでの眼力を誇る天津飯でも常に後方からの攻撃を仕掛けられたのでは見切りようがなかった。 そして、ついにヤムチャの一撃により天津飯は武闘場へと叩きつけられた。 しかし、ヤムチャの体力もそこで限界だった。全力での舞空術に加え、連続でのどどん波。 これで平然としているほうが不思議というものだ。 もはや、舞空術を保つ体力もなく地上へと降りるヤムチャ。その目は勝利を確信していた。 だが、ヤムチャが武闘場に降りるのと入れ替わりに天津飯が上空へと飛んだ。 そして何かの構えを取る。 「い、いかん、その技を使ってはならん。」 ヤムチャの耳には武天老師の声が遠くに聞こえていた。 第四話 光に消えたヤムチャ ベスト3決定!? 「い、いかん、その技を使ってはならん。」 武天老師の忠告にも関わらず天津飯の技は既にヤムチャをとらえていた。 勝負は一瞬で決した。ヤムチャが勝利を確信した後の天津飯の思わぬ奇襲、 既に戦闘体制を解いていたヤムチャにそれを避けられようハズもない。 天津飯がはなった光の中にヤムチャは消え去った。そして、後に残ったのは天津飯によって大きな穴の開いた武闘場のみ。 そこにいた誰もが天津飯の技の威力に恐れをなしていた。 「じ、じっちゃん、オラ、たまげたぞ。あれ、何ちゅー技だ?」 「あれはの気孔砲といってな、己の命と引き換えにすさまじい威力の攻撃を行う技じゃ。 おそらくあれを食らって生きておれる人間はおるまい。 じゃがな、あの技はそれだけの威力と引き換えに己の命をも奪ってしまう。 しかし、あんなものを弟子に教えるとは鶴の奴め、一体何を考えておる。 弟子たちに殺し合いなぞさせるとは。」 武天老師の目は鶴仙人に向けられていた。しかも、その目はサングラスに隠され見えないがそばにいた 悟空にはその怒りがひしひしと伝わっていた。 それは普段のエロジジイの亀仙人の姿ではない。武道の神と万人に尊敬される武天老師の真の姿だった。 そして、天津飯もまた、重力の鎖に引かれるかのように上空から転落してきた。 その目はヤムチャをその手にかけた公開と苦渋に満ちあふれ、血走っていた。 その様はまるで翼を失った天使が地上に落ちたかのようだった。 そう、まさに堕天使の誕生した瞬間だった。誰もが天津飯を恐怖の対象として見ていた。 「生きておるじゃと?何と言う生命力の持ち主じゃ。気功法を放ってまだ立っておられるとは」 (やはり、あやつは・・・) 亀仙人は絶句していた。無理もない気孔砲は命を賭けるからこそ恐ろしいほどの威力を持つ技だ。 その技を放ってなお立っていられるなど考えられないことだった。 「え、えーとヤムチャ選手は・・・っと、えーーーっと、見当たりません。まさか、先ほどの攻撃で死んでしまったのでしょうか? 困りました。一応大会ルールでは相手選手を殺してしまうと失格になってしまいます。 このままでは天津飯選手は失格になってしまいます。」 アナウンサーは天津飯の気功法により開いた穴の周りを回りながらヤムチャを探していた。 「なんと!これで勝負あったか・・・惜しいの、出来れば両者とも勝たせてやりたかったものじゃ、 しかし、どちらも無茶な戦い方をしよる。 まるで、次の試合のことを考えていないかのような戦い方じゃな。」 「あの、お言葉ですが武天老師様。あの天津飯って奴はもう失格になってしまいますよ。 それに、あんな連中いない方が我々が優勝できるってものじゃないですか?」 「待てよ、クリリン、オラ、あいつと戦いてーぞ。」 「バ、バカ言うなよ、あんなやつらと戦ったら命がいくつあっても足りねーよ。」 弟子たちが言い争っている間、武天老師は空をみつめていた。 「二人とも、よーく見てみい。太陽じゃ。」 二人がまぶしさに耐え、太陽を見たその瞬間太陽に小さな黒点が浮かび上がった。 そして徐々に黒点が大きさを増したかと思うと人の形を結んだ。ヤムチャだ。天津飯が気孔砲を放った瞬間、 ヤムチャは無意識に舞空術を使い、空へと飛び上がっていたのだ。そして、全ての力を使い果たした天津飯に最後の一撃が決まった。 この瞬間、第一回戦第一試合の勝者が決定した。 「そうか、残像拳か。あいつやるな、すげぞ、あいつら。オラ、どっちとも戦いてえぞ。」 「うむ、ワシもついていくのがやっとじゃった。恐ろしいスピードじゃの、ワシでも勝てるかどうか・・・」 「そ、そんな、武天老師様でも勝てない相手なんて・・・くそー、あいつら二人とも失格になってくれないかな。」 「天津飯・・・」 「ヤムチャ、良かった生きていてくれて・・・」 そういうと天津飯は意識を失い倒れこんだ。 「ありがとうな、いい試合だった。」 ヤムチャは意識のない天津飯に語りかけた。 一回戦第二試合はジャッキー・チュン、第三試合は孫悟空がが制した。そして第四試合は餃子と亀仙流のクリリンの対決となった。 試合序盤は、餃子優位で進んだが亀仙流のクリリンの機転により餃子はまさかの逆転負けを喫してしまった。 (くそー、こんなことなら餃子にパシリをさせればよかった。) 桃白白の元でパシリとしてすごしたヤムチャにとっては暗算は得意分野だった。 つり銭が間違っていようものなら桃白白にどんないじめを受けるか分かったものか分からなかったものだ。 (やっぱり王族って苦労知らずなんだな) しみじみと思うヤムチャではあったが、こんな王子さまでは国の将来も知れていたというのが一般的な考えであろう。 こうして第二回戦第一試合はヤムチャVSジャッキー・チュンに、そして第二試合は孫悟空VSクリリンの同門対決に決定した。 「天津飯、大丈夫か?」 「ヤムチャか、試合はどうなった?俺は・・・負けたのか」 ようやく天津飯は意識を回復した。 「いい試合だった。だが、気孔砲はないだろう。危うく死にかけるところだったぜ。」 「気孔砲・・・そうか、そんなことがあったのか。」 「お前、覚えてないのか?」 「お前と空中戦をしたところまでは覚えてるんだがな、すまない、意識がなかったとは言え俺はお前を殺すところだった・・・」 「気にするな、俺もこうして生きてる。じゃあ、行ってくるそろそろ二回戦が始まるんでな。」 「ヤムチャ、勝てよ。」 「ああ、お前と餃子の分まで戦ってきてやる。優勝するのは俺たちだ。」 だが、ヤムチャの体力は天津飯との一戦で既に限界を超えていた。 (二回戦はあのじいさんか。予選を見た限りでは確かに実力はあるようだったが天津飯と比べれば楽な試合になりそうだ) 二回戦の相手があの武天老師だなどとはヤムチャが知るよしもなかった。 そして、今、ヤムチャの生涯に悔いを残すこととなる第22回天下一武道会の第二回戦のゴングはなろうとしていた。 第五話 武道の神 ヤムチャ敗北 「さぁ、二回戦第一試合は先ほど天津飯選手との好勝負を制したヤムチャ選手対前回大会優勝者・ジャッキー・チュン選手です。」 (くそ、体力が回復していない、これじゃ舞空術は使えないな。 だが、前回大会優勝か何か知らないが、こんなじいさんに負ける気はしないぜ。 決勝のこともある、体力は温存しておくに限るな。見てろよ天津飯、餃子。 まずはこのじいさんを倒して、必ず優勝してやる。勝つのは俺たちだ。) もう、自分は一人で戦っているのではない。第一回戦で敗れた天津版と餃子もまた自分と共に戦っているのだ。 ヤムチャはそう自分に言い聞かせた。 しかし、ヤムチャは一回戦からずっと刺すように自分を見つめる視線があることに気付いていなかった。 そして戦いの火蓋は切って落とされた。 「悪いな、じいさん。後がつかえてるんでな、速攻で決めさせてもらうぜ。食らえ、狼牙風風拳。」 そう言うとヤムチャはジャッキー・チュンを目にも留まらぬスピードで攻め立てた。 だが、やはり疲れのためかいつものようなスピードが出ない。 ジャッキー・チュンはヤムチャの攻撃を飄々とかわしていく。予選のときに見せた動きそのままだ。 そして、ヤムチャの攻撃をかわしながらよろけるようにして裏拳がヤムチャの顔に決まった。 傍目には分からないが、体重の乗った一撃だ。思わずヤムチャは手で顔をおおった。 そして同時に会場からは大きな笑いが巻き起こっていた。 「おいおい、じいさん足元ふらついてるぞ、大丈夫か?」 「良かったな、あんな攻撃が当たるなんて、ははは。」 会場にいる観客にはただよろけたジャッキー・チュンの拳がヤムチャの顔にたまたま当たったように見えていたのだ。 だが、それは決して偶然などではなかった。ヤムチャの攻撃を紙一重でかわしながの狙いすました一撃である。 だが、頭に血の上ったヤムチャは次第にジャッキー・チュンのペースに巻き込まれていることに気付くはずもなかった。 会場からバカにされたような気がし、ヤムチャは次々とジャッキー・チュンに攻撃を加える。 だが、その攻撃も全てジャッキー・チュン、いや、武天老師には見切られていた。 「やっぱり、ジャッキー・チュンのじっちゃんはすげえな。あの攻撃を全く無駄のない動きでよけてる。なぁ、じっちゃん。」 悟空が隣にいる武天老師に語りかけた。 「うん?いや、わしにはただよろけているようにしか見えんがな。」 もちろん、本当の武天老師は闘技場の上で戦っているジャッキー・チュンだ。 ここにいるのは武天老師に化けた妖怪・ウーロンである。まともな返答が帰ってくるはずはない。 「そうだよ、悟空、あのヤムチャって奴、一回戦で相当体力を使ったんだろうな。まだ一発も当ててない。」 「そ、そうなんかな・・・、うーん、オラにはそんな風には見えんけどな。」 現実はもちろん悟空の感じたとおりである。だが、そのことに気付くことが出来るのはこの会場ではおそらく悟空一人だけであろう。 この場に天津飯がいればその眼力を用いヤムチャにアドバイスをしていたのだろうがその天津飯も医務室で横になっている。 師である鶴仙人もまた、ヤムチャと天津飯の戦いの途中でどこかへと姿を消していた。 まさにヤムチャには悪条件が揃っていた。 自分のペースに持ち込むために観客すら味方に引き入れる。武天老師はその名に恥じない希代の武道家であった。 しかも、観客は血なまぐさい戦いに魅入られるのではない。 まるで闘牛士が猛牛をかわすのを見るかのようにスリルに満ち溢れた展開を演出しているのだ。 まさに武道の神である。 そして、今まさに猛牛と化したヤムチャは武天老師の罠に気付くこともなく、武闘場の角にジャッキー・チュンを追い込んでいた。 (さすがにここまで追い込めば逃げようもない。もらった。) ヤムチャの強烈な一撃がジャッキー・チュンの腹に決まるかと思われた瞬間、ジャッキー・チュンがヤムチャの足をなぎ払った。 もちろん、ジャッキー・チュンは追い込まれていたのではない。ヤムチャを罠へと誘い込んでいたのだ。 とっさに舞空術を使おうとしたヤムチャであったが、自分に覆いかぶさるように倒れこんできたジャッキー・チュンのために 反応が遅れ、二人はそのまま、もつれた格好で場外へと転落した。 「えーっ、両者場外です。しかし、一瞬早くヤムチャ選手の体が地面についたため、第二回戦の勝者は ジャッキー・チュン選手に決定しました。」 会場からざわめきが起こった。ムリもない一回戦であれほどの死闘を演じたヤムチャがこんな負け方を喫してしまったのだ。 ヤムチャ自身もまた、呆然と空を仰いでいた。 (負けた・・・。くそっ、すまない、天津飯、餃子。) ヤムチャは心の中で二人にわびた。自分の油断が招いた敗北だった。 これで鶴仙流の三人の第22回天下一武道会は終わった。 「ほら、ヤムチャとやら立たんか。」 ジャッキー・チュンが手を差し出していた。その手は大きく暖かかった。 ヤムチャがその手をとった瞬間、会場からは罵声が飛び交った。 「おいおい、そんなじいさんに負けるなんてみっともないぞー。」 「期待はずれー、金返せ!」 罵声に耐え、再び闘技場に上ったヤムチャはジャッキー・チュンの勝ち名乗りを待った。 「では二回戦第一試合勝者は勝者はジャッキー・チュン選手に決定しました。」 そういってレフェリーがジャッキー・チュンの手を上げようとした瞬間、ジャッキー・チュンはまるでそれをよけるかのように ヤムチャの横に立ち、その手を上げた。 第六話 恐怖の始まり 死に逝く者たち 「おっと、これはどうしたものかジャッキー・チュン選手、ヤムチャ選手の腕を上げています。」 会場がざわめいた。ムリもない、試合内容を考えれば明らかにジャッキー・チュンの勝利、 それもヤムチャの一回戦とはうって変わった惨めな戦いである。 これではヤムチャの名誉を守るためとはいえない、ヤムチャをさらに貶めるだけである。 「あのー、ジャッキー・チュン選手?あなたの勝ちですよ。」 「ふむ、お前さん、何を見ておった。勝ったのはこの者じゃよ。」 「へ?」 アナウンサーは素っ頓狂な声をあげ、会場はざわめきからどよめきへと変わった。 「のう、孫悟空よ?」 そう言うとジャッキー・チュンは会場で試合を見ていた孫悟空に声をかけた。 会場は水を打ったように静寂を取り戻し、悟空に全ての視線が集まった。 「ああ、たしかにじっちゃんの方がほんのちょびっとだけだけど早く手をついてた。」 「えっ、おい、マジかよ、悟空?」 「クリリン、お前ぇ、何見てたんだ?なぁ、亀仙人のじっちゃん。」 「う、うむ、確かに悟空の言うとおり、ジャッキー・チュンのほうが少し手をつくのが早かったな。」 会場が再び、どよめく。あの武天老子の言葉である。誰が逆らえるものだろうか。 「で、では、勝者ヤムチャ選手ということになりますが、ジャッキー・チュン選手、よろしいですか?」 「かまわんよ、そこまでして勝ちたければ、黙って、勝ち名乗りを受けておるよ。」 「は、はぁ、では、天下一武道会第二回戦第一試合はヤムチャ選手の逆転勝ちです。」 喜ぶもの、憤るもの、会場の複雑な思いが交錯する中、ヤムチャはある決意を固めていた。 「待て、待ってくれ」 「何じゃおぬしか、敗者は黙って去るものじゃがの」 ヤムチャは一足先に武闘場の裏へ退いたジャッキー・チュンを呼び止めた。 もちろん、先ほどの結果に納得がいかないためだ。 「じいさんが先に手をついただって? ふざけるなっ!俺は・・・俺はあんたに勝ちを譲ってもらうくらいなら負けた方がマシだった。」 語気を荒げるヤムチャとは対照的にジャッキー・チュンは冷静なものだ、 ヤムチャがこうして自分を追ってくるだろうことは分かっていたのだから。 「ふむ、おぬし、先ほどの勝利に納得がいかんようじゃの。 しかし、勝ったのはおぬしじゃ、結果は結果じゃよ。」 「あんた、わざと手をついたんじゃないのか?でなければ、俺が・・・勝てるはずはなかった。」 「なぜ、そう思う?自分の実力に自信がないのか?」 「じ、自信ならあった・・・だが、それ以上にあんたは強かった。いったい、じいさん何者なんだ?」 「ふぉっふぉっふぉ、何者かといわれてものう、わしはジャッキー・チュンじゃよ。」 「分かった、あんたが誰かなんてことはどうでもいい。俺はこの勝利を辞退させてもらう。 他人から譲ってもらった勝利なんてゴメンだ。次の大会までに腕を磨いて今度はあんたに勝って優勝してやる。」 「おぬし、そこまでの決意ができるのならなぜ決勝への切符を捨てようとする、こわいのか?」 「もういい、あんたと話すことはない。じゃあな。」 そう言い捨てて去ろうとするヤムチャをジャッキー・チュンが呼び止めた。 「待て、わしはおぬしと悟空を戦わせて見たいのじゃよ」 「どういう意味だ?なぜ亀仙流の奴と俺を戦わせたいんだ?」 「他人から譲られた勝利などいらんか、若い者はいいのう、そういう風に先を考えずに行動できるのは。 今のうちだけじゃ、そう言っておれるのは若いうちに少しでも経験を積む、それがおぬしにとってマイナスになることはあるまい。」 「質問に答えろっ!なぜ、おれと孫悟空を戦わせたいんだ?」 ヤムチャの言葉にジャッキー・チュンはかつらを脱いだ。ヤムチャはその人物が誰かすぐには分からなかった。 だが、どこかで見たことがある必死に記憶をたどり、パパイヤ島に着いた日に出会ったあの武天老子だということに気付いた。 「あなたは・・・武天老子様?」 「いかにも。おぬし、一回戦でだいぶ体力を消耗しておったようじゃな、もし万全の状態であればいくらわしでも勝てたかは分からぬ。」 「どうして、あなたは会場にいたはずじゃ・・・」 そしてヤムチャは妖怪ウーロンの事を聞かされる。プーアルと共にすごしたヤムチャにはその話は日常にありふれたことであった。 「そうですか、しかし、どうして孫悟空が勝つと?」 「あやつには、そう、何か不思議な力を感じるのじゃよ。そう、おぬしの仲間たちとも違う不思議な力をな。」 「!?天津飯たちの力、あなたはあれがどういう力かご存知なのですか?」 「うむ、あれはの、魔界の力じゃよ、餃子といったかあの方はもしや餃子王子様ではないか?」 「ええ、よくは知りませんが、かつてどこかの王族だったという話は聞いたことがあります。」 「やはりなその王国はかつて魔界と契約し、中原の華にならんとした。しかし、同時にその座を狙っておった レッドリボン軍の前に敗れ去った王国じゃよ。」 ヤムチャにとってそれは非常に興味をそそる話であったが、武天老子により遮られてしまった。 「悪いがわしも時間がないのでな、率直に言おう。悟空と戦ってくれ。あ奴はもっと強くなる。 見てみたいのじゃよ。弟子が自分を越える瞬間を・・・」 そしてヤムチャの中に新たな闘志が灯った頃、医務室で眠っていた天津飯が殺されようとは この時のヤムチャには知る由もなかった。 第七話 復讐者の来訪 天津飯の死 ヤムチャと亀仙人が二回戦の結果について話している頃・・・ 武闘場から少し離れたところにある医務室で眠っていた 天津飯の元を招かれざる客が訪れていた。 「よくも、よくも、この馬鹿者めが育ててやった恩も忘れたか このわしを殺そうなどとはな。」 声の主は鶴仙人である。この男は今、すべてを失ったことに我を忘れ 復讐の鬼と化していた。 せめてもの救いは傍らに餃子がいなかったことであろうか・・・ ヤムチャとの戦いで気功砲を放ち、体力を使い果たした天津飯は 鶴仙人の来訪にも気づかず眠りつづけた。 そして、無情にもその手刀が天津飯の体を貫いた。 自分の体に訪れた変化にすら気づかなかったのであろう。 その表情は安らかなものだった。 そして、鶴仙人の次なる目的は・・・ 「天さん・・・」 天津飯にヤムチャの勝利を告げるため、医務室を訪れた餃子は言葉を失っていた 医務室はおびただしいばかりの血に染められていた。 それも乾いていない、まだ新しい血だ。 今から探せばまだ犯人を見つけられるかもしれない。 そう思った餃子ではあったが体が動かなかった。 餃子の脳裏を何かがよぎった。それは過去の記憶であったが 当の餃子にはそれが何なのかは分からなかった。 大切な者達を失った記憶、それが彼に残された最後の同胞である 天津飯の死により呼び起こされようとしていた。 だが、餃子の記憶が戻るのはもう少し先のことである。 そして、餃子に遅れて医務室にヤムチャと武天老子がやってきた。 武天老子の目的は餃子と天津飯に魔界の力をできる限り 使わないように忠告をするためである。 武天老子はその力を使う弊害を知っていたからだ。 天津飯の死に怒るヤムチャドラゴンボールの存在を教え天津飯が 生き返ることができることを告げる。 すべては弟子である悟空とヤムチャを引き合わせるためであったが・・・ 第二試合は武天老子の予想通り、孫悟空が制した。 そして、武闘場の裏へと退いた悟空の目の前に鶴仙人の姿があった。 「そうか、お前か。お前を優勝させるためにわしは、わしは・・・ 許さんぞ、小僧っ!」 「何だ、お前ぇ、オラが何したって言うんだ?」 悟空の話など聞く耳を持たないとばかりに鶴仙人の怒涛の攻撃が襲った。 老いたとはいえ、武天老子と並び称される男だ。 先の戦いの直後だったこともあり、悟空はその攻撃により 右腕の骨を砕かれてしまう。 そこへ不穏な気の流れを感じ取った武天老子が現れた。 「悟、悟空っ、むぅ、お主、いったい何を考えておる?」 「何を考えている?笑わせるな、自分の弟子たちを優勝させるために このわしからすべてを奪った貴様が知らんはずはなかろう」 「すべてを奪った?何を言うておる?」 「ふん、しらばっくれるな、お前も弟子を賭けの対象にしていたとはな」 「賭け・・・じゃと?なるほどな、そんなことをしておるから弟子にも見放され・・・ !?まさか、天津飯を殺したのは?」 「そう、わしじゃよ。あの馬鹿者が育ててやった恩も忘れおって」 鶴仙人の言葉に亀仙人の体は自然と動いていた。怒りは頂点に達していたが 頭の中は冷静そのものだった。ともに修行に励んだもの同士、 互いに相手の手の内は知り尽くしていた。 勝敗を分けたのは武天老子の冷静さであった。 亀仙人の放ったかめはめ波により鶴仙人は空の彼方へと吹き飛ばされていった。 第八話 乱心×封印×決勝戦 鶴仙人の奇襲により右腕を砕かれてしまうった悟空。果たして決勝戦の行方は・・・ 「むう、この腕では決勝は無理じゃな。」 「そんな、じっちゃん、オラ出るぞ。今度こそ優勝するんだ。 それにおら、あのヤムチャって奴と戦えるなんておもうと、すげーワクワクしてんだ。」 「しかし、この腕では満足な戦いはできまい。」 「大丈夫だ、腕がなくてもオラには尻尾がある。」 そう言うと悟空は尻尾を振って見せた。 「しかしのう、悟空よ。その腕ではかめはめ波も撃てまい。」 「大丈夫だって、じっちゃん、あいつらだって指からかめはめ波撃ってんだ。 オラも指からでも撃てるんだろ?」 「あれは野、どどん波といって原理は同じじゃがかめはめ波とは別の技じゃ。」 「ど、どどん波?ひぇー、おでれーたぞ。オラが前に戦った桃白白って奴と同じ技だ。」 「何、桃白白とな、お前、よくあ奴と戦って死ななんだな。」 「あぁ、オラが勝ったからな。一度は負けちまったけど、超聖水を飲んだら勝っちまった。」 (ふむ、超聖水とはな・・・カリン塔に登ったか。いよいよもって不思議な小僧じゃ。) 武天老子もまたかつて自分がカリン塔に登ったときのことを思い出していた。 自分の場合はカリン様の修行に悟空の日ではない時間を費やしたが… 「仕方ない。しかし、これ以上は無理だと思えばわしが試合を止める。よいな?」 「ホントか?かーっ、じっちゃん、ありがとう。よーし、オラ、がんばっぞ。」 「それでは、第22回天下一武道会決勝戦、ヤムチャ選手対孫悟空選手始めっ。」 アナウンサーの掛け声とともに、両者の激しい攻防が繰り広げられた。 しかし、右腕の使えない悟空はさすがにヤムチャのスピードについていくことが精一杯だった。 そして、ヤムチャの攻撃に耐え切れず悟空がバランスを崩した瞬間 「もらった、狼牙風風拳!」 ヤムチャの目にもとまらぬ攻撃が悟空を襲った。 誰もが早くも勝負が決まったと思ったが、当のヤムチャだけは自分の攻撃が 失敗に終わったことに気付いていた。手応えがなかったからである。 「さすがに今のはヤバかったぞ。」 後ろから声が聞こえたかと思うとそこには平然と悟空が立っていた。 そして、決勝にふさわしい二人の戦いに会場から歓声が湧き上がった。 「残像か、やはり、武天老子様が認めるだけあって一筋縄ではいかないようだな。」 「お前ぇもな、オラ、前にお前ぇの使うどどん波ってやつを使う奴と戦ったことあっぞ。」 「何!?どどん波を?どういうことだ?」 自分たち以外にどどん波を使うことのできる者がいるなどヤムチャにはにわかには 考えられなかった。長い修行の間に彼は桃白白のことなど完全に忘れていたからだ。 「あぁ、桃白白って奴だ。スンゲー、いやな奴だったから、オラが倒してやったけどな。」 (まさかあのピンクをこんなガキが倒したっていうのか?) 「そうか、お前があいつを倒してくれたんだな。感謝するぜ、おかげで俺はこうやって 自由の身になれたんだからな。だが勝負は別だ。俺はお前に勝って優勝しなければならない。」 (天津飯達のためにも・・・) そして再び、二人の間に激しい攻防が繰り広げられ始めた頃・・・ 武天老子により空の彼方へと吹き飛ばされた鶴仙人は辺境の地で目を覚ました。 そこはかつて彼の、そして武天老子の師である武泰斗が命を落とした地であった。 そう、武天老子が放ったかめはめ波は皮肉にも鶴仙人をこの場所へと導いたのだ。 かつて世界を絶望へと導いた悪魔の眠るこの場所に・・・ 「ふっふっふ、はーはっはっは。」 鶴仙人は狂喜していた。かつては来ることすらはばかられた場所であったが、 今は違う。この場所には自分をおとしいれた亀仙流の連中に地獄を見せることの できる力が眠っているのだ。 そう、あのピッコロ大魔王が… そんなことも露知らず、ヤムチャと悟空の戦いはヒートアップしていた。 右腕の使えないハンディすら感じられない悟空の戦いぶりにヤムチャは苦戦していた。 得意のスピードで掻き回そうにも背後に回った瞬間、尻尾の強烈な一撃が待っている。 右腕を失ったことが皮肉にもヤムチャのスピードに対抗する術を悟空に与えていたのだ。 しかし、ヤムチャもバカではない、これまでの戦いで悟空の右腕が 使い物にならないことを見抜いていた。 (二回戦で痛めたのか?悪いが勝負なんでな情けはかけない。) 二かい戦での悟空達の戦いを見ることなく武天老子を追いかけ、そして 医務室へと向かったヤムチャには鶴仙人によって悟空が負傷したなどとは 思いもよらなかった。 そして、ヤムチャは体を中に浮かべ、その気を右手の人差し指に集中させた。 第九話 空中の攻防 盗まれた必殺技 ヤムチャの気が人差し指に充実する。 空を飛べない悟空はそれを指をくわえて見るしかなかった。 そして糸が切れたかのようにヤムチャの体がゆっくりと地上に落ちてきたかと思うと 急速にスピードを上げた。天津飯戦で見せたあの技だ。 ヤムチャはこれを真・狼牙風風拳と名づけていた。 しかし、この技はもともとが空を飛ぶ相手を想定して編み出した技であったため 舞空術のつかえない悟空が相手では少々分が悪かった。 しかし、今の自分の決め技はこれしかない。 タイミングが遅ければ超スピードで地面に激突することになりかねない。 だが、タイミングが早すぎても相手に届かない。 全てはどどん波を撃つタイミング次第であった。 そしてヤムチャの頭が悟空の肩ほどに達した瞬間、 ヤムチャの強烈なけりが悟空の右肩を襲った。 と、同時にヤムチャの指からどどん波が放たれる。 その軌跡は地面から悟空にかけて描かれ、ヤムチャは軽業師のように 地面へと舞い降りた。そしてヤムチャの蹴りとどどん波を続けざまに 浴びせられた悟空はなす術もなく吹っ飛んでいった。 だが、ヤムチャが戦闘体制を解かなかった。 本来であればこの技は初撃から間髪を入れずに相手を攻撃するものであるが 相手が地上にいてはその効果を十分に発揮することはできない。 ゆえに悟空に致命的なダメージを与えるには不充分なのだ。 「いてて、お前ぇ、やっぱりすげぇな。でも、オラいいこと考え付いちゃったもんね」 瓦礫の中から悟空が姿をあらわした。 「いいことだと?」 「ああ、もういっぺんさっきの奴やってみろ。」 悟空は余裕の笑みすら浮かべて、ヤムチャを挑発する。 「いいだろう、何度でも食らわせてやる。食らえ真・狼牙風風拳!!」 そう言うとヤムチャの体は再び宙を舞った。 そして再びどどん波を放つための気を蓄え始める。 しかし、その瞬間を狙い悟空もまたヤムチャめがけ跳躍した。 そのジャンプ力の凄まじいこと、ヤムチャにどどん波のための 気を練り上げる時間を与えなかった。 とはいえ、直線的な攻撃だ確かにスピードはあるが避けられないものではない。 ましてや、左腕しか使えないことも分かっている。 ヤムチャの予想通り悟空は左腕で攻撃を仕掛けてきた。 舞空術を巧みに使い、その攻撃をかわしたヤムチャではあったが すれ違いざまに悟空がなにかつぶやいていることに気付いた。 「・・・めーはー・・・」 (まずい、かめはめ波か!?) 悟空も舞空術の使えるヤムチャにとっては自分の突進をかわすことなど わけもないことは百も承知だったのだ。だからこそ空中戦を仕掛けると思わせ、 渾身のかめはめ波を撃てるように気を練り上げていた。 そして、ヤムチャが気付いたときにはすでに悟空のかめはめ波は 今まさにその左腕から放たれようとしていた。 (くっ、だが、かわせる。) 見事な奇襲ではあった。だがヤムチャの最大の武器はスピードである このスピードがあったからこそ、天真飯の気功砲をかわすこともできた。 どどん波を練り上げることに集中していた初動こそ遅れたが、 その手の向きさえ読めば軌道を測るのは容易い。 間一髪、かめはめ波の軌道からその身を外すことができた。そう思った瞬間・・・ 悟空の左腕が突如向きを変えた。それもヤムチャの方向ではなく 自分の後方に対してかめはめ波を放ったのだ。 それはヤムチャの真・狼牙風風拳をかめはめ波で再現したものであった。 恐るべき戦闘センスである。 そしてかめはめ波をかわせたと安心しきったヤムチャに悟空の 第二撃を交わす余裕はなかった。 悟空の拳がヤムチャの顔にめり込む、そして両者が再び地上へと舞い降りた。 「へっへー、オラできちゃったもんね。お前ぇの技。」 満足そうに悟空は屈託のない笑みを浮かべている。 「な、なんと言う奴じゃ。実戦で片腕のかめはめ波を撃つばかりでなく、 それを相手の必殺技をコピーするのに利用するとは・・・」 武天老子は弟子の成長に舌を巻いていた。 これほどのスピードで強くなる者がいるなど考えられないことだった。 もちろん、この頃の武天老子は悟空の力の秘密を知らない。 そして、ヤムチャもまた自分が何ヶ月もかかって編み出した技を 盗まれたことに驚きを隠せずにいた。 しかし、同時に真・狼牙風風拳の新たなイメージもその脳裏に浮かんでいた。 第十話 決着 解き放たれた悪魔 「俺が苦労して編み出した真・狼牙風風拳をこんなに簡単に盗まれるとはな。」 「へへーん、オラ人の技をマネすんの得意なんだ。」 そう、前回大会においても悟空は優勝候補の一角であったチャパ王の八手拳を盗んでいたのだ。 当然、ヤムチャがそんなことを知るはずもないが。 「ふっ、だが、俺もこれで勝負を着けると決めてるんでな。」 そう言うとヤムチャは再び上空へと飛んだ。そして悟空もそれを追う。 そして、ヤムチャのどどん波と悟空のかめはめ波が幾度となく放たれ、 そのたびに二人の体が激しくぶつかり合う。激しい空中戦が繰り広げられた。 空を飛ぶだけであれば舞空術の使えるヤムチャに分がある。 だが、この戦いにはもう一つの要素が必要だった。 どどん波とかめはめ波だ。 当然ながら指から放たれるどどん波では掌から放たれるかめはめ波とでは 圧倒的に得ることのできる勢いに差があった。 そのため、ヤムチャに対して悟空も引けを取らない戦いを演じることができたのだ。 「武天老子様、悟空の奴、空を飛んでよますよ。」 「いや、正確には飛んでいるのではないな。かめはめ波の反動をうまく利用して 舞空術に対抗するまでの動きを可能にしとるのじゃ。」 サングラスに隠されて覗うことはできないが、武天老子の目は弟子の成長を喜んでいた。 そして傍らにいるクリリンもまた、この二人の繰り広げる戦いに目を奪われていた。 (ほう、一回戦では着いていくこともできんかったはずじゃが、 こやつも悟空との戦いで一皮むけおったようじゃの。) そう、ここにも武天老子の予想を越えて成長する若者が存在したのだ。 (くそっ、さすがにそう簡単にはいかないか…) ヤムチャは焦りを募らせていた。 だが、それは悟空を倒せないことからくるものではない。 そのころ、鶴仙人はようやく目当てのものを発見していた。 それは古びた炊飯ジャーだ。そのふたには何かお札のようなものが貼られている そう、これこそがかつて世界を恐怖のどん底におとしいれたピッコロ大魔王の封印だった。 そして、今、この愚かな男の手によりその封印が解かれようとしていた。 ふたをあけると同時におびただしい程の煙が当たり一面に広がった。 そして、その煙は徐々に人の形を結んでいく。 「お前か、俺を目覚めさせたのは?」 「そうじゃ、ピッコロ大魔王。」 「ほう、俺を知っているのか、それでもなおこの俺を目覚めさせるとはな。」 「お前の力を借りたい。わしはお前を封印した男の弟子を知っている。 そしてお前と同じようにわしもそいつを憎んでいるのじゃ。 どうじゃ、手を組まないか?」 「あの男の弟子だと?ふん、いいだろう。悪い条件ではなさそうだ。」 (そいつさえ殺せばどうせこいつは用済みだ、今はあのいまいましい魔封波を 使える素養のあるものを根絶やしにすることが先決だ。そして俺は再び、 この世界を魔族の世界に変えてやる。) 舞台は再び天下一武道会場へと戻る。 一体何度、二人の体が交錯したことだろうか… 会場にいるほとんどの人間がすでに二人の描く光を捉えることしかできなくなっていた。 そして、今、その光の一方にある変化が生じようとしていた。 「かーめーはーめー・・・」 ヤムチャはこの決勝戦の最中、幾度となく掌からエネルギーを放とうと試みていた。 それはもちろん悟空のようにどどん波よりもより強力な推進エネルギーを得るためだ。 しかし、どういうわけかうまくいかなかった。 そこで一計を案じた。すでに体力も限界に近づきつつある。 最後の一撃になってもいい。 (一回戦で亀仙流の連中がやってたように声を上げてみよう。) この試みがヤムチャにはっきりと掌からエネルギー波を打ち出すイメージを与えた。 いや、実際にはかけ声を上げることでじっくりと気を練り上げることができただけであるのだが。 そして、この試みは悟空にも少なからず動揺を与えた。 「いっ!?あいつ、何でかめはめ波を?」 この時すでに悟空の体力もさすがにそこをつこうとしていた。 掌から放つエネルギー波は確かに大きな推進力を得ることができるが、 その分、ヤムチャのどどん波よりはるかに体力の消耗も激しい。 ここまで戦いを続けているだけでも信じられないほどであった。 そして悟空もまた最後の力をこの一撃に振り絞ることを決めた。 「波ーーーーーーーーーーーっ!!」 二人の絶叫が同時に空にこだました。そしてこれまで以上に激しい衝突が起こる。 ヤムチャの拳が悟空の顔を、そして悟空の拳はヤムチャの顔をどちらも正確に捉えていた。 そして、脳を揺らされた衝撃で二人は意識を失った。 そして二人の体は力なく地上へと落下していく。ヤムチャは地上に落ちる寸前で意識を取り戻した。 だが、もはや指一本動かすこともできそうになかった。すぐそばに悟空の顔が見える。 ほんの少しだけヤムチャの方が地上に落ちるのが早そうだった。 もう、地上はすぐそこに迫っていた。 ここまで戦えば天津飯達も納得してくれるだろうさ。 そう思い、ゆっくりと目を閉じようとした瞬間、武天老子の姿が目に入った。 そう、二人の落下地点は武天老子達が観戦するすぐ目の前だったのだ。 ヤムチャには武天老子が満足そうに笑いかけてくれたようにも見えた。 自分もどこか満足している。この戦いには負けることになるだろうが、 これほどの戦いができたのだ悔いはない。 だが、その時ヤムチャの目に武天老子の傍らにいる少女の姿が飛び込んできた。 (お、女!?) そう、ヤムチャは女性恐怖症だったのだ。 長い修行生活の中、そのことを思い出だすことはあまりなかったが。 その少女の姿をみとめた瞬間、ヤムチャはほんの少しだけ闘技場のほうへと動いていた。 そして、そして背中に激痛が走った。闘技場に激突したのだ。 その痛みに再び、気を失おうとする時、ヤムチャはその少女の顔に見覚えがあったことに気付いた。 (あ、誰だっけ、えと、たしか、カプセルコーポの…) そこでヤムチャの意識は途絶えた。 「ヤムチャ選手、孫悟空選手ともに場外に落ちました。この場合いち早く場外に 落ちた選手が負けになってしまいますが、なんと幸運なことにヤムチャ選手は地上に落ちる直前に 闘技場にぶつかり、わずかですが孫悟空選手が早く地上へと接触しました。 よって、この瞬間、第22回天下一武道会優勝はヤムチャ選手に決まりましたーーーーーっ。」 漆黒の魔狼 YAMUCHA -The Dark Side-   第二部 完