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かうんとだうん!



一話

……顔を蹴られた地球が怒って……
……火山を爆発させる……

DAY 1 ・ PM 4:35

夕暮れ。傾きかけた太陽が、街を朱色に染め上げてゆく。
俺は西の都のショッピングモールを、一人寂しく歩いていた。両手には、日用品や食料が沢山詰まった買い物袋。
人々が、俺の姿を指差してはくすくすと忍び笑いを漏らす。
別に俺が浮浪者みたいな格好をしてるとか、そう言う訳じゃない。
すべては数日前からやらされているモニター、
ブリーフ博士が開発した怪しげな新製品『クリーンマスク』のせいだ。
物理吸着、科学吸着、触媒反応の三種を融合させ、毒性のある、あらゆるガスに対応……
更には各種ウィルスすら無害化し、
おまけに空気清浄機能までついていると言うよくわからないシロモノなのだが、
この商品、まだ開発途中という事もあり実用性に乏しく、
一般人にモニターを任せるには身体への負担が大きすぎるらしい。
要は、とてつもなく重く、そして暑いのだ。並みの人間なら、装着した時点で首の骨が折れてしまうだろう。
かくして俺は、ガスマスクに武道着という、
サイコマンティスもびっくりの珍妙な姿を晒しながら街を歩く事とあいなった。
舞空術で飛んで帰れば早いし、笑いものになる事もないのだが、そうする気力も今の俺にはなかった。
近頃ブルマとベジータがイヤに親密な雰囲気だったりして、早く帰った所で俺の居場所はないに等しいし、な。
まあ、もうすぐ俺も、未来を地獄に変えたと言う人造人間との戦いに備えて
修行の旅へ出る予定だから、こんな肩身の狭い思いをするのも、もうちょっとの辛抱だ。
あのフリーザを一瞬で消した少年でも、太刀打ちできない相手……か。
悟空ならばわくわくするところなのだろうが、今の俺には得体の知れない恐怖感しかなかった。

そんな事を考えている内に、カプセル・コーポレーション前に着いていた。
首に巻いたタオルで汗を拭いながら、丁度訓練を終えたべジータが重力室から出てくる所だった。
よりによって、一番会いたくない奴に鉢合わせとは、今日はとことんついていない。
べジータは俺の存在など意に介さず、そっぽを向いて何やらぶつぶつと呟いている。
ベジータが、ここに向かっている『何者か』の気を探っているのだと気がついたのは、数秒後。
慌てて、俺も意識を集中する。確かに大きな気が三つ、カプセルコーポレーションに向かって近付きつつあった。
「キィーッ!」
奇声をあげ、涎をぼたぼたと零しながら、異形の怪物が三体舞い降り、べジータを取り囲んだ。
その姿に、俺は見覚えがあった。
「サイバイマン……!?」
忘れもしない。サイヤ人戦で俺の命を奪った怪物。あいつと、姿形がそっくりなのだ。
だが、その戦闘力はサイバイマンとは比較にならないほど大きい。俺が界王拳を使った位の戦闘力はあるだろう。

「フン、雑魚が……何処から沸いて出たのか知らんが、ちょうどいい。こいつの力を試してやる」
怪物共の殺気に刺激されたべジータが、気を開放する。
逆立った髪。身体を包む黄金色のオーラ。そして何より、圧倒的なその戦闘力。
べジータも手に入れていたのだ。悟空と同じ、最強の力―― スーパーサイヤ人。
しかし怪物共は、スーパーサイヤ人になったベジータを見ても怯むことなく、
それどころかさらに勢い付き、じりじりと間合いを詰めて行く。
「ギャウ!」
「ギキャアー!」
三方向から、一斉に襲い掛かる怪物。
一陣の風が吹き、草木を揺らす。べジータは、その風に溶けるようにして姿を消した。
それと同時に、次々と怪物の頭が爆ぜてゆく。
目で追うことはおろか、その気を捉えることすら不可能な、超高速の動き。
次の瞬間には、頭を砕かれた怪物たちの残骸が、無残な姿を晒していた。
あのサイバイマンモドキ、少なくとも俺と同程度の戦闘力はあった……それなのに、あんな一瞬で……!
俺は改めて悟空やべジータ、サイヤ人たちとの越えられない壁を、その実力差を再確認させられることとなった。
「ふう……何だ、そのふざけた被り物は」
変身を解き、呆れ顔で話しかけるべジータを無視して、俺は逃げるようにカプセルコーポレーション内へと戻った。




DAY 1 ・ PM 5:10

俺は買い物を終え、リビングでソファーに寄りかかって一休みしていた。
先ほどの怪物は何だったのか……と言う疑問はあったが、
それはもう、俺の心配する次元の問題じゃあなかった。
この星には、戦闘民族であるサイヤ人の頂点に立つ男が二人もいるのだ。
どんな危機も、恐れるに足らぬ事だろう。
万一、そんな二人ですらどうにもならない事態が起きた、
その時は――俺なんか、どう逆立ちしても役に立ちはしない。
「ちょっとヤムチャ! 見てよ、このニュース」
諦めにも似た、ぼんやりとしたマイナス思考はブルマの声で中断された。
どたどたとリビングに入ってきたブルマが、大型TVのスイッチを点ける。
大画面の中で、目を大きく見開いたアナウンサーが何やら大声でまくしたてていた。
『世界各地に突如として現れ、猛威を振るっている
 謎の怪物ですが、その正体は依然として不明で――』
画面が切り替わり“怪物”の映像が大写しになる。
間違いない。べジータが倒した、サイバイマンモドキと同じ種類だ。
「ね、ね、コレ! 何だと思う? やっぱり人造人間?
 孫くんたちが、『街に被害を出さないように』って、手分けして戦ってるらしいけど」
「ああ、俺もさっき見た。ベジータが倒してたよ……
 多分、人造人間じゃないだろう。いくらなんでも、時期が早過ぎる」
「何で今、こんな妙な敵が出てくるんだろう」
ブルマは、不思議そうに首を傾げる。
「大丈夫さ。束になったって、悟空たちの相手になるような奴じゃないよ」
そう。あの怪物たちは、俺と同じ程度の戦闘力しかないのだ。自嘲的な笑いで、頬が緩む。
「確かに、孫くんたちの脅威になるレベルじゃないとは思うけど……何か、嫌な予感がするの」
ブルマはそう言うとしばらく考え込み、研究室に篭ってしまった。



DAY2 ・ AM 6:40

翌朝。相変わらずTVは、各地で大暴れする怪物のニュースで持ちきりだ。
俺は眠気覚ましのコーヒーを啜りながら、ぼんやりとした頭で各地の惨状を眺めていた。
「この地球は、平和とはつくづく無縁なんだな……」
誰にともなく独り言を呟いた、その時。
大分疲れた顔をして、ブルマが研究室から出て来た。
眠そうな目を擦りながら、リビングの丸テーブルにどさりと妙な機械を置く。
箱型の機械は、中央部の赤いランプを点滅させながら、周囲の空気を吸い込んでいる。
「ヤムチャ、今起きた所?」
「あ、ああ、まあね」
「いきなりだけど、この機械、神様のいる神殿に置いてきてくれる?
 それで、二日くらい経った頃、持ち帰ってきて欲しいの。
 もし、あたしの予想が当たってたら……とんでもない事に、なるかもしれない」
「とんでもないこと? それに、その機械、何なんだ」
「あの怪物の正体について調べてみたんだけど……
 ちょっと心配なことがあって。嫌な予感が確信に変わりそうなの。
 それで、大至急神殿のデータが欲しくって。
 ちなみにこれは、大気中に含まれる成分を分析する機械ね」
「よくわからんが、わかった。行ってくるよ」
神殿のデータを何に使うのか等、まだ聞きたいことは山ほどあったが、いちいち聞くのは止めておいた。
ブルマの様子を見るに、どうやらただごとではないらしいことは確かだから。
……それに、聞いたところで俺の頭で理解できるとも限らないし。
「ありがとう。詳しい事は後で話すから――とにかく、お願い」
俺はとりあえず、ブルマが作った妙な機械を片手に、天界へと向かった。

「ヤムチャ、天界来るの珍しい。ゆっくりしていけ」
ミスターポポに出迎えられ、久々に神殿へと降り立つ。
ここに来るのは、サイヤ人戦前に修行に来て以来だ。
「ああ、用事もあったし、ちょっとここで修行しようと思ってさ」
俺は『ブルマからお使いを頼まれた』とは言わなかった。
勿論見栄もあったが、実際、地上では怪物百鬼夜行状態で、おちおち修行も出来ない。
一匹ならともかくとして、複数で襲われたら一巻の終わりだろう。
折角だから、この機械を回収するまでの二日間、天界で修行するのもいいかもしれない。
しかし――今更ここで修行したところで、何になる?
俺は、今地球を襲っている怪物にさえ歯が立たない。
そんな俺が修行した所で、スーパーサイヤ人をも圧倒すると言われる、人造人間に太刀打ちできるとでも?
あー! こんな事ばかり考えてちゃ駄目だ!
俺は、俺に出来るだけのことをする。それでいいじゃないか。
俺は頭をもたげた無力感を振り払うように首を振り、気を取り直して神殿の隅に機械を置いた。
その横に寝転んで、青い空や、流れる雲を目で追う。
どのくらい、そうしていただろうか。急に、息が苦しくなって来た。
原因は、クリーンマスクだった。酸素濃度の低い天界では、マスクの使用は不可能らしい。
「かはっ、げほ、げほ!」
俺はむせながら、マスクを力任せに剥ぎ取った。
食事や会話に苦労しない設計とはいえ、ここでは着けていられない。